(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-19
(45)【発行日】2025-11-28
(54)【発明の名称】リキッド印刷インキ、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/106 20140101AFI20251120BHJP
B41M 1/04 20060101ALI20251120BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20251120BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20251120BHJP
【FI】
C09D11/106
B41M1/04
B41M1/10
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021182446
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2024-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2020212263
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】伊井 直実
(72)【発明者】
【氏名】大門 晃
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-012954(JP,A)
【文献】特開2000-144115(JP,A)
【文献】特開2017-226435(JP,A)
【文献】特開2016-132723(JP,A)
【文献】特開2019-038897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
B41M 1/00-9/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリオレフィン樹脂を主バインダー樹脂とし有機溶剤を含有するリキッド印刷インキであって、レシチンをインキ全固形分に対し5~20質量%含有し、
以下を満たすことを特徴とするリキッド印刷インキ。
(1)着色剤を含有する。
(2)ロジン変性マレイン酸樹脂をインキ固形分に対し0.2~15.0質量%含有する。
(3)ビニル系樹脂又は他の塩素化されたビニル系樹脂である塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含有し、前記塩素化ポリオレフィン
樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体との
質量比率が2:1~1:2の範囲であり、前記塩素化ポリオレフィン
樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体との和がインキ固形分中10.0~50.0質量%である。
【請求項2】
ポリエチレンワックスを含有する請求項1に記載のリキッド印刷インキ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキを印刷してなる印刷物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキを印刷してなる集積包装用フィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキをバイオマスフィルムに印刷してなる集積包装用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装用グラビアインキやフレキソインキとして使用可能なリキッド印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
缶飲料やプラスチックボトル飲料、紙パック飲料等を、従来の段ボールではなく安価且つ廃棄し易い熱収縮フィルム(集積包装フィルム)によって商品を集積包装する方法が幅広く取り入れられており、現在では飲料のみならず、様々な個別包装された物品を集積包装する方法に使用されている。このような集積包装フィルムには、物品の視認性、美粧性、機能性を付与させる目的で、グラビアインキやフレキソインキ等のリキッド印刷インキで印刷がなされている。
【0003】
集積包装フィルムになされる印刷は通常、流通の過程で視認性が損なわれないように該フィルムの内側に行われる。一方安価かつ廃棄しやすいという利点を損なわないために、印刷面の保護は通常行っておらず、印刷面は集積包装する物品と直接接触する状態で包装される。また集積包装フィルムは熱収縮フィルムであり、加熱によりフィルムを収縮させて物品を集積させる。従って時として、加熱時、フィルム収縮時あるいは流通過程において、集積包装フィルムに印刷された印刷インキが物品に色移りしてしまうことがあった。
【0004】
更に近年では、包装材のバイオマス化が要求されており、包装材に使用する印刷インキも、100%石油由来原料ではなくバイオマス原料の使用を要求されている。色移りの原因となるフィルムへの密着性不良やブロッキング性不足、あるいは印刷適性そのものも、バイオマス原料で改善すべきという動きが広がっている。
【0005】
集積包装フィルムに使用される熱収縮性フィルムは、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂やエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が使用されている。特にポリオレフィン樹脂フィルムに対する密着性に優れたインキとして、塩素化ポリオレフィン樹脂を使用するリキッド印刷インキが知られている。(例えば特許文献1、2参照)しかしながら該インキであっても、時として十分な密着性が得られない場合があった。またこれらのインキは、バイオマス原料で改善するという視点にもなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-073936号参照
【文献】特開2019-38897号参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、特に集積包装フィルムに適したリキッド印刷インキであって、集積包装フィルムに使用される熱収縮フィルムに対し優れた密着性や耐ブロッキング性が改善されたリキッド印刷インキであり、且つバイオマス原料で改善されたリキッド印刷インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明は、塩素化ポリオレフィン樹脂を主バインダー樹脂とし有機溶剤を含有するリキッド印刷インキであって、リン脂質をインキ全固形分に対し特定量含有することで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち本発明は、塩素化ポリオレフィン樹脂を主バインダー樹脂とし有機溶剤を含有するリキッド印刷インキであって、リン脂質をインキ全固形分に対し5~20質量%含有することを特徴とするリキッド印刷インキに関する。
【0010】
また、本発明は、前記リン脂質がレシチンであるリキッド印刷インキに関する。
【0011】
また、本発明は、前記リキッド印刷インキを印刷してなる印刷物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記リキッド印刷インキを印刷してなる集積包装用フィルムに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリキッド印刷インキは特にポリオレフィン樹脂フィルム等の熱収縮フィルムに対し優れた密着性や耐ブロッキング性を有する。本発明のリキッド印刷インキを印刷した集積包装フィルムは、集積された物品への色移り等がない状態で流通させることができる。
【0014】
更にリン脂質は天然原料であり、バイオマス原料で改善すべきであるという動きにも寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(言葉の定義)
本発明においてリキッド印刷インキとは、グラビアインキまたはフレキソインキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状のインキを指し、好ましくはグラビアインキまたはフレキソインキである。また本発明のリキッド印刷インキは活性エネルギー硬化性の成分を含んでおらず、即ち活性エネルギー線非反応性のリキッドインキである。
本発明において「部」とは全て「質量部」を示し、「コーティング剤全量」とは、有機溶剤等の揮発性成分をすべて含んだインキの全量を示し、「コーティング剤固形分全量」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
【0016】
(バインダー樹脂)
本発明で使用するバインダー樹脂は、塩素化されたビニル系樹脂、中でも塩素化ポリオレフィン樹脂を主バインダー樹脂を主成分とする。
【0017】
(ビニル系樹脂)
塩素化されたビニル系樹脂において、ビニル系樹脂としては、ビニル基を有する化合物の単独重合体や共重合体であればよく、代表的な単独重合体または共重合体としては、塩化ビニルや酢酸ビニルを使用した単独重合体または共重合体が挙げられる。
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、及びそれら相互のブレンド品或いは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。これら塩化ビニル系樹脂は2種以上の混合物でもよく、他の合成樹脂との混合物でもよい。
【0018】
また酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルモノマーの単独重合体である酢酸ビニル重合体、または酢酸ビニルモノマーと重合可能な不飽和モノマーとの共重合体である。不飽和モノマーとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに代表される長鎖(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等に代表される水酸基含有(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル等のビニルモノマー、エチレン等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル-エチレン共重合体が好ましい。
【0019】
ビニル系樹脂の分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。
【0020】
前記ビニル系樹脂の添加量としては、インキ固形分中に1.0~70.0 質量%含有し、好ましくは5.0~50.0質量%である。
【0021】
(塩素化されたビニル系樹脂)
本発明で使用する塩素化されたビニル系樹脂とは、前述のビニル系樹脂を塩素化したビニル系樹脂(塩素化ビニル系樹脂とも称す)である。
ビニル系樹脂の塩素化方法は公知の方法で行うことができ、例えば、ビニル系樹脂を水又は四塩化炭素,クロロホルム等の媒体に分散又は溶解し、触媒の存在下あるいは紫外線の照射下において加圧又は常圧下に50~120℃の温度範囲で塩素ガスを吹き込む方法等が挙げられる。
塩素化ビニル系樹脂としては、ポリオレフィン樹脂を塩素化した塩素化ポリオレフィン樹脂、例えばポリプロピレン樹脂を塩素化した塩素化ポリプロピレン樹脂や、プロピレン-α-オレフィン共重合体を塩素化した塩素化プロピレン-α-オレフィン共重合体等や、エチレンビニルアルコール(EVA)等を塩素化した塩素化エチレンビニルアルコール(EVA)樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体を塩素化した塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。中でも塩素化ポリオレフィン樹脂や塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体等が好ましい。
塩素化ポリオレフィン樹脂であれば、その重量平均分子量は、5,000~100,000が好ましく5,000~70,000であることがなお好ましく7,000~50,000であることが更に好ましい。樹脂100質量%中の塩素原子の含有質量%を示す塩素含有率は15~45質量%の範囲内であることが多い。
塩素化ビニル系樹脂はインキ固形分中に1.0~70質量%含有し、好ましくは 5~50質量%である。
【0022】
塩素化ビニル系樹脂は市販品を使用してもよく、塩素化ポリオレフィン樹脂や塩素化エチレンビニルアルコール(EVA)、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体等が知られており、例えば日本製紙(株)のスーパークロンシリーズが挙げられる。
【0023】
中でも、本発明においては、塩素化ポリオレフィン系樹脂を主バインダーとし、塩素化ポリオレフィン系樹脂とビニル系樹脂又は他の塩素化されたビニル系樹脂との併用が好ましい。併用の比率は特に限定はないが、好ましくは塩素化ポリオレフィン系樹脂:ビニル系樹脂又は他の塩素化されたビニル系樹脂= 5:1 ~1:5の範囲であることが好ましく、3:1~1:3がなお好ましく2:1~1:2 が最も好ましい。
ここで、ビニル系樹脂又は他の塩素化されたビニル系樹脂として特に好ましくは、ビニル系樹脂が酢酸ビニル-エチレン共重合体又は塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテルの共重合体であることが好ましく、他の塩素化されたビニル系樹脂としては塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
また併用する場合においては、塩素化ポリオレフィン系樹脂とビニル系樹脂又は他の塩素化されたビニル系樹脂との和がインキ固形分中に2.0~70.0質量%含有することが好ましく、より好ましくは10.0~50.0質量%である。
【0024】
本発明においては、前記塩素化ポリオレフィン系樹脂又はビニル系樹脂を主バインダー樹脂とする以外は特に限定なく、公知のバインダ―樹脂を併用することもできる。例えばロジン系樹脂、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)などセルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。
【0025】
(ロジン系樹脂)
本発明で使用するロジン系樹脂としては、印刷インキ用に汎用されるロジン、及び又はロジンの誘導体であれば特に限定なく使用できる。ロジンまたはロジンの誘導体とは具体的には、ロジン類またはそのカルボキシル基含有誘導体等である。ロジン類は、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、水添ロジンまたはこれらの重合物等である。ロジンの誘導体は、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸を添加したロジン誘導体等のカルボキシル基含有誘導体等である。
ロジン系樹脂の添加量は、インキ固形分に対し 0.1~20.0質量%であることが好ましく、さらに好ましくは 0.2 ~15.0質量%である。
【0026】
本発明においては、中でもロジンのマレイン酸誘導体であるロジン変性マレイン酸樹脂を併用することが好ましい。本発明で使用するロジン変性マレイン酸樹脂は、特に限定なく公知のロジン変性マレイン酸樹脂を使用することができる。ロジン変性マレイン酸樹脂は、酸価が25mgKOH/g以上320mgKOH/g以下のものが好ましく、特に酸価が100mgKOH/g以上320mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
ロジン変性マレイン酸樹脂の添加量は、インキ固形分に対し0.1~20.0 質量%であることが好ましく、さらに好ましくは 0.2 ~15.0質量%である。
【0027】
市販のロジン系樹脂としては、荒川化学工業社製マルキードNo.1、2、5、6、8、31、32、33、34、3002等、ハリマ化成社製ハリマックR-80、T-80、R-100、M-453、M-130A、135GN、145P、R-120AH、ハリタック4851、4821、4740、28JA等が挙げられる。
また、これらのロジン系樹脂は、バイオマス原料としても使用できる。
【0028】
(繊維素系樹脂)
繊維素系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース(硝化綿ともいう)、ヒドロキシアルキルセルロース、およびカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、およびニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。本発明のポリウレタン樹脂(A)の併用では、耐ブロッキング性、耐擦傷性その他のインキ被膜物性が向上することが期待できる。
ニトロセルロース(硝化綿)は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましい。
【0029】
ニトロセルロース(硝化綿)を使用する事で、顔料への高い分散性が得られる事から、特に表刷り用コーティング剤として使用すれば、印刷インキ塗膜の強度を向上させることができ好適である。前記ニトロセルロース(硝化綿)としては、窒素含有量が10~13質量%、平均重合度30~500が好ましく、より好ましくは窒素含有量が10~13質量%、平均重合度45~290である。
【0030】
ニトロセルロース(硝化綿)の添加量としては、インキ固形分中に0.1~5.0質量%含有し、好ましくは0.5~2.0質量%である。
また、ニトロセルロースは、バイオマス原料としても使用できる。
【0031】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得たポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。ポリオールとしては例えば、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(1)、これらの低分子ポリオール類(1)と、セバシン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類(2);環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類、を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(3);前記低分子ポリオール類(1)などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(4);ポリブタジエングリコール類(5);ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(6);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(7)などが挙げられる。
【0032】
ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
また鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤としては例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は10,000~100,000であることが好ましく、より好ましくは15,000~80,000の範囲である。
また、ポリウレタン樹脂の添加量としては、インキ固形分に対し0.1~5.0質量%であることが好ましく、さらに好ましくは 0.5~2.0質量%である。
【0035】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂としては、例えば多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドである。特に、重合脂肪酸および/またはダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族および/または芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂であることが好ましく、更には一級および二級モノアミンを一部含有するものが好ましい。
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、以下に限定されるものではないが、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸などが挙げられ、その中でもダイマー酸あるいは重合脂肪酸に由来する構造を主成分(ポリアミド樹脂中に50質量%以上)含有するポリアミド樹脂が好ましい。ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。なお、ダイマー酸あるいは重合脂肪酸を構成する脂肪酸は大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来など天然油に由来するものを好適に挙げることができ、オレイン酸およびリノール酸から得られるものが好ましい。
多塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
多価アミンとしては、ポリアミン、一級または二級モノアミンなど挙げることができる。ポリアミド樹脂に使用されるポリアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミンを挙げることができ、脂環族ポリアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。また、芳香脂肪族ポリアミンとしてはキシリレンジアミン、芳香族ポリアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。さらに、一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどを挙げることができる。
また、ポリアミド樹脂の添加量としては、インキ固形分中に0.1~5.0質量%含有し、好ましくは0.5~2.0質量%である。
【0037】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性モノマーが共重合したものであれば特段限定されない。重合性モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。重合法も特に限定なく公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合法等で得たものを使用することができる。
アクリル樹脂の重量平均分子量は5,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000の範囲である。
また、アクリル樹脂の添加量としては、インキ固形分に対し0.1~5.0質量%含有し、好ましくは0.5~2.0質量%である。
【0038】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、アルコールとカルボン酸とを公知のエステル化重合反応を用いて反応させてなるポリエステル樹脂であれば特段限定されない。
アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能アルコールが好ましい。
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、リノール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能カルボン酸が好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は500~6000であることが好ましい。さらに好ましくは1400~5500である
また、ポリエステル樹脂の添加量としては、インキ固形分に対し0.1~5.0質量%含有し、好ましくは0.5~2.0質量%である。
【0039】
(硬化剤)
また、バインダー樹脂に硬化剤を併用してもよい。硬化剤としては有機溶剤系のグラビアインキで汎用の硬化剤を使用すればよいが、最もよく使用されるのはイソシアネート系の硬化剤である。
イソシアネート化合物の添加量としては、硬化効率の観点からインキ固形分に対しインキ固形分に対し0.3~10.0質量%含有し、好ましくは1.0~7.0質量%である。
【0040】
前記バインダー樹脂の合計は、インキ固形分に対し2.0~50質量%含有し、好ましくは10~50質量%である。
【0041】
(リン脂質)
本発明においては、リン脂質をインキ全固形分に対し5~20質量%含有することが特徴である。
リン脂質としては、例えばレシチン及びリン酸化したモノ並びにジグリセリド、ポリジメチルシロキサン、及びトリグリセリド等が挙げられるが、入手容易なレシチンが好ましい。
【0042】
リン脂質を添加することで、プラスチックフィルムへの密着性や耐ブロッキング性、特にコロナ等の表面処理を行っていない二軸延伸ポリプロピレンフィルムであっても、密着性や耐ブロッキング性が良化する。
これは、推定ではあるが、リン脂質は離型作用を有すると考えられ、インキとプラスチックフィルムとの界面での離型作用のバランスがよくなり、結果フィルムに対する密着性、耐ブロッキング性が良化するのではないかと考えられる。
またリン脂質は、バイオマス原料としても使用できる。
【0043】
リン脂質はインキ全固形分に対し5~20質量%含有することで効果を発揮する。20質量%を超える量であると印刷適性そのものが低下する恐れがある。 中でも添加量は、インキ固形分中に5~19質量%含有し、好ましくは7~15質量%である。
【0044】
(有機溶剤)
本発明のリキッド印刷インキで使用する有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0045】
尚、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、ノルマルプロパノールなどを使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しない事がより好ましい。
【0046】
中でもポリウレタン樹脂への溶解性の観点から、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/メトキシプロパノールの混合液がより好ましい。また、乾燥調整のためにインキ固形分の10質量%未満であればグリコールエーテル類を添加する事も出来る。
【0047】
(着色剤)
本発明のリキッド印刷インキとしては、着色剤を含まないインキの濃度調整用ニス及びオーバープリントニスとして使用することもできるし、着色剤を含む美粧性等を付与する目的でデザイン印刷等に用いる着色剤を含むインキとして使用することもできる。
着色剤としては顔料が好ましく、一般のインキ、塗料、及び記録剤などに使用されている無機顔料、有機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。以下に有機顔料として好ましいものの具体的な例を挙げる。
【0048】
黒色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック9、C.I.ピグメントブラック20等が挙げられる。
【0049】
藍色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー24:1、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー64、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80などが挙げられる。
【0050】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36などが挙げられる。
【0051】
赤色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド20、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド43、C.I.ピグメントレッド46、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド48:6、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド52、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド53:2、C.I.ピグメントレッド53:3、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:3、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド63:3、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド89、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド181、C.I.ピグメントレッド182、C.I.ピグメントレッド183、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド251、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド257、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド263、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド271、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド279、などが挙げられる。
【0052】
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット19(γ型、β型)、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット31、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントバイオレット50、などが挙げられる。
【0053】
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメント、イエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185およびC.I.ピグメントイエロー213等が挙げられる。
【0054】
橙色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ37、C.I.ピグメントオオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、又はC.I.ピグメントオレンジ74などが挙げられる。
【0055】
茶色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、又はC.I.ピグメントブラウン26などが挙げられる。
【0056】
中でも、好ましい顔料として、黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック7、
藍色顔料としてC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、
緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン7、
赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、
紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、
黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、
橙色顔料としてC.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、
等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも一種または二種以上を使用することが好ましい。
【0057】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0058】
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0059】
前記顔料は、リキッド印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ総質量に対して1~60質量%、インキ中の固形分重量比では10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0060】
本発明のリキッド印刷インキでは更に必要に応じて、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
例えば前記体質顔料としてシリカを適量添加すれば、より耐摩擦性が向上する傾向となる。
【0061】
本発明のリキッド印刷インキは、バインダー樹脂、顔料などを有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。具体的には、顔料をバインダー樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0062】
前記顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0063】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、バインダー樹脂、顔料、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0064】
(印刷物及び積層体)
本発明のリキッド印刷インキを任意の基材に印刷することで印刷物を得る。本発明で使用する基材としては特に限定は無くグラビア・フレキソ印刷分野で通常使用されている紙もしくはプラスチック基材、食品包装分野で使用される軟包装基材を使用すればよい。例えば紙であれば、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等の包材・パッケージ等の印刷に用いられる上質紙、クラフト紙、純白ロール紙、グラシンペーパー、パーチメント紙、マニラボール、白ボール、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙、ポリエチレンコート紙等の紙、各種合成紙、等が挙げられる。
【0065】
フィルム基材は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。
基材フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
【0066】
また、フィルム基材として、バイオマス由来成分を含有する材料で形成させたフィルムを使用するのも好ましい。バイオマスフィルムは各社から販売されているほか、例えば、一般財団法人日本有機資源協会に記載のバイオマス認定商品一覧に挙げられるようなシートを使用することができる。
【0067】
具体的によく知られているフィルムは、バイオマス由来のエチレングリコールを原料としたものである。バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
【0068】
あるいは、ISO16620またはASTMD6866で規定されたバイオマスプラスチック度で区別されたバイオマス原料を使用したものも流通している。大気中では1012個に1個の割合で放射性炭素14Cが存在し、この割合は大気中の二酸化炭素でも変わらないので、この二酸化炭素を光合成で固定化した植物の中でも、この割合は変わらない。このため、植物由来樹脂の炭素には放射性炭素14Cが含まれる。これに対し、化石燃料由来樹脂の炭素には放射性炭素14Cがほとんど含まれない。そこで、加速器質量分析器で樹脂中の放射性炭素14Cの濃度を測定することにより、樹脂中の植物由来樹脂の含有割合、すなわちバイオマスプラスチック度を求めることができる。ISO16620またはASTM D6866で規定されたバイオマスプラスチック度が80%以上、好ましくは90%以上であるバイオマスプラスチックである植物由来の低密度ポリエチレンとしては、例えば、Braskem社製の商品名「SBC818」「SPB608」「SBF0323HC」「STN7006」「SEB853」「SPB681」等が挙げられ、これらを原料として使用したフィルムを好適に使用することができる。
【0069】
例えば、従来の石油系原料を使用したポリエチレンテレフタレートフィルムの代替として、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステル、バイオマスポリエチレンテレフタレート等を含有するフィルムが知られている。
バイオマスポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。
また、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物等の第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルであっても良い。
【0070】
また、例えば、従来の石油系原料を使用したポリオレフィン系フィルムの代替として、バイオマス由来のエチレングリコールを原料とするポリエチレン系樹脂を含有するバイオマスポリエチレン系フィルム、バイオマスポリエチレン-ポリプロピレン系フィルム等のバイオマスポリオレフィン系フィルムも知られている。
ポリエチレン系樹脂は、原料の一部に前記バイオマス由来のエチレングリコールを使用する以外は特に限定されず、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンとα-オレフィンとの共重合体(エチレン単位を90質量%以上含有するエチレン-α-オレフィン共重合体)などが挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を構成するα-オレフィンは特に限定されず、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテンなどの炭素原子数4乃至8のα-オレフィンが挙げられる。低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などの公知のポリエチレン樹脂を用いることができる。
その中でも、フィルム同士が擦れても、穴開きや破けなどの損傷を一段と生じにくくする観点から、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(エチレンと1-ヘキセンとの共重合体、又はエチレンと1-オクテンとの共重合体)が好ましく、密度が0.910乃至0.925g/cm3である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。
【0071】
また、バイオマス原料であるデンプンや、ポリ乳酸を配合したフィルムやシートも知られている。これらは用途に応じて適宜選択し使用することができる。
【0072】
バイオマスフィルムは、複数のバイオマスフィルムを積層させた積層体であってもよいし、従来の石油系フィルムとバイオマスフィルムとの積層体であってもよい。またこれらのバイオマスフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。
基材フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
【0073】
(集積包装用フィルム)
本発明のリキッド印刷インキは、特に、集積包装用フィルムとして使用される熱収縮フィルムに対する印刷インキに適する。
熱収縮フィルムに使用される樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリ乳酸系樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂から選択される1種、又は2種以上の混合物が例示できる。これらのうち、シュリンク特性等の観点からポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の樹脂フィルムが使用されることが多い。本発明のリキッド印刷インキは、特にポリオレフィン系樹脂に対しての密着性が良好であることから、ポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましく、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を用いることが特に好ましい。
また、前述のバイオマスポリエチレンテレフタレート系樹脂等を使用したバイオマスポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム等のバイオマスポリエステル樹脂フィルム、前述のバイオマスポリエチレン系樹脂等を使用したバイオマスポリエチレン系樹脂フィルム等のバイオマスポリオレフィン樹脂フィルムを使用してもよく好ましい。
熱収縮性フィルムは、単層フィルムであってもよく、複数の層を有する多層フィルムであってもよい。多層フィルムの場合、裏面を構成する層としてヒートシール層を有していてもよい。
【0074】
熱収縮フィルムの厚みは、特に限定されないが、強度や剛性、シュリンク特性、経済性等の観点から、好ましくは5~120μm、より好ましくは7~100μm、特に好ましくは10~80μmである。熱収縮フィルムは、本発明のリキッド印刷インキの印刷層を透視可能とすべく、透明(無色透明又は有色透明)であることが好ましく、無色透明であることがより好ましい。
【0075】
熱収縮フィルムは、良好な熱収縮性を発現するために、少なくとも一方向に延伸(一軸延伸)されていることが好ましく、二軸延伸されていることが特に好ましい。延伸温度は、フィルムを構成する樹脂の種類によっても異なるが、例えば60~130℃である。延伸倍率は、一軸延伸フィルムの場合は主延伸方向に、二軸延伸フィルムの場合は一方向及び当該一方向に直交する他方向共に、2~8倍程度であることが好ましい。延伸方式は、ロール方式、テンター方式、チューブ方式等を使用できる。
【0076】
熱収縮フィルムの熱収縮率は、一軸延伸フィルムの場合は主延伸方向に対して、二軸延伸フィルムの場合は両方向(一方向及び他方向)に対して20%以上であり、好ましくは30~80%、特に好ましくは40~80%である(加熱処理条件:90℃の温水に10秒間浸漬)。一軸延伸フィルムの場合は、主延伸方向に直交する方向に対しては、好ましくは-3~15%、より好ましくは-1~10%、特に好ましくは-1~5%である(加熱処理条件:同上)。
【0077】
また必要に応じて、熱収縮フィルム上に印刷を容易にするためのインキ受容層を設けていても構わない。
本発明のリキッド印刷インキは、前述の通り、特にコロナ放電処理を行っていない二軸延伸ポリプロピレンフィルムであっても、密着性や耐ブロッキング性が良化し、本発明の効果を最大限に発揮することができる。
【実施例】
【0078】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。また、有機溶剤以外は固形分量を示す。
【0079】
〔実施例1〕
塩素化ポリオレフィン樹脂である塩素化ポリプロピレン樹脂としてはトルエン溶剤を含む固形分30%の市販品を用いてその固形分7部、塩化ビニル系樹脂の固形分5部、カーボンブラック(オリオネンジニアドカーボンズ社製)10部、ロジン変性マレイン酸樹脂としてNEOCITE F-896(江南化成株式会社)2部、ポリエチレンワックス(岐阜セラツク社製)3部、リン脂質として大豆油由来のJレシチンCL(CAS No.8002-43-5、(株)J-オイルミルズ社製)2.5部、有機溶剤としてトルエンを47部、酢酸エチル15部、イソプロピルアルコール5部、メチルエチルケトン5部、の計101.5部を練肉した墨リキッド印刷インキを作製した。
【0080】
〔実施例2、3、比較例1、2〕
表1に示した配合に従って、実施例1と同様の手順にて墨リキッド印刷インキを作製した。
【0081】
〔フィルム印刷物の製造方法 その1〕
表1に記載のインキを、基材1:コロナ放電処理を行わない二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ15μm)にバーコーター#10で塗布し、24時間放置して実施例1~3、比較例1、2の印刷物を作成した。
【0082】
〔フィルム印刷物の製造方法 その2〕
表1に記載のインキを、基材2:コージンバイオポリセット(興人フィルム&ケミカルズ製のバイオマス収縮フィルム、厚さ15μm)にバーコーター#10で塗布し、24時間放置して実施例1~3、比較例1、2の印刷物を作成した。
【0083】
〔密着性〕
作成した印刷物の印刷面にセロファンテープ(ニチバン社製)を貼り付けた後、素早くテープを引き剥がし、印刷面の状態を目視評価した。
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、25%未満がフィルムから剥離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、25%以上、50%未満がフィルムから剥離する。
2:印刷皮膜の面積比率として、50%以上、75%未満がフィルムから剥離する。
1:印刷面の面積比率として、75%以上がフィルムから剥離ウする。
【0084】
〔耐もみ性〕
作成した印刷物のインキ面を合わせ5往復もみ、インキとられの状態を目視評価した。
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、25%未満がフィルムから剥離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、25%以上、50%未満がフィルムから剥離する。
2:印刷皮膜の面積比率として、50%以上、75%未満がフィルムから剥離する。
1:印刷面の面積比率として、75%以上がフィルムから剥離する。
【0085】
〔耐スクラッチ性〕
作成した印刷物のインキ面を爪で20往復擦り、インキとられの状態を目視評価した。
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、25%未満がフィルムから剥離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、25%以上、50%未満がフィルムから剥離する。
2:印刷皮膜の面積比率として、50%以上、75%未満がフィルムから剥離する。
1:印刷面の面積比率として、75%以上がフィルムから剥離する。
【0086】
〔耐ブロッキング性〕
作成した印刷物のインキ面を合わせ、ブロッキングテスターにて圧:0.5MPa、温度:40℃、湿度:80%の条件で1日放置、試験後表面の剥がれ性、状態を評価した。
(評価基準)
5:印刷面同士を剥がす際、抵抗なく剥がれ、表面も特に問題ない。
4:印刷面同士を剥がす際、若干抵抗があるが、表面は特に問題ない。
3:印刷面同士を剥がす際、抵抗があり、表面も若干くっついているのがわかる。
2:印刷面同士を剥がす際、かなり抵抗があり、表面もくっついているのがわかる。
1:印刷面同士を剥がす際、くっついて剥がれない。
【0087】
各墨リキッド印刷インキの配合、及び評価結果を表1に示す。
尚、表中の空欄は未配合を示す。
【0088】
【0089】
以上の結果から、本発明のリキッド印刷インキは、ポリオレフィン樹脂フィルム等の熱収縮フィルムに対し優れた密着性、耐もみ性、耐スクラッチ性及び耐ブロッキング性を兼備した結果となった。