(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-25
(45)【発行日】2025-12-03
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/02 20060101AFI20251126BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20251126BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20251126BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20251126BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20251126BHJP
【FI】
C08L77/02
B29C45/16
C08L23/00
C08L71/02
C08L77/06
(21)【出願番号】P 2022508732
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011384
(87)【国際公開番号】W WO2021187617
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020049048
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】安井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 朱音
(72)【発明者】
【氏名】末富 夕貴
(72)【発明者】
【氏名】児玉 斉
(72)【発明者】
【氏名】大石 康介
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 駿
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美香子
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-072880(JP,A)
【文献】特開2004-276600(JP,A)
【文献】特開2005-306950(JP,A)
【文献】特開2002-326326(JP,A)
【文献】特開2006-281507(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/02
B29C 45/16
C08L 23/00
C08L 71/02
C08L 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィンに接着させるためのポリアミド樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂組成物は、アミノ基濃度が46~110μmol/gである脂肪族ポリアミド樹脂(A)70~99質量%、芳香族ポリアミド樹脂(B)0~18質量%、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)0.01~0.50質量%、ポリオレフィンワックス(D)0.01~0.50質量%、及び(A)~(D)以外の成分(E)0~22.98質量%を含み、(A)~(E)の合計は100質量%であり、
前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上であり、
前記芳香族ポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド6T/6I、ポリアミドMXD6及びポリアミドPXD6からなる群より選択される1種以上であり、
前記酸変性ポリオレフィンの酸変性量は、
10~100μmol/gである、
ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
以下の工程1~工程3を経て得られた二色成形品(2)の、破断点伸びが20%以上である、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
工程1:酸変性量が15μmol/gである、酸変性ポリオレフィンを、シリンダー温度200℃、金型温度40℃にて射出成形して、部品1を得る工程。
工程2:工程1で得られた部品1を、100℃に加熱して金型へ導入した後、ポリアミド樹脂組成物を、シリンダー温度290℃、金型温度90℃にて射出成形して、二色成形品(1)を得る工程。
工程3:工程2で得られた二色成形品(1)を、65℃のイソオクタン/トルエン/エタノール混合液に1週間浸漬させて二色成形品(2)を得る工程であって、前記混合液のイソオクタン:トルエン:エタノールの体積比は、45:45:10である、二色成形品(2)を得る工程。
【請求項3】
以下の工程1、工程2及び工程3’を経て得られた二色成形品(2’)の、破断点伸びが15%以上である、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
工程1:酸変性量が15μmol/gである、酸変性ポリオレフィンを、シリンダー温度200℃、金型温度40℃にて射出成形して、部品1を得る工程。
工程2:工程1で得られた部品1を、100℃に加熱して金型へ導入した後、ポリアミド樹脂組成物を、シリンダー温度290℃、金型温度90℃にて射出成形して、二色成形品(1)を得る工程。
工程3’:工程2で得られた二色成形品(1)を、65℃のイソオクタン/トルエン/エタノール混合液に3週間浸漬させて二色成形品(2’)を得る工程であって、前記混合液のイソオクタン:トルエン:エタノールの体積比は、45:45:10である、二色成形品(2’)を得る工程。
【請求項4】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)が、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルである、請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
ポリオレフィンワックス(D)の数平均分子量が、1,000~5,000である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)のアミノ基濃度が、80~99μmol/gである、請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
酸変性ポリオレフィンの酸変性量が、12~40μmol/gである、請求項1~
6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
燃料に接触する部品を製造するための、請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記部品は、前記ポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを含む成形品を含み、
前記成形品において、前記ポリアミド樹脂組成物の少なくとも一部と前記酸変性ポリオレフィンの少なくとも一部とは接着されており、
前記酸変性ポリオレフィンの酸変性量は、
10~100μmol/gである、
請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを含む成形品であって、前記ポリアミド樹脂組成物の少なくとも一部と前記酸変性ポリオレフィンの少なくとも一部とは接着されており、前記酸変性ポリオレフィンの酸変性量は、
10~100μmol/gである、成形品。
【請求項10】
燃料に接触する部品であって、請求項
9に記載の成形品を含む、部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、耐燃料透過性(低燃料透過性)に優れた樹脂として知られており、各種用途として耐燃料透過性を有するポリアミド樹脂組成物が求められている。特許文献1には、アミノ末端基濃度がカルボキシル末端基濃度よりも大きいポリアミド6樹脂と、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂とを溶着した燃料部品は、燃料透過耐性に優れ、かつ、溶着部の燃料耐性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなポリアミド樹脂を含む組成物は、機械的特性、及び融雪剤等で用いられる塩化カルシウムに対する耐性について、更なる向上が求められていた。また、本発明者らの知見によれば、特許文献1に開示されているようなポリアミド樹脂を含む組成物は、特定の酸変性量であるポリオレフィンに接着させる際の接着性について、更なる向上の余地があることが見いだされた。
【0005】
よって、本発明の課題は、機械的特性、接着性及び耐塩化カルシウム性に優れる、特定の酸変性量であるポリオレフィンに接着させるためのポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1]酸変性ポリオレフィンに接着させるためのポリアミド樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂組成物は、アミノ基濃度が46~110μmol/gである脂肪族ポリアミド樹脂(A)70~99質量%、芳香族ポリアミド樹脂(B)0~18質量%、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)0.01~0.50質量%、ポリオレフィンワックス(D)0.01~0.50質量%、及び(A)~(D)以外の成分(E)0~22.98質量%を含み、ここで、(A)~(E)の合計は100質量%であり、
前記酸変性ポリオレフィンの酸変性量は、8~100μmol/gである、
ポリアミド樹脂組成物。
[2]以下の工程1~工程3を経て得られた二色成形品(2)の、破断点伸びが20%以上である、[1]のポリアミド樹脂組成物。
工程1:酸変性量が8~100μmol/gである、酸変性ポリオレフィンを、シリンダー温度200℃、金型温度40℃にて射出成形して、部品1を得る工程。
工程2:工程1で得られた部品1を、100℃に加熱して金型へ注入した後、ポリアミド樹脂組成物を、シリンダー温度290℃、金型温度90℃にて射出成形して、二色成形品(1)を得る工程。
工程3:工程2で得られた二色成形品(1)を、65℃のイソオクタン/トルエン/エタノール混合液に1週間浸漬させて二色成形品(2)を得る工程であって、前記混合液のイソオクタン:トルエン:エタノールの体積比は、45:45:10である、二色成形品(2)を得る工程。
[3]以下の工程1、工程2及び工程3’を経て得られた二色成形品(2’)の、破断点伸びが15%以上である、[1]のポリアミド樹脂組成物。
工程1:酸変性量が15μmol/gである、酸変性ポリオレフィンを、シリンダー温度200℃、金型温度40℃にて射出成形して、部品1を得る工程。
工程2:工程1で得られた部品1を、100℃に加熱して金型へ導入した後、ポリアミド樹脂組成物を、シリンダー温度290℃、金型温度90℃にて射出成形して、二色成形品(1)を得る工程。
工程3’:工程2で得られた二色成形品(1)を、65℃のイソオクタン/トルエン/エタノール混合液に3週間浸漬させて二色成形品(2’)を得る工程であって、前記混合液のイソオクタン:トルエン:エタノールの体積比は、45:45:10である、二色成形品(2’)を得る工程。
[4]脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)である、[1]~[3]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[5]芳香族ポリアミド樹脂(B)が、芳香族共重合ポリアミド樹脂である、[1]~[4]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[6]ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)が、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルである、[1]~[5]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[7]ポリオレフィンワックス(D)の数平均分子量が、1,000~5,000である、[1]~[6]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[8][1]~[7]のいずれかのポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを含む成形品であって、前記ポリアミド樹脂組成物の少なくとも一部と前記酸変性ポリオレフィンの少なくとも一部とは接着されており、前記酸変性ポリオレフィンの酸変性量は、8~100μmol/gである、成形品。
[9]燃料に接触する部品であって、[8]の成形品を含む、部品。
また、本発明は、以下にも関する。
[1a]酸変性ポリオレフィンに接着させるためのポリアミド樹脂組成物の使用であって、前記ポリアミド樹脂組成物は、[1]~[7]のいずれかで定義された通りであり、前記酸変性ポリオレフィンは、[1]で定義された通りである、ポリアミド樹脂組成物の使用。
[2a]酸変性ポリオレフィンに接着させるための、ポリアミド樹脂組成物を使用する方法であって、前記ポリアミド樹脂組成物は、[1]~[7]のいずれかで定義された通りであり、前記酸変性ポリオレフィンは、[1]で定義された通りである、ポリアミド樹脂組成物を使用する方法。
[3a]ポリアミド樹脂組成物の、酸変性ポリオレフィンの接着剤としての使用であって、前記ポリアミド樹脂組成物は、[1]~[7]のいずれかで定義された通りであり、前記酸変性ポリオレフィンは、[1]で定義された通りである、使用。
[4a]ポリアミド樹脂組成物を、酸変性ポリオレフィンの接着剤として使用する方法であって、前記ポリアミド樹脂組成物は、[1]~[7]のいずれかで定義された通りであり、前記酸変性ポリオレフィンは、[1]で定義された通りである、方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械的特性、接着性及び耐塩化カルシウム性に優れる、特定の酸変性量であるポリオレフィンに接着させるためのポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、接着性試験を評価するための試験片の形状を表す平面図である。
【
図2】
図2は、接着性試験を評価するための試験片の形状を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
[ポリアミド樹脂組成物]
ポリアミド樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィンに接着させるためのポリアミド樹脂組成物であって、アミノ基濃度が46~110μmol/gである脂肪族ポリアミド樹脂(A)70~99質量%、芳香族ポリアミド樹脂(B)0~18質量%、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)0.01~0.50質量%、ポリオレフィンワックス(D)0.01~0.50質量%、及び(A)~(D)以外の成分(E)0~22.98質量%を含み、ここで、(A)~(E)の合計は100質量%であり、前記酸変性ポリオレフィンの酸変性量は、8~100μmol/gである。
ポリアミド樹脂組成物は、機械的特性、接着性及び耐塩化カルシウム性に優れるのみならず、耐燃料透過性にも優れる。
以下、「接着性」という場合は、特に断りない限り、「酸変性量が8~100μmol/gである酸変性ポリオレフィン」に対する接着性を意味する。
【0011】
≪アミノ基濃度が46~110μmol/gである脂肪族ポリアミド樹脂(A)≫
ポリアミド樹脂組成物は、アミノ基濃度が46~110μmol/gである脂肪族ポリアミド樹脂(A)(本明細書において、単に「脂肪族ポリアミド樹脂(A)」ともいう。)を含む。
【0012】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、芳香環及脂環式基を有さない、脂肪族ポリアミド樹脂である。脂肪族ポリアミド樹脂(A)としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)が挙げられる。
【0013】
<脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)>
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせ、ラクタム又はアミノカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0014】
脂肪族ジアミンの炭素原子数は、2~20であることが好ましく、4~12であることが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、6~12であることが特に好ましい。ラクタムの炭素原子数は、6~12であることが好ましい。アミノカルボン酸の炭素原子数は、6~12であることが好ましい。
【0015】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等が挙げられる。
【0016】
脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せとして、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸の組合せ等が挙げられ、これらの組合せの等モル塩が好ましく用いられる。
【0017】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムは、生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム又はドデカンラクタムであることが好ましい。
【0018】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の具体例としては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンオキサミド(ポリアミド122)等が挙げられる。
【0019】
<脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)>
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上であり、かつ、芳香環及脂環式基を有さない脂肪族ポリアミド樹脂である。よって、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体である脂肪族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0020】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の具体例としては、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)、ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/カプロラクタム共重合体(ポリアミド66/6)等が挙げられる。
【0021】
<好ましい態様>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、生産性の観点から、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)であることが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、ポリアミド6及び/又はポリアミド66であることが特に好ましい。
【0022】
<特性>
(アミノ基濃度)
脂肪族ポリアミド樹脂(A)のアミノ基濃度は、46~110μmol/gである。前記アミノ基濃度が46μmol/g未満である場合、接着性が劣る。また、前記アミノ基濃度が110μmol/gを超える場合、分子量が維持出来ず、そのようなアミノ基濃度を有するポリアミド樹脂を製造することが困難であり、また分子量の低下により成形品の機械物性が損なわれる。脂肪族ポリアミド樹脂(A)のアミノ基濃度は、50~110μmol/gであることが好ましく、60~100μmol/gであることがより好ましく、80~99μmol/gであることが特に好ましい。アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ中和滴定で求められる値である。アミノ基濃度は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の製造において、脂肪族モノ若しくはジアミン及び/又は脂肪族モノ若しくはジカルボン酸を加えることにより、調整することができる。
【0023】
(相対粘度)
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は特に制限されないが、JIS K 6920に準じて、96質量%硫酸中、濃度1質量%の脂肪族ポリアミド樹脂(A)について、25℃で測定した相対粘度が1.8~5.0であることが好ましく、1.8~4.5であることが特に好ましい。相対粘度の測定は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれの脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ポリアミド樹脂(A)全体の相対粘度とすることができる。
【0024】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0025】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の製造方法としては、アミノ基濃度が46~110μmol/gである脂肪族ポリアミド樹脂(A)が得られれば特に限定されるものではない。脂肪族ポリアミド樹脂(A)の製造方法の具体例としては、例えば、脂肪族ポリアミド樹脂の重合時もしくは重合終了後に、及び/又は、脂肪族ポリアミド樹脂を押出混練する時に、脂肪族ジアミン化合物を添加する工程を含む方法が挙げられる。また、原料仕込み時に脂肪族ジアミン化合物を過剰に添加して重合する方法、原料仕込み時に原料モノマー成分と原料モノマー成分以外の脂肪族ジアミン化合物を添加して重合する方法、又は、所定の分子量の脂肪族ポリアミド樹脂を重合した後、重合槽から脂肪族ポリアミド樹脂を抜き出す直前に、目的のアミノ基濃度となるような量で、脂肪族ジアミン化合物を添加する方法によって、脂肪族ポリアミド樹脂(A)を製造してもよい。更に、目的のアミノ基濃度となるように、重合後の脂肪族ポリアミド樹脂とジアミン化合物とを溶融混練する方法によって、脂肪族ポリアミド樹脂(A)を製造してもよい。前記した以外の脂肪族ポリアミド樹脂(A)の製造条件としては、例えば、特開2002-370551号公報に記載された方法が挙げられる。
【0026】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0027】
≪芳香族ポリアミド樹脂(B)≫
芳香族ポリアミド樹脂(B)は、芳香環を含むポリアミド樹脂である。よって、芳香族ポリアミド樹脂(B)としては、芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)及び芳香族ホモポリアミド樹脂(B-2)が挙げられる。
【0028】
<芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)>
芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)は、芳香族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上である、芳香族ポリアミド樹脂である。ここで、芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)としては、脂肪族及び/又は脂環式ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せから選択されるモノマーの共重合体である芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。ここで、芳香族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、ジアミン及びジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種のジアミンと1種のジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸は、前記したものが挙げられる。
【0029】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、ジ安息香酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、脂環式ジカルボン酸としては、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0030】
芳香族ジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンが挙げられる。また、脂環式ジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0031】
芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)の具体例としては、ポリ(テトラメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド4T/6T)、ポリ(テトラメチレンテレフタラミド/テトラメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド4T/46)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/2-メチルペンタメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/M5T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/カプロアミド)共重合体(ポリアミド6T/6)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド6T/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド6T/612)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/612)等が挙げられる。
【0032】
また、芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)の具体例としては、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/12)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ノナメチレンイソフタラミド/2-メチルオクタメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/9I/M8I)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N/11)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/1012)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10N/11)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10N/12)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10N/1010)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10N/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/1012)等が挙げられる。
【0033】
また、芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)の具体例としては、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/1212)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12N/11)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12N/12)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12N/1210)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12N/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/1212)等が挙げられる。
【0034】
<芳香族ホモポリアミド樹脂(B-2)>
芳香族ホモポリアミド樹脂(B-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。よって、芳香族ホモポリアミド樹脂(B-2)としては、脂肪族及び/又は脂環式ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せからが挙げられる。ここで、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸は、前記したものが挙げられる。
【0035】
芳香族ホモポリアミド樹脂(B-2)の具体例としては、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンスクシナミド(ポリアミドMXD4)、ポリメタキシリレングルタミド(ポリアミドMXD5)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリパラキシリレンスクシナミド(ポリアミドPXD4)、ポリパラキシリレングルタミド(ポリアミドPXD5)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンスベラミド(ポリアミドPXD8)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリパラキシリレンドデカミド(ポリアミドPXD12)等が挙げられる。
【0036】
<好ましい態様>
芳香族ポリアミド樹脂(B)は、テレフタル酸に由来する単位40~95モル%及びイソフタル酸に由来する単位5~60モル%と、脂肪族ジアミンとからなる芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)であること、又は、脂肪族ジカルボン酸とm-若しくはp-キシレンジアミンとからなる芳香族ホモポリアミド樹脂(B-2)であることが好ましく、脂肪族ジアミンとイソフタル酸及びテレフタル酸とからなるモノマー成分に由来する単位を60~99重量%で含み、脂肪族ポリアミド成分に由来する単位を1~40重量%で含む芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-1)であること又は脂肪族ジカルボン酸とm-キシレンジアミンとからなる芳香族ホモポリアミド樹脂(B-2)であることがより好ましい。ここで、脂肪族ジアミンとイソフタル酸及びテレフタル酸とからなるモノマー成分は、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩とヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の等モル塩であることが好ましい。また、芳香族ポリアミド樹脂(B)は、生産性の観点からポリアミド6T/6I、ポリアミドMXD6及びポリアミドPXD6からなる群より選択される1種以上であることが更に好ましく、ポリアミド6T/6Iであることが特に好ましい。
【0037】
<特性>
<<アミノ基濃度>>
芳香族ポリアミド樹脂(B)のアミノ基濃度は、特に限定されないが、生産性の観点から、20~110μmol/gであることが好ましく、30~100μmol/gであることがより好ましく、31~49μmol/gであることが特に好ましい。アミノ基濃度は、芳香族ポリアミド樹脂(B)の製造において、モノ若しくはジアミン及び/又はモノ若しくはジカルボン酸を加えることにより、調整することができる。
【0038】
<<相対粘度>>
芳香族ポリアミド樹脂(B)の相対粘度は特に制限されないが、JIS K 6920に準じて、96%硫酸中濃度1重量%の芳香族ポリアミド樹脂(B)について、25℃で測定した相対粘度が1.8~5.0であることが好ましく、1.8~4.5であることが特に好ましい。2種以上の芳香族ポリアミド樹脂(B)が存在する場合の相対粘度は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)で述べたとおりとすることができる。
【0039】
芳香族ポリアミド樹脂(B)の製造装置及び重合方法としては、脂肪族ポリアミド樹脂(A)において前記した製造装置及び重合方法が挙げられる。
【0040】
芳香族ポリアミド樹脂(B)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0041】
≪ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)≫
ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)は、アルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールの、モノアルキルエーテル又はジアルキルエーテルである。
【0042】
ポリアルキレングリコールのアルキレン鎖の炭素原子数は、1~6であることが好ましく、2~4であることが特に好ましい。ポリアルキレングリコールのアルキレン鎖は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。また、アルキルエーテルにおけるアルキル基の炭素原子数は、1~6であることが好ましく、1~4であることが特に好ましい。
【0043】
よって、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)としては、炭素原子数1~6のアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールの炭素原子数1~6のモノアルキルエーテルであることが好ましく、ポリエチレングリコールのモノメチルエーテルであることが特に好ましい。
【0044】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)の数平均分子量は、成形加工性の観点から、500~10,000であることが好ましく、1,000~5,000であることが特に好ましい。ここで、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
【0045】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)の市販品としては、第一工業製薬社製M-PEG CP400、CP500、CP2500、CP5000等;日本油脂社製ユニオックス M-400、M-550、M-1000、M-2000、M-4000等が挙げられる。
【0046】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0047】
≪ポリオレフィンワックス(D)≫
ポリオレフィンワックス(D)は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン共重合体ワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス、酸変性ポリプロピレンワックス等が挙げられる。ここで、ポリエチレン共重合体は、ポリエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。
【0048】
ポリオレフィンワックス(D)としては、ポリエチレンワックス、又はポリエチレンワックスを酸化変性若しくは酸変性することによって極性基を導入した、変性ポリエチレンワックスが好ましい。
【0049】
また、ポリアミド樹脂中での分散性を向上させることができる観点から、ポリオレフィンワックス(D)は、酸変性することによって極性基が導入されたポリオレフィンワックスであることが好ましい。酸変性については、酸変性ポリオレフィンにおいて、後述するとおりである。
【0050】
ポリオレフィンワックス(D)の数平均分子量は、1,000~5,000であることが好ましく、1,500~4,000であることが特に好ましい。ここで、ポリオレフィンワックスの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
【0051】
ポリオレフィンワックス(D)の融点は、特に限定されないが、60~145℃であることが好ましい。
【0052】
ポリオレフィンワックス(D)の市販品としては、三井化学社製ハイワックス200P、320P、400P、420P、405MP、320MP、4051E、2203A、NL800等が挙げられる。
ポリオレフィンワックス(D)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0053】
≪(A)~(D)以外の成分(E)≫
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)~(D)以外の成分(E)を含むことができる。このような成分(E)としては、脂肪族ポリアミド樹脂(A)及び芳香族ポリアミド樹脂(B)以外のポリアミド樹脂;ジアミン;可塑剤、耐熱材、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、酸化防止剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等の機能性付与剤等が挙げられる。
【0054】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)及び芳香族ポリアミド樹脂(B)以外のポリアミド樹脂としては、アミノ基濃度が46μmol/g未満の脂肪族ポリアミド樹脂、アミノ基濃度が110μmol/gを超える脂肪族ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0055】
ジアミンは、ポリアミド樹脂のアミノ基濃度を高めることができる成分である。ポリアミド樹脂組成物が、成分(E)としてジアミンを含むことで、接着性が向上し得る。ジアミンは、上記した成分が挙げられ、脂肪族ジアミンであることが好ましい。
【0056】
顔料は、ポリアミド樹脂組成物の色を調整するために添加される。顔料としては、無機顔料及び有機顔料が挙げられ、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。
【0057】
顔料以外の機能性付与剤としては、例えば、特開2002-370551号公報に記載された成分が挙げられる。
【0058】
成分(E)は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。例えば、成分(E)は、1種以上の顔料と、1種以上の有機酸化防止剤との組合せであってもよい。
【0059】
ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)及び芳香族ポリアミド樹脂(B)以外のポリアミド樹脂を含まないことが好ましい。即ち、ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂が、脂肪族ポリアミド樹脂(A)及び芳香族ポリアミド樹脂(B)のみからなることが好ましい。
【0060】
≪含有量≫
ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、各成分の含有量は以下の通りである。なお、ポリアミド樹脂組成物において、(A)~(E)の合計は100質量%である。
【0061】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、70~99質量%である。ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、機械物性や成形加工性の観点から、70.01~98.99質量%であることが好ましく、85.01~98.99質量%であることが好ましい。また、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の全質量に対する、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の含有量は、機械物性や成形加工性の観点から、60~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることが特に好ましい。
【0062】
芳香族ポリアミド樹脂(B)の含有量は、0~18質量%である。ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、芳香族ポリアミド樹脂(B)の含有量は、機械物性や成形加工性の観点から、0~15質量%であることが好ましく、0~12質量%であることが特に好ましい。
【0063】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)の含有量は、0.01~0.50質量%である。機械物性や成形加工性の観点から、0.03~0.45質量%であることが好ましく、0.05~0.40質量%であることがより好ましく、0.10~0.30質量%であることが特に好ましい。
【0064】
ポリオレフィンワックス(D)の含有量は、0.01~0.50質量%である。機械物性や成形加工性の観点から、0.02~0.45質量%であることが好ましく、0.03~0.40質量%であることがより好ましく、0.05~0.15質量%であることが特に好ましい。
【0065】
(A)~(D)以外の成分(E)の含有量は、0~22.98質量%である。機械物性や成形加工性の観点から、0~20.00質量%であることが好ましく、0~15.00質量%であることがより好ましく、0~5.00質量%であることが特に好ましい。
【0066】
(好ましい態様)
ポリアミド樹脂組成物は、以下の工程1~工程3を経て得られた二色成形品(2)の、破断点伸びが20%以上であることが好ましい。
工程1:酸変性量が15μmol/gである酸変性ポリオレフィンを、シリンダー温度200℃、金型温度40℃にて射出成形して、部品1を得る工程。
工程2:工程1で得られた部品1を、100℃に加熱して金型へ導入した後、ポリアミド樹脂組成物を、シリンダー温度290℃、金型温度90℃にて射出成形して、二色成形品(1)を得る工程。
工程3:工程2で得られた二色成形品(1)を、65℃のイソオクタン/トルエン/エタノール混合液に1週間浸漬させて二色成形品(2)を得る工程であって、前記混合液のイソオクタン:トルエン:エタノールの体積比が45:45:10である、二色成形品(2)を得る工程。
また、ポリアミド樹脂組成物は、上記の工程1及び工程2並びに以下の工程3’を経て得られた二色成形品(2’)の、破断点伸びが15%以上であることが好ましく、20%以上であることが特に好ましい。
工程3’:工程2で得られた二色成形品(1)を、65℃のイソオクタン/トルエン/エタノール混合液に3週間浸漬させて二色成形品(2’)を得る工程であって、前記混合液のイソオクタン:トルエン:エタノールの体積比が45:45:10である、二色成形品(2’)を得る工程。
【0067】
二色成形品(1)、(2)及び(2’)の製造方法は、ポリアミド樹脂組成物の用途及び実施例において後述する方法以外は、特開2002-370551号公報に記載された方法を採用することができる。
【0068】
≪ポリアミド樹脂組成物の製造方法≫
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。脂肪族ポリアミド樹脂(A)、芳香族ポリアミド樹脂(B)、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)、ポリオレフィンワックス(D)、及び(A)~(D)以外の成分(E)との混合は、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機を用いることができる。限定されない混合の具体的な方法としては、二軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法;一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法;又は、一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法等が挙げられる。
【0069】
≪酸変性量が8~100μmol/gである酸変性ポリオレフィン≫
酸変性量が8~100μmol/gである酸変性ポリオレフィン(本明細書において、単に「酸変性ポリオレフィン」ともいう。)は、ポリアミド樹脂組成物が接着性を発現するために、所定の酸変性量を有する。このようなポリオレフィンの分子中には、ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基が、ポリアミド樹脂組成物が接着性を発現するような量で存在する。
【0070】
酸変性ポリオレフィンの酸変性量は、8~100μmol/gであり、9~100μmol/gであることが好ましく、10~100μmol/gであることがより好ましく、12~40μmol/gであることが特に好ましい。酸変性ポリオレフィンの酸変性量が8μmol/g未満である場合、接着性に劣る。酸変性ポリオレフィンの酸変性量が100μmol/gを超える場合、接着界面において酸変性ポリオレフィンとポリアミド樹脂とが過剰に反応してしまうことでポリオレフィン本来の機械物性が損なわれることがある。酸変性ポリオレフィンの酸変性量は、滴定により測定することができる。具体的には、実施例に記載の方法により、酸変性ポリオレフィンの酸変性量を測定することができる。
【0071】
酸変性ポリオレフィンにおけるポリオレフィンとしては、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等が挙げられ、エチレン/α-オレフィン系共重合体であることが好ましい。
【0072】
(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンとを共重合した重合体である。
炭素原子数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、 4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。
【0073】
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。
【0074】
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、α,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。
【0075】
ポリオレフィンを酸変性するための化合物としては、カルボン酸及びその誘導体が挙げられる。カルボン酸及びその誘導体としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。
【0076】
酸変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸又はその酸無水物により酸変性された(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体であることが好ましい。
【0077】
[ポリアミド樹脂組成物の用途]
ポリアミド樹脂組成物は、特に制限されず、公知の方法を利用する成形品の製造に用いることができる。ポリアミド樹脂組成物を用いた成形品は、ポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを含む成形品であり、ポリアミド樹脂組成物の少なくとも一部と酸変性ポリオレフィンの少なくとも一部とは、接着されている。即ち、本発明は、酸変性ポリオレフィンに接着させるためのポリアミド樹脂組成物の使用にも関する。また、本発明は、酸変性ポリオレフィンに接着させるための、ポリアミド樹脂組成物を使用する方法にも関する。また、本発明は、ポリアミド樹脂組成物の、酸変性ポリオレフィンの接着剤としての使用にも関する。また、本発明は、ポリアミド樹脂組成物を、酸変性ポリオレフィンの接着剤として使用する方法にも関する。
【0078】
ポリアミド樹脂組成物を用いた成形品は、ポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを接着する工程を含む方法により製造することができる。ここで、ポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを接着する方法は、特に限定されず、任意の方法とすることができる。ポリアミド樹脂組成物を用いた成形品は、ポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを溶着する工程を含む方法により製造することが好ましい。ポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを溶着する方法としては、酸変性ポリオレフィンを成形する工程、及び、ポリアミド樹脂組成物を射出成形し、両成形品を溶着する工程を含む方法が挙げられる。よって、本発明は、成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを接着する工程を含む製造方法にも関する。ここで、好ましい態様である、成形品の製造方法は、ポリアミド樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンとを溶着する工程を含む。
【0079】
ポリアミド樹脂組成物の成形品と酸変性ポリオレフィンの成形品とを溶着する方法としては、振動溶着工法、射出溶着工法、超音波溶着工法、スピン溶着工法、熱板溶着工法、熱線溶着工法、レーザー溶着工法、高周波誘導加熱溶着工法等が挙げられ、所望の成形品の形状及び/又は使用目的に応じて適宜選択される。ここで、射出溶着工法としては、ダイスライドインジェクション(DSI)、ダイロータリーインジェクション(DRI)、二色成形が挙げられる。
【0080】
射出溶着工法における成形樹脂温度は、250℃~320℃であることが好ましく、270℃~300℃であることが特に好ましい。また、射出溶着工法における金型温度は、30℃~120℃であることが好ましく、50℃~100℃であることが特に好ましい。
【0081】
なお、酸変性ポリオレフィンを成形する工程における条件は、特に限定されず、任意の方法を採用することができる。酸変性ポリオレフィンの成形樹脂温度は、190℃~250℃であることが好ましく、180℃~220℃であることが特に好ましい。また、酸変性ポリオレフィンを成形する際の金型温度は、10℃~90℃であることが好ましく、30℃~60℃であることが特に好ましい。
【0082】
よって、ポリアミド樹脂組成物を用いた成形品の製造方法は、以下の工程1-a及び工程2-aを含む、二色成形品の製造方法であることが好ましい。
工程1-a:酸変性量が8~100μmol/gである酸変性ポリオレフィンを、シリンダー温度180~220℃、金型温度30~60℃にて射出成形して、部品1を得る工程。
工程2-a:工程1-aで得られた部品1を、90~110℃(好ましくは100℃)に加熱して金型へ注入した後、ポリアミド樹脂組成物を、成形樹脂温度270~300℃、金型温度50~100℃にて射出成形して、二色成形品を得る工程。
【0083】
ポリアミド樹脂組成物を用いて得られる成形品の形状としては、任意であり、フィルム状、シート状、中空状(チューブ状、ホース状、ボトル状等)等が挙げられ、成形品の目的に応じて適宜設定される。
【0084】
ポリアミド樹脂組成物を用いて得られる成形品は、前記成形品自体として又は前記成形品を含む部品として、自動車部品、鉄道部品、機械部品、工業材料、産業資材、電気部品、電子部品、医療部品、食品包装用部品、家庭用品、事務用品、建材関係部品、家具用部品等の各種用途に使用することができる。各種用途に用いられる部品において、前記成形品以外の部材は、用途に応じて、公知の部材から適宜用いることができる。
【0085】
また、ポリアミド樹脂組成物は燃料耐性に優れることから、ポリアミド樹脂組成物を用いて得られる成形品は、燃料に接触する部品であって、前記成形品を含む部品として用いられることが好ましい。ここで、燃料としては、特に限定されないが、自動車用の燃料であることが好ましい。よって、燃料に接触する部品としては、自動車部品であることが好ましい。
【0086】
ここで、自動車部品の具体例としては、燃料用部品(ガソリンタンク、オイルタンク等の燃料用タンク;フューエルデリバリーパイプ、フューエルレール、燃料チューブ、燃料ホース等の燃料輸送用部品;燃料タンクに付属するバルブ類、燃料ホース用継手、キャニスター接続用ノズル、セパレーター等の燃料と接触する部品に付属する部品);吸気系部品又は排気系部品(エアーダクト、インテークマニホールド、エアクリーナー、エアクリーナボックス、レゾネーター、スロットルボディ、空圧ホース、空圧チューブ等);自動車外板・外装構造部材(エアスポイラー、フェンダー、バンパー、サスペンションブーツ等);又は、その他の自動車用部品(ホースジョイント、油圧チューブ、油圧ホース、シートカバー等)等が挙げられる。また、燃料と接触する部品としては、燃料タンクに付属するバルブ類、燃料ホース用継手、キャニスター接続用ノズル、セパレーター等の部品であることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。表における各成分の含有量は、いずれも、質量%である。なお、実施例および比較例において使用した成分及び成形品の物性評価方法を以下に示す。
【0088】
[使用した成分]
1.脂肪族ポリアミド樹脂(A)
(1)PA6(1):ポリアミド6(宇部興産株式会社製:アミノ基濃度=91μmol/g)
2.芳香族ポリアミド樹脂(B)
(1)PA6T/6I:ポリアミド6T/6I共重合体(エムスケミー・ジャパン株式会社製、Grivory(登録商標) G21:アミノ基濃度=38μmol/g)
3.ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)
(1)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(第一工業製薬株式会社製、M-PEG CP2500:数平均分子量2,500)
4.ポリオレフィンワックス(D)
(1)ポリエチレンワックス(三井化学株式会社製、ハイワックス320P、数平均分子量3,000)
5.その他の成分(E)
(1)PA6(2):ポリアミド6(宇部興産株式会社製:アミノ基濃度=45μmol/g)
(2)PA6(3):ポリアミド6(宇部興産株式会社製:アミノ基濃度=30μmol/g)
(3)カーボンブラック(キャボット社製、VULCAN P)
(4)ヘキサメチレンジアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(5)フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製、Irganox 1098)
5.酸変性ポリオレフィン
(1)無水マレイン酸変性ポリエチレン(1)
酸変性量:16μmol/g(滴定法)
MFR:0.6g/10分(190℃、2,160g)
密度:0.93
融点:128℃(DSC法)
(2)無水マレイン酸変性ポリエチレン(2)
酸変性量:38μmol/g(滴定法)
MFR:0.6g/10分(190℃、2,160g)
密度:0.94
融点:128℃(DSC法)
(3)無水マレイン酸変性ポリエチレン(3)
酸変性量:15μmol/g(滴定法)
MFR:0.2g/10分(190℃、2,160g)
密度:0.94
融点:127℃(DSC法)
(4)無水マレイン酸変性ポリエチレン(4)
酸変性量:4μmol/g(滴定法)
MFR:0.3g/10分(190℃、2,160g)
密度:0.94
融点:127℃(DSC法)
(5)無水マレイン酸変性ポリエチレン(5)
酸変性量:7μmol/g(滴定法)
MFR:3.2g/10分(190℃、2,160g)
密度:0.92
融点:118℃(DSC法)
(6)無水マレイン酸変性ポリエチレン(6)
酸変性量:0μmol/g(滴定法)
MFR:0.3g/10分(190℃、2,160g)
密度:0.95
融点:134℃(DSC法)
【0089】
[ポリアミド樹脂組成物ペレットの作製]
表1に記載した各成分を二軸混練機ZSK32McPlus(コペリオン社製)、L/D 48、スクリュー径32mmで、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量50kg/hにて溶融混練して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを作製した。得られたペレットを下記「機械的特性」の評価に使用した。
【0090】
[機械的特性]
(1)引張降伏応力、引張破壊呼びひずみ、及び引張弾性率
前記ペレットを用いて、ISO294-1に基づきタイプA型試験片を作製し、ISO527-1,2に基づき23℃雰囲気下引張試験を実施した。
(2)曲げ強さ、及び曲げ弾性率
前記ペレットを用いて、ISO294-1に基づきタイプB型試験片を作製し、ISO178に基づき23℃雰囲気下曲げ試験を実施した。
(3)シャルピー衝撃強さ
前記ペレットを用いて、ISO294-1に基づきタイプB型試験片を作製し、後加工にてISO 179/1eAに基づきVノッチ加工した。ハンマー容量1J、23℃雰囲気下シャルピー衝撃試験を実施した。
(4)荷重たわみ温度
前記ペレットを用いて、ISO294-1に基づきタイプB型試験片を作製し、ISO75-2に基づき、荷重0.45MPaの条件で規定量撓むまでの温度を測定した。
なお、シャルピー衝撃強さが5.5KJ/m2以上であり、荷重たわみ温度が60℃以上である場合は、「機械的特性」に優れると判断した。
【0091】
[酸変性ポリオレフィンの酸変性率]
酸変性ポリオレフィンにキシレン加え、125℃油浴中で撹拌しながら溶解させた。酸変性ポリオレフィンを溶解後、チモールブルーを適量加入し、ビュレットをセットして、KOHを用いた中和滴定を行って、ポリオレフィンの酸変性率を求めた。
【0092】
[酸変性ポリオレフィンとの接着性試験]
(1)試験片の作製
以下の工程1及び工程2にて、ASTM1号片ダンベル型試験片形状を有する、二色射出成形試験片(試験片1)を得た。また、以下の工程3にて、燃料浸漬後の試験片(試験片2)を得た。
図1は、接着性試験を評価するための試験片の形状を表す平面図であり、
図2は、接着性試験を評価するための試験片の形状を表す側面図である。ここで、試験片は部品1(
図1、
図2:1)と部品2(
図1、
図2:2)から構成される。
(1-1)工程1
射出成形機(FANUC社製T-100D、型締め力100トン、スクリュー径36mm)を用いて、金型に
図1の部品2の形状の金属片をインサートし、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、射出速度50mm/secの条件にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンの一次成形を行い、部品1の形状を有する、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの成形品を得た。
(1-2)工程2
工程1で得られた無水マレイン酸変性ポリオレフィン成形品を100℃で十分予熱した。その後に、部品2の形状の金属片インサートを取り除いた状態で、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの成形品を金型内へインサートした。シリンダー温度290℃、金型温度90℃、射出速度100mm/secの条件でポリアミド樹脂組成物を用いて、部品2の部分を二次成形することによって、二色射出成形品(試験片1)を得た。試験片1は、部品1(無水マレイン酸変性ポリオレフィンの成形品)と部品2(ポリアミド樹脂組成物の成形品)との境界面は、ポリアミド樹脂組成物の射出時に溶融接着されている。
【0093】
(1-3)工程3
二色射出成形品(試験片1)をオートクレーブに入れて、FuelC+エタノール10体積%混合燃料(イソオクタン:トルエン:エタノール=45:45:10(体積比))に完全に浸漬するまで封入した。オートクレーブを65℃に加熱して、1週間又は3週間浸漬処理をした。その後、成形品を取り出して、薬品を拭き取り燃料浸漬後の試験片(試験片2)を得た。
【0094】
(2)物性試験
試験片2の引張試験を、室温(23℃)下、試験速度50mm/sec、チャック間距離140mmで行い、破断点伸び及び引張降伏時の最大応力を求めた。なお、表の値は、3個の試験片について行った試験結果の平均値である。
ここで、製造直後の試験片の破断点伸びが20%以上であり、かつ、1週間浸漬処理後の試験片の破断点伸びが20%以上である場合を、接着性に優れると判断した。
【0095】
[耐塩化カルシウム性]
ISO 294-1に基づき得られるタイプA型試験片を80℃×90RH%に調整された恒温槽にて、24時間前処理を行った。取り出した試験片の中央部にガーゼを載せ、飽和塩化カルシウム水溶液を塗布後、100℃で2時間放置した後の表面外観を観察した。外観が良好な場合(〇である場合)を、耐塩化カルシウム性に優れると判断した。
○:外観良好
×:外観不良
【0096】
[燃料透過性]
射出成形機を用いて、直径75mm、1mm厚の平板試験片を成形し、試験温度60℃、Fuel C(SAE, J1681)+エタノール10体積%混合燃料(イソオクタン:トルエン:エタノール=45:45:10(体積比))を用いて、JIS Z0208に準拠して燃料透過を測定した。透過面積は、1.13×10-3m2(φ3.8×10-2m)であった。試験燃料を充填するための試料片の数は「2」であり、対照となる試験燃料を充填しなかった試料片の数は「1」であった。
実施例2のポリアミド樹脂組成物について燃料透過性を測定したところ、2.7g・mm/(m2・24時間)であった。
【0097】
結果を表1に示す。なお、表中の組成の単位は質量%である。
【0098】
【0099】
表1の結果から明らかなとおり、実施例のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性、接着性及び耐塩化カルシウム性に優れていた。
比較例1~3は、酸変性ポリオレフィンの酸変性量が8μmol/g未満であるため、接着性に劣っていた。
比較例4の樹脂組成物は、芳香族ポリアミド樹脂(B)の含有量が18質量%を超えるため、機械物性に劣っていた。
比較例5及び6の樹脂組成物は、アミノ基濃度が46μmol/g未満である脂肪族ポリアミド樹脂を含むため、接着性に劣っていた。
比較例7の樹脂組成物は、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)及びポリオレフィンワックス(D)の両方を含まないため、機械物性及び耐塩化カルシウム性の両方に劣っていた。
比較例8の樹脂組成物は、アミノ基濃度が46μmol/g未満である脂肪族ポリアミド樹脂を含み、かつ、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(C)及びポリオレフィンワックス(D)の両方を含まないため、機械的特性、接着性及び耐塩化カルシウム性の両方に劣っていた。
【符号の説明】
【0100】
1:部品1
2:部品2