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  • -電気接点用グリース組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-10
(45)【発行日】2025-11-18
(54)【発明の名称】電気接点用グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/02 20060101AFI20251111BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20251111BHJP
   C10M 117/04 20060101ALN20251111BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20251111BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20251111BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20251111BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20251111BHJP
   C10N 40/14 20060101ALN20251111BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20251111BHJP
【FI】
C10M169/02
C10M107/02
C10M117/04
C10N50:10
C10N30:02
C10N10:02
C10N20:00 A
C10N40:14
C10N30:08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2025025523
(22)【出願日】2025-02-20
【審査請求日】2025-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】米田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小沢 博幸
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-120312(JP,A)
【文献】特開昭51-116803(JP,A)
【文献】特開2007-186609(JP,A)
【文献】特開2015-147867(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チウムコンプレックス石けんを含む増ちょう剤及び全組成物中82~92質量%の40℃の動粘度が9~40mm/sのPAO4又はPAO6を含む基油のみからなる電気接点用グリース組成物。
【請求項2】
前記リチウムコンプレックス石けんが、12-ヒドロキシステアリン酸とアゼライン酸とから形成されるものである、請求項1に記載の電気接点用グリース組成物。
【請求項3】
前記リチウムコンプレックス石けんが、以下の式1で表される請求項2に記載の電気接点用グリース組成物。
【請求項4】
前記グリース組成物の滴点が230℃以上である請求項1に記載の電気接点用グリース組成物。
【請求項5】
チウムコンプレックス石けんを含む増ちょう剤及び全組成物中82~92質量%の40℃の動粘度が9~40mm/sのPAO4又はPAO6を含む基油のみからなるグリース組成物を電気接点に塗布する、-35℃以下におけるチャタリング発生抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温域において銅又は銀接点などでのチャタリングの発生を抑制する電気接点用グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品や車載電装部品などの摺動電気接点には、摩耗防止のためグリースが塗布されていることが多く見られる。近年では、電気自動車の市場が拡大しており、電気自動車の車載電装部品の摺動電気接点における温度が高くなり、高温においても性能劣化のないグリース組成物の開発が望まれている。
【0003】
電気接点に用いられるグリースの増ちょう剤としてはリチウム石けんが多く用いられているが、リチウム石けんグリースが使用できる最高温度は130℃程度であり、これ以上の温度での使用は困難になる。また、130℃以上の高温で使用可能なグリースの一例としてはウレアグリースが挙げられるが、電気接点用として用いた場合に、電気接点上に絶縁性被膜を形成しやすく、通電を阻害するおそれがあり、実用化例はほとんど見られない。
【0004】
一方、車載電装部品などの電気接点に塗布されたグリースは、屋外において氷点下などの低温域に晒されることもあり、その場合には増粘して硬くなって通電性を損ない電圧降下(チャタリング)が発生することもあった。
このような低温域でのチャタリング発生を防止するため、例えば、基油として40℃における動粘度が9~40mm2/sである合成炭化水素油を含み、添加剤として有機亜鉛化合物及びチアジアゾール系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む電気接点用グリース組成物が開発されている(下記特許文献1参照)。
また、別の形態としては、増ちょう剤、基油、及び添加剤を含む電気接点用グリース組成物において、添加剤としてヘクトライトの第4級アンモニウム塩を含む電気接点用グリース組成物も開発されている(下記特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-186609号公報
【文献】特開2006-204547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車載電装部品の電気接点、特に電気自動車の電気接点は、高温域(例えば、130℃以上)から低温域(例えば、-35℃以下)までの広範な温度域に晒されるため、高温で使用可能で、かつ、低温でのチャタリング防止に効果的なグリース組成物の開発が望まれている。
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、グリース組成物の増ちょう剤としてリチウムコンプレックス石けんを用いることにより、高温域での耐熱性があり、かつ、低温域でのチャタリング発生を抑制できることを見出して本発明を成し得た。
【0008】
そこで、本発明の目的は、130℃以上などの高温域での耐熱性があり、かつ、-35℃以下などの低温域でのチャタリング発生を抑制できる電気接点用グリース組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の電気接点用グリース組成物は、リチウムコンプレックス石けんを含む増ちょう剤を5~18質量%含み、40℃の動粘度が9~40mm/sのポリ-α-オレフィンを含む基油を82~92質量%含むことを特徴とする。
【0010】
上記の一態様の電気接点用グリース組成物は、前記リチウムコンプレックス石けんが、12-ヒドロキシステアリン酸とアゼライン酸とから形成されるものであることが好ましく、さらに、前記リチウムコンプレックス石けんが、以下の式1で表されるものであることがより好ましい。
【0011】
【0012】
上記の一態様の電気接点用グリース組成物は、滴点が230℃以上であるのが好ましい。
【0013】
また、本発明は、リチウムコンプレックス石けんを含む増ちょう剤を5~18質量%含み、40℃の動粘度が9~40mm/sのポリ-α-オレフィンを含む基油を82~92質量%含むグリース組成物を電気接点に塗布する、-35℃以下におけるチャタリング発生抑制方法も対象とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様の電気接点用グリース組成物は、増ちょう剤としてリチウムコンプレックス石けんを所定量含有させることにより、130℃以上などの高温域での耐熱性があり、かつ、-35℃などの低温域でのチャタリング発生を抑制できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のグリース組成物において、イソヘキサン抽出残渣についてXRD回折した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を一実施形態に基づいて説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<グリース組成物>
本発明の一実施形態の電気接点用グリース組成物(以下、本グリース組成物ともいう。)は、リチウムコンプレックス石けんを含む増ちょう剤を5~18質量%含み、40℃の動粘度が9~40mm/sのポリ-α-オレフィンを含む基油を82~92質量%含むものである。
【0018】
(増ちょう剤)
本グリ-ス組成物の増ちょう剤は、リチウムコンプレックス石けんを含むものであり、増ちょう剤中に50質量%以上含むのが好ましく、60質量%以上含むのがより好ましく、70質量%以上含むのが特に好ましい。
リチウムコンプレックス石けんは、脂肪族カルボン酸リチウムと、二塩基酸リチウムとから形成することができる。
脂肪族カルボン酸リチウムとしては、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、ステアリン酸リチウムなどが挙げられ、なかでも、12-ヒドロキシステアリン酸リチウムが好ましい。
二塩基酸としては、アゼライン酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸などが挙げられ、なかでも、アゼライン酸が好ましい。
【0019】
より具体的には、リチウムコンプレックス石けんは、以下の式1で表されるものが特に好ましい。
【0020】
【0021】
増ちょう剤中には、リチウムコンプレックス石けん以外の他の成分、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸リチウムなどを含んでいてもよい。
増ちょう剤中のリチウムコンプレックス石けんの質量割合は、例えば、XRD回析などで測定することができる。
【0022】
増ちょう剤は、本グリース組成物中に5~18質量%含ませることができ、好ましくは10~16質量%含ませることができ、より好ましくは12~14質量%含ませることができる。
【0023】
増ちょう剤は、例えば、基油中で製造することができ、基油に脂肪族カルボン酸、二塩基酸及び水酸化リチウムなどを混合し、加熱することなどによって製造することができる。但し、製法はこれに限定されるものではない。
【0024】
(基油)
本グリース組成物の基油は、炭化水素系合成油等が挙げられ、炭化水素系合成油としては、ポリ-α-オレフィン(PAO)油等が挙げられる。より具体的な例としては炭化水素系合成油であるPAO4(100℃における動粘度が約4mm/s)又はPAO6(100℃における動粘度が約6mm/s)などが挙げられ、市販品のPAO6としては、商品名「Synfluid PAO6」(シェブロンフィリップス化学社製)、商品名「SpectraSyn Plus6」(Exxon Mobil社製)、市販品のPAO4としては、商品名「Synfluid PAO4」(シェブロンフィリップス化学社製)、商品名「SpectraSyn 4」(Exxon Mobil社製)、商品名「SpectraSyn MaX3.5」(Exxon Mobil社製)などが挙げられる。
【0025】
基油としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、粘度の異なる2種類以上を併用して基油を構成するようにしてもよい。但し、基油にポリイソブチレン(商品名「Oppanol B15N」(BASF社製))などのポリマーを含ませないのが好ましい。
基油は、炭化水素系合成油を98質量%以上含むのが好ましく、99質量%以上含むのがより好ましく、99.9質量%以上(100質量%を含む)含むのが特に好ましい。
【0026】
基油の40℃における動粘度は、9~40mm/sが好ましく、11~35mm/sがより好ましく、14~32mm/sが特に好ましい。
【0027】
基油の100℃における動粘度は、特に限定するものではないが、1~10mm/sが好ましく、2~8mm/sがより好ましく、3.5~6.5mm/sが特に好ましい。
【0028】
基油の粘度指数は130以上が好ましく、基油の流動点はー60℃以下が好ましく、基油の引火点は230℃以上が好ましい。
【0029】
基油は、本グリース組成物中に82~92質量%、好ましくは85~91質量%、より好ましくは86~88質量%含有させることができる。
【0030】
(添加剤)
本グリース組成物は、上記以外のその他の成分として添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤(例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化-α-ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤等)、極圧添加剤(例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩などのリン系極圧剤、硫化油脂、チアジアゾール系化合物、ジアルキルジサルファイド、メチレンビスジアルキルジチオカーバメートなどの硫黄系極圧剤、ジチオリン酸亜鉛、亜鉛ジチオカーバメート、ニッケルジチオカーバメートなどの有機金属化合物)、防錆剤(例えば、金属スルホネート、ラノリン系誘導体、亜硝酸ナトリウム、こはく酸エステル、脂肪酸亜鉛、アミン類、ソルビタンモノオレエート)、構造安定剤、金属不活性化剤(例えば、ベンゾトリアゾール)、摩耗低減剤(例えば、リン酸エステル、ジチオカルバミン酸エステル)、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛など)などが挙げられる。
添加剤は、1種含ませてもよく、2種以上を含ませてもよい。
本グリース組成物中に添加剤を含ませる場合は、添加剤を、本グリース組成物中に、0.5~2質量%含ませるのが好ましい。
【0031】
(製造方法)
本グリース組成物は、基油と、増ちょう剤と、必要に応じて、上記した添加剤とを上記した含有割合で配合し、ミリングすることにより製造することができる。加熱しながらミリングしてもよい。
ミリングは、特に限定するものではないが、三本ロール、ホモジナイザー、コロイドミルなどのミリング分散処理装置を用いて行うことができる。
【0032】
(本グリース組成物の物性値)
本グリース組成物は、混和ちょう度が230~340の範囲が好ましく、250~280の範囲がより好ましい。混和ちょう度は、JIS K2220に準拠して測定することができる。
【0033】
本グリース組成物は、滴点が230℃以上であるのが好ましく、250℃以上であるのがより好ましい。滴点は、JIS K2220に準拠して測定することができる。
【0034】
本グリース組成物は、40℃の動粘度が35mm/s以下であるのが好ましく、31mm/s以下であるのがより好ましく、20mm/s以下であるのが特に好ましい。40℃の動粘度は、JIS K2283に準拠して測定することができる。
【0035】
本グリース組成物は、重量損失量が-4.8質量%以上であるのが好ましく、-4質量%以上であるのがより好ましく、-2.5質量%以上であるのが特に好ましい。重量損失量は、下記の実施例に示す方法で測定することができる。
【0036】
本グリース組成物は、130℃のちょう度変化は+30~+80の範囲が好ましく、+40~+70の範囲がより好ましく、+45~+65の範囲が特に好ましい。また、-40℃のちょう度変化は-100~-40の範囲が好ましく、-90~-50の範囲がより好ましく、-80~-60の範囲が特に好ましい。130℃及び-40℃のちょう度は、JIS K2220のちょう度測定方法と同様に測定し、25℃のちょう度を基準に変化量を求めることができる。
【0037】
(用途)
本グリース組成物は、摺動電気接点に好適に用いることができ、銅又は銀接点に適し、特に銅接点に適している。なかでも、130℃以上などの高温域での耐熱性があり、かつ、-35℃などの低温域でのチャタリング発生を抑制できるものであるため、自動車の車載電装部品、特に電気自動車の車載電装部品に適する。
車載電装部品は、例えば、インヒビタースイッチ等が挙げられる。
車載電装部品以外には、例えば、携帯電話の振動モーター等が挙げられる。
【実施例
【0038】
以下、本発明を一実施例に基づいて説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0039】
以下の実施例1~4及び比較例1~3を作製した。
【0040】
(実施例1)
300mLステンレスカップに、基油としてPAO6(シェブロンフィリップス化学社製「Synfluid PAO6;動粘度(40℃)30.7mm2/s」)111.88gを投入し、攪拌しながら加熱し、80℃でアゼライン酸(エメリーオレオケミカルズ社製「EMEROX1144」)を3.92g投入し、100℃で12-ヒドロキシステアリン酸(日油株式会社製「ヒマシ硬化脂肪酸」)を21.08g投入し、アゼライン酸及び12-ヒドロキシステアリン酸が液滴分散及び融解したことを確認した。
【0041】
融解確認後、温度を90~95℃に降温した後、無水水酸化リチウム分散体(ルーブリゾール社製「Lubrizol 5280GR」)7.46gを30~60分かけて滴下し、次に100~110℃に昇温して30~60分保持して、水分を除去した。
その後、2℃/minで180℃まで昇温させ、5~10分保持した後、冷却油として前記PAO6 55.66gを添加した。攪拌を継続しながら室温になるまで冷却し、3本ロールでミリング処理して実施例1のグリース組成物を製造した。
【0042】
実施例1のグリース組成物中の増ちょう剤がリチウムコンプレックス化したかの確認は、得られたグリース組成物のイソヘキサン抽出を行い、その残渣についてXRD回折を測定し、図1に示すとおり、上記式1で示したリチウムコンプレックス石けんを50質量%以上含有することを確認し、実施例1のグリース組成物がリチウムコンプレックスグリースであることを確認した。なお、図1中のαは上記式1で示したリチウムコンプレックス石けんを示し、βは12-ヒドロキシステアリン酸リチウムを示す。
【0043】
(実施例2)
実施例1において各原料の配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のグリース組成物を作製した。上記と同様のXRD回析の結果、実施例2のグリース組成物がリチウムコンプレックスグリースであることを確認した。
【0044】
(実施例3)
実施例1において基油としてPAO6をPAO4(シェブロンフィリップス化学社製「Synfluid PAO4;動粘度(40℃)17.4mm2/s」)に変更し、さらに、各原料の配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のグリース組成物を作製した。上記と同様のXRD回析の結果、実施例3のグリース組成物がリチウムコンプレックスグリースであることを確認した。
【0045】
(実施例4)
実施例1において基油としてPAO6をPAO4(エクソンモービル社製「SpectraSyn Max3.5;動粘度(40℃)14.3mm2/s」)に変更し、さらに、各原料の配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のグリース組成物を作製した。上記と同様のXRD回析の結果、実施例4のグリース組成物がリチウムコンプレックスグリースであることを確認した。
【0046】
(比較例1)
300mLステンレスカップに、基油として、PAO6(シェブロンフィリップス化学社製「Synfluid PAO6;動粘度(40℃)30.7mm2/s」)185.1g及びポリマーとしてスチレンーイソプレンブロック共重合体(インフィニアム社製「Infineum SV-150」)0.9gを投入し、さらに、増ちょう剤として12-ステアリン酸リチウム(勝田化工社製「商品名Li-OH-St」)14.0gを投入し、240℃に加熱して、3本ロールでミリング処理して比較例1のグリース組成物を製造した。
【0047】
(比較例2)
比較例1において基油として、PAO6(シェブロンフィリップス化学社製「Synfluid PAO6;動粘度(40℃)30.7mm2/s」)186.0gのみを用いた以外は比較例1と同様にして、比較例2のグリース組成物を製造した。
【0048】
(比較例3)
300mLステンレスカップAに、基油として、PAO6(シェブロンフィリップス化学社製「Synfluid PAO6;動粘度(40℃)30.7mm2/s」)61.7gとMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)(東ソー株式会社製「ミリオネートMT」)7.0gを投入し、60℃で加熱して攪拌溶解した。300mLステンレスカップBに、PAO6 23.3gとp-トルイジン(ランクセス社製「p-Toluidine」)8.0gを投入し、60℃で加熱溶解し溶解液を作成した。この溶解液をステンレスカップAに添加し、攪拌しながら100℃まで昇温し、一定時間保持した。その後、攪拌を続けて165℃まで昇温後その温度を保持しながら攪拌を継続し、静置放冷した。さらに、3本ロールでミリング処理して比較例3のグリース組成物を製造した。
【0049】
【表1】
【0050】
(試験)
実施例1~4及び比較例1~3のグリース組成物について、以下の試験を行った。これら試験の結果を上記表1に示す。
【0051】
<不混和/混和ちょう度>
不混和/混和ちょう度は、JIS K2220に準拠して測定した。
【0052】
<滴点>
滴点は、JIS K2220に準拠して測定した。
【0053】
<動粘度>
40℃における動粘度は、JIS K2283に準拠して測定した。
【0054】
<離油度>
離油度は、130℃、24時間の条件でJIS K2220に準拠して測定した。
【0055】
<ちょう度変化>
ちょう度変化は、130℃又は-40℃にて、JIS K2220のちょう度測定方法と同様に測定し、25℃のちょう度を基準として差を算出して求めた。
【0056】
<グリース薄膜酸化試験>
SPCC板(冷間圧延鋼板)(縦120mm×横50mm)に各グリース組成物を厚さ2mmで塗布し、150℃の恒温槽に24時間静置した後、各グリース組成物の試験前後のちょう度変化及び重量損失量を確認した。重量損失量は電子天秤で測定した。高温酸化によりちょう度の軟/硬化が発生し、重量損失が5.0mass%以上のグリース組成物は、高温環境下での使用に適さないと想定され、不合格とした。
【0057】
<チャタリング試験>
銅板とPOM(ポリオキシメチレン)樹脂板とを半分ずつの面積で接合したチャタリング試験板に、厚さ0.4mmの各グリース組成物を塗布し、往復摺動試験機(新東化学社製「トライボギア」)に銅リベットと上記チャタリング試験板をセットし、規定荷重、電圧・電流をかけ、25℃で10回摺動させて、慣らし運転をした。規定の温度で30分静置した後、10往復摺動させ、その間のチャタリングの有無を確認した。不規則な電圧降下が生じないグリース組成物を合格とした。
(測定条件)
荷重:200g 摺動速度:25mm/s 摺動幅:20mm(銅部10mm、POM部10mm)
電圧:5V 電流:50mA 試験温度:‐20℃、-40℃
【0058】
<基油拡散防止性試験>
JIS R3202に適合するすりガラス(縦100mm×横100mm)上に直径10mm、厚さ1.2mmの各グリース組成物を塗布し、80℃に加熱した熱風循環式恒温槽内で24時間静置した。静置後、塗布したグリース組成物の端部からの油にじみの大きさを確認し、油にじみが2mm以下であるものを合格とした。
なお、実施例2、3及び比較例3は同一あるいはより低粘度PAOを基油とする実施例1、4などの結果より合格が想定されるため、試験を行わなかった。
【0059】
(結果)
基油にポリ-α-オレフィンを含み、増ちょう剤としてリチウムコンプレックス石けんを含む実施例1~4のグリース組成物は、高温酸化によるちょう度変化および重量損失量が小さく、-40℃での不連続な電圧降下(チャタリング)の発生がなかった。また、実施例1のグリース組成物では、油にじみが小さく基油の拡散防止性が高いことが確認された。
これに対して、基油にポリマーを含む比較例1のグリース組成物は、高温酸化による軟化が見られ、-40℃での不規則な電圧降下(チャタリング)の発生が見られ、基油の拡散が発生することが確認された。
増ちょう剤としてリチウム石けんを含む比較例2では、高温酸化によるグリース組成物の硬化が見られ、基油の拡散が発生することが確認された。
増ちょう剤としてウレアを含む比較例3では、-20℃での不規則な電圧降下(チャタリング)の発生が確認された。
【0060】
本発明の電気接点用グリース組成物は、基油拡散防止性を発揮し、130℃以上で使用可能で、かつ、-35℃以下でのチャタリング性に優れたものであるといえる。
【要約】
【課題】130℃以上などの高温域での耐熱性があり、かつ、-35℃以下などの低温域でのチャタリング発生を抑制できる電気接点用グリース組成物を提供する。
【解決手段】本発明の電気接点用グリース組成物は、リチウムコンプレックス石けんを含む増ちょう剤を5~18質量%含み、40℃の動粘度が9~40mm/sのポリ-α-オレフィンを含む基油を82~92質量%含むことを特徴とする。
【選択図】なし
図1