(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-12
(45)【発行日】2025-11-20
(54)【発明の名称】浮体式水中塔型構造物の設置方法
(51)【国際特許分類】
B63B 77/10 20200101AFI20251113BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20251113BHJP
F03D 13/40 20160101ALI20251113BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20251113BHJP
【FI】
B63B77/10
B63B35/00 T
F03D13/40
F03D13/25
(21)【出願番号】P 2021186374
(22)【出願日】2021-11-16
【審査請求日】2024-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】廣井 康伸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英明
(72)【発明者】
【氏名】桑原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】保木本 智史
(72)【発明者】
【氏名】横畠 隆広
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/187977(WO,A1)
【文献】特開2014-227765(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108626078(CN,A)
【文献】特表2014-528536(JP,A)
【文献】国際公開第2011/083021(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 77/10,35/00,
F03D 13/25,13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力を有する浮体部と、該浮体部内に収容される安定重量材とを備え、水中に起立した状態で設置される浮体式水中塔型構造物の設置方法において、
前記浮体部に
予め所定の深さ分だけ水中に没した状態で起立する量の前記安定重量材を収容した浮体式水中塔型構造物を横たえた状態で沈降可能な設置用台船上に積載し、該設置用台船を設置位置まで移動させた後、前記設置用台船を水中に沈降させて前記浮体部に浮力を作用させ、前記安定重量材の荷重によって前記浮体式水中塔型構造物を起立動作させるとともに、該起立動作に合わせて前記設置用台船を移動させ、前記設置用台船を起立した前記浮体式水中塔型構造物より離脱させることを特徴とする浮体式水中塔型構造物の設置方法。
【請求項2】
前記設置用台船上に前記浮体式水中塔型構造物を前記設置用台船の甲板に対し上部を斜め上向きに傾けた状態で支持する傾斜支持架台を備えている請求項1に記載の浮体式水中塔型構造物の設置方法。
【請求項3】
前記傾斜支持架台の傾斜角は10度から20度である請求項2に記載の浮体式水中塔型構造物の設置方法。
【請求項4】
前記浮体式水中塔型構造物の下端部を支持する回転式支持台を回動可能に保持する可動架台を前記設置用台船の後端部に設置しておき、
前記回転式支持台が前記浮体式水中塔型構造物の起立動作と連動して回動し、回動する前記浮体式水中塔型構造物が前記可動架台を介して前記設置用台船を押し出す請求項1~3の何れか一に記載の浮体式水中塔型構造物の設置方法。
【請求項5】
横たえた状態で水上に浮かべた前記浮体式水中塔型構造物の下側に水中に沈下させた前記設置用台船を移動させた後、該設置用台船を浮上させて前記設置用台船上に前記浮体式水中塔型構造物を積載し、
しかる後、前記浮体部に
前記安定重量材を収容する請求項1~4の何れか一に記載の浮体式水中塔型構造物の設置方法。
【請求項6】
前記浮体式水中塔型構造物は、前記浮体部を有するベース部と、前記ベース部上に連結される上部構造体を備え、
前記設置用台船上に前記ベース部を積載した後、前記上部構造体を前記ベース部の上端部に連結する請求項1~5の何れか一に記載の浮体式水中塔型構造物の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式洋上風力発電設備等の浮体式水中塔型構造物の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー政策の一環として再生可能エネルギーが注目され、風力発電は、重要な電源確保手段として位置付けられている。
【0003】
特に、洋上風力発電は、陸上に比べて風況が良好であること、居住区域から離れているため騒音等の環境負担が少ないこと等から導入が促進されている。
【0004】
洋上風力発電設備では、一般に、設置水域が外洋等の水深60m以深の場合、浮体部を具備するベース部と、ベース部の上端に連結される風車設備(ナセル・ロータ)を具備する上部構造体とを備え、水中に浮かべたベース部に上部構造体を支持させる浮体式のもの(以下、浮体式水中塔型構造物という)が用いられている。
【0005】
この浮体式水中塔型構造物の設置は、ベース部と上部構造体とを分離した状態で台船等によって設置水域まで運搬し、ベース部を水中に浮かべ、起立させた状態で係留し、しかる後、ベース部の上端に大型起重機船等を用いて吊り上げた上部構造体を接合するようにしていた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、浮体部を具備するベース部と、上部構造体を吊り上げる起重機船とがそれぞれ異なった波浪中動揺特性を持っているため、ベース部と上部構造体とを接合する際、接合面には相対的に大きな動揺量が発生するおそれがあった。
【0008】
そのため、従来の技術では、ベース部と上部構造体とを洋上で接合する際、静穏な気象海象条件が必要であり、複数の風力発電設備を連続設置する場合、静穏な気象海象条件が長く継続することが困難なことから、稼働率が低くなりコスト低減の大きな障壁となっていた。
【0009】
また、ベース部と上部構造体とを予め一体化させておき、それを台船等に横たえた状態で積載して設置海域まで運搬した後、ベース部を進水させて浮体部の浮力を用いて起立させることも考えられる。
【0010】
しかしながら、従来の技術では、浮体式水中塔型構造物を進水させ且つ起立させる作業は、上部構造体に不安定な構造の風車装置が取り付けられているので、安全、且つ、効率的に行うことが困難であるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み洋上風力発電装置等の浮体式水中塔型構造物を、安全、且つ、効率的に設置することができる浮体式水中塔型構造物の設置方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、浮力を有する浮体部と、該浮体部内に収容される安定重量材とを備え、水中に起立した状態で設置される浮体式水中塔型構造物の設置方法において、前記浮体部に予め所定の深さ分だけ水中に没した状態で起立する量の前記安定重量材を収容した浮体式水中塔型構造物を横たえた状態で沈降可能な設置用台船上に積載し、該設置用台船を設置位置まで移動させた後、前記設置用台船を水中に沈降させて前記浮体部に浮力を作用させ、前記安定重量材の荷重によって前記浮体式水中塔型構造物を起立動作させるとともに、該起立動作に合わせて前記設置用台船を移動させ、前記設置用台船を起立した前記浮体式水中塔型構造物より離脱させることにある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記設置用台船上に前記浮体式水中塔型構造物を前記設置用台船の甲板に対し上部を斜め上向きに傾けた状態で支持する傾斜支持架台を備えていることにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記傾斜支持架台の傾斜角は10度から20度であることにある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1~3の何れか一の構成に加え、前記浮体式水中塔型構造物の下端部を支持する回転式支持台を回動可能に保持する可動架台を前記設置用台船の後端部に設置しておき、前記回転式支持台が前記浮体式水中塔型構造物の起立動作と連動して回動し、回動する前記浮体式水中塔型構造物が前記可動架台を介して前記設置用台船を押し出すことにある。
【0016】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1~4の何れか一の構成に加え、横たえた状態で水上に浮かべた前記浮体式水中塔型構造物の下側に水中に沈下させた前記設置用台船を移動させた後、該設置用台船を浮上させて前記設置用台船上に前記浮体式水中塔型構造物を積載し、しかる後、前記浮体部に前記安定重量材を収容することにある。
【0017】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1~5の何れか一の構成に加え、前記浮体式水中塔型構造物は、前記浮体部を有するベース部と、前記ベース部上に連結される上部構造体を備え、前記設置用台船上に前記ベース部を積載した後、前記上部構造体を前記ベース部の上端部に連結することにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る浮体式水中塔型構造物の設置方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、浮体部の復原力を利用して浮体式水中塔型構造物の進水及び起立動作を行い、浮体式水中塔型構造物を安全且つ効率的に設置することができる。
【0019】
また、本発明において、請求項2乃至3に記載の構成を具備することによって、浮体式水中塔型構造物の起立動作を円滑に行うことができる。
【0020】
さらに、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、浮体式水中塔型構造物の起立動作を利用して好適に設置用台船を離脱させることができる。
【0021】
さらに、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、浮体式水中塔型構造物及び設置用台船の機能を利用して効率よく浮体式水中塔型構造物を設置用台船に積み込むことができる。
【0022】
さらに、本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、浮体式洋上風力発電装置のように、上部構造体に不安定な構造の風車装置が取り付けられた上部構造体を静穏な水域で安全、且つ、効率的に接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る浮体式水中塔型構造物の設置方法に使用する設置用台船を示す側面図である。
【
図3】同上の可動架台を示す縦断面図であって、(a)は浮体式水中塔型構造物が積載された状態、(b)は本体部及び支持アームが立ち上がった状態、(c)は支持アームがさらに立ち上がった状態を示す図である。
【
図4】本発明に係る浮体式水中塔型構造物の設置方法におけるベース部積載作業開始時の状態を示す側面図である。
【
図5】同上の浮体式水中塔型構造物を積載した状態を示す側面図である。
【
図6】同上の上部構造体接合作業の状態を示す側面図である。
【
図7】同上の浮体式水中塔型構造物を輸送する際の状態を示す側面図である。
【
図8】同上の設置用台船沈降作業により浮体式水中塔型構造物の起立動作が始まった際の状態を示す側面図である。
【
図9】同上の設置用台船沈降作業が進んだ際の状態を示す側面図である。
【
図10】同上の浮体式水中塔型構造物の起立作業の状態を示す側面図である。
【
図11】同上の浮体式水中塔型構造物が設置された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る浮体式水中塔型構造物の設置方法の実施態様を
図1~
図11に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は浮体式水中塔型構造物Aの設置に使用する設置用台船である。
【0025】
設置用台船1は、
図1、
図2に示すように、上面部に甲板2aを有する台船本体2と、台船本体2の甲板2a上に設置された複数のコラム3,3…と、一のコラム3の上部に設置されたクレーン4とを備え、甲板2a上に浮体式水中塔型構造物Aが搭載されるようになっている。
【0026】
台船本体2及び各コラム3,3…は、バラスト水の注排水ができるようになっており、バラスト水によって浮力を調節し、台船本体2が所定の水深まで沈降できるようになっている。
【0027】
台船本体2は、平面視矩形状に形成され、船底部にスラスタ5,5…を備え、スラスタ5,5…の推進力によって水上及び水中で移動できるようになっている。
【0028】
この台船本体2は、甲板2a中央部に傾斜支持架台6を備え、浮体式水中塔型構造物Aを斜めに傾けた状態で載置できるようになっている。
【0029】
傾斜支持架台6は、高さの異なる複数の支持部材7,7…によって構成され、複数の支持部材7,7…が間隔をおいて高さ順に配置され、各支持部材7,7…に跨って浮体式水中塔型構造物Aが上端部を上方に傾けた状態で支持されるようになっている。
【0030】
各支持部材7,7…は、同じ角度で傾いた凹部7aが上面部に設けられ、各凹部7aが所定の傾斜角で連続するように配置され、各支持部材7,7…の凹部7aに浮体式水中塔型構造物Aが嵌まり込んだ状態で支持されるようになっている。尚、傾斜支持架台6の傾斜角は、10度から20度であることが好ましい。
【0031】
傾斜支持架台6は、傾斜角が大きすぎると曳航中に傾斜架台6上を滑動する虞があり、傾斜角が小さすぎると浮体式水中塔型構造物Aの上部構造体12が運搬中に水に接触する虞があるので、傾斜支持架台6に支持される浮体式水中塔型構造物Aの重量及びサイズに基づき上部構造体12の水面からの位置を勘案して傾斜支持架台6の傾斜角を決定することが望ましい。
【0032】
また、台船本体2の後端部には、
図2、
図3に示すように、進水用凹部8が形成され、進水用凹部8の内側に支持された基台9と、基台9に回動可能に保持された回転式支持台10,10とを備えてなる可動架台が設置され、回転式支持台10,10に浮体式水中塔型構造物Aの下端部が支持されるようになっている。
【0033】
基台9は、船尾側に向けて下向きに傾いた傾斜部を備え、傾斜部の上面に船幅方向に向けた円弧溝状の軸受け溝9aが形成され、軸受け溝9aに回転式支持台10,10の下面に突設された円弧状の軸用凸部10aが嵌合され、回転式支持台10,10が基台9上でシーソー状に回動するようになっている。
【0034】
回転式支持台10,10は、基台9に回動可能に支持された本体部10bと、本体部10bの船尾側先端部に回動軸10cを介して回動可能に支持された支持アーム10dとを備え、回転式支持台10に支持された浮体式水中塔型構造物Aの起立動作に連動して本体部10bと支持アーム10dとが段階的に立ち上がる構造となっている。
【0035】
次に、上述した設置用台船1を使用した浮体式水中塔型構造物Aの設置方法の具体的態様を
図4~
図11に示す実施例に基づいて説明する。尚、本実施例では、浮体式水中塔型構造物Aとして浮体式洋上風力発電装置を例に説明し、図中符号Aは浮体式水中塔型構造物である。
【0036】
浮体式水中塔型構造物Aは、浮体部を有するベース部11と、ベース部11上に連結される風車設備(ナセル・ロータ)を具備する上部構造体12とを備え、設置後は、水中に浮かべたベース部11に上部構造体12が支持されるようになっている。
【0037】
ベース部11は、有底中空状の浮体部と一体化した構造を具備し、浮体部内に隔壁で隔てられた隔室(バラスト室ともいう)(図示せず)が設けられ、隔室内にバラスト材等の安定重量材13を収容でき、隔室内に安定重量材13を収容しない状態では横たえた状態で水上に浮かべられ、隔室内に安定重量材13を収容することにより、所定の深さ分だけ水中に没した状態で起立するようになっている。
【0038】
この浮体式水中塔型構造物Aを設置するには、先ず、ドライドッグ等によってベース部11を製作した後、このベース部11をドック内への注水により水面に浮いた状態にして進水させ、しかる後、浮体式水中塔型構造物Aの積込み・組立て水域14まで曳航する。
【0039】
その際、ベース部11の隔室内には安定重量材13は収納されておらず、ベース部11は横たえた状態で水上に浮かんでいる。
【0040】
一方、設置用台船1は、浮体式水中塔型構造物Aの積込み・組立て水域14において所定の深さまで沈降させた状態で待機し、
図4に示すように、曳航されたベース部11を沈降したコラム3,3…間に引き込み、台船本体2上まで移動させる。
【0041】
そして、水上に浮かぶベース部11と水中に沈降した設置用台船1との相対位置を調整した後、
図5に示すように、台船本体2及びコラム3,3…のバラスト水を排水して設置用台船1を上昇させ、傾斜支持架台6にベース部11を甲板2aに対し上部を斜め上向きに傾けた状態で支持させるとともに、ベース部11の下端部を回転式支持台10,10に支持させ、設置用台船1にベース部11を積載する。尚、傾斜支持架台6に支持されたベース部11若しくは浮体式水中塔型構造物Aは、自重で安定して傾斜支持架台6上に載荷されるが、念のため捕縛するようにしてもよい。
【0042】
次に、ベース部11が積載された設置用台船1を上部構造体12が配備された港湾内等の静穏な水域にある所定の岸壁15に接岸させた後に係留し、ベース部11が積載された設置用台船1を安定させ、ベース部11が斜め上向きに傾けられた状態でベース部11の隔室内に設計数量のバラスト材等の安定重量材13を投入して収容させる。
【0043】
そして、
図6に示すように、岸壁15より設置用台船1のクレーン4で上部構造体12を吊り上げ、上部構造体12の下端を設置用台船1に積載されたベース部11の上端に連結し、浮体式水中塔型構造物Aである洋上風力発電装置を組み立てる。
【0044】
その際、設置用台船1に積載されたベース部11に設置用台船1のクレーン4で吊り上げた上部構造体12を連結するので、安定した状態で連結作業を行うことができる。
【0045】
次に、
図7に示すように、浮体式水中塔型構造物Aを積載した設置用台船1を浮上した状態で曳航し、設置水域16まで移動させる。
【0046】
その際、浮体式水中塔型構造物Aが斜めに傾けた状態で設置用台船1に積載され、ベース部11内の下方隔室内に安定重量材13が位置しているので、安定した状態で移動させることができるとともに、上部構造体12である風車設備(ナセル・ロータ)が水面より距離をとった状態で保持することができる。
【0047】
設置用台船1が設置水域16に到着したら、スラスタ5,5…で所定の位置に位置決めし、
図8に示すように、台船本体2及びコラム3,3…にバラスト水の注水を開始し、毎時1~2m前後の速度で設置用台船1を沈降させる。
【0048】
その際、浮体式水中塔型構造物Aが傾斜支持架台6を介して斜めに傾けた状態で設置用台船1に積載されているので、浮体式水中塔型構造物Aは、浮体部を有するベース部11内の安定重量材13が位置する下端部から進水する。
【0049】
水面が甲板2aより上になる位置まで設置用台船1が沈降すると、浮体部を有するベース部11に徐々に浮力が発生し、浮力が浮体式水中塔型構造物Aの自重を上回ると浮体式水中塔型構造物Aが浮遊状態となる。
【0050】
一方、ベース部11内の下方に安定重量材13が収容されているので、安定重量材13の荷重によって浮体式水中塔型構造物Aの下端側が水中に沈み込もうとし、下端側を中心に浮体式水中塔型構造物A全体が自身の復原力によって起立動作を開始する。
【0051】
尚、浮体式水中塔型構造物Aが10~20度の傾斜角で斜めに傾けた状態で設置用台船1に積載されているので、浮力に対し安定重量材13による下向き荷重を好適に作用させることができ、円滑に起立動作を開始することができる。
【0052】
起立動作を開始すると、
図9~
図10に示すように、
安定重量材13による下向き荷重によって浮体式水中塔型構造物Aの下端部が回動しつつ回転式支持台10,10側に押し付けられ、回転式支持台10,10を介して設置用台船1を前方に押し出し、起立動作に合わせて設置用台船1を移動させる。
【0053】
その際、起立動作に伴い浮体式水中塔型構造物Aが徐々に立ち上がると、それに併せて回転式支持台10,10の本体部10b及び支持アーム10dが段階的に回動して立ち上がり、浮体式水中塔型構造物Aの起立動作に伴う回転モーメントが設置用台船1を前方に押し出す力に変換され、設置用台船1を前方、即ち、浮体式水中塔型構造物Aから離脱する方向に押し出す。尚、浮体式水中塔型構造物Aから本体部10b及び支持アーム10dへの力の伝達がされやすいように本体部10b及び支持アーム10dの上面(浮体式水中塔型構造物Aとの接触面)に低摩擦材を貼り付けておいてもよい。
【0054】
尚、設置用台船1は、浮体式水中塔型構造物Aの起立動作に伴う押し出しに加え、スラスタ5,5…による推進力を用いて前進させるようにしてもよい。その際、対象とする浮体式塔型構造体物Aのサイズや設置海域の海象条件等によって、前進させる距離が異なるので、スラスタ5,5…の制御は、水槽実験等の再現実験により、浮体式水中塔型構造物の起立動作における挙動と設置用台船1の挙動を把握し、その結果に基づいて行うことが望ましい。
【0055】
尚、浮体式水中塔型構造物Aの起立動作が速く波浪中の船の動揺の影響が大きくない時には、スラスタ5,5…の制御は行わなくてもよい。
【0056】
そして、
図11に示すように、浮体式水中塔型構造物Aが完全に起立すると、浮体式水中塔型構造物Aによって設置用台船1が前方に押し出され、浮体式水中塔型構造物Aから設置用台船1が離脱し、更に、設置用台船1をスラスタ5,5…の推進力又は曳航によって安全な位置まで移動させる。
【0057】
そして、起立した状態の浮体式水中塔型構造物Aを必要に応じて位置を補正したうえで係留等によって安定させ、設置作業が完了する。
【0058】
一方、設置用台船1は、浮体式水中塔型構造物Aより十分に離れた安全な位置で台船本体2及びコラム3,3…からバラスト水を排水させて浮上させ、浮上した状態で帰港させる。
【0059】
このように構成された浮体式水中塔型構造物Aの設置方法では、安定重量材13と浮体部との復原力を利用して浮体式水中塔型構造物Aの進水及び起立動作を行い、上部構造体12に不安定な構造の風車装置が取り付けられている場合であっても、安全、且つ、効率的に設置することができる。
【0060】
よって、本発明では、浮体式洋上風力発電装置のように、不安定な構造の風車装置が取り付けられた上部構造体12を静穏な水域で安全、且つ、効率的にベース部11に接合させることも可能となる。
【0061】
尚、上述の実施例では、浮体式洋上風力発電装置を例に説明したが、浮体式水中塔型構造物Aの態様はこれに限定されず、その他の構造物にも対応することができる。
【0062】
また、上述の実施例では、浮体式水中塔型構造物Aを浮体部を有するベース部11とベース部11に連結される上部構造体12とから構成された場合について説明したが、上下で分離されない一体構造のものであってもよい。
【0063】
また、浮体式水中塔型構造物Aの上部構造体12をベース部11に連結させずにベース部11だけを本設置方法で所定の海域で起立させてから上部構造体12をベース部11上に連結させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
A 浮体式水中塔型構造物
1 設置用台船
2 台船本体
3 コラム
4 クレーン
5 スラスタ
6 傾斜支持架台
7 支持部材
8 進水用凹部
9 基台
10 回転式支持台
11 ベース部
12 上部構造体
13 安定重量材
14 積込み・組立て水域
15 岸壁
16 設置水域