(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-11
(45)【発行日】2025-11-19
(54)【発明の名称】ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/06 20060101AFI20251112BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20251112BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20251112BHJP
A23L 2/02 20060101ALN20251112BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20251112BHJP
【FI】
C12G3/06
C12G3/04
A23L2/00 B
A23L2/02 D
A23L2/52 101
(21)【出願番号】P 2020214131
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2019239215
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001915
【氏名又は名称】メルシャン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201733
【氏名又は名称】曽田香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】占部 恵理
(72)【発明者】
【氏名】山崎 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】黒須 利一
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】青山 武史
【審査官】鉢呂 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097562(JP,A)
【文献】特開2011-083264(JP,A)
【文献】WRIGHT, John,Flavor Bites: δ-Hexadecalactone,Perfumer & Flavorist,2011年05月,Vol.36,pp.20-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 1/00-3/08
C12H 6/00-6/04
A23L 2/00-2/84
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含んでなる
梅酒であって、
δ-ヘキサデカラクトンを含んでなり、その濃度が1~1,000ppbであるか、
γ-テトラデカラクトンを含んでなり、その濃度が0.1~2,500ppbであるか、または
γ-ヘキサデカラクトンを含んでなり、その濃度が0.1~2,500ppbである、
前記梅酒。
【請求項2】
δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトララクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-オクタデカラクトンまたはそれらの組み合わせの濃度が2~1,000ppbである、請求項
1に記載の
梅酒。
【請求項3】
前記濃度が2~250ppbである、請求項
2に記載の
梅酒。
【請求項4】
δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを
梅酒に含有させることを含んでな
り、
δ-ヘキサデカラクトンの濃度を1~1,000ppbに調整すること、
γ-テトラデカラクトンの濃度を0.1~2,500ppbに調整すること、または
γ-ヘキサデカラクトンの濃度を0.1~2,500ppbに調整すること
を含んでなる、
梅酒の製造方法。
【請求項5】
前記
梅酒におけるδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンまたはそれらの組み合わせの濃度が2~1,000ppbである、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記濃度が2~250ppbである、請求項
5に記載の製造方法。
【請求項7】
梅酒を飲んだ後に残る
該梅酒の香味の持続時間を延伸させる方法であって、
δ-C14~
C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを
前記梅酒に含有させることを含んでな
り、
δ-ヘキサデカラクトンの濃度を1~1,000ppbに調整すること、
γ-テトラデカラクトンの濃度を0.1~2,500ppbに調整すること、または
γ-ヘキサデカラクトンの濃度を0.1~2,500ppbに調整すること
を含んでなる、
前記方法。
【請求項8】
前記
梅酒におけるδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンまたはそれらの組み合わせの濃度が2~1,000ppbである、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料およびその製造方法に関し、さらに詳細には、飲んだ後に残る香味の持続時間を延伸させるウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梅酒やあんず酒をはじめとする混成酒には、止渇を目的としたものは除き、飲用時の香味の持続を楽しむものが多く存在する。かかる混成酒では飲用時における「香味の持続時間の長さ」が非常に重要な要素となっている。
【0003】
したがって、混成酒において香味の持続時間を延伸させるための成分の探索に力が注がれている。
【0004】
一方、δ-オクタデカラクトン等のラクトンに関し、特許文献1には、δ-オクタデカラクトンおよび/またはγ-オクタデカラクトンを有効性成分とする果汁感増強剤が開示されている。また、特許文献2には、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、およびδ-オクタデカラクトン等のδ-ラクトン類を有効成分として含む油脂感増強剤が開示されている。また、特許文献2には、炭素数が大きいものでは香気が弱くなるため、通常香料として使用されるのは炭素数が12以下のものがほとんどであることも開示されている。
【0005】
しかしながら、δ-オクタデカラクトン等のラクトンと、混成酒等の飲料を飲んだ後に残る香味の持続時間の延伸との関係については何ら報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-097562号公報
【文献】特開2011-083264号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、今般、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料において、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含有させることにより、該飲料を飲んだ後に残る香味の持続時間が延伸されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0008】
したがって、本発明は、飲んだ後に残る香味の持続時間が延伸される、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料の提供をその目的としている。
【0009】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含んでなる、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する混成酒。
[2]δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトララクトン、γ-ヘキサラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含んでなる、[1]に記載の混成酒。
[3]δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトララクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-オクタデカラクトンまたはそれらの組み合わせの濃度が2~1,000ppbである、[1]または[2]に記載の混成酒。
[4]前記濃度が2~250ppbである、[3]に記載の混成酒。
[5]ウメまたはアンズ由来の成分を含有する混成酒の製造方法であって、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを該混成酒に含有させることを含んでなる、製造方法。
[6]δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトララクトン、γ-ヘキサラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを前記混成酒に含有させることを含んでなる、[5]に記載の製造方法。
[7]前記混成酒におけるδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンまたはそれらの組み合わせの濃度が2~1,000ppbである、[5]または[6]に記載の製造方法。
[8]前記濃度が2~250ppbである、[7]に記載の製造方法。
[9]ウメまたはアンズ由来の成分を含有する混成酒を飲んだ後に残る香味の持続時間を延伸させる方法であって、δ-C14~18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを該混成酒に含有させることを含んでなる、方法。
[10]δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトララクトン、γ-ヘキサラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを前記混成酒に含有させることを含んでなる、[9]に記載の方法。
[11]前記混成酒におけるδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンまたはそれらの組み合わせの濃度が2~1,000ppbである、[9]または[10]に記載の方法。
[12]前記濃度が2~250ppbである、[11]に記載の方法。
[13]δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含んでなる、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する混成酒を飲んだ後に残る香味の持続時間の延伸のための香料組成物。
[14]
δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトララクトン、γ-ヘキサラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含んでなる、[13]に記載の香料組成物。
[15]前記混成酒におけるδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトン、γ-オクタデカラクトンまたはそれらの組み合わせの濃度を2~1,000ppbに調整するための、[14]または[15]に記載の香料組成物。
[16]前記濃度が2~250ppbである、[15]に記載の香料組成物。
【0010】
本発明によれば、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料において、飲んだ後(すなわち、飲み込んだ後)に残る香味(好ましくは、口中香)の持続時間を延伸することができる。
【発明の具体的説明】
【0011】
ラクトン
本発明において、ラクトンとしては、炭素数が14~18であり、6員の複素環を有する長鎖ラクトン(すなわち、δ-C14~C18ラクトン)、および炭素数が14~18であり、5員の複素環を有する長鎖ラクトン(すなわち、γ-C14~C18ラクトン)が使用される(以下、これらの長鎖ラクトンをまとめて「C14~C18ラクトン」ともいう)。
【0012】
δ-C14~C18ラクトンとしては、炭素数が偶数のラクトンおよび奇数のラクトンのいずれも使用することができるが、好ましくは炭素数が偶数のラクトン、すなわちδ-C14ラクトン、δ-C16ラクトン、δ-C18ラクトンが使用される。好ましい実施形態において、δ-C14ラクトン、δ-C16ラクトンおよびδ-C18ラクトンとしては、それぞれδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトンおよびδ-オクタデカラクトンが使用される。また、γ-C14~C18ラクトンとしては、炭素数が偶数のラクトンおよび奇数のラクトンのいずれも使用することができるが、好ましくは炭素数が偶数のラクトン、すなわちγ-C14ラクトン、γ-C16ラクトン、γ-C18ラクトンが使用される。好ましい実施形態において、γ-C14ラクトン、γ-C16ラクトンおよびγ-C18ラクトンとしては、それぞれγ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンが使用される。これらのC14~C18ラクトンは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。したがって、一つの好ましい実施形態において、C14~C18ラクトンとしては、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせが使用される。
【0013】
別の好ましい実施形態において、本発明のC14~C18ラクトンとしては、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせが使用される。
【0014】
δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトンおよびδ-オクタデカラクトンの入手方法としては、特開2011-083264号公報に記載されているように、市販されているものを利用してもよく、また、5-ヒドロキシアルカン酸を酸で環化させる方法や、2-アルキルペンタデカノンをバイヤービリガー酸化によりラクトン化する方法など、公知の方法で合成することもできる。γ-オクタデカラクトンの入手方法としては、特開2019-097562号公報に記載されているように、市販されているものを利用してもよく、また公知の方法で合成してもよい。たとえば、γ-ラクトン類の合成方法として、アクリル酸メチルとペンタデカノールとをラジカル開始剤を用いたラジカル反応を行った後、環化反応を行う方法、不飽和脂肪酸をヒドロキシ化して脱水環化する方法などが知られており、これら公知の方法で合成することもできる。γ-テトラデカラクトンおよびγ-ヘキサデカラクトンは、市販されているものを利用してもよく、また公知の方法で合成してもよい。また、ラクトンとしてδ-オクタデカラクトンとγ-オクタデカラクトンとの組み合わせであっても良い。本発明のC14~C18ラクトンとしては、これらラクトンを含む原料などを使用してもよい。
【0015】
飲料
本発明のウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料(以下、「本発明の飲料」ともいう)は、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含んでなるものである。本発明では、飲料中のC14~C18ラクトンの合計濃度を所定の範囲に調整することにより、飲んだ後に残る香味の持続時間がより延伸される点で有利である。このような飲料は、C14~18ラクトンを含有する飲料の製造過程において、C14~C18ラクトンの濃度を調整することにより製造することができる。C14~C18ラクトンの濃度調整は、C14~C18ラクトンそのものを添加することにより行ってもよいし、あるいは、C14~C18ラクトンを含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。一つの好ましい実施形態において、本発明の飲料は、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせを含んでなる。
【0016】
別の好ましい実施形態において、本発明の飲料はδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含んでなる。
【0017】
本発明の飲料中のC14~C18ラクトンの濃度は、例えば、1~1,000ppb、好ましくは1.5~1,000ppb、より好ましくは2~1,000ppb、さらに好ましくは2~300ppb、さらに好ましくは2~250ppb、さらに好ましくは8~250ppbとされる。ここで、「ppb」とは、十億分率を示し、1ppbは1μg/Lに相当する。なお、本発明の飲料における上記C14~C18ラクトンの濃度は、例えば、本発明の飲料が一種のC14~C18ラクトンを単独で含む場合当該C14~C18ラクトンの濃度であり、本発明の飲料が複数種のC14~C18ラクトン(例えば、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-ペンタデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される複数種のラクトン)を含む場合、当該複数種のC14~C18ラクトンの合計の濃度とされる。飲料中のC14~C18ラクトンは、当業者に公知の方法により適宜検出または濃度測定できる。かかる検出または測定は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)により行われ、市販の装置を用いることにより簡便に行うことができる。上記測定としては、例えば、試料をMPSオートサンプラー(ゲステル社製)に供し、DHS(Dynamic HeadSpace)法により、GC-MS 7890(アジレント・テクノロジー株式会社)、5975C inert XL MSD(アジレント・テクノロジー株式会社)に導入することにより行うことができる。さらに、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの標準液または対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0018】
本発明の飲料としては、ウメまたはアンズ由来の成分を含有していれば特に限定されず、アルコール飲料であっても非アルコール飲料であってもよい。ここで、「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。また、「非アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされない、アルコール度数1度未満の飲料を意味する。「非アルコール飲料」のうち、アルコールが全く含まれない、すなわち、アルコール含量が0v/v%である飲料については特に「完全無アルコール飲料」と表現することができる。本発明における非アルコール飲料としては、例えば、チューハイ様飲料、カクテル様飲料、ワイン様飲料や、その他アルコール飲料との代替性がある飲料が挙げられる。さらに、本発明における非アルコール飲料には、果汁飲料や炭酸飲料等の清涼飲料や、茶飲料等も含まれる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、C14~C18ラクトンを含むアルコール飲料としては「ウメまたはアンズ由来の成分を含有する混成酒」が挙げられる。ここで、「混成酒」とは、酒類の内、醸造酒および蒸留酒そのものではない酒類全て(チューハイ、RTD、RTS、浸漬酒、リキュール、スピリッツ等)を意味し、酒税法上の「混成酒類」を含む。かかる混成酒としては、例えば、醸造酒や蒸留酒に、ウメまたはアンズ由来の成分(例えば、これら成分を含有した果汁)とともに、糖類、酸味料、香料、着色料等を加えてつくられる酒が挙げられる。
【0020】
本発明のより好ましい実施形態によれば、「ウメまたはアンズ由来の成分を含有する混成酒」としては「ウメまたはアンズを原料とする混成酒」が挙げられる。かかる混成酒としては、例えば、醸造酒や蒸留酒にウメまたはアンズを原料として用い、浸漬等によりウメまたはアンズのエキスおよび/またはフレーバーを抽出し、糖類、香料、着色料等を加えてつくられる酒が挙げられる。したがって、「ウメまたはアンズを原料とする混成酒」の具体例としては、梅酒、あんず酒、杏仁酒、またはアマレット等が挙げられる。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、δ-C14~18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含む飲料としては、モモを原料とする飲料(例えば、混成酒)であってもよい。
【0022】
本発明における「梅酒」とは、酒税法(昭和28年法律第6号)第3条第21号に規定するリキュールのうち、梅由来の成分を含んだ酒類をいう。かかる梅酒としては、アルコールとともに糖類等を含むことが好ましい。
【0023】
本発明の梅酒におけるアルコールは、エタノール含有材料の配合により与えることができる。エタノール含有材料としては、原料用アルコールや蒸留酒(スピリッツ)を用いることができ、好ましい蒸留酒の例としては、ウオッカ、ジン、焼酎、テキーラ、ラム、ブランデー、ウィスキー等が挙げられる。本発明の好ましい実施態様によれば、アルコール供給源は、原料用アルコール、焼酎、ブランデー、またはジンとされ、より好ましくは原料用アルコール、焼酎、またはブランデーとされる。
【0024】
本発明の梅酒における糖類としては、特に限定されるものではなく、適宜の糖、例えば、単糖類(例えば、果糖、ブドウ糖)、二糖類(例えば、ショ糖、乳糖)、オリゴ糖、多糖類を用いることができ、具体的には、氷砂糖、砂糖、異性化糖、液糖、三温糖、黒糖等であってもよい。
【0025】
本発明の梅酒は、梅酒の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、糖アルコール、高甘味度甘味料、ハチミツ等)、酸味料(例えば、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、フマル酸、酢酸またはこれらの塩類等)、着色料、香料、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤等)等を適宜添加することができる。
【0026】
本発明におけるあんず酒、杏仁酒、およびアマレットに関しても、原料として杏を用いる以外は梅酒と同様である。
【0027】
本発明の一つの実施態様によれば、混成酒としては以下の果汁含有混成酒が挙げられる。
純水に、ウメまたはアンズまたはモモなどの果汁を10%(v/v)、果糖ぶどう糖液糖を20%(w/v)、酸味料(クエン酸および/またはリンゴ酸)を2%(w/v)、香料を1.5%(w/v)、アルコール濃度50%(v/v)の原料用アルコールを5%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加する。さらに、δ-ヘキサデカラクトンを100ppbとなるように添加して、リキュールとする。
【0028】
本発明における混成酒は、好ましくは容器詰め飲料として提供される。使用される容器は、混成酒の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは、紙容器、金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0029】
飲料の製造方法
本発明の飲料は、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C16ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンの濃度を、例えば、上述のように調整することにより上記ラクトンを飲料に含有させる以外は、通常の飲料の製造方法に従って製造することができる。好ましい実施形態において、本発明の製造方法により製造される飲料は、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含む。別の好ましい実施形態において、本発明の製造方法は、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトンを含む。
【0030】
一つの好ましい実施形態において、本発明の製造方法は、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C16ラクトンからなる群から選択される一種または二種以上の組み合わせの濃度を2~1,000ppb、特に好ましくは2~250ppbに調整することを含む。さらに好ましい実施形態において、本発明の製造方法は、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせの濃度を2~1,000ppb、特に好ましくは2~250ppbに調整することを含む。
【0031】
別の好ましい実施形態において、本発明の製造方法はδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせの濃度を2~1,000ppb、特に好ましくは2~250ppbに調整することを含む。
【0032】
香料組成物
本発明では、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを、ウメまたはアンズを原料とした飲料(例えば、混成酒)に含有させることにより、該飲料を飲んだ後に残る香味の持続時間を延伸させることができる。したがって、本発明の別の態様によれば、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含んでなる組成物を、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料を飲んだ後に残る香味の持続時間の延伸のための香料組成物として提供することができる。好ましい実施形態において、本発明の香料組成物は、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを含む。別の好ましい実施形態において、本発明の香料組成物はδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせを含む。
【0033】
本発明の香料組成物における、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンの含有量は、特に限定されず、例えば、0.1~100質量%であり、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%である。一つの好ましい実施形態において、本発明の香料組成物は、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせを、上記範囲の量で含んでなる。別の好ましい実施形態において、本発明の香料組成物はδ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせを、上記の範囲の量で含んでなる。本発明の香料組成物の好適な例としては、保存安定性等の観点から、食品としての安全性が確認された保存剤、例えば水やエタノール、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチンまたはそれらの混合溶媒を添加して保存または使用することができる。
【0034】
本発明の香料組成物は、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料に添加することによりその飲料を飲んだ後に残る香味の持続時間を延伸させることができる。したがって、本発明の別の態様によれば、本発明の香料組成物を含んでなる、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料が提供される。このような飲料は、飲料の原料に本発明の香料組成物を添加することにより製造することができる。
【0035】
飲料における本発明の香料組成物の含有量(つまり添加量)は、特に制限されるものではなく、その飲料の種類(例えば、混成酒)や、所望の延伸効果の程度等に応じて、当業者により適宜決定される。当業者であれば、様々な濃度で本発明の香料組成物を含有する飲料のサンプルを実際に調製し、各サンプルについて所望の効果を確認することにより、その飲料に最適な香料組成物の量を見出すことができる。
【0036】
本発明の好ましい実施態様によれば、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料における本発明の香料組成物の含有量・添加量は、特に制限されるものではなく、飲料全量に対し、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせの含有量が、上述と同様の量となるように含有または添加できる。したがって、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせは、上記量となるように本発明の香料組成物に含まれることが好ましい。一つの好ましい実施形態において、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料には、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせを含んでなる香料組成物が添加される。別の好ましい実施形態において、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料には、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせを含んでなる香料組成物が添加される。
【0037】
飲料を飲んだ後に残る香味の持続時間を延伸させる方法
本発明では、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを、ウメまたはアンズを原料とした飲料(例えば、混成酒)に含有させることにより、該飲料を飲んだ後に残る香味の持続時間を延伸させることができる。したがって、本発明の別の態様によれば、ウメまたはアンズを原料とした飲料を飲んだ後に残る香味の持続時間を延伸させる方法が提供され、該方法は、δ-C14~C18ラクトンおよびγ-C14~C18ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種のラクトンを該飲料に含有させることを含んでなる。一つの好ましい実施形態において、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料には、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせを含有させる。別の好ましい実施形態において、ウメまたはアンズ由来の成分を含有する飲料には、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトンおよびγ-オクタデカラクトンからなる群から選択される一種のラクトン、またはそれらの二種以上の組み合わせを含有させる。
【0038】
上記の香料組成物、延伸方法の態様は何れも、本発明の飲料または飲料の製造方法に関する記載に準じて実施することができる。
【実施例】
【0039】
以下、試験例、製造例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において、「%」とは、特に記載のない限り「質量%」を意味する。各試験の評価は試験ごとに独立して評価した。また、本発明の単位および測定方法は、特段の記載のない限り、JISの規定に従う。
【0040】
以下の試験例における、官能評価は、次のようにして行った。
【0041】
試験例1:各種ラクトンを添加した梅酒製品(サンプルA、B)の官能評価1
1.試料
試料としては、下記に示す各種ラクトンを添加したサンプルAまたはBを用いた。ここで、サンプルA、Bはそれぞれ市販の梅酒を水にて2倍希釈したものである。
【0042】
2.ラクトン
ラクトンとしては以下のものを使用した。
δ-テトラデカラクトン:δ-テトラデカラクトン(純度:98.0%)(曽田香料株式会社製)
δ-ヘキサデカラクトン:δ-ヘキサデカラクトン(純度:98.0%)(曽田香料株式会社製)
δ-オクタデカラクトン:δ-オクタデカラクトン(純度:75.0%)(具体的には、δ-オクタデカラクトン(75.0%)とγ-オクタデカラクトン(25.0%)との混合物)(曽田香料株式会社製)
γ-デカラクトン:γ-デカラクトン(東京化成工業株式会社製)
上記ラクトンを秤量した後に、エタノールに溶解し、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン、δ-オクタデカラクトン、またはγ-デカラクトンがそれぞれ100ppbとなるようにサンプルA、Bに添加した。
【0043】
3.評価方法
梅酒専門パネル8名により官能評価を行った。ここで、梅酒専門パネルはISO9000に基づく検定試験に合格し、梅酒製造等の実務経験が5年以上の者である。
官能評価としては、試料7mLを口に入れ、3秒後に飲み込んだ後、香味が消失するまでの時間を香味の持続時間としてストップウォッチで計測した。
試験区は、以下のとおりである。
試験区1:無添加区
試験区2:γ-デカラクトン100ppb添加区
試験区3:δ-テトラデカラクトン100ppb添加区
試験区4:δ-ヘキサデカラクトン100ppb添加区
試験区5:δ-オクタデカラクトン100ppb添加区
【0044】
4.結果
ラクトンを添加したサンプルAに関し、ラクトン添加区(試験区2~5)における香味の持続時間と無添加区(試験区1)における香味の持続時間との差(ラクトン添加区の香味の持続時間-無添加区の香味の持続時間)を表1に示す。
【表1】
【0045】
ラクトンを添加したサンプルBに関し、ラクトン添加区(試験区2~5)における香味の持続時間と無添加区(試験区1)における香味の持続時間との差(ラクトン添加区の香味の持続時間-無添加区の香味の持続時間)を表2に示す。
【表2】
【0046】
サンプルA、B共に、試験区3~5の全ての試験区において、試料を飲んだ後の香味の持続時間が試験区1と比較して延伸した。さらに、試験区3~5の全ての試験区において、試料を飲んだ後の香味の持続時間の平均値が、試験区2(γ-デカラクトン100ppb添加区)の平均値と比較して延伸したことがわかる。試験区2(γ-デカラクトン100ppb添加区)では、香味の持続時間が延伸すると共に、モモ様の香りも強く残存した。
【0047】
試験例2:梅酒製品(サンプルA)におけるδ-ヘキサデカラクトンの濃度の検討
1.試料
試料としては、δ-ヘキサデカラクトンを添加したサンプルAを用いた。ここで、サンプルAは試験例1と同様である。
【0048】
2.ラクトン
ラクトンとしては試験例1のδ-ヘキサデカラクトンを用いた。
上記ラクトンを秤量した後に、エタノールに溶解し、δ-ヘキサデカラクトンが1.96、3.92、4.9、9.8、49、98、245、294、980ppbとなるようにサンプルAに添加した。
【0049】
3.評価方法
官能評価は、試験例1と同様に行った。
試験区は、以下のとおりである。
試験区7:無添加区
試験区8:δ-ヘキサデカラクトン1.96ppb添加区
試験区9:δ-ヘキサデカラクトン3.92ppb添加区
試験区10:δ-ヘキサデカラクトン4.9ppb添加区
試験区11:δ-ヘキサデカラクトン9.8ppb添加区
試験区12:δ-ヘキサデカラクトン49ppb添加区
試験区13:δ-ヘキサデカラクトン98pb添加区
試験区14:δ-ヘキサデカラクトン245ppb添加区
試験区15:δ-ヘキサデカラクトン294ppb添加区
試験区16:δ-ヘキサデカラクトン980ppb添加区
【0050】
4.結果
ラクトン添加区(試験区8~16)における香味の持続時間と無添加区(試験区7)における香味の持続時間との差(ラクトン添加区の香味の持続時間-無添加区の香味の持続時間)を表3に示す。
【表3】
【0051】
試験区8~16(δ-ヘキサデカラクトン1.96~980ppb添加)の全ての試験区において、試料を飲んだ後の香味の持続時間が試験区7と比較して延伸された。官能評価の結果より、試料を飲んだ後の香味の持続時間の延伸の観点から、δ-ヘキサデカラクトンの濃度は、好ましくは1~1000ppb、より好ましくは1.5~1000ppb、さらに好ましくは2~1000ppb、さらに好ましくは2~300ppb、さらに好ましくは2~250ppb、さらに好ましくは8~250ppbであると考えられる。
【0052】
試験例3:各種ラクトンを添加した梅酒製品(サンプルB)の官能評価2
1.試料
試料としては、下記に示す各種ラクトンをそれぞれ添加したサンプルBを用いた。ここで、サンプルBは試験例1と同様である。
【0053】
2.ラクトン
ラクトンとしては以下のものを使用した。
δ-ヘキサデカラクトン:δ-ヘキサデカラクトン(純度:98.0%)(曽田香料株式会社製)
γ-テトラデカラクトン:γ-テトラデカラクトン(純度:95.8%)(曽田香料株式会社製)
γ-ヘキサデカラクトン:γ-ヘキサデカラクトン(純度:97.0%)(曽田香料株式会社製)
γ-デカラクトン:γ-デカラクトン(東京化成工業株式会社製)
上記ラクトンを秤量した後に、エタノールに溶解し、δ-ヘキサデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、γ-ヘキサデカラクトンおよびγ-デカラクトンがそれぞれ100ppbとなるようにサンプルBに添加した。
【0054】
3.評価方法
官能評価を、梅酒専門パネル6名により試験例1と同様の方法により行った。試験区は、以下のとおりである。
試験区17:無添加区
試験区18:γ-デカラクトン100ppb添加区
試験区19:δ-ヘキサデカラクトン100ppb添加区
試験区20:γ-テトラデカラクトン100ppb添加区
試験区21:γ-ヘキサデカラクトン100ppb添加区
【0055】
4.結果
ラクトンを添加したサンプルBに関し、ラクトン添加区(試験区18~21)における香味の持続時間と無添加区(試験区17)における香味の持続時間との差(ラクトン添加区の香味の持続時間-無添加区の香味の持続時間)を表4に示す。
【表4】
【0056】
サンプルBにおいて、試験区19~21の全ての試験区において、試料を飲んだ後の香味の持続時間が試験区17と比較して延伸した。さらに、試験区19~21の全ての試験区において、試料を飲んだ後の香味の持続時間の平均値が、試験区18(γ-デカラクトン100ppb添加区)の平均値と比較して延伸したことがわかる。試験区18(γ-デカラクトン100ppb添加区)では、香味の持続時間が延伸すると共に、モモ様の香りも強く残存した。
【0057】
試験例4:梅酒製品(サンプルB)におけるγ-テトラデカラクトンの濃度の検討
1.試料
試料としては、γ-テトラデカラクトンを各濃度でそれぞれ添加したサンプルBを用いた。ここで、サンプルBは試験例1と同様である。
【0058】
2.ラクトン
ラクトンとしては、試験例3のγ-テトラデカラクトンを用いた。
上記ラクトンを秤量した後に、エタノールに溶解し、γ-テトラデカラクトンがそれぞれ0.47、1.89、94.5、250.5、1039.6、2032.0ppbとなるようにサンプルBに添加した。
【0059】
3.評価方法
官能評価を、梅酒専門パネル6名により試験例1と同様に行った。
試験区は、以下のとおりである。
試験区22:無添加区
試験区23:γ-テトラデカラクトン0.47ppb添加区
試験区24:γ-テトラデカラクトン1.89ppb添加区
試験区25:γ-テトラデカラクトン94.5ppb添加区
試験区26:γ-テトラデカラクトン250.5ppb添加区
試験区27:γ-テトラデカラクトン1039.6ppb添加区
試験区28:γ-テトラデカラクトン2032.0pb添加区
【0060】
4.結果
ラクトン添加区(試験区23~28)における香味の持続時間と無添加区(試験区22)における香味の持続時間との差(ラクトン添加区の香味の持続時間-無添加区の香味の持続時間)を表5に示す。
【表5】
【0061】
試験区23~28(γ-テトラデカラクトン0.47~2032.0ppb添加)の全ての試験区において、試料を飲んだ後の香味の持続時間が試験区22と比較して延伸された。官能評価の結果より、試料を飲んだ後の香味の持続時間の延伸の観点から、γ-テトラデカラクトンの濃度は、好ましくは0.1~2500ppb、より好ましくは1~2200ppb、さらに好ましくは1.5~2200ppb、さらに好ましくは2~2100ppb、さらに好ましくは100~1200ppb、さらに好ましくは250~1100ppbであると考えられる。
【0062】
試験例5:梅酒製品(サンプルB)におけるγ-ヘキサデカラクトンの濃度の検討
1.試料
試料としては、γ-ヘキサデカラクトンを各濃度でそれぞれ添加したサンプルBを用いた。ここで、サンプルBは試験例1と同様である。
【0063】
2.ラクトン
ラクトンとしては、試験例3のγ-ヘキサデカラクトンを用いた。
上記ラクトンを秤量した後に、エタノールに溶解し、γ-ヘキサデカラクトンがそれぞれ0.49、1.95、97.7、254.0、1074.8、2051.9ppbとなるようにサンプルBに添加した。
【0064】
3.評価方法
官能評価は、梅酒専門パネル6名により試験例1と同様に行った。
試験区は、以下のとおりである。
試験区29:無添加区
試験区30:γ-ヘキサデカラクトン0.49ppb添加区
試験区31:γ-ヘキサデカラクトン1.95ppb添加区
試験区32:γ-ヘキサデカラクトン97.7ppb添加区
試験区33:γ-ヘキサデカラクトン254.0ppb添加区
試験区34:γ-ヘキサデカラクトン1074.8ppb添加区
試験区35:γ-ヘキサデカラクトン2051.9ppb添加区
【0065】
4.結果
ラクトン添加区(試験区30~35)における香味の持続時間と無添加区(試験区29)における香味の持続時間との差(ラクトン添加区の香味の持続時間-無添加区の香味の持続時間)を表6に示す。
【表6】
【0066】
試験区30~35(γ-ヘキサデカラクトン0.49~2051.9ppb添加)の全ての試験区において、試料を飲んだ後の香味の持続時間が試験区29と比較して延伸された。官能評価の結果より、試料を飲んだ後の香味の持続時間の延伸の観点から、γ-ヘキサデカラクトンの濃度は、好ましくは0.1~2500ppb、より好ましくは1~2200ppb、さらに好ましくは1.5~2100ppb、さらに好ましくは2~2000ppb、さらに好ましくは50~1500ppb、さらに好ましくは90~1100ppbであると考えられる。
【0067】
製造例1:果汁含有混成酒の調製
純水に、ウメまたはアンズまたはモモの果汁を10%(v/v)、果糖ぶどう糖液糖を20%(w/v)、酸味料(クエン酸および/またはリンゴ酸)を2%(w/v)、香料を1.5%(w/v)、アルコール濃度50%(v/v)の原料用アルコールを5%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、δ-ヘキサデカラクトンを100ppbとなるように添加して、リキュールとした。