(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-12
(45)【発行日】2025-11-20
(54)【発明の名称】cBN焼結体および切削工具
(51)【国際特許分類】
C04B 35/5831 20060101AFI20251113BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20251113BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20251113BHJP
C04B 35/5835 20060101ALI20251113BHJP
C22C 1/051 20230101ALI20251113BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20251113BHJP
【FI】
C04B35/5831
B23B27/14 B
B23B27/20
C04B35/5835
C22C1/051 M
C22C21/00 Z
(21)【出願番号】P 2024565817
(86)(22)【出願日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2023044175
(87)【国際公開番号】W WO2024135429
(87)【国際公開日】2024-06-27
【審査請求日】2025-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2022201949
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208568
【氏名又は名称】木村 孔一
(72)【発明者】
【氏名】門馬 征史
(72)【発明者】
【氏名】小口 史郎
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-517868(JP,A)
【文献】特開2018-145020(JP,A)
【文献】特開2021-151943(JP,A)
【文献】国際公開第2021/182462(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/182463(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/210771(WO,A1)
【文献】特開2015-044259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/5831
C04B 35/5835
B23B 27/14
B23B 27/20
B23K 35/30
C22C 1/051
C22C 5/08
C22C 21/00
C22C 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
cBN粒子と結合相を有するcBN焼結体であって、
前記cBN粒子の平均粒径が1000nm以上、6000nm以下であり、
前記焼結体の表面または断面において、その輪郭線と輪郭近似線が形成する各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して45%以上、90%以下であり、
前記結合相は、その平均粒径が100nm以上、230nm以下の結合相粒子の集合体であり、またAl化合物を含み、Al化合物は前記cBN焼結体の全体に対し1面積%以上、12面積%以下である
ことを特徴とするcBN焼結体。
【請求項2】
前記各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して50%以上、90%以下であることを特徴とする請求項1に記載のcBN焼結体。
【請求項3】
前記各凹凸部の平均粗さが15nm以上、25nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して45%以上、70%以下であることを特徴とする請求項1に記載のcBN焼結体。
【請求項4】
前記結合相粒子の平均粒径が130nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のcBN焼結体。
【請求項5】
請求項1に記載のcBN焼結体を工具基体とする切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立方晶窒化硼素(以下、cBNということがある)基超高圧焼結体(以下、cBN焼結体ということがある)、および、これを工具基体とする切削工具に関する。本出願は、2022年12月19日に出願した日本出願である特願2022-201949号に基づく優先権を主張する。当該日本出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来からcBN焼結体は靱性に優れるため、鋼、鋳鉄等の鉄系被削材の切削工具等として用いられており、セラミックス結合相(以下、結合相ということがある)の構造を工夫するなどしてさらに靱性を向上させることがなされてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、結合相がTi硼化物粒を含み、cBN粒子のそれぞれが前記結合相と接する包絡界面の長さの総和と、それぞれのcBN粒子表面からその周囲2μm以内に存在する前記Ti硼化物の形状との関係を特定したcBN焼結体が記載され、該cBN焼結体は耐疲労摩耗性および耐アブレッシブ摩耗性に優れるとされている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、結合相に平均粒径が10~300nmのTi硼化物が含まれ、該Ti硼化物の含有量はcBN焼結体に対して0.2~10体積%であって、cBN粒子の全数(PNBN)とし、長軸が150nm以上の前記Ti硼化物が接しているcBN粒子数(PNTZ)とするとき、PNBN/PNTZが0.05以下であるcBN焼結体が記載され、該cBN焼結体は靱性が高く、このcBN焼結体を用いた切削工具基体は長期にわたって耐欠損性を発揮するとされている。
【0005】
さらに、例えば、特許文献3には、cBNの含有率が82体積%以上、98体積%以下の範囲にあり、かつ当該cBN焼結体の断面において、面積が0.05μm2以上、0.5μm2以下の範囲にある孤立した結合相が、cBNに対して二段以上の凸部を有し、かつ該凸部の先端から一段目の凸部の、先端方向に垂直な辺長をA1、平行な辺長をB1とし、また先端から二段目の凸部の先端方向に垂直な辺長をA2、平行な辺長をB2としたとき、A1/B1がA2/B2の1倍以上、10倍以下である凸部を有する孤立した結合相の面積割合が、面積が0.05μm2以上、0.5μm2以下の範囲にある孤立した結合相全体の20%以上であり、前記結合相がWとCoとAlとを含むcBN焼結体が記載され、該cBN焼結体を工具基体とした切削工具は鋳鉄、焼結合金の粗加工で連続切削、断続切削に適するとされている。
【0006】
加えて、例えば、特許文献4には、その断面において、立方晶窒化硼素が二以上の角部を有し、該角部のうち二以上の角度が90°以下であるcBN焼結体が記載され、該cBN焼結体を工具基体とした切削工具は良好な切削特性を有しているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際特許公開2022/176569号
【文献】特開2018-145020号公報
【文献】特許第5568827号公報
【文献】特許第5078061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情や提案を鑑みてなされたものであって、靱性が向上したcBN焼結体および該cBN焼結体を工具基体として用いた切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係るcBN焼結体は、cBN粒子と結合相を有し、
前記cBN粒子の平均粒径が1000nm以上、6000nm以下であり、
前記焼結体の表面または断面において、その輪郭線と輪郭近似線が形成する各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して45%以上、90%以下であり、
前記結合相は、その平均粒径が100nm以上、230nm以下の結合相粒子の集合体であり、さらにAl化合物を含み、前記Al化合物の含有量は前記cBN焼結体の全体に対し1面積%以上、12面積%以下である。
【0010】
前記実施形態に係るcBN焼結体は、次の(1)~(2)の1以上の事項を満足していてもよい。
【0011】
(1)前記各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全てのcBN粒子全体の面積に対して50%以上、90%以下であること。
(2)前記各凹凸部の平均粗さが15nm以上、25nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全てのcBN粒子全体の面積に対して45%以上、70%以下であること
(3)前記結合相粒子の平均粒径が130nm以上、200nm以下であること。
【0012】
また、これら実施形態に係るcBN焼結体から構成されているcBN焼結体製切削工具。
【発明の効果】
【0013】
前記によれば、cBN焼結体は靱性に優れ、該cBN焼結体を工具基体として用いた切削工具は靱性が向上し、優れた耐欠損性、耐チッピング性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るcBN焼結体の断面模式図である。
【
図3】輪郭線の座標(x
i、yu
i)と輪郭近似線の座標(P
j、Q
j)を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者は、cBN焼結体におけるcBN粒子の形態について、鋭意検討を行った。その結果、cBN粒子の外形が特定の凹凸形状を有するとき、cBN粒子が結合相と強固に結合してcBN焼結体の靱性が向上するという知見を得た。
【0016】
以下では、この知見に基づく、本発明の実施形態に係るcBN焼結体および該cBN焼結体を工具基体として用いた切削工具について詳細に説明する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「L~M」(L、Mは共に数値)で表現するときは、その範囲は上限値(M)および下限値(L)を含んでおり、上限値のみに単位が記載されているとき、上限値(M)と下限値(L)の単位は同じである。各数値は測定誤差を含む。
【0017】
本発明の実施形態に係るcBN焼結体は
図1に示すように、その断面を鏡面加工して組織観察を行うと、その組織はcBN粒子(1)、結合相粒子(2)の集合体である結合相を有し、結合相の中にはAl化合物(3)が存在する。
以下、このcBN焼結体について説明する。
【0018】
1.cBN粒子
cBN粒子について順に説明する。
【0019】
(1)平均粒径
cBN粒子の平均粒径は、1000nm以上、6000nm以下が好ましい。平均粒径がこの範囲にあれば、cBN焼結体を切削工具の工具基体として用いたときに、刃先のcBN粒子が脱落して生じる凹凸を起点とする欠損、チッピングが抑制され、さらには、cBN粒子と結合相との界面から進展するクラックの伝播、または、cBN粒子が割れて進展するクラックの伝播を抑えることができる。cBN粒子の平均粒径は、2000nm以上、5000nm以下がより好ましい。
【0020】
cBN粒子の平均粒径は、次のようにして求める。
cBN焼結体の表面または断面を鏡面加工し、鏡面加工した面の観察領域に対して走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:以下、SEMという)によって観察し(倍率は例えば5000倍)、二次電子像画像を得る。次に、得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理ソフトウェアにより二値化処理にて抽出し、各cBN粒子の最大長(最大フェレ径)を基に平均粒径を算出する。
二値化処理では、cBN粒子の外周が画像処理ソフトウェア処理において明確に検知できるような閾値であればどのような値を設定してもよい。
【0021】
すなわち、二値化処理後の処理は以下のとおりに行うことが好ましい。
<1>二値化処理後はcBN粒同士が接触していると考えられる部分を切り離すような処理、例えば、ウォーターシェッド(watershed)画像処理を用いて接触していると思われるcBN粒同士を分離する。
<2>そして、各cBN粒子の最大フェレ径を求め、それぞれのcBN粒子の直径とする。
【0022】
<3>各cBN粒子をこの直径を有する理想球体と仮定し、各粒子の体積を基に累積体積を求め、この累積体積を基に縦軸を体積百分率(%)、横軸を直径(nm)としてグラフを描画させ、体積百分率が50%のときの直径を、その画像におけるcBN粒子の平均粒径とする。
これを任意の3以上の観察領域に対して行い、その平均値をcBN粒子の平均粒径(nm、この平均粒径をD50という)とする。
【0023】
この粒子解析を行う際には、あらかじめSEMにより分かっているスケールの値を用いて、1ピクセル当たりの長さ(nm)を設定しておく。一つの観察領域の大きさとして、cBN粒子が観察領域の中に少なくとも30個以上観察される大きさが好ましい。
なお、二値化処理、ウォーターシェッド画像処理、最大フェレ径の測定は同一の画像処理ソフトウェアで行ってもよいし、それぞれ、別の画像ソフトウェアで行ってもよい。使用する画像処理ソフトウェアは特段の制約はないが、例えば、Image Jが使用できる。
【0024】
(2)含有量
cBN粒子の含有量は特に限定されるものではないが、cBN焼結体の表面または断面において40面積%以上、78面積%以下が好ましい。その理由は、40面積%未満では、焼結体中にcBN粒子が少なく、切削工具用の工具基体として使用した場合に、耐欠損性が低下することがあり、一方、78面積%を超えると、焼結体中にクラックの起点となる空隙が生成し、耐欠損性が低下することがあるためである。cBN粒子の含有量は50面積%以上、75面積%以下がより好ましい。
【0025】
cBNの含有量は次のようにして求める。
cBN粒子の平均粒径を求めるときと同様に、cBN焼結体の鏡面加工した表面または断面をSEMによって倍率5000倍で観察し、得られた観察領域内のcBN粒子の部分を画像処理ソフトウェアの二値化処理によって抽出し、二値化処理後はcBN粒同士が接触していると考えられる部分を切り離すような処理、例えば、ウォーターシェッド(watershed)画像処理を用いて接触していると思われるcBN粒同士を分離してから、cBN粒子が占める面積を算出し、観察領域にcBN粒子が占める面積割合を求め、これを任意の3以上の観察領域に対して行い、各観察領域で求めた値の平均値をcBN粒子の含有量とする。なお、観察領域の大きさは、cBN粒子の平均粒径を求めるときと同じ大きさが好ましく、cBN粒子の平均粒径を求める観察領域と同じであってもよい。なお、cBNが占める面積割合も画像処理ソフトウェアで求めることができ、二値化処理、ウォーターシェッド画像処理、最大フェレ径の測定、と同一の画像処理ソフトウェアで行ってもよいし、別のソフトウェアで行ってもよい。
【0026】
(3)輪郭線、輪郭近似線、および、輪郭線と輪郭近似線により形成される凹凸部
(3-1)輪郭線
cBN粒子の平均粒径を求めたときと同様に、SEMによりcBN焼結体を観察し、cBN粒子の外周が明確に見える倍率(例えば、倍率:2万倍)の観察画像を得る。次に、得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理ソフトウェアにより二値化処理にて抽出する。抽出のために使用する画像処理ソフトウェアは特段の制約はない。
【0027】
そして、
図2に示すように、画像内の複数のcBN粒子のそれぞれに対して、cBN粒子の全体を包含するX-Y座標を設定する。このとき、X軸は最大フェレ径と平行とし、X軸方向に間隔d(dは4.5nm以上、6.5nm以下の任意の値)でcBN粒子の外周の全周にわたって、その外周の座標を測定する。ただし、同じX座標に対して、最大フェレ径の上側と下側に外周が存在するので、座標の測定は最大フェレ径の上側と下側の両方に対して行う(最大フェレ径の上側の座標を(x
i、yu
i)、最大フェレ径の下側の座標を(x
i、yl
i)とする。ただし、i=1~n、n=[最大フェレ径/d]、[ ]はガウスの記号であり、dは、隣接するx
j+1とx
jとの間隔、x
j+1-x
j=dである)。
最大フェレ径の上側、下側のそれぞれで、隣接する座標同士を直線で結び輪郭線を画定する。
【0028】
(3-2)輪郭近似線
輪郭近似線は、前記(3-1)で求めたcBN粒子の外周の座標を次のように平均化したものである。
平均値を求めるcBN粒子の外周の座標と、その座標を原点としてX軸の負方向および正方向にそれぞれ25点、合計51点の輪郭線の座標を平均化して、輪郭近似線の座標とする。
すなわち、最大フェレ径の上側の輪郭近似線の座標を(Pj、Qj)、最大フェレ径の下側の輪郭近似線の座標を(Rj、Sj)(j=26~n-25、nは[最大フェレ径/d])としたとき、
(Pj、Qj)=((xj-25+xj-24+・・・+xj+・・・+xj+24+xj+25)/51、(yuj-25+yuj-24+・・・+yuj+・・・+yuj+24+yuj+25)/51)
(Rj、Sj)=((xj-25+xj-24+・・・+xj+・・・+xj+24+xj+25)/51、(ylj-25+ylj-24+・・・+ylj+・・・+ylj+24+ylj+25)/51)
とする。
【0029】
そして、隣接する(P
j、Q
j)と(P
j+1、Q
j+1)、(R
j、S
j)と(R
j+1、S
j+1)をそれぞれ直線で結んで、輪郭近似線を作成する。
なお、jの値がとる範囲から明らかなように、X軸がフェレ径の端部とそれぞれ交わる点からcBN粒子の内部に向かう、それぞれ25の輪郭線の座標に対して輪郭近似線は定義されない。
ここで、
図3は、前述の座標(x
i、yu
i)と座標(P
j、Q
j)を示した模式図であり、
図3中の「||」は、
図3が当該箇所で切断されていることを示している。
【0030】
この輪郭近似線が定義されない座標は、輪郭線と輪郭近似線の一例を模式的に示す
図2の部分拡大図である
図4に示されている。なお、
図2~4において結合相粒子の図示は省略している。
【0031】
(3-3)輪郭線と輪郭近似線により形成される凹凸部
(3-3-1)定義
図2~4から明らかなように、cBN粒子(1)はその周囲が結合相粒子(2)の集合体である結合相と界面を形成する。cBN粒子の周囲の特定の形状の凹凸部がもたらすアンカー効果により、cBN粒子と結合相は強固に結合される。
【0032】
この特定の形状の凹部と凸部とは、cBN粒子の輪郭線(4)と輪郭近似線(5)により形成する凹凸部(6)のことである。フェレ径に対して上側と下側の両方にある凹凸部(6)の面積(以下、凹凸部面積ということがある)の和を輪郭近似線(5)の長さの和(フェレ径に対して上側と下側の両方)で割った平均粗さ、すなわち、「輪郭線と輪郭近似線が形成する各凹凸部の平均粗さ」(平均粗さの詳細は後述する)が13nm以上、28nm以下を満たし、この平均粗さを満足するcBN粒子の面積の和が全てのcBN粒子の面積に占める割合が45%以上、90%以下であることが好ましい。
【0033】
前記各凹凸部の平均粗さが、13nm未満の場合には、cBN粒子と結合相との間でアンカー効果をもたらす凸部と凹部の量が不足し、靭性向上が向上しない。一方、28nmを超えると凹部がcBN粒子内にクラックを生じさせるノッチとして振る舞い切削工具の工具基体として使用したときに耐欠損性が低下する。
【0034】
また、前記各凹凸部の平均粗さが前記範囲を満足するcBN粒子が焼結体中の全てのcBN粒子全体に占める割合が45面積%未満のときは、アンカー効果により靭性向上させるcBN粒子の比率が低くなって、靭性が向上しない。一方、90面積%を超えると、cBN粒子と結合相との間の反応、すなわち、cBNが分解してTiB2とAlNが生じ、このTiB2とAlNが過多になり耐欠損性が低下する。
【0035】
また、前記各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して50%以上、90%以下であることがより好ましい(60%以上、70%以下がより一層好ましい)。
【0036】
さらに、前記各凹凸部の平均粗さが15nm以上、25nm以下であるcBN粒子の面積の和が、全てのcBN粒子の面積に占める割合が45%以上、70%以下であることがより好ましい(50%以上、70%以下がより一層好ましい)。
【0037】
加えて、前記各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して50%以上、90%以下(60%以上、70%以下がより一層好ましい)、かつ、前記各凹凸部の平均粗さが15nm以上、25nm以下であるcBN粒子の面積の和が、全てのcBN粒子の面積に占める割合が45%以上、70%以下(50%以上、70%以下がより一層好ましい)であることがより一層好ましい。
【0038】
(3-3-2)凹凸部面積の測定とその平均粗さ
cBN含有量を求める方法と同様に、cBN焼結体の表面または断面の組織をSEMによって観察し、得られた観察画像内のcBN粒子の部分を任意の画像処理ソフトウェアの二値化処理によって抜き出し、フェレ径の上側および下側で輪郭線と輪郭近似線が形成する凹凸部の合計個数(m)が15個以上であるcBN粒子について、cBN粒子の輪郭線と輪郭近似線により形成される凹凸部の面積の和を輪郭近似線の長さで割った値を平均粗さとする。ここで、前記輪郭近似線の長さとは前記隣接する(Pj、Qj)と(Pj+1、Qj+1)、(Rj、Sj)と(Rj+1、Sj+1)の座標間の直線距離の総和である(j=26~n-25、n=[最大フェレ径/d])。平均粗さが、13nm以上、28nm以下(または、15nm以上、25nm以下)となるcBN粒子の面積の合計が、観察領域内にある全てのcBN粒子の面積の合計に占める割合を求める。ここで、前記観察領域は、cBN粒子が60個以上含まれるようにその大きさを設定する。この割合をcBN焼結体の全てのcBN粒子に対する割合と扱う。
【0039】
ここで、各凹凸部面積は、例えば、モンテカルロ法などの公知の手段により求めることができる。
前記凹凸部の合計個数(m)が15個未満であるcBN粒子は、凹凸部の合計個数が十分でなく前記平均粗さの誤差が大きくなるため、平均粗さの算出には用いない。なお、後述する製造法の一例に従えば、前記観察領域において、このmが15個未満のcBN粒子は、5%以下と少なく、平均粗さの算出に当たって除外してもその結果に影響を与えない。
【0040】
2.結合相
(1)結合相粒子の平均粒径
結合相は、粒子状の結合相粒子の集合体であって、結合相粒子の平均粒径は、100nm以上、230nm以下が好ましい。その理由は、100nm未満であると、結合相中の熱伝導率が低下し、耐摩耗性が低下し、一方、230nmを超えると、焼結時に焼結体内にポアが残りやすくなり、耐欠損性が低下するためである。結合相粒子の平均粒径は、130nm以上、200nm以下がより好ましい。
【0041】
結合相粒子の平均粒径は次のように求める。
cBN粒子の平均粒径を求める場合と同様に、cBN焼結体の表面または断面をSEMによって観察し、結合相粒子が明確に見える倍率(例えば、倍率:5万倍)の観察画像にて、結合相粒子の明度が変化する境界を結合相粒子の粒界とし、この粒界を使用するソフトウェアが明確に検知できるように画像処理ソフトウェアの二値化処理を行って粒界を抽出し、各結合相粒子の最大フェレ径をそれぞれの結合相粒子の直径とする。結合相粒子の直径を求めるために使用する画像処理ソフトウェアは特段の制約はないが、例えば、Image Jが使用できる。
【0042】
各結合相粒子をこの直径を有する理想球体と仮定し、計算より算出される各粒子の体積を基に累積体積を求め、この累積体積を基に縦軸を体積百分率(%)、横軸を直径(nm)としてグラフを描画させ、体積百分率が50%のときの直径を、その画像における結合相粒子の平均粒径とする。これを任意の3以上の観察領域に対して行い、その平均値を結合相粒子の平均粒径(nm、この平均粒径をD50という)とする。
この結合相粒子の平均粒径を測定するに当たって、あらかじめSEMにより分かっているスケールの値を用いて、1ピクセル当たりの長さ(nm)を設定しておく。観察領域として、結合相粒子が観察領域の中に少なくとも30個以上観察される領域が好ましい。
【0043】
(2)成分組成
結合相の主成分は、結合相の材料として公知の原料粉末、例えば、TiN粉末、TiC粉末、TiCN粉末、TiAl3粉末を用いて作製することができる。
【0044】
ただし、結合相にはAlN、Al2O3、AlB2などのAl化合物が含まれていることが好ましく、その占有面積の割合はcBN焼結体全体に対して1面積%以上、12面積%以下が好ましい。その理由は、1面積%未満では、cBN粒子と結合相との間の反応が不足するため、靭性が低下し、一方、12面積%を超えると、硬さが小さいAl化合物の生成が過多になり切削工具の工具基体として使用したときに耐欠損性が低下するためである。なお、Al化合物は結合相粒子とはその粒界を隔てて存在する。
【0045】
cBN焼結体に占めるAl化合物の占有面積の割合は、cBN焼結体の表面または断面の組織をオージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:以下、AESという)により分析され得られるAl元素マッピング像より算出し求める。観察した1画像において、Al元素とAl以外の元素が重なる部分をAl化合物として任意の画像処理ソフトウェアを使った画像処理にて抽出し、画像解析によってAl化合物が観察領域に占める面積を算出し、面積割合を求める。これを任意の3以上の観察領域に対して行い、算出した各Al化合物の面積割合の平均値をcBN焼結体に占めるAl化合物の占有面積として求める。画像処理に用いる観察領域として、5.0×103nm×3.0×103nm程度の大きさを例示できる。
【0046】
3.製造方法
本発明の実施形態に係るcBN焼結体を作製するための手順の一例に示す。
以下の手順では、粒度調整粉砕粉の平均粒径、粒度調整粉砕粉と粗粒原料粉の合計質量に対し粒度調整粉砕粉の質量の占める割合を所定値とすることが重要である。
【0047】
(1)結合相を構成する成分の原料粉末の準備
結合相の主要部となる原料として、TiN粉末、TiC粉末、TiCN粉末、TiAl3粉末を用意する。これらの粉末は粒度調整粉砕粉、粗粒原料粉として使用する。
【0048】
(2)粒度調整粉砕粉
原料粉末の内、TiN粉末、TiC粉末、TiCN粉末のいずれか1種以上とTiAl3粉末を、超硬合金で内張りされたボールミル容器内に超硬合金製ボールとアセトンと共に充填し、粉砕を行った後、混合したスラリーを乾燥させて遠心分離装置を用いて粉砕後の粉末を分級する。このボールミルによる粉砕後の分級により、平均粒径(メディアン径D50)が50~100nmである粒度調整粉砕粉を得ることが好ましい。
【0049】
(3)一次粉砕・混合
前記で用意した粒度調整粉砕粉と、所定平均粒径のcBN粉末を共に、超硬合金で内張りされたボールミル容器内に超硬合金製ボールとアセトンと共に充填し、ボールミルによる粉砕および混合を行い、乾燥させて熱処理前粉を得る。粒度調整粉砕粉の含有量(質量%)=(粒度調整粉砕粉の質量)/(粒度調整粉砕粉の質量+粗粒原料粉の質量)×100が50~100%であることが好ましい。
【0050】
(4)熱処理
前記で用意した熱処理前粉を、所定圧力で成形して成形体を作製し、この成形体を、真空雰囲気中で熱処理し、熱処理体を得る。得られた熱処理体をアルミナ乳鉢で砕き、熱処理後粉を得る。
【0051】
(5)二次粉砕・混合
前記で用意した熱処理後粉に、粒度調整粉砕粉と組成が同じの別途用意した粗粒原料粉を加え、超硬合金で内張りされたボールミル容器内に超硬合金製ボールとアセトンと共に充填し、ボールミルによる粉砕および混合を行い、乾燥させて焼結体原料粉を得る。
【0052】
(6)成形、焼結
次いで、前記で得られた焼結体原料粉を、所定圧力で成形して成形体を作製し、この成形体を、真空雰囲気中で仮焼結し、その後、例えば、圧力:4GPa、温度:1200~1600℃の範囲内の温度で焼結することにより、本発明の一実施形態のcBN焼結体を作製する。
【0053】
なお、前記焼結に至るまでの各工程では、原料粉末の酸化を防止すべく、非酸化性の保護雰囲気中での取り扱いを実施することが好ましい。
【0054】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
(付記1)
cBN粒子と結合相を有するcBN焼結体であって、
前記cBN粒子の平均粒径が1000nm以上、6000nm以下であり、
前記焼結体の表面または断面において、その輪郭線と輪郭近似線が形成する各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して45%以上、90%以下であり、
前記結合相は、その平均粒径が100nm以上、230nm以下の結合相粒子の集合体であり、またAl化合物を含み、Al化合物は前記cBN焼結体の全体に対し1面積%以上、12面積%以下である
ことを特徴とするcBN焼結体。
(付記2)
前記各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して50%以上、90%以下であることを特徴とする付記1に記載のcBN焼結体。
(付記3)
前記各凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して60%以上、70%以下であることを特徴とする付記1または2に記載のcBN焼結体。
(付記4)
前記各凹凸部の平均粗さが15nm以上、25nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して45%以上、70%以下であることを特徴とする付記1~3のいずれかに記載のcBN焼結体。
(付記5)
前記各凹凸部の平均粗さが15nm以上、25nm以下である前記cBN粒子の面積の和が、前記焼結体中の全ての前記cBN粒子全体の面積に対して50%以上、70%以下であることを特徴とする付記1~4のいずれかに記載のcBN焼結体。
(付記6)
前記結合相粒子の平均粒径が130nm以上、200nm以下であることを特徴とする付記1~5のいずれかに記載のcBN焼結体。
(付記7)
前記cBN粒子の含有量が50面積%以上、75面積%以下である付記1~6のいずれかに記載のcBN焼結体。
(付記8)
付記1~7のいずれかに記載のcBN焼結体を工具基体とする切削工具。
【実施例】
【0055】
次に、実施例について説明する。
【0056】
TiN粉末とTiAl3粉末を用意し、ボールミルにてそれぞれの粉末に粉砕処理を施した後、遠心分離法を用いて分級し、表1に示す平均粒径範囲が50~100nmの粒度調整粉砕粉を準備した。
【0057】
次に、硬質相用原料として、cBN粉末を粒度調整粉砕粉と配合し、湿式混合し、乾燥し得た粉体を成形圧1MPaで直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法にプレス成形した。次いで、この成形体を、圧力:1Pa以下の真空雰囲気中、1200℃に保持して熱処理した。得られた熱処理体をアルミナ乳鉢で砕いて熱処理後粉を得た。そして、別途用意したTiNとTiAl3のそれぞれの平均粒径範囲が540~580nmの表1に示す粗粒原料粉を、表1に示す割合(質量%)(100-粒度調整粉砕粉の含有量(質量%))となるように熱処理後粉に配合し、アセトンを加え24時間湿式混合し、乾燥し焼結体原料粉を得た。TiNとTiAl3粉末との質量比は、粗粒原料粉と粒度調整粉砕粉とで同じにした。
【0058】
続いて、得られた焼結体原料粉を、成形圧1MPaで直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法にプレス成形し、ついでこの成形体を、圧力:1Pa以下の真空雰囲気中、1000℃に保持して仮焼結し、その後、超高圧焼結装置に装入して、圧力:4GPa、温度:1400℃と表1に示す焼結時間で焼結することにより、表2に示す実施例焼結体1~8を作製した。
【0059】
なお、上記実施例焼結体の作製工程では、超高圧焼結までの工程において原料粉末の酸化を防止することが好ましいため、非酸化性の雰囲気中で実施した。
【0060】
比較のため、TiN粉末、TiAl3粉末の原料粉末を用意し、表1に示すように、これらを所定の質量比で混合し、実施例と同様にボールミルを用いて粉砕し、比較例のcBN焼結体作製用の粒度調整粉砕粉を用意した。次いで、cBN粉末を配合し、実施例と同様に湿式混合し、乾燥し得た熱処理前粉を成形し、真空雰囲気中で熱処理した。次いで、熱処理体をアルミナ乳鉢で砕いた熱処理後粉に、別途用意したTiNとTiAl3の表1に示す平均粒径の粗粒原料粉を実施例と同様に表1に示す割合(100-粒度調整粉砕粉の質量%)となるように配合し、本発明焼結体1~8の作製と同様の手順で、表2に示す以下、比較例焼結体1~9を作製した。なお、比較例焼結体の作製は、実施例焼結体の作製と同様に非酸化性雰囲気で行った。
【0061】
ここで、これら実施例焼結体1~8および比較例焼結体1~9について、cBN粒子の抽出(粒径の測定および輪郭線の画定)は画像処理ソフトウェアとしてImage J(バージョン1.44p)を使用して、SEMで得られた二次電子像に対し、minimum法による自動二値化処理を行い、粒径の測定、面積割合の算出および輪郭線の画定の一連の作業をした。なお、輪郭線、輪郭近似線を求めるときの間隔dは5.5nmとした。
【0062】
結合相粒子の抽出、粒径の測定も、同様にImage J(バージョン1.44p)を使用し行った。すなわち、SEMで得られた二次電子像に対し、Find Edge処理により結合相粒子の粒界を検出し、Huang法による自動二値化処理を行い、粒径を測定した。
また、凹凸部の面積はモンテカルロ法で求めた。
【0063】
表2において、「凹凸部面積を測定したcBN粒子数」とは、SEMによりcBN焼結体を観察し得られた、倍率2万倍の二次電子像画像の観察領域中で、外周が明確に見え凹凸部面積を測定できたcBN粒子の個数を示している。凹凸部の合計個数であるmが15個未満のcBN粒子の割合はcBN粒子全体に対し5%未満であったため、評価からは除外した。また、「面積割合1(%)」とは、凹凸部面積を測定したcBN粒子の凹凸部の平均粗さが13nm以上、28nm以下の範囲にあるcBN粒子の面積の和が全てのcBN粒子の面積和に占める割合を、「面積割合2(%)」とは、前記平均粗さが15nm以上、25nm以下の範囲にあるcBN粒子の面積和が全てのcBN粒子の面積和に占める割合をそれぞれ示している。各実施例焼結体と各比較例焼結体の観察領域の大きさは、それぞれ、表3に記載したとおりであった。
【0064】
Al化合物の含有量は、AES分光法により分析され得られるAl元素マッピング像より算出し求めた。観察画像において、Al元素とAl以外の元素が重なる部分をAl化合物として、Image J(バージョン1.44p)を用いて画像処理にて抽出し、画像解析によってAl化合物が観察領域に占める面積を算出し、面積割合を求めた。これを任意の3以上の観察領域に対して行い、算出した各Al化合物の面積割合の平均値をcBN焼結体に占めるAl化合物の含有量として求めた。観察領域の大きさは(5.0×103nm)×(3.8×103nm)とした。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
前記で作製した実施例焼結体1~8、比較例焼結体1~9を、ワイヤー放電加工機で所定寸法に切断した。ISO規格CNGA120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製(組成 Co:5質量%、TaC:5質量%、WCと不可避的不純物:残部)インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、ろう付け(ろう材の組成 Cu:26質量%、Ti:5質量%、Agと不可避的不純物:残部)し、上下面および外周研磨、ホーニング処理を施すことにより、それぞれ、ISO規格CNGA120408のインサート形状をもつ実施例切削工具1~8、および、比較例切削工具1~9を製造した。
【0069】
次いで、実施例切削工具1~8と比較例切削工具1~9に対して、以下の切削条件で乾式切削加工試験を実施した。
【0070】
<切削条件>
被削材:浸炭焼き入れ鋼(JIS・SCM415、硬さ:HRC58~62)の長さ方向等間隔8本縦溝入り丸棒
切削速度:200m/min
切り込み:0.1mm
送り:0.1mm/rev
各工具の刃先を、断続回数1000回毎に光学顕微鏡(倍率200倍)で観察し、チッピングまたは欠損の発生を確認しチッピングあるいは欠損に至るまでの断続回数を工具寿命とした。
表4に、前記乾式切削加工試験の結果を示す。
【0071】
【0072】
表4に示される結果から、実施例切削工具は、いずれも、比較例切削工具のいずれに比しても、突発的な刃先の欠損、チッピングが発生することなく、断続回数が高く工具寿命が格段に長くなっており、靱性が向上したことがわかる。
【0073】
前記開示した実施の形態は全ての点で例示にすぎず、制限的なものではない。本発明の範囲は前記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 cBN粒子
2 結合相粒子
3 Al化合物
4 輪郭線
5 輪郭近似線
6 輪郭線と輪郭近似線により形成される凹凸部
7 最大フェレ径