(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-17
(45)【発行日】2025-11-26
(54)【発明の名称】電動車両のパーキングロック装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20251118BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20251118BHJP
【FI】
F16H63/34
B60K17/12
(21)【出願番号】P 2021207736
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2024-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 亙
(72)【発明者】
【氏名】義永 博美
(72)【発明者】
【氏名】大野 修実
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ ▲リー▼萱
(72)【発明者】
【氏名】張 祐▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 志源
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-034567(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067273(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/26-61/36
F16H 63/00-63/38
B60K 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を利用して車両を駆動する駆動モータと、該駆動モータからの動力を減速する減速機とを有し、該減速機は、該駆動モータの回転力が入力される入力軸、該入力軸に設けられた入力ギヤ、該入力ギヤに噛み合う第1中間ギヤ、該第1中間ギヤが設けられた中間軸、該第1中間ギヤと軸方向に並ぶように該中間軸に設けられた第2中間ギヤ、及び該第2中間ギヤに噛み合う出力ギヤが設けられた出力軸を備える電動車両のパーキングロック装置であって、
前記第1中間ギヤ及び前記第2中間ギヤと軸方向に並ぶように前記中間軸に設けられたパーキングロックギヤと、
前記パーキングロックギヤの上部の歯に係合して該パーキングロックギヤをロック可能なロックレバーと、
モータハウジングの上部に配置され、アクチュエータロッドを介して前記ロックレバーに連結され、該ロックレバーを駆動して、該パーキングロックギヤのロック状態と非ロック状態とを切り替えるパーキングロックアクチュエータと、を備え、
前記中間軸が、前記入力軸の中心と前記出力軸の中心とを結ぶ直線よりも上方に位置し、前記パーキングロックギヤの上端部が、前記入力軸よりも上方に位置
し、
前記モータハウジングには、前記駆動モータ、前記減速機及び該駆動モータへ供給する電力を発生させる発電機がこの順に配置され、
前記モータハウジングの上部に、モータ用インバータ、発電用インバータ及びDCDCコンバータが一体的に構成された電力変換ユニットが配置され、
前記電力変換ユニットは、後部に前記モータ用インバータ及び前記発電用インバータ、該モータ用インバータの前方に前記DCDCコンバータを有し、
前記発電用インバータの前方、かつ、前記DCDCコンバータの側方に隣接して前記パーキングロックアクチュエータが配置されていることを特徴とする電動車両のパーキングロック装置。
【請求項2】
電力を利用して車両を駆動する駆動モータと、該駆動モータからの動力を減速する減速機とを有し、該減速機は、該駆動モータの回転力が入力される入力軸、該入力軸に設けられた入力ギヤ、該入力ギヤに噛み合う第1中間ギヤ、該第1中間ギヤが設けられた中間軸、該第1中間ギヤと軸方向に並ぶように該中間軸に設けられた第2中間ギヤ、及び該第2中間ギヤに噛み合う出力ギヤが設けられた出力軸を備える電動車両のパーキングロック装置であって、
前記第1中間ギヤ及び前記第2中間ギヤと軸方向に並ぶように前記中間軸に設けられたパーキングロックギヤと、
前記パーキングロックギヤの上部の歯に係合して該パーキングロックギヤをロック可能なロックレバーと、
モータハウジングの上部に配置され、アクチュエータロッドを介して前記ロックレバーに連結され、該ロックレバーを駆動して、該パーキングロックギヤのロック状態と非ロック状態とを切り替えるパーキングロックアクチュエータと、を備え、
前記中間軸が、前記入力軸の中心と前記出力軸の中心とを結ぶ直線よりも上方に位置し、前記パーキングロックギヤの上端部が、前記入力軸よりも上方に位置し、
前記入力軸は、前記駆動モータのモータシャフトと一体的に構成され、
前記モータシャフトは、前記減速機側に位置する軸受部が、前記入力ギヤよりも前記駆動モータから離れた位置に配置され、
前記パーキングロックギヤは、前記軸受部よりも前記駆動モータから離れた位置に配置され、
前記軸受部よりも前記駆動モータから離れた位置にアースブラシを備え、前記アクチュエータロッドが該アースブラシの上方に配置されることを特徴とする電動車両のパーキングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、電動車両のパーキングロック装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
モータ軸上にパーキングロックギヤを設け、パーキングロックアクチュエータをハウジングの上部に設けたパーキングロック装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パーキングロックギヤは、周辺部品との関係から、モータ軸上へ配置することが困難な場合がある。その場合、パーキングロックギヤを中間軸へ配置することが考えられるが、パーキングロックギヤを中間軸へ配置するためには、パーキングロックギヤに設けるロックレバーとパーキングロックアクチュエータとの連結を考慮する必要がある。
【0005】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パーキングロックアクチュエータのサービス性とロックレバーに対する連結性を両立したパーキングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、電力を利用して車両を駆動する駆動モータと、該駆動モータからの動力を減速する減速機とを有し、該減速機は、該駆動モータの回転力が入力される入力軸、該入力軸に設けられた入力ギヤ、該入力ギヤに噛み合う第1中間ギヤ、該第1中間ギヤが設けられた中間軸、該第1中間ギヤと軸方向に並ぶように該中間軸に設けられた第2中間ギヤ、及び該第2中間ギヤに噛み合う出力ギヤが設けられた出力軸を備える電動車両のパーキングロック装置を対象として、前記第1中間ギヤ及び前記第2中間ギヤと軸方向に並ぶように前記中間軸に設けられたパーキングロックギヤと、前記パーキングロックギヤの上部の歯に係合して該パーキングロックギヤをロック可能なロックレバーと、モータハウジングの上部に配置され、アクチュエータロッドを介して前記ロックレバーに連結され、該ロックレバーを駆動して、該パーキングロックギヤのロック状態と非ロック状態とを切り替えるパーキングロックアクチュエータと、を備え、前記中間軸が、前記入力軸の中心と前記出力軸の中心とを結ぶ直線よりも上方に位置し、前記パーキングロックギヤの上端部が、前記入力軸よりも上方に位置する、という構成とした。
【0007】
この構成によると、パーキングロックギヤを上方に配置して中間軸に設けることで、パーキングロックギヤの上部に係合させるロックレバーとパーキングロックアクチュエータとの連結性を高めるとともに、パーキングロックアクチュエータのサービス性を向上させることが可能となる。
【0008】
一実施形態では、前記モータハウジングには、前記駆動モータ、前記減速機及び該駆動モータへ供給する電力を発生させる発電機がこの順に配置され、前記モータハウジングの上部に、モータ用インバータ、発電用インバータ及びDCDCコンバータが一体的に構成された電力変換ユニットが配置され、前記電力変換ユニットは、後部に前記モータ用インバータ及び前記発電用インバータ、該モータ用インバータの前方に前記DCDCコンバータを有し、前記発電用インバータの前方、かつ、前記DCDCコンバータの側方に隣接して前記パーキングロックアクチュエータが配置されている。
【0009】
この構成によると、パーキングロックアクチュエータが、モータハウジング上部の前方に配置され、その側方及び後方に電力変換ユニットが配置されるため、パーキングロックアクチュエータのサービス性をさらに高めることが可能となる。
【0010】
一実施形態では、前記入力軸は、前記駆動モータのモータシャフトと一体的に構成され、前記モータシャフトは、前記減速機側に位置する軸受部が、前記入力ギヤよりも前記駆動モータから離れた位置に配置され、前記パーキングロックギヤは、前記軸受部よりも前記駆動モータから離れた位置に配置されている。
【0011】
この構成によると、モータシャフトの減速機側の軸受部を、入力ギヤへ近接させることが可能となる。
【0012】
一実施形態では、前記軸受部よりも前記駆動モータから離れた位置にアースブラシを備え、前記アクチュエータロッドが該アースブラシの上方に配置される。
【0013】
この構成によると、アクチュエータロッドとアースブラシとを、車幅方向に重なるように配置することが可能となる。上方にアクチュエータロッド、下方にアースブラシが配置されることで、パーキングロックアクチュエータ及びアースブラシの両方のサービス性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、パーキングロックアクチュエータのサービス性とロックレバーに対する連結性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】例示的な実施形態に係るパーキングロック装置が配設された電動車両の駆動系を示すブロック図である。
【
図2】モータハウジングを左前方から見た斜視図である。
【
図3】モータシャフトを通る略水平面で切断したモータハウジングの断面図である。
【
図4】減速機収容部を右前方から見た斜視図である。
【
図5】パーキングロック装置を左後方から見た斜視図である。
【
図7】パーキングロック装置のロック状態を示す側面図である。
【
図8】パーキングロック装置の非ロック状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、車両前後方向を単に「前後方向」といい、車両前側を単に「前側」といい、車両後側を単に「後側」というものとする。また、車幅方向は車両の左右方向であり、車両左側を単に「左側」といい、車両右側を単に「右側」というものとする。なお、左右方向は、後側から前側を見たときの左側を左といい、右側を右という。
【0017】
図1は、例示的な実施形態に係るパーキングロック装置が配設された電動車両の駆動系を示すブロック図である。
図1は、車両1の駆動系を概略的に示しているだけであり、各構成要素の配置は、該各構成要素の実際の配置を限定するものではない。
【0018】
車両1は、シリーズハイブリッド自動車である。車両1は、電力を利用して車両1を駆動するための電気駆動ユニット10と発電用のエンジン本体8とからなるパワーユニットPを備える。電気駆動ユニット10は、電力を利用して車両を駆動する駆動モータ5と、駆動モータ5からの動力を減速して出力する減速機6と、駆動モータ5へ供給する電力を発生させる発電機7とを有する。電気駆動ユニット10は、後述するモータハウジング9に一体的に収容されている。
【0019】
エンジンは、エンジン本体8と、エンジン関連部品とを有する。エンジン本体8は、主に発電機7を駆動させて発電するために利用され、車両1を走行させるための動力は駆動モータ5により生成される。駆動モータ5により生成された動力は、減速機6により変速された後、デファレンシャル装置91を介して、駆動輪92(ここでは前輪)に伝達される。
【0020】
車両1は、高圧バッテリB1と低圧バッテリB2とを備える。高圧バッテリB1は、発電機7により発電された電気によって充電される。発電機7と高圧バッテリB1との間には、発電用インバータ102が設けられている。発電用インバータ102は、発電機7及び高圧バッテリB1に電気的に接続されている。発電機7からの発電電気は、発電用インバータ102を介して高圧バッテリB1に供給される。駆動モータ5と高圧バッテリB1との間には、モータ用インバータ101が設けられている。モータ用インバータ101は、駆動モータ5及び高圧バッテリB1に電気的に接続されている。モータ用インバータ101は、高圧バッテリB1からの電気を、駆動モータ5を駆動するための電力に変換して、駆動モータ5に出力する。高圧バッテリB1と低圧バッテリB2との間には、DCDCコンバータ103が設けられている。DCDCコンバータ103は、高圧バッテリB1と低圧バッテリB2とに電気的に接続されている。高圧バッテリB1からの電気は、DCDCコンバータ103を介して低圧バッテリB2に供給される。発電機7からの発電電気は、発電用インバータ102及びDCDCコンバータ103を介して低圧バッテリB2に供給される。
【0021】
図2は、パーキングロック装置が設けられるモータハウジングを左前方から見た斜視図である。
図2に示すように、モータハウジング9の上部には、電力変換ユニット100が配設されている。電力変換ユニット100は、モータ用インバータ101、発電用インバータ102、及びDCDCコンバータ103が一体的に構成されている。電力変換ユニット100は、平面視すると略L字形状である。電力変換ユニット100の後部は、車幅方向に沿って、モータハウジング9と同程度延びており、電力変換ユニット100の前部は、前記後部の左側の部分から前側に向かって延びている。つまり、電力変換ユニット100は、後部の車幅方向の長さが前部の車幅方向の長さよりも長い。
【0022】
電力変換ユニット100は、後部にモータ用インバータ101及び発電用インバータ102が左右方向に並んで配設され、モータ用インバータ101の前方にDCDCコンバータ103を有する。発電用インバータ102の前方、かつ、DCDCコンバータ103の側方において、電力変換ユニット100に隣接して、パーキングロックアクチュエータ105が配置されている。
【0023】
図3は、モータハウジングを、モータシャフトを通る略水平面で切断した断面図である。
図3では、駆動モータ5、減速機6及び発電機7の構造を簡略化している。
図3に示すように、駆動モータ5を収容部する駆動モータ収容部5a、減速機6を収容する減速機収容部6aおよび発電機7を収容する発電機収容部7aが、この順で車幅方向に一体的に連結されて、モータハウジング9を形成している。
【0024】
モータハウジング9は、詳細には、第1ハウジング11、第2ハウジング12、第3ハウジング13及び第4ハウジング14が、車幅方向に連結されて形成されている。車幅方向に延びる略円筒形状の第2ハウジング12及び第3ハウジング13が連結され、第2ハウジング12及び第3ハウジング13の左右両側の開口を、第1ハウジング11と第4ハウジング14とが塞ぐようにしてモータハウジング9が構成されている。
【0025】
第1ハウジング11には、第1軸受部21aが設けられている。第1軸受部21aは、モータシャフト20の一方側端部20aを回転可能に支持する。
【0026】
第2ハウジング12は、第1ハウジング11の左側に連結されている。第2ハウジング12は、区画壁12aによって円筒形状の内部が車幅方向に区画されている。区画壁12aの略中央部には、車幅方向にモータシャフト20を貫通させる貫通孔12bが設けられている。区画壁12aの右側は、第1ハウジング11及び第2ハウジング12によって形成される駆動モータ収容部5aに駆動モータ5が配置されている。区画壁12aの左側は、第2ハウジング12及び第3ハウジング13によって形成される減速機収容部6aに減速機6が配置されている。減速機収容部6aは、第2ハウジング12の左側後部及び第3ハウジング13の右側後部が、後方へ拡張して形成されることにより、モータシャフト20よりも後方に減速機6が配置されている。また、区画壁12aには、モータシャフト20の後方において、第5軸受部64aが設けられている。第5軸受部64aは、減速機6の中間軸64の一方側端部を回転可能に支持する。
【0027】
第3ハウジング13は、第2ハウジング12の左側に連結されている。第3ハウジング13は、右側端部において減速機収容部6aと発電機収容部7aとを車幅方向に区画する区画壁13aを有する。区画壁13aの略中央部には、車幅方向にモータシャフト20を貫通させる貫通孔13bが設けられている。貫通孔13bの周縁部にはボスが形成されており、該ボスが区画壁13aから左右両側へ突出している。貫通孔13bの減速機収容部6a側端部には、第2軸受部21bが設けられている。第2軸受部21bは、モータシャフト20を回転可能に支持する。貫通孔13bの発電機収容部7a側の端部には、第3軸受部71aが設けられている。第3軸受部71aは、ジェネレータシャフト70の一方側端部を回転可能に支持する。また、区画壁13aには、モータシャフト20の後方において、第6軸受部64bが設けられている。第6軸受部64bは、減速機6の中間軸64の他方側端部を回転可能に支持する。区画壁13aには、アースブラシ収容部40が一体的に形成されている。
【0028】
第4ハウジング14は、区画壁13aの左側において第3ハウジング13と車幅方向に連結されている。区画壁13aの左側において、第3ハウジング13と第4ハウジング14によって形成される発電機収容部7aには、発電機7が収容されている。第4ハウジング14には、第4軸受部71bが設けられている。第4軸受部71bは、ジェネレータシャフト70の他方側端部を回転可能に支持する。
【0029】
モータハウジング9には、モータシャフト20を除電するためのアースブラシ30が備えられている。アースブラシ30を収容するアースブラシ収容部40は、区画壁13aから減速機収容部6a側へ突出するように形成されている。
【0030】
図4は、減速機収容部6aを右前方から見た斜視図であって、第3ハウジング13の斜視図である。アースブラシ収容部40は、第3ハウジング13の側壁の前側に開口部40aを有し、開口部40aからモータシャフト20の近くまで伸びる略円筒形状の第1収容部40bと、第1収容部40bの端部がモータシャフト20の外周を取り囲むように膨出して形成された第2収容部40cとから構成されている。
【0031】
アースブラシ30は、モータシャフト20の減速機6側に位置する第2軸受部21bよりも駆動モータ5から離れた位置において、前後方向に延び、先端部がモータシャフト20へ当接している。アースブラシ30は、モータシャフト20の外周面に直接触れるように配置されることで、モータシャフト20を効果的に除電することができる。
【0032】
アースブラシ30は、
図3に示すように、後述するパーキングロックギヤ51と、前後方向に重なる位置に配置されている。また、
図4に示すように、アースブラシ30の上方には、アクチュエータシャフト57と、アクチュエータロッド55が配置されている。
【0033】
アクチュエータシャフト57は、第3ハウジング13の前部において上下方向に延びている。アクチュエータシャフト57の上部は、第3ハウジング13の上部から側壁を貫通して外側へ露出し、第3ハウジング13の上部に配設されたパーキングロックアクチュエータ105へ連結されている。アクチュエータシャフト57の下部は、アクチュエータロッド55に連結されており、アクチュエータロッド55は、前後方向に延びて、後側端部がロックレバー52に連結されている。
【0034】
駆動モータ5は、ロータ及びステータ(図示省略)と、モータシャフト20を備えている。ステータに三相交流電流が供給されることによって回転磁界が発生し、その回転磁界によってロータ及びモータシャフト20が回転する。
【0035】
モータシャフト20は、一方側の先端部20aが、第1軸受部21aに支持され、第1ハウジング11から、駆動モータ収容部5aを通り、第2ハウジング12の区画壁12aを貫通して、減速機収容部6aへ侵入している。
【0036】
モータシャフト20の他方側の先端部20bは、減速機収容部6aから区画壁13aを貫通している。また、モータシャフト20の他方側の先端部20bは、アースブラシ収容部40へ突出し、減速機収容部6aから発電機収容部7a側へ達するように形成されている。具体的には、モータシャフト20の他方側の先端部20bが、アースブラシ収容部40よりも発電機収容部7a側へ達している。第3ハウジング13の貫通孔13bにおいて、アースブラシ収容部40よりも駆動モータ5側に、第2軸受部21bが設けられている。第2軸受部21bは、モータシャフト20の他方側を第2軸受部21bに回転可能に支持する。
【0037】
モータシャフト20の減速機収容部6a内に位置する部分には、入力ギヤ62が形成されている。モータシャフト20は、駆動モータ5の左側に入力ギヤ62を有し、入力ギヤ62の左側において第2軸受部21bに支持されている。そのため、モータシャフト20の減速機6側に位置する第2軸受部21bは、入力ギヤ62よりも駆動モータ5から離れた位置に配置されている。そして、モータシャフト20は、第2軸受部21bの左側の端部においてアースブラシ30が当接している。
【0038】
発電機7は、ロータ及びステータ(図示省略)と、ジェネレータシャフト70を備えている。ジェネレータシャフト70及びロータがエンジンの動力によって回転すると、電磁誘導により、ステータにおいて発電する。
【0039】
図5は、パーキングロック装置50を左後方から見た斜視図であり、
図6は、パーキングロック装置50の平面図である。
図5及び
図6に示すように、減速機6は、駆動モータ5の回転力が入力される入力軸61と、入力軸61に設けられた入力ギヤ62と、入力ギヤ62に噛み合う第1中間ギヤ63と、第1中間ギヤ63が設けられた中間軸64と、第1中間ギヤ63と軸方向に並ぶように中間軸64に設けられた第2中間ギヤ65と、第2中間ギヤ65に噛み合う出力ギヤ66が設けられた出力軸67とを有し、駆動モータ5からの動力を減速する。
【0040】
入力軸61、中間軸64及び出力軸67は、それぞれ左右方向に延び、互いに略平行である。入力軸61、中間軸64及び出力軸67は、前側からこの順に並んでいる。
【0041】
入力軸61は、モータシャフト20と一体的に構成されている。モータシャフト20の一部が入力ギヤ62を回転させる入力軸61として機能し、モータシャフト20と入力ギヤ62が一体に回転する。
【0042】
中間軸64は、入力軸61の後方において、一端部を第2ハウジング12の区画壁12aに形成された第5軸受部64aに支持され、他端部を第3ハウジング13の区画壁13aに形成された第6軸受部64bに支持されている。中間軸64には、第1中間ギヤ63、第2中間ギヤ65及びパーキングロックギヤ51が左右方向にこの順で固定され、中間軸64、第1中間ギヤ63、第2中間ギヤ65及びパーキングロックギヤ51は一体に回転する。
【0043】
第1中間ギヤ63は、入力ギヤ62よりも径が大きい。第1中間ギヤ63は、モータシャフト20の動力を減速する。第1中間ギヤ63は、中間軸64の、右側端部に固定されている。中間軸64には、第1中間ギヤ63の左側に隣接して、第2中間ギヤ65が形成されている。
【0044】
第2中間ギヤ65は、第1中間ギヤ63よりも径が小さい。第2中間ギヤ65は、出力ギヤ66へ動力を伝える。中間軸64には第2中間ギヤ65の左側に隣接して、パーキングロックギヤ51が固定されている。
【0045】
第2中間ギヤ65に噛み合う出力ギヤ66は、出力軸67に固定され、出力軸67と一体に回転する。出力ギヤ66は、第2中間ギヤ65よりも径が大きい。出力ギヤ66は、モータシャフト20の動力をさらに減速して出力する。
【0046】
図7は、パーキングロック装置のロック状態を示す側面図であり、
図8は、パーキングロック装置の非ロック状態を示す側面図である。
図7及び
図8に示すように、減速機6を側面から見ると、中間軸64が、入力軸61の中心と出力軸67の中心とを結ぶ直線Lよりも上方に位置するように配置されている。
【0047】
パーキングロック装置50は、このような減速機6を有し、中間軸64に設けられたパーキングロックギヤ51と、パーキングロックギヤ51の上部の歯に係合してパーキングロックギヤ51をロック可能なロックレバー52と、モータハウジング9の上部に配置されるパーキングロックアクチュエータ105と、を備える。
【0048】
パーキングロックギヤ51は、第1中間ギヤ63及び第2中間ギヤ65と軸方向に並ぶように中間軸64に設けられている。
図3に示すように、パーキングロックギヤ51は、モータシャフト20の減速機6側の第2軸受部21bよりも駆動モータ5から離れた位置に配置されている。これにより、モータシャフト20の減速機6側の第2軸受部21bを、入力ギヤ62に近接させることが可能となる。
【0049】
パーキングロックギヤ51の外形は、第1中間ギヤ63よりも小さく、第2中間ギヤ65よりも大きい。パーキングロックギヤ51の上端部は、入力軸61よりも上方に位置している。パーキングロックギヤ51の上方には、前後方向に延びるロックレバー52が配設されている。
【0050】
ロックレバー52の後端部は、第3ハウジング13にピン52aで回動可能に支持されている。ロックレバー52の前端部には、押圧部52bが形成されている。押圧部52bは、パーキングカム53によって上方から押圧されると、ピン52aを中心に回動する。
【0051】
ロックレバー52は、ピン52aによって支持された支持部と押圧部52bとの間に、下方へ突出する凸部52cを有している。凸部52cは、パーキングロックギヤ51の歯と歯の間の溝に係合してパーキングロックギヤ51をロックすることができる。ロックレバー52の凸部52cより前側の下方には、2つの付勢部材54が設けられている。ロックレバー52は、2つの付勢部材54によって、凸部52cとパーキングロックギヤ51との係合が解除される方向、つまり、上方へ向かって付勢されている。付勢部材54は、例えば、捻りコイルスプリングである。
【0052】
押圧部52bを押圧するパーキングカム53は、アースブラシ収容部40の上方において前後方向に延びるアクチュエータロッド55の後端部に設けられている。パーキングカム53は、前部が略円形、後部が後方に向かって径の小さくなる略円錐形に形成されている。
【0053】
アクチュエータロッド55は、右側に隣接して前後方向に延びるガイド板58によってガイドされる。ガイド板58は、前方へ向かって延びる延出部59を前側端部に有する。延出部59は、前端部に係合ローラ59aを有する。
【0054】
アクチュエータロッド55の前端部は、揺動体56を介して、上下方向に延びるアクチュエータシャフト57と連結され、アクチュエータシャフト57は、パーキングロックアクチュエータ105へ連結されている。パーキングロックアクチュエータ105は、ロックレバー52を駆動して、パーキングロックギヤ51のロック状態と非ロック状態とを切り替える。
【0055】
揺動体56は、
図6に示すように、基端部にアクチュエータシャフト57が連結され、先端部寄りにアクチュエータロッド55が連結されている。揺動体56は、アクチュエータシャフト57を回動軸として回動可能である。揺動体56は、先端部に2つの係合溝56a,56bを有する。2つの係合溝56a,56bは、アクチュエータシャフト57を中心として径方向に並んで形成されている。係合溝56a,56bには、延出部59の係合ローラ59aが係合する。
【0056】
パーキングロックアクチュエータ105が作動すると、アクチュエータシャフト57が回動する。アクチュエータシャフト57の回動とともに揺動体56が回動すると、係合ローラ59aが、2つの係合溝56a,56b間を転がり、いずれかの係合溝56a,56bへ嵌ることにより、揺動体56の回動が規制される。
【0057】
揺動体56が、ロックレバー52に近づいた状態から離れた状態へ回動するとき、つまり、
図6において反時計回りに回動して一点鎖線の位置に移動するとき、係合ローラ59aは、前部の係合溝56aから後部の係合溝56bへ移動する。このとき、アクチュエータロッド55は、揺動体56の回動とともに後側から前側へ牽引される。
【0058】
アクチュエータロッド55の動きとロックレバー52の動きは、
図7及び
図8に基づいて説明する。
図7のように、パーキングロック装置のロック状態では、ロックレバー52は、パーキングカム53によって押圧部52bを下方へ押圧されている。ロック状態では、パーキングカム53は、ロックレバー52を上方へ押し上げる付勢部材54の付勢力に抗して、前部において押圧部52bを下方へ押圧している。
【0059】
上記のように、揺動体56が回動し、揺動体56の回動とともにアクチュエータロッド55が前側へ牽引されると、パーキングカム53も前側へ移動する。パーキングカム53が前側へ移動すると、
図8に示すように、ロックレバー52の押圧部52bは、パーキングカム53の表面を滑って、径の小さくなった円錐端部へ移動するとともに、付勢部材54によって上方へ押し上げられる。このとき、ロックレバー52は、ピン52aを回動軸としてパーキングロックギヤ51の上部から離れる方向、つまり、
図7の時計回り方向に回動する。このような動きによって、凸部52cとパーキングロックギヤ51との係合が解除され、パーキングロック装置は非ロック状態となる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では、中間軸64が、入力軸61の中心と出力軸67の中心とを結ぶ直線Lよりも上方に位置し、パーキングロックギヤ51の上端部が、入力軸61よりも上方に位置するように構成されているので、パーキングロックギヤ51の上部に係合させるロックレバー52と、モータハウジング9の上部に配置されたパーキングロックアクチュエータ105との連結性が高まるとともに、パーキングロックアクチュエータ105のサービス性を向上させることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、モータハウジング9の上部において、後部にモータ用インバータ101及び発電用インバータ102、モータ用インバータ101の前方にDCDCコンバータ103を有し、発電用インバータ102の前方、かつ、DCDCコンバータ103の側方に隣接してパーキングロックアクチュエータ105が配置されるように構成されることで、モータハウジング9の上部前側のパーキングロックアクチュエータ105のサービス性を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態では、モータシャフト20の減速機6側に位置する第2軸受部21bが、入力ギヤ62よりも駆動モータ5から離れた位置に配置され、パーキングロックギヤ51は、第2軸受部21bよりも駆動モータ5から離れた位置に配置される構成により、第2軸受部21bと入力ギヤ62とを近接させることが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、第2軸受部21bよりも駆動モータ5から離れた位置にアースブラシ30を備え、アクチュエータロッド55がアースブラシ30の上方に配置される構成としたことで、アクチュエータロッド55とアースブラシ30とを、車幅方向に重なるように上下に配置することが可能となり、パーキングロックアクチュエータ105及びアースブラシ30の両方のサービス性を確保することが可能となる。
【0064】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
ここに開示された技術は、パーキングロックアクチュエータのサービス性とロックレバーに対する連結性を両立する電動車両のパーキングロック装置として有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
5 駆動モータ
6 減速機
7 発電機
8 エンジン本体
9 モータハウジング
20 モータシャフト
21a 第1軸受部
21b 第2軸受部
30 アースブラシ
40 アースブラシ収容部
50 パーキングロック装置
51 パーキングロックギヤ
52 ロックレバー
55 アクチュエータロッド
57 アクチュエータシャフト
61 入力軸
62 入力ギヤ
63 第1中間ギヤ
64 中間軸
65 第2中間ギヤ
66 出力ギヤ
67 出力軸
100 電力変換ユニット
101 モータ用インバータ
102 発電用インバータ
103 DCDCコンバータ
105 パーキングロックアクチュエータ