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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-14
(45)【発行日】2025-11-25
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20251117BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20251117BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20251117BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20251117BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20251117BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20251117BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20251117BHJP
   C08L 75/14 20060101ALI20251117BHJP
【FI】
C08G75/045
C09J4/02
C09J11/06
C09J163/00
C09J175/14
C08G59/66
C08L63/00
C08L75/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023534770
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2022027061
(87)【国際公開番号】W WO2023286701
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2021116461
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大坪 広大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文也
(72)【発明者】
【氏名】坂田 陽子
【審査官】菅原 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0385513(US,A1)
【文献】特開2010-248455(JP,A)
【文献】国際公開第2020/136919(WO,A1)
【文献】特開2021-075698(JP,A)
【文献】特開2018-095829(JP,A)
【文献】特開2016-169266(JP,A)
【文献】特開2015-205943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01-299/08
C08G 18/00- 79/14
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E):
(A)(メタ)アクリロイル基を含む、ウレタン化合物
(B)ウレタン結合を含まない、(メタ)アクリレート化合物
(C)多官能チオール化合物
(D)光ラジカル開始剤
(E)熱硬化促進剤
を含む硬化性樹脂組成物であって、
(B)(メタ)アクリレート化合物が、多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.001~0.2であり、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.~1.3である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)(メタ)アクリレート化合物が、さらに単官能(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(F)エポキシ樹脂を含み、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.5~1.3であり、
[(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]<0.6である、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(F)エポキシ樹脂を含み、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.5~1.3であり、
[(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]<0.6である、請求項2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(C)多官能チオール化合物が3つ以上のチオール基を含む、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)多官能チオール化合物が3官能チオール化合物及び/又は4官能チオール化合物を含む、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(A)ウレタン化合物が、(メタ)アクリロイル基を2つ含むウレタン化合物を含む、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物を含む、接着剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物が硬化された、硬化物。
【請求項10】
請求項9記載の硬化物を含む、半導体装置。
【請求項11】
請求項9記載の硬化物を含む、センサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、それを含む接着剤、それを硬化させて得られる硬化物及びその硬化物を含む半導体装置及びセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線(UV)照射による硬化(UV硬化)、及びそれに続く加熱による硬化(熱硬化)を含む2段階処理によって硬化させるタイプの接着剤(以下「UV-熱硬化型接着剤」と称する)は、多くの分野で使用されている(例えば特許文献1を参照)。UV-熱硬化型接着剤は、UVを接着剤全体に照射できない位置に適用される場合でも、加熱により硬化できるため有用である(例えば特許文献2を参照)。UV-熱硬化型接着剤には、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能チオール化合物を含むものがある。
【0003】
UV-熱硬化型接着剤は特に、組み立てにおいて高精度の位置決めを要する半導体装置、例えばイメージセンサモジュールの製造にしばしば使用されている。イメージセンサモジュールでは、各部品の間の相対的な位置関係が極めて重要である。そのため、イメージセンサモジュールの組み立てでは、各部品の位置決めを高精度で行う必要がある。UV-熱硬化型接着剤を用いると、UV硬化で部品の仮止めを行うことで、熱硬化時における部品の位置ずれを防ぐことができる。また、UV硬化で各部品が仮止めされた熱硬化前の中間組み立て物を、各部品の間の相対的な位置関係を変化させることなく、熱硬化を行う場所に運搬することなども可能になる。そのため、イメージセンサモジュールの製造にUV-熱硬化型接着剤を用いることは、組み立ての効率を向上させるので極めて有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-077024号公報
【文献】国際公開第2018/181421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のUV-熱硬化型接着剤では、接着信頼性が不十分であるという問題があった。各部品をUV-熱硬化型接着剤で接着して組み立て物を作製するとき、紫外線(UV)照射による硬化処理(UV硬化処理)及び加熱による硬化処理(熱硬化処理)で各部品が接着された組み立て物が、落下などにより衝撃を受けることがある。そのような場合、従来のUV-熱硬化型接着剤を用いて作製された組み立て物では、接着されていた部品(被着物)が部分的に、又は完全に剥離してしまうことがあった。
【0006】
また、被着体の構造によっては、UV硬化処理の際、適用されたUV-熱硬化型接着剤全体にUVを照射できない領域が被着体中に存在しうる。このような場合、UV硬化処理完了の時点では、適用されたUV-熱硬化型接着剤の一部は未反応のままで、接着に寄与するUV硬化物(UV硬化処理のみを経験したUV-熱硬化型接着剤)が被着体に接する面積はUV-熱硬化型接着剤が被着体に接する面積の一部のみである。このようなこともあり、熱硬化性に優れるUV-熱硬化型接着剤が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、UV硬化処理及び熱硬化処理の後、落下などにより衝撃を受けても被着物が剥離しない、かつ、熱硬化処理のみに付された場合であっても高い硬化性を示す、接着信頼性に優れたUV-熱硬化型の硬化性樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に限定されるものではないが、次の発明を包含する。
【0010】
1.下記(A)~(E):
(A)(メタ)アクリロイル基を含む、ウレタン化合物
(B)ウレタン結合を含まない、(メタ)アクリレート化合物
(C)多官能チオール化合物
(D)光ラジカル開始剤
(E)熱硬化促進剤
を含む硬化性樹脂組成物であって、
(B)(メタ)アクリレート化合物が、多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.001~0.2であり、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.5~1.3である、硬化性樹脂組成物。
【0011】
2.(B)(メタ)アクリレート化合物が、さらに単官能(メタ)アクリレート化合物を含む、前項1記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
3.さらに(F)エポキシ樹脂を含み、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.5~1.3であり、
[(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]<0.6である、前項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【0013】
4.(C)多官能チオール化合物が3つ以上のチオール基を含む、前項1~3のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物。
【0014】
5.(C)多官能チオール化合物が3官能チオール化合物及び/又は4官能チオール化合物を含む、前項1~4のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物。
【0015】
6.(A)ウレタン化合物が、(メタ)アクリロイル基を2つ含むウレタン化合物を含む、前項1~5のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物。
【0016】
7.前項1~6のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物を含む、接着剤。
【0017】
8.前項1~6のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物、又は前項7に記載の接着剤を硬化させることにより得られうる、硬化物。
【0018】
9.前項8記載の硬化物を含む、半導体装置。
【0019】
10.前項8記載の硬化物を含む、センサモジュール。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリロイル基を含む、ウレタン化合物、(B)ウレタン結合を含まない、(メタ)アクリレート化合物、(C)多官能チオール化合物、(D)光ラジカル開始剤、及び(E)熱硬化促進剤を必須の成分として含む。これらの成分につき以下に説明する。
なお本明細書においては、合成樹脂の分野における慣例に倣い、硬化前の硬化性樹脂組成物を構成する成分に対して、通常は高分子(特に合成高分子)を指す用語「樹脂」を含む名称を、その成分が高分子ではないにも関わらず用いる場合がある。
【0021】
また本明細書においては、「アクリル酸」(又はその誘導体)及び「メタクリル酸」(又はその誘導体)の総称として、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」等の名称を用いる場合がある。これらの用語は各々、独立した1つの用語としても、又は他の用語の一部としても用いられうる。例えば、用語「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味し、用語「(メタ)アクリロイルオキシ基」は「アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基」を意味する。
【0022】
(A)(メタ)アクリロイル基を含む、ウレタン化合物
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)ウレタン化合物を含む。本発明のウレタン化合物は、分子中に(メタ)アクリロイル基を含む。ウレタン化合物とは、ウレタン結合(-NH(C=O)O-)を1つ以上含む化合物を意味する。本発明において用いるウレタン化合物は、後述する多官能チオール化合物中のチオール基と反応する(メタ)アクリロイル基を1つ以上含む。
(A)ウレタン化合物は、好ましくは(メタ)アクリロイル基を(メタ)アクリロイルオキシ基の形態で含む。(メタ)アクリロイルオキシ基を含むウレタン化合物は、1つ以上のウレタン結合及び1つ以上のヒドロキシル基を含む化合物1分子が、1分子以上の(メタ)アクリル酸でエステル化された構造(エステル化されていないヒドロキシル基があってもよい)を有する化合物に該当する。
【0023】
(A)ウレタン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また本発明においては、(メタ)アクリロイル基を含むウレタン化合物が、(メタ)アクリロイル基を2つ以上含むことが好ましく、(メタ)アクリロイル基を2つ含むことがより好ましい。
【0024】
(メタ)アクリロイル基を1つ含むウレタン化合物の例としては、2-(ブチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ブチルカルバモイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、4-(ブチルカルバモイルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、2-(イソプロピルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(イソプロピルカルバモイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、4-(イソプロピルカルバモイルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、2-(フェニルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(フェニルカルバモイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、4-(フェニルカルバモイルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、2-(ベンジルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ベンジルカルバモイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、4-(ベンジルカルバモイルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0025】
(メタ)アクリロイル基を2つ以上含むウレタン化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、活性水素を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応により得られる。なお、本発明で用いられる好ましいウレタン化合物としては、高衝撃吸収性の観点から、ポリカーボネート又はポリエーテルを主骨格とするウレタン化合物が挙げられる。これらのウレタン化合物は、商業的に購入することもでき、本明細書に記載する方法や当該技術においてその他の公知の方法によって製造することもできる。
【0026】
前記ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートが挙げられ、この中でも、剛直性且つ耐湿性の観点から、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環式(脂肪族環状)ポリイソシアネートが好ましい。
【0027】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、m-キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらを単独で、または複数種を混合して使用することができる。
【0028】
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。これらを単独で、または複数種を混合して使用することができる。
【0029】
また、前記ポリオール化合物としては、分子内に2個以上の活性水酸基を有する化合物が挙げられ、例えばポリエーテルジオール系、ポリエステルジオール系、ポリオレフィン系、ポリカーボネートジオール系が挙げられ、具体的には、ポリエチレンジオール、ポリプロピレンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、アジペート系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンジオール、水素化ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、水素化ポリイソプレンジオール等が挙げられる。これらを単独で、または複数種を混合して使用することができる。
【0030】
また、前記活性水素を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。前記前記活性水素を有する(メタ)アクリレートモノマーの代わりに、その類縁体、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等を用いることもできる。これらを単独で、または複数種を混合して使用することができる。
【0031】
(A)ウレタン化合物の重量平均分子量は、硬化性樹脂組成物の与える衝撃吸収性の観点から、好ましくは500~50000であり、より好ましくは500~25000であり、さらに好ましくは700~15000であり、特に好ましくは1000~10000であり、最も好ましくは2000~10000である。
本発明のウレタン化合物の(メタ)アクリレート当量は、好ましくは250~12500であり、より好ましくは350~7500であり、さらに好ましくは500~5000であり、特に好ましくは1000~4500である。
【0032】
本発明で用いられるウレタン化合物は、本発明の硬化性樹脂組成物をUV硬化処理及びそれに続く熱硬化処理に付して得られる硬化物に、適度な柔軟性及び伸び性を付与する。この柔軟性及び伸び性により、この硬化物の衝撃吸収能が大幅に向上する。この結果、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて作製した組み立て物は、落下などにより衝撃を受けても、部品(被着物)の剥離が防止される。
【0033】
ただし、ウレタン化合物は一般に、高い粘度を有する。この化合物の粘度が高すぎると、硬化性樹脂組成物のディスペンサでの吐出性が低下する。本発明においては、硬化性樹脂組成物の適切な吐出性という観点から、本発明のウレタン化合物は、25℃において、好ましくは0.5Pa・s~2000Pa・s、より好ましくは1mPa・s~500Pa・s、さらに好ましくは1Pa・s~200Pa・s、特に好ましくは1Pa・s~100Pa・sの粘度を有する。
【0034】
(B)ウレタン結合を含まない、(メタ)アクリレート化合物
本発明の硬化性樹脂組成物は、(B)(メタ)アクリレート化合物を含む。本発明の(メタ)アクリレート化合物は、分子中にウレタン結合を含まない。本発明の(メタ)アクリレート化合物は、後述する多官能チオール化合物中のチオール基と反応する(メタ)アクリロイル基を、(メタ)アクリロイルオキシ基の形態で1つ以上含む化合物である。ただし、(メタ)アクリロイル基を含むシランカップリング剤は、本発明の(メタ)アクリレート化合物に含まれない。好ましくは、本発明の(メタ)アクリレート化合物は、ケイ素原子を含まない。
(B)(メタ)アクリレート化合物は、上記の構造的要件を満たしている限り、(メタ)アクリロイルオキシ基の形態でない(メタ)アクリロイル基を含んでいてもよい。例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミドは多官能(メタ)アクリレート化合物に該当しない。
【0035】
(B)(メタ)アクリレート化合物は、
・(メタ)アクリロイル基を、(メタ)アクリロイルオキシ基の形態で2つ以上含む化合物である、多官能(メタ)アクリレート化合物;及び
・(メタ)アクリロイル基を、(メタ)アクリロイルオキシ基の形態で1つ含む化合物である、単官能(メタ)アクリレート化合物
に大別される。(B)(メタ)アクリレート化合物は、多官能(メタ)アクリレート化合物を含む。本発明の一実施形態において、(B)(メタ)アクリレート化合物は、さらに単官能(メタ)アクリレート化合物を含む。
【0036】
多官能(メタ)アクリレート化合物の例としては、
-ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート;
-ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート;
-イソシアヌル骨格を有する多官能(メタ)アクリレート;
-ジメチロールトリシクロデカンのジ(メタ)アクリレート;
-トリメチロールプロパン又はそのオリゴマーの多官能(メタ)アクリレート;
-ジトリメチロールプロパンの多官能(メタ)アクリレート;
-ペンタエリスリトール又はそのオリゴマーの多官能(メタ)アクリレート;
-ジペンタエリスリトールの多官能(メタ)アクリレート;及び
-ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレート;
-ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;
-ポリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート;
-鎖式又は環式のアルカンジオールのジ(メタ)アクリレート;
-ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート;
-1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル;
-グリセリンの多官能(メタ)アクリレート;
等を挙げることができる。これらは、EO変性またはPO変性されていてもよい。これらの中でも、ジメチロールトリシクロデカンのジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンの(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、「多官能(メタ)アクリレート」とは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上含む化合物のことを指す。例えば、「トリメチロールプロパン又はそのオリゴマーの多官能(メタ)アクリレート」とは、1分子のトリメチロールプロパン又はそのオリゴマーと2分子以上の(メタ)アクリル酸とのエステルを指す。
【0037】
本発明においては、多官能(メタ)アクリレート化合物が2官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。2官能(メタ)アクリレート化合物とは、(メタ)アクリロイル基を、(メタ)アクリロイルオキシ基の形態で2つ含む多官能(メタ)アクリレート化合物である。同様に、3官能及び4官能(メタ)アクリレート化合物とは、(メタ)アクリロイル基を、(メタ)アクリロイルオキシ基の形態で各々3つ及び4つ含む多官能(メタ)アクリレート化合物である。
(B)(メタ)アクリレート化合物のうち、多官能(メタ)アクリレート化合物の分子量は、硬化性の観点から、好ましくは150~700であり、より好ましくは150~600であり、さらに好ましくは150~500であり、特に好ましくは180~495であり、最も好ましくは200~490である。なお、多官能(メタ)アクリレート化合物がポリマーである場合や複数の化学種を含む場合には、前記多官能(メタ)アクリレート化合物の分子量は、重量平均分子量を表す。
【0038】
一方、単官能(メタ)アクリレート化合物の例としては、
-エチル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート等の、1価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル;
-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、アクリル酸イソノニル、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、1-ナフタレンメチル(メタ)アクリレート1-エチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、1-メチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、1-エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、イソボルニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3ージオキソランー4-イル)メチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンタニル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンタニル(メタ)アクリレート、2-イソプロピルアダマンタン-2-イル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、(アダマンタン-1-イルオキシ)メチル(メタ)アクリレート、2-イソプロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、1-メチル-1-エチル-1-アダマンチルメタノール(メタ)アクリレート、1,1-ジエチル-1-アダマンチルメタノール(メタ)アクリレート、2-シクロヘキシルプロパン-2-イル(メタ)アクリレート、1-イソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ-2-フラニル(メタ)アクリレート、2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル(メタ)アクリレート、(5-オキソテトラヒドロフラン-2-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、1-エトキシエチル(メタ)アクリレート等の、多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート
等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)(メタ)アクリレート化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート化合物の分子量は、硬化性の観点から、好ましくは100~400であり、より好ましくは120~380であり、さらに好ましくは140~360であり、特に好ましくは160~340である。なお、単官能(メタ)アクリレート化合物がポリマーである場合や複数の化学種を含む場合には、前記単官能(メタ)アクリレート化合物の分子量は、重量平均分子量を表す。
【0039】
本発明の(メタ)アクリレート化合物が、多官能(メタ)アクリレート化合物に加えて単官能(メタ)アクリレート化合物を含む場合、多官能チオール化合物のチオール基は、ウレタン化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基に対して過剰である。この過剰分のチオール基が、UV照射下及び/又は加熱下で、単官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基と反応する。単官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基とチオール基の反応では、架橋が形成されない。この結果、得られる硬化物は、単官能(メタ)アクリレート化合物を含まない硬化性樹脂組成物から得られる硬化物に比して、架橋密度が低くなる。この架橋密度の低下により、硬化物の柔軟性が向上し、物性が改善されることがある。例えば、硬化物の衝撃吸収能がさらに向上し、硬化物の被着体からの剥離がより起こりにくくなり得る。
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、単官能(メタ)アクリレート化合物を粘度調節剤として加えることもある。上述のように、上記(A)ウレタン化合物は粘度が高いので、本発明の硬化性樹脂組成物が多官能(メタ)アクリレート化合物に加えて単官能(メタ)アクリレート化合物を含む場合、ディスペンサでの吐出性を適切なものとすることが容易となる。
【0040】
本発明の(メタ)アクリレート化合物が、多官能(メタ)アクリレート化合物に加えて単官能(メタ)アクリレート化合物を含む場合、[単官能(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]は0.01~0.5であることが好ましく、0.1~0.4であることがより好ましい。[単官能(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]が上記の範囲にある場合、硬化物の落下耐性がさらに向上する、硬化性樹脂組成物の粘度が低下し、吐出性が改善する等の利点がある。
[単官能(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]>0.5であると、UVおよび熱硬化時の反応性が不十分になることがある。
【0041】
(C)多官能チオール化合物
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)多官能チオール化合物を含む。本発明において用いる多官能チオール化合物は、前記ウレタン化合物及び(メタ)アクリレート化合物中の(メタ)アクリロイル基(正確には、その中の二重結合)と反応するチオール基を2つ以上含む化合物である。多官能チオール化合物は、3つ以上のチオール基を含むことが好ましい。多官能チオール化合物は、3官能チオール化合物及び/又は4官能チオール化合物を含むことがより好ましい。3官能及び4官能のチオール化合物とは、チオール基を各々3つ及び4つ含むチオール化合物のことである。
【0042】
多官能チオール化合物は、分子中にエステル結合等の加水分解性の部分構造を有する(即ち加水分解性の)チオール化合物と、そのような部分構造を有しない(即ち非加水分解性の)チオール化合物に大別される。
加水分解性の多官能チオール化合物の例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:TMMP)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学株式会社製:TEMPIC)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:PEMP)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:EGMP-4)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:DPMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製:カレンズMT(登録商標)PE1)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工株式会社製:カレンズMT(登録商標)NR1)等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
一方、非加水分解性の多官能チオール化合物の例としては、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル(四国化成工業株式会社製:TS-G)、(1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル(四国化成工業株式会社製:C3 TS-G)、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(SC有機化学株式会社製:PEPT)、ペンタエリスリトールテトラプロパンチオール、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,1,5,5-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3-チアペンタン、1,1,6,6-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3,4-ジチアヘキサン、2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、3-メルカプトメチルチオ-1,7-ジメルカプト-2,6-ジチアヘプタン、3,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,9-ジメルカプト-2,5,8-トリチアノナン、3-メルカプトメチルチオ-1,6-ジメルカプト-2,5-ジチアヘキサン、1,1,9,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-5-(3,3-ビス(メルカプトメチルチオ)-1-チアプロピル)3,7-ジチアノナン、トリス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、トリス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、テトラキス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、テトラキス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、3,5,9,11-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,13-ジメルカプト-2,6,8,12-テトラチアトリデカン、3,5,9,11,15,17-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,19-ジメルカプト-2,6,8,12,14,18-ヘキサチアノナデカン、9-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデカン、3,4,8,9,13,14-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,16-ジメルカプト-2,5,7,10,12,15-ヘキサチアヘキサデカン、8-[ビス(メルカプトメチルチオ)メチル]-3,4,12,13-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,15-ジメルカプト-2,5,7,9,11,14-ヘキサチアペンタデカン、4,6-ビス[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7-メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7-メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-6-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチアン、1,1-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1-[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル]-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、9-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,4,6,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、4,6-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-6-[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4,5-ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-1,3-ジチオラン、4-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、2-{ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メチル}-1,3-ジチエタン、2-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、4-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-5-[1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)-4-メルカプト-3-チアブチルチオ]-1,3-ジチオラン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、
・前記(A)(メタ)アクリロイル基を含む、ウレタン化合物に含まれる(メタ)アクリロイル基の総数(総量)、
・前記(B)ウレタン結合を含まない、(メタ)アクリレート化合物に含まれる(メタ)アクリロイル基の総数(総量)、及び
・前記(C)多官能チオール化合物に含まれるチオール基の総数(総量)
が、所定の関係を満足することが必要である。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物においては、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.001~0.2であり、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.5~1.3である。
【0045】
(メタ)アクリロイル基を含むウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数は、上記ウレタン化合物に含まれる上記ウレタン化合物の質量(g)を、そのウレタン化合物の(メタ)アクリレート当量で割った商(複数種の上記ウレタン化合物が含まれる場合は、各ウレタン化合物についてのそのような商の合計)である。(メタ)アクリレート当量は、上記ウレタン化合物の分子量を、そのウレタン化合物1分子中の(メタ)アクリロイル基数で割った商として算出される。
ウレタン結合を含まない(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数も、上記ウレタン化合物についてのそれと同様にして求めることができる。
【0046】
多官能チオール化合物についてのチオール基の総数は、多官能チオール化合物に含まれる多官能チオール化合物の質量(g)を、その多官能チオール化合物のチオール当量で割った商(多官能チオール化合物が複数含まれる場合は、各多官能チオール化合物についてのそのような商の合計)である。チオール当量は、ヨウ素滴定法により決定することができる。この方法は広く知られており、例えば、特開2012-153794号の段落0079に開示されている。この方法ではチオール当量を求めることができない場合には、その多官能チオール化合物の分子量を、その多官能チオール化合物1分子中のチオール基数で割った商として算出しても良い。
【0047】
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]が0.2超であると、ディスペンス時の吐出性が低下する、硬化性が不十分になる等の問題が生じるおそれがある。一方、[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]が0.001未満であると、硬化物の柔軟性が不十分になり、硬化物が被着体から剥離しやすい。
【0048】
本発明において、[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]は、好ましくは0.001~0.15であり、より好ましくは0.001~0.125であり、さらに好ましくは0.002~0.1である。
【0049】
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]が0.5未満であると、硬化性が不十分になることがある。一方、[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]が1.3超であると、硬化性が不十分になることがある。
【0050】
本発明において、[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]は、好ましくは0.6~1.3であり、より好ましくは0.7~1.2であり、さらに好ましくは0.8~1.2であり、特に好ましくは0.9~1.1である。
【0051】
(D)光ラジカル開始剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、光ラジカル開始剤を含む。光ラジカル開始剤を用いることにより、硬化性樹脂組成物を短時間のUV照射で硬化させることが可能となる。本発明において使用可能な光ラジカル開始剤は、特に限定されず、公知のものを使用することが可能である。光ラジカル開始剤の例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフインオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
(E)熱硬化促進剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化促進剤を含む。熱硬化促進剤を用いることにより、本発明の硬化性樹脂組成物を低温条件下でも短時間で硬化させることができる。本発明の一実施形態において、熱硬化促進剤は塩基性物質である。塩基性物質は、3級アミン化合物及び/又はイミダゾール化合物を含むことが好ましい。これらの塩基性物質を使用すると、チオール基と(メタ)アクリロイル基の硬化反応を効率よく促進させることができる。熱硬化促進剤は、潜在性硬化触媒であることが好ましい。潜在性硬化触媒とは、室温では不活性の状態で、加熱することにより活性化されて、硬化触媒として機能する化合物であり、例えば、常温で固体のイミダゾール化合物;アミン化合物とエポキシ化合物の反応生成物(アミン-エポキシアダクト系)等の固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒;アミン化合物とイソシアネート化合物または尿素化合物の反応生成物(尿素アダクト系)等が挙げられる。
【0053】
3級アミン化合物及び/又はイミダゾール化合物を含む潜在性硬化触媒の市販品の代表的な例としては、「アミキュアPN-23」(商品名、味の素ファインテクノ株式会社製)、「アミキュアPN-40」(商品名、味の素ファインテクノ株式会社製)、「アミキュアPN-50」(商品名、味の素ファインテクノ株式会社製)、「ノバキュアHX-3742」(商品名、旭化成株式会社製)、「ノバキュアHX-3721」(商品名、旭化成株式会社製)、「ノバキュアHXA9322HP」(商品名、旭化成株式会社製)、「ノバキュアHXA3922HP」(商品名、旭化成株式会社製)、「ノバキュアHXA3932HP」(商品名、旭化成株式会社製)、「ノバキュアHXA9382HP」(商品名、旭化成株式会社製)、「フジキュアーFXR1121」(商品名、株式会社T&K TOKA製)、「フジキュアーFXE-1000」(商品名、株式会社T&K TOKA製)、「フジキュアーFXR-1020」(商品名、株式会社T&K TOKA製)、「フジキュアーFXR-1030」(商品名、株式会社T&K TOKA製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。熱硬化促進剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。熱硬化促進剤としては、ポットライフ、硬化性の観点から、固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒が好ましい。
【0054】
なお熱硬化促進剤には、多官能エポキシ樹脂に分散された分散液の形態で提供されるものがある。そのような形態の熱硬化促進剤を使用する場合、それが分散している多官能エポキシ樹脂の量は、本発明の硬化性樹脂組成物に場合により含まれる、後述のエポキシ樹脂の量に含まれることに注意すべきである。
【0055】
また本発明の硬化性樹脂組成物は、適切な吐出性という観点から、25℃の測定において、好ましくは1Pa・s~100Pa・s、より好ましくは5Pa・s~90Pa・s、さらに好ましくは10Pa・s~80Pa・s、特に好ましくは20Pa・s~70Pa・sの粘度を有する。粘度は、例えば、ブルックフィールド社製、デジタル温度計DV1、スピンドルSC4-14を用いて、回転速度50rpmの条件で測定できる。
【0056】
本発明の硬化性組成物は、所望であれば、上記成分(A)~(E)以外の任意成分、例えば以下に述べるエポキシ樹脂や添加剤を必要に応じて含有してもよい。
【0057】
(F)エポキシ樹脂
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望であれば、(F)エポキシ樹脂を含んでいてもよい。エポキシ樹脂は、上記多官能チオール化合物中のチオール基と反応するエポキシ基を1つ以上含む化合物である。通常、エポキシ基とチオール基は、UV照射下では反応しないが、加熱下では反応しうる。
【0058】
エポキシ樹脂は、単官能エポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂に大別される。エポキシ樹脂は、これらのうち一方のみを含んでもよく、これら両方を含んでもよい。
【0059】
単官能エポキシ樹脂は、エポキシ基を1つ含む、エポキシ樹脂である。単官能エポキシ樹脂の例としては、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-s-ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、α-ピネンオキシド、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステル、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸グリシジルエステル等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
多官能エポキシ樹脂は、エポキシ基を2つ以上含む、エポキシ樹脂である。多官能エポキシ樹脂は、脂肪族多官能エポキシ樹脂と芳香族多官能エポキシ樹脂に大別される。脂肪族多官能エポキシ樹脂は、芳香環を含まない構造を有する多官能エポキシ樹脂である。脂肪族多官能エポキシ樹脂の例としては、
-(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(2-メチルオキシラニル)-1-メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテルのようなジエポキシ樹脂;
-トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシ樹脂;
-ビニル(3,4-シクロヘキセン)ジオキシド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,1-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-m-ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;
-テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;
-1,3-ジグリシジル-5-メチル-5-エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;及び
-1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格を有するエポキシ樹脂
などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
芳香族多官能エポキシ樹脂は、芳香環を含む構造を有する多官能エポキシ樹脂である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂など、従来頻用されているエポキシ樹脂にはこの種のものが多い。芳香族多官能エポキシ樹脂の例としては、
-ビスフェノールA型エポキシ樹脂;
-p-グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;
-ビスフェノールF型エポキシ樹脂;
-ノボラック型エポキシ樹脂;
-テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂;
-フルオレン型エポキシ樹脂;
-ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂;
-1,4-フェニルジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシ樹脂;
-3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;
-ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;及び
-ナフタレン環含有エポキシ樹脂
などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、
[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]=0.5~1.3であり、
[(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]<0.6であることが好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、[(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]≧0.05であることが特に好ましい。本発明のある態様においては、[(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]は、0.05~0.6、好ましくは、0.2~0.4である。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物において、(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数、(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数、(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数及び(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数が、上記の関係を満足する場合、多官能チオール化合物のチオール基は、ウレタン化合物及び(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基に対して過剰である。この過剰分のチオール基が、加熱下でエポキシ基と反応する。しかし実際には、UV硬化処理により重合体が形成され、系内でのエポキシ樹脂の運動が制限されるため、エポキシ基とチオール基の反応では、ほとんど架橋が形成されない。この結果、得られる硬化物は、エポキシ樹脂を含まない硬化性樹脂組成物から得られる硬化物に比して、架橋密度が低く柔軟である。この柔軟性により、硬化物の衝撃吸収能がさらに向上し、硬化物の被着体からの剥離がより起こりにくくなる。なお、エポキシ基とチオール基とは反応するため、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の開環が起こってヒドロキシル基が生じる。このヒドロキシル基は、硬化物の被着体に対する接着力の向上、ひいては硬化物の被着体からの剥離の防止に寄与しうる。
【0064】
エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数は、エポキシ樹脂の質量(g)を、そのエポキシ樹脂のエポキシ当量で割った商(複数種のエポキシ樹脂が含まれる場合は、各エポキシ樹脂についてのそのような商の合計)である。エポキシ当量は、JIS K7236に記載されている方法により求めることができる。この方法ではエポキシ当量を求めることができない場合には、そのエポキシ樹脂の分子量を、そのエポキシ樹脂1分子中のエポキシ基数で割った商として算出しても良い。
【0065】
・充填剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望であれば、充填剤、特にシリカフィラー及び/又はタルクフィラーを含んでいてもよい。充填剤は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化物の耐サーマルサイクル性を向上させるために添加することができる。充填剤の添加により耐サーマルサイクル性が向上するのは、硬化物の線膨張係数が減少する、即ちサーマルサイクルによる硬化物の膨張・収縮が抑制されるためである。また、硬化時の収縮も抑制される。
【0066】
充填剤を用いる場合、その平均粒径は0.1~10μmであることが好ましい。本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、ISO-13320(2009)に準拠してレーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径(d50)を指す。
【0067】
充填剤を用いる場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の総質量に対し、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましい。
【0068】
充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカフィラー及びタルクフィラー以外の充填剤の具体的な例としては、アルミナフィラー、炭酸カルシウムフィラー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィラー、シリコーンフィラー、アクリルフィラー、スチレンフィラー等が挙げられるが、これらに限定されない。
また本発明において、充填剤は、表面処理されていてもよい。
【0069】
・安定剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望であれば、安定剤を含んでいてもよい。安定剤は、本発明の硬化性樹脂組成物に、その貯蔵安定性を向上させ、ポットライフを長くするために添加することができる。一液型接着剤の安定剤として公知の種々の安定剤を使用することができるが、貯蔵安定性を向上させる効果の高さから、液状ホウ酸エステル化合物、アルミキレート及び有機酸からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0070】
液状ホウ酸エステル化合物の例としては、2,2'-オキシビス(5,5'-ジメチル-1,3,2-オキサボリナン)、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリス(2-エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13-ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7-トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ-o-トリルボレート、トリ-m-トリルボレート、トリエタノールアミンボレート等が挙げられる。液状ホウ酸エステル化合物は常温(25℃)で液状であるため、配合物粘度を低く抑えられるため好ましい。アルミキレートとしては、例えばアルミキレートA(川研ファインケミカル株式会社製)を用いることができる。有機酸としては、例えばバルビツール酸を用いることができる。
【0071】
安定剤を添加する場合、その添加量は、硬化性樹脂組成物の合計量100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましく、0.05~25質量部であることがより好ましく、0.1~20質量部であることが更に好ましい。
【0072】
・カップリング剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望であれば、カップリング剤を含んでいてもよい。カップリング剤、特にシランカップリング剤の添加は、接着強度向上の観点から好ましい。シランカップリング剤は、無機材料と化学結合しうる官能基と、有機材料と化学結合しうる官能基を含む、2種以上の異なる官能基をその分子中に有する有機ケイ素化合物である。一般に、無機材料と化学結合しうる官能基は加水分解性シリル基であり、アルコキシ基、特にメトキシ基及び/又はエトキシ基を含むシリル基が、この官能基として用いられている。有機材料と化学結合しうる官能基としては、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、スチリル基、非置換又は置換アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基等が用いられている。カップリング剤としては、前記の官能基を有する各種シランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、シランカップリング剤(上記充填剤の表面処理に用いられるものを含む)は、(メタ)アクリロイル基や、エポキシ基等の反応性官能基を有している場合がある。しかし、本発明において、シランカップリング剤は、成分(A)~(F)に含まれない。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物において、カップリング剤の添加量は、接着強度向上の観点から、硬化性樹脂組成物の合計量100質量部に対して0.01質量部から50質量部であることが好ましく、0.1~30質量部であることがより好ましい。
【0074】
・揺変剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望であれば、揺変剤を含んでいてもよい。本発明において用いる揺変剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。本発明に用いられる揺変剤の例としては、シリカ等が挙げられるが、これらに限定されない。シリカは、天然シリカ(珪石、石英など)であってもよく、合成シリカであってもよい。合成シリカは、乾式法及び湿式法を含む任意の方法で合成されうる。
また揺変剤は、表面処理剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)で表面処理されていてもよい。本発明においては、揺変剤の少なくとも一部が表面処理されていることが好ましい。揺変剤の一次粒子の平均粒径は5~50nmであることが好ましい。
【0075】
本発明の硬化性樹脂組成物は、揺変剤を、硬化性樹脂組成物の総質量に対して0.1~30質量%含むことが好ましく、1~20質量%含むことがより好ましく、1~15質量%含むことが特に好ましい。
【0076】
・その他の添加剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望であれば、本発明の趣旨を損なわない範囲で、その他の添加剤、例えばカーボンブラック、チタンブラック、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、粘度調整剤、難燃剤、着色剤、溶剤等を含んでいてもよい。各添加剤の種類、添加量は常法通りである。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されない。例えば、成分(A)~(E)及び所望であれば成分(F)や添加剤を、適切な混合機に同時に、または別々に導入して、必要であれば加熱により溶融しながら撹拌して混合し、均一な組成物とすることにより、本発明の硬化性樹脂組成物を得ることができる。この混合機は特に限定されないが、撹拌装置及び加熱装置を備えたライカイ機、ヘンシェルミキサー、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0078】
このようにして得られた硬化性樹脂組成物は、先に述べたように、
・紫外線(UV)照射による硬化処理(UV硬化処理)、及び/又は
・加熱による硬化処理(熱硬化処理)
を含む硬化処理に付すことによって、硬化物に変換することができる。
【0079】
前記UV硬化処理は、常温において、本発明の硬化性樹脂組成物に、十分な積算光量の紫外線を受光させることによって行うことができる。照射強度は、100~10000mW/cmであることが好ましく、1000~9000mW/cmであることがより好ましい。紫外線の波長は、315~450nmであることが好ましく、340~430nmであることがより好ましく、350~380nmであることが特に好ましい。紫外線の光源は特に限定されず、窒化ガリウム系UV-LED等を用いることができる。本発明の硬化性樹脂組成物が受光する紫外線の積算光量は、好ましくは200mJ/cm以上であり、より好ましくは500mJ/cm以上であり、さらに好ましくは1000mJ/cm以上であり、特に好ましくは2000mJ/cm以上である。積算光量の上限に特に制限はなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で自由に設定することができる。紫外線の積算光量は、紫外線積算光量計および受光器等の当該分野で通常用いられる測定機器を用いて測定することができる。例えば、中心波長を365nmとした紫外線の波長領域(310~390nm)における積算光量は、紫外線積算光量計(ウシオ電機株式会社製、UIT-250)および受光器(ウシオ電機株式会社製、UVD-S365)を用いて測定することができる。
【0080】
一方、熱硬化は、UV硬化後の本発明の硬化性樹脂組成物を、適切な条件下で加熱することによって行うことができる。この加熱は、60~120℃で行うことが好ましく、60~100℃で行うことがより好ましく、70~90℃で行うことが特に好ましい。またこの加熱は、5~180分間行うことが好ましく、10~120分間行うことがより好ましく、20~70分間行うことが特に好ましい。
【0081】
本発明の硬化性樹脂組成物をUV硬化処理及びそれに続く熱硬化処理に付して得られる硬化物は、従来のUV-熱硬化型接着剤が与える硬化物に比して、柔軟性及び伸び性が向上しており、これに伴って衝撃吸収能も大幅に向上している。そのため、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて作製された組み立て物が落下などにより不慮の衝撃を受けても、部品(被着物)の剥離が防止される。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、熱処理のみに付して硬化物とする場合も、十分な硬化性を示す。本発明の硬化性樹脂組成物のこの性質は、UV硬化処理及びそれに続く熱硬化処理を行う場合でも、さらなる接着信頼性の向上に資する。これは、UV硬化処理の際に、硬化性樹脂組成物にUV照射を受けない部分が存在したとしても、その部分は続く熱硬化によって十分硬化することを意味するからである。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、種々の電子部品を含む半導体装置や、電子部品を構成する部品同士を接合するための接着剤、又はその原料として用いることができる。
【0083】
本発明においては、本発明の硬化性樹脂組成物を含む接着剤も提供される。本発明の接着剤は、例えば、モジュールや電子部品などの固定に好適である。
また、本発明においては、本発明の硬化性樹脂組成物又は接着剤を、UV硬化処理、及び/又は熱硬化処理により硬化させることにより得られうる硬化物も提供される。好ましくは、この硬化物は、UV硬化処理の後に熱硬化処理に付されることによって調製される。本発明においてはさらに、本発明の硬化物を含む半導体装置も提供される。本発明においてはさらに、本発明の半導体装置を含むセンサモジュールも提供される。
【実施例
【0084】
以下、本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお以下の実施例において、部、%は、断りのない限り質量部、質量%を示す。
【0085】
実施例1~20、比較例1~4
表1に示す配合に従って、3本ロールミルを用いて所定の量の各成分を混合することにより、硬化性樹脂組成物を調製した。表1において、各成分の量は質量部(単位:g)で表されている。
【0086】
(A)(メタ)アクリロイル基を含む、ウレタン化合物
実施例及び比較例において、(メタ)アクリロイル基を含む、ウレタン化合物として用いた化合物は、以下の通りである。
(A-1):ポリエーテル系ウレタンアクリレート(商品名:アートレジンUN6200、根上工業株式会社製、(メタ)アクリレート当量:3250)
(A-2):アダクトタイプウレタンアクリレート(商品名:アートレジンUN-2601、根上工業株式会社製、(メタ)アクリレート当量:800)
(A-3):軟質ウレタンアクリレート(商品名:紫光(登録商標)UV-3000B、三菱ケミカル株式会社製、(メタ)アクリレート当量:9000)
(A-4):ポリカーボネート系ウレタンアクリレート(商品名:UN-9200A、根上工業株式会社製、(メタ)アクリレート当量:7500)
(A-5):軟質ウレタンアクリレート(商品名:紫光(登録商標)UV-2000B、三菱ケミカル株式会社製、(メタ)アクリレート当量:6500)
(A-6):ポリカーボネート系ウレタンアクリレート(商品名:UN-5590、根上工業株式会社製、(メタ)アクリレート当量:4500)
【0087】
(B)ウレタン結合を含まない、(メタ)アクリレート化合物
実施例及び比較例において、ウレタン結合を含まない、(メタ)アクリレート化合物として用いた化合物は、以下の通りである。
(b1)多官能(メタ)アクリレート化合物
(B-1):ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(商品名:ライトアクリレートDCP-A、共栄社化学株式会社製、(メタ)アクリレート当量:152)
(B-2):2-(2-アクリロイルオキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-アクリロイルオキシメチル-5-エチル-1,3-ジオキサン(商品名:KAYARAD R-604、日本化薬株式会社製、(メタ)アクリレート当量:163)
(B-3):ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(商品名:EBECRYL 140、ダイセル・オルネクス株式会社製、(メタ)アクリレート当量:110)
(b2)単官能(メタ)アクリレート化合物
(B-4):イソボルニルアクリレート(商品名:ライトアクリレートIBXA、共栄社化学株式会社製、(メタ)アクリレート当量:208)
(B-5):4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート(商品名:コーシルマー(登録商標)TBCHA(登録商標)、KJケミカルズ株式会社製、(メタ)アクリレート当量:198)
【0088】
(C)多官能チオール化合物
実施例及び比較例において、(C)多官能チオール化合物として用いた化合物は、以下の通りである。
(C-1):ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(商品名:PEMP、SC有機化学株式会社製、チオール当量:122)
(C-2)::1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル(商品名:C3 TS-G、四国化成工業株式会社製、チオール当量:114)
【0089】
(D)光ラジカル開始剤
(D-1):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.製)
(D-2):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO、IGM Resins B.V.製)
【0090】
(E)熱硬化促進剤
実施例及び比較例において、(E)熱硬化促進剤として用いた化合物は、以下の通りである。
(E-1):アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化触媒1(商品名:フジキュアーFXR1121、株式会社T&K TOKA製)
(E-2):アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化触媒2(商品名:アミキュアPN-23、味の素ファインテクノ株式会社製)
【0091】
(F)エポキシ樹脂
実施例及び比較例において、(F)エポキシ樹脂として用いた化合物は、以下の通りである。
(F-1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:JER834、三菱ケミカルホールディングス製、エポキシ当量:250)
(F-2):1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(商品名:ショウフリー(登録商標)CDMDG、昭和電工株式会社製、エポキシ当量:136)
【0092】
(G)その他の添加剤
(g1)充填剤
実施例及び比較例において、充填剤として用いた化合物は、以下の通りである。
(G-1):合成球状シリカ(商品名:SE2200SEE、株式会社アドマテックス製)
(G-2):微粒子タルク(商品名:5000PJ、松村産業株式会社製)
(g2)安定剤
実施例及び比較例において、安定剤として用いた化合物は、以下の通りである。
(G-3):ホウ酸トリイソプロピル(東京化成工業株式会社製)
(G-4):N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)
(g3)揺変剤
実施例及び比較例において、揺変剤として用いた化合物は、以下の通りである。
(G-5):ヒュームドシリカ(商品名:CAB-O-SIL(登録商標)TS-720、Cabot Corporation製、ポリジメチルシロキサンで表面処理されている)
表中の以下の記号は、以下を表す。
[(A)+(b1)+(b2)+(F)]/(C):[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(b1)多官能(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(b2)単官能(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]
(A)/(C):[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]
[(A)+(b1)]/(C):[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(b1)多官能(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]
(b2)/(C):[(b2)単官能(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]
(F)/(C):[(F)エポキシ樹脂についてのエポキシ基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]
【0093】
(熱硬化性の評価)
2枚のガラス板に、シリコーン系離型剤を各々塗布した。これらのガラス板の一方の、離型剤が塗布された面に、直方体状の高さ0.3mmのポリイミド製スペーサー2つを載せ、それらの間に硬化性樹脂組成物を塗布した。このガラス板に、他方のガラス板を、離型剤が塗布された面を下にして、硬化性樹脂組成物及びスペーサーが2枚のガラス板で挟まれるようにして載せた。2枚のガラス板の間の硬化性樹脂組成物を、送風乾燥機中にて、80℃で60分間の加熱による熱硬化処理に付した。
熱硬化処理完了時に、硬化性樹脂組成物がその形状を維持したまま剥離しうる膜を形成していたか否かに基づいて、硬化性樹脂組成物の熱硬化性を各々評価した。表中の記号「〇」は、熱硬化処理完了時に、硬化性樹脂組成物がその形状を維持したまま剥離しうる膜を形成していたことを示す。表中の記号「×」は、熱硬化処理完了時に、硬化性樹脂組成物がその形状を維持したまま剥離しうる膜を形成していなかったことを示す。
【0094】
(落下耐性の評価)
上記(熱硬化性の評価)が「〇」だった樹脂組成物について、落下耐性の評価を以下のように行った。
2.5cm×7.5cm×2mmの液晶ポリマー(ラペロス(登録商標) E463i、ポリプラスチックス株式会社製)製の板(以下「LCP板」と称する)上の8箇所に、直径2mmの孔を設けた厚さ150μmのポリイミドフィルムを用いて、孔版印刷により、硬化性樹脂組成物を円形となるように印刷した。印刷後の組成物は、2mmφで、厚さ0.1mmであった。印刷した硬化性樹脂組成物上に、各々1.5mm×3mm×0.5mmのアルミナチップ8個を、1.5mm×0.5mmの面が下になるように載せた。硬化性樹脂組成物を、エクセリタス・テクノロジーズ社製UV LED照射装置AC475を用いる、積算光量2000mJ/cm(ウシオ電機株式会社製UIT-250(受光機UVD-365を接続)にて測定)での、UV照射によるUV硬化処理、次いで、送風乾燥機中における、80℃で60分間の加熱による熱硬化処理に付すことにより、アルミナチップをLCP板に接着した。このアルミナチップが接着されたLCP板を試料として用い、以下のようにして、全自動落下試験装置FIT-18(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製)を用いて落下試験を行った。
【0095】
上記試料を、上記試験装置付属の固定治具(総重量160g)に落下の衝撃で外れないように固定し、この固定治具を上記試験装置にセットした。このとき、試料が固定治具ごと試験装置にセットされた状態において、試料のアルミナチップが接着されている面を上にし、LCP板が地面と水平になるようにした。その後、固定治具ごと試料を強制落下させることにより、試料に落下衝撃を負荷した。試料の強制落下は、試験装置を適切に設定することにより、衝突直前の速度が5424mm/sである条件下で行った。1つの試料について、接着された8個のアルミナチップが全て外れるまで、上記落下試験を繰り返した。
落下耐性の評価は、8個のアルミナチップが全て外れるまでに要した落下試験の回数に基づいて行った。落下試験の回数が5回以上であった場合、落下耐性を〇と評価し、落下試験の回数が5回未満であった場合、落下耐性を×と評価した。結果を表1に示す。
【0096】
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】
【0097】
(結果の考察)
表1より明らかなように、適切な量の(A)ウレタン化合物、(B)(メタ)アクリレート化合物、(C)多官能チオール化合物、(D)光ラジカル開始剤及び(E)熱硬化促進剤を含む、実施例1~20の硬化性樹脂組成物を用い、UV硬化処理及び熱硬化処理を行って接着された部品(被着物)は、落下により衝撃を受けても外れにくい。また、実施例1~20の硬化性樹脂組成物はいずれも、熱硬化処理のみに付された場合でも、十分に硬化されていた。なお、実施例1~20の硬化性樹脂組成物はいずれも、上記UV硬化処理のみに付された場合でも、十分に硬化されていた。
【0098】
一方、[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]が0.001未満である硬化性樹脂組成物を用い、UV硬化処理及び熱硬化処理を行って接着された部品(被着物)は、落下により衝撃を受けると外れてしまう(比較例1)。[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]が0.2超である硬化性樹脂組成物は、熱硬化処理のみに付された場合、十分に硬化されない(比較例2)。
また、[(A)ウレタン化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数+(B)(メタ)アクリレート化合物についての(メタ)アクリロイル基の総数]/[(C)多官能チオール化合物についてのチオール基の総数]が0.5~1.3の範囲にない硬化性樹脂組成物は、熱硬化処理のみに付された場合、十分に硬化されない(比較例3~4)。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の硬化性樹脂組成物は、UV硬化処理及びそれに続く熱硬化処理により、適度な柔軟性及び伸び性を有し、従来のUV-熱硬化型接着剤が与える硬化物に比して、衝撃吸収能が向上した硬化物を与える。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化処理のみに付された場合であっても、高い硬化性を示す。この結果、本発明の硬化性樹脂組成物は、接着信頼性に優れており、これを用いて作製された組み立て物が落下などにより衝撃を受けても、部品(被着物)の剥離が防止される。そのため、本発明の硬化性樹脂組成物は、センサモジュールの部品の接着等に非常に有用である。
【0100】
日本国特許出願2021-116461号(出願日:2021年7月14日)の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
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