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  • -水性懸濁剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-14
(45)【発行日】2025-11-25
(54)【発明の名称】水性懸濁剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20251117BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20251117BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20251117BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20251117BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20251117BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20251117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20251117BHJP
【FI】
A61K31/498
A61K9/10
A61K31/542
A61K47/10
A61K47/32
A61P27/06
A61P43/00 121
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021034952
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2021138696
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2020038590
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000199175
【氏名又は名称】千寿製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】杉原 涼
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217450(WO,A1)
【文献】特開平11-130661(JP,A)
【文献】特開2007-246667(JP,A)
【文献】特開2012-206977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/498
A61K 9/10
A61K 31/542
A61K 47/10
A61K 47/32
A61P 27/06
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含み、
前記カルボキシビニルポリマーが、下記条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下である、水性懸濁剤。
<対塩粘度維持率の測定条件>
カルボキシビニルポリマーを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%の水溶液1を調製する。別途、カルボキシビニルポリマー及び塩化ナトリウムを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%且つ塩化ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液2を調製する。次いで、水溶液1及び2の粘度をE型粘度計にて測定する。粘度の測定条件は、コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローターを用いて、測定温度30℃、測定時の回転速度20rpmの条件に設定する。測定値は、測定開始から90秒経過後に測定された粘度の値を採用する。下記算出式に従って対塩粘度維持率を算出する。
【数1】
【請求項2】
更にグリセリンを含む、請求項1に記載の水性懸濁剤。
【請求項3】
前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、請求項1又は2に記載の水性懸濁剤。
【請求項4】
前記ブリンゾラミド及び/又はその塩が、ブリンゾラミドである、請求項1~3のいずれかに記載の水性懸濁剤。
【請求項5】
前記カルボキシビニルポリマーの濃度が、0.1~1w/v%である、請求項1~4のいずれかに記載の水性懸濁剤。
【請求項6】
E型粘度計(コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローター、測定時の回転速度100rpm、測定開始から90秒経過後に測定)で測定される水性懸濁剤の30℃での粘度が10~100mPa・sである、請求項1~5のいずれかに記載の水性懸濁剤。
【請求項7】
点眼液である、請求項1~6のいずれかに記載の水性懸濁剤。
【請求項8】
緑内障治療のために使用される、請求項1~7のいずれかに記載の水性懸濁剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーを含み、懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制できる、水性懸濁剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリモニジン及びその塩は、アドレナリンα2受容体作動薬として知られており、眼房水産生抑制と共にぶどう膜強膜流出路を介した眼房水の流出を促進することによって、眼圧を低下させる作用があり、従来、緑内障や高眼圧症の治療に使用されている。
【0003】
また、ブリンゾラミドについても、炭酸脱水酵素阻害薬として知られており、眼房水の産生を抑制することによって、眼圧を低下させる作用があり、緑内障の治療に使用されている。
【0004】
近年、緑内障や高眼圧症の治療効果を高めるために、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩とを併用した製剤が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。また、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩とを含む製剤において、安定性や保存効力の向上等が図れる処方についても種々報告されている(特許文献2~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6316441号
【文献】米国特許第6247430号
【文献】国際公開第2017/217450号
【文献】国際公開第2019/91596号
【文献】国際公開第2010/148190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤の製造技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーを含む水性懸濁剤において、当該カルボキシビニルポリマーとして、後述する条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下のものを選択することにより、水性懸濁剤における懸濁粒子(ブリンゾラミド及び/又はその塩)の粒子径の経時的な増大を抑制できることを見出した。
【0008】
更に、本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーを含む水性懸濁剤において、当該カルボキシビニルポリマーとして、後述する条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下のものを選択することにより、水性懸濁剤における懸濁粒子(ブリンゾラミド及び/又はその塩)の再分散性を改善できることをも見出した。
【0009】
本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、一実施態様として以下に掲げる水性懸濁剤を提供する。
項1-1. ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含み、
前記カルボキシビニルポリマーが、下記条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下である、水性懸濁剤。
<対塩粘度維持率の測定条件>
カルボキシビニルポリマーを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%の水溶液1を調製する。別途、カルボキシビニルポリマー及び塩化ナトリウムを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%且つ塩化ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液2を調製する。次いで、水溶液1及び2の粘度をE型粘度計にて測定する。粘度の測定条件は、コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローターを用いて、測定温度30℃、測定時の回転速度20rpmの条件に設定する。測定値は、測定開始から90秒経過後に測定された粘度の値を採用する。下記算出式に従って対塩粘度維持率を算出する。
【数1】
項1-2. 更にグリセリンを含む、項1-1に記載の水性懸濁剤。
項1-3. 前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、項1-1又は1-2に記載の水性懸濁剤。
項1-4. 前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.01~1w/v%である、項1-1~1-3のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-5. 前記ブリンゾラミド及び/又はその塩が、ブリンゾラミドである、項1-1~1-4のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-6. 前記ブリンゾラミド及び/又はその塩の濃度が、0.1~3w/v%である、項1-1~1-5のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-7. 前記カルボキシビニルポリマーの濃度が、0.1~1w/v%である、項1-1~1-6のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-8. 前記グリセリンの濃度が、0.1~2w/v%である、項1-2~1-7のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-9. 更にチロキサポールを含む、項1-1~1-8に記載の水性懸濁剤。
項1-10. 前記チロキサポールの濃度が、0.005~0.1w/v%である、項1-9に記載の水性懸濁剤。
項1-11. 更にベンザルコニウム塩化物を含む、項1-1~1-10に記載の水性懸濁剤。
項1-12. 前記ベンザルコニウム塩化物の濃度が、0.0001~0.01w/v%である、項1-11に記載の水性懸濁剤。
項1-13. E型粘度計(コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローター、測定時の回転速度100rpm、測定開始から90秒経過後に測定)で測定される水性懸濁剤の30℃での粘度が10~100mPa・sである、項1-1~1-12のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-14. 後述する測定条件で測定される60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.5倍以下である、項1-1~1-13のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-15. 後述する測定条件で測定される再分散に要する転倒回数が5回以内である、項1-1~1-14のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-16. ブリモニジン酒石酸塩と、ブリンゾラミドと、カルボキシビニルポリマーと、グリセリンとを含み、
前記カルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率が18%以下であり、
前記ブリモニジン酒石酸塩の濃度が0.01~1w/v%であり、
前記ブリンゾラミドの濃度が0.1~3w/v%であり、
前記カルボキシビニルポリマーの濃度が0.1~1w/v%であり、
E型粘度計(コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローター、測定時の回転速度100rpm、測定開始から90秒経過後に測定)で測定される水性懸濁剤の30℃での粘度が10~100mPa・sであり、
後述する測定条件で測定される60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.5倍以下である、水性懸濁剤。
項1-17. ブリモニジン酒石酸塩と、ブリンゾラミドと、カルボキシビニルポリマーと、グリセリンと、チロキサポールと、ベンザルコニウム塩化物とを含み、
前記カルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率が18%以下であり、
前記ブリモニジン酒石酸塩の濃度が0.01~1w/v%であり、
前記ブリンゾラミドの濃度が0.1~3w/v%であり、
前記カルボキシビニルポリマーの濃度が0.1~1w/v%であり、
前記グリセリンの濃度が、0.1~2w/v%であり、
前記チロキサポールの濃度が、0.005~0.1w/v%であり、
前記ベンザルコニウム塩化物の濃度が、0.0001~0.01w/v%であり、
E型粘度計(コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローター、測定時の回転速度100rpm、測定開始から90秒経過後に測定)で測定される30℃での水性懸濁剤の粘度が10~100mPa・sであり、
後述する測定条件で測定される60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.5倍以下であり、
後述する測定条件で測定される再分散に要する転倒回数が5回以内である、水性懸濁剤。
項1-18. 点眼液である、項1-1~1-16のいずれかに記載の水性懸濁剤。
項1-19. 緑内障治療のために使用される、項1-1~1-17のいずれかに記載の水性懸濁剤。
【0011】
また、本発明は、一実施態様として以下に掲げる懸濁粒子の増大抑制方法を提供する。
項2-1. ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤における懸濁粒子の粒子径増大を抑制する方法であって、
ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、下記条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーとを配合して水性懸濁剤を得る工程を含む、懸濁粒子の増大抑制方法。
<対塩粘度維持率の測定条件>
カルボキシビニルポリマーを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%の水溶液1を調製する。別途、カルボキシビニルポリマー及び塩化ナトリウムを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%且つ塩化ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液2を調製する。次いで、水溶液1及び2の粘度をE型粘度計にて測定する。粘度の測定条件は、コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローターを用いて、測定温度30℃、測定時の回転速度20rpmの条件に設定する。測定値は、測定開始から90秒経過後に測定された粘度の値を採用する。下記算出式に従って対塩粘度維持率を算出する。
【数2】
項2-2. 前記水性懸濁剤に、更にグリセリンが配合される、項2-1に記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-3. 前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、項2-1又は2-2に記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-4. 前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.01~1w/v%である、項2-1~2-3のいずれかに記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-5. 前記ブリンゾラミド及び/又はその塩が、ブリンゾラミドである、項2-1~2-4のいずれかに記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-6. 前記ブリンゾラミド及び/又はその塩の濃度が、0.1~3w/v%である、項2-1~2-5のいずれかに記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-7. 前記カルボキシビニルポリマーの濃度が、0.1~1w/v%である、項2-1~2-6のいずれかに記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-8. 前記グリセリンの濃度が、0.5~1.5w/v%である、項2-2~2-7のいずれかに記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-9. 前記水性懸濁剤が、E型粘度計(コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローター、測定時の回転速度100rpm、測定開始から90秒経過後に測定)で測定される30℃での粘度が20~80mPa・sである、項2-1~2-8のいずれかに記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-10. 前記水性懸濁剤が、後述する測定条件で測定される60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.5倍以下である、項2-1~2-9のいずれかに記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-11. ブリモニジン酒石酸塩と、ブリンゾラミドと、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤における懸濁粒子の粒子径増大を抑制する方法であって、
ブリモニジン及び/又はその塩が、0.01~1w/v%、ブリンゾラミド及び/又はその塩が0.1~3w/v%、下記条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーが0.1~1w/v%、グリセリンが0.5~1.5w/v%になるように配合して、E型粘度計(コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローター、測定時の回転速度100rpm、測定開始から90秒経過後に測定)で測定される30℃での粘度が10~100mPa・sであり、且つ後述する測定条件で測定される60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.5倍以下である、水性懸濁剤を得る工程を含む、懸濁粒子の増大抑制方法。
項2-12. 前記水性懸濁剤が、点眼液である、項2-1~2-12のいずれかに記載の懸濁粒子の増大抑制方法。
【0012】
また、本発明は、一実施態様として以下に掲げる懸濁粒子の再分散性改善方法を提供する。
項3-1. ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤における懸濁粒子の再分散性を改善する方法であって、
ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、下記条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーとを配合して水性懸濁剤を得る工程を含む、懸濁粒子の再分散性改善方法。
<対塩粘度維持率の測定条件>
カルボキシビニルポリマーを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%の水溶液1を調製する。別途、カルボキシビニルポリマー及び塩化ナトリウムを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%且つ塩化ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液2を調製する。次いで、水溶液1及び2の粘度をE型粘度計にて測定する。粘度の測定条件は、コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローターを用いて、測定温度30℃、測定時の回転速度20rpmの条件に設定する。測定値は、測定開始から90秒経過後に測定された粘度の値を採用する。下記算出式に従って対塩粘度維持率を算出する。
【数3】
項3-2. 前記水性懸濁剤に、更にグリセリンが配合される、項3-1に記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-3. 前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、項3-1又は2-2に記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-4. 前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.01~1w/v%である、項3-1~2-3のいずれかに記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-5. 前記ブリンゾラミド及び/又はその塩が、ブリンゾラミドである、項3-1~2-4のいずれかに記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-6. 前記ブリンゾラミド及び/又はその塩の濃度が、0.1~3w/v%である、項3-1~2-5のいずれかに記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-7. 前記カルボキシビニルポリマーの濃度が、0.1~1w/v%である、項3-1~2-6のいずれかに記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-8. 前記グリセリンの濃度が、0.5~1.5w/v%である、項3-2~2-7のいずれかに記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-9. 前記水性懸濁剤が、E型粘度計(コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローター、測定時の回転速度100rpm、測定開始から90秒経過後に測定)で測定される30℃での粘度が20~80mPa・sである、項3-1~2-8のいずれかに記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-10. 前記水性懸濁剤が、後述する測定条件で測定される再分散に要する転倒回数が5回以内である、項3-1~2-9のいずれかに記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-11. ブリモニジン酒石酸塩と、ブリンゾラミドと、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤における懸濁粒子の再分散性を改善する方法であって、
ブリモニジン及び/又はその塩が、0.01~1w/v%、ブリンゾラミド及び/又はその塩が0.1~3w/v%、下記条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーが0.1~1w/v%、グリセリンが0.5~1.5w/v%になるように配合して、E型粘度計(コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローター、測定時の回転速度100rpm、測定開始から90秒経過後に測定)で測定される30℃での粘度が10~100mPa・sであり、且つ後述する測定条件で測定される再分散に要する転倒回数が5回以内である、水性懸濁剤を得る工程を含む、懸濁粒子の再分散性改善方法。
項3-12. 前記水性懸濁剤が、点眼液である、項3-1~2-12のいずれかに記載の懸濁粒子の再分散性改善方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーを含む水性懸濁剤において、懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制でき、優れた製剤安定性を備えることができる。更に、本発明の一実施形態によれば、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーを含む水性懸濁剤において、懸濁粒子が沈降した場合でも、軽く振るだけで本来の分散状態に簡単に復元でき、優れた利用簡便性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例2~6及び比較例1~5の水性懸濁剤で使用したカルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率を横軸、それらの60℃で1週間保存後の粒子径の変化率を縦軸に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.定義
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0016】
本明細書において、「水性懸濁剤」とは、不溶性の粒子(懸濁粒子)が水に分散している液状の製剤を指す。ブリンゾラミド及び/又はその塩は水に対する溶解性が極めて低いため、本発明の水性懸濁剤では、ブリンゾラミド及び/又はその塩が懸濁粒子になる。
【0017】
本明細書において、「ブリモニジン」とは、アドレナリンα2受容体作動薬として公知の化合物であり、5-ブロモ-N-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)キノキサリン-6-アミンを指す。
【0018】
本明細書において、「ブリンゾラミド」とは、炭酸脱水酵素阻害薬として公知の化合物であり、(R)-4-(エチルアミノ)-3,4-ジヒドロ-2-(3-メトキシプロピル-2H-チエノ[3,2,e]-1,2-チアジン-6-スルホンアミド1,1-ジオキシドを指す。
【0019】
本明細書において、「カルボキシビニルポリマー」とは、カルボキシル基を有する水溶性のビニルポリマーであり、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の重合体を指す。
【0020】
本明細書において、「対塩粘度維持率」とは、カルボキシビニルポリマーの塩に対する粘度安定性の指標であり、以下の条件で測定される値である。なお、カルボキシビニルポリマーは、架橋度が高いほど、塩存在下での粘度が低下し易いことが知られており、当該対塩粘度維持率は、カルボキシビニルポリマーの架橋度と相関が認められる物性値である。
<対塩粘度維持率の測定条件>
カルボキシビニルポリマーを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%の水溶液1を調製する。別途、カルボキシビニルポリマー及び塩化ナトリウムを精製水に溶かし、pHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%且つ塩化ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液2を調製する。
次いで、水溶液1及び2の粘度をE型粘度計にて測定する。粘度の測定条件は、コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローターを用いて、測定温度30℃、測定時の回転速度20rpmの条件に設定する。測定値は、測定開始から90秒経過後に測定された粘度の値を採用する。
下記算出式に従って対塩粘度維持率を算出する。
【数4】
【0021】
本明細書において、「水性懸濁剤の30℃での粘度」は、E型粘度計を用いて、コーン角度3°及びコーン半径17.65mmのローターで、測定温度30℃、測定時の回転速度100rpmの条件で、測定開始から90秒経過後に測定された粘度の値を指す。
【0022】
本明細書において、「水性懸濁剤の浸透圧」は、第十七改正日本薬局方の「一般試験法」の「30.浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)」に規定されている方法に従って測定される値である。
【0023】
本明細書において、「水性懸濁剤の浸透圧比」は、生理食塩水(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する、水性懸濁剤の浸透圧の比率を指す。
【0024】
本明細書において、「懸濁粒子の平均粒子径」は、ブリンゾラミド及び/又はその塩の粒子の粒子径のメジアン径を指し、レーザー回析式粒子径分布測定装置を用いて測定される値である。
【0025】
本明細書において、「懸濁粒子の粒子径の経時的な増大」等の表記は、一定期間の保存によって水性懸濁剤に分散しているブリンゾラミド及び/又はその塩の粒子の粒子径が増大することを指し、例えば、以下の条件で測定される60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.6倍以上である場合には、「懸濁粒子の粒子径の経時的な増大」が認められるといえる。
<60℃で1週間保存後の粒子径の変化率>
ブリンゾラミド及び/又はその塩を含む水性懸濁剤を調製し、60℃で1週間保存する。調製直後と1週間保存後の水性懸濁剤の懸濁粒子の平均粒子径を測定し、下記算出式に従って、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率(倍)を算出する。
【数5】
【0026】
本明細書において、「懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制」等の表記は、一定期間の保存によって水性懸濁剤に分散しているブリンゾラミド及び/又はその塩の粒子の粒子径が増大するのを抑えられることを指す。例えば、一定期間の保存後における水性懸濁剤が、保存前の水性懸濁剤に比べて懸濁粒子の粒子径が増大するのを抑えられることを指す。例えば、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.5倍以下である場合には、「懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制」できているといえる。
【0027】
本明細書において、「懸濁粒子の増大を抑制する方法」等の表記は、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤において、懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制し、懸濁粒子の粒子径を維持させるために行われる方法を指す。
【0028】
本明細書において、「懸濁粒子の再分散性」は、一定期間の保存によって懸濁粒子の沈降が生じた水性懸濁剤を転倒することによって、懸濁粒子を分散状態に戻す特性を指す。
【0029】
本明細書において、「懸濁粒子の再分散性を改善」等の表記は、一定期間の保存によって懸濁粒子の沈降が生じた水性懸濁剤を転倒ことによって、懸濁粒子を分散状態に戻す特性が向上していることを指す。例えば、以下の条件で測定される再分散に要する転倒回数が5回以内である場合には、「懸濁粒子の再分散性を改善」できているといえる。
<再分散に要する転倒回数>
ブリンゾラミド及び/又はその塩を含む水性懸濁剤5mLを5mL容のガラスアンプルに充填し、40℃で6ヵ月間正立状態で保存することにより、懸濁粒子の沈降を生じさせ、懸濁粒子が不均一な状態にする。次いで、ガラスアンプルの転倒操作を繰り返し、懸濁粒子が液全体に均一に分散するまでの転倒回数を「再分散に要する転倒回数」として計測する。ガラスアンプルの転倒操作は、ガラスアンプルを上下に180°反転した後に再度180°反転して正立状態とする操作を転倒回数1回とする。
【0030】
本明細書において、「懸濁粒子の再分散性を改善する方法」等の表記とは、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤において、懸濁粒子の再分散性を向上させるために行われる方法を指す。
【0031】
2.好ましい実施形態の説明
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
【0032】
3.水性懸濁剤
点眼液では、薬理成分の眼粘膜表面での滞留性を向上させるために、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤が使用されており、従来、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と共に、カルボキシビニルポリマーを含む水性懸濁剤についても報告されている(例えば、特許文献2~5)。その一方で、懸濁液状の点眼液では、懸濁粒子が大きくなると、点眼時に違和感や眼刺激等の問題が生じる可能性があるため、安定な粒子径を維持できる品質が求められている。本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と共に、カルボキシビニルポリマーを含む水性懸濁剤の安定性について種々検討を行ったところ、当該水性懸濁剤において、従来使用されているカルボキシビニルポリマーを採用した場合には、水性懸濁剤における懸濁粒子(ブリンゾラミド及び/又はその塩)の粒子径が経時的に増大するという新たな課題を知得した。
【0033】
このような状況の下、本発明者は、さらに検討を進めたところ、対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーを選択し、当該カルボキシビニルポリマーをブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩と共に配合することによって、水性懸濁剤における懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制できることを見出した。更に、対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーをブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩と共に配合した水性懸濁剤は、懸濁粒子の再分散性を改善できることを見出した。
【0034】
即ち、1つの実施態様において、本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーを含む水性懸濁剤を提供する。以下、本発明の水性懸濁剤について説明する。
【0035】
[ブリモニジン及び/又はその塩]
本発明の水性懸濁剤は、ブリモニジン及び/又はその塩を含有する。ブリモニジンの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、有機酸塩又は無機酸塩が挙げられる。有機酸塩として、例えば酒石酸塩又は酢酸塩等が挙げられる。無機酸塩として、例えば塩酸塩等が挙げられる。また、ブリモニジン又はその塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。ブリモニジン及びその塩の中でも、ブリモニジン酒石酸塩は、医薬品として上市されており安全性が確立されているため、好適に使用される。
【0036】
本発明の水性懸濁剤では、ブリモニジン又はその塩のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本発明の水性懸濁剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の濃度については、特に制限されず、適用対象となる患者の症状の程度、1回当たりの適用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~1w/v%、好ましくは0.05~0.3w/v%、より好ましくは0.1~0.2w/v%が挙げられる。本明細書において、ブリモニジン及び/又はその塩の濃度は、特に明記しない限り、ブリモニジン酒石酸塩に換算された濃度である。
【0038】
[ブリンゾラミド及び/又はその塩]
本発明の水性懸濁剤は、ブリンゾラミド及び/又はその塩を含有する。本発明の水性懸濁剤において、ブリンゾラミド及び/又はその塩は懸濁粒子として分散された状態で存在する。ブリンゾラミドの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、酢酸塩が挙げられる。ブリンゾラミド及びその塩の中でも、ブリンゾラミドは、医薬品として上市されており安全性が確立されているため、好適に使用される。
【0039】
本発明の水性懸濁剤におけるブリンゾラミド及び/又はその塩の濃度については、特に制限されず、適用対象となる患者の症状の程度、1回当たりの適用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1~3w/v%、好ましくは0.5~2w/v%、更に好ましくは1w/v%が挙げられる。本明細書において、ブリンゾラミド及び/又はその塩の濃度は、特に明記しない限り、ブリンゾラミドに換算された濃度である。
【0040】
[カルボキシビニルポリマー]
本発明の水性懸濁剤は、対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーを含有する。本発明の一実施形態では、このような対塩粘度維持率のカルボキシビニルポリマーを使用することにより、水性懸濁剤における懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制することができる。また、本発明の他の実施形態では、前記対塩粘度維持率を満たすカルボキシビニルポリマーを使用することにより、懸濁粒子の再分散性を改善することができる。
【0041】
本発明で使用されるカルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率は、18%以下であればよいが、水性懸濁剤における懸濁粒子の粒子径の経時的な増大をより一層効果的に抑制する、又は水性懸濁剤における懸濁粒子の再分散性をより一層効果的に改善するという観点から、好ましくは16%以下、より好ましくは14%以下、特に好ましくは12%以下、更に好ましくは10%以下が挙げられる。カルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率の下限については、特に制限されず、0%以上であればよいが、一例として、2%以上、4%以上、又は6%以上が挙げられる。
【0042】
本発明の水性懸濁剤において、カルボキシビニルポリマーは、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。
【0043】
1種のカルボキシビニルポリマーを単独で使用する場合は、前記対塩粘度維持率を満たすカルボキシビニルポリマーを選択して使用すればよい。
【0044】
また、2種以上のカルボキシビニルポリマーを組み合わせて使用する場合には、2種以上の組み合わせからなるカルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率が前記範囲を満たしていればよい。例えば、カルボキシビニルポリマーAとカルボキシビニルポリマーBの2種のカルボキシビニルポリマーを1:1の重量比で組み合わせて使用する場合には、カルボキシビニルポリマーAとカルボキシビニルポリマーBを1:1で混合した混合物の対塩粘度維持率が前記範囲を満たしていればよい。
【0045】
カルボキシビニルポリマーは市販品を使用することができる。例えば、Lubrizol Advanced Materials社製の「カーボポール5984EP」及び「カーボポール980NF」は、それぞれ対塩粘度維持率が12%及び8%であるので、それぞれ単独で使用できる。また、Lubrizol Advanced Materials社製の「カーボポール974PNF」の対塩粘度維持率が19%であるが、例えば、カーボポール974PNFとカーボポール5984EPとを組み合わせて、これらの総量100重量部当たりカーボポール5984EPが25重量部以上となるように併用することにより、対塩粘度維持率を18%以下にすることができる。
【0046】
発明の水性懸濁剤におけるカルボキシビニルポリマーの濃度については、特に制限されず、付与すべき粘性、使用するカルボキシビニルポリマーの種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1~1w/v%、好ましくは0.1~0.5w/v%、より好ましくは0.3~0.5w/v%が挙げられる。
【0047】
本発明で使用されるカルボキシビニルポリマーの粘性については、特に制限されないが、例えば、pH7.5に調整した0.5重量%水溶液(25℃)における粘度が4,000~100,000cP、好ましくは10,000~60,000cP、更に好ましくは35,000~60,000cPとなるものが挙げられる。当該粘度は、ブルックフィールド粘度計において、スピンドル#6を使用し、回転速度を20rpmに設定して測定される値である。
【0048】
[グリセリン]
1つの態様において、本発明の水性懸濁剤は、更にグリセリンを含んでいてもよい。
【0049】
本発明の水性懸濁剤におけるグリセリンの濃度としては、例えば0.1~2w/v%、好ましくは0.5~1.5w/v%、より好ましくは0.5~0.7w/v%が挙げられる。
【0050】
[金属塩化物]
1つの態様において、本発明の水性懸濁剤は、更に金属塩化物を含んでいてもよい。金属塩化物は、等張化剤等としての役割を果たし得る。
【0051】
金属塩化物としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物;塩化マグネシウム、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属の塩化物;塩化亜鉛、塩化鉄等が挙げられる。これらの金属塩化物は、水和物の形態であってもよい。これらの金属塩化物の中でも、好ましくは、塩化ナトリウムが挙げられる。
【0052】
これらの金属塩化物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
本発明の水性懸濁剤における金属塩化物の濃度については、使用する金属塩化物の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~1w/v%、好ましくは0.05~0.5w/v%、より好ましくは0.1~0.3w/v%が挙げられる。本明細書において、金属塩化物の濃度は、金属塩化物が水和物の場合であれば、無水物に換算された濃度である。
【0054】
[界面活性剤]
1つの態様において、本発明の水性懸濁剤は、更に界面活性剤を含んでいてもよい。
【0055】
界面活性剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、チロキサポール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オクトキシノール等の非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤;アルキル硫酸塩、N-アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルピリジニウム塩、アルキルアミン塩等の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤の中でも、好ましくは非イオン性界面活性剤、より好ましくはチロキサポールが挙げられる。
【0056】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
本発明の水性懸濁剤における界面活性剤の濃度としては、使用する界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.005~0.1w/v%、好ましくは0.1~0.05w/v%、より好ましくは0.02~0.03w/v%が挙げられる。
【0058】
[その他の添加剤]
1つの態様において、本発明の水性懸濁剤は、必要に応じて、更に、等張化剤(グリセリン、金属塩化物以外)、粘稠剤(カルボキシビニルポリマー以外)、キレート剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、pH調整剤等の添加剤を含有してもよい。
【0059】
等張化剤(グリセリン、金属塩化物以外)としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の金属塩等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
粘稠剤(カルボキシビニルポリマー以外)としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類等が挙げられる。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
キレート剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、エデト酸、クエン酸、コハク酸、アスコルビン酸、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、及びこれら塩等が挙げられる。塩の形態としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのキレート剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
緩衝剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、アミノ酸緩衝剤等が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
保存剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、ベンザルコニウム塩化物、クロルヘキシジン塩酸塩、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン酢酸塩、デヒドロ酢酸又はその塩、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化亜鉛、パラクロルメタキシレノール、亜塩素酸又はその塩、クロルクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ポリドロニウム、チメロサール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。これらの保存剤の中でも、より好ましくはベンザルコニウム塩化物が挙げられる。これらの保存剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
本発明の水性懸濁剤における保存剤の濃度としては、使用する界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.0001~0.01w/v%、好ましくは0.001~0.005w/v%が挙げられる。
【0065】
安定化剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、亜硫酸塩、モノエタノールアミン、シクロデキストリン、デキストラン、アスコルビン酸、タウリン、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。これらの安定化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
pH調整剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、塩酸、酢酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン-アミノカプロン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリが挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
これらの添加剤の濃度は、使用する添加剤の種類や水性懸濁剤に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。
【0068】
[その他の薬理成分]
1つの態様において、本発明の水性懸濁剤は、必要に応じて、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩以外の薬理成分が含まれていてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ドルゾラミド等の炭酸脱水酵素阻害薬;タフルプロスト、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン等のプロスタグランジン類;ピロカルピン塩酸塩等の副交感神経刺激薬;ジスチグミン臭化物等の抗コリンエステラーゼ薬;ジピベフリン塩酸塩等の交感神経刺激薬;ベタキソロール塩酸塩等のβ1遮断薬;チモロールマレイン酸塩等のβ遮断薬;ニプラジロール、レボブノロール塩酸塩等のα1・β遮断薬;ブナゾシン塩酸塩等のα1遮断薬等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの薬理成分の濃度は、使用する薬理成分の種類や付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよい。
【0069】
[粘度]
本発明の水性懸濁剤の30℃での粘度については、特に制限されないが、例えば、10~100mPa・s、好ましくは20~80mPa・s、より好ましくは30~70mPa・s、さらに好ましくは30~50mPa・sが挙げられる。
【0070】
[pH]
本発明の水性懸濁剤のpHについては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば4~8が挙げられる。本発明の水性懸濁剤が、点眼液の場合であれば、眼粘膜に適用可能である眼への刺激をより緩和するという観点から、pHとして、好ましくは5~8、より好ましくは6~7が挙げられる。
【0071】
[浸透圧/浸透圧比]
本発明の水性懸濁剤の浸透圧については、目的とする用途に適用可能であることを限度として特に制限されない。発明の水性懸濁剤が点眼液である場合であれば、浸透圧として250~350mOsm/kgが挙げられる。
【0072】
また、本発明の水性懸濁剤の浸透圧比については、目的とする用途に適用可能であることを限度として特に制限されない。例えば、本発明の水性懸濁剤が点眼液の場合であれば、浸透圧比として、0.85~1.15が挙げられる。眼の刺激を緩和するという観点から好ましくは0.9~1.1、より好ましくは1.0が挙げられる。
【0073】
[懸濁粒子の粒子径/変化率]
本発明の水性懸濁剤において、ブリンゾラミド及び/又はその塩の粒子が分散して懸濁した状態で存在する。
【0074】
本発明の水性懸濁剤において、調製直後の懸濁粒子の平均粒子径としては、例えば、10μm以下、好ましくは2~10μm、より好ましくは2~5μmが挙げられる。
【0075】
また、本発明の水性懸濁剤は、懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制できており、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率は1.5倍以下であるが、好適な態様として、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が好ましくは1.0~1.3倍、より好ましくは1.0~1.2倍、さらに好ましくは1.0~1.1倍が挙げられる。
【0076】
また、本発明の水性懸濁剤の一実施形態では、懸濁粒子の再分散性にも優れており、静置によって懸濁粒子が沈降しても、軽く振るだけで分散状態に戻すことができる。本発明の水性懸濁剤の一実施形態として、前述する再分散に要する転倒回数が5回以内、好ましくは4回以内、より好ましくは3回以内、さらに好ましくは2回以内が挙げられる。
【0077】
[製剤形態]
本発明の水性懸濁剤は、例えば、眼科用、歯科用、耳鼻科用、皮膚科用等の様々な用途の医薬組成物に調製され、局所投与製剤として使用される。本発明の水性懸濁剤の一態様として、眼科用、歯科用、耳鼻科用、又は皮膚科用の組成物が挙げられ、好ましくは眼科用水性懸濁剤が挙げられる。
【0078】
眼科用水性懸濁剤としては、具体的には、点眼液、注射液等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは点眼液が挙げられる。
【0079】
[用途/用量/用法]
本発明の水性懸濁剤は、ブリモニジン及び/又はその塩によるアドレナリンα2受容体作動作用、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩による炭酸脱水酵素阻害作用を示すので、本発明の水性懸濁剤との一態様では、点眼液として提供され、緑内障を治療用途に好適に使用できる。
【0080】
本発明の水性懸濁剤を点眼液として使用する場合、1回数滴を、1日1回又は複数回点眼すればよい。また、本発明の水性懸濁剤の一態様では1回1滴を1日2回点眼される。
【0081】
[製造方法]
本発明の水性懸濁剤は、その用途に応じて、公知の水性懸濁剤の調製法に従って製造すればよく、例えば、第十七改正日本薬局方 製剤総則に記載された方法を用いて製造することができる。
【0082】
4.懸濁粒子の増大抑制方法
本発明の一実施形態として、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤における懸濁粒子の粒子径増大を抑制する方法であって、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーとを配合して水性懸濁剤を得る工程を含む、懸濁粒子の増大抑制方法を提供する。
【0083】
本発明の方法によれば、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤において、懸濁粒子の粒子径の経時的な増大を抑制でき、優れた製剤安定性を有する水性懸濁剤を提供することが可能になる。
【0084】
本発明の方法において、ブリモニジン及び/又はその塩の種類や濃度、ブリンゾラミド及び/又はその塩の種類や濃度、カルボキシビニルポリマーの種類や濃度、水性懸濁剤に配合される他の添加剤や薬理成分の種類、水性懸濁剤のpH、浸透圧/浸透比、懸濁粒子の粒子径/変化率、製剤形態、用途/用量/用法等については、「3.水性懸濁剤」の欄に記載の通りである。
【0085】
5.懸濁粒子の再分散性改善方法
本発明の一実施形態として、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤における懸濁粒子の再分散性を改善する方法であって、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、下記条件で測定される対塩粘度維持率が18%以下のカルボキシビニルポリマーとを配合して水性懸濁剤を得る工程を含む、懸濁粒子の再分散性改善方法を提供する。
【0086】
本発明の方法によれば、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩と、カルボキシビニルポリマーとを含む水性懸濁剤において、懸濁粒子が沈降した場合でも、軽く振るだけで本来の分散状態に簡単に復元でき、利用簡便性に優れた水性懸濁剤を提供することが可能になる。
【0087】
本発明の方法において、ブリモニジン及び/又はその塩の種類や濃度、ブリンゾラミド及び/又はその塩の種類や濃度、カルボキシビニルポリマーの種類や濃度、水性懸濁剤に配合される他の添加剤や薬理成分の種類、水性懸濁剤のpH、浸透圧/浸透比、懸濁粒子の粒子径/変化率、製剤形態、用途/用量/用法等については、「3.水性懸濁剤」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0088】
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0089】
1.カルボキシビニルポリマーの準備
以下に示すカルボキシビニルポリマー1~11を準備した。
・カルボキシビニルポリマー1:商品名「カーボポール5984EP」、Lubrizol Advanced Materials社製、Lot No.0102235115
・カルボキシビニルポリマー2:商品名「カーボポール980NF」、Lubrizol Advanced Materials社製、Lot No.0102136170
・カルボキシビニルポリマー3:商品名「カーボポール971PNF」、Lubrizol Advanced Materials社製、Lot No.0102267016
・カルボキシビニルポリマー4:商品名「カーボポール71GNF」、Lubrizol Advanced Materials社製、Lot No.0000049293
・カルボキシビニルポリマー5:商品名「カーボポール974PNF」、Lubrizol Advanced Materials社製、Lot No.0102055429
・カルボキシビニルポリマー6:カルボキシビニルポリマー1(50重量部)とカルボキシビニルポリマー5(50重量部)を混合したもの
・カルボキシビニルポリマー7:カルボキシビニルポリマー1(75重量部)とカルボキシビニルポリマー5(25重量部)を混合したもの
・カルボキシビニルポリマー8:カルボキシビニルポリマー1(25重量部)とカルボキシビニルポリマー5(75重量部)を混合したもの
・カルボキシビニルポリマー9:カルボキシビニルポリマー1(43.2重量部)とカルボキシビニルポリマー5(56.8重量部)を混合したもの
・カルボキシビニルポリマー10:カルボキシビニルポリマー1(69.6重量部)とカルボキシビニルポリマー5(30.4重量部)を混合したもの
・カルボキシビニルポリマー11:カルボキシビニルポリマー1(20.3重量部)とカルボキシビニルポリマー5(79.7重量部)を混合したもの
【0090】
2.カルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率の測定
カルボキシビニルポリマー1~11の対塩粘度維持率を測定した。具体的な測定方法は以下に示す通りである。カルボキシビニルポリマーを精製水に溶かし、1M水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%の水溶液1を調製した。別途、カルボキシビニルポリマー及び塩化ナトリウムを精製水に溶かし、1M水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.1に調整し、カルボキシビニルポリマー濃度が0.01重量%且つ塩化ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液2を調製した。
【0091】
次いで、水溶液1及び2の粘度をE型粘度計(「TEV-25形粘度計」、東機産業株式会社)を用いて測定した。粘度の測定条件は、標準ローター(コーン角度3°及びコーン半径17.65mm)を用いて、測定温度30℃、測定時の回転速度20rpmの条件に設定し、測定値は、測定開始から90秒経過後に測定された粘度の値を採用した。下記算出式に従って対塩粘度維持率を算出した。
【数6】
【0092】
カルボキシビニルポリマー1~11の対塩粘度維持率の測定結果を表1に示す。
【表1】
【0093】
3.水性懸濁剤の調製
表3及び4に示す組成の水性懸濁剤を調製した。具体的には、先ず、カルボキシビニルポリマーを塩化ナトリウム水溶液に分散し、カルボキシビニルポリマー水溶液を調製した。次いで、精製水に、ブリモニジン酒石酸、ホウ酸、チロキサポール、グリセリン、ベンザルコニウム塩化物、及び前記カルボキシビニルポリマー水溶液を所定量添加して、溶解液を得た。更に、当該溶解液に水酸化ナトリウムでpHを6.5に調整した後に、ブリンゾラミドを所定量添加して、撹拌機(「T.K.ロボミックス」、プライミクス株式会社)を用いて、表2に示す撹拌条件A~Cのいずれかで撹拌し、ブリンゾラミドが粒子状で分散している水性懸濁剤を得た。各水性懸濁剤の調製において採用した撹拌条件は、表3及び4に示す通りである。
【表2】
【0094】
4.水性懸濁剤の粘度の測定
調製直後の水性懸濁剤の30℃での粘度をE型粘度計(「TEV-25形粘度計」、東機産業株式会社)を用いて測定した。粘度の測定条件は、標準ローター(コーン角度3°及びコーン半径17.65mm)を用いて、測定温度30℃、測定時の回転速度100rpmの条件に設定し、測定値は、測定開始から90秒経過後に測定された粘度の値を採用した。
【0095】
5.水性懸濁剤の平均粒径及び60℃で1週間保存後の粒子径の変化率の測定
調製直後の水性懸濁剤を60℃で1週間保存した。調製直後と1週間保存後の水性懸濁剤をレーザー回析式粒子径分布測定に供し、懸濁粒子の平均粒子径(メジアン径、D50)を測定した。測定条件は、以下の通りである。
・装置:レーザー回析式粒子径分布測定装置(「SALD-2300」、株式会社島津製作所)
・高濃度サンプル測定ユニットを使用
・屈折率:1.75-0.02i
【0096】
下記算出式に従って、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率(倍)を算出した。
【数7】
【0097】
6.粒子径の変化率の測定結果
結果を表3及び4に示す。ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む水性懸濁剤に、対塩粘度維持率が19%以上であるカルボキシビニルポリマーを配合した場合には、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.6倍以上になっており、懸濁粒子の粒子径の増大が認められた(比較例1~5)。これに対して、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む水性懸濁剤に、対塩粘度維持率が18%以下であるカルボキシビニルポリマーを配合した場合では、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が1.2倍以下であり、懸濁粒子の粒子径の増大を抑制できていた(実施例1~11)。また、対塩粘度維持率が19%であるカルボキシビニルポリマー5であっても、カルボキシビニルポリマー1と5を、それらの総量100重量部当たりカルボキシビニルポリマー1を25重量部以上となる比率で併用することにより、保存後の懸濁粒子の粒子径の増大を抑制できていた(実施例7~11)。更に、対塩粘度維持率が18%以下であるカルボキシビニルポリマーを使用した場合には、ハイシェア撹拌条件で製造しても、保存後の懸濁粒子の粒子径の増大を抑制できていた(実施例3及び5)。
【0098】
図1に、30℃での粘度が27~37mPa・sの範囲内の水性懸濁剤(実施例2~6、9~11、及び比較例1~5)において、使用したカルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率を横軸、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率を縦軸に示したグラフを示す。図1からより一層明確に理解できるように、カルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率と60℃で1週間保存後の粒子径の変化率との間には相関があり、カルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率が18%以下の範囲であれば60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が低い値になるが、カルボキシビニルポリマーの対塩粘度維持率が19以上の範囲では、対塩粘度維持率の増加と共に、60℃で1週間保存後の粒子径の変化率が飛躍的に高まっていた。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
7.懸濁粒子の再分散性の測定
表3に示す実施例2、実施例4及び比較例3の水性懸濁剤を使用して濁粒子の再分散性の評価を行った。具体的には、調製直後の各水性懸濁剤5mLを5mL容のガラスアンプルに充填し、40℃で6ヵ月間正立状態で保存した。保存後には、懸濁粒子の沈降が生じており、懸濁粒子が不均一な状態になっていた。保存終了後に、水性懸濁剤を収容している容器を転倒させ、懸濁粒子が液全体に均一に分散するまでの転倒回数(再分散に要する転倒回数)を計測した。転倒回数については、容器を上下に180°反転した後に再度180°反転して正立状態とする操作を1回とした。懸濁粒子の再分散性の測定はn=3で測定を行い、再分散に要する転倒回数の平均値を算出した。
【0102】
8.懸濁粒子の再分散性の測定結果
結果を表5に示す。ブリモニジン酒石酸及びブリンゾラミドを含む水性懸濁剤に、耐塩粘度維持率が19%以上であるカルボキシビニルポリマーを配合した場合では、40℃で6ヵ月保存後に再分散に要した転倒回数は約7.3回であり、再分散性が劣っていた(比較例3)。これに対して、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む水性懸濁剤に、対塩粘度維持率が18%以下であるカルボキシビニルポリマーを配合した場合では、40℃で6ヵ月保存後に再分散に要した転倒回数は2回以下であり、優れた再分散性を有していた(実施例2及び4)。
【0103】
【表5】
図1