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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-17
(45)【発行日】2025-11-26
(54)【発明の名称】ニロチニブ錠剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20251118BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20251118BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20251118BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20251118BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20251118BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20251118BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20251118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20251118BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61P35/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021121455
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017297
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊地 優作
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071561(JP,A)
【文献】特開2021-080191(JP,A)
【文献】特表2014-533283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含有する医薬錠剤であって、前記崩壊剤が、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される1種以上である、医薬錠剤。
【請求項2】
医薬錠剤の素錠質量における崩壊剤の含有率が5質量%以上で15質量%以下である、請求項1に記載の医薬錠剤。
【請求項3】
結晶セルロースの医薬錠剤の素錠質量における含有率が5質量%以上で20質量%以下である、請求項1または2に記載の医薬錠剤。
【請求項4】
糖及び/または糖アルコールの医薬錠剤の素錠質量における含有率が1質量%以上で20質量%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の医薬錠剤。
【請求項5】
結晶セルロースと崩壊剤の含量比率;[結晶セルロース]:[崩壊剤]=1:0.5~3.0である、請求項1~4の何れか一項に記載の医薬錠剤。
【請求項6】
カルメロースナトリウムを含む、請求項1~5の何れか一項に記載の医薬錠剤。
【請求項7】
ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む造粒物を含有する、請求項1~6の何れか一項に記載の医薬錠剤。
【請求項8】
ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む湿式造粒物を含有する、請求項1~7の何れか一項に記載の医薬錠剤。
【請求項9】
造粒物における結晶セルロースと崩壊剤の含量比率が [結晶セルロース]:[崩壊剤]=1:1.01~5.0である、請求項7または8に記載の医薬錠剤。
【請求項10】
ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含有する医薬錠剤の製造方法であって、前記崩壊剤が、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される1種以上であり、
(工程1)ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む造粒物を調製する工程、
(工程2)前記造粒物と、任意の添加剤を混合し、それを成型する工程、
を含む、医薬錠剤の製造方法。
【請求項11】
(工程1)において、ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む組成物に、水性媒体を添加して造粒することにより造粒物を調製する工程である、請求項10に記載の医薬錠剤の製造方法。
【請求項12】
(工程2)において、任意の添加剤として崩壊剤を混合する、請求項10または11に記載の医薬錠剤の製造方法。
【請求項13】
(工程1)及び/または(工程2)において、カルメロースナトリウムを含む、
請求項10~12の何れか一項に記載の医薬錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニロチニブ塩酸塩を有効成分として含有する医薬錠剤であって、適切な溶出を示すための処方構成の錠剤、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニロチニブは、化学名4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドの、一般式(1)で示される構造を有する化合物である。
【0003】
【化1】
【0004】
ニロチニブは、Bcr-Ablチロシンキナーゼに対する高い選択制と強い阻害活性を有するチロシンキナーゼ阻害剤(Tyrosine Kinase Inhibitor:TKI)であり、ATPと競合的に拮抗し、Bcr-Ablチロシンキナーゼを阻害することによって、Bcr-Abl発現細胞のアポトーシス誘導に基づいて抗腫瘍効果を示すと考えられている。ニロチニブは塩酸塩の形態で製剤化され、慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病の治療剤として用いられる抗腫瘍剤であり、タシグナ(登録商標)カプセルの商標名で流通している(非特許文献1)。
ニロチニブ塩酸塩のカプセル製剤について特許文献1に開示があり、有効成分を含む顆粒の内相中にポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(オキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位の数がそれぞれ150および30)、ラクトース一水和物、ポリビニルピロリドンを含み、顆粒の外相中にラクトース一水和物、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムを含むカプセル剤が記載されている。
一般的に、カプセル製剤は嚥下困難な剤型であると言われている。このため、ニロチニブも服用性に優れた錠剤の開発が望まれる。ただし、新剤形である錠剤には、既存のニロチニブのカプセル製剤と同等の溶出性を示すことが求められる。このため、打錠により圧縮成型して調製される錠剤で、顆粒体を充填しただけのカプセル製剤と同じような有効成分の放出挙動を示す製剤処方を開発する必要がある。ニロチニブの物性上の特徴を踏まえて、既存のカプセル製剤と同等の溶出プロファイルを有するニロチニブ錠剤を取得するためには、特に、pH3.0緩衝液中において崩壊性を遅延させて、溶出を抑制する必要がある。特許文献2では、カプセル製剤と同等の溶出プロファイルを有するニロチニブ錠剤を調製するにあたり、ニロチニブ塩酸塩、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン等を含む錠剤コアを、ヒドロキシプロピルセルロースE50を含むコーティング材で被覆したフィルムコーティング錠剤とすることで、崩壊を4~15分遅延させた錠剤を調製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-504942号公報
【文献】特表2014-533283号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】タシグナ(登録商標)カプセル25mg、同150mg、同200mgの医薬品インタビューフォーム(2017年12月改訂(第18版))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的にカプセル製剤は、口内及び咽喉部へ付着するような違和感があるため服薬し難いという課題がある。また製剤径が大型化してしまうことでの嚥下困難性がある。このため、錠剤のほうが嚥下性に優れ服薬に適した製剤形であるとされている。そのような背景から、カプセル製剤として流通しているニロチニブについて、その錠剤化が求められている。特に小児や高齢者といった嚥下能力が低い患者にとって、製剤の小型化は重要である。
本発明は、ニロチニブ塩酸塩を有効成分とする医薬錠剤を調製することを目的としている。さらに、ニロチニブ含量を高め、小型化した医薬錠剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討を行った結果、上記課題を以下の手段により解決できることを見出した。
[1] ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含有する医薬錠剤。
[2] 崩壊剤が、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される1種以上であり、医薬錠剤の素錠質量における崩壊剤の含有率が5質量%以上で15質量%以下である、[1]に記載の医薬錠剤。
[3] 結晶セルロースの医薬錠剤の素錠質量における含有率が5質量%以上で20質量%以下である、[1]または[2]に記載の医薬錠剤。
[4] 糖及び/または糖アルコールの医薬錠剤の素錠質量における含有率が1質量%以上で20質量%以下である、[1]~[3]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
[5] 結晶セルロースと崩壊剤の含量比率;[結晶セルロース]:[崩壊剤]=1:0.5~3.0である、[1]~[4]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
[6] カルメロースナトリウムを含む、[1]~[5]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
[7] ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む造粒物を含有する、[1]~[6]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
[8] ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む湿式造粒物を含有する、[1]~[7]の何れか一項に記載の医薬錠剤。
[9] 造粒物における結晶セルロースと崩壊剤の含量比率が [結晶セルロース]:[崩壊剤]=1:1.01~5.0である、[7]または[8]に記載の医薬錠剤。
【0009】
[10] ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含有する医薬錠剤の製造方法であって、
(工程1)ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む造粒物を調製する工程、
(工程2)前記造粒物と、任意の添加剤を混合し、それを成型する工程、
を含む、医薬錠剤の製造方法。
[11] (工程1)において、ニロチニブ塩酸塩、糖または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む組成物に、水性媒体を添加して造粒することにより造粒物を調製する工程である、[10]に記載の医薬錠剤の製造方法。
[12] (工程2)において、任意の添加剤として崩壊剤を混合する、[10]または[11]に記載の医薬錠剤の製造方法。
[13] (工程1)及び/または(工程2)において、カルメロースナトリウムを含む、[10]~[12]の何れか一項に記載の医薬錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、服薬性に優れるニロチニブ塩酸塩を有効成分とする医薬錠剤を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の、ニロチニブ塩酸塩を有効成分とする医薬錠剤について、以下に説明する。
【0012】
本発明は、有効成分としてニロチニブ塩酸塩を用いる。ニロチニブは4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドであり、その塩酸塩が用いられる。ニロチニブ塩酸塩は医薬品として容認できる品質であることが好ましい。
ニロチニブ塩酸塩は、特許第5798101号において形態A(二水和物)、A’(一水和物)、A’’(無水物)、B(一水和物)、B’(無水物)、C(一水和物)、C’(無水物)、S、S’、S、D、Sで開示されており、様々な形態が存在する。また、特許第5486012号において、形態T1~T19が開示されている。本発明において、ニロチニブ塩酸塩はいずれの形態であっても用いることができる。本発明において、使用するニロチニブ塩酸塩は特に限定されるものではないが、形態Aのニロチニブ塩酸塩二水和物、若しくは形態A’、B又はCのニロチニブ塩酸塩一水和物が好ましい。
【0013】
本発明の医薬錠剤は、該錠剤の素錠質量におけるニロチニブ(遊離塩基相当)の含有率が50質量%以上で含有することが好ましい。素錠とは、打錠成型された際の、錠剤基体部分を指す。フィルムコーティング錠や糖衣錠等のマスキング剤でコーティングされた錠剤の場合は、そのコーティング剤を除いた錠剤基体である。
従来のニロチニブ製剤は嚥下困難なカプセル製剤であった。しかしながら、服薬容易な錠剤とすることに加え、更に有効成分含量を高めて相対的に錠剤を小型化することで、より服薬アドヒアランスを向上させることができる。ニロチニブ(遊離塩基相当)の含有率は50質量%以上で80質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは50質量%より大きく70質量%以下である。
【0014】
本発明の医薬錠剤は、糖及び/または糖アルコールを含有する。糖及び/または糖アルコールは医薬錠剤を調製する際に賦形剤として適用される添加剤である。本発明において糖及び/または糖アルコールは、医薬製剤用の添加剤であれば、特に制限されることなく適用することができる。例えば、乳糖、マルトース、フルクトース、トレハロース、白糖、イノシトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。好ましくは、乳糖、マルトース、トレハロース、マンニトールからなる群から選択される糖及び/または糖アルコールが挙げられる。
糖及び/または糖アルコールの適用量は、医薬錠剤の素錠質量における含有率として1質量%以上20質量%以下での適用が好ましい。好ましくは1質量%以上12質量%以下の含有率である。
【0015】
本発明の医薬錠剤は崩壊剤を含有する。崩壊剤としては、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、部分アルファ―化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。崩壊剤は、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。これらはスーパー崩壊剤とも称され、本発明においてより好適な崩壊剤である。
崩壊剤は、医薬錠剤の素錠質量における含有率が5質量%以上20質量%以下で適用することが好ましい。5質量%以上15質量%以下の含有率であることがより好ましい。
【0016】
本発明の医薬錠剤は結晶セルロースを含有する。結晶セルロース、医薬錠剤の素錠質量における含有率が5質量%以上20質量%以下で適用することが好ましい。5質量%以上で15質量%以下の含有率であることがより好ましい。
【0017】
本発明において結晶セルロースは崩壊剤を組み合わせて使用することを特徴とする。結晶セルロースは、通常、賦形剤として用いられる添加剤であるが、錠剤の崩壊性を補助する機能を有する。有効成分の適切な溶出性を制御するために、結晶セルロースと崩壊剤の組み合わせ比率を制御することが好ましい。
本発明では、結晶セルロースと崩壊剤を併せた総質量含量を制御することが好ましい。結晶セルロースと崩壊剤を併せた総質量の含有率が、医薬錠剤の素錠質量において10質量%より多く30質量%より少ないものとすることが好ましく、12質量%より多く25質量%より少ないことがより好ましい。
また、結晶セルロースと崩壊剤の含量比率が、[結晶セルロース]:[崩壊剤]=1:0.5~3.0であることが好ましい。[結晶セルロース]:[崩壊剤]=1:0.7~3.0とすることがより好ましい。
【0018】
本発明の医薬錠剤は、カルメロースナトリウムを適用することが好ましい。本発明においてカルメロースナトリウムは、錠剤の膨潤性と崩壊性の調整剤として機能し、当該錠剤の崩壊速度を制御することができる。ニロチニブの錠剤調製において、既存のニロチニブのカプセル製剤と同等の溶出性とするために、崩壊性及び溶出性を制御することが望まれる。カプセル製剤と同等な溶出性を有する錠剤とするために、例えば、pH3.0緩衝液中における溶出性を抑制することが求められる。カルメロースナトリウムを用いることにより、当該医薬錠剤の崩壊性を調整でき、溶出性を制御することができる。
カルメロースナトリウムの適用量は、医薬錠剤の素錠質量における含有率が1質量%より多く12質量%より少ないことが好ましい。3質量%より多く10質量%より少ない含有率であることがより好ましい。
カルメロースナトリウムは、1%水溶液にした時の粘度が10mPa・sより大きく1000mPa・sより小さいものを用いることが好ましく、50mPa・sより大きく500mPa・sより小さいものを用いることがより好ましい。粘度は、1%水溶液を調製し減圧脱泡したものを試料溶液として、試料溶液を均一に攪拌し液温が25℃になったことを確認したのち、B型粘度計により60rpmで測定した値である。
【0019】
カルメロースナトリウムは、錠剤の崩壊性を調整するために用いることから、前記崩壊剤との組み合わせを考慮した製剤処方とすることが好ましく、カルメロースナトリウムと崩壊剤を併せた総質量を考慮して当該医薬錠剤の処方を設計することが好ましい。カルメロースナトリウムと崩壊剤を併せた総質量の含有率が、医薬錠剤の素錠質量において6質量%より多く30質量%より少ないものとすることが好ましい。10質量%より多く25質量%より少ないものとすることがより好ましい。
また崩壊性を制御するために、カルメロースナトリウムと崩壊剤の含有比率を考慮することで、適切な溶出性に制御することができる。例えば、カルメロースナトリウム含有比率を高く調整すると、ニロチニブ塩酸塩のpH3.0緩衝液中における溶出性を抑制することができる。一方、崩壊剤含有比率を高くすると溶出性を高めることができる。
カルメロースナトリウムと崩壊剤の含有量比は [カルメロースナトリウム]:[崩壊剤]=1:1.1~3.0とすることが好ましい。より好ましくは[カルメロースナトリウム]:[崩壊剤]=1:1.1~2.5である。
これにより、試験溶液が900mLのpH3.0緩衝液での溶出率が試験開始から30分で45%以下、60分で55%以下、120分で65%以下の溶出率とすることができ、既存のカプセル製剤様の溶出特性に制御することができる。
【0020】
本発明の医薬錠剤は、錠剤調製に用いられるその他添加剤を含んでいても良い。例えば、賦形剤、結合剤、可溶化剤、滑沢剤、流動化剤、着色剤が挙げられる。これらの添加剤は、医薬品製剤用途で許容される品質のものであれば特に制限されることなく用いることができる。これらの添加剤は1種のみを用いても良く、これらの混合物として用いても良い。当該医薬錠剤を調製する際に、任意に使用される。
【0021】
賦形剤としては、前述の糖及び/または糖アルコール並びに結晶セルロースと併せて、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等のデンプン類を用いても良い。賦形剤として用いるデンプン類は、医薬錠剤の素錠質量における含有率が10質量%より少ないことが好ましく、8質量%より少ないことがより好ましい。
【0022】
結合剤としては、水溶性高分子成分が挙げられ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル‐ポリビニルピロリドン共重合体、ポリオキシプロピレン‐ポリオキシエチレン共重合体等が挙げられる。
水溶性高分子は、医薬錠剤の素錠質量における含有率が1質量%より多く10質量%より少ないことが好ましい。
【0023】
可溶化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシプロピレン‐ポリオキシエチレン共重合体等が挙げられる。
可溶化剤は、医薬錠剤の素錠質量における含有率が0.1質量%以上5.0質量%以下で用いることが好ましい。
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、カルナウバロウ等が挙げられる。
滑沢剤は、医薬錠剤の素錠質量における含有率が0.1質量%以上5.0質量%以下で用いることが好ましい。
流動化剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、タルク等があげられる。
着色剤としては、酸化チタン、黄酸化鉄、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、褐色酸化鉄、タルク、食用黄色素類、食用青色素類、食用赤色素類等が挙げられる。
賦形剤、結合剤、可溶化剤、滑沢剤、流動化剤、着色剤等の他の添加剤は、これらを1種以上含有する他の添加剤組成物として、これを一部または全量を混合して調製される造粒物として用いても良い。他の添加剤をプレミックスして一体化した造粒物とすることで、錠剤製造操作を行う上で取り扱いやすい物性となる利点がある。
【0024】
本発明の医薬錠剤はフィルムコーティングされていても良い。フィルムコーティング基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー等が挙げられる。
また、フィルムコート部分にはコーティング基剤の他、着色剤、可塑剤等の医薬製剤のコーティング剤に用いられる任意の添加剤が含まれていても良い。
【0025】
本発明における医薬錠剤は、ニロチニブ塩酸塩を53.5~80質量部、糖及び/または糖アルコールを1~20質量部、結晶セルロースを5~20質量部、崩壊剤を5~20質量部、任意の賦形剤を0~10質量部、結合剤を1~10質量部、可溶化剤を0.1~5質量部、滑沢剤を0.1~5質量部、で含む処方が好ましい。より好ましくは、更にカルメロースナトリウムを1~12質量部で含む処方である。当該処方組成を混合し、任意に造粒して顆粒体を調製し、圧縮成型することで本発明に係る医薬錠剤を調製することができる。その後、この医薬錠剤をフィルムコーティングしてもよい。
本発明の医薬錠剤の形状は、経口的な服用に適する通常の形状及び大きさであれば特に限定されない。
【0026】
本発明の医薬錠剤は、ニロチニブ塩酸塩と、糖及び/または糖アルコール、並びに崩壊剤を混合し、次いでこれを圧縮成型することで製造することができる。好ましくは、更にカルメロースナトリウムを適用した混合物として、圧縮成型してなる医薬錠剤である。別の態様として、結合剤である水溶性高分子成分を適用した混合物として、圧縮成型してなる医薬錠剤である。さらには、カルメロースナトリウム及び水溶性高分子成分を適用した混合物を、圧縮成型してなる医薬錠剤である。
カルメロースナトリウムは粉末のままニロチニブ塩酸塩及びその他の添加剤と混合してもよく、水、エタノール、メタノール等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒等の水性媒体に溶解し、ニロチニブ塩酸塩及びその他の添加剤と混合してもよい。また、ニロチニブ塩酸塩及びその他の添加剤の混合後に、カルメロースナトリウムを上記水性媒体に溶解し、スプレー等することで混合物としてもよい。好ましくは、粉末のまま混合物に供する。
水溶性高分子成分は、粉末のままニロチニブ塩酸塩及びその他の添加剤と混合してもよく、水、エタノール、メタノール等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒等の水性媒体に溶解し、ニロチニブ塩酸塩及びその他の添加剤と混合してもよい。また、ニロチニブ塩酸塩及びその他の添加剤の混合後に水溶性高分子成分を上記水性媒体に溶解し、スプレー等することで混合物としてもよい。好ましくは、粉末のまま 本発明の医薬錠剤は、前記造粒物と任意の添加剤との混合物を圧縮成型し錠剤にする工程を含む。
【0027】
前述したニロチニブ塩酸塩を含む医薬錠剤調製用組成物に、任意に滑沢剤を添加して、打錠成型等により錠剤形に成型することにより、医薬錠剤を調製することができる。錠剤の硬度は約10~250Nとすることが好ましい。より好ましくは50~200Nである。
【0028】
本発明の医薬錠剤は、圧縮成型後の素錠をフィルムコーティング若しくはマスキングコーティングをする工程を付加してもよい。フィルムコーティングを施した錠剤とすることが好ましい。コーティングを行う場合、前記医薬錠剤外部であるフィルムコート部分は、水又は水と任意の割合で混合し得る有機溶剤を含む水溶性溶剤に前記コーティング剤に用いられる任意の添加剤を溶解し、錠剤内部である素錠が入ったコーティングパンの中へ注入またはスプレーし、錠剤表面に熱風を送り錠剤表面から溶媒を除去乾燥させる方法により、フィルムコーティングを行うことができる。乾燥工程は、室温~80℃程度で行うことが好ましい。減圧下で行うことで水性溶剤を揮発させて乾燥しても良い。
【0029】
本発明の医薬錠剤は、ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む組成物の造粒物を含有することが好ましい。造粒物とは、有効成分と種々の添加剤を含有する混合物同士が付着して成形された一定の粒子径を有する顆粒状物であり、後の工程において圧縮成型能を向上させるために調製する粒状物である。ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を予め混合して造粒して顆粒成形体としたものを、任意の添加剤と共に混合し、これを圧縮成型した医薬錠剤が好ましい。
造粒物には、ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤に、更に結合剤である水溶性高分子成分を含んでいても良い。また、カルメロースナトリウムを含んでいても良い。さらに可溶化剤を含んでいても良い。なお、糖及び/または糖アルコール、崩壊剤、結合剤、可能化剤は前記と同義である。
造粒物は、ニロチニブ塩酸塩が60~80質量部、糖及び/または糖アルコールが1~20質量部、結晶セルロースが3~20質量部、崩壊剤が5~20質量部、任意成分である結合剤が0~10質量部、可溶化剤が0~5質量部、カルメロースナトリウムが0~10質量部の組成であることが好ましい。
【0030】
造粒物は、乾式造粒物であっても良く、水等の水性媒体を添加して造粒する湿式造粒物であっても良い。製造操作及び造粒物の制御が容易であることから、湿式法により調製された湿式造粒物であることが好ましい。造粒物が湿式造粒物である場合、ニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、崩壊剤、並びに任意の結合剤である水溶性高分子成分、カルメロースナトリウムを混合し、これに、任意の可溶化剤を含む水性媒体を添加して湿性混合物を調製し、これを混合操作等の機械的圧力を付加して該混合物同士を付着させ、顆粒状物として造粒することで調製される湿式造粒物である。乾式造粒物である場合、前記成分の混合物を圧縮操作等により物理的に成分同士を付着させて造粒化することで調製される。
造粒化操作としては、圧縮造粒法、溶融造粒法、ローラーコンパクター法、転動造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法等が挙げられる。本発明に係る造粒化操作としては、これらの操作方法から、適宜選択して当該造粒物を調製することができる。
【0031】
本発明の医薬錠剤は、前記のニロチニブ塩酸塩、糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤を含む造粒物を予め調製し、これに、任意の添加剤を加えて混合し、圧縮成型してなる医薬錠剤であることが好ましい。
造粒物と混合し得る任意の添加剤とは、カルメロースナトリウム、他の賦形剤、滑沢剤、流動化剤、着色剤等である。糖及び/または糖アルコール、結晶セルロース、並びに崩壊剤は、造粒物内に含まれる成分と造粒物の外の後添加成分の両方に含まれていても良い。造粒物の外に糖及び/または糖アルコールを含む場合の含量は、素錠質量における含有率が1質量%以上15質量%以下で用いることが好ましく、1質量%以上で10質量%以下がより好ましい。造粒物の外に結晶セルロースを含む場合の含量は、素錠質量における含有率が1質量%以上15質量%以下で用いることが好ましく、1質量%以上で10質量%以下がより好ましい。造粒物の外に崩壊剤を含む場合、素錠質量における含有率が1質量%以上15質量%以下で用いることが好ましく、1質量%以上で10質量%以下がより好ましい。
【0032】
本発明の医薬錠剤は、前記造粒物と任意の添加剤との混合物を圧縮成型し錠剤にする。
前述したニロチニブ塩酸塩を含む造粒物に、任意の賦形剤、崩壊剤、その他の添加剤を含む組成物に、任意に滑沢剤を添加して、打錠成型等により錠剤形に成型することにより、医薬錠剤を調製することができる。錠剤の硬度は約10~250Nとすることが好ましい。より好ましくは50~200Nである。
本発明において、湿式造粒法により調製された造粒物を含む医薬錠剤である場合、当該医薬錠剤は水を含む可能性がある。水を含んでいる場合、当該医薬錠剤は0.1質量%以上で5質量%以下の含水率である。より特徴的には0.5質量%以上で3質量%以下である。本発明における含水率とは乾燥減量法により測定される値であり、当該医薬錠剤を精秤した後、これを天板に広げ、大気圧下にて80℃、15分以上の条件で乾燥させ、恒量となったところでその減量分を含水分として算出する方法である。
【0033】
本発明の医薬錠剤は、圧縮成型後の錠剤をフィルムコーティング若しくはマスキングコーティングをする工程を付加してもよい。フィルムコーティングを施した錠剤とすることが好ましい。コーティングを行う場合、前記医薬錠剤外部であるフィルムコート部分は、水又は水と任意の割合で混合し得る有機溶剤を含む水溶性溶剤に前記コーティング剤に用いられる任意の添加剤を溶解し、錠剤内部である素錠が入ったコーティングパンの中へ注入またはスプレーし、錠剤表面に熱風を送り錠剤表面から溶媒を除去乾燥させる方法により、フィルムコーティングを行うことができる。乾燥工程は、室温~80℃程度で行うことが好ましい。減圧下で行うことで水性溶剤を揮発させて乾燥しても良い。
【0034】
本発明の医薬錠剤は、pH3.0緩衝液中で錠剤の崩壊が遅延し、ニロチニブの溶出を適切に制御することを可能とする。すなわち、ニロチニブの既存のカプセル製剤様に溶出を制御できる医薬錠剤である。本明細書において、溶出性を評価する溶出試験は、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)による溶出試験である。
日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)による溶出試験法により、本発明の医薬錠剤から有効成分であるニロチニブ塩酸塩を試験溶液中へ溶出させ、紫外可視吸光度計もしくは液体クロマトグラフィーを用いて試験液へのニロチニブの溶出率を評価することで、本発明の医薬錠剤の特徴であるpH3.0緩衝液中で崩壊が遅延する医薬錠剤であることを確認することができる。より具体的には、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)による溶出試験において、試験溶液が900mLのpH3.0緩衝液における6錠の平均値での溶出が試験開始から30分で60%以下の溶出率であり、より好ましくは30分で45%以下、且つ60分で55%以下、且つ120分で65%以下の溶出率であることを特徴とする。
【0035】
本発明の医薬錠剤を用いた医薬品の用途は、ニロチニブにより治療効果を奏する疾病であれば特に限定されるものではない。例えば、悪性腫瘍の治療に適用することができる。より具体的には、非小細胞肺癌、膵癌、グリオーマ、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、肝細胞癌、腎癌、頭頸部癌、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、食道癌、を挙げることができる。これらの疾患に限定されるものではないが、適用する好ましい疾患として挙げることができる。
【0036】
本発明の医薬製剤を用いた医薬品の投与量は、患者の性別、年齢、生理的状態、病態等により当然変更されうるが、例えば成人1日当たり、ニロチニブとして10mg~800mgの範囲の薬剤を投与する。この投与量に限定されるものではないが、適用する好ましい投与量として挙げることができる。
【実施例
【0037】
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
ニロチニブ塩酸塩二水和物 11.37g、乳糖水和物 1.05g、結晶セルロース 1.265g、クロスポビドン 1.75g、ポリビニルピロリドン 0.70gを混合してハイスピードミキサーを用いて2分間混合した。そこへ0.14gのポロキサマー188(BASF製)を溶解した水溶液を固液比30%となるように加えて6分間湿式造粒(アジテーター回転数:400rpm、チョッパー回転数:3000rpm)した。得られた造粒粉体を、通気式棚式乾燥機を用いて水分値を3%以下とした。
この造粒顆粒をスピードミルにて解砕・整粒し、カルメロースナトリウム 0.875g、クロスポビドン 0.175g、ステアリン酸マグネシウム 0.175gを加えて混合し、打錠粉末とした。
打錠粉末を、打錠機と直径8.5mmの杵臼を用いて打錠し、重量350mg、錠高4.80mm、硬度55Nの錠剤を得た。
【0039】
(実施例2)
ニロチニブ塩酸塩二水和物 11.37g、乳糖水和物 1.05g、結晶セルロース 1.265g、クロスポビドン 1.75g、ポリビニルピロリドン 0.70gを混合してハイスピードミキサーを用いて2分間混合した。そこへ0.14gのポロキサマー188(BASF製)を溶解した水溶液を固液比30%となるように加えて6分間湿式造粒(アジテーター回転数:400rpm、チョッパー回転数:3000rpm)した。得られた造粒粉体を、通気式棚式乾燥機を用いて水分値を3%以下とした。
この造粒顆粒をスピードミルにて解砕・整粒し、カルメロースナトリウム 1.05g、結晶セルロース 1.0g、ステアリン酸マグネシウム 0.175gを加えて混合し、打錠粉末とした。
打錠粉末を、打錠機と直径8.5mmの杵臼を用いて打錠し、重量373.1mg、錠高5.03mm、硬度97Nの錠剤を得た。
【0040】
(実施例3)
ニロチニブ塩酸塩二水和物 11.37g、乳糖水和物 0.525g、結晶セルロース 0.915g、クロスポビドン 1.05g、ポリビニルピロリドン 0.70g、カルメロースナトリウム 0.70gを混合してハイスピードミキサーを用いて2分間混合した。そこへ0.14gのポロキサマー188(BASF製)を溶解した水溶液を固液比30%となるように加えて6分間湿式造粒(アジテーター回転数:400rpm、チョッパー回転数:3000rpm)した。得られた造粒粉体を、通気式棚式乾燥機を用いて水分値を3%以下とした。
この造粒顆粒をスピードミルにて解砕・整粒し、クロスポビドン 0.35g、カルメロースナトリウム 0.70g、結晶セルロース 0.875g、ステアリン酸マグネシウム 0.175gを加えて混合し、打錠粉末とした。
打錠粉末を、打錠機と直径8.5mmの杵臼を用いて打錠し、重量350mg、錠高4.80mm、硬度77Nの錠剤を得た。
【0041】
(実施例4)
ニロチニブ塩酸塩二水和物 11.37g、乳糖水和物 0.525g、結晶セルロース 0.915g、クロスポビドン 1.05g、ポリビニルピロリドン 0.70g、カルメロースナトリウム 0.70gを混合してハイスピードミキサーを用いて2分間混合した。そこへ0.14gのポロキサマー188(BASF製)を溶解した水溶液を固液比35%となるように加えて6分間湿式造粒(アジテーター回転数:400rpm、チョッパー回転数:3000rpm)した。得られた造粒粉体を、通気式棚式乾燥機を用いて水分値を3%以下とした。
この造粒顆粒をスピードミルにて解砕・整粒し、クロスポビドン 1.05g、カルメロースナトリウム 0.70g、コロイド状二酸化ケイ素 0.175g、ステアリン酸マグネシウム 0.175gを加えて混合し、打錠粉末とした。
打錠粉末を、打錠機と直径8.5mmの杵臼を用いて打錠し、重量350mg、錠高4.87mm、硬度59Nの錠剤を得た。
【0042】
(実施例5)
ニロチニブ塩酸塩二水和物 11.37g、乳糖水和物 0.525g、結晶セルロース 0.915g、クロスポビドン 1.05g、ポリビニルピロリドン 0.70g、カルメロースナトリウム 0.70gを混合してハイスピードミキサーを用いて2分間混合した。そこへ0.14gのポロキサマー188(BASF製)を溶解した水溶液を固液比35%となるように加えて6分間湿式造粒(アジテーター回転数:400rpm、チョッパー回転数:3000rpm)した。得られた造粒粉体を、通気式棚式乾燥機を用いて水分値を3%以下とした。
この造粒顆粒をスピードミルにて解砕・整粒し、クロスポビドン 0.525g、カルメロースナトリウム 0.525g、結晶セルロース 0.70g、コロイド状二酸化ケイ素 0.175g、ステアリン酸マグネシウム 0.175gを加えて混合し、打錠粉末とした。
打錠粉末を、打錠機と直径8.5mmの杵臼を用いて打錠し、重量350mg、錠高4.85mm、硬度82Nの錠剤を得た。
【0043】
(実施例6)
ニロチニブ塩酸塩二水和物 11.37g、乳糖水和物 0.525g、結晶セルロース 0.565g、クロスポビドン 1.05g、ポリビニルピロリドン 0.70g、カルメロースナトリウム 0.70g、クロスカルメロースナトリウム 0.70gを混合してハイスピードミキサーを用いて2分間混合した。そこへ0.14gのポロキサマー188(BASF製)を溶解した水溶液を固液比35%となるように加えて6分間湿式造粒(アジテーター回転数:400rpm、チョッパー回転数:3000rpm)した。得られた造粒粉体を、通気式棚式乾燥機を用いて水分値を3%以下とした。
この造粒顆粒をスピードミルにて解砕・整粒し、クロスポビドン 0.525g、カルメロースナトリウム 1.05g、結晶セルロース 0.525g、コロイド状二酸化ケイ素 0.175g、ステアリン酸マグネシウム 0.175gを加えて混合し、打錠粉末とした。
打錠粉末を、打錠機と直径8.5mmの杵臼を用いて打錠し、重量350mg、錠高4.85mm、硬度82Nの錠剤を得た。
【0044】
(比較例1)
ニロチニブ塩酸塩二水和物 11.37g、乳糖水和物 2.67g、クロスポビドン 1.40g、ポリビニルピロリドン 0.70gを混合してハイスピードミキサー(アーステクニカ)を用いて2分間混合した。そこへ0.14gのポロキサマー188(BASF製)を溶解した水溶液を固液比40%となるように加えて6分間湿式造粒(アジテーター回転数:400rpm、チョッパー回転数:3000rpm)した。得られた造粒粉体を通気式棚式乾燥機を用いて水分値を3%以下とした。
この造粒顆粒をスピードミルにて解砕・整粒し、クロスポビドン 0.525g、カルメロースナトリウム 0.525g、ステアリン酸マグネシウム 0.175gを加えて混合し、打錠粉末とした。打錠粉末を打錠機と直径8.5mmの杵臼を用いて打錠し、重量350mg、錠高4.82mm、硬度147Nの錠剤を得た。
【0045】
(比較例2)
ニロチニブ塩酸塩二水和物 113.7g、結晶セルロース 30.15g、クロスポビドン 10.5g、ポリビニルピロリドン 7.0gを混合してハイスピードミキサーを用いて2分間混合した。そこへ1.4gのポロキサマー188(BASF製)を溶解した水溶液を固液比40%となるように加えて6分間湿式造粒(アジテーター回転数:400rpm、チョッパー回転数:3000rpm)した。得られた造粒粉体を、通気式棚式乾燥機を用いて水分値を3%以下とした。
この造粒顆粒をスピードミルにて解砕・整粒し、カルメロースナトリウム 5.25g、クロスポビドン 5.25g、ステアリン酸マグネシウム 1.75gを加えて混合し、打錠粉末とした。
打錠粉末を、打錠機と直径8.5mmの杵臼を用いて打錠し、重量350mg、錠高4.85mm、硬度144Nの錠剤を得た。
【0046】
(比較例3)
ニロチニブ塩酸塩一水和物を有効成分とする既存のカプセル製剤(タシグナ(登録商標)カプセル200mg)を用いた。
【0047】
表1-1及び1-2に、実施例及び比較例の製剤処方をまとめた。
[表1-1]
[表1-2]
【0048】
[試験例1]溶出試験
実施例1~6、比較例1~2の錠剤、並びに比較例3の既存のカプセル剤(タシグナ(登録商標)カプセル)について、薄めたMcllvaine緩衝液(pH3.0)を用いて、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法)により溶出率を評価した。
溶出試験条件詳細は以下のように設定した。
溶出試験器 :NTR-6600A、富山産業株式会社製
試験液量 :900mL
試験液温 :37±0.5℃
パドル回転数:50rpm
分析機器 :紫外可視分光度計(UV-1900、島津製作所製)
測定波長 :254nm
定量分析用の標準溶液試料として、試験溶液である薄めたMcllvaine緩衝液(pH3.0)を使用してニロチニブ塩酸塩溶液を任意の濃度で調製し、波長254nmでの吸光度を測定、これを試験溶液における標準値とした。溶出試験においては、各経時点の溶液の吸光度を測定することで、各経時点における溶液中のニロチニブ塩酸塩濃度を計算し溶出率を算出した。
得られた結果を表2に示す。
【0049】
[表2]
【0050】
試験例1の結果から、本願に係る医薬錠剤は、ニロチニブ含量が50質量%以上の錠剤であり、有効成分を確実に溶出できるものである。既存のニロチニブ製剤(比較例3;カプセル製剤)は、pH3.0試験液における溶出性は、120分での溶出率が50%以下と抑制的に制御される特徴を有するが、実施例1~5は何れもその特徴を有している。この溶出制御特性は、賦形剤の選択が寄与するところが大きいことを理解できる。この結果から、本願発明は、既存のニロチニブ塩酸塩のカプセル製剤に代わる新たな製剤形の医薬を提供できることを示唆するものである。本発明に係るニロチニブ錠剤は、既存のカプセル製剤より嚥下しやすい錠剤形であり、ニロチニブ塩酸塩を高含量に含む小型化された錠剤であるため、より嚥下しやすく服薬性に優れたニロチニブ製剤を提供することができている。