(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-20
(45)【発行日】2025-12-01
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
A41D 27/00 20060101AFI20251121BHJP
A41D 27/10 20060101ALI20251121BHJP
A41B 9/06 20060101ALI20251121BHJP
【FI】
A41D27/00 C
A41D27/00 Z
A41D27/10 D
A41B9/06 D
(21)【出願番号】P 2025562202
(86)(22)【出願日】2025-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2025037183
【審査請求日】2025-10-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 志栞
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135938(JP,A)
【文献】特開2019-148017(JP,A)
【文献】特開2013-159875(JP,A)
【文献】特開2007-016382(JP,A)
【文献】特許第7716795(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/00
A41D 27/10
A41B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後身頃と、
前身頃と、
袖ぐりを形成する左右一対の袖ぐり部と、
前記前身頃の裏側に重なり配置されるブラジャー部と、
を備え、
前記後身頃は、
左右一対の肩甲骨の間に配置され、身生地と、身生地に比べて縦編みの生地を縦編みの向きのまま使用することで左右方向の伸縮率が低く各前記肩甲骨の左右内側縁に沿って形成されたパワーネットと、が重ねられた後身頃上部と、
上縁が前記後身頃上部の下縁に接合され、身生地のみで構成された後身頃下部と、
を有し、
前記前身頃は、身生地のみで構成され、左端縁及び右端縁の各々が前記後身頃の左端縁及び右端縁の各々に接合し、
前記前身頃と前記後身頃とを重ねて平らに拡げた状態において、前記前身頃の左端縁部及び右端縁部は、後方に折り返され、
各前記袖ぐり部は、
身生地と、縦編みの生地を縦編みの向きのまま使用することで左右方向と比較して上下方向の伸縮率の高いパワーネットと、が重ねられており、且つ、各々が前記後身頃上部における前記肩甲骨の左右内側縁に沿うように形成された左右両側縁に接合されることで、各前記肩甲骨を後方に引き寄せる引き寄せ作用を発揮する袖ぐり後上部と、
身生地のみで構成され、上縁が前記袖ぐり後上部の下縁に接合する袖ぐり後下部と、
身生地のみで構成され、上縁が前記袖ぐり後上部の上縁に接合して身生地の伸縮性を利用することにより前記袖ぐり後上部における前記引き寄せ作用が阻害されることを防ぐ袖ぐり前上部と、
一枚の身生地を折り重ねて二重にしてパイピング処理を施さない折り山を折り返し部として形成し、前記折り返し部を着用者の腋側に配置し、前記折り返し部と反対側を前記着用者の首側に配置し、上縁が前記袖ぐり前上部の下縁に接合し、下縁が前記前身頃に接合する袖ぐり前下部と、
を有し、
前記袖ぐり後上部と、前記袖ぐり後下部と、前記袖ぐり前上部と、前記袖ぐり前下部とは、それぞれが別個のパーツであり、
各前記袖ぐり部の下端部は、前記袖ぐり前下部の前記折り返し部を前記袖ぐり後下部の裏側に、縫製による接合をせずに重ねて形成され、
前記ブラジャー部は、
左右一対のカップ部と、
前記カップ部の外周縁に接合され前記カップ部を囲むように拡がり、上端縁、左端縁及び右端縁が前記前身頃に接合された連結部と、
前記連結部の下端縁に沿って左右方向に帯状に延びた弾性部と、
を有し、
前記弾性部の左端縁及び右端縁の各々は、前記後身頃上部の下端部の左端縁及び右端縁の各々に接合され、
前記後身頃上部の伸縮率をA、前記袖ぐり後上部の伸縮率をB、前記袖ぐり前下部の伸縮率をC、前記袖ぐり前上部の伸縮率をD、前記袖ぐり後下部の伸縮率をEとした場合、式1を満たし、
前記着用者が着用した際、左右方向と比較して上下方向の伸縮率が高いパワーネットが配置されている伸縮率Bの前記袖ぐり後上部は、縦方向に伸長する度合いが横方向よりも大きく、
身生地のみで構成され、且つ、身生地を二枚重ねて構成された伸縮率Cの前記袖ぐり前下部に連なる伸縮率Dの前記袖ぐり前上部は、前記袖ぐり前下部によって下縁が固定されつつ、前記袖ぐり前上部よりも伸縮率が低く上下方向に伸びた前記袖ぐり後上部が元の状態に戻ろうとする力に牽引され、身生地の伸縮性を利用して背面側に牽引されることにより、前記袖ぐり後上部及び前記袖ぐり前下部と比較して大きく伸長して前記袖ぐり後上部の前記引き寄せ作用が阻害されることを防ぎ、
前記袖ぐり後下部の伸縮率Eが伸縮率A、B、Cよりも高いことによって、前記袖ぐり後上部が前記引き寄せ作用を発揮しても、前記袖ぐり後下部は前記袖ぐり前下部、前記袖ぐり後上部と比較して大きく伸長することで、腋部への局所的圧迫を低減し、前記着用者の腋への食い込みを抑制する衣類。
A=B<C<D=E・・・式1
【請求項2】
前記前身頃と前記後身頃とを重ねて平らに拡げた状態において、前記袖ぐり部の前側の外縁は、後側の外縁よりも左右方向外側に位置している請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記袖ぐり前下部と、前記前身頃との接合部は、襟ぐりから左右方向外側下方に向けて延びている請求項1又は請求項2に記載の衣類。
【請求項4】
前記後身頃上部及び袖ぐり後上部のパワーネットは、縦方向よりも横方向のほうが伸び難い請求項1又は請求項2に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の衣類を開示している。この衣類は、パワーネットによって構成された一対の肩ストラップが背中の左右中央部で重なるようにバック部に連続しており、これによって、姿勢補正効果を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなクロス形状の肩紐の場合、食い込みが生じ、その不快感から姿勢に対する意識が向かなくなってしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、着心地を良好にしながら姿勢補正効果を高め得る衣類を提供することを目的とし、特に袖無し構成においても十分な効果を発揮できる衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る衣類は、後身頃と、前身頃と、袖ぐりを形成する左右一対の袖ぐり部と、前記前身頃の裏側に重なり配置されるブラジャー部と、を備え、前記後身頃は、左右一対の肩甲骨の間に配置され、身生地と、身生地に比べて縦編みの生地を縦編みの向きのまま使用することで左右方向の伸縮率が低く各前記肩甲骨の左右内側縁に沿って形成されたパワーネットと、が重ねられた後身頃上部と、上縁が前記後身頃上部の下縁に接合され、身生地のみで構成された後身頃下部と、を有し、前記前身頃は、身生地のみで構成され、左端縁及び右端縁の各々が前記後身頃の左端縁及び右端縁の各々に接合し、前記前身頃と前記後身頃とを重ねて平らに拡げた状態において、前記前身頃の左端縁部及び右端縁部は、後方に折り返され、各前記袖ぐり部は、身生地と、縦編みの生地を縦編みの向きのまま使用することで左右方向と比較して上下方向の伸縮率の高いパワーネットと、が重ねられており、且つ、各々が前記後身頃上部における前記肩甲骨の左右内側縁に沿うように形成された左右両側縁に接合されることで、各前記肩甲骨を後方に引き寄せる引き寄せ作用を発揮する袖ぐり後上部と、身生地のみで構成され、上縁が前記袖ぐり後上部の下縁に接合する袖ぐり後下部と、身生地のみで構成され、上縁が前記袖ぐり後上部の上縁に接合して身生地の伸縮性を利用することにより前記袖ぐり後上部における前記引き寄せ作用が阻害されることを防ぐ袖ぐり前上部と、一枚の身生地を折り重ねて二重にしてパイピング処理を施さない折り山を折り返し部として形成し、前記折り返し部を着用者の腋側に配置し、前記折り返し部と反対側を前記着用者の首側に配置し、上縁が前記袖ぐり前上部の下縁に接合し、下縁が前記前身頃に接合する袖ぐり前下部と、を有し、前記袖ぐり後上部と、前記袖ぐり後下部と、前記袖ぐり前上部と、前記袖ぐり前下部とは、それぞれが別個のパーツであり、各前記袖ぐり部の下端部は、前記袖ぐり前下部の前記折り返し部を前記袖ぐり後下部の裏側に、縫製による接合をせずに重ねて形成され、前記ブラジャー部は、左右一対のカップ部と、前記カップ部の外周縁に接合され前記カップ部を囲むように拡がり、上端縁、左端縁及び右端縁が前記前身頃に接合された連結部と、前記連結部の下端縁に沿って左右方向に帯状に延びた弾性部と、を有し、前記弾性部の左端縁及び右端縁の各々は、前記後身頃上部の下端部の左端縁及び右端縁の各々に接合され、前記後身頃上部の伸縮率をA、前記袖ぐり後上部の伸縮率をB、前記袖ぐり前下部の伸縮率をC、前記袖ぐり前上部の伸縮率をD、前記袖ぐり後下部の伸縮率をEとした場合、式1を満たし、前記着用者が着用した際、左右方向と比較して上下方向の伸縮率が高いパワーネットが配置されている伸縮率Bの前記袖ぐり後上部は、縦方向に伸長する度合いが横方向よりも大きく、身生地のみで構成され、且つ、身生地を二枚重ねて構成された伸縮率Cの前記袖ぐり前下部に連なる伸縮率Dの前記袖ぐり前上部は、前記袖ぐり前下部によって下縁が固定されつつ、前記袖ぐり前上部よりも伸縮率が低く上下方向に伸びた前記袖ぐり後上部が元の状態に戻ろうとする力に牽引され、身生地の伸縮性を利用して背面側に牽引されることにより、前記袖ぐり後上部及び前記袖ぐり前下部と比較して大きく伸長して前記袖ぐり後上部の前記引き寄せ作用が阻害されることを防ぎ、前記袖ぐり後下部の伸縮率Eが伸縮率A、B、Cよりも高いことによって、前記袖ぐり後上部が前記引き寄せ作用を発揮しても、前記袖ぐり後下部は前記袖ぐり前下部、前記袖ぐり後上部と比較して大きく伸長することで、腋部への局所的圧迫を低減し、前記着用者の腋への食い込みを抑制する。A=B<C<D=E・・・式1
【0007】
本発明に係る衣類は、パワーネットを有した後身頃上部によって着用者の左右一対の肩甲骨の間の背中を覆い、後身頃上部のパワーネットは各肩甲骨の左右内側縁に沿っており、且つ前身頃、袖ぐり前上部、及び袖ぐり前下部が身体にフィットする構成である。これにより、パワーネットを有した後身頃上部及び袖ぐり後上部は、着用者の背中にフィットし、左右一対の肩甲骨の間に位置する後身頃上部の左右方向の伸縮率が低いパワーネットによって左右一対の肩甲骨を左右方向中央に引き寄せ、且つ、後身頃上部における各肩甲骨の左右内側縁に対して沿うように形成された左右両側縁に縫製によって接合されるパワーネットを有した袖ぐり後上部によって、肩甲骨全体を後方に引き寄せる引き寄せ作用を発揮して、肩が前方に出てしまう姿勢、所謂、猫背及び巻き肩を改善する効果を高めることができる。また、パワーネットを有した袖ぐり後上部を身生地のみの袖ぐり前上部及び袖ぐり後下部で挟み込むように接合する構成なので、パワーネットを有した袖ぐり後上部を着用者の背中にしっかり接触させつつ、袖ぐり前上部及び袖ぐり後下部によって肌当たりの感触を柔軟にすることができる。加えて、袖ぐり部の下端部は、袖ぐり前下部の折り返し部を袖ぐり後下部の裏側に、縫製による接合をせずに重ねて形成された構成なので、縫製による接合をされて重なる場合に比べて、縫い目が着用者の腋にあたらず柔らかい感触にすることができ、且つ、袖ぐり部に柔軟性を付与することができるため、ぴったりとした着用感の中でも腕の可動域を広げることができる。また、弾性部の左端縁及び右端縁の各々をパワーネットを有した後身頃上部の下端部の左端縁及び右端縁の各々に接合する構成なので、弾性部を更に後身頃に設けずとも後身頃上部のパワーネットがブラジャーの後身頃側のアンダーの代わりとなるため、余計な部材の削減が可能である。また、弾性部を後身頃にも設ける場合に比べ、余計な部材による締め付けがないため不快感が低減でき、着用者に対し、より姿勢矯正に対する意識を向けさせることが可能となる。ここで、伸縮率とは、所定の外形に裁断された試験対象を伸長方向に所定の外力を付与して伸長させた寸法を、伸長前の寸法で除した値である。例えば、伸縮率が低いほど試験対象が伸長し難いことを示し、伸縮率が高いほど試験対象が伸長し易いことを示す。
【0008】
したがって、本発明に係る衣類は、着心地を良好にしながら姿勢補正効果を高め、特に袖無し構成においても十分な効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る衣類であって、平らに広げた状態を示す正面図である。
【
図2】実施例1に係る衣類であって、平らに広げた状態を示す背面図である。
【
図3】実施例1に係る衣類であって、裏側を表に返したものを平らに広げた状態を示す正面図である。
【
図4】実施例1に係る衣類であって、着用者が着用したように膨らませた状態を斜め前方から見た斜視図である。
【
図5】実施例1に係る衣類を平らに広げた正面図であって、各部の寸法の引き出し位置、及びこの衣類を着用した際の着用者の肩関節の位置を示す。
【
図6】実施例1に係る衣類を平らに広げた背面図であって、各部の寸法の引き出し位置、及びこの衣類を着用した際の着用者の肩甲骨の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
本発明に係る衣類を、前記前身頃と前記後身頃とを重ねて平らに拡げた状態において、前記袖ぐり部の前側の外縁は、後側の外縁よりも左右方向外側に位置し得る。これにより、着用者の腕を通す袖ぐり(アームホール)が背面側に開いた形状となり、猫背の姿勢を着用者がとることを抑制しつつ着用者の肩関節における後向きの動作がし易く、且つ、巻き肩を改善する効果を高めることができる。
【0011】
本発明に係る衣類において、前記袖ぐり前下部と、前記前身頃との接合部は、襟ぐりから左右方向外側下方に向けて延び得る。この場合、衣類の接合部は着用者の肩関節よりも下方に配置されるため、接合部によって着用者の肩関節の前方向への動作を妨げ難くする効果が期待できる。
【0012】
本発明に係る衣類において、前記後身頃上部及び袖ぐり後上部のパワーネットは、縦方向よりも横方向のほうが伸び難いことが好ましい。この場合、肩甲骨を後方に引き寄せる引き寄せ作用を高め、巻き肩を改善する効果をより高めるとともに、肩甲骨を左右方向中央に引き寄せるため、猫背の姿勢を着用者がとることを抑制することができる。
【0013】
なお、本発明に係る衣類における各方向は、起立状態において衣類を正規に着用した着用者から見た方向を基準としている。各図に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれ前後方向、左右方向、及び上下方向を表す。各図に示すX軸、Y軸、及びZ軸において、各軸の正方向は、それぞれ前方、左方、及び上方である。また、衣類における表側、裏側とは、衣類を正規に着用した際の着用者側が裏側、その反対側が表側である。
【0014】
<実施例1>
次に、本発明を具体化した実施例1の衣類1について、図面を参照しつつ説明する。実施例1に係る衣類1は、裁断した複数の生地を縫製によって接合して形成されている。衣類1はいわゆるインナーウェアとして着用され得るものであり、伸縮性、柔軟性を有する。衣類1は、着用者に正規に着用されることによって、着用者の上半身を覆い得る。衣類1は、着用することによって各部が伸長した状態になり得る。この状態において、衣類1は、収縮しようとする収縮力を生じ、着用者の身体部位のうちの少なくとも肩部、胸部、及び腹部等の部位や身体部位の動きに追従して密着する。
【0015】
図1から
図3に示すように、衣類1は、前身頃10と、後身頃20と、左右一対の袖ぐり部30と、ブラジャー部40(
図3参照)と、を備えている。衣類1は、Uネック形状の衣類である。衣類1は、左右方向において略対称な形状である。
【0016】
前身頃10は、一枚の身生地Bfのみで構成されている。前身頃10は、横編みの身生地Bfである。前身頃10は、縦方向の伸縮性よりも横方向の伸縮性のほうが大きくなるように裁断した身生地Bfを用いている。言い換えると、前身頃10は、縦方向よりも横方向のほうが伸び易い。身生地Bfは、衣類1の主たる構成部分を形成する生地であり、衣類1の最表層の生地であり、後述するパワーネットPとは異なる生地である。身生地Bfは、伸縮性があり、衣類1で覆われた着用者の体全体(肩部、胸部、腹部)や身体部位の動きに追従して密着する。前身頃10は、下縁10Aと、下縁10Aの左右両端から立ち上がる左右一対の側縁10B(
図2参照)と、各側縁10Bの上端から上向き且つ左右中央に向けて傾斜する一対の傾斜縁10Cと、各傾斜縁10Cの上端同士を繋ぐ上縁10Dと、を有している。前身頃10における各傾斜縁10Cの下方には、各傾斜縁10Cに沿うようにバストダーツ10Fが形成されている。
【0017】
後身頃20は、
図2に示すように、後身頃下部21と、後身頃上部22と、を有している。後身頃下部21は、後身頃20の下部を構成している。後身頃下部21の外形形状は、下縁21Aと、下縁21Aの左右方向両端から立ち上がる左右一対の側縁21Bと、各側縁21Bの上端同士を繋ぐ上縁21Cとによって囲まれた略矩形状である。後身頃下部21は、一枚の横編みの身生地Bfのみで構成されている。後身頃下部21は、縦方向の伸縮性よりも横方向の伸縮性のほうが大きくなるように裁断された身生地Bfを用いている。言い換えると、後身頃下部21は、縦方向よりも横方向のほうが伸び易い。
【0018】
後身頃上部22は、後身頃下部21と同じ一枚の横編みの身生地Bfと、身生地Bfの裏側(着用者側)に重ねられたパワーネットP(
図1、
図4参照)と、によって構成されている。後身頃上部22は、縦方向の伸縮性よりも横方向の伸縮性のほうが大きくなるように裁断された身生地Bfを用いている。
図1、
図4において、パワーネットPは、網掛けのハッチングにて表現した部分である。パワーネットPは、弾性糸を含む編地からなる高伸縮性部材である。パワーネットPは、通気性に優れたメッシュ生地である。パワーネットPは、身生地Bfに比べて伸縮率が低い。すなわち、伸長させるように所定の外力を付与した場合、パワーネットPは、身生地Bfに比べて伸長する度合いが小さい。
【0019】
後身頃上部22におけるパワーネットPは、縦編みの生地を縦編みの向きのまま用いている。言い換えると、パワーネットPは、横方向(左右方向)の伸縮性よりも縦方向(上下方向)の伸縮性の方が高くなるように裁断されて身生地Bfに重ねられている。すなわち、パワーネットPは、左右方向の伸縮率が低くなるように身生地Bfに重ねられている。これにより、後身頃上部22は、横方向の伸縮性よりも縦方向の伸縮性の方が大きくなる。言い換えると、後身頃上部22は、縦方向よりも横方向の方が伸び難くなり、猫背の姿勢を着用者がとることを抑制しつつ、且つ、横方向よりも縦方向の方が伸び易いため、姿勢に追従し易い。
【0020】
後身頃上部22は、下縁22Aと、下縁22Aの左右方向両端から上向きに延びる左右一対の側縁22Bと、各側縁22Bの上端から左右方向中央に向けて膨らむように湾曲して上向きに延びる一対の第1湾曲縁22Cと、各第1湾曲縁22Cの上端に連なり、左右方向外向きに膨らむように湾曲して上向きに延びる一対の第2湾曲縁22Dと、一対の第2湾曲縁22Dの上端同士を繋ぐ上縁22Eと、を有している。後身頃上部22の下縁22Aと、後身頃下部21の上縁21Cとは、縫製によって接合されている。衣類1を着用者が着用した場合、後身頃上部22は、着用者の左右一対の肩甲骨Sの間に配置される(
図6参照)。具体的には、一の第1湾曲縁22Cと一の第2湾曲縁22DとがS字状に連なっており、一対の第1湾曲縁22C及び一対の第2湾曲縁22Dは、衣類1を着用した着用者における各肩甲骨Sの左右内側縁Hに沿っている(
図6参照)。すなわち、後身頃上部22における身生地Bf及びパワーネットPの左右両側縁は、衣類1を着用した着用者における各肩甲骨Sの左右内側縁Hに沿って形成されている(
図6参照)。
【0021】
前身頃10と後身頃20とは、左右の脇線11において縫製によって接合されている(
図2参照)。言い換えると、前身頃10の左右一対の側縁10B(左端縁及び右端縁)の各々は、後身頃20の左右一対の側縁21B及び左右一対の側縁22B(左端縁及び右端縁)の各々に接合されている。具体的には、前身頃10の一対の側縁10Bと、後身頃下部21の一対の側縁21B、及び後身頃上部22の一対の側縁22Bと、が突き合わされて、縫製によって接合されている。左右の脇線11は、それぞれ背面側に位置している。詳しくは、左右の脇線11は、前身頃10と後身頃20とを重ねて平らに拡げた状態において、後身頃20側に配置されている(
図2参照)。言い換えると、前身頃10の左端縁部及び右端縁部は、後方に折り返されている。衣類1を着用者が着用した状態において、左右の脇線11の上端は、着用者の腋よりも後方に位置する(
図4参照)。これによって、衣類1は、脇線11の縫合した部分が着用者の腋に触れないようにすることができ、着用した際に柔らかい感触にすることができる。
【0022】
左右一対の袖ぐり部30は、
図1、
図2に示すように、袖ぐり前上部31(
図1参照)と、袖ぐり前下部32(
図1参照)と、袖ぐり後上部33(
図2参照)と、袖ぐり後下部34(
図2参照)と、を有している。袖ぐり後上部33と、袖ぐり後下部34と、袖ぐり前上部31と、袖ぐり前下部32とは、それぞれが別個のパーツである。各袖ぐり部30は、袖ぐり35を形成している。袖ぐり35は、着用者の腕を通す、所謂、アームホールである。袖ぐり35の上端(袖ぐり前上部31と袖ぐり後上部33とが縫合された部分)は、着用者の肩関節Sjよりも左右方向内側(首寄り)に位置するように設定されている(
図6参照)。
【0023】
一対の袖ぐり前上部31は、一枚の身生地Bfのみで構成されている。袖ぐり前上部31は、伸縮性が高い向きを左右方向に向くように裁断した身生地Bfを用いている。袖ぐり前上部31の外形形状は、下縁31A、第1側縁31B、上縁31C、及び第2側縁31Dによって囲まれた略矩形状である。
【0024】
一対の袖ぐり前下部32は、一枚の身生地Bfを折り重ねて二重にしている。袖ぐり前下部32において折り返した折り山の部分は、折り返し部32Aであり、折り山が袖ぐり35側に沿うように配置されている。折り返し部32Aは着用者の腋側に配置され、折り返し部32Aと反対側は、着用者の首側に配置している。この折り山には、パイピング処理を施していない。これにより、袖ぐり部30の腋側にパイピング処理を施さない折り返し部32Aを配置することによって、生地が突っ張るような感触が生じ難くなる。つまり、袖ぐり部30は、着用者の腋への肌当たりをよくすることによって不快感を低減するとともに、パイピング処理による生地が突っ張るような感触が生じ難くなることによって腕の可動域を拡げることができる。また、衣類1を着用者が着用した場合、袖ぐり前下部32は、巻き肩の要因である大胸筋及び小胸筋を覆い、着用者が肩が前方に出てしまうような姿勢を取ろうとした際に袖ぐり前下部32の全面で大胸筋及び小胸筋を押さえることによって、肩が前に出ることを抑制することができる。
【0025】
袖ぐり前下部32は、伸縮性が高い向きを袖ぐり35に沿わせるように裁断した身生地Bfを用いている。袖ぐり前下部32の外形形状は、折り返し部32Aを斜辺とし、折り返し部32Aの下端から延びる下縁32Bと、折り返し部32Aの上端から延びる上縁32Cと、折り返し部32Aと反対側に位置して下縁32Bと上縁32Cとを繋ぐ側縁32Dとによって囲まれた略台形形状である。
【0026】
各袖ぐり前下部32は、側縁32Dを前身頃10の上縁10Dに一続きになるように配置して、下縁32Bを前身頃10の各傾斜縁10Cに突き合わせて、縫製によって接合されている。袖ぐり前下部32における、身生地Bfを折り返して折り山とした折り返し部32Aは、袖ぐり35の一部を形成している。
【0027】
各袖ぐり前上部31は、第1側縁31Bを各袖ぐり前下部32の側縁32Dに一続きになるように配置し、第2側縁31Dを各袖ぐり前下部32の折り返し部32Aに一続きになるように配置して、下縁31Aを袖ぐり前下部32の上縁32Cに突き合わせて、縫製によって接合されている。
【0028】
袖ぐり後上部33は、身生地Bfの裏側(着用者側)にパワーネットPを重ねて形成されている(
図4参照)。袖ぐり後上部33におけるパワーネットPは、縦編みの生地を縦編みの向きのまま用いている。言い換えると、パワーネットPは、横方向の伸縮性よりも縦方向の伸縮性の方が大きくなるように裁断されて身生地Bfに重ねられている。すなわち、パワーネットPは、左右方向の伸縮率が低くなるように身生地Bfに重ねられている。言い換えると、袖ぐり後上部33のパワーネットPは、左右方向と比較して上下方向の伸縮率が高い。これにより、袖ぐり後上部33は、横方向の伸縮性よりも縦方向の伸縮性の方が大きい。言い換えると、袖ぐり後上部33は、横方向よりも縦方向の方が伸び易くなり、着用者の肩甲骨Sを水平方向後方(真後ろ)に引き寄せる引き寄せ作用を発揮する。これにより、衣類1は、着用者の巻き肩を改善することができる。
【0029】
袖ぐり後上部33は、
図2に示すように、上下方向に延びた帯状である。具体的には、袖ぐり後上部33は、上下方向に延びる第1側縁33Aと、第1側縁33Aとともに上下方向に延びる第2側縁33Bと、第1側縁33Aの下端及び第2側縁33Bの下端同士を繋ぐ下縁33Cと、第1側縁33Aの上端から第2側縁33B側に向けて斜め上方に延びる上縁である第1上縁33Dと、第2側縁33Bの上端から第1側縁33A側に向けて斜め上方に延びて第1上縁33Dに繋がる第2上縁33Eと、を有している。
【0030】
一対の袖ぐり後上部33は、第1側縁33Aを各袖ぐり前上部31の第2側縁31Dに一続きになるように配置し(
図4参照)、第2上縁33Eを後身頃上部22の上縁22Eと、袖ぐり前上部31の第1側縁31Bに一続きになるように配置して、第2側縁33Bを後身頃上部22の一対の第2湾曲縁22Dに突き合わせて、縫製によって接合されている。つまり、袖ぐり後上部33の第2側縁33Bは、後身頃上部22における肩甲骨Sの左右内側縁Hに沿うように形成された左右両側縁に接合されている。そして、一対の袖ぐり後上部33は、第1上縁33Dを各袖ぐり前上部31の上縁31Cに突き合わせて(
図4参照)、縫製によって接合されている。これにより、袖ぐり後上部33は、後身頃上部22と同様の身生地BfとパワーネットPとの二枚構成であっても、別パーツで構成され後身頃上部22との縫い目があることによって後身頃上部22とは機能を切り替えることが可能となり、後身頃上部22と一枚の生地で連続しているものや、一枚の生地に部分的にパワーネット等が縫い付けられているものとは異なる効果を発揮することができる。
【0031】
一対の袖ぐり後下部34は、一枚の身生地Bfのみで構成されている。袖ぐり後下部34は、伸縮性が高い向きを袖ぐり35に沿わせるように裁断した身生地Bfを用いている。袖ぐり後下部34の外形形状は、側縁34Aと、側縁34Aの上端から斜め下向きに傾斜して延びる上縁34Bと、側縁34Aの下端から斜め上向きに傾斜して延びて上縁34Bに繋がる下縁34Cと、によって囲まれた略三角形状である。
【0032】
一対の袖ぐり後下部34は、側縁34Aを各袖ぐり後上部33の第1側縁33Aに一続きになるように配置して、上縁34Bを各袖ぐり後上部33の下縁33Cに突き合わせて、縫製によって接合されている。そして、一対の袖ぐり後下部34は、下縁34Cを後身頃上部22の一対の第1湾曲縁22Cと、前身頃10の一対の傾斜縁10Cと、に突き合わせて、縫製によって接合されている。脇線11は、袖ぐり後下部34の下縁34Cの途中に接続されている。
【0033】
袖ぐり前上部31の第2側縁31D、袖ぐり後上部33の第1側縁33A、袖ぐり後下部34の側縁34Aは、
図4に示すように、1つのバイアステープ50によってパイピング処理をされている。バイアステープ50は、身生地Bfを折り返して形成したものである。
【0034】
袖ぐり部30の下端部は、袖ぐり前下部32の折り返し部32Aを、袖ぐり後下部34の裏側(着用者側)に縫製による接合をせずに重ねて形成している。具体的には、袖ぐり前下部32の下縁32Bの下端部、及び袖ぐり後下部34の下縁34Cの下端部は、前身頃10の傾斜縁10Cに対して縫製によって接合されているが、袖ぐり前下部32の下縁32Bの下端部よりも上方(すなわち、折り返し部32A)、及び袖ぐり後下部34の下縁34Cの下端部よりも上方は、互いに縫製によって接合されておらず、単に重なっているだけである。このため、腕の可動域が広がり、着脱をし易くすることができる。また、着用者の腋には、バイアステープ50が接触しないようにパイピング処理を施していない折り返し部32Aが接触し、袖ぐり前下部32の折り返し部32Aの下端部より上方、及び袖ぐり後下部34の下縁34Cの下端部よりも上方は縫製によって接合されていない。このため、袖ぐり部30は、柔らかい感触にすることができ、着用者の腋への食い込みによる不快感が抑えられ、着用者に対して、より姿勢矯正に対する意識を向けさせることが可能となる。
【0035】
また、袖ぐり部30の袖ぐり前上部31は、伸縮性が高い身生地Bfのみで構成されており、且つ、袖ぐり後上部33よりも伸縮性が高い。これにより、袖ぐり前上部31に対し、袖ぐり35に沿う向きに伸長する力が付与された際、袖ぐり前上部31に袖ぐり後上部33よりも伸縮性が同等か低い、もしくは伸縮性が全くない生地を使用した場合に比べ、伸縮性を有する。このため、袖ぐり後上部33における着用者の肩甲骨Sを水平方向後方(真後ろ)に引き寄せる引き寄せ作用が発揮されている際、袖ぐり前上部31は、身生地Bfの伸縮性を利用することにより袖ぐり後上部33による引き寄せ作用を阻害することを防ぎ、引き寄せ作用を強める効果が期待できる。
【0036】
袖ぐり35は、布地が二枚重なった部分(袖ぐり前下部32、袖ぐり後上部33)と、一枚の布地のみの部分(袖ぐり前上部31、袖ぐり後下部34)とが、周方向に交互に並んで連なっており、袖ぐり前下部32、袖ぐり前上部31、袖ぐり後上部33、及び袖ぐり後下部34の順に連なり縫製によって接合されている。これにより、袖ぐり部30は、姿勢サポートに必要な伸縮率を備えつつ、着用者に対する締め付け感を和らげ、着脱もし易くすることが可能である。
【0037】
衣類1は、
図1に示すように、前身頃10の上縁10D、一対の袖ぐり前下部32の側縁32D、一対の袖ぐり前上部31の第1側縁31B、一対の袖ぐり後上部33の第2上縁33E、及び後身頃上部22の上縁22Eによって、襟ぐり36を形成している。襟ぐりとは、衣類に形成された着用者の頭部を通す開口である。前身頃10の上縁10D、一対の袖ぐり前下部32の側縁32D、一対の袖ぐり前上部31の第1側縁31B、一対の袖ぐり後上部33の第2上縁33E、及び後身頃上部22の上縁22Eは、1つのバイアステープ51によってパイピング処理をされている。バイアステープ51は、バイアステープ50と同様に、身生地Bfを折り返して形成したものである。
【0038】
各袖ぐり部30は、
図2に示すように、前身頃10と後身頃20とを重ねて平らに拡げた状態において、袖ぐり前上部31及び袖ぐり前下部32の外縁(第2側縁31D及び折り返し部32Aであり前側の外縁)は、袖ぐり後上部33及び袖ぐり後下部34の外縁(第1側縁33A及び側縁34Aであり後側の外縁)よりも左右方向外側に位置している。すなわち、袖ぐり35は、後向きに開口している。これにより、衣類1は、袖ぐり後上部33のパワーネットPにおける肩を水平方向後方(真後ろ)に引き寄せる引き寄せ作用を発揮して巻き肩を改善する効果と相まって、より肩を後方に導き易くなり、巻き肩を改善することができる。更に、衣類1は、後身頃上部22のパワーネットPにおける着用者の肩が前方に出てしまう姿勢を着用者がとることを抑制する効果と相まって、より肩が前に出る姿勢を取り難くすることができ、着用者の姿勢改善が可能となる。
【0039】
図1に示すように、各袖ぐり前下部32の下縁32Bと、前身頃10の各傾斜縁10Cとを接合した部分を接合部Jと定義する。各接合部Jは、襟ぐり36から左右方向外側下方に向けて傾斜して延びている。これにより、各接合部Jは、着用者の肩関節Sjに重ならないようにする(
図5参照)ことができ、腕の前向きの動きが接合部Jによって妨げないようにすることができる。袖ぐり前下部32は、着用者が肩が前方に出てしまうような姿勢を取ろうとした際に袖ぐり前下部32の裏側(着用者側)の全面で大胸筋及び小胸筋を押さえることによって肩が前に出ることを抑制するが、接合部Jが着用者の肩関節Sjに重ならないようにして腕の前向きの動きを妨げないので、衣類1を着用した際の着用者における動き易さを損なわない。
【0040】
後身頃上部22における伸縮率をA(以下単に、Aともいう)とし、袖ぐり後上部33における伸縮率をB(以下単に、Bともいう)とする。後身頃上部22及び袖ぐり後上部33は、一枚の身生地Bfと、一枚のパワーネットPとが重ねられて形成されている。このため、A=Bである。なお、A及びBは、後身頃上部22及び袖ぐり後上部33の各々において上下方向に伸長させた際の伸縮率である。
【0041】
袖ぐり前下部32における伸縮率をC(以下単に、Cともいう)とする。袖ぐり前下部32は、身生地Bfを二枚重ねて形成されている。身生地Bfは、パワーネットPよりも伸縮率が高い。すなわち、袖ぐり前下部32は、後身頃上部22及び袖ぐり後上部33よりも延び易い。このため、Cは、A及びBよりも大きく、A=B<Cである。なお、Cは、上下方向に袖ぐり後上部33を伸長させた際の伸縮率である。
【0042】
袖ぐり前上部31の伸縮率をD(以下単に、Dともいう)とし、袖ぐり後下部34の伸縮率をE(以下単に、Eともいう)とする。袖ぐり前上部31及び袖ぐり後下部34は、一枚の身生地Bfのみで形成されている。このため、D=Eである。なお、D及びEは、袖ぐり前上部31及び袖ぐり後下部34の各々において伸長する方向を揃えて比較した。また、一枚の身生地Bfのみで形成された袖ぐり前上部31及び袖ぐり後下部34は、二枚の身生地Bfを重ねて形成された袖ぐり前下部32よりも延び易い。このため、D、Eは、Cよりも大きく、A=B<C<D=Eである。なお、D及びEは、上下方向に袖ぐり前上部31及び袖ぐり後下部34の各々を伸長させた際の伸縮率である。着用者がこの衣類1を着用した際、衣類1は、全体的にぴったりとした着用感である。このため、衣類1の身生地Bf及びパワーネットPは、上下方向及び左右方向に全体的に伸びることになる。その際、左右方向の伸縮率が低いパワーネットPが配置されている伸縮率Bの袖ぐり後上部33の外形は、横幅よりも縦幅の方が長いため、左右方向にはほとんど伸長せず縦方向に伸長する度合いが大きくなる。これにより、身生地Bfのみで構成され、且つ、身生地Bfを二枚重ねて構成された伸縮率Cの袖ぐり前下部32に連なる伸縮率Dの袖ぐり前上部31は、袖ぐり前下部32によって下縁が固定されつつ、袖ぐり前上部31よりも伸縮率が低く上下方向に伸びた袖ぐり後上部33が元の状態に戻ろうとする力(弾性復元力)に牽引され、身生地Bfの伸縮性を利用して背面側に牽引される。これにより、袖ぐり前上部31の伸縮率Dが他の部位の伸縮率(A、B、C)よりも低かった場合と比較して大きく伸長することにより、袖ぐり後上部33の肩甲骨Sを後方に牽引する力を阻害することを防ぐことが可能となり、袖ぐり後上部33の引き寄せ作用を発揮することが可能となる。更に、袖ぐり後下部34の伸縮率Eが他の部位の伸縮率(A、B、C)よりも高いことによって、伸縮率Eが低かった場合と比較して、袖ぐり後上部33による肩甲骨Sの後方への牽引する引き寄せ作用を発揮しても、袖ぐり後下部34は他の部位と比較して大きく伸長することで、腋部への局所的圧迫を低減し、着用者の腋への食い込みを抑制することが可能となる。また、仮に、袖ぐり前下部32の伸縮率Cが袖ぐり後上部33と同様だった場合(A=B=C<D=E)、袖ぐり後上部33のパワーネットPが上下方向に伸びたとしても、袖ぐり前下部32の伸縮率が袖ぐり後上部33と同じであるため、肩甲骨Sを後方に牽引する力が生じず、また、着用者の腋部分の伸びも小さくなるため、食い込みが生じ易くなってしまう。更に、仮に伸縮率がA=B<C=D=Eの場合には、袖ぐり後上部33のパワーネットPが後方に牽引する力は生じるものの、袖ぐり前下部32の伸縮率Cと袖ぐり前上部31の伸縮率Dが同じであるため、袖ぐり前上部31の下縁が固定され難く、袖ぐり前上部31の身生地Bfの伸縮性を利用した効果が生じ難くなる。
【0043】
ブラジャー部40は、
図3に示すように、左右一対のカップ部41と、カップ部41の外周縁に接合されカップ部41を囲むように拡がる連結部42と、弾性部43と、を有している。一対のカップ部41は、椀状に形成されており、左右方向に並んで配置されている。連結部42は、上側連結部42Aと、下側連結部42Bと、左右一対の側縁連結部42Cとを有している。上側連結部42Aは、各カップ部41の上縁に連なって上向き及び左右方向に拡がっている。下側連結部42Bは、各カップ部41の下縁に連なって、下向き及び左右方向に拡がっている。各側縁連結部42Cは、各カップ部41の左側縁及び右側縁に連なって上下方向及び左右方向外側に拡がっている。
【0044】
弾性部43は、所謂、平ゴムである。弾性部43は、左右方向に帯状に延びている。弾性部43は、下側連結部42Bの下端縁、及び一対の側縁連結部42Cの下端縁に沿って縫製によって接合されている。
【0045】
こうして構成されたブラジャー部40は、前身頃10の裏側(着用者側)に重なり配置されて接合されている。具体的には、上側連結部42Aの上縁は、前身頃10の上縁10Dに縫製によって接合されている。上側連結部42Aの左側縁及び右側縁は、前身頃10の各傾斜縁10Cに縫製によって接合されている。一対の側縁連結部42Cの左右外側縁は、前身頃10の各傾斜縁10C、及び後身頃上部22の各側縁22Bに縫製によって接合されている(
図4参照)。そして、弾性部43の左端縁及び右端縁の各々は、後身頃上部22の各側縁22Bの下端部の左端縁及び右端縁の各々に縫製によって接合されている(
図4参照)。
【0046】
衣類1は、女性用であり、SサイズからLLサイズまで4種類の異なる大きさで製造される。各サイズの衣類1において、
図5及び
図6に示すS1からS14の各部の寸法を以下の表1に例示する。S1は身丈、S2は着丈、S3は前丈、S4は身幅、S5はウエスト幅、S6は裾幅、S7は肩紐間、S8は袖幅、S9は天幅、S10は襟深さ(前下がり)に相当する。寸法S11は、肩の上端から襟ぐり36の後縁下端までの縦方向の寸法である。寸法S12は、襟ぐり36の後縁下端から80mm下方の位置における後身頃上部22の左右方向の寸法である。寸法S13は、前身頃10の上縁10Dの左右方向の寸法である。寸法S14は、後身頃上部22の上縁22Eの左右方向の寸法である。各寸法は、衣類1を平らに広げた状態の規格寸法である。なお、本発明に係る衣類における各部の寸法はこれに限定されるものではない。
【0047】
【0048】
次に、本実施例に係る衣類1の作用及び効果について説明する。
衣類1は、後身頃20と、前身頃10と、袖ぐり35を形成する左右一対の袖ぐり部30と、前身頃10の裏側に重なり配置されるブラジャー部40と、を備えている。後身頃20は、左右一対の肩甲骨Sの間に配置され、一枚の身生地Bfと、身生地Bfに比べて縦編みの生地を縦編みの向きのまま使用することで左右方向の伸縮率が低く各肩甲骨Sの左右内側縁Hに沿って形成された一枚のパワーネットPと、が重ねられた後身頃上部22と、上縁21Cが後身頃上部22の下縁22Aに接合され、一枚の身生地Bfのみで構成された後身頃下部21と、を有している。前身頃10は、一枚の身生地Bfのみで構成され、左右一対の側縁10B(左端縁及び右端縁)の各々が後身頃20の左右一対の側縁21B及び左右一対の側縁22B(左端縁及び右端縁)の各々に接合している。前身頃10と後身頃20とを重ねて平らに拡げた状態において、前身頃10の左端縁部及び右端縁部は、後方に折り返されている。各袖ぐり部30は、一枚の身生地Bfと、縦編みの向きのまま使用することで左右方向と比較して上下方向の伸縮率の高い一枚のパワーネットPと、が重ねられており、且つ、各々が後身頃上部22における肩甲骨Sの左右内側縁Hに沿うように形成された左右両側縁に接合されることで、各肩甲骨Sを後方に引き寄せる引き寄せ作用を発揮する袖ぐり後上部33と、一枚の身生地Bfのみで構成され、上縁34Bが袖ぐり後上部33の下縁33Cに接合する袖ぐり後下部34と、一枚の身生地Bfのみで構成され、上縁31Cが袖ぐり後上部33の第1上縁33Dに接合して身生地Bfの伸縮性を利用することにより袖ぐり後上部33における引き寄せ作用が阻害されることを防ぐ袖ぐり前上部31と、一枚の身生地Bfを折り重ねて二重にしてパイピング処理を施さない折り山を折り返し部32Aとして形成し、折り返し部32Aを着用者の腋側に配置し、折り返し部32Aと反対側を着用者の首側に配置し、上縁32Cが袖ぐり前上部31の下縁31Aに接合し、下縁32Bが前身頃10の傾斜縁10Cに接合する袖ぐり前下部32と、を有している。袖ぐり後上部33と、袖ぐり後下部34と、袖ぐり前上部31と、袖ぐり前下部32とは、それぞれが別個のパーツである。袖ぐり部30の下端部は、袖ぐり前下部32の折り返し部32Aを袖ぐり後下部34の裏側に、縫製による接合をせずに重ねて形成されている。ブラジャー部40は、左右一対のカップ部41と、カップ部41の外周縁に接合されカップ部41を囲むように拡がり、上端縁、左端縁及び右端縁が前身頃10に接合された連結部42と、連結部42の下端縁に沿って左右方向に帯状に延びた弾性部43と、を有している。弾性部43の左端縁及び右端縁の各々は、後身頃上部22の下端部の一対の側縁22B(左端縁及び右端縁)の各々に接合され、後身頃上部22の伸縮率をA、袖ぐり後上部33の伸縮率をB、袖ぐり前下部32の伸縮率をC、袖ぐり前上部31の伸縮率をD、袖ぐり後下部34の伸縮率をEとした場合、式1を満たす。着用者が衣類1を着用した際、左右方向と比較して上下方向の伸縮率が高いパワーネットPが配置されている伸縮率Bの袖ぐり後上部33は、縦方向に伸長する度合いが横方向よりも大きく、身生地Bfのみで構成され、且つ、身生地Bfを二枚重ねて構成された伸縮率Cの袖ぐり前下部32に挟まれた伸縮率Dの袖ぐり前上部31は、袖ぐり前下部32によって下縁が固定されつつ、袖ぐり前上部31よりも伸縮率が低く上下方向に伸びた袖ぐり後上部33が元の状態に戻ろうとする力に牽引され、身生地Bfの伸縮性を利用して背面側に牽引されることにより、袖ぐり後上部33及び袖ぐり前下部32と比較して大きく伸長して袖ぐり後上部33の前記引き寄せ作用が阻害されることを防ぎ、袖ぐり後下部34の伸縮率Eが伸縮率A、B、Cよりも高いことによって、袖ぐり後上部33が引き寄せ作用を発揮しても、袖ぐり後下部34は袖ぐり前下部32、袖ぐり後上部33と比較して大きく伸長することで、腋部への局所的圧迫を低減し着用者の腋への食い込みを抑制する。A=B<C<D=E・・・式1
【0049】
衣類1は、パワーネットPを有した後身頃上部22によって着用者の左右一対の肩甲骨Sの間の背中を覆い、後身頃上部22のパワーネットPが各肩甲骨Sの左右内側縁Hに沿っており、且つ前身頃10、袖ぐり前上部31、及び袖ぐり前下部32が身体にフィットする構成である。これにより、パワーネットPを有した後身頃上部22及び袖ぐり後上部33は、着用者の背中にフィットし、左右一対の肩甲骨Sの間に位置する後身頃上部22の左右方向の伸縮率が低いパワーネットPによって左右一対の肩甲骨Sを左右方向中央に引き寄せ、且つ、後身頃上部22における各肩甲骨Sの左右内側縁Hに沿うように形成された左右両側縁に縫製によって接合されるパワーネットPを有した袖ぐり後上部33によって肩甲骨S全体を後方に引き寄せる引き寄せ作用を発揮して、肩が前方に出てしまう姿勢、所謂、猫背及び巻き肩を改善する効果を高めることができる。また、パワーネットPを有した袖ぐり後上部33を身生地Bfのみの袖ぐり前上部31及び袖ぐり後下部34で挟み込むように接合する構成なので、パワーネットPを有した袖ぐり後上部33を着用者の背中にしっかり接触させつつ、袖ぐり前上部31及び袖ぐり後下部34によって肌当たりの感触を柔軟にすることができる。加えて、袖ぐり部30の下端部は、袖ぐり前下部32の折り返し部32Aを袖ぐり後下部34の裏側に、縫製による接合をせずに重ねて形成された構成なので、縫製による接合をされて重なる場合に比べて、縫い目が着用者の腋にあたらず柔らかい感触にすることができ、且つ、袖ぐり部30に柔軟性を付与することができるため、ぴったりとした着用感の中でも腕の可動域を広げることができる。また、弾性部43の左端縁及び右端縁の各々をパワーネットPを有した後身頃上部22の下端部の左端縁及び右端縁の各々に接合する構成なので、弾性部を更に後身頃20に設けずとも後身頃上部22のパワーネットPがブラジャー部40の後身頃20側のアンダーの代わりとなるため、余計な部材の削減が可能である。また、弾性部を後身頃20にも設ける場合に比べ、余計な部材による締め付けがないため不快感が低減でき、着用者に対し、より姿勢矯正に対する意識を向けさせることが可能となる。
【0050】
したがって、本実施例に係る衣類1は、着心地を良好にしながら姿勢補正効果を高め、特に袖無し構成においても十分な効果を発揮できる。
【0051】
本発明に係る衣類1を、前身頃10と後身頃20とを重ねて平らに拡げた状態において、袖ぐり部30の第2側縁31D及び折り返し部32A(前側の外縁)は、第1側縁33A及び側縁34A(後側の外縁)よりも左右方向外側に位置している。これにより、着用者の腕を通す袖ぐり35(アームホール)が背面側に開いた形状となり、猫背の姿勢を着用者がとることを抑制しつつ、且つ、巻き肩を改善する効果を高めることができる。
【0052】
本発明に係る衣類1において、袖ぐり前下部32と、前身頃10との接合部Jは、襟ぐり36から左右方向外側下方に向けて延びている。このため、この衣類1の接合部Jは、着用者の肩関節Sjよりも下方に配置されるため、接合部Jによって着用者の肩関節Sjの前方向への動作を妨げ難くする効果が期待できる。
【0053】
本発明に係る衣類1において、後身頃上部22及び袖ぐり後上部33のパワーネットPは、縦方向よりも横方向のほうが伸び難い。このため、この衣類1は、肩甲骨Sを後方に引き寄せる引き寄せ作用を高め、巻き肩を改善する効果をより高めるとともに、肩甲骨Sを左右方向中央に引き寄せるため、猫背の姿勢を着用者がとることを抑制することができる。
【0054】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例とは異なり、袖ぐり部の構造を維持したまま袖を縫製によって接合する形態、もしくは袖ぐり部の構造を左右幅方向に延長した形態であってもよい。具体的には、半袖Tシャツや長袖Tシャツが例示される。
(2)上記実施例とは異なり、ブラジャー部を備えない構成であってもよい。具体的には、タンクトップが例示される。
(3)上記実施例とは異なり、襟ぐりの形状をVネック形状にしてもよい。
(4)上記実施例とは異なり、袖ぐり前下部の折り返し部におけるより長い区間を袖ぐり後下部の裏側に、縫製による接合をせずに重ねてもよい。すなわち、折り返し部と袖ぐり下部を重ねる区間の長さは、上記実施例に限らない。
(5)上記実施例とは異なり、後身頃上部における左右両側縁はS字状でなくてもよく、直線状や、Z字状などでもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 :衣類
10 :前身頃
10B :側縁(前身頃の左端縁及び右端縁)
20 :後身頃
21 :後身頃下部
21B :側縁(後身頃の左端縁及び右端縁)
21C :上縁(後身頃下部の上縁)
22 :後身頃上部
22A :下縁(後身頃上部の下縁)
22B :側縁(後身頃の左端縁及び右端縁)
30 :袖ぐり部
31 :袖ぐり前上部
31A :下縁(袖ぐり前上部の下縁)
31C :上縁(袖ぐり前上部の上縁)
31D :第2側縁(袖ぐり部の前側の外縁)
32 :袖ぐり前下部
32A :折り返し部(袖ぐり部の前側の外縁)
32C :上縁(袖ぐり前下部の上縁)
33 :袖ぐり後上部
33A :第1側縁(袖ぐり部の後側の外縁)
33C :下縁(袖ぐり後上部の下縁)
33D :第1上縁(袖ぐり後上部の上縁)
34 :袖ぐり後下部
34A :側縁(袖ぐり部の後側の外縁)
34B :上縁(袖ぐり後下部の上縁)
40 :ブラジャー部
41 :カップ部
42 :連結部
43 :弾性部
Bf :身生地
H :肩甲骨の左右内側縁
J :接合部
P :パワーネット
S :肩甲骨
【要約】
衣類(1)において、後身頃(20)は、身生地(Bf)とパワーネット(P)とが重なった後身頃上部(22)を有し、袖ぐり部(30)は、身生地(Bf)とパワーネット(P)とが重なり肩甲骨(S)を後方に引き寄せる袖ぐり後上部(33)と、袖ぐり後下部(34)と、身生地(Bf)の伸縮性を利用し袖ぐり後上部(33)の引き寄せ作用が阻害されることを防ぐ袖ぐり前上部(31)と、身生地(Bf)を折り重ねパイピング処理を施さない折り返し部(32A)を形成した袖ぐり前下部(32)と、を有し、袖ぐり部(30)は、折り返し部(32A)を袖ぐり後下部(34)の裏側に、縫製による接合をせずに重ねて形成し、後身頃上部(22)の伸縮率をA、袖ぐり後上部(33)の伸縮率をB、袖ぐり前下部(32)の伸縮率をC、袖ぐり前上部(31)の伸縮率をD、袖ぐり後下部(34)の伸縮率をEとした場合、式1を満たす。A=B<C<D=E…式1