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7774821コンポジットセラミックス、蛍光体素子、レーザー照明装置、およびコンポジットセラミックスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-14
(45)【発行日】2025-11-25
(54)【発明の名称】コンポジットセラミックス、蛍光体素子、レーザー照明装置、およびコンポジットセラミックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20251117BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20251117BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20251117BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20251117BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20251117BHJP
   C04B 35/117 20060101ALI20251117BHJP
   F21V 9/38 20180101ALN20251117BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20251117BHJP
【FI】
C09K11/64
C09K11/80
C09K11/59
C09K11/08 J
C09K11/02 Z
C09K11/08 B
C04B35/117
F21V9/38
F21Y115:30
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2024504432
(86)(22)【出願日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2023007928
(87)【国際公開番号】W WO2023167306
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-08-23
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/009002
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503098724
【氏名又は名称】株式会社オキサイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】峯本 尚
(72)【発明者】
【氏名】東川 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 加奈
(72)【発明者】
【氏名】藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 和久
(72)【発明者】
【氏名】楠木 常夫
(72)【発明者】
【氏名】徳光 聖茄
(72)【発明者】
【氏名】川部 英雄
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-012215(JP,A)
【文献】特開2016-180076(JP,A)
【文献】特開2022-007638(JP,A)
【文献】特開2020-096022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーネット系蛍光体成分と、窒化物系蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む焼結体からなるコンポジットセラミックスであって、
上記マトリックス成分は、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
上記マトリックス成分の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、
上記マトリックス成分は、上記ガーネット系蛍光体成分と上記窒化物系蛍光体成分とを取り囲んで焼結されており、
上記ガーネット系蛍光体成分が、(Ce,Y) Al 12 、(Ce,Lu) Al 12 、(Ce,Lu,Y) Al 12 、(Ce,Lu,Y) (Al,Ga) 12 からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
上記窒化物系蛍光体成分が、それぞれEuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、Sr Si 、(Sr,Ba) Si 、(Ca,Sr,Ba) Si 、CaAlSiN 、(Ca,Sr)AlSiN 、(La) Si 11、 (La,Y) Si 11、 および(La,Y、Lu) Si 11 からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とするコンポジットセラミックス。
【請求項2】
当該コンポジットセラミックスの単位体積当たりに含まれる上記マトリックス成分の数平均粒径が、0.01μm以上、10μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項3】
上記Siの一部および上記Nの一部のうち少なくとも一方が置換されており、
上記Siの一部が置換されている場合、上記SiはAlに置換されており、
上記Nの一部が置換されている場合、上記NはOに置換されていることを特徴とする請求項に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項4】
上記窒化物系蛍光体成分、上記マトリックス成分、および上記ガーネット系蛍光体成分の合計の含有率を100wt%とする三角図において、上記窒化物系蛍光体成分、上記マトリックス成分、および上記ガーネット系蛍光体成分のそれぞれの含有率が、
上記窒化物系蛍光体成分の含有率が59wt%であり、上記マトリックス成分の含有率が31wt%であり、上記ガーネット系蛍光体成分の含有率が10wt%である点Aと、
上記窒化物系蛍光体成分の含有率が8wt%であり、上記マトリックス成分の含有率が90wt%であり、上記ガーネット系蛍光体成分の含有率が2wt%である点Bと、
上記窒化物系蛍光体成分の含有率が2wt%であり、上記マトリックス成分の含有率が90wt%であり、上記ガーネット系蛍光体成分の含有率が8wt%である点Cと、
上記窒化物系蛍光体成分の含有率が10wt%であり、上記マトリックス成分の含有率が31wt%であり、上記ガーネット系蛍光体成分の含有率が59wt%である点Dとを結ぶ直線で囲まれた範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項5】
屈折率が上記マトリックス成分よりも0.21以上高い光散乱成分をさらに含み、
上記マトリックス成分と上記光散乱成分との合計の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項6】
上記光散乱成分が、AlN、cBN、SiC、AlN-SiC固溶体、およびダイアモンドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項7】
当該コンポジットセラミックスの単位体積当たりに含まれる上記光散乱成分の数平均粒径が、0.25μm以上、40μm以下であることを特徴とする請求項に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項8】
厚み100μmでの波長450nmの光の直線透過率が、0.01%以上、20%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項9】
焼結助剤をさらに含み、
上記焼結助剤は、
上記マトリックス成分がAlである場合、Si、SiO、CaO、MgO、ZnOおよびYからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
上記マトリックス成分が、MgOおよびAlのうち少なくともMgOを含む場合、Si、SiO、CaO、ZnOおよびYからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項10】
一方の主面に、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる層が接合された積層構造を有していることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項11】
励起光パワー耐性が0.5kW/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項12】
一方の主面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンポジットセラミックス。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載のコンポジットセラミックスと、
上記コンポジットセラミックスを固定する基材とを備えていることを特徴とする蛍光体素子。
【請求項14】
請求項13に記載の蛍光体素子と、
上記蛍光体素子における上記コンポジットセラミックスに励起光を照射するレーザー光源と、
上記蛍光体素子における上記コンポジットセラミックスから出力された光を集光する集光部材とを備えていることを特徴とするレーザー照明装置。
【請求項15】
ガーネット系蛍光体成分と、窒化物系蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む第1原料粉を混合する混合工程と、
混合した上記第1原料粉を成形型に収容する第1原料粉収容工程と、
上記成形型に収容した上記第1原料粉を、放電プラズマ焼結法またはホットプレス法で焼結する焼結工程と、
上記焼結工程で得られた焼結体を上記成形型から取り出す離型工程とを含み、
上記ガーネット系蛍光体成分が、(Ce,Y) Al 12 、(Ce,Lu) Al 12 、(Ce,Lu,Y) Al 12 、(Ce,Lu,Y) (Al,Ga) 12 からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
上記窒化物系蛍光体成分が、それぞれEuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、Sr Si 、(Sr,Ba) Si 、(Ca,Sr,Ba) Si 、CaAlSiN 、(Ca,Sr)AlSiN 、(La) Si 11、 (La,Y) Si 11、 および(La,Y、Lu) Si 11 からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とするコンポジットセラミックスの製造方法。
【請求項16】
MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる、上記第1原料粉よりも少ない第2原料粉を上記成形型に収容する第2原料粉収容工程をさらに含み、
上記焼結工程で、上記成形型に収容した、上記第1原料粉および上記第2原料粉を焼結することで、上記第1原料粉の焼結体と、上記第1原料粉よりも薄い、上記第2原料粉の焼結体とが接合された焼結体を形成することを特徴とする請求項15に記載のコンポジットセラミックスの製造方法。
【請求項17】
上記焼結体に対し、切断および研磨のうち少なくとも一方を施す切断/研磨工程をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のコンポジットセラミックスの製造方法。
【請求項18】
上記焼結体の一方の主面に凹凸を形成する凹凸形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のコンポジットセラミックスの製造方法。
【請求項19】
上記凹凸形成工程では、ダイサー、レーザー加工、または研磨により上記凹凸を形成することを特徴とする請求項18に記載のコンポジットセラミックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガーネット系蛍光体成分と窒化物系蛍光体成分とマトリックス成分とを含むコンポジットセラミックス、およびそれを備えた、蛍光体素子およびレーザー照明装置、並びに、コンポジットセラミックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー照明装置は、他の照明装置よりも省エネで、小型かつ高輝度であり、プロジェクタ用の照明装置、自動車のヘッドライト用の照明装置として、既に実用化が始まっている。また、家庭用照明市場でも、既存のLED(発光ダイオード)照明装置および蛍光灯からレーザー照明装置への置き換えが期待され、今後、レーザー照明の市場が急拡大すると予想されている。
【0003】
しかしながら、このようなレーザー照明装置用の蛍光体として実用化されつつあるコンポジットセラミックスは、蛍光体成分として、青色光を黄色に変換するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を使用したものである。例えば、特許文献1には、コンポジットセラミックスとして、Ceを含有するYAGからなる蛍光体相と、AlとAlNの少なくとも一方からなるマトリックス相と、不純物とを所定の範囲の量だけ含むセラミックス複合体が開示されている。
【0004】
一方、近年、赤色系の蛍光を発光する赤色系蛍光体を含んだコンポジットセラミックスの開発も行われている。例えば、特許文献2には、コンポジットセラミックスとして、AlN粉末と蛍光体粉末との混合物を放電プラズマ焼結法により焼結し、AlN粉末を融解した後、冷却することで製造される蛍光物質成形体が開示されている。なお、ここで、赤色系蛍光体とは、赤色~オレンジ色の光を発する蛍光体を示す。そして、特許文献2には、上記蛍光体粉末に窒化物系蛍光体を用いてもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2011-012215号
【文献】日本国特開2016-180076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、緻密なセラミックスを実現するためには原料を高温で焼結する必要があり、焼結時に高温にすると、特に窒化物系蛍光体が特性劣化し易い。そもそも、難焼結体である窒化物系蛍光体またはAlNを用いたコンポジットセラミックスは、焼結自体が難しい。このため、赤色系蛍光体を含んだ、レーザー励起に耐え得る高パワー励起用のコンポジットセラミックスは実現されていない。
【0007】
本開示の一態様は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、比較的容易に製造することができる、レーザー照明用の赤色系蛍光体を含んだコンポジットセラミックス、およびそれを備えた、蛍光体素子およびレーザー照明装置、並びに、そのようなコンポジットセラミックスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るコンポジットセラミックスは、ガーネット系蛍光体成分と、窒化物系蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む焼結体からなるコンポジットセラミックスであって、上記マトリックス成分は、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、上記マトリックス成分の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、上記マトリックス成分は、上記ガーネット系蛍光体成分と上記窒化物系蛍光体成分とを取り囲んで焼結されている。
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る蛍光体素子は、本開示の一態様に係るコンポジットセラミックスと、上記コンポジットセラミックスを固定する基材とを備えている。
【0010】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るレーザー照明装置は、本開示の一態様に係る蛍光体素子と、上記蛍光体素子における上記コンポジットセラミックスに励起光を照射するレーザー光源と、上記蛍光体素子における上記コンポジットセラミックスから出力された光を集光する集光部材とを備えている。
【0011】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るコンポジットセラミックスの製造方法は、ガーネット系蛍光体成分と、窒化物系蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む第1原料粉を混合する混合工程と、混合した上記第1原料粉を成形型に収容する第1原料粉収容工程と、上記成形型に収容した上記第1原料粉を、放電プラズマ焼結法またはホットプレス法で焼結する焼結工程と、上記焼結工程で得られた焼結体を上記成形型から取り出す離型工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、比較的容易に製造することができる、レーザー照明用の赤色系蛍光体を含んだコンポジットセラミックス、およびそれを備えた、蛍光体素子およびレーザー照明装置、並びに、そのようなコンポジットセラミックスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係るコンポジットセラミックスの組織の一例を示す断面図である。
図2】実施形態1に係るコンポジットセラミックスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3】実施形態2に係るコンポジットセラミックスの組織の一例を示す断面図である。
図4】実施形態3に係るコンポジットセラミックスの組織の一例を示す断面図である。
図5】実施形態4に係るコンポジットセラミックスの組織の一例を示す断面図である。
図6】実施形態5に係る、一方の主面に反射防止コート膜が設けられたコンポジットセラミックスを示す図である。
図7】実施形態5に係る蛍光体素子の一例を示す断面図である。
図8図7に示す蛍光体素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態6に係るレーザー照明装置の一例を示す断面図である。
図10】実施例1~5および比較例1~5における、窒化物系蛍光体成分、マトリックス成分、ガーネット系蛍光体成分の含有率を示す三角図である。
図11】実施例1で得られたコンポジットセラミックスのXRDパターンを示す図である。
図12】実施例1で得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を示す図である。
図13】実施例1で得られたコンポジットセラミックスの蛍光スペクトルを示す図である。
図14】実施例2で得られたコンポジットセラミックスのSEM画像の一例を示す図である。
図15】実施例2で得られたコンポジットセラミックスのXRDパターンを示す図である。
図16】実施例2で得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を示す図である。
図17】実施例2で得られたコンポジットセラミックスの蛍光スペクトルを示す図である。
図18】実施例3で得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を示す図である。
図19】実施例3で得られたコンポジットセラミックスの蛍光スペクトルを示す図である。
図20】比較例1で得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を示す図である。
図21】比較例1で得られたコンポジットセラミックスの蛍光スペクトルを示す図である。
図22】実施例6、7および比較例6~9における、窒化物系蛍光体成分、マトリックス成分、ガーネット系蛍光体成分の含有率を示す三角図である。
図23】実施例6で得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を示す図である。
図24】実施例6で得られたコンポジットセラミックスの蛍光スペクトルを示す図である。
図25】実施例6、7で得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を示す図である。
図26】実施例8~12および比較例10~13における、窒化物系蛍光体成分、マトリックス成分、ガーネット系蛍光体成分の含有率を示す三角図である。
図27】実施例13~18および比較例14~17における、窒化物系蛍光体成分、マトリックス成分、ガーネット系蛍光体成分の含有率を示す三角図である。
図28】参考例12のコンポジットセラミックスにおけるアニール処理前後の蛍光パワー特性を示す図である。
図29】参考例13のコンポジットセラミックスにおけるアニール処理前後の蛍光パワー特性を示す図である。
図30】実施例18のコンポジットセラミックスから作製された蛍光体素子の励起光パワー耐性を示す図である。
図31】レーザー光の連続照射による蛍光パワーの特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、先に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、実施形態2以降の実施形態では、先に説明した実施形態との相異点について説明する。特に説明がない場合でも、実施形態2以降の実施形態において、先に説明した実施形態と同様の変形が可能であることは、言うまでもない。また、以下、2つの数AおよびBについての「A~B」という記載は、特に明示されない限り、「A以上かつB以下」を意味する。
【0015】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係るコンポジットセラミックス1の組織の一例を示す断面図である。
【0016】
本実施形態に係るコンポジットセラミックス1は、2種類以上の発光波長を有する蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む焼結体からなる多波長発光のセラミックス複合体である。
【0017】
図1に示すコンポジットセラミックス1は、ガーネット系蛍光体成分2と、窒化物系蛍光体成分3と、マトリックス成分4とを含み、マトリックス成分4が、ガーネット系蛍光体成分2と窒化物系蛍光体成分3とを取り囲んで焼結された構造を有している。
【0018】
このため、コンポジットセラミックス1は、図1に示すように、マトリックス成分4中にガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3が島状に混在した海島構造を有している。つまり、コンポジットセラミックス1は、比較的連続に見える海状のマトリックス成分4中に、ガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3が島状に分散された構造を有している。ガーネット系蛍光体成分2と窒化物系蛍光体成分3との間には、マトリックス成分4が充填されている。
【0019】
ガーネット系蛍光体成分2と、窒化物系蛍光体成分3と、マトリックス成分4とは、互いに固着されている。
【0020】
コンポジットセラミックス1は、ガーネット系蛍光体成分2からなる第1の蛍光体相と、窒化物系蛍光体成分3からなる第2の蛍光体相と、マトリックス成分4からなるマトリックス相と、の少なくとも3相を有している。
【0021】
このため、コンポジットセラミックス1は、少なくとも上記3相が混在し、互いに隣接する相が固着した構造を有している。ここで、少なくとも上記3相が混在し、互いに隣接する相が固着した構造とは、上記3相が固溶せずに、固体中でそれぞれの相の領域に分離して、互いに隣接する相が固着している構造を示す。また、焼結助剤または不純物が粒界に存在する場合も含む。あるいは、粒子間でわずかに変質相または融解相があっても、基本的に3相の構造をしっかり有している場合はコンポジットセラミックスとする。
【0022】
なお、3相以上の相のうち、少なくとも互いに隣接する相が互いに固溶した固溶体は、コンポジットセラミックス1から除かれる。また、3相以上の相が単に直接接合された接合物、並びに、無機ガラスおよび有機バインダーの少なくとも一方によって少なくとも上記3相が固められた組成物は、コンポジットセラミックス1から除かれる。
【0023】
(ガーネット系蛍光体成分2)
本開示において、ガーネット系蛍光体成分2とは、結晶構造がガーネット構造を有する蛍光体を示す。ガーネット系蛍光体成分2は、屈折率が大きく、蛍光特性に優れた蛍光体であり、例えば、青色励起光によって、黄色~緑色の黄色系の蛍光を発光する。また、励起光のうち励起に寄与しなかった光は、散乱させて透過する。このため、ガーネット系蛍光体成分2は、青色散乱光と、黄色系の蛍光とを出力する。
【0024】
ガーネット系蛍光体成分2は、耐熱性に優れ、例えばハイパワーの励起光LD(レーザーダイオード)を照射した場合でも、劣化を抑えることができる。
【0025】
ガーネット系蛍光体成分2としては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体が挙げられる。なお、YAG系蛍光体とは、YAG蛍光体の結晶構造に帰属できる蛍光体を示す。
【0026】
YAG系蛍光体としては、例えば、(Ce,Y)Al12、(Ce,Lu)Al12、(Ce,Lu,Y)Al12、(Ce,Lu,Y)(Al,Ga)12からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。コンポジットセラミックス1がガーネット系蛍光体成分2として上記YAG系蛍光体を含むことで、黄色~緑色の黄色系の蛍光を出力するコンポジットセラミックス1を容易に実現することができる。また、コンポジットセラミックス1がガーネット系蛍光体成分2として上記YAG系蛍光体を含むことで、より蛍光特性に優れたコンポジットセラミックス1を得ることができる。
【0027】
(窒化物系蛍光体成分3)
本開示において、窒化物系蛍光体成分3とは、窒素を含む蛍光体を示す。窒化物系蛍光体成分3としては、具体的には、窒化物蛍光体および酸窒化物蛍光体からなる群より選ばれる少なくとも一種の蛍光体が挙げられる。
【0028】
窒化物系蛍光体成分3は、蛍光特性に優れた、赤色~オレンジ色の赤色系の蛍光を発する赤色系蛍光体であり、例えば、青色励起光によって赤色系の蛍光を発光する。また、励起光のうち励起に寄与しなかった光は、散乱させて透過する。このため、窒化物系蛍光体成分3は、青色散乱光および赤色系蛍光を出力する。コンポジットセラミックス1が窒化物系蛍光体成分3を含むことで、電球色の蛍光を出力する3元系のコンポジットセラミックスを得ることができる。また、コンポジットセラミックス1が窒化物系蛍光体成分3を含むことで、より蛍光特性に優れたコンポジットセラミックス1を得ることができる。
【0029】
窒化物系蛍光体成分3としては、例えば、それぞれEuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、SrSi、(Sr,Ba)Si、(Ca,Sr,Ba)Siからなる群より選ばれる少なくとも一種の窒化物蛍光体が挙げられる。以下、説明の便宜上、これら窒化物蛍光体を、窒化物蛍光体(A)と称する場合がある。EuおよびCeは賦活剤であり、結晶中にドープされている。このように、窒化物系蛍光体成分3としては、例えば、Eu:SrSi、Eu:(Sr,Ba)Si、Eu:(Ca,Sr,Ba)Si、Ce:SrSi、Ce:(Sr,Ba)Si、Ce:(Ca,Sr,Ba)Si、(Eu,Ce):SrSi、(Eu,Ce):(Sr,Ba)Si、(Eu,Ce):(Ca,Sr,Ba)Si等の窒化物蛍光体(A)が挙げられる。
【0030】
コンポジットセラミックス1が窒化物系蛍光体成分3としてこのようなアルカリ土類窒化ケイ素を含むことで、安定した赤色系の蛍光を発するコンポジットセラミックス1を作製することができる。
【0031】
なお、これら窒化物蛍光体(A)は、上記組成式におけるSiの一部およびNの一部のうち少なくとも一方が置換されていてもよい。Siの一部が置換される場合、SiはAlに置換される。Nの一部が置換される場合、NはOに置換される。
【0032】
したがって、窒化物系蛍光体成分3は、SrSi、(Sr,Ba)Si、あるいは(Ca,Sr,Ba)Siにおいて、Siの一部がAlに置換された窒化物蛍光体であってもよく、Nの一部がOに置換された酸窒化物蛍光体であってもよい。また、Siの一部がAlに置換され、Nの一部がOに置換された酸窒化物蛍光体であってもよい。一例として、例えば、EuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、(Sr,Ba)(Si,Al)、(Sr,Ba)(Si,Al)(N,O)等が挙げられる。
【0033】
コンポジットセラミックス1が窒化物系蛍光体成分3としてこのような窒化物蛍光体および酸窒化物蛍光体の少なくとも一方を含むことで、より信頼性の高いコンポジットセラミックス1を実現することができる。
【0034】
また、窒化物系蛍光体成分3は、例えば、それぞれEuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、CaAlSiNおよび(Ca,Sr)AlSiNからなる群より選ばれる少なくとも一種の窒化物蛍光体であってもよい。以下、説明の便宜上、これら窒化物蛍光体を、窒化物蛍光体(B)と称する場合がある。EuおよびCeは賦活剤であり、結晶中にドープされている。このように、窒化物系蛍光体成分3としては、例えば、Eu:CaAlSiN、Eu:(Ca,Sr)AlSiN、Ce:CaAlSiN、Ce:(Ca,Sr)AlSiN、(Eu,Ce):CaAlSiN、(Eu,Ce):(Ca,Sr)AlSiN等の窒化物蛍光体(B)であってもよい。
【0035】
さらに、上記窒化物系蛍光体成分3としては、窒化物蛍光体(A)および窒化物蛍光体(B)以外に、例えば、Ceで賦活された(La、Y)Si11等であってもよい。たとえば、上記窒化物系蛍光体成分3は、それぞれEuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、(La)Si11、(La,Y)Si11、(La,Y、Lu)Si11からなる群より選ばれる少なくとも一種の窒化物系蛍光体成分が挙げられる。すなわち、上記窒化物系蛍光体成分3は、(La)Si11、(La,Y)Si11、(La,Y、Lu)Si11からなる群より選ばれる少なくとも一種の窒化物系蛍光体成分(「LaSi11系蛍光体成分」とも言う)であって、それぞれEuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された窒化物系蛍光体成分である。以下、説明の便宜上、これら窒化物蛍光体を、「窒化物蛍光体(C)」と称する場合がある。EuおよびCeは賦活剤であり、結晶中にドープされている。
【0036】
これら窒化物蛍光体(A)、窒化物蛍光体(B)および窒化物蛍光体(C)、並びに、これら窒化物蛍光体(A)および窒化物蛍光体(B)以外の窒化物蛍光体は、それぞれ別々に用いられてもよく、互いに固溶または反応しない範囲で併用しても構わない。
【0037】
(マトリックス成分4)
マトリックス成分4は、MgO(酸化マグネシウム)およびAl(酸化アルミニウム)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。マトリックス成分4は、MgOであってもよく、Alであってもよく、MgOとAlとが混在していてもよい。
【0038】
本実施形態に係るコンポジットセラミックス1は、0.5kW/cm以上の励起光パワー耐性を有している。このように、本実施形態に係るコンポジットセラミックス1は、励起光パワーに対する蛍光パワーが高く、レーザー励起に耐え得る、励起光パワー耐性が高い、低色温度用のコンポジットセラミックスである。このため、本実施形態によれば、実用的な、比較的高パワーでも蛍光飽和しない、レーザー用の蛍光体素子を実現することが可能である。
【0039】
なお、励起光パワー耐性は、高ければ高いほど、高出力でのレーザー励起に耐えることができることから、その上限値は、特に限定されるものではない。しかしながら、現実的に利用できるレーザー光源または各種光部品の励起光パワー耐性(レーザーパワー耐性)から、励起光パワー耐性の上限値は、100kW/cmとなる。したがって、本実施形態に係るコンポジットセラミックス1の励起光パワー耐性は、好ましくは0.5kW/cm以上、より好ましくは1kW/cm以上、さらに好ましくは3kW/cm以上であって、100kW/cm以下の範囲内であることが望ましい。
【0040】
なお、本開示において、励起光パワー耐性とは、1cm当たりの励起光パワー(具体的には、レーザー励起光パワー)に対して、蛍光パワーが飽和する値を示す。励起光パワー耐性は、レーザー光源と積分球と分光器とを備えた蛍光体評価装置によって測定することができる。
【0041】
(コンポジットセラミックス1における各成分の含有率)
コンポジットセラミックス1におけるマトリックス成分4の含有率は、コンポジットセラミックス1における全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内である。
【0042】
このように、本実施形態に係るコンポジットセラミックス1は、ガーネット系蛍光体成分2と、窒化物系蛍光体成分3と、マトリックス成分4とを含む焼結体からなるコンポジットセラミックスであって、マトリックス成分4は、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、マトリックス成分4の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、マトリックス成分4は、ガーネット系蛍光体成分2と窒化物系蛍光体成分3とを取り囲んで焼結されている。
【0043】
本実施形態によれば、これにより、比較的容易に製造することができる、レーザー照明用の赤色系蛍光体を含んだコンポジットセラミックス1を提供することができる。
【0044】
なお、本願発明者らの検討によれば、コンポジットセラミックス1におけるマトリックス成分4の含有率を大きくすることで、励起光パワー耐性をより向上させることができる。したがって、コンポジットセラミックス1におけるマトリックス成分4の含有率は、上記範囲内において上限値寄りに設定されることが好ましい。このため、コンポジットセラミックス1におけるマトリックス成分4の含有率は、45wt%以上であることがより好ましく、60wt%以上であることがさらに好ましい。
【0045】
上述したように、コンポジットセラミックス1におけるマトリックス成分4の含有率は、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、全成分の31wt%以上、90wt%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0046】
したがって、コンポジットセラミックス1におけるガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3の合計の含有率は、コンポジットセラミックス1における全成分の5wt%以上、69wt%以下の範囲内であることが好ましい。
【0047】
これにより、上述したように、比較的容易に製造することができる、レーザー照明用の赤色系蛍光体を含んだコンポジットセラミックス1を提供することができる。また、上記の構成によれば、マトリックス成分4が、ガーネット系蛍光体成分2と窒化物系蛍光体成分3とを取り囲んで焼結された、互いに隣接する相が固着した構造のコンポジットセラミックス1を得ることができる。
【0048】
コンポジットセラミックス1におけるガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3のそれぞれの含有率は、これらの合計の含有率が上記範囲内となるように適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。ガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3の種類に応じて、これらガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3の各含有率を適宜調整することで、所望の発光スペクトルを得ることができる。
【0049】
例えば、ガーネット系蛍光体成分2は、前記したように、青色励起光によって黄色蛍光または緑色蛍光を発光する。窒化物系蛍光体成分3は、前記したように、青色励起光によって赤色系蛍光を発光する。また、これらの蛍光体は、励起光のうち励起に寄与しなかった光を散乱させて透過する。したがって、コンポジットセラミックス1は、該コンポジットセラミックス1に青色励起光が照射されると、青色散乱光と、黄色系蛍光と、赤色系蛍光とが混ざった、赤みを帯びた電球色の光が出力される。
【0050】
コンポジットセラミックス1におけるガーネット系蛍光体成分2の含有率は、コンポジットセラミックス1における全成分の2wt%以上、65wt%以下の範囲内であることが好ましく、2wt%以上、59wt%以下の範囲内であることがより好ましく、4wt%以上、59wt%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
また、コンポジットセラミックス1における窒化物系蛍光体成分3の含有率は、コンポジットセラミックス1における全成分の2wt%以上、65wt%以下の範囲内であることが好ましく、2wt%以上、59wt%以下の範囲内であることがより好ましく、4wt%以上、59wt%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
これにより、家庭用照明装置、プロジェクタ用の照明装置、自動車のヘッドライト用、屋外照明用、特に遠方照明用の照明装置等に特に好適な、赤色~オレンジ色の赤色系の蛍光も含有する電球色の発光スペクトルを得ることができる。
【0053】
但し、本願発明者らの検討によれば、コンポジットセラミックス1における窒化物系蛍光体成分3の含有率が多くなると、励起光パワーに対して、蛍光パワーが飽和し易くなる傾向にある。このため、コンポジットセラミックス1における窒化物系蛍光体成分3の含有率を小さくすることで、励起光パワー耐性をより向上させることができる。したがって、コンポジットセラミックス1における窒化物系蛍光体成分3の含有率は、上記範囲内において、下限値よりに設定されることが好ましい。このため、コンポジットセラミックス1における窒化物系蛍光体成分3の含有率は、60wt%以下であることがより好ましく、40wt%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
また、コンポジットセラミックス1は、窒化物系蛍光体成分3、マトリックス成分4、およびガーネット系蛍光体成分2の合計の含有率を100wt%とする三角図において、例えば後掲の図10および図22に一例を示すように、窒化物系蛍光体成分3、マトリックス成分4、およびガーネット系蛍光体成分2のそれぞれの含有率が、下記点A~点Dを結ぶ直線で囲まれた範囲内にあることが特に好ましい。
【0055】
なお、ここで、点Aとは、窒化物系蛍光体成分3の含有率が59wt%であり、マトリックス成分4の含有率が31wt%であり、ガーネット系蛍光体成分2の含有率が10wt%である点を示す。
【0056】
点Bとは、窒化物系蛍光体成分3の含有率が8wt%であり、マトリックス成分4の含有率が90wt%であり、ガーネット系蛍光体成分2の含有率が2wt%である点を示す。
【0057】
点Cとは、窒化物系蛍光体成分3の含有率が2wt%であり、マトリックス成分4の含有率が90wt%であり、ガーネット系蛍光体成分2の含有率が8wt%である点を示す。
【0058】
点Dとは、窒化物系蛍光体成分3の含有率が10wt%であり、マトリックス成分4の含有率が31wt%であり、ガーネット系蛍光体成分2の含有率が59wt%である点を示す。
【0059】
これにより、励起光パワーに対する蛍光パワーが高く、レーザー励起に耐え得る、励起光パワー耐性が高い、低色温度用のコンポジットセラミックス1を提供することができる。
【0060】
(コンポジットセラミックス1における各成分の粒径)
コンポジットセラミックス1に含まれる、ガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3の粒径は、これらガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3の種類に応じて、所望の発光スペクトルを得ることができるように適宜設定すればよい。このため、これらガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3の粒径は、特に限定されるものではない。
【0061】
しかしながら、ガーネット系蛍光体成分2の原料として用いられる原料粉(言い換えれば、焼結前のガーネット系蛍光体成分)には、数平均粒径が、3μm以上、50μm以下の範囲内の原料粉が好適に用いられる。ガーネット系蛍光体成分2の原料粉の数平均粒径が上記範囲内にある場合、マトリックス成分4および窒化物系蛍光体成分3と反応し難い。
【0062】
同様に、窒化物系蛍光体成分3の原料として用いられる原料粉(言い換えれば、焼結前のガーネット系蛍光体成分)には、数平均粒径が、3μm以上、50μm以下の範囲内の原料粉が好適に用いられる。窒化物系蛍光体成分3の原料粉の数平均粒径が上記範囲内にある場合、マトリックス成分4およびガーネット系蛍光体成分2と反応し難い。
【0063】
なお、これら原料粉の数平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定値であってもよく、これら原料粉に、市販の原料粉をそのまま用いる場合には、納品書あるいはカタログに記載のスペックであってもよい。
【0064】
これら原料粉は、焼結方法によっては、焼結によって粒成長する場合もある。このため、コンポジットセラミックス1の単位体積当たりに含まれるガーネット系蛍光体成分2の数平均粒径は、例えば、3μm以上、50μm以下の範囲内であることが好ましい。同様に、コンポジットセラミックス1の単位体積当たりに含まれる窒化物系蛍光体成分3の数平均粒径は、例えば、3μm以上、50μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、これらの蛍光体粒子は1次粒子のサイズであるあることが理想であるが、何個かの1次粒子が固着した2次粒子のサイズでもよい。
【0065】
また、前記したように、マトリックス成分4は、ガーネット系蛍光体成分2と窒化物系蛍光体成分3とを取り囲んで焼結されている。このため、マトリックス成分4の原料として用いられる原料粉(言い換えれば、焼結前のマトリックス成分)の数平均粒径は、ガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3の各原料粉の数平均粒径よりも小さいことが好ましい。一方で、原料粉の粒径が小さくなりすぎると、コストまたは吸湿性の問題がある。
【0066】
このため、マトリックス成分4の原料として用いられる原料粉には、反応性の観点から、数平均粒径が、0.01μm以上、1μm以下の範囲内の原料粉が好適に用いられる。
【0067】
マトリックス成分4の数平均粒径は、ガーネット系蛍光体成分2および窒化物系蛍光体成分3の数平均粒径よりも小さいことが、反応性の観点から好ましい。ガーネット系蛍光体成分2の原料粉および窒化物系蛍光体成分3の原料粉と同様に、マトリックス成分4の原料粉も、焼結方法によっては、焼結によって粒成長する場合もある。
【0068】
このため、コンポジットセラミックス1の単位体積当たりに含まれるマトリックス成分4の数平均粒径は、0.01μm以上、10μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0069】
コンポジットセラミックス1の単位体積当たりに含まれるマトリックス成分4の数平均粒径が上記範囲内である場合、焼結温度をさらに下げることができるので、赤色系蛍光体を含んだコンポジットセラミックスを、さらに容易に、広い組成範囲で作製することができる。
【0070】
また、マトリックス成分4の数平均粒径を上記範囲内とすることで、マトリックス成分4が、ガーネット系蛍光体成分2と窒化物系蛍光体成分3との隙間に入り込む。これにより、緻密な構造の焼結体を得ることができる。このように、マトリックス成分4の数平均粒径を上記範囲内とすることで、マトリックス成分4が、ガーネット系蛍光体成分2と窒化物系蛍光体成分3とを取り囲んで焼結された、互いに隣接する相が固着した構造のコンポジットセラミックス1を得ることができる。
【0071】
また、ガーネット系蛍光体成分2の数平均粒径、窒化物系蛍光体成分3の数平均粒径、およびマトリックス成分4の数平均粒径を上記範囲内とすることで、コンポジットセラミックス1の組織の相構造の最適化を図ることができる。
【0072】
これらガーネット系蛍光体成分2の数平均粒径および窒化物系蛍光体成分3の数平均粒径、およびマトリックス成分4の数平均粒径は、SEMによって測定することができる。また、後述するその他の成分の数平均粒径も同様にSEMによって測定することができる。
【0073】
なお、本開示において、「粒径」とは、測定対象の成分が真球であるときの粒子径を意味する。発光特性の制御の容易さの観点からすれば、ガーネット系蛍光体成分2、窒化物系蛍光体成分3、マトリックス成分4、およびそれらの原料粉は、何れも真球状であることが望ましい。しかしながら、これらガーネット系蛍光体成分2、窒化物系蛍光体成分3、マトリックス成分4、およびそれらの原料粉は、必ずしも真球形状を有しているとは限らない。これら原料粉が球形の粒子である場合、コンポジットセラミックス1に含まれる、ガーネット系蛍光体成分2、窒化物系蛍光体成分3、およびマトリックス成分4も、概ね球形になる。しかしながら、これら原料粉が例えば不定形の角張った形状の粒子である場合、コンポジットセラミックス1に含まれる、ガーネット系蛍光体成分2、窒化物系蛍光体成分3、およびマトリックス成分4も、不定形の角張った形状の粒子となる。また、焼結方法によっては、焼結により、これら原料粉が粒成長して形状が変わる場合もある。このように測定対象の成分が真球でない場合、「粒径」とは、同体積の真球に換算したときの粒子径を意味する。
【0074】
(焼結助剤)
また、コンポジットセラミックス1は、焼結助剤をさらに含んでいてもよい。前記ガーネット系蛍光体成分2の原料として用いられる原料粉、窒化物系蛍光体成分3の原料として用いられる原料粉、マトリックス成分4の原料として用いられる原料粉を含む原料粉(第1原料粉)が焼結助剤を含む場合、コンポジットセラミックス1も焼結助剤を含む。
【0075】
コンポジットセラミックス1に用いられる焼結助剤としては、例えば、Si、SiO、CaO、MgO、ZnO、Y、LiFおよびAlFからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。但し、マトリックス成分4がMgOである場合、MgOは、焼結助剤から除かれる。MgOは、マトリックス成分がAlのみの場合に、焼結助剤として用いることが可能である。
【0076】
このため、マトリックス成分4がAlである場合、Si、SiO、CaO、MgO、ZnO、Y、LiFおよびAlFからなる群より選ばれる少なくとも一種の焼結助剤が用いられる。一方、マトリックス成分4が、MgOおよびAlのうち少なくともMgOを含む場合、Si、SiO、CaO、ZnO、Y、LiFおよびAlFからなる群より選ばれる少なくとも一種の焼結助剤が用いられる。
【0077】
上記第1原料粉が焼結助剤を含む場合、焼結温度をさらに下げることが可能となり、コンポジットセラミックス1の作製がさらに容易になる。また、これにより、蛍光体の性能を劣化させるリスクをさらに低減できる。
【0078】
なお、上記第1原料粉および該第1原料粉からなるコンポジットセラミックス1における焼結助剤の含有率は、蛍光体特性を劣化させないために、0.05wt%以上、10wt%以下の範囲内であることが好ましい。
【0079】
また、コンポジットセラミックス1の単位体積当たりに含まれる焼結助剤の数平均粒径は、焼結助剤としての効果を発揮しやすいことから、0.01μm以上、1μm以下の範囲内であることが好ましい。このように、焼結助剤は、ガーネット系蛍光体成分2、窒化物系蛍光体成分3、およびマトリックス成分4と比較して、非常に微細および微量であり、その図示については省略する。
【0080】
〔コンポジットセラミックス1の厚み〕
コンポジットセラミックス1の厚みは、特に限定されるものではないが、レーザー照明装置の蛍光体素子に用いる場合、例えば、10μm以上、10mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0081】
コンポジットセラミックス1の厚みが10mm以下であることで、コンポジットセラミックス1が厚すぎず、排熱性に優れ、例えば、後述する集光部材によって、蛍光体素子から出力されるビームが広がりすぎないようにビームパターンを制御することができる。また、コンポジットセラミックス1の厚みが10μm以上であることで、コンポジットセラミックス1が薄すぎず、該コンポジットセラミックス1を蛍光体素子に適用するための強度を維持することができる。
【0082】
また、コンポジットセラミックス1の厚みを上記範囲内とすることで、例えばレーザー光源等の励起光源から出射された励起光を透過させることができる。
【0083】
〔コンポジットセラミックス1における光の透過率〕
コンポジットセラミックス1は、光散乱性が大きいことが望ましい。コンポジットセラミックス中で発生した蛍光または励起光が、蛍光体素子の横方向に伝搬すると、蛍光体素子から出射されるビームがボケてしまう。
【0084】
しかしながら、本実施形態によれば、厚み100μmでの波長450nmの光の直線透過率が、0.01%以上、20%以下であるコンポジットセラミックス1を得ることができる。なお、上記の光の直線透過率は、積分球を備えた分光光度計またはレーザー光源とアパーチャーを有する受光器とを用いて測定した値を用いることができる。
【0085】
このような光の透過率を有するコンポジットセラミックスを用いた蛍光体素子は、蛍光体素子内部で蛍光体素子の主面に横方向に伝搬する光が低減され、ビーム径のボケがなくなり、レーザー照明用の蛍光体素子として有利になる。
【0086】
〔コンポジットセラミックス1の他の物性〕
コンポジットセラミックス1の物体色は、L表色系で表示され得る。上記のLは明度であり、上記のaは赤-緑間の色度であり、上記のbは黄-青間の色度である。また、彩度は、aおよびbのそれぞれの二乗の和の平方根で表される。コンポジットセラミックス1の物体色は、L表色系における適当な範囲内で表されることがコンポジットセラミックスの蛍光パワーを高める観点から好ましい。
【0087】
表色系における物体色は、公知の測色計で測定することが可能である。また、L表色系における物体色は、後述のアニール処理によって調整することが可能である。
【0088】
コンポジットセラミックス1の内部量子効率は、70%以上であることが好ましく、95%以下であることが好ましい。
【0089】
〔コンポジットセラミックス1の製造方法〕
次に、コンポジットセラミックス1の製造方法について説明する。
【0090】
図2は、本実施形態に係るコンポジットセラミックス1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0091】
本実施形態に係るコンポジットセラミックス1の製造方法は、少なくとも下記ステップS1~ステップS4を含んでいる。
【0092】
図2に示すように、コンポジットセラミックス1の製造方法では、まず、ガーネット系蛍光体成分2と、窒化物系蛍光体成分3と、マトリックス成分4とを含む第1原料粉を混合する(ステップS1、混合工程)。
【0093】
なお、ここで、第1原料粉を混合するとは、該第1原料粉に含まれる各成分を混ぜ合わせることを示す。このとき、上記第1原料粉には、前記焼結助剤が含まれていてもよい。
【0094】
第1原料粉の混合には、乾式混合が用いられる。上記混合には、乾式法による粉体混合が可能であれば、如何なる混合機を用いてもよい。
【0095】
次いで、上記混合工程で混合した第1原料粉を成形型に収容する(ステップS2、第1原料粉収容工程)。
【0096】
次いで、上記成形型に収容した上記第1原料粉を焼結する(ステップS3、焼結工程)。このとき、第1原料粉の焼結には、SPS(放電プラズマ焼結)法またはホットプレス法を使用する。
【0097】
SPS法およびホットプレス法は、固体圧縮焼結法の一種であり、上記成形型に収容した上記第1原料粉を、加熱しながら加圧してプレス成形する。
【0098】
SPS法では、機械的な加圧によりプレス成形しながら、パルス通電加熱をして成形体を焼結する。SPS法では、通常の焼結に用いられる熱的および機械的エネルギーに加え、パルス通電による電磁的エネルギー、成形体の自己発熱および各成分間に発生する放電プラズマエネルギー等を複合的に焼結の駆動力として、成形体を焼結することができる。
【0099】
その結果、SPS法では、機械的な加圧をしつつ、短期間で高温に昇温して焼結できるため、上述したような3元系の難焼結成形体であっても、当該成形体に含まれる各成分が高密度で略均一に接合した焼結体に焼結できる。また、SPS法は、焼結時間が短いため、各成分の粒成長を抑制することができる。
【0100】
ホットプレス法では、SPS法と同じく、加圧雰囲気で焼結が行われる。ホットプレス法を用いた場合、SPS法と比較して焼結時間が長くなる。しかしながら、ホットプレス法は、量産性に優れている。
【0101】
なお、第1原料粉の焼結には、高速焼結法も使用し得る。
【0102】
上記焼結工程における焼結温度は、1000℃以上、2000℃以下であることが好ましい。焼結温度を2000℃以下とすることで、焼結温度が高すぎず、酸化物が生じたり、上記各成分が固溶して新たな化合物になったりすることを抑制することができ、上記各成分の特性を失わずに済む。
【0103】
また、焼結温度を1000℃以上とすることで、焼結温度が低すぎず、上記各成分の1次粒子が接合された状態になり易い。その結果、上記各成分が固溶せずに混在し、互いに隣接する相が固着した構造になり易い。このため、例えば、バルク体として十分な加工強度を有し、好適な電球色の蛍光を出力するコンポジットセラミックス1が得られ易くなる。
【0104】
上記焼結工程における焼結時間は、特に限定されず、例えば、5分以上、20時間以下の任意の時間であってもよい。
【0105】
次いで、上記焼結工程で得られた焼結体を上記成形型から取り出す(ステップS4、離型工程)。これにより、コンポジットセラミックス1を得ることができる。
【0106】
なお、コンポジットセラミックス1の製造方法は、上記離型工程後に、上記焼結工程で得られた焼結体をアニールするアニール工程(ステップS5)をさらに含んでいてもよい。
【0107】
アニール温度としては、例えば、800℃以上、1500℃以下であることが好ましい。上記焼結体を、800℃以上、1500℃以下でアニールすることで、コンポジットセラミックス1の加工変形を好適に防いだり、各相の欠陥を制御したりすることができる。
【0108】
なお、アニール時間は、特に限定されず、例えば、5分以上、20時間以下の任意の時間であってもよい。
【0109】
なお、アニールは、N雰囲気またはHおよびN雰囲気(例えばアンモニア含有ガス)等の還元雰囲気下で行うことが好ましい。
【0110】
なお、アニール処理のような熱処理工程は、製造工程の途中で、還元雰囲気または不活性ガス雰囲気で実施してもよい。当該熱処理工程は、コンポジットセラミックス1のより良好な物体色を発現させる観点から有効であり、このような効果が得られ得る範囲において、製造工程のいずれの時期に実施されてもよい。当該熱処理工程は、好ましくは上記のアニール処理であり、熱処理工程における処理温度は、上記のアニール温度と同じでよい。あるいは当該熱処理工程は、アニール処理とは異なり、上述の工程のうちの適当な二工程間に実施してもよい。
【0111】
なお、コンポジットセラミックス1の製造方法は、上記焼結体に対し、切断および研磨のうち少なくとも一方を施す切断/研磨工程(ステップS6)をさらに含んでいてもよい。
【0112】
コンポジットセラミックス1の大きさは特に限定されるものではなく、離型工程で成形型から取り出した焼結体を、そのままコンポジットセラミックス1として使用できる。しかしながら、コンポジットセラミックス1を所定の大きさとするため、得られた焼結体に、上述したように切断および研磨のうち少なくとも一方を施してもよい。
【0113】
上記焼結体の切断方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ワイヤーソー等によって上記焼結体をスライス加工(切断)してもよい。上記焼結体を切断することによって、厚みの薄いコンポジットセラミックス1を得ることができる。勿論、厚みの薄い成形型を用いたり、成形型に収容する第1原料粉の量を調整したりすることで、切断することなく、厚みの薄いコンポジットセラミックス1を製造してもよい。
【0114】
また、上記焼結体の研磨方法も特に限定されない。例えば、研磨装置の吐出部から研磨液を吐出しながら研磨部を回転させることによって、上記焼結体の表面を研磨してもよい。これにより、上記焼結体の厚みを薄くしながら、表面を滑らかにすることができる。このため、研磨を行うことで、厚みが薄く、かつ、表面が滑らかなコンポジットセラミックス1を得ることができる。
【0115】
なお、図2では、アニール工程および切断/研磨工程の両方を行っているが、本実施形態はこれに限定されない。アニール工程および切断/研磨工程は、何れか一方のみを行ってもよい。また、アニール工程は、切断/研磨工程の後に行ってもよい。
【0116】
〔実施形態2〕
図3は、本実施形態に係るコンポジットセラミックス11の組織の一例を示す断面図である。
【0117】
図3に示すように、本実施形態に係るコンポジットセラミックス11は、光散乱成分12をさらに含んでいることを除けば、実施形態1に係るコンポジットセラミックス1と同様の構成を有している。
【0118】
上記光散乱成分12は、屈折率がマトリックス成分4よりも0.21以上高い光散乱体であればよい。
【0119】
このようにコンポジットセラミックスが、ガーネット系蛍光体成分2、窒化物系蛍光体成分3、およびマトリックス成分4に加えて光散乱成分12をさらに含む場合、マトリックス成分4と光散乱成分12との合計の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下であることが後述の観点から望ましい。
【0120】
従来公知のコンポジットセラミックスは、例えばレーザー照明装置の蛍光体素子に用いた場合、コンポジットセラミックス中で発生した蛍光または励起光が、蛍光体素子の横方向に伝搬して、蛍光体素子から出射されるビームがボケてしまうという問題点を有している。
【0121】
しかしながら、本実施形態によれば、実施形態1に記載の効果に加えて、光散乱性に優れ、発生した蛍光および励起光を外部に効率良く取り出すことができるコンポジットセラミックス11を提供することができる。
【0122】
上記光散乱成分12としては、例えば、AlN、cBN、SiC、AlN-SiC固溶体、およびダイアモンドからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。これらの光散乱成分は、光散乱性に特に優れ、光散乱成分12として好適に用いることができる。
【0123】
本実施形態で用いられる光散乱成分12における、マトリックス成分4との屈折率差の上限は、特に限定されるものではない。しかしながら、マトリックス成分4に用いられるMgOおよびAlのうち、屈折率が低いAlの屈折率は1.63であり、光散乱成分12として上記例示の光散乱成分を使用した場合、屈折率が最も高いSiCの屈折率は約2.72程度である。このため、光散乱成分12として上記例示の光散乱成分を使用した場合、光散乱成分12における、マトリックス成分4との屈折率差は、最大で1.1になる。
【0124】
また、コンポジットセラミックス1の単位体積当たりに含まれる光散乱成分12の数平均粒径は、0.25μm以上、40μm以下であることが好ましく、より望ましくは0.5μm以上、20μm以下である。なお、この光散乱成分12の数平均粒径は、SEMによる測定値であってもよく、納品書あるいはカタログに記載のスペックであってもよい。上記光散乱成分12の数平均粒径が上記範囲内にある場合、ミー散乱により、光散乱が最も大きくなる。
【0125】
光散乱成分12の数平均粒径が上記範囲内である場合、最大限の光散乱効果を得ることができる。
【0126】
ガーネット系蛍光体成分2、窒化物系蛍光体成分3、およびマトリックス成分4と同様に、第1原料粉が、光散乱成分12の原料となる原料粉を含むことで、コンポジットセラミックス11が、光散乱成分12を含む。したがって、コンポジットセラミックス11は、前記混合工程(ステップS1)で、光散乱成分12の原料となる原料粉をさらに含む第1原料粉を混合することで製造することができる。
【0127】
なお、図示はしないが、コンポジットセラミックス11も前記焼結助剤を含んでいてもよいことは、言うまでもない。
【0128】
〔実施形態3〕
図4は、本実施形態に係るコンポジットセラミックス21の組織の一例を示す断面図である。
【0129】
図4に示すように、本実施形態に係るコンポジットセラミックス21は、第1セラミックス層22と、第2セラミックス層23とを備えた積層構造を有している。図4に示す第1セラミックス層22は、実施形態1に係るコンポジットセラミックス1と同様の構成を有している。
【0130】
第2セラミックス層23は、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種からなり、第1セラミックス層22の一方の主面に接合されている。
【0131】
従来、赤色系蛍光体を含んだ、レーザー励起に耐え得る高パワー励起用のコンポジットセラミックスは実現されていない。前述したように、実施形態1によれば、レーザー励起を用いたレーザー照明に使用が可能な、赤色系蛍光体を含んだ、レーザー照明用のコンポジットセラミックス1を提供することができる。したがって、第1セラミックス層22は、それのみで、レーザー照明用のコンポジットセラミックスとして使用することができる。
【0132】
しかしながら、上述したように、第1セラミックス層22上に、上述した構成を有する第2セラミックス層23が接合されていることで、レーザー光で強励起した場合でも、コンポジットセラミックスの表面の焼けを抑制することができる。このため、本実施形態によれば、このような焼けによる表面の劣化を抑制することができるコンポジットセラミックス12を提供することができる。
【0133】
第1セラミックス層22の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、実施形態1に係るコンポジットセラミックス1と同様の厚みに設定することができる。
【0134】
第2セラミックス層23の厚みは、特に限定されるものではないが、第2セラミックス層23は、蛍光成分を含んでおらず、蛍光発光には寄与しないこと、並びに、排熱性の観点から、第1セラミックス層22よりも薄く形成されていることが望ましい。
【0135】
このため、第2セラミックス層23の厚みは、例えば、30μm以下であることが望ましい。また、コンポジットセラミックスの表面の焼けの抑制効果を十分に得るためには、第2セラミックス層23の厚みは、例えば、1μm以上であることが望ましい。
【0136】
コンポジットセラミックス21の製造方法は、以下の点を除けば、実施形態1に係るコンポジットセラミックス1の製造方法と同じである。コンポジットセラミックス21の製造方法は、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる、前記第1原料粉よりも少ない第2原料粉を成形型に収容する第2原料粉収容工程をさらに含んでいる。そして、前記焼結工程(ステップS3)で、成形型に収容した、第1原料粉および第2原料粉を焼結する。これにより、第1原料粉の焼結体と、第1原料粉よりも薄い、第2原料粉の焼結体とが接合された焼結体を形成する。これにより、コンポジットセラミックス21を製造することができる。
【0137】
なお、第2原料粉収容工程は、前記第1原料粉収容工程(ステップS2)の後(つまり、ステップS2とステップS3との間)で行われてもよく、前記第1原料粉収容工程(ステップS2)の前(つまり、ステップS1とステップS2との間)で行われてもよい。
【0138】
しかしながら、応力または原料の収縮の影響を考えると、第2原料粉収容工程は、前記第1原料粉収容工程の前および前記第1原料粉収容工程の後の2回行われることが望ましい。第2原料粉収容工程を前記第1原料粉収容工程の前後で2回行う場合、離型工程(ステップS4)後に、第1セラミックス層22を挟んで第2セラミックス層23が形成された焼結体が得られる。つまり、第1セラミックス層22の表主面および裏主面の両主面に第2セラミックス層23が形成された、3層構造を有する焼結体が得られる。この場合、離型工程後に、第1セラミックス層22の一方の主面における第2セラミックス層23を、研削、研磨等で除去すればよい。上記除去は、前記切断/研磨工程で行われてもよい。
【0139】
また、第1セラミックス層22の一方の主面における第2セラミックス層23を除去する代わりに、焼結体をスライス加工(切断)することで、第1セラミックス層22の一方の主面に第2セラミックス層23が形成された複数のコンポジットセラミックス21を製造してもよい。
【0140】
また、本実施形態でも、離型工程(ステップS4)の後、あるいは、上記切断/研磨工程の後、必要に応じて、アニール工程(ステップS5)を行ってもよい。
【0141】
また、図示はしないが、コンポジットセラミックス21も前記焼結助剤を含んでいてもよい。
【0142】
さらに、図4では、第1セラミックス層22が、実施形態1に係るコンポジットセラミックス1と同様の構成を有している場合を例に挙げて図示したが、本実施形態は、これに限定されるものではない。第1セラミックス層22は、実施形態2に係るコンポジットセラミックス11と同様の構成を有していてもよい。
【0143】
〔実施形態4〕
図5は、本実施形態に係るコンポジットセラミックス31の組織の一例を示す断面図である。
【0144】
図5に示すように、本実施形態に係るコンポジットセラミックス31は、一方の主面に凹凸31aが形成されていることを除けば、例えば、実施形態1に係るコンポジットセラミックス1と同様の構成を有している。
【0145】
したがって、コンポジットセラミックス21の製造方法は、焼結体の一方の主面に凹凸31aを形成する凹凸形成工程をさらに含んでいることを除けば、実施形態1に係るコンポジットセラミックス1の製造方法と同じである。
【0146】
図5では、一例として、凹凸31aがダイサー溝である場合を例に挙げて図示している。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではない。上記凹凸形成工程では、例えば、ダイサーまたはレーザー加工によって凹凸31aを形成してもよく、研磨で上記主面を粗面化することで凹凸31aを形成してもよい。
【0147】
本実施形態によれば、上述したように一方の主面に凹凸31aが形成されていることで、内部で発生した蛍光または励起光を散乱させて効率良く取り出すことができるコンポジットセラミックス31を提供することができる。
【0148】
なお、表面に凹凸31aの高さは、上述したように、内部で発生した蛍光または励起光を散乱させることができればよく、特に限定されるものではない。
【0149】
なお、図5では、コンポジットセラミックス31が、前記コンポジットセラミックス1の一方の主面に凹凸31aが形成されている構成を有している場合を例に挙げて図示した。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではない。本実施形態に係るコンポジットセラミックス31は、前記コンポジットセラミックス11の一方の主面に凹凸31aが形成されている構成を有していてもよい。また、本実施形態に係るコンポジットセラミックス31は、前記コンポジットセラミックス21の第2セラミックス層23における、第1セラミックス層22とは反対側の主面に凹凸31aが形成されている構成を有していてもよい。
【0150】
〔実施形態5〕
図6は、本実施形態に係る、一方の主面にAR(反射防止)コート膜41が設けられたコンポジットセラミックス1を示す図である。
【0151】
図6に示すようにコンポジットセラミックス1の主面にARコート膜41が設けられていることで、該コンポジットセラミックス1をレーザー照明用の蛍光体素子として用いた場合に、励起光の照射面において励起光が反射されるのを防止することができる。これにより、励起光がコンポジットセラミックス1に吸収されるときの光の損失を低減することができる。さらに、コンポジットセラミックス1の蛍光体中で発生した蛍光または散乱光を有効に取り出すことができる。
【0152】
上記ARコート膜41の材料としては、SiO、TiO、Si等の誘電体多層膜が用いられる。これらは、例えばイオンビーム蒸着またはスパッター等の成膜方法で形成することができる。
【0153】
なお、以下、このようにARコート膜41が設けられたコンポジットセラミックスを、ARコート膜付コンポジットセラミックスと称する場合がある。このようにARコートが施されたARコート膜付コンポジットセラミックスは、例えば、レーザー照明用の蛍光体素子に好適に用いられる。
【0154】
蛍光体素子の励起光パワー耐性(素子信頼性)は、レーザー照明の用途の観点から、0.5kW/cm以上であることが好ましく、3kW/cm以上であることがより好ましい。蛍光体素子の励起光パワー耐性は、高いほど好ましいが、レーザー照明の用途において十分な効果が得られる観点から上限値を設定してよい。蛍光体素子の素子信頼性は、前述したコンポジットセラミックスのそれと同様に求めることができ、また同様に調整することが可能である。
【0155】
図7は、本実施形態に係る蛍光体素子50の一例を示す断面図である。
【0156】
図7に示す蛍光体素子50は、図6に示す、ARコート膜41が設けられたコンポジットセラミックス1と、基材51と、接着層52と、ミラー53とを備えている。
【0157】
基材51は、コンポジットセラミックス1を支持する支持部材である。コンポジットセラミックス1は、基材51上に固定されている。
【0158】
基材51としては、コンポジットセラミックス1を固定することができれば特に限定されない。一例として、基材51としては、例えば、SUS、Al、Cu、Mo、Ag、W等の金属が挙げられる。基材51がこれらの金属である場合、レーザー光源等の励起光源から照射された励起光を好適に反射することができる。
【0159】
また、Al、Cu、Mo、AgおよびW等は熱伝導性に優れるため、熱伝導性に優れた蛍光体素子50を得ることができる。
【0160】
但し、基材51としては、このような非透過型基材に限定されない。基材51は、例えば、Alで示される、単結晶のサファイアあるいは多結晶のアルミナ等の、透過型基材でああってもよい。
【0161】
コンポジットセラミックス1は、図7に示すように、ARコート膜41が基材51とは反対側の主面に位置するように基材51に固定される。
【0162】
ミラー53は、コンポジットセラミックス1を透過した光を反射する反射体(鏡体)である。ミラー53は、コンポジットセラミックス1における、基材51側の主面に設けられる。以下、コンポジットセラミックス1における、基材51側の主面を「裏主面」と称し、基材51とは反対側の主面を「表主面」と称する場合がある。
【0163】
ミラー53は、コンポジットセラミックス1の裏主面側に設けられ、ARコート膜41は、コンポジットセラミックスの表主面側に設けられる。
【0164】
このようにコンポジットセラミックス1の裏主面側にミラー53が設けられていることで、コンポジットセラミックス1の表主面側に励起光を照射した場合に、コンポジットセラミックス1を透過した光をミラー53で反射することができる。これにより、光の利用効率を向上させることができる。
【0165】
ミラー53としては、コンポジットセラミックス1を透過した光を反射することができれば特に限定されないが、例えば、正反射正材料である銀あるいは銀合金を含む銀系ミラーが好適に用いられる。
【0166】
接着層52は、ミラー53が設けられたコンポジットセラミックス1と基材51とを接着する層である。
【0167】
接着層52に用いられる接着材料としては、ミラー53が設けられたコンポジットセラミックス1と基材51とを接着することができれば、特に限定されるものではない。上記接着材料としては、例えば、銀系または銀合金系無機接着剤が挙げられる。
【0168】
図8は、図7に示す蛍光体素子50の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0169】
図8に示すように、蛍光体素子50の製造方法では、例えば、前記ステップS6の切断/研磨工程として、焼結体を切断する切断工程(ステップS11)と、上記焼結体の裏主面を研磨する裏主面研磨工程(ステップS12)とを行う。但し、前述したように、切断/研磨工程は必須ではない。
【0170】
次いで、上記焼結体の裏主面にミラー53を成膜する(ステップS13、ミラー成膜工程)。これにより、コンポジットセラミックス1の一方の主面にミラー53が接合されたミラー付コンポジットセラミックスを形成する。
【0171】
一方、基材51を準備する(ステップS21、基材準備工程)。
【0172】
次いで、上記基材51と、ステップS13で得られたミラー付コンポジットセラミックスとを、接着層52を構成する接着材料により貼り合わせる(ステップS14、貼合工程)。
【0173】
次いで、上記焼結体の表主面を研磨する(ステップS15、表主面研磨工程)。その後、上記焼結体の表主面にARコート膜41を成膜する(ステップS16、ARコート膜成膜工程)。これにより、図8に示すように、蛍光体素子50を製造することができる。
【0174】
なお、図8では、貼合工程の後に表主面研磨工程を行っているが、本実施形態はこれに限定されない。表主面研磨工程は、貼合工程の前に行ってもよい。
【0175】
また、本実施形態に係る蛍光体素子50は、図7に示す構造に限定されるものではない。蛍光体素子50は、例えば、コンポジットセラミックス1と、該コンポジットセラミックス1を固定する基材51とを備えていればよい。
【0176】
また、コンポジットセラミックス1に代えて、コンポジットセラミックス11、あるいはコンポジットセラミックス21、あるいはコンポジットセラミックス31を備えていてもよい。また、それらを組み合わせてなるコンポジットセラミックスを使用してもよい。
【0177】
〔実施形態6〕
前記したように、コンポジットセラミックスは、レーザー照明用の蛍光体素子(言い換えれば、レーザー照明装置の蛍光体素子)に好適に用いることができる。
【0178】
本実施形態に係るレーザー照明装置は、蛍光体素子と、蛍光体素子におけるコンポジットセラミックスに励起光を照射するレーザー光源と、蛍光体素子におけるコンポジットセラミックスから出力された光を集光する集光部材(第1集光部材)とを備えている。
【0179】
図9は、本実施形態に係るレーザー照明装置60の一例を示す断面図である。
【0180】
図9に示すレーザー照明装置60は、上記蛍光体素子の一例として、例えば、図8に示す蛍光体素子50を備えている。また、図9に示すレーザー照明装置60は、上記レーザー光源としてレーザー光源61を備えるとともに、上記第1集光部材としてレンズ63を備えている。さらに、図9に示すレーザー照明装置60は、レーザー光源61から出力された励起光を集光する第2集光部材として、レンズ62を備えている。
【0181】
レーザー光源61は、蛍光体素子50におけるコンポジットセラミックス1に、レンズ62を介して、第1光としての励起光L1を照射する。具体的には、レーザー光源61から出力された励起光L1は、レンズ62で集光されることで、集光された励起光L1(以下、「励起光L1’」と記す)として、レンズ62から蛍光体素子50におけるコンポジットセラミックス1に照射される。
【0182】
コンポジットセラミックス1は、上記励起光L1’の少なくとも一部を吸収し、励起光L1’とは異なる波長の光(つまり、励起光L1とは異なる波長の光)を含む第2光を出力する。例えば、前述したガーネット系蛍光体成分2は、励起光L1である青色光によって、例えば黄色系蛍光Yを発光し、窒化物系蛍光体成分3は、励起光L1である青色光によって赤色系蛍光Rを発光する。また、これらの蛍光体は、励起光L1である青色光のうち励起に寄与しなかった青色光を散乱させて、青色散乱光Bとして透過する。これにより、蛍光体素子50におけるコンポジットセラミックス1に青色の励起光L1が照射されると、図9に示すように、蛍光体素子50から、青色散乱光Bと、黄色系蛍光Yと、赤色系蛍光Rとが出力される。蛍光体素子50(具体的には、蛍光体素子50のコンポジットセラミックス1)から出力されたこれらの光(第2光)は、レンズ63で集光される。そして、蛍光体素子50から出力された、これらの光(つまり、青色散乱光Bと、黄色系蛍光Yと、赤色系蛍光Rと)が混ざることで、レンズ63を介して、赤みを帯びた電球色の光が、ビームL2として出力される。
【0183】
なお、上記蛍光体素子50としては、実施形態5で説明したように、本開示に係るコンポジットセラミックスと基材51とを備えていればよい。上記コンポジットセラミックスとしては、実施形態1~4の何れかに記載のコンポジットセラミックスであってもよく、それらを組み合わせてなるコンポジットセラミックスであってもよい。
【0184】
なお、レーザー光源61としては、励起光L1を照射できるものであれば特に限定されないが、例えば、上述したように励起光L1として青色光を照射する、青色半導体LD(LD:レーザーダイオード)が挙げられる。
【0185】
蛍光体素子50が上述したようにミラー53を備える場合、あるいは、基材51が励起光L1を透過しない非透過型基材である場合、蛍光体素子50は、レーザー光源61の出射光側にコンポジットセラミックス1が位置するように配置される。
【0186】
一方、基材51が透過型基材であり、コンポジットセラミックス1の裏主面側にミラー53のような反射体を備えていない場合、基材51における、コンポジットセラミックス1の固定面とは反対側の面から励起光L1が照射される。なお、この場合にも、コンポジットセラミックス1の表主面側から第2光が出力される。
【0187】
また、図9では、第1集光部材および第2集光部材がともにレンズである場合を例に挙げて図示した。しかしながら、これら集光部材は、レンズであってもよく、ミラーであってもよい。
【0188】
〔実施形態7:コンポジットセラミックスのその他の形態〕
本発明の実施形態におけるコンポジットセラミックスは、本発明の効果が得られる範囲において、ガーネット系蛍光体成分に代えて前述のLaSi11系蛍光体成分(窒化物蛍光体(C))を有していてもよい。この場合、「窒化物系蛍光体成分」は、LaSi11系蛍光体成分以外の窒化物系蛍光体成分から選ばれ得る。
【0189】
すなわち、実施形態7のコンポジットセラミックスは、LaSi11系蛍光体成分と、LaSi11系蛍光体成分以外の窒化物系蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む焼結体からなるコンポジットセラミックスであって、上記マトリックス成分は、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、上記マトリックス成分の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、上記マトリックス成分は、上記LaSi11系蛍光体成分と上記窒化物系蛍光体成分とを取り囲んで焼結されていてもよい。
【0190】
実施形態7のコンポジットセラミックスは、ガーネット系蛍光体成分に代えて前述のLaSi11系蛍光体成分を用いる以外は前述の実施形態のコンポジットセラミックスと同様に構成され、製造され、そして利用され得る。当該コンポジットセラミックスは、ガーネット系蛍光体成分に代えてLaSi11系蛍光体成分を用いることから、より容易にコンポジットセラミックスを製造する観点から有利である。
【0191】
〔実施形態8:コンポジットセラミックスのその他の形態〕
本発明の実施形態におけるコンポジットセラミックスは、本発明の効果が得られる範囲において、蛍光体成分として実質的にLaSi11系蛍光体成分(窒化物蛍光体(C))のみを有していてもよい。すなわち、実施形態8のコンポジットセラミックスは、LaSi11系蛍光体成分およびマトリックス成分のみを実質的に含む焼結体からなるコンポジットセラミックスであって、上記マトリックス成分は、Al、AlとMgOの混合物、および、MgAlO、からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分であり、上記マトリックス成分の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、上記マトリックス成分は、上記LaSi11系蛍光体成分系蛍光体を取り囲んで焼結されていてもよい。
【0192】
本実施形態では、マトリックス成分の含有率および窒化物蛍光体(C)の含有率は、それぞれ、蛍光パワーおよび励起光パワー耐性が高く低色温度用のコンポジットセラミックスを提供する観点から適宜に設定し得る。
【0193】
実施形態8のコンポジットセラミックスは、ガーネット系蛍光体成分および窒化物系蛍光体成分に代えてLaSi11系蛍光体成分を用いる以外は前述の実施形態のコンポジットセラミックスと同様に構成され、製造され、そして利用され得る。当該コンポジットセラミックスは、蛍光体成分が実質的にLaSi11系蛍光体成分のみからなるので、より容易にコンポジットセラミックスを製造する観点から有利である。
【0194】
〔まとめ〕
本発明の第一の態様は、ガーネット系蛍光体成分と、窒化物系蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む焼結体からなるコンポジットセラミックスであって、上記マトリックス成分は、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、上記マトリックス成分の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、上記マトリックス成分は、上記ガーネット系蛍光体成分と上記窒化物系蛍光体成分とを取り囲んで焼結されていることを特徴とする。
【0195】
本発明の第二の態様は、第一の態様において、当該コンポジットセラミックスの単位体積当たりに含まれる上記マトリックス成分の数平均粒径が0.01μm以上、10μm以下の範囲内であることを特徴とする。
【0196】
本発明の第三の態様は、第二の態様において、上記ガーネット系蛍光体成分が(Ce,Y)Al12、(Ce,Lu)Al12、(Ce,Lu,Y)Al12、(Ce,Lu,Y)(Al,Ga)12からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【0197】
本発明の第四の態様は、第一の態様から第三の態様のいずれかにおいて、上記窒化物系蛍光体成分が、それぞれEuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、SrSi、(Sr,Ba)Si、(Ca,Sr,Ba)Siからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【0198】
本発明の第五の態様は、第四の態様において、上記Siの一部および上記Nの一部のうち少なくとも一方が置換されており、上記Siの一部が置換されている場合、上記SiはAlに置換されており、上記Nの一部が置換されている場合、上記NはOに置換されていることを特徴とする。
【0199】
本発明の第六の態様は、第一の態様から第五の態様のいずれかにおいて、上記窒化物系蛍光体成分が、それぞれEuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、CaAlSiNおよび(Ca,Sr)AlSiNからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【0200】
本発明の第七の態様は、第一の態様から第六の態様のいずれかにおいて、上記窒化物系蛍光体成分、上記マトリックス成分、および上記ガーネット系蛍光体成分の合計の含有率を100wt%とする三角図において、上記窒化物系蛍光体成分、上記マトリックス成分、および上記ガーネット系蛍光体成分のそれぞれの含有率が、
上記窒化物系蛍光体成分の含有率が59wt%であり、上記マトリックス成分の含有率が31wt%であり、上記ガーネット系蛍光体成分の含有率が10wt%である点Aと、
上記窒化物系蛍光体成分の含有率が8wt%であり、上記マトリックス成分の含有率が90wt%であり、上記ガーネット系蛍光体成分の含有率が2wt%である点Bと、
上記窒化物系蛍光体成分の含有率が2wt%であり、上記マトリックス成分の含有率が90wt%であり、上記ガーネット系蛍光体成分の含有率が8wt%である点Cと、
上記窒化物系蛍光体成分の含有率が10wt%であり、上記マトリックス成分の含有率が31wt%であり、上記ガーネット系蛍光体成分の含有率が59wt%である点Dとを結ぶ直線で囲まれた範囲内にあることを特徴とする。
【0201】
本発明の第八の態様は、第一の態様から第七の態様のいずれかにおいて、屈折率が上記マトリックス成分よりも0.21以上高い光散乱成分をさらに含み、上記マトリックス成分と上記光散乱成分との合計の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下であることを特徴とする。
【0202】
本発明の第九の態様は、第八の態様において、上記光散乱成分が、AlN、cBN、SiC、AlN-SiC固溶体、およびダイアモンドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0203】
本発明の第十の態様は、第八の態様または第九の態様において、当該コンポジットセラミックスの単位体積当たりに含まれる上記光散乱成分の数平均粒径が、0.25μm以上、40μm以下であることを特徴とする。
【0204】
本発明の第十一の態様は、第一の態様から第十の態様のいずれかにおいて、厚み100μmでの波長450nmの光の直線透過率が、0.01%以上、20%以下であることを特徴とする。
【0205】
本発明の第十二の態様は、第一の態様から第十一の態様のいずれかにおいて、焼結助剤をさらに含み、上記焼結助剤は、
上記マトリックス成分がAlである場合、Si、SiO、CaO、MgO、ZnOおよびYからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
上記マトリックス成分が、MgOおよびAlのうち少なくともMgOを含む場合、Si、SiO、CaO、ZnOおよびYからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0206】
本発明の第十三の態様は、第一の態様から第十二の態様のいずれかにおいて、一方の主面に、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる層が接合された積層構造を有していることを特徴とする。
【0207】
本発明の第十四の態様は、第一の態様から第十三の態様のいずれかにおいて、励起光パワー耐性が0.5kW/cm以上であることを特徴とする。
【0208】
本発明の第十五の態様は、第一の態様から第十四の態様のいずれかにおいて、一方の主面に凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0209】
本発明の第十六の態様は、第一の態様から第十五の態様のいずれかのコンポジットセラミックスと、上記コンポジットセラミックスを固定する基材とを備えていることを特徴とする蛍光体素子である。
【0210】
本発明の第十七の態様は、第十六の態様の蛍光体素子と、上記蛍光体素子における上記コンポジットセラミックスに励起光を照射するレーザー光源と、上記蛍光体素子における上記コンポジットセラミックスから出力された光を集光する集光部材とを備えていることを特徴とするレーザー照明装置である。
【0211】
本発明の第十八の態様は、ガーネット系蛍光体成分と、窒化物系蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む第1原料粉を混合する混合工程と、混合した上記第1原料粉を成形型に収容する第1原料粉収容工程と、上記成形型に収容した上記第1原料粉を、放電プラズマ焼結法またはホットプレス法で焼結する焼結工程と、上記焼結工程で得られた焼結体を上記成形型から取り出す離型工程とを含むことを特徴とするコンポジットセラミックスの製造方法である。
【0212】
本発明の第十九の態様は、第十八の態様において、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる、上記第1原料粉よりも少ない第2原料粉を上記成形型に収容する第2原料粉収容工程をさらに含み、上記焼結工程で、上記成形型に収容した、上記第1原料粉および上記第2原料粉を焼結することで、上記第1原料粉の焼結体と、上記第1原料粉よりも薄い、上記第2原料粉の焼結体とが接合された焼結体を形成することを特徴とする。
【0213】
本発明の第二十の態様は、第十八の態様または第十九の態様において、上記焼結体に対し、切断および研磨のうち少なくとも一方を施す切断/研磨工程をさらに含むことを特徴とする。
【0214】
本発明の第二十一の態様は、第十八の態様から第二十の態様のいずれかにおいて、上記焼結体の一方の主面に凹凸を形成する凹凸形成工程をさらに含むことを特徴とする。
【0215】
本発明の第二十二の態様は、第二十一の態様において、上記凹凸形成工程では、ダイサー、レーザー加工、または研磨により上記凹凸を形成することを特徴とする。
【0216】
本発明の第二十三の態様は、第一の態様において、上記窒化物系蛍光体成分が、EuおよびCeのうち少なくとも一方の元素で賦活された、(La)Si11、(La,Y)Si11、(La,Y、Lu)Si11からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【0217】
本発明の第二十四の態様は、第十四の態様において、励起光パワー耐性が1kW/cm以上であることを特徴とする。
【0218】
本発明の第二十六の態様は、第一の態様から第十五の態様および第二十三の態様から第二十五の態様のいずれかにおいて、内部量子効率が70%以上、95%以下であることを特徴とする。
【0219】
本発明の第三十の態様は、第十六の態様において、励起光パワー耐性が0.5kW/cm以上であることを特徴とする。
【0220】
本発明の第三十一の態様は、第十六の態様において、励起光パワー耐性が3kW/cm以上であることを特徴とする請求項16記載の蛍光体素子。
【0221】
本発明の第三十二の態様は、第十八の態様から第二十二の態様のいずれかにおいて、上記製造工程の途中で、還元雰囲気または不活性ガス雰囲気で焼結体を熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0222】
本発明の第三十三の態様は、第三十二の態様において、上記熱処理する工程が、アンモニア含有ガス中で焼結体を熱処理する工程であることを特徴とする。
【0223】
本発明の第三十四の態様は、LaSi11系蛍光体成分と、LaSi11系蛍光体成分以外の窒化物系蛍光体成分と、マトリックス成分とを含む焼結体からなるコンポジットセラミックスであって、上記マトリックス成分は、MgOおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、上記マトリックス成分の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、上記マトリックス成分は、上記LaSi11系蛍光体成分と上記窒化物系蛍光体成分とを取り囲んで焼結されていることを特徴とする。第三十四の態様は、当該態様の効果が得られる範囲において、前述した第二の態様から第十五の態様および第二十三の態様から第二十九の態様のいずれかの特徴をさらに含み得る。
【0224】
本発明の第三十五の態様は、LaSi11系蛍光体成分およびマトリックス成分のみを実質的に含む焼結体からなるコンポジットセラミックスであって、上記マトリックス成分は、Al、AlとMgOの混合物、および、MgAlO、からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分であり、上記マトリックス成分の含有率が、全成分の31wt%以上、95wt%以下の範囲内であり、上記マトリックス成分は、上記LaSi11系蛍光体成分系蛍光体を取り囲んで焼結されていることを特徴とする。第三十五の態様は、当該態様の効果が得られる範囲において、前述した第二の態様から第十五の態様および第二十三の態様から第二十九の態様のいずれかの特徴をさらに含み得る。
【0225】
〔実施例〕
以下、実施例および比較例により、本開示に係るコンポジットセラミックスについて具体的に説明するが、本開示に係るコンポジットセラミックスは、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、原料粉としてのYAGには、2mol%のCeで賦活された、数平均粒径が15μmのYAGを使用した。また、原料粉としてのSrSiには、2mol%のEuで賦活された、数平均粒径が13μm(一部凝集した粉を含む)のSrSiを使用した。原料粉としてのAlには、数平均粒径が0.1μmのAlを使用した。原料粉としてのMgOには、数平均粒径が0.05μmのMgOを使用した。原料粉としてのAlNには、数平均粒径が1μmのAlNを使用した。
【0226】
〔実施例1〕
図10に示すように、実施例1では、ガーネット系蛍光体成分であるYAGと、窒化物系蛍光体成分であるSrSiと、マトリックス成分であるAlとの含有量が、それぞれ25wt%、25wt%、50wt%となるように各原料粉を混合した。
【0227】
次いで、この原料粉を成形型に充填し、SPS法を用いて、窒素雰囲気下、1350℃で3分間焼結することで、コンポジットセラミックスを製造した。
【0228】
得られたコンポジットセラミックスをリガク株式会社製の粉末X線回折装置によってXRD(X線回折)測定した。この結果を図11に示す。
【0229】
また、レーザー光源と積分球と分光器とを備えた蛍光体評価装置によって、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。なお、レーザー光源における、励起レーザービームのビーム径は直径1mmであり、励起レーザー波長は450nm、励起レーザービームは連続光とした。この結果を図12に示す。図12中の矢印は蛍光の飽和点を示している。
【0230】
また、得られたコンポジットセラミックスに、レーザー光源から励起光を照射し、該コンポジットセラミックスからレンズを透過させて出力したビームの蛍光スペクトルを、蛍光分光器を用いて測定した。より具体的には、オーシャンフォトニックス(株)製の分光器を用いて、室温条件下、励起波長を441nmに固定した状態で発光スペクトルを測定した。この結果を図13に示す。
【0231】
〔実施例2〕
図10に示すように、実施例2では、YAGと、SrSiと、Alとの含有量が、それぞれ15wt%、15wt%、70wt%となるように各原料粉を混合した。この点を除けば、実施例2では、実施例1と同じ操作を行ってコンポジットセラミックスを製造した。
【0232】
日本電子株式会社製の走査電子顕微SEMを用いて、加速電圧20kVにおいて、上記コンポジットセラミックスの表面観察を行い、SEM画像を得た。このSEM画像を図14に示す。
【0233】
また、得られたコンポジットセラミックスを実施例1と同じX線回折装置によってXRD測定した。この結果を図15に示す。
【0234】
また、実施例1と同じ蛍光体評価装置によって、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。この結果を図16に示す。
【0235】
また、実施例1と同じ装置を用いて、上記コンポジットセラミックスからレンズを透過させて出力したビームの蛍光スペクトルを、実施例1と同じ蛍光分光器を用いて測定した。この結果を図17に示す。
【0236】
〔実施例3〕
図10に示すように、実施例3では、YAGと、SrSiと、Alとの含有量が、それぞれ5wt%、5wt%、90wt%となるように各原料粉を混合し、1300℃で焼結した。この点を除けば、実施例3では、実施例1と同じ操作を行ってコンポジットセラミックスを製造した。
【0237】
そして、実施例1と同じ蛍光体評価装置によって、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。この結果を図18に示す。
【0238】
そして、実施例1と同じ装置を用いて、上記コンポジットセラミックスからレンズを透過させて出力したビームの蛍光スペクトルを、実施例1と同じ蛍光分光器を用いて測定した。この結果を図19に示す。
【0239】
〔実施例4〕
図10に示すように、YAG、SrSiおよびAlの含有量をそれぞれ34.5wt%、34.5wt%および31wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。また、実施例1と同様にして、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。蛍光の飽和点の励起光パワーは3Wであり、励起光パワー耐性は、/(3.1415×0.05×0.05)=0.38kW/cmとなる。また、実施例1と同様にして、上記コンポジットセラミックスからレンズを透過させて出力したビームの蛍光スペクトルを測定した。ピーク波長は600nmであった。
【0240】
〔実施例5〕
図10に示すように、YAG、SrSiおよびAlの含有量をそれぞれ20wt%、10wt%および70wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。また、実施例1と同様にして、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。蛍光の飽和点の励起光パワーは10Wであり、励起光パワー耐性は、10/(3.1415×0.05×0.05)=1.3kW/cmとなる。また、実施例1と同様にして、上記コンポジットセラミックスからレンズを透過させて出力したビームの蛍光スペクトルを測定した。ピーク波長は590nmであった。
【0241】
〔比較例1〕
図10に示すように、比較例1ではSrSiのみを成形型に充填し、1800℃で焼結した。この点を除けば、比較例1では、実施例1と同じ操作を行って、比較用のコンポジットセラミックスを製造した。
【0242】
そして、実施例1と同じ蛍光体評価装置によって、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。この結果を図20に示す。
【0243】
また、実施例1と同じ装置を用いて、上記コンポジットセラミックスからレンズを透過させて出力したビームの蛍光スペクトルを、実施例1と同じ蛍光分光器を用いて測定した。この結果を図21に示す。
【0244】
〔比較例2〕
図10に示すように、SrSi赤色蛍光体とAlの2元系のコンポジットセラミックスである。
【0245】
〔比較例3〕
図10に示すように、YAG、とAlの2元系のコンポジットセラミックスである。
【0246】
〔比較例4〕
図10に示すように、YAG、SrSiおよびAlの含有量をそれぞれ15wt%、65wt%および20wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスの製造を試みたが、焼結体が割れ又は破損してコンポジットが得られず、特性評価にいたらなかった。この原因としては、粒径のおおきなYAG蛍光体粒子や、SrSi蛍光体粒子を多く含むため、焼結がうまくできていないと考えられる。
【0247】
〔比較例5〕
実施例5のYAG、SrSiおよびAlの含有量以外は同様に検討をおこなった。割れ、破損の状況は比較例4と同様であった。
【0248】
実施例4、5のコンポジットセラミックスにおけるレーザーパワー依存性および出力ビームのピーク波長を表1に示す。
【0249】
【表1】
【0250】
〔実施例6〕
図22に示すように、実施例6では、Alに代えてMgOを使用し、YAGと、SrSiと、MgOとの含有量が、それぞれ15wt%、15wt%、70wt%となるように各原料粉を混合し、1300℃で焼結した。この点を除けば、実施例6では、実施例1と同じ操作を行ってコンポジットセラミックスを製造した。
【0251】
そして、実施例1と同じ蛍光体評価装置によって、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。この結果を図23に示す。
【0252】
また、実施例1と同じ装置を用いて、上記コンポジットセラミックスからレンズを透過させて出力したビームの蛍光スペクトルを、実施例1と同じ蛍光分光器を用いて測定した。この結果を図24に示す。
【0253】
〔実施例7〕
図22に示すように、実施例7では、MgOの約10%を光散乱成分としてのAlNに変更し、YAGと、SrSiと、MgOと、AlNの含有量が、それぞれ15wt%、15wt%、63wt%、7wt%となるように各原料粉を混合した。この点を除けば、実施例7では、実施例1と同じ操作を行ってコンポジットセラミックスを製造した。
【0254】
そして、実施例1と同じ蛍光体評価装置によって、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。この結果を、実施例6で得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性と併せて図25に示す。
【0255】
〔比較例6〕
図22に示すように、比較例6はSrSiとMgOの2元系からなるコンポジットセラミックスである。
【0256】
〔比較例7〕
図22に示すように、YAG、MgOからなる2元系のコンポジットセラミックスである。
【0257】
〔比較例8〕
図22に示すように、YAG、SrSi、MgOの含有量をそれぞれ65wt%、15wt%、および20wt%とする以外は実施例6と同様にしてコンポジットセラミックスの製造を試みたが、焼結体が崩れるか又は割れてしまい、コンポジットセラミックスが得られなかった。
【0258】
〔比較例9〕
図22に示すように、YAG、SrSi、MgOの含有量をそれぞれ15wt%、65wt%、および20wt%とする以外は実施例6と同様にしてコンポジットセラミックスの製造を試みたが、焼結体が崩れるか又は割れてしまい、コンポジットセラミックスが得られなかった。
【0259】
図14に示すSEM画像は実施例1に示すコンポジットセラミックスの反射電子像であり、重い元素で構成される部分が白く、軽い元素で構成される部分が暗く映る。また、各成分の形状は、原料の粒子の形状に応じた形状となる。図14に示す結果から、得られたコンポジットセラミックスは、YAGと、SrSiと、Alとを含み、AlがYAGとSrSiとを取り囲んで焼結されていることが確認された。
【0260】
また、図11および図15に示すように、XRD測定の結果、YAG、SrSi、およびAlのそれぞれのピークが確認された。なお、XRD測定の結果とデータベースからの回折強度はよく一致しており、YAG、SrSi、およびAl以外のピークは観察されなかった。
【0261】
また、例えば特許文献2の比較例等からも判るように、従来、窒化物と酸化物とは相性が悪いことが知られている。しかしながら、例えば図11および図15に示すように、本開示に係るコンポジットセラミックスは、窒化物系蛍光体成分であるSrSiが、酸化物である例えばAlからなるマトリックス成分中でも残っていることが確認できた。
【0262】
また、図13図17図19図24に示す蛍光スペクトルから、実施例1~4では、それぞれ、YAGと、SrSiとから発生したそれぞれの蛍光のピークが観察された。
【0263】
また、図21に示す蛍光スペクトルから、比較例1では、SrSiのみの蛍光のピークが観察された。
【0264】
また、図12に示すように、実施例1では、励起光パワーが5wのときに蛍光が飽和しており、蛍光の飽和点は5Wである。このため、実施例1の励起光パワー耐性は、5/(3.1415×0.05×0.05)=0.64kW/cmとなる。
【0265】
また、図16に示すように、実施例2では、7Wまでの励起光パワーがしか測定していないが、図16から、蛍光の飽和点は8W程度以上であると見積もられる。したがって、蛍光の飽和点が仮に8Wであるとすると、実施例2の励起光パワー耐性は、8/(3.1415×0.05×0.05)=1.0kW/cmとなる。
【0266】
また、図18に示すように、実施例3では、蛍光の飽和点は10Wである。このため、実施例3の励起光パワー耐性は、10/(3.1415×0.05×0.05)=1.3kW/cmとなる。
【0267】
また、図20に示すように、比較例1では、蛍光の飽和点は2Wである。このため、比較例1の励起光パワー耐性は、2/(3.1415×0.05×0.05)=0.25kW/cmとなる。
【0268】
また、図23に示すように、実施例4では、7Wまでの励起光パワーがしか測定していないが、図23から、蛍光の飽和点は9W程度以上であると見積もられる。したがって、蛍光の飽和点が仮に9Wであるとすると、実施例4の励起光パワー耐性は、9/(3.1415×0.05×0.05)=1.1kW/cmとなる。
【0269】
したがって、図12図16図18図20、および図23に示す結果から、窒化物系蛍光体は、励起光パワー耐性(レーザーパワー耐性)が低く、ガーネット系蛍光体成分およびマトリックス成分を添加することで、励起光パワー耐性が大きく向上することが判る。
【0270】
また、図25に示す結果から、マトリックス成分の一部に、光散乱成分として、例えば屈折率の高いAlNを含めることで、蛍光パワーが約10%以上向上することが確認された。
【0271】
〔実施例8〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ15wt%、15wt%および70wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。また、実施例1と同様にして、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。蛍光の飽和点の励起光パワーは6Wであり、励起光パワー耐性は、6/(3.1415×0.05×0.05)=0.76kW/cmとなる。また、実施例1と同様にして、上記コンポジットセラミックスからレンズを透過させて出力したビームの蛍光スペクトルを測定した。ピーク波長は605nmであった。
【0272】
〔実施例9〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ20wt%、10wt%および70wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。また、実施例1と同様にして、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。
【0273】
〔実施例10〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ25wt%、5wt%および70wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。また、実施例1と同様にして、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。
【0274】
〔実施例11〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ8wt%、2wt%および90wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。また、実施例1と同様にして、得られたコンポジットセラミックスの蛍光パワーのレーザーパワー依存性を測定した。
【0275】
〔実施例12〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ35wt%、33wt%および32wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0276】
〔比較例10〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ85wt%、15wt%および0wt%とする以外は実施例8と同様にしてコンポジットセラミックスの製造を試みたが、焼結体が崩れるか又は割れてしまい、コンポジットセラミックスが得られなかった。
【0277】
〔比較例11〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ40wt%、40wt%および20wt%とする以外は実施例8と同様にしてコンポジットセラミックスの製造を試みたが、焼結体が崩れるか又は割れてしまい、コンポジットセラミックスが得られなかった。
【0278】
〔比較例12〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ0wt%、30wt%および70wt%とする以外は実施例8と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0279】
〔比較例13〕
図26に示すように、YAG、(BaSr)Si、およびAlの含有量をそれぞれ30wt%、0wt%および70wt%とする以外は実施例8と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0280】
実施例8~12および比較例10~13のコンポジットセラミックスにおけるレーザーパワー依存性および出力ビームのピーク波長を表2に示す。
【0281】
【表2】
【0282】
〔実施例13〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ15wt%、15wt%および70wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0283】
〔実施例14〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ20wt%、10wt%および70wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0284】
〔実施例15〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ25wt%、5wt%および70wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0285】
〔実施例16〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ25wt%、25wt%および50wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0286】
〔実施例17〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ35wt%、33wt%および32wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0287】
〔実施例18〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ10wt%、5wt%および85wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0288】
〔比較例14〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ30wt%、0wt%および70wt%とする以外は実施例13と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0289】
〔比較例15〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ85wt%、15wt%および0wt%とする以外は実施例13と同様にしてコンポジットセラミックスの製造を試みたが、焼結体が崩れて成形体が得られず、コンポジットセラミックスが得られなかった。
【0290】
〔比較例16〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ40wt%、40wt%および20wt%とする以外は実施例13と同様にしてコンポジットセラミックスの製造を試みたが、焼結体が崩れて成形体が得られず、コンポジットセラミックスが得られなかった。
【0291】
〔比較例17〕
図27に示すように、YAG、CaAlSiN、およびAlの含有量をそれぞれ0wt%、30wt%および70wt%とする以外は実施例13と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0292】
〔参考例1〕
YAG、CaAlSiNおよび(LaY)Si11、ならびにAlの含有量をそれぞれ20wt%、総じて10wt%ならびに70wt%とする以外は実施例11と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0293】
〔参考例2〕
YAG、CaAlSiNおよび(LaY)Si11、ならびにAlの含有量をそれぞれ25wt%、総じて5wt%ならびに70wt%とする以外は実施例11と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0294】
〔参考例3〕
YAG、CaAlSiNおよび(LaY)Si11、ならびにAlの含有量をそれぞれ30wt%、総じて0wt%ならびに70wt%とする以外は実施例11と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0295】
〔参考例4〕
(LaY)Si11 、CaAlSiNおよびAlの含有量をそれぞれ20wt%、10wt%および70wt%とする以外は実施例11と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0296】
〔参考例5〕
(LaY)Si11 、CaAlSiNおよびAlの含有量をそれぞれ25wt%、5wt%および70wt%とする以外は実施例11と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0297】
〔参考例6〕
(LaY)Si11 、CaAlSiNおよびAlの含有量をそれぞれ30wt%、0wt%および70wt%とする以外は実施例11と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0298】
〔参考例7〕
(LaY)Si11、ならびにMgOおよびAlの含有量をそれぞれ30wt%、0wt%および70wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0299】
〔参考例8〕
(LaY)Si11、ならびにMgOおよびAlの含有量をそれぞれ30wt%、35wt%および35wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0300】
〔参考例9〕
(LaY)Si11、ならびにMgOおよびAlの含有量をそれぞれ30wt%、70wt%および0wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0301】
〔参考例10〕
(LaY)Si11、ならびにMgOおよびAlの含有量をそれぞれ30wt%、60wt%および10wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0302】
〔参考例11〕
(LaY)Si11、ならびにMgOおよびAlの含有量をそれぞれ10wt%、50wt%および40wt%とする以外は実施例1と同様にしてコンポジットセラミックスを製造した。
【0303】
〔参考例12~16〕
実施例11のコンポジットセラミックスをアンモニア雰囲気で1000℃、3時間加熱するアニール処理を施して参考例12のコンポジットセラミックスを得た。また、実施例18のコンポジットセラミックスをアンモニア雰囲気で1250℃、2時間加熱するアニール処理を施して参考例13のコンポジットセラミックスを得た。また、参考例4のコンポジットセラミックスをアンモニア雰囲気で1000℃、3時間加熱するアニール処理を施して参考例14のコンポジットセラミックスを得た。また、参考例9のコンポジットセラミックスをアンモニア雰囲気で1250℃、2時間加熱するアニール処理を施して参考例15のコンポジットセラミックスを得た。また、参考例8のコンポジットセラミックスをアンモニア雰囲気で1000℃、3時間加熱するアニール処理を施して参考例16のコンポジットセラミックスを得た。
【0304】
参考例12~16のコンポジットセラミックスのそれぞれについて、L表色系における物体色(L値、a値、b値および彩度)を、測色計を用いて測定した
【0305】
また、参考例12~16のコンポジットセラミックスのそれぞれについて、アニール処理前後で蛍光パワーを測定し、アニール処理前の最大の蛍光パワーに対するアニール処理後の最大の蛍光パワーの比率を求めた。当該比率は、たとえば、参考例12であれば、図28に示されるように、アニール処理前の飽和の蛍光パワーに対するアニール処理後の最大の蛍光パワーの比である。また、例えば参考例13であれば図29に示されるように、アニール処理前の飽和の蛍光パワーに対するアニール処理後の飽和の蛍光パワーの比である。結果を表3に示す。表中、「Ba258」は「(Ba0.6Sr0.4Si」を表し、「CASN」は「CaAlSiN 」を表し、「YAG」はCeで賦活化された「YAl12」を表す。
【0306】
【表3】
【0307】
表3に示されるように、アンモニア雰囲気でのアニール処理によって蛍光パワーがより高まっている。また、図28および図29に示されるように、アニール処理後の蛍光パワーは、アニール処理前に比べて励起光パワーで飽和に到達する傾向が見られる。よって、アニール処理によって励起光パワー耐性も高められていることがわかる。
【0308】
〔参考例17〕
参考例8のコンポジットセラミックスを窒素雰囲気下で1150℃、3時間加熱するアニール処理を施して参考例17のコンポジットセラミックスを得た。参考例17のコンポジットセラミックスは白色化し、また蛍光が観察されなかった。
【0309】
窒素雰囲気下で蛍光体を焼結すると、彩度が低下し、内部量子効率も低下した。これは、組成中の窒素の抜け、または賦活剤の失活、によると考えられる。3元系(蛍光体成分二種とマトリックス成分)および2元系(蛍光体成分一種とマトリックス成分)のいずれにおいても、焼結した蛍光体をアンモニア雰囲気でアニールすることによって、蛍光強度がさらに向上した。
【0310】
〔評価〕
実施例16~18ならびに参考例7、8および11のコンポジットセラミックスのそれぞれについて、熱伝導率を測定した。また、実施例16~18ならびに参考例7、8および11のコンポジットセラミックスのそれぞれについて、ビッカース硬度を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0311】
【表4】
【0312】
3元型では、熱伝導率およびビッカース硬度のいずれも、マトリックスの量が増えるほど高くなる傾向が見られる。2元系では、熱伝導率およびビッカース硬度のいずれも十分に高い数値を示す傾向が見られる。また、二元系の結果では、焼結の程度に応じて熱伝導率およびビッカース硬度のいずれもが低下する傾向が見られる。
【0313】
〔蛍光体素子の実施例〕
実施例18のコンポジットセラミックスを用いて蛍光体素子Aおよび蛍光体素子Bを作製した。蛍光体素子Aは、厚さ100μmの実施例21のコンポジットセラミックスの一主面に鏡体を形成し、当該鏡体側の面でコンポジットセラミックスを無機接着剤によって銅合金の基材に接着して構成されている。蛍光体素子Bは、実施例18のコンポジットセラミックスの厚さが50μmである以外は蛍光体素子Aと同様に作製されている。
【0314】
蛍光体素子Aおよび蛍光体素子Bのそれぞれについて、コンポジットセラミックスにレーザー光を照射したときの励起光パワーとそのときの蛍光パワーとの関係を図30に示す。
【0315】
蛍光体素子Aおよび蛍光体素子Bのいずれも、励起光パワーが高まるにつれて蛍光パワーも高まっている。蛍光体素子Bは、蛍光体素子Aに比べて、励起光パワーの増加に伴って蛍光パワーがより増加している。蛍光体素子Bは、蛍光体素子Aに比べて励起光パワーが蛍光パワーに適切に転換されており、よって、実施例18のコンポジットセラミックスは、薄くても効率良く蛍光を発することがわかる。
【0316】
〔耐久性〕
本発明の蛍光体素子を用意し、レーザー光を連続して照射したときの蛍光パワーを測定した。結果を図31に示す。
【0317】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0318】
1、11、12、21、31 コンポジットセラミックス
2 ガーネット系蛍光体成分
3 窒化物系蛍光体成分
4 マトリックス成分
12 光散乱成分
22 第1セラミックス層
23 第2セラミックス層
31a 凹凸
50 蛍光体素子
51 基材
60 レーザー照明装置
61 レーザー光源
62、63 レンズ
図1
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