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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-12
(45)【発行日】2025-11-20
(54)【発明の名称】総合盤
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20251113BHJP
   G08B 5/00 20060101ALI20251113BHJP
【FI】
G08B17/00 L
G08B5/00 C
G08B17/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022122631
(22)【出願日】2022-08-01
(65)【公開番号】P2024019883
(43)【公開日】2024-02-14
【審査請求日】2024-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】武吉 賢司
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-141644(JP,A)
【文献】特開平06-339144(JP,A)
【文献】特開2020-129300(JP,A)
【文献】特開2000-123263(JP,A)
【文献】米国特許第10810864(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第110064158(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0119998(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0238114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信機と表示灯とを備えた総合盤であって、
前記発信機および前記表示灯の設置面に設けられたディスプレイと、
前記総合盤を監視する火災受信機と相互通信を可能とし、互いに離れた場所にいる前記火災受信機の操作者と点検作業者との間で意思疎通を図ることを可能とする通信処理部と
備え、
前記ディスプレイは、前記通信処理部を介して、前記火災受信機の操作者の操作に基づいて前記火災受信機から受信した、アナウンス情報あるいは作業ガイダンス情報を表示する
総合盤。
【請求項2】
前記ディスプレイは、前記通信処理部を介して、前記火災受信機の操作者の操作に基づいて前記火災受信機から受信した、前記総合盤以外の場所に設置された防災設備の点検に関して実施すべき作業に関する情報を、前記アナウンス情報あるいは前記作業ガイダンス情報として表示する
請求項1に記載の総合盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災などの異常を報知する防災設備である発信機および表示灯が収納された総合盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災時に操作して消火活動を行う消火栓は、周囲のデザインを損なわないように、周囲の壁等と同色の化粧仕上げなどが施されている。そのため、消火栓の設置場所は目立たず、火災が起きたときに有効に使用されない可能性がある。
【0003】
そこで、消火栓扉にディスプレイを備え、火災報知設備からの移報に基づき、平常時と火災時においてディスプレイに表示する表示内容を異ならせることで、火災が起きたときに消火栓を有効利用できるようにする従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、火災などの災害が発生していない平常時には、ディスプレイの表示を壁と同じデザインとすることで目立たなくする表示例、消火栓の使用方法を表示することで消火栓の使い方への興味を誘導する表示例、消防訓練が行われることを知らせる情報を告知する表示例などが開示されている。
【0005】
その一方で、特許文献1では、火災報知設備からの移報を受信した火災時には、火災の位置および避難方向を表示することで、迅速に避難者を誘導する表示例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-141644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1に開示された消火栓は、周囲のデザインを損なわないように設置され、消火作業を行わない人々は取り扱う機会は少ない。
【0008】
これに対して、発信機、表示灯、地区ベルは、法令で設置基準が各々定められており、多くの施設では、総合盤と呼ばれる機器収容箱に収納して設置されている。このような総合盤は、ホールの入口、階段付近、廊下など、多くの人が発信機を押しやすいような場所に設置されている場合が多く、不特定多数の人の目に触れる機会が多い。
【0009】
また、総合盤のような防災設備は、定期的に点検作業を行うことが消防法によって義務付けられている。点検作業を行う際には、点検作業中であることを周知することが重要であるとともに、点検作業者による作業効率を向上させることも重要である。
【0010】
しかしながら、特許文献1では、点検作業時における表示に関してまでは、考慮されていない。従って、不特定多数の人が操作することが考えられる発信機を備えた総合盤において、設置場所にいる人々に迷惑をかけずに、点検作業をスムーズに遂行するための機能を持たせることが望まれる。
【0011】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、点検作業の実施を周知させるととともに、点検作業者による点検作業の効率化を図ることができる総合盤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る総合盤は、発信機と表示灯とを備えた総合盤であって、発信機および表示灯の設置面に設けられたディスプレイと、総合盤を監視する火災受信機と相互通信を可能とし、互いに離れた場所にいる火災受信機の操作者と点検作業者との間で意思疎通を図ることを可能とする通信処理部とを備え、ディスプレイは、通信処理部を介して、火災受信機の操作者の操作に基づいて火災受信機から受信した、アナウンス情報あるいは作業ガイダンス情報を表示するものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、点検作業の実施を周知させるとともに、点検作業者による点検作業の効率化を図ることができる総合盤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態1に係る総合盤の正面図である。
図2】本開示の実施の形態1において、点検作業が実施されること、あるいは点検作業中であることを周知するためのアナウンス情報をディスプレイに対して表示させた具体例を示した図である。
図3】本開示の実施の形態1において、点検作業を実施する際の作業ガイダンス情報をディスプレイに対して表示させた具体例を示した図である。
図4】本開示の実施の形態1において、ディスプレイの表示機能を有効利用するために、自社PRの情報を表示させた具体例を示した図である。
図5】本開示の実施の形態1において、ディスプレイの表示機能を有効利用するために、広告情報を表示させた具体例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る総合盤は、多くの人が発信機を押しやすいような場所に設置されている総合盤にディスプレイを設置し、特に、総合盤や発信機など、防災設備の点検作業に特化して、点検作業の実施を周知させるとともに、総合盤や発信機の点検を行う点検作業者による点検作業の効率化を図る機能を有することを技術的特徴とするものである。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る総合盤の正面図である。本実施の形態1に係る総合盤10では、設置面に相当する正面の開閉扉11に、ディスプレイ20および表示灯付発信機30が取り付けられている。
【0017】
総合盤の基本構成として、表示灯、発信機、音響装置が設けられるが、本開示の実施の形態1に係る総合盤のように、表示灯と発信機を一体化させた表示灯付き発信機を利用することで、総合盤の表面には、十分な空きスペースを設けることが可能となる。このスペースにディスプレイを設けることが可能となる。ディスプレイの大きさは、図1に示すとおり、表示灯付き発信機よりも僅かに大きいディスプレイを使用でき、後述の通り、アナウンス情報や作業ガイダンス情報など、各種情報を表示できる。
【0018】
このディスプレイの大きさは、総合盤の大きさによって適宜変更可能であり、表示灯付き発信機の大きさより小さいものであってもよい。また、ディスプレイは、表示機能だけに限られず、音声出力機能を設けたものであってもよい。なお、表示灯付発信機30は、発信機と表示灯の機能を兼ね備えた機器であり、表示灯付発信機30の代わりに、発信機と表示灯を個別に取り付ける構成を採用することも可能である。
【0019】
本来、総合盤10が設置される場所として、必要なスペースがすでに確保されている。このため、表示灯付発信機30が取り付けられた総合盤に対してディスプレイ20がさらに付加された総合盤10を設置するに際しては、新たに設置場所を確保する必要がない。さらに、ディスプレイ20が必要とする配線は、自火報設備(発信機・ベル・表示灯)の配線を流用することができ、ディスプレイ20への配線作業を容易に行うことができる。
【0020】
総合盤10は、多くの人が表示灯付発信機30を押しやすいような場所、すなわち、不特定多数の人の目に触れる機会が多い場所に設置される、という特性がある。そこで、このような総合盤10の特性を利用して、本実施の形態1に係るディスプレイ20は、点検作業の実施を周知するためのアナウンス情報を表示する第1の表示機能、および点検作業をスムーズに実施するために点検作業者に対して作業ガイダンス情報を表示する第2の表示機能を有している。
【0021】
このような2つの表示機能を兼ね備えることで、総合盤10が設置された施設内にいる人々に迷惑をかけずに、点検作業を効率よく遂行することができる。
【0022】
図2は、本開示の実施の形態1において、点検作業の実施を周知するためのアナウンス情報をディスプレイ20に対して表示させた具体例を示した図であり、ディスプレイ20が有する第1の表示機能の具体例を示したものである。
【0023】
ここで、「点検作業の実施」とは、総合盤や発信機を含む防災設備の点検作業が実施されること、および点検作業中であること、の両方の意味を含むものであり、総合盤10が設置された施設内にいる人々に対するアナウンス情報の内容を意味している。
【0024】
図2(A)は、点検作業が実施される日時を不特定多数の人達に認識してもらうためのディスプレイ20の表示例である。図2(A)の表示を行うことで、点検作業が行われる日時を事前に周知させることができる。
【0025】
図2(B)は、点検作業中であることを不特定多数の人達に認識してもらうためのディスプレイ20の表示例である。図2(B)のアナウンス情報の表示により、点検作業が実際に行われていることを施設内の人々へ周知させることができるので、例えば、防災設備の点検のために非常用ベルを鳴動させたときに、施設内の人が非常時だと誤認する可能性を低減させることができる効果もある。
【0026】
なお、図2(B)のようなアナウンス情報は、防災設備の点検作業の進捗に応じて、点検作業の開始前や、点検作業終了時に表示することが可能である。また、点検作業完了場所等の進捗情報を告知することも可能である。
【0027】
図3は、本開示の実施の形態1において、点検作業を実施する際の作業ガイダンス情報をディスプレイ20に対して表示させた具体例を示した図であり、ディスプレイ20が有する第2の表示機能の具体例を示したものである。
【0028】
点検作業を効率的に実施するためには、点検すべき火災報知設備および消火設備を含む防災設備の設置場所にいる点検作業者と、火災報知設備および消火設備を含む防災設備を集中監視する火災受信機(図示なし)の設置場所にいる受信機操作者との間で、意思疎通を図ることが重要となる。
【0029】
そこで、無線または有線で、総合盤10と火災受信機とを相互に通信可能とし、点検作業時における点検作業者と受信機操作者との間のコミュニケーションツールとして、図3(A)および図3(B)に示したような表示を利用することができる。
【0030】
すなわち、総合盤10は、図1では図示を省略したが、通信処理部をさらに有することで、総合盤10を監視する火災受信機と相互通信を行うことができる。この結果、ディスプレイ20は、通信処理部を介して火災受信機から受信した情報を、アナウンス情報あるいは作業ガイダンス情報として表示することができる。
【0031】
図3(A)は、点検作業中において、点検作業者に対して総合盤10に設置された表示灯付発信機30の操作を促す際のディスプレイ20の表示例である。図3(A)の表示を行うことで、受信機操作者は、総合盤10の点検に関して直ちに実施すべき作業を点検作業者に認識させることができる。
【0032】
図3(B)は、点検作業中において、点検作業者に対して総合盤10以外の場所に設置された感知器の作動試験を促す際のディスプレイ20の表示例である。図3(B)の表示を行うことで、受信機操作者は、総合盤10以外の場所に設置された防災設備の点検に関して直ちに実施すべき作業を点検作業者に認識させることができる。
【0033】
受信機操作者は、受信機の盤面に設けられた機器、別途設けたタブレット端末などを用い、総合盤10へ作業確認のメッセージを送信することで、ディスプレイ20上にメッセージを表示させることができる。すなわち、総合盤10と離れた位置にいる受信機操作者は、ディスプレイ20の表示機能を活用することで、総合盤10の周辺にいる点検作業者に対して通信で作業確認あるいは作業指示を行うことができる。
【0034】
この結果、互いに離れた場所にいる点検作業者と受信機操作者との間で意思疎通を図ることができ、点検作業をスムーズに遂行することができるとともに、点検ミスを防止することができる。
【0035】
また、総合盤10の本体あるいは近傍に人感センサを設けた場合には、人感センサにより人間を検知した場合に限ってディスプレイ20による表示を行わせることで、節電効果を得ることができる。
【0036】
なお、人感センサを活用する場合においても、図2(A)で示したような事前告知する表示情報に関しては、人感センサにより人間を検知していない場合には表示をオフさせるが、図2(B)、図3(A)、図3(B)で示したような点検作業中の表示情報に関しては、人感センサによる検出結果に依存せずに常時表示をオンさせることができる。
【0037】
また、人感センサの有無によらず、図2(B)、図3(A)、図3(B)で示したような点検作業中の表示情報に関しては、背景色を黄色等にすることで、点検作業中であることを文字だけではなく色として情報提供し、周知させることができる。
【0038】
なお、点検作業の実施中ではなく、かつ、点検作業予定の告知も不要なときには、点検に関する情報以外の情報をディスプレイ20に表示させることで、多くの人が視認できる場所に設置された総合盤10の特性を利用して、ディスプレイ20による表示を有効利用することができる。そこで、点検作業以外で、ディスプレイ20を有効利用するための具体的な表示例について、図4図5を用いて説明する。
【0039】
図4は、本開示の実施の形態1において、ディスプレイ20の表示機能を有効利用するために、自社PRの情報を表示させた具体例を示した図である。図4(A)は、総合盤10が設置されている施設において実際の火災監視に用いられている防災設備について、外観、機能等を紹介する際のディスプレイ20の表示例である。図4(A)の表示を行うことで、建物内にどのような防災設備が設置されているかをPRできるとともに、自社の知名度の向上を図ることができる。
【0040】
図4(B)は、自社の会社案内を行う際のディスプレイ20の表示例である。図4(B)の表示を行うことで、企業のブランドイメージの向上を図ることができる。
【0041】
図5は、本開示の実施の形態1において、ディスプレイ20の表示機能を有効利用するために、広告情報を表示させた具体例を示した図である。図5は、総合盤10が設置されている施設の来訪者をターゲットとして、清涼飲料水を紹介する際のディスプレイ20の表示例である。図5の表示を行うことで、広告情報を掲載した企業から広告料を得ることができる。
【0042】
なお、具体的な図示は省略するが、点検以外の用途でディスプレイ20の表示機能を有効利用するためのその他の表示例としては、総合盤10が設置されている施設に関するフロア情報、イベント情報、利用案内等の表示も考えられる。さらに、天気予報、交通機関の遅延等の情報、地震発生に伴う情報などを表示させることで、ディスプレイ20を有効利用することも考えられる。
【0043】
また、火災発生時には、火災発生場所、災害発生状況等の情報表示、あるいは避難経路、非常階段等の避難情報表示を行うことで、ディスプレイ20を有効利用することが考えられる。
【0044】
以上のように、実施の形態1によれば、不特定多数の人の目に触れる機会が多い総合盤に対してディスプレイを設置し、点検作業の実施を周知するためのアナウンス情報を表示する第1の表示機能、および点検作業者に対して作業ガイダンス情報を表示する第2の表示機能を兼ね備えた総合盤を実現している。
【0045】
換言すると、点検作業に関連する情報表示を行うディスプレイを活用することで、総合盤を視認する人達への点検作業の予定、進捗状況等の情報提供を第1の表示機能により実現できるとともに、点検作業者間のコミュニケーションツールとしての役割を第2の表示機能により実現できる。この結果、総合盤が設置されている施設内の人々に迷惑をかけずに、点検作業をスムーズに遂行することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 総合盤、11 開閉扉、20 ディスプレイ、30 表示灯付発信機。
図1
図2
図3
図4
図5