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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-17
(45)【発行日】2025-11-26
(54)【発明の名称】車両の上部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20251118BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20251118BHJP
【FI】
B60R13/02 A
B62D25/06 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021205114
(22)【出願日】2021-12-17
(65)【公開番号】P2023090244
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 三穂
(72)【発明者】
【氏名】寺田 栄
(72)【発明者】
【氏名】山田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中川 興也
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 昭則
(72)【発明者】
【氏名】山下 亘貴
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-291742(JP,A)
【文献】特開平02-179565(JP,A)
【文献】特開平02-179556(JP,A)
【文献】実開平06-071316(JP,U)
【文献】特開平07-246887(JP,A)
【文献】特開平11-020562(JP,A)
【文献】特開2014-031095(JP,A)
【文献】実開平07-019008(JP,U)
【文献】特開平02-171356(JP,A)
【文献】実開昭62-194155(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルと、
前記ルーフパネルに対して車室内側に配され、車幅方向に延びる車体骨格部材と、
前記ルーフパネルを車室内側から覆うとともに、前記車体骨格部材に対して車室内側に配され、且つ、それぞれが前記車体骨格部材に対して固定される複数の固定部を有するトップシーリングと、
前記複数の固定部のそれぞれにおいて、前記車体骨格部材と前記トップシーリングとを固定する複数の固定部材と、
前記ルーフパネルの下面および前記トップシーリングの上面に当接した状態で前記ルーフパネルと前記トップシーリングの間に配設された、振動減衰性能を有する第1弾性部材と、
を備え、
前記トップシーリングは、前記複数の固定部の内の少なくとも一部の固定部において、前記車体骨格部材に対して上下方向に隙間を有するように配設されており、
前記第1弾性部材は、前記ルーフパネルと前記トップシーリングとの間において、前記ルーフパネルと前記トップシーリングとから付加される圧縮力により圧縮状態にあり、
前記少なくとも一部の固定部には、互いに車幅方向に離間する位置に配置された第1固定部と第2固定部とが含まれており、
前記第2固定部は、車幅方向において、前記第1固定部よりも内側で、且つ、車両の車幅方向中心よりも外側に配置されており、
前記第1弾性部材は、車幅方向における前記第1固定部と前記第2固定部との間の領域のみで延在するように配設されている、
車両の上部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の上部構造において、
前記トップシーリングは、前記少なくとも一部の固定部の厚みが、その周辺領域の厚みよりも薄く形成されている、
車両の上部構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両の上部構造において、
前記トップシーリングは、前記複数の固定部のそれぞれにおいて、前記固定部材の一部が挿通可能な孔を有し、
前記車体骨格部材は、前記トップシーリングにおける前記複数の固定部のそれぞれに対応する部分において、前記固定部材の一部が挿通可能な孔を有し、
前記複数の固定部材のぞれぞれは、前記車体骨格部材の孔を挿通して当該車体骨格部材を係止する頭部と、前記頭部に対して下方に垂下し、前記トップシーリングの孔に挿通される胴部と、前記胴部の下方に接続され、前記トップシーリングの孔の周囲を下方から支持する座面部と、を有し、
前記車体骨格部材と前記トップシーリングにおける前記少なくとも一部の固定部とを固定する固定部材は、前記胴部が、前記車体骨格部材と前記座面部に載置された前記トップシーリングとの間に前記隙間が形成される長さを有する、
車両の上部構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の車両の上部構造において、
前記車体骨格部材の下面および前記トップシーリングの上面に当接した状態で前記車体骨格部材と前記トップシーリングの間に配設された、振動減衰性能を有する第2弾性部材をさらに備え、
前記第2弾性部材は、前記車体骨格部材と前記トップシーリングとの間において、前記車体骨格部材と前記トップシーリングとから付加される圧縮力により圧縮状態にある、
車両の上部構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の上部構造において、
前記第2弾性部材は、前記車体骨格部材に沿って車幅方向に延びるように設けられている、
車両の上部構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の車両の上部構造において、
前記車体骨格部材は、フロントヘッダであり、
前記少なくとも一部の固定部には、サンバイザーを前記トップシーリングとともに前記車体骨格部材に固定するサンバイザー固定部、前記トップシーリングがガセットを介して前記車体骨格部材に固定される部位であるガセット固定部、およびブラケットを介してオーバーヘッドコンソールを前記トップシーリングとともに前記車体骨格部材に固定するブラケット固定部の少なくとも1つの固定部が含まれる、
車両の上部構造。
【請求項7】
請求項1から請求項5の何れかに記載の車両の上部構造において、
前記車体骨格部材は、リアヘッダである、
車両の上部構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載の車両の上部構造において、
前記トップシーリングは、前記車体骨格部材に対して上下方向に離間して配されている、
車両の上部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の上部構造に関し、特に車両におけるトップシーリングの振動抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、燃費の向上などを目的として車両の軽量化が進められている。このように車両の軽量化を進めて行く上で車室内に対する騒音低減が重要となる。特に、ルーフパネルに対して車室内側を覆うように取り付けられるトップシーリングについては、当該トップシーリングの振動が車室への騒音の大きな要因になると考えられる。
【0003】
特許文献1には、ルーフパネルとトップシーリングとの間に制振補強材を介挿させてなる車両の上部構造が開示されている。特許文献1における制振補強材は、ウレタンの発泡体などから構成された基材層と、紙や樹脂などから構成され、基材層の表裏両面に積層された表皮層とで構成されている。制振補強材は、ルーフパネルに対して隙間を空けて配されている。そして、制振補強材におけるルーフパネルに面する表皮層には複数の孔が開けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-151105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示の制振補強材は、トップシーリングにおけるルーフパネル側の略全面を覆うように設けられているため、製造コストの上昇および車両重量の増加が問題となる。
【0006】
また、上記特許文献1に開示の車両の上部構造においては、ルーフパネルとトップシーリングとの間に配設される車体骨格部材(ヘッダやルーフレイン)からトップシーリングに入力される振動エネルギについては何ら考慮されていない。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、製造コストの上昇および車両重量の増加を抑えながら、トップシーリングの振動を抑制することで車室の騒音を低減することができる車両の上部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両の上部構造は、ルーフパネルと、車体骨格部材と、トップシーリングと、複数の固定部材と、第1弾性部材とを備える。前記車体骨格部材は、前記ルーフパネルに対して車室内側に配され、車幅方向に延びる部材である。前記トップシーリングは、前記ルーフパネルを車室内側から覆うとともに、前記車体骨格部材に対して車室内側に配され、且つ、それぞれが前記車体骨格部材に対して固定される複数の固定部を有する部材である。前記複数の固定部材は、前記複数の固定部のそれぞれにおいて、前記車体骨格部材と前記トップシーリングとを固定する部材である。前記第1弾性部材は、前記ルーフパネルの下面および前記トップシーリングの上面に当接した状態で前記ルーフパネルと前記トップシーリングの間に配設された、振動減衰性能を有する。
【0009】
本態様に係る車両の上部構造において、前記トップシーリングは、前記複数の固定部の少なくとも一部の固定部において、前記車体骨格部材に対して上下方向に隙間を有するように配設されている。
また、本態様に係る車両の上部構造において、前記第1弾性部材は、前記ルーフパネルと前記トップシーリングとの間において、前記ルーフパネルと前記トップシーリングとから付加される圧縮力により圧縮状態にある。
また、本態様に係る車両の上部構造において、前記少なくとも一部の固定部には、互いに車幅方向に離間する位置に配置された第1固定部と第2固定部とが含まれている。前記第2固定部は、車幅方向において、前記第1固定部よりも内側で、且つ、車両の車幅方向中心よりも外側に配置されている。
また、本態様に係る車両の上部構造において、前記第1弾性部材は、車幅方向における前記第1固定部と前記第2固定部との間の領域のみで延在するように配設されている。
【0010】
上記態様に係る車両の上部構造では、上記少なくとも一部の固定部において、トップシーリングと車体骨格部材との間に上下方向の隙間を有するよう構成されているので、上記少なくとも一部の固定部では車体骨格部材からトップシーリングへの振動エネルギの伝達が抑制される。よって、上記態様に係る車両の上部構造では、少なくとも一部の固定部において車両骨格部材とトップシーリングとの間に隙間を設けるという簡易な構成を以ってトップシーリングの振動を抑制することができ、車室の騒音を低減することができる。
また、上記態様に係る車両の上部構造では、振動減衰性能を有する第1弾性部材が圧縮状態でルーフパネルとトップシーリングとの間に配設されているので、ルーフパネルとトップシーリングとの間での隙間も確保することができ、ルーフパネルからトップシーリングへの振動エネルギの伝達も抑制することができる。また、第1弾性部材は振動減衰性能を有するので、当該第1弾性部材を介してのルーフパネルからトップシーリングへの振動エネルギの伝達も抑制される。
また、上記態様に係る車両の上部構造では、第1弾性部材が車幅方向において第1固定部と第2固定部との間の領域のみで延在するように配設されているので、仮にルーフパネルや車体骨格部材からトップシーリングに振動エネルギが伝達されたとしても、第1固定部と第2固定部との間の振動の腹となる箇所に振動減衰性能を有する第1弾性部材を配することで、当該第1弾性部材によって振動が減衰される。よって、上記態様に係る車両の上部構造では、トップシーリングの振動を抑制するのにさらに好適である。
【0011】
上記態様に係る車両の上部構造において、前記トップシーリングは、前記少なくとも一部の固定部の厚みが、その周辺領域の厚みよりも薄く形成されている、としてもよい。
【0012】
上記態様に係る車両の上部構造では、上記少なくとも一部の固定部におけるトップシーリングの厚みが周辺領域よりも薄く形成されているので、車両の走行などでトップシーリングに上下方向の力が加わった場合にも、車体骨格部材とトップシーリングとの間に隙間が空いた状態が維持され易くなる。よって、上記態様に係る車両の上部構造では、車体骨格部材からトップシーリングへの振動エネルギの伝達を抑制するのに好適である。
【0013】
上記態様に係る車両の上部構造において、前記トップシーリングは、前記複数の固定部のそれぞれにおいて、前記固定部材の一部が挿通可能な孔を有し、前記車体骨格部材は、前記トップシーリングにおける前記複数の固定部のそれぞれに対応する部分において、前記固定部材の一部が挿通可能な孔を有し、前記複数の固定部材のそれぞれは、前記車体骨格部材の孔を挿通して当該車体骨格部材を係止する頭部と、前記頭部に対して下方に垂下し、前記トップシーリングの孔に挿通される胴部と、前記胴部の下方に接続され、前記トップシーリングの孔の周囲を下方から支持する座面部と、を有し、前記車体骨格部材と前記トップシーリングにおける前記少なくとも一部の固定部とを固定する固定部材は、前記胴部が、前記車体骨格部材と前記座面部に載置された前記トップシーリングとの間に前記隙間が形成される長さを有する、としてもよい。
【0014】
上記態様に係る車両の上部構造では、固定部材における胴部の長さの設定により車体骨格部材とトップシーリングとの間に隙間が空くようにしているので、簡易な構成を以って前記隙間を形成することができ、製造コストの上昇および車両重量の増加を抑制するのに好適である。
【0019】
上記態様に係る車両の上部構造において、前記車体骨格部材の下面および前記トップシーリングの上面に当接した状態で前記車体骨格部材と前記トップシーリングの間に配設された、振動減衰性能を有する第2弾性部材をさらに備え、前記第2弾性部材は、前記車体骨格部材と前記トップシーリングとの間において、前記車体骨格部材と前記トップシーリングとから付加される圧縮力により圧縮状態にある、としてもよい。
【0020】
上記態様に係る車両の上部構造では、振動減衰性能を有する第2弾性部材が圧縮状態で車体骨格部材とトップシーリングとの間に配設されているので、第2弾性部材が車体骨格部材とトップシーリングに付勢する上下方向の付勢力により車体骨格部材とトップシーリングとの間での隙間を確実に確保することができ、車体骨格部材からトップシーリングへの振動エネルギの伝達をより確実に抑制することができる。また、第2弾性部材は振動減衰性能を有するので、当該第2弾性部材を介しての車体骨格部材からトップシーリングへの振動エネルギの伝達も抑制される。
【0021】
上記態様に係る車両の上部構造において、前記第2弾性部材は、前記車体骨格部材に沿って車幅方向に延びるように設けられている、としてもよい。
【0022】
上記態様に係る車両の上部構造では、第2弾性部材が車体骨格部材に沿って車幅方向に延びるように設けられているので、車両のピラーやルーフサイドレールからトップシーリングに伝達される振動エネルギを確実に抑制するのにさらに好適である。
【0023】
上記態様に係る車両の上部構造において、前記車体骨格部材は、フロントヘッダであり、前記少なくとも一部の固定部には、サンバイザーを前記トップシーリングとともに前記車体骨格部材に固定するサンバイザー固定部、前記トップシーリングがガセットを介して前記車体骨格部材に固定される部位であるガセット固定部、およびブラケットを介してオーバーヘッドコンソールを前記トップシーリングとともに前記車体骨格部材に固定するブラケット固定部の少なくとも1つの固定部が含まれる、としてもよい。
【0024】
上記態様に係る車両の上部構造では、上記少なくとも一部の固定部に、サンバイザー固定部、ガセット固定部、およびブラケット固定部の少なくとも1つの固定部が含まれることとしているので、車体骨格部材から上記少なくとも1つの固定部を介してトップシーリングに伝達される振動エネルギを確実に抑制することができ、トップシーリングの振動を抑制することができる。
【0025】
上記態様に係る車両の上部構造において、前記車体骨格部材は、リアヘッダである、としてもよい。
【0026】
上記態様に係る車両の上部構造では、上記車体骨格部材としてリアヘッダを採用するので、リアサスペンションからリアヘッダを介して伝達される振動エネルギが、上記隙間を設けることによりトップシーリングに伝達されるのを抑制することができる。
【0027】
上記態様に係る車両の上部構造において、前記トップシーリングは、前記車体骨格部材に対して上下方向に離間して配されている、としてもよい。
【0028】
上記態様に係る車両の上部構造では、トップシーリングが車体骨格部材から離間するように配されているので、上記少なくとも一部の固定部を含む全体において、車体骨格部材からトップシーリングへの振動エネルギの伝達を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
上記の各態様に係る車両の上部構造では、製造コストの上昇および車両重量の増加を抑えながら、トップシーリングの振動を抑制することで車室の騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両の上部構造を示す平面図である。
図2】ルーフパネルとトップシーリングとの間に配設された弾性部材を示す断面図である。
図3】車両におけるルーフ前端部分を示す斜視図である。
図4図3のIV-IV線断面を示す断面図である。
図5】サンバイザー固定部におけるフロントヘッダとトップシーリングとの固定構造を示す断面図である。
図6】トップシーリングの一部を示す平面図である。
図7】台上加振試験において、車体感度を計測した箇所を示す模式図である。
図8】台上加振での運転席での車体感度の内、125Hzの車体感度を示すグラフである。
図9】トップシーリングの前端部分に弾性部材を配設したことによる効果を示すグラフである。
図10】本発明の第2実施形態に係る車両の上部構造の一部を示す斜視図である。
図11】ルーフパネルとトップシーリングとの間に弾性部材を介挿したことによる効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0032】
[第1実施形態]
1.車両1の上部構造
第1実施形態に係る車両1の上部構造について、図1から図4を用いて説明する。なお、図1から図4では、車両1の上部構造の一部を抜き出して図示している。
【0033】
図1に示すように、車両1は、ルーフパネル(図1では、図示を省略。)と、左右一対のフロントピラー10と、左右一対のセンターピラー11と、左右一対のルーフサイドレール12と、フロントヘッダ(車体骨格部材)13と、左右一対のガセット14と、ルーフレイン15,16と、リアヘッダ(車体骨格部材)19と、トップシーリング17と、弾性部材(第1弾性部材)18とを備える。ルーフパネルは、フロントヘッダ13、ルーフレイン15,16、およびリアヘッダ19に取り付けられている。
【0034】
フロントヘッダ13は、ルーフパネルの前部に接合され、車幅方向に延びるように構成されている。ガセット14は、フロントヘッダ13の左右それぞれと、ルーフサイドレール12とに接合されている。ルーフレイン15,16は、フロントヘッダ13に対して後方に離間して配されているとともに、互いに前後方向に離間して配されている。リアヘッダ19は、ルーフパネルの後部に接合され、車幅方向に延びるように構成されている。
【0035】
トップシーリング17は、ルーフパネルの車室側を覆うように配され、複数の固定部でフロントヘッダ13、ガセット14、ルーフレイン15,16、およびリアヘッダ19に固定されている。複数の固定部には、サンバイザー固定部17b、ガセット固定部17c、およびブラケット固定部17dが含まれる。サンバイザー固定部17bは、トップシーリング17とともにサンバイザーをフロントヘッダ13に固定する箇所である。ガセット固定部17cは、ガセット14を介してトップシーリング17をフロントヘッダ13に固定する箇所である。ブラケット固定部17dは、トップシーリング17の前部中央に設けられた開口部17aの近傍に位置し、ブラケットを介してオーバーヘッドコンソールをトップシーリング17とともにフロントヘッダ13に固定する箇所である。サンバイザー固定部17b、ガセット固定部17c、およびブラケット固定部17dのそれぞれは、トップシーリング17において左右対称に配されている。
【0036】
図2に示すように、弾性部材18は、上下方向におけるルーフパネル20とトップシーリング17との間に介設されている。より具体的には、弾性部材18は、ルーフパネル20の下面20aとトップシーリング17の上面17eとに対して直に当接する状態であって、ルーフパネル20の下面20aおよびトップシーリング17の上面17eから上下方向の力(矢印A1,A2)が付加された状態となっている。即ち、弾性部材18は、ルーフパネル20とトップシーリング17との間に、上下方向に圧縮された圧縮状態で介設されている。
【0037】
図3および図4に示すように、本実施形態に係る車両1では、フロントヘッダ13における前フランジ部13cとトップシーリング17との間に介挿された弾性部材(第2弾性部材)21をさらに備える。弾性部材21は、フロントヘッダ13における前フランジ部13cの下面とトップシーリング17の上面とに直に接し、且つ、フロントヘッダ13およびトップシーリング17との間に圧縮状態で配設されている。逆にいうと、弾性部材21は、フロントヘッダ13とトップシーリング17とを上下方向に離間させるように付勢力を付加している。
【0038】
なお、図4に示すように、トップシーリング17の前端部分とフロントウインドシールド22との間に弾性部材23を介挿させたり、フロントヘッダ13における前フランジ部13cよりも後方の部分とトップシーリング17との間に弾性部材24を介挿させたりすることもできる。このように弾性部材23,24を設けることによっても、フロントウインドシールド22やフロントヘッダ13からの振動エネルギがトップシーリング17に伝達されるのを抑制するのに効果を有する。
【0039】
ここで、弾性部材21,23,24の形成材料については、例えば、発泡材(アクリル発泡材やウレタン発泡材など)を採用することができるが、振動減衰性能を有する材料であれば発泡樹脂以外を採用することも可能である。
【0040】
2.フロントヘッダ13とトップシーリング17との固定構造
車両1におけるフロントヘッダ13とトップシーリング17との固定構造について、図5を用いて説明する。なお、図5では、サンバイザー固定部17bにおけるフロントヘッダ13とトップシーリング17との固定構造を示すが、車両1における他の固定部においても同様の構造を以ってフロントヘッダ13とトップシーリング17とが固定されている。
【0041】
図5に示すように、本実施形態に係る車両1においては、リベット(固定部材)25を用いてフロントヘッダ13とトップシーリング17とを固定している。リベット25は、頭部25aと、胴部25bと、座面部25cとが一体形成された部材であって、一例として樹脂材料から形成されている。
【0042】
頭部25aは、下部から上部に向けて断面径が漸減する鏃形状を有し、フロントヘッダ13に開けられた孔13cを挿通してフロントヘッダ13の上面に係止されている。胴部25bは、頭部25aの下端部に連続し、フロントヘッダ13の孔13aを挿通して下方に垂下するように配されており、トップシーリング17のサンバイザー固定部17bに開けられた孔17hを挿通している。座面部25cは、胴部25bの下端部に連続し、サンバイザー固定部17bにおける孔17hの周辺部分を下方から支持するように形成されている。
【0043】
リベット25の胴部25bは、当該リベット25でフロントヘッダ13とトップシーリング17とを固定した場合に、フロントヘッダ13の下面13bとトップシーリング17の上面17eとの間に上下方向の隙間Gが空く長さを以って形成されている。即ち、リベット25の胴部25bの長さは、トップシーリング17のサンバイザー固定部17bにおける厚みT1と、フロントヘッダ13における孔13aの周囲の厚みとを足し合わせた長さよりも長く設定されている。
【0044】
なお、本実施形態に係る車両1では、サンバイザー固定部17bの周辺部17gの厚みT2よりもサンバイザー固定部17bにおける孔17hの周辺部分の厚みT1が薄く形成されている。このような厚み関係については、ガセット固定部17cやブラケット固定部17dなど、リベット25を用いて車体骨格部材(フロントヘッダ13、ルーフレイン15,16、リアヘッダ19など)とトップシーリング17とを固定する各固定部においても同様である。
【0045】
3.台上加振試験
実車を用いて実施した台上加振試験について、図6から図8を用いて説明する。
【0046】
図6に示すように、台上加振試験においては、運転席(左側前席)の上部において、サンバイザー固定部17b(矢印B1で示す部分)およびガセット固定部17c(矢印B2で示す部分)のトップシーリング17の厚みを変えたサンプルを準備し、フロントヘッダ13とトップシーリング17との隙間Gとの関係での車体感度を計測した。そして、本試験では、次のサンプルを準備した。
【0047】
〈サンプル1〉 サンプル1は、表1に示すように、ガセット固定部17cにおけるトップシーリング17の厚みを4.3mmとし、サンバイザー固定部17bにおけるトップシーリング17の厚みを5.5mmとした。そして、サンプル1では、ガセット固定部17cにおいてフロントヘッダ13とトップシーリング17との間に1.0mmの隙間が空き、サンバイザー固定部17bにおいてフロントヘッダ13とトップシーリング17とが密着するようにした。
【0048】
【表1】
【0049】
〈サンプル2〉 サンプル2は、表1に示すように、ガセット固定部17cにおけるトップシーリング17の厚みを3.3mmとし、サンバイザー固定部17bにおけるトップシーリング17の厚みを3.0mmとした。そして、サンプル2では、ガセット固定部17cにおいてフロントヘッダ13とトップシーリング17との間に2.0mmの隙間が空き、サンバイザー固定部17bにおいてもフロントヘッダ13とトップシーリング17との間に2.0mmの隙間が空くようにした。
【0050】
〈サンプル3〉 サンプル3は、表1に示すように、ガセット固定部17cにおけるトップシーリング17の厚みを4.3mmとし、サンバイザー固定部17bにおけるトップシーリング17の厚みを4.0mmとした。そして、サンプル3では、ガセット固定部17cにおいてフロントヘッダ13とトップシーリング17との間に1.0mmの隙間が空き、サンバイザー固定部17bにおいてもフロントヘッダ13とトップシーリング17との間に1.0mmの隙間が空くようにした。
【0051】
〈サンプル4〉 サンプル4は、表1に示すように、ガセット固定部17cにおけるトップシーリング17の厚みを4.8mmとし、サンバイザー固定部17bにおけるトップシーリング17の厚みを4.5mmとした。そして、サンプル4では、ガセット固定部17cにおいてフロントヘッダ13とトップシーリング17との間に0.5mmの隙間が空き、サンバイザー固定部17bにおいてもフロントヘッダ13とトップシーリング17との間に0.5mmの隙間が空くようにした。
【0052】
〈サンプル5〉 サンプル5は、サンプル1と同様の厚みを有するトップシーリング17を用い、ルーフパネル20とトップシーリング17との間に弾性部材(ウレタン発泡材またはアクリル発泡材)を介挿した。なお、サンプル5では、サンバイザー固定部17bおよびガセット固定部17cのそれぞれにおけるフロントヘッダ13とトップシーリング17との間の隙間は上記サンプル1と同じである。
【0053】
〈サンプル6〉 サンプル6は、サンプル2と同様の厚みを有するトップシーリング17を用い、サンバイザー固定部17bおよびガセット固定部17cにおけるフロントヘッダ13とトップシーリング17との間の隙間をシール部材(EPDMゴム発泡材)で埋めたサンプルである。
【0054】
図7に示すように、台上加振試験において、車体感度(振動に対する応答感度)を車室1a内の4箇所で計測した。具体的には、助手席1bにおける搭乗者の耳位置Pos,1と、運転席1cにおける運転者の耳位置Pos.2と、助手席1bの後の後席1dにおける搭乗者の耳位置Pos.3と、運転席1cの後の後席1eにおける搭乗者の耳位置Pos.4とで計測を行った。
【0055】
計測結果(125Hzの計測結果)を表2および図8に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2における車体感度は、数値が小さいほど振動が少ない。そして、サンプル1を基準としてサンプル2~6の計測結果を表している。また、図8は、計測位置Pos.2での計測結果を図示したものである。
【0058】
表2に示すように、計測位置Pos.2(運転席1cにおける運転者の耳位置)では、サンプル2~6の全てのサンプルで比較例としてのサンプル1よりも小さな値を得た。図8に示すように、サンプル2は、特に小さな値を得た。また、サンプル3,4についても、比較例とするサンプル1よりも小さな値であり、サンプル5,6よりも小さな値を得た。なお、表2と図8とで車体感度に係る数値が僅かに異なるのは、表2では、小数点以下第2位を四捨五入しているためである。
【0059】
また、表2に示すように、計測位置Pos.1についても、サンプル2,4~6でサンプル1よりも小さな値を得た。
【0060】
以上の結果から、サンバイザー固定部17bおよびガセット固定部17cのそれぞれにおいて、フロントヘッダ13とトップシーリング17との間に隙間が空くようにしたサンプル2~4では、車室1a内における騒音を低減することができることが分かる。なお、本試験のサンプル2~4では、運転席1cの上部において、フロントヘッダ13とトップシーリング17との間に隙間が空くようにしたが、助手席1bの上部や後席1d,1eの上部などでも同様の構成を採用することで車室1a内の騒音を低減できると考えられる。
【0061】
4.弾性部材21の有無とERP
本実施形態に係る車両1では、フロントヘッダ13の前フランジ部13cとトップシーリング17との間に弾性部材21を介挿させることとしたが、当該弾性部材21を介挿させることにより得られる効果について、図9を用いて説明する。図9におけるサンプル11,12は、次のような構成を有する。
【0062】
〈サンプル11〉 サンプル11は、本実施形態に係る車両1に対して、フロントヘッダ13とトップシーリング17との間に弾性部材を介挿させなかったサンプルであって、他の構成については、本実施形態に係る車両1と同様である。
【0063】
〈サンプル12〉 サンプル12は、本実施形態に係る車両1と同様に、フロントヘッダ13の前フランジ部13cとトップシーリング17との間に弾性部材21を介挿させたサンプルである。
【0064】
図9のC部に示すように、サンプル12のERP(等価放射パワー:Equivalent Radiated Power)は、周波数70Hz付近と周波数85Hz付近とにおいて、サンプル11よりも低くなった。具体的に、周波数70Hz付近においては、サンプル12のERPはサンプル11に比べて2~3dB低く、周波数85Hz付近においては、サンプル12のERPはサンプル11に比べて1~2dB低くなった。この結果より、フロントヘッダ13とトップシーリング17との間に圧縮状態で弾性部材21を介挿させる車両1では、弾性部材を介挿させない場合に比べて65~85Hzの周波数域において振動低減効果を得る上で優れていることが分かる。
【0065】
5.効果
本実施形態に係る車両1の上部構造では、トップシーリング17におけるフロントヘッダ13等の車体骨格部材との固定部の内の少なくとも一部の固定部(サンバイザー固定部17b、ガセット固定部17c、ブラケット固定部17dなど)において、トップシーリング17が車体骨格部材と上下方向に隙間Gを有する状態で配されるので、前記少なくとも一部の固定部では車体骨格部材からトップシーリング17への振動エネルギの伝達が抑制される。よって、車両1では、トップシーリング17における上記少なくとも一部の固定部においてフロントヘッダ13等の車両骨格部材とトップシーリング17との間に隙間Gを設けるという簡易な構成を以ってトップシーリング17の振動を抑制することができ、車室1aの騒音を低減することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る車両1の上部構造では、上記少なくとも一部の固定部におけるトップシーリング17の厚みT1がその周辺部17gの厚みT2よりも薄く形成されているので、車両1の走行などでトップシーリング17に上下方向の力が加わった場合にも、フロントヘッダ13等の車体骨格部材とトップシーリング17との間に隙間Gが空いた状態が維持され易くなる。よって、車両1では、フロントヘッダ13等の車体骨格部材からトップシーリング17への振動エネルギの伝達を抑制するのに好適である。
【0067】
また、本実施形態車両1の上部構造では、リベット25における胴部25bの長さを上記のようにフロントヘッダ13等の車体骨格部材とトップシーリング17との間に隙間Gが空くように設定しているので、簡易な構成を以って隙間Gを形成することができ、製造コストの上昇および車両重量の増加を抑制するのに好適である。
【0068】
また、本実施形態に係る車両1の上部構造では、振動減衰性能を有する弾性部材18が圧縮状態でルーフパネル20とトップシーリング17との間に配設されているので、ルーフパネル20の下面20aとトップシーリング17の上面17eとの間での隙間も確保することができ、ルーフパネル20からトップシーリング17への振動エネルギの伝達も抑制することができる。また、弾性部材18は振動減衰性能を有するので、当該弾性部材18を介してのルーフパネル20からトップシーリング17への振動エネルギの伝達も抑制される。
【0069】
また、本実施形態に係る車両1の上部構造では、弾性部材18が車幅方向においてサンバイザー固定部17bとガセット固定部17cとの間に配設されているので、仮にルーフパネル20やフロントヘッダ13からトップシーリング17に振動エネルギが伝達されたとしても、サンバイザー固定部17bとガセット固定部17cとの間の振動の腹となる箇所に振動減衰性能を有する弾性部材18を配することで、当該弾性部材18によって振動が減衰される。よって、車両1では、トップシーリング17の振動を抑制するのにさらに好適である。なお、弾性部材18としては、トップシーリング17の振動を減衰するという機能の観点から、少なくとも2つの共振周波数を有すること、および損失係数が0.01以上であることが望ましい。
【0070】
また、本実施形態に係る車両1の上部構造では、振動減衰性能を有する弾性部材21が圧縮状態でフロントヘッダ13の前フランジ部13cとトップシーリング17との間に配設されているので、圧縮状態で介挿された弾性部材21の上下方向の付勢力によりフロントヘッダ13とトップシーリング17との間での隙間Gを確実に確保することができ、フロントヘッダ13からトップシーリング17への振動エネルギの伝達をより確実に抑制することができる。また、弾性部材21は振動減衰性能を有するので、当該弾性部材21を介してのフロントヘッダ13からトップシーリング17への振動エネルギの伝達も抑制される。なお、図4に示した弾性部材24についても、上記同様の効果を奏する。また、フロントウインドシールド22とトップシーリング17との間に弾性部材23を介挿させる場合においても、フロントヘッダ13とトップシーリング17との隙間Gを確保するのに好適であるとともに、フロントウインドシールド22からトップシーリング17への振動エネルギの伝達を抑制するのにも好適である。
【0071】
また、本実施形態に係る車両1の上部構造では、弾性部材21がフロントヘッダ13に沿って車幅方向に延びるように設けられているので、車両1のフロントピラー10やルーフサイドレール12からトップシーリング17に伝達される振動エネルギを確実に抑制するのにさらに好適である。
【0072】
また、本実施形態に係る車両1の上部構造では、トップシーリング17における車体骨格部材との固定部として、フロントヘッダ13との固定部であるサンバイザー固定部17b、ガセット固定部17c、およびブラケット固定部17dを含むこととしているので、フロントヘッダ13から上記固定部17b,17c,17dを介してトップシーリング17に伝達される振動エネルギを確実に抑制することができ、トップシーリング17の振動を抑制することができる。
【0073】
ここで、本実施形態に係る車両1の上部構造では、車体骨格部材の一例としてフロントヘッダ13を採用し、フロントヘッド13とトップシーリング17との間に隙間Gが空くように構成したが、車体骨格部材としてリアヘッダ19を採用し、リアヘッダ19とトップシーリング17との間に隙間が空くようにリベット25などの固定部材で固定することもできる。この場合にも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る車両1の上部構造では、製造コストの上昇および車両重量の増加を抑えながら、トップシーリング17の振動を抑制することで車室1aの騒音を低減することができる。
【0075】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る車両1の上部構造について、図10および図11を用いて説明する。なお、本実施形態に係る車両1は、ルーフパネル20とトップシーリング17との間に介挿される弾性部材(第2弾性部材)26の配設形態が上記第1実施形態とは異なり、他の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0076】
図10に示すように、本実施形態に係る車両1でも、前後方向におけるフロントヘッダ13とルーフレイン15との間に左右一対の弾性部材(第2弾性部材)26が配設されている。弾性部材26は、図10では図示を省略するルーフパネル20とトップシーリング17との間に介挿され、ルーフパネル20とトップシーリング17との間で圧縮状態とされている。この点については、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
本実施形態に係る車両1では、弾性部材26のそれぞれが車幅方向に延びる長尺形状を有する。これより、弾性部材26は、フロントヘッダ13とルーフレイン15との間の領域において、車幅方向におけるサンバイザー固定部17bからガセット固定部17cに至る範囲(矢印D1,D2で示す部分)でルーフパネル20とトップシーリング17との間に介挿されている。
【0078】
なお、本実施形態においても、弾性部材26は、一例として発泡材(アクリル発泡材やウレタン発泡材など)から形成されている。
【0079】
上述のように、ルーフパネル20とトップシーリング17との間に弾性部材26を介挿させることにより得られる効果について、図11を用いて説明する。図11におけるサンプル21,22は、次のような構成を有する。
【0080】
〈サンプル21〉 サンプル21は、本実施形態に係る車両1に対して、ルーフパネル20とトップシーリング17との間に弾性部材を介挿させなかったサンプルであって、他の構成については、本実施形態に係る車両1と同様である。
【0081】
〈サンプル22〉 サンプル22は、本実施形態に係る車両1と同様に、ルーフパネル20とトップシーリング17との間に弾性部材26を介挿させたサンプルである。
【0082】
図11に示すように、ルーフパネル20とトップシーリング17との間に車幅方向に長尺な弾性部材26が配設されたサンプル22では、周波数80~145Hzの範囲(E部分)でのERPがサンプル21よりも低くなった。具体的に、周波数85Hzおよび周波数125Hzのそれぞれにおいては、サンプル22のERPはサンプル21に比べて2~3dB低く、周波数95Hz付近においては、サンプル22のERPはサンプル21に比べて2~2.5dB低くなった。この結果より、ルーフパネル20とトップシーリング17との間に圧縮状態で車幅方向に長尺な弾性部材26を介挿させる車両1では、弾性部材を介挿させない場合に比べて80~145Hzの周波数域において振動低減効果を得る上で優れていることが分かる。
【0083】
なお、本実施形態に係る車両1においても、フロントヘッダ13やルーフレイン15,16やリアヘッダ19などの車体骨格部材とトップシーリング17とを固定する部分の少なくとも一部において、車体骨格部材とトップシーリング17との間に隙間Gが空くように構成しているので、上記第1実施形態と同様に、車体骨格部材からトップシーリング17への振動エネルギの伝達が抑制され、トップシーリング17の振動を抑制することができる。
【0084】
[変形例]
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、固定部材の一例としてリベット25を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ボルトとナットとの組み合わせによる固定部材を採用することもできる。
【0085】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、詳細な説明を省略したが、車体骨格部材とトップシーリング17とを固定する部分の少なくとも一部に図5に示した構成を採用することができる。換言すると、車両における車体骨格部材とトップシーリングとの全ての固定部分において、車体骨格部材とトップシーリングとの間に隙間が空くように構成することもできるし、一部の固定部分においてのみ隙間が空くように構成することもできる。ここで、一部の固定部分においてもみ隙間が空くように構成する場合には、車体骨格部材とトップシーリングとの複数の固定部分の内のピラー(フロントピラー、センターピラー、リアピラー)に近い部分に図5に示した構成を採用することが望ましい。これは、ピラーに近い部分においては、サスペンションなどからピラーを介して車体骨格部材に入力される振動エネルギが大きいためであり、トップシーリングへの振動エネルギの伝達を抑制する上で望ましいからである。
【0086】
上記第1実施形態では、弾性部材18,21,23,24などを備える構成を採用し、上記第2実施形態では、弾性部材26を備える構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではなく、必ずしも車体骨格部材やルーフパネルとトップシーリングとの間に弾性部材を介挿させることを要しない。この場合においても、車体骨格部材とトップシーリングとの固定部分に図5に示す構成を採用することにより、トップシーリングの振動を低減することができ、車室1aの騒音を低減することができる。
【0087】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、リベット25を用いてフロントヘッダ13とトップシーリング17とが固定される部分において、トップシーリング17の厚みT1がその周辺部17gの厚みT2よりも薄くなるようにトップシーリング17を構成することとしたが、本発明では、全域に亘って一様な厚みを有するトップシーリングを採用することも可能である。この場合においても、車体骨格部材とトップシーリングとの固定部分において、車体骨格部材に対してトップシーリングが離間するように(間に隙間が空くように)することで上記同様の効果を得ることができる。
【0088】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、トップシーリング17における車体骨格部材13との固定部17b,17c,17dにおいて、車体骨格部材13とトップシーリング17との間に隙間Gが空いていることとしたが、本発明では、固定部17b,17c,1dを除く部分において、フロントヘッダ13とトップシーリング17とが当接していてもよいし離間していてもよい、ここで、フロントヘッダ13等の車体骨格部材に対して、固定部以外の部分でも離間するようにトップシーリングを配することとすれば、車体骨格部材からの振動エネルギは固定部以外の部分からもトップシーリングに対して伝達され難く、トップシーリングの振動を抑制するのに好適である。
【符号の説明】
【0089】
1 車両
1a 車室
13 フロントヘッダ(車体骨格部材)
13b 下面
17 トップシーリング
17b サンバイザー固定部(固定部)
17c ガセット固定部(固定部)
17d ブラケット固定部(固定部)
17e 上面
18,26 弾性部材(第1弾性部材)
21,24 弾性部材(第2弾性部材)
25 リベット(固定部材)
25c 座面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11