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7777396グリセリン脂肪酸エステル組成物及び、該グリセリン脂肪酸エステル組成物を含有する潤滑油組成物又は燃料油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-19
(45)【発行日】2025-11-28
(54)【発明の名称】グリセリン脂肪酸エステル組成物及び、該グリセリン脂肪酸エステル組成物を含有する潤滑油組成物又は燃料油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 129/76 20060101AFI20251120BHJP
   C10L 1/19 20060101ALI20251120BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/16 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20251120BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20251120BHJP
【FI】
C10M129/76
C10L1/19
C10N30:06
C10N40:25
C10N40:04
C10N40:12
C10N40:30
C10N40:02
C10N40:16
C10N40:08
C10N40:20
C10N40:24
C10N40:20 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021044446
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143758
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-03-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】平松 剛志
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢二
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502982(JP,A)
【文献】特表2015-521685(JP,A)
【文献】特開2005-082709(JP,A)
【文献】特開昭55-084394(JP,A)
【文献】特開平09-268299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10L 1/19
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのエステルからなるグリセリン脂肪酸エステル組成物からなる摩擦調整剤であって、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して95.0~99.8質量%であり、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノオレイン酸グリセリルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して65.0~90.0質量%であり、ヨウ素価が65.0~70.0であり、
グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、及びモノリグノセリン酸グリセリルの含有量の合計が、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して3.0~16.0質量%であり
グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、モノオレイン酸グリセリルとモノリノール酸グリセリルの含有量の比が、質量比で95:5~85:15であり、かつ
炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステル及び、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルの含有量の合計が、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して0.2~5.0質量%である、摩擦調整剤。
【請求項2】
グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノオレイン酸グリセリルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して75.0~90.0質量%である、請求項1に記載の摩擦調整剤。
【請求項3】
炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのエステルからなるグリセリン脂肪酸エステル組成物と、基油とを含有する、潤滑油組成物又は燃料油組成物であって、
グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して95.0~99.8質量%であり、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノオレイン酸グリセリルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して65.0~90.0質量%であり、ヨウ素価が65.0~70.0であり、
グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、及びモノリグノセリン酸グリセリルの含有量の合計が、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して3.0~16.0質量%であり
グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、モノオレイン酸グリセリルとモノリノール酸グリセリルの含有量の比が、質量比で95:5~85:15であり、かつ
炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステル及び、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルの含有量の合計が、0.2~5.0質量%である、潤滑油組成物又は燃料油組成物。
【請求項4】
グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノオレイン酸グリセリルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して75.0~90.0質量%である、請求項に記載の潤滑油組成物又は燃料油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦低減特性に優れるグリセリン脂肪酸エステル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や大気汚染等の環境問題と石油資源の枯渇に対する懸念から、自動車の省燃費化が求められている。そのためエンジン用潤滑油の摩擦低減は大きな課題となっており、種々の摩擦低減剤が開発され、エンジン用潤滑油に添加されている。一般的に、既存の摩擦調整剤の中で摩擦低減効果が高いものとして有機モリブデン化合物がよく知られている(特許文献1、2)。有機モリブデン化合物は、二硫化モリブデンの皮膜を形成することにより摩擦低減効果を発揮すると言われており、エンジン油をはじめ、あらゆる潤滑油でその効果が認められている。しかしながら、有機モリブデン化合物は、いかなる条件下で使用しても摩擦低減効果を発揮するというわけではなく、用途や目的によっては有機モリブデン化合物のみでは十分な摩擦低減効果を発揮できない場合があった。
【0003】
このような課題を解決するため、特許文献3には、モノエステル含量が少なくとも90質量%であるグリセリン部分脂肪酸エステルを含有する内燃機関用潤滑油組成物が、特許文献4には、炭素数8~22の炭化水素基を有するモノグリセリドであり、水酸基価150~300mgKOH/gであることを特徴とするモノグリセリドを含有する内燃機関用潤滑油組成物がそれぞれ記載されている。しかし、このようなグリセリン系化合物を潤滑油や燃料油に添加した場合であっても、十分な摩擦低減効果は得られず、市場では依然として優れた摩擦低減特性を有する化合物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-053983号公報
【文献】特開平10-017586号公報
【文献】特開2005-082709号公報
【文献】特開2014-025040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、摩擦低減特性に優れるグリセリン脂肪酸エステル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のグリセリン脂肪酸エステル組成物が優れた摩擦低減特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのエステルからなるグリセリン脂肪酸エステル組成物であって、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して90.0~99.8質量%であり、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノオレイン酸グリセリルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して60.0~90.0質量%であり、ヨウ素価が65.0~70.0である、グリセリン脂肪酸エステル組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、摩擦低減特性に優れ、有益な潤滑油組成物又は燃料油組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのエステルからなるグリセリン脂肪酸エステル組成物であり、例えば、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルであるモノグリセリン脂肪酸エステル、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステルであるジグリセリン脂肪酸エステル、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルであるトリグリセリン脂肪酸エステルを含むことができる。このうち、グリセリンには3つの水酸基があるため、グリセリン脂肪酸モノエステルには2つの異性体がある、即ち、α位の水酸基がエステル化されたものと、β位の水酸基がエステル化されたものとがあるが、本発明においてはどちらの異性体でもよく、またこれら異性体の混合物でもよい。また、ジグリセリン脂肪酸エステル及びトリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、それぞれ同一の脂肪酸であってもよく、異なる脂肪酸であってもよい。
【0009】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノオレイン酸グリセリルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して60.0~90.0質量%である、グリセリン脂肪酸エステル組成物である。グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノオレイン酸グリセリルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して65.0~88.0質量%であることが好ましく、70.0~85.0質量%であることがより好ましく、75.0~84.0質量%であることが更により好ましい。本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノオレイン酸エステルの含有量は、日本油化学会「基準油脂分析試験法 2.4.2.3 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に記載の方法により特定されるグリセリン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸組成比率から算出される。
【0010】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物が含有することができる、モノオレイン酸グリセリル以外の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルとしては、例えば、炭素数12~24の直鎖飽和脂肪酸とグリセリンとのモノエステル、炭素数12~24の分岐飽和脂肪酸とグリセリンとのモノエステル、炭素数12~24の直鎖不飽和脂肪酸とグリセリンとのモノエステル(モノオレイン酸グリセリルを除く)、炭素数12~24の分岐不飽和脂肪酸とグリセリンとのモノエステル等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、及びモノリグノセリン酸グリセリルからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノエステルを含むことが好ましく、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、及びモノアラキジン酸グリセリルからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノエステルを含むことがより好ましく、モノパルミチン酸グリセリル及びモノステアリン酸グリセリルからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノエステルを含むことが更により好ましく、モノパルミチン酸グリセリル及びモノステアリン酸グリセリルを含むことが特に好ましい。
【0011】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物が含有することができる、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステルとしては、例えば、炭素数12~24の直鎖飽和脂肪酸とグリセリンとのジエステル、炭素数12~24の分岐飽和脂肪酸とグリセリンとのジエステル、炭素数12~24の直鎖不飽和脂肪酸とグリセリンとのジエステル、炭素数12~24の分岐不飽和脂肪酸とグリセリンとのジエステル、2種の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステル等が挙げられる。本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物が炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステルを含有する場合、これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステルとして、炭素数14~22の脂肪酸とグリセリンとの少なくとも1種のジエステルを含むことが好ましく、炭素数16~20の脂肪酸とグリセリンとの少なくとも1種のジエステルを含むことがより好ましい。
【0012】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物が含有することができる、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルとしては、例えば、炭素数12~24の直鎖飽和脂肪酸とグリセリンとのトリエステル、炭素数12~24の分岐飽和脂肪酸とグリセリンとのトリエステル、炭素数12~24の直鎖不飽和脂肪酸とグリセリンとのトリエステル、炭素数12~24の分岐不飽和脂肪酸とグリセリンとのトリエステル、2種又は3種の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステル等が挙げられる。本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物が炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを含有する場合、これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルとして、炭素数14~22の脂肪酸とグリセリンとの少なくとも1種のトリエステルを含むことが好ましく、炭素数16~20の脂肪酸とグリセリンとの少なくとも1種のトリエステルを含むことがより好ましい。
【0013】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルの含有量が、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して90.0~99.8質量%である、グリセリン脂肪酸エステル組成物である。本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、モノエステルの含有量が特定比率であることで、摩擦低減特性に優れる。より摩擦低減特性に優れるグリセリン脂肪酸エステル組成物とする観点からは、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルの含有量がグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して95.0~99.8質量%であることが好ましく、97.0~99.6質量%であることがより好ましく、97.8~99.4質量%であることが更により好ましく、97.8~99.2質量%が特に好ましい。本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルの含有量は、グリセリン脂肪酸エステル組成物を製造する際の原料の選定、原料比の調製、反応後の生成物の蒸留抽出等により調整することができる。また、本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルの含有量は、日本油化学会「基準油脂分析試験法 2.4.2.3 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に記載の方法により特定されるグリセリン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸組成比率から算出される。
【0014】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物中の、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステルの含有量は、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、例えば、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して、0.0~5.0質量%であることが好ましく、0.0~3.0質量%であることがより好ましく、0.0~1.0質量%であることが更により好ましい。本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステルの含有量は、グリセリン脂肪酸エステル組成物を製造する際の原料の選定、原料比の調製、反応後の生成物の蒸留抽出等により調整することができる。また、本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステルの含有量は、日本油化学会「基準油脂分析試験法 2.4.2.3 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に記載の方法により特定されるグリセリン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸組成比率から算出される。
【0015】
また、本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物中の、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルの含有量は、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、例えば、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して、0.0~5.0質量%であることが好ましく、0.0~3.0質量%であることがより好ましく、0.0~1.0質量%であることが更により好ましい。本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルの含有量は、グリセリン脂肪酸エステル組成物を製造する際の原料の選定、原料比の調製、反応後の生成物の蒸留抽出等により調整することができる。また、本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルの含有量は、日本油化学会「基準油脂分析試験法 2.4.2.3 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に記載の方法により特定されるグリセリン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸組成比率から算出される。
【0016】
また、本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物中の、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのジエステル及び、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルの含有量の合計は、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、例えば、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して、0.1~10.0質量%であることが好ましく、0.2~10.0質量%がより好ましく、0.5~5.0質量%であることが更に好ましく、0.6~3.0質量%であることが更により好ましく、0.8~2.2質量%であることが特に好ましい。
【0017】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、不可避不純物を含み得る。そのような不純物の量は、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して、0.1質量%未満であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更により好ましい。
【0018】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、及びモノリグノセリン酸グリセリルの含有量の合計が、グリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して3.0~20.0質量%であることが好ましく、5.0~16.0質量%であることがより好ましく、7.0~12.0質量%であることが更により好ましく、8.0~10.0質量%であることが特に好ましい。本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノアラキジン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、及びモノリグノセリン酸グリセリルの含有量の合計は、日本油化学会「基準油脂分析試験法 2.4.2.3 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に記載の方法により特定されるグリセリン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸組成比率から算出される。
【0019】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、モノリノール酸グリセリルを含有することが好ましい。このとき、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、モノリノール酸グリセリルをグリセリン脂肪酸エステル組成物全量に対して0.1~15.0質量%含有することがより好ましく、2.0~12.0質量%含有することが更により好ましく、3.0~10.0質量%含有することが特に好ましい。このとき、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、モノオレイン酸グリセリルとモノリノール酸グリセリルの含有量の比が、質量比で95:5~85:15であることが好ましく、94.5:5.5~88:12であることがより好ましく、94:6~90:10であることが更により好ましく、93.5:6.5~91:9であることが特に好ましい。
【0020】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、グリセリン脂肪酸エステル組成物の摩擦低減特性の観点からは、ヨウ素価が65.0~70.0であることが好ましく、66.0~69.6であることがより好ましく、66.5~69.2であることが更により好ましい。本発明において、グリセリン脂肪酸エステル組成物のヨウ素価は、JIS K 0070(1992)に記載の方法により測定される。
【0021】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、石油原料から合成して得られた脂肪酸や動植物油脂等から製造した脂肪酸とグリセリンとの直接エステル化反応によりグリセリン脂肪酸エステルを製造する方法、植物油や動物油等の油脂から精製及び/又は分離してグリセリン脂肪酸エステルを製造する方法、2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを混合することによりグリセリン脂肪酸エステルを製造する方法等の、公知のグリセリン脂肪酸エステルの製造方法において、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノエステル比率、モノオレイン酸含有比率、ヨウ素価が特定の値となるよう製造条件を調整することにより、製造することができる。
【0022】
本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物の使用態様は、グリセリン脂肪酸エステルが用いられる使用態様であれば特に限定されず、例えば、潤滑油、グリース、作動油、燃料油、表面処理剤等に配合して用いることができる。これらの中でも、本発明の効果の観点からは、潤滑油又は燃料油に用いることが好ましく、潤滑油又は燃料油用の摩擦調整剤として用いることが特に好ましい。
【0023】
本発明の潤滑油組成物は、上述したグリセリン脂肪酸エステル組成物と、基油とを含有する潤滑油組成物である。本発明の潤滑油組成物中の、グリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量は特に限定されず、目的とする用途や特性に応じて適宜調整することができるが、潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点からは、グリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量が潤滑油組成物全量に対して、0.01~10.0質量部であることが好ましく、0.1~5.0質量部であることが更に好ましく、0.2~3.0質量部であることが最も好ましい。本発明の潤滑油組成物は、上記のような構成とすることで、摩擦低減特性に優れた潤滑油組成物とすることができる。
【0024】
本発明の潤滑油組成物に用いることができる基油は、潤滑油において通常用いられる基油であれば特に限定されず、使用目的や条件に応じて適宜、鉱物基油、化学合成基油、動植物基油及びこれらの混合基油等から選ぶことができる。ここで、鉱物基油としては、例えば、パラフィン基系原油、ナフテン基系原油、中間基系原油、芳香族基系原油があり、更にこれらを常圧蒸留して得られる留出油、或いは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油があり、また更にこれらを常法に従って精製することによって得られる精製油、具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油及び白土処理油等が挙げられる。
【0025】
化学合成基油としては、例えば、ポリ-α-オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼン及びGTL基油等が挙げられる。これらの中でも、ポリ-α-オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル及びポリオールエステル等は汎用的に使用することができる。ポリ-α-オレフィンとしては例えば、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン及び1-テトラデセン等をポリマー化又はオリゴマー化したもの、或いはこれらを水素化したもの等が挙げられる。ジエステルとしては例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等の2塩基酸と、2-エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール及びトリデカノール等のアルコールのジエステル等が挙げられる。ポリオールエステルとしては例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトール等のポリオールと、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸等の脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0026】
動植物基油としては、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油及びヤシ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油及び鯨油等の動物性油脂が挙げられる。上記に挙げたこれらの各種基油は、一種を用いてもよく、二種以上を適宜組み合せて用いてもよい。
【0027】
本発明の潤滑油組成物は、摩擦低減特性の観点から、基油として、鉱物基油又は化学合成基油を少なくとも1種含むことが好ましく、パラフィン系の高度精製鉱物油、ポリ-α-オレフィン系又は、GTL系の化学合成基油を含むことがより好ましい。このとき、パラフィン系の高度精製鉱物油、ポリ-α-オレフィン系、GTL系の化学合成基油を、摩擦低減特性の観点から、合計量で、基油の全量のうち50質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。また、本発明の潤滑油組成物中の基油の含有量は特に限定されず、使用目的によって調整することができるが、潤滑油組成物の摩擦低減特性の観点から、例えば、潤滑油組成物全量に対して20~98質量%であることが好ましい。
【0028】
本発明に用いる基油の粘度は特に限定されないが、潤滑油組成物の摩擦低減特性等の観点から、100℃の動粘度が0.8~8.0mm/sであることが好ましく、1.0~8.0mm/sであることがよりに好ましく、1.2~6.0mm/sであることが更により好ましい。なお、本発明において、100℃動粘度は、JIS K 2283に記載の方法により測定して得られる値である。
【0029】
本発明の潤滑油組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、公知の潤滑油用添加剤を使用目的に応じて適宜配合してもよく、例えば、金属系清浄剤、酸化防止剤、耐摩擦摩耗剤、極圧剤、無灰分散剤、油性向上剤、防錆剤、粘度指数向上剤、金属不活性化剤、消泡剤、固体潤滑剤等の潤滑油用添加剤を配合することができる。潤滑油用添加剤としては、それぞれ1種又は2種以上を配合してもよい。
【0030】
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属ホスホネート等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより高める観点から、カルシウム系清浄剤及びマグネシウム系清浄剤からなる群から選択される少なくとも1つの金属系清浄剤を用いることが好ましく、1種以上のカルシウム系清浄剤及び1種以上のマグネシウム系清浄剤を用いることがより好ましい。潤滑油組成物中の金属系清浄剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、カルシウム原子とマグネシウム原子の合計で、潤滑油組成物全量に対し、0.05~0.50質量%含有することが好ましく、0.10~0.40質量%含有することがより好ましい。
【0031】
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、フェノチアジン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群からなる少なくとも1つの酸化防止剤を用いることが好ましい。潤滑油組成物中の酸化防止剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01~10質量%含有することができる。
【0032】
耐摩擦摩耗剤としては、例えば、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデン長鎖アミン塩、モリブデンアルケニルコハク酸イミド錯体等の有機モリブデン化合物、有機ホスフィン、有機ホスフィンオキシド、有機ホスフィナイト、有機ホスホナイト、有機ホスフィネート、有機ホスファイト、有機ホスホネート、有機ホスフェート、有機ホスホロアミデート等のリン系化合物等が挙げられる。潤滑油組成物中の耐摩擦摩耗剤の含有量は特に限定されないが、例えば、潤滑油組成物全量に対して0.01~10質量%含有することができる。
【0033】
極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化鉱油、有機モノ又はポリスルフィド、ポリオレフィンの硫化物、1,3,4-チアジアゾール誘導体、チウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸エステル等の硫黄系極圧剤、有機トリチオホスファイト、有機チオホスフェート等のチオリン酸系極圧剤等が挙げられる。潤滑油組成物中の極圧剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01~10質量%含有することができる。
【0034】
無灰分散剤としては、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸無水物、アルケニルコハク酸エステル、アルキルメタクリレート系ポリマー、高分子量アミド及びポリアミド、ポリエステル、ポリビニルポリステアレート、マンニッヒ塩基系分散剤、ポリステアルアミド、及びこれらをホウ酸等で変性した変性物等が挙げられる。潤滑油組成物中の無灰分散剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01~10質量%含有することができる。
【0035】
油性向上剤としては、例えば、脂肪酸、油脂或いはこれらの水素添加物又は部分ケン化物、エポキシ化エステル、ヒドロキシステアリン酸の重縮合物又は該重縮合物と脂肪酸とのエステル、高級アルコール、高級アミド、グリセリド、ポリグリセリンエステル、ポリグリセリンエーテル、及び上記の化合物にα-オレフィンオキシドを付加したもの等が挙げられる。潤滑油組成物中の油性向上剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01~30質量%含有することができる。
【0036】
防錆剤としては、例えば、酸化パラフィンワックスカルシウム塩、酸化パラフィンワックスマグネシウム塩、牛脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアミン塩、アルケニルコハク酸又はアルケニルコハク酸ハーフエステル(アルケニル基の分子量は100~300程度)、ソルビタンモノエステル、ペンタエリスリトールモノエステル、グリセリンモノエステル、ノニルフェノールエトキシレート、ラノリン脂肪酸エステル、ラノリン脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。潤滑油組成物中の防錆剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01~20質量%含有することができる。
【0037】
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(C1~18)アルキルメタクリレート、(C1~18)アルキルアクリレート/(C1~18)アルキルメタクリレート共重合体、ジエチルアミノエチルメタクリレート/(C1~18)アルキルメタクリレート共重合体、エチレン/(C1~18)アルキルメタクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸アミド共重合体、スチレン/ブタジエン水素化共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体等が挙げられ、平均分子量は10,000~1,500,000程度であってもよい。潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01~20質量%含有することができる。
【0038】
金属不活性化剤としては、例えば、N,N’-サリチリデン-1,2-プロパンジアミン、アリザリン、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾチアゾール、2-(N,N-ジアルキルチオカルバモイル)ベンゾチアゾール、2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(N,N-ジアルキルチオカルバモイル)-1,3,4-チアジアゾール等が挙げられる。潤滑油組成物中の金属不活性化剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.1~10質量%含有することができる。
【0039】
消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート、ソルビタン部分脂肪酸エステル等が挙げられる。潤滑油組成物中の消泡剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01~10質量%含有することができる。
【0040】
固体潤滑剤としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、脂肪酸アルカリ土類金属塩、雲母、二塩化カドミウム、二ヨウ化カドミウム、フッ化カルシウム、ヨウ化鉛、酸化鉛、チタンカーバイド、窒化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化アンチモン、フッ化セリウム、ポリエチレン、ダイアモンド粉末、窒化ケイ素、窒化ホウ素フッ化炭素、メラミンイソシアヌレート等が挙げられる。潤滑油組成物中の固体潤滑剤の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜調整することができるが、例えば、潤滑油組成物全量に対し、0.01~5質量%含有することができる。
【0041】
本発明の潤滑油組成物の粘度は特に限定されず、目的とする用途や特性に応じて適宜調整することができるが、本発明の効果の観点からは、100℃の動粘度が0.8~8.0mm/sであることが好ましく、1.0~8.0mm/sであることがよりに好ましく、1.2~6.0mm/sであることが更により好ましい。なお、本発明において、100℃動粘度は、JIS K 2283に記載の方法により測定して得られる値である。
【0042】
本発明の潤滑油組成物の低温粘度のグレードは特に限定されないが、本発明の効果の観点からは、低温粘度のグレードが0~25のグレードであることが好ましく、0~15のグレードであることがより好ましく、0~10のグレードであることが更により好ましく、0~5のグレードであることが特に好ましい。また、本発明の潤滑油組成物の高温粘度のグレードは特に限定されないが、本発明の効果の観点からは、高温粘度のグレードが8~30のグレードであることが好ましく、8~20のグレードであることがより好ましく、8~16のグレードであることが更により好ましい。本発明において、低温粘度のグレード及び高温粘度のグレードは、SAE Internationalが定めるエンジンオイル粘度規格SAE J300により定められる。
【0043】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油の一般的な使用態様であれば特に限定されず使用することができるが、例えば、内燃機関用潤滑油(例えば、自動車やオートバイ等のガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油等)、工業用潤滑油(例えば、ギヤ油、タービン油、コンプレッサー油、油膜軸受油、絶縁油、冷凍機油、作動油、真空ポンプ油、ロックドリル油、圧縮用潤滑油、金属加工油、塑性加工油、熱処理油、多目的潤滑油等)等として使用することができる。中でも、本発明の効果が得られやすいことから、ガソリンエンジンやディーセルエンジン等の内燃機関用潤滑油として使用することが好ましい。
【0044】
本発明の燃料油組成物は、前述したグリセリン脂肪酸エステル組成物と、基油とを含有する燃料油組成物である。本発明の燃料油組成物中の、グリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量は特に限定されず、目的とする用途や特性に応じて適宜調整することができるが、燃料油組成物の摩擦低減特性の観点からは、グリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量が燃料油組成物全量に対して、0.001~10.0質量部であることが好ましく、0.01~5.0質量部であることが更に好ましく、0.1~3.0質量部であることが最も好ましい。本発明の燃料油組成物は、上記のような構成とすることで、摩擦低減特性に優れた燃料油組成物とすることができる。
【0045】
本発明の燃料油組成物に用いることができる基油は、燃料油において通常用いられる基油であれば特に限定されず、例えば、特1号軽油、1号軽油、2号軽油、3号軽油、特3号軽油、A重油、B重油、C重油、1号灯油、2号灯油、MGO(Marine Gas Oil)、MFO(Marine Fuel Oil)、MDO(Marine Diesel Oil)、MDF(Marine Diesel Fuel)、HFO(Heavy Fuel Oil)、RFO(Residual Fuel Oil)、LSMGO(Low Sulfur Marine Gas Oil)、LSMDO(Low Sulfur Marine Diesel Oil)、VLSFO(Very Low Sulfur Fuel Oil)、ULSFO(Ultla Low Sulfur Fuel Oil)、パーム油、ココナッツ油、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、コーン油、ゴマ油、トール油、骨油、鯨油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。このうち軽油又は重油としては、直留軽油留分、減圧軽油留分、脱硫軽油留分、分解基油留分、直脱軽油留分、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、直脱重油、分解重油等を用いてもよい。また、本発明においては、前述したような燃料油を水素化処理して用いてもよい。
【0046】
本発明の燃料油組成物に用いる基油の硫黄元素含有量は特に限定されないが、本発明の効果の観点からは、硫黄元素含有量が0.01~0.50質量%であることが好ましく、0.03~0.48質量%であることがより好ましく、0.10~0.45質量%であることが更により好ましい。なお、本発明において、硫黄元素含有量は、JIS K 2541-6(2003)に記載の紫外蛍光法により測定される。基油の硫黄元素含有量を調整する方法としては特に限定されず、例えば、硫黄元素を多く含有する基油を直接脱硫処理や間接脱硫処理等を行うことにより硫黄元素含有量を調整してもよく、また、例えば、硫黄元素を0.50質量%より多く含有する基油と、硫黄元素を0.50質量%未満で含有する基油とを混合し、硫黄元素含有量が0.01~0.50質量%である基油となるよう調整してもよい。
【0047】
本発明の燃料油組成物に用いる基油の粘度は、本発明の効果の観点からは、40℃の動粘度が1~600mm/sであることが好ましく、2~500mm/sであることがより好ましく、2~400mm/sであることが更により好ましく、2~250mm/sであることが更により好ましい。なお本発明において、動粘度は、JIS K 2283(2000)に記載の方法により測定される。
【0048】
本発明においては、本発明の効果の観点から、燃料油組成物に用いる基油として、軽油(特1号軽油、1号軽油、2号軽油、3号軽油、特3号軽油、MGOを含む)又は重油(A重油、B重油、C重油、MDO、VLSFO、ULSFOを含む)から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。このとき、基油中の軽油及び重油の合計の含有量は特に限定されないが、本発明の効果の観点から、基油全量に対して軽油及び重油の合計量が10~100質量%であることが好ましく、40~100質量%であることがより好ましく、80~100質量%であることが更により好ましい。このような基油の中でも、軽油と重油の含有比率が質量比で、0:100~90:10であることが好ましい。また、本発明の効果の観点から、基油としてMGO又は重油から選択される少なくとも1種を含む基油を用いることが特に好ましい。このとき、基油中のMGO若しくは重油の含有量又はMGO及び基油の合計の含有量は特に限定されないが、本発明の効果の観点から、基油全量に対して基油中のMGO若しくは重油の含有量又はMGO及び基油の合計量が10~100質量%であることが好ましく、40~100質量%であることがより好ましく、80~100質量%であることが更により好ましく、100質量%であることが特に好ましい。また、基油のうちMGO及び重油の合計量が100質量%であるときのMGOと重油の含有比率は特に限定されず、例えば、MGOと重油の含有比率が質量比で、0:100~100:0とすることができ、0:100~90:10とすることが好ましい。
【0049】
本発明の燃料油組成物には、燃焼性、貯蔵安定性、酸化安定性、耐摩耗性、均一性、安全性、環境適合性、始動性、低温流動性、取扱い性の向上等のために公知の燃料油用添加剤を配合してもよく、例えば、表面着火剤、オクタン価向上剤、セタン価向上剤、抗菌・殺菌剤、防錆剤、堆積物改良剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、清浄剤・分散剤剤、流動性向上剤、氷結防止剤、アンチノック剤、腐食防止剤、帯電防止剤、助燃剤、染料等の燃料油用添加剤を配合することができる。燃料油用添加剤としては、それぞれ1種又は2種以上を配合してもよい。
【0050】
表面着火防止剤としては、例えば、トリブチルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリクレジルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、メチルフェニルホスフェート等の有機リン系化合物;2-エチルヘキシルボロネート及びブチルジイソブチルボロネート等の有機ボロン系化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。表面着火防止剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0051】
オクタン価向上剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、酢酸ブチル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチル-tert-ブチルエーテル、メチル-tert-アミルエーテル、N-メチルアニリン、メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、テトラエチル鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。オクタン価向上剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0052】
セタン価向上剤としては、例えば、硝酸エチル、硝酸メトキシエチル、硝酸イソプロピル、硝酸アミル、硝酸ヘキシル、硝酸ヘプチル、硝酸オクチル、硝酸2-エチルヘキシル、硝酸シクロヘキシルなどの脂肪族ニトレート;ジ-tert-ブチルペルオキシドなどの過酸化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。セタン価向上剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0053】
抗菌・殺菌剤としては、例えば、硫酸銀、硝酸銀、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸銅、エチレンジアミン4酢酸銅等の無機系殺菌剤;ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-トリアジン等の有機窒素系抗菌剤;2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、1,4-ビス(ブロモアセトキシ)-2-エタン、ビストリブロモメチルスルホン等の有機ブロム系抗菌剤、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチルイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチルイソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系抗菌剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。抗菌・殺菌剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0054】
防錆剤としては、例えば、脂肪族アミン及びその塩、有機リン酸エステル、有機スルホン酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。防錆剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0055】
堆積物改良剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレンアミン、ポリエーテルアミン、ポリアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアミン、ポリアルキルフェノキシアミノアルカン、ポリアルキレンスクシンイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。堆積物改良剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0056】
酸化防止剤としては、例えば、N,N'-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジブチル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジオクチル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジトリル-p-フェニレンジアミン、N-トリル-N'-キシレニル-p-フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤;2-t-ブチルフェノール、2,6-ジターシャリブチルフェノール、2,6-ジターシャリブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジメチル-6-ターシャリブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’-チオジブチレート、ジラウリルサルファイド等の硫黄系酸化防止剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。酸化防止剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0057】
金属不活性化剤としては、例えば、エチレンジアミン等のアミノ化合物;N,N'-ジサリチリデン-1,2-ジアミノプロパン、N,N'-ジサリチリデン-2-シクロヘキサンジアミン、N,N'-ジサリチリデンエチレンジアミン、N,N'-ビス(ジメチルサリチリデン)エチレンジアミン、N,N'-ビス(ジメチルサリチリデン)エチレンテトラミン、サリチルアルドキシム等のサリチリデン系化合物;1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル-1,2,4-トリアゾール、1-(1-ブトキシエチル)-1,2,4-トリアゾール、4,4’-メチレンビス(2-ウンデシル-5-メチルイミダゾール)、ビス[(N-メチル)イミダゾール-2-イル]カルビノールオクチルエーテル等のトリアゾール系化合物;4-アルキルベンゾトリアゾール、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾトリアゾール、5,5’-メチレンビスベンゾトリアゾール、1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル)トリアゾール、1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾール、1-(ノニルオキシメチル)ベンゾトリアゾール、1-(1-ブトキシエチル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。金属不活性化剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0058】
耐摩耗剤としては、例えば、硫化油脂、オレフィンポリスルフィド、硫化オレフィン、ジベンジルスルフィド、エチル-3-[[ビス(1-メチルエトキシ)フォスフィノチオイル]チオ]プロピオネート、トリス-[(2、又は4)-イソアルキルフェノール]チオフォスフェート、3-(ジ-イソブトキシ-チオホスホリルスルファニル)-2-メチル-プロピオン酸、トリフェニルフォスフォロチオネート、β-ジチオホスフォリル化プロピオン酸、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメイト)、O,O-ジイソプロピル-ジチオフォスフォリルエチルプロピオネート、2,5-ビス(n-ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブタンチオ)1,3,4-チアジアゾール、及び2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール等の硫黄系耐摩耗剤;モノオクチルフォスフェート、ジオクチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、モノブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、モノフェニルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、モノイソプロピルフェニルフォスフェート、ジイソプロピルフェニルフォスフェート、トリイソプロピルフェニルフォスフェート、モノターシャリーブチルフェニルフォスフェート、ジ-tert-ブチルフェニルフォスフェート、トリ-tert-ブチルフェニルフォスフェート、トリフェニルチオフォスフェート、モノオクチルフォスファイト、ジオクチルフォスファイト、トリオクチルフォスファイト、モノブチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、トリブチルホスファイト、モノフェニルフォスファイト、ジフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、モノイソプロピルフェニルフォスファイト、ジイソプロピルフェニルフォスファイト、トリイソプロピルフェニルフォスファイト、モノ-tert-ブチルフェニルフォスファイト、ジ-tert-ブチルフェニルフォスファイト、及びトリ-tert-ブチルフェニルフォスファイト等のリン系化合物;カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン、ベヘン酸等の脂肪酸;ナフテン酸金属塩、脂肪酸金属塩、リン酸金属塩、リン酸エステル金属塩、及び亜リン酸エステル金属塩等の有機金属化合物;その他、ホウ素化合物、モノ及びジヘキシルフォスフェートのアルキルアミン塩、リン酸エステルアミン塩、及びトリフェニルチオリン酸エステルとtert-ブチルフェニル誘導体の混合物等が挙げられる。耐摩耗剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.01~10質量%とすることができる。
【0059】
清浄剤・分散剤としては、例えば、リン酸アミド、アミノアルカン、アルキルアミンリン酸エステル、ポリエーテルアミン、ポリブテニルアミン、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル、サリチル酸金属塩、スルホン酸金属塩、カルボン酸金属塩、ホスホン酸金属塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。清浄剤・分散剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0060】
流動性向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート系ポリマー、ポリアクリレート系ポリマー、オレフィン性不飽和ポリマー、エチレン-酢酸ビニル系コポリマー、ポリオレフィン置換フェノール系ポリマー、アルケニルコハク酸アミド、アルカンポリオールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、アルカノールアミンのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン縮合ソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。流動性向上剤の含有量は特に限定されないが、例えば、燃料油組成物全量に対して0.001~10質量%とすることができる。
【0061】
本発明の燃料油組成物のCCAI(計算炭素芳香族指数)は特に限定されないが、燃料油組成物の諸特性の観点から、780以上900以下が好ましく、800以上860以下がより好ましい。本発明において、燃料油組成物のCCAIは、ISO8217に基づき算出される。
【0062】
本発明の燃料油組成物の引火点は特に限定されないが、燃料油組成物の諸特性の観点から、40℃以上120℃以下が好ましい。本発明において、燃料油組成物の引火点は、JIS K 2265-3(2007)に記載のペンスキーマルテンス密閉法により測定される。
【0063】
本発明の燃料油組成物の流動点は特に限定されないが、燃料油組成物の諸特性の観点から、-40℃以上30℃以下が好ましい。本発明において、燃料油組成物の流動点は、JIS K 2269(1987)に記載の方法により測定される。
【0064】
本発明の燃料油組成物の動粘度は特に限定されないが、燃料油組成物の諸特性の観点からは、40℃の動粘度が1~400mm/sであることが好ましく、2~200mm/sであることが更に好ましく、2~100mm/sであることが最も好ましい。本発明において、燃料油組成物の40℃の動粘度は、JIS K 2283(2000)に記載の方法により測定される。
【0065】
本発明の燃料油組成物の密度は特に限定されないが、燃料油組成物の諸特性の観点から、15℃における密度が0.70g/cm以上1.00g/cm以下であることが好ましく、0.80g/cm以上0.98g/cm以下であることがより好ましい。本発明において、燃料油組成物の密度は、JIS K 2249(2011)に記載の方法により測定される。
【0066】
本発明の燃料油組成物は、液体の燃料油を用いる態様であれば特に制限なく使用でき、例えば、乗用車やトラック等の自動車用燃料油、旅客船や貨物船等の船舶用燃料油、飛行機やヘリコプター等の航空機用燃料油、ディーゼル機関車等の鉄道車両用燃料油、農業機械用燃料油、建築機械用燃料油等として用いることができ、これらの中でも、船舶用燃料油として用いることが好ましい。
【実施例
【0067】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例中、「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
【0068】
<グリセリン脂肪酸エステル組成物1の調製>
公知の方法により脂肪酸とグリセリンとを反応させた後、蒸留処理を行うことにより、炭素数12~24の脂肪酸とグリセリンとのエステルの混合物からなるグリセリン脂肪酸エステル組成物1を調製した。得られたグリセリン脂肪酸エステル組成物1中の、ガスクロマトグラフィー(GC-2014、株式会社島津製作所製)を用いて日本油化学会「基準油脂分析試験法 2.4.2.3 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に記載の方法により特定した、グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の種類及び含有量を表1に示す。また、JIS K 0070(1992)に記載の方法により測定したグリセリン脂肪酸エステル組成物1のヨウ素価を表1に合わせて示す。なお、表1において、%は質量%を表す。
【0069】
<グリセリン脂肪酸エステル組成物2~5の調製>
グリセリン脂肪酸エステル組成物1の調製において、用いる油脂の種類、原料比率及び蒸留条件を変更した以外は同様の方法により、グリセリン脂肪酸エステル組成物2~5をそれぞれ調製した。得られた各グリセリン脂肪酸エステル組成物中のグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の種類及び含有量、並びにJIS K 0070(1992)に記載の方法により測定した各グリセリン脂肪酸エステル組成物のヨウ素価をそれぞれ表1に示す。なお、表1において、%は質量%を表す。
【0070】
<摩擦低減特性評価>
調製したグリセリン脂肪酸エステル組成物1~5について、下記試験条件により摩擦係数を測定することで、摩擦低減特性評価を行った。具体的には、潤滑油基油(鉱物系基油、0W-8グレード)にグリセリン脂肪酸エステル組成物1~5を、潤滑油基油とグリセリン脂肪酸エステル組成物の合計量に対するグリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量が0.50質量%になるようそれぞれ配合した試験油1~5について、MTM試験機(PCS Instruments社製)を用い、下記の試験条件でのボールオンプレート試験により摩擦係数を測定した。また、比較例3として、潤滑油基油のみを用いて同様の操作により摩擦係数を測定した。測定結果を表1に示す。なお、摩擦係数が小さいほど、摩擦低減特性に優れることを示す。
【0071】
[摩擦係数測定条件]
温度:80℃
荷重:10N
転がり速度:10mm/秒、31mm/秒、55mm/秒
すべり率:50%
【0072】
【表1】
【0073】
上記のように、本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、摩擦低減特性に優れていた。よって、本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物は、摩擦調整剤として好適に用いることができ、また本発明のグリセリン脂肪酸エステル組成物を含有する潤滑油組成物及び燃料油組成物は、摩擦低減特性に優れる潤滑油組成物及び燃料油組成物として用いることができることがわかる。