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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-25
(45)【発行日】2025-12-03
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20251126BHJP
【FI】
B65D47/34 110
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020064142
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160766
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-03
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】先曽 洋一
【合議体】
【審判長】岩谷 一臣
【審判官】一ノ瀬 薫
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-26324(JP,A)
【文献】特開2008-162635号公報(JP,A)
【文献】特開2019-151404号公報(JP,A)
【文献】中国実用新案第2915743(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体における口部の内側に、上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムと、
前記口部に装着される装着キャップが取り付けられるとともに、前記ステムが挿入された筒状のシリンダと、
前記シリンダ内で前記ステムの上下動に連係するとともに、前記シリンダの内周面に上下摺動可能に嵌合されたピストンと、
前記ステムの上端部に取り付けられ、内容物を吐出する吐出口を有する吐出ヘッドと、
前記シリンダ内に配置され、前記ステムを上方付勢する付勢部材と、
前記ステムが挿通された状態で前記シリンダに嵌合され、前記シリンダの上端開口を閉塞する閉塞部材と、を備え、
前記シリンダは、前記閉塞部材に形成されたねじ部の外形が転写された状態で、前記ねじ部に係合する係合部を備える、吐出器。
【請求項2】
前記シリンダは、
前記装着キャップ内に位置する筒部と、
前記筒部の内周面から前記筒部の径方向内側に突出するとともに、上下方向に延びる縦リブと、を備え、
前記係合部は、前記縦リブに対して前記ねじ部の外形が転写されて形成されている、請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記閉塞部材は、前記シリンダよりも硬い材料により形成されている、請求項1または請求項2に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出容器は、容器本体の口部に吐出器が装着された構成を有している。例えば下記の特許文献1には、吐出ヘッドと、ステムと、ステムが上下動可能に配設されたシリンダと、シリンダ内に摺動可能に配設されたピストン部材と、ステムを上方に向けて付勢する付勢部材と、を備える吐出器が開示されている。この吐出器によれば、吐出ヘッドを押下することにより、吐出ヘッドを介してシリンダ内の内容物を吐出することができるとともに、コイルスプリング等からなる付勢部材の上方への復元変形に伴ってシリンダ内に内容物を吸い上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-274983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、廃棄物を廃棄する際には、例えば環境負荷の低減、廃棄物の処理効率の向上等に対応するため、一般的な廃棄物の種類に応じて分別を行った後に廃棄を行っている。この観点から、使い終わった吐出器を廃棄する際に、金属で構成されることが多いコイルスプリングを具備したままの状態では、コイルスプリング以外の構成部品が合成樹脂製であったとしても、吐出器全体が、いわゆる不燃ごみに該当する。このことから、金属製のコイルスプリングと、それ以外の合成樹脂製の構成部品と、を分別して廃棄することが望まれている。
【0005】
しかしながら、従来の吐出器では、有底筒状のシリンダ内においてステムの下方に位置する空間にコイルスプリングが組み込まれている。この場合、廃棄時にコイルスプリングを容易に取り外すことが難しく、上述したニーズに対応することが難しい、という問題がある。
【0006】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、シリンダ内の付勢部材を廃棄時に容易に取り外すことができる吐出器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の吐出器は、容器本体における口部の内側に、上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムと、前記口部に装着される装着キャップが取り付けられるとともに、前記ステムが挿入された筒状のシリンダと、前記シリンダ内で前記ステムの上下動に連係するとともに、前記シリンダの内周面に上下摺動可能に嵌合されたピストンと、前記ステムの上端部に取り付けられ、内容物を吐出する吐出口を有する吐出ヘッドと、前記シリンダ内に配置され、前記ステムを上方付勢する付勢部材と、前記ステムが挿通された状態で前記シリンダに嵌合され、前記シリンダの上端開口を閉塞する閉塞部材と、を備え、前記シリンダは、前記閉塞部材に形成されたねじ部の外形が転写された状態で、前記ねじ部に係合する係合部を備えている。
【0008】
本発明の一つの態様の吐出器においては、シリンダと閉塞部材との嵌合を解除することによって、シリンダの上端開口を開放させることができる。これにより、吐出器の構成部材の中から、シリンダ内に配置された付勢部材を取り出すことができる。そのため、廃棄時に付勢部材を容易に取り外すことができ、付勢部材とその他の構成部材とを分別することができる。その結果、環境負荷の低減、廃棄物の処理効率の向上などに対応することができる。また、閉塞部材に形成されたねじ部にシリンダの係合部が係合されているため、閉塞部材とシリンダとを締結解除方向に相対回転させることにより、閉塞部材を容易にシリンダから離脱させることができる。これにより、付勢部材を容易に取り出すことができる。
【0009】
特に、本発明の一つの態様の吐出器によれば、閉塞部材をシリンダに嵌合することにより、閉塞部材のねじ部の外形がシリンダに転写されるため、シリンダに予めねじ形状を成形しておく必要がない。例えば打栓作業等によって閉塞部材をシリンダに嵌合させるだけで、閉塞部材のねじ部の外形をシリンダに容易に転写することができる。そのため、製造効率の向上および製造コストの削減を図ることができる。
【0010】
本発明の一つの態様の吐出器において、前記シリンダは、前記装着キャップ内に位置する筒部と、前記筒部の内周面から前記筒部の径方向内側に突出するとともに、上下方向に延びる縦リブと、を備えていてもよく、前記係合部は、前記縦リブに対して前記ねじ部の外形が転写されて形成されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、シリンダの全周にわたってねじ部の外形を転写する場合に比べて、シリンダとねじ部との接触面積を小さくすることができる。そのため、シリンダの縦リブとねじ部との間に作用する面圧を高めることができる。これにより、ねじ部の外形をシリンダに良好に転写させることができる。
【0012】
本発明の一つの態様の吐出器において、前記閉塞部材は、前記シリンダよりも硬い材料により形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、閉塞部材をシリンダに嵌合させた際に、ねじ部の変形を抑えつつ、ねじ部の外形をシリンダに良好に転写させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様によれば、シリンダ内の付勢部材を廃棄時に容易に取り外すことができる吐出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の吐出器の一部を破断した状態を示す縦断面図である。
図2】吐出器を分解した状態を示す縦断面図である。
図3】吐出器の要部を拡大視した縦断面図である。
図4】第2実施形態の吐出器の一部を破断した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1図3を参照して説明する。
なお、以下の説明では、本発明の一実施形態である吐出器が容器本体に取り付けられた状態の吐出容器について説明する。また、図1は、吐出ヘッドを押下していない状態、すなわち、シリンダ内が加圧されていない状態の吐出容器を示している。以下、図1に示す位置をステムの上昇端位置と称することもある。
【0017】
図1および図2に示すように、吐出容器10は、有底筒状の容器本体11と、容器本体11の口部12に着脱可能に装着された吐出器13と、を備えている。容器本体11は、内容物が収容可能に構成されている。内容物は、例えばシャンプー、ボディソープ、化粧料等の液体である。
【0018】
吐出器13は、ポンプ機構15と、ポンプ機構15に取り付けられる外装部材16と、を備えている。ポンプ機構15は、ポンプモジュール17と、ポンプモジュール17が装入されるシリンダ18と、下部弁体19と、付勢部材20と、を備えている。外装部材16は、装着キャップ33と、吐出ヘッド34と、を備えている。
【0019】
ポンプモジュール17は、ステム22と、ピストン23と、ピストンガイド24と、閉塞部材25と、を備えている。なお、ポンプ機構15のうち、少なくともステム22、ピストン23、およびシリンダ18は、共通軸上に同軸に配設された筒状に形成されている。以下、この共通軸を軸線Oといい、軸線Oに沿う方向を上下方向と称する。上下方向のうち、容器本体11の底部から吐出器13に向かう方向を上方とし、吐出器13から容器本体11の底部に向かう方向を下方とする。また、上下方向から見た平面視において、軸線Oに交差する方向を径方向と称し、軸線O回りに周回する方向を周方向と称する。
【0020】
シリンダ18は、上方に位置する程、外径が漸次拡径するように複数のテーパ部が設けられた多段筒状に形成されている。具体的に、シリンダ18は、取付筒27、収容筒28、摺動筒29、および突出筒30(筒部)が下方から上方に連なって一体に形成されている。また、取付筒27には、吸上筒31が嵌合された状態で取り付けられている。吸上筒31は、下端開口が容器本体11の底部に近接する位置まで延びている。
【0021】
収容筒28の内部には、下部弁体19が収容されている。摺動筒29の内部には、ピストン23が摺動可能に収容されている。摺動筒29の上部には、摺動筒29を径方向に貫通する導入孔29hが形成されている。突出筒30は、装着キャップ33内に位置している。突出筒30の上端開口縁には、径方向の外側に向けて突出するフランジ部36が形成されている。フランジ部36は、突出筒30の全周にわたって形成されている。フランジ部36は、吐出器13が容器本体11に装着された状態において、口部12の上端開口縁上にパッキン37を間に挟んで配置される。
【0022】
図3に示すように、突出筒30の内周面には、突出筒30の径方向内側に突出するとともに、上下方向に延びる縦リブ39が形成されている。縦リブ39には、閉塞部材25のねじ部に係合する係合部40が形成されている。係合部40の構成については、後で詳しく説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、下部弁体19は、収容筒28の内部に収容されている。下部弁体19は、弁本体42と、摺動部43と、を有している。弁本体42は、収容筒28内の下部に支持され、径方向外側に突出する支持凸部44を有している。支持凸部44は、収容筒28の内周面に当接するとともに、付勢部材20の下端を支持し、付勢部材20の下方への移動を規制する。摺動部43は、弁本体42の上方に、弁本体42よりも小径に形成されている。
【0024】
下部弁体19は、シリンダ18内の加圧時にシリンダ18の下端開口を閉塞する一方、シリンダ18内の減圧時にはシリンダ18の下端開口を開放する逆止弁として機能する。すなわち、下部弁体19は、シリンダ18内の加圧時において、収容筒28の内周面に当接し、シリンダ18内の内容物が収容筒28の下端開口を通じて容器本体11に流出することを抑制する。一方、下部弁体19は、シリンダ18内の減圧時には、収容筒28の内周面から上昇して離間し、収容筒28の下端開口を通じて容器本体11内の内容物をシリンダ18内に流入させる。
【0025】
ピストンガイド24は、シリンダ18内をステム22とともに上下動可能に構成されている。ピストンガイド24は、装着部46と、装着部46の下方に形成されたピストン支持部47と、を有している。
【0026】
装着部46は、上下方向に延びる筒状に形成されている。装着部46の一部には、ピストンガイド24の外側空間と内側空間とを連通させる連通口46hが形成されている。ピストン支持部47は、図1に示すように、吐出ヘッド34が押下されていない状態ではピストン23の下端を支持する一方、吐出ヘッド34が押下された状態では、装着部46の下降に伴ってピストン23の下端から離間する。
【0027】
ステム22は、シリンダ18の摺動筒29内にシリンダ18の上方から挿入されている。ステム22は、吐出器13が容器本体11に装着された状態において、口部12の内側に配設される。ステム22は、シリンダ18内において、付勢部材20によって上方に付勢された状態で下方移動可能に構成されている。ステム22は、下筒部49と、下筒部49よりも小径に形成された上筒部50と、を備えている。
【0028】
下筒部49は、ピストンガイド24の装着部46の周囲を取り囲んでいる。下筒部49の内周面と装着部46の外周面との間には、周方向の全体にわたって隙間が形成されている。下筒部49の上端開口縁には、径方向の内側に向けて段部52が形成されている。図示の例において、段部52は、上方に向かうに従って径方向の内側に向けて縮径するテーパ状に形成されている。なお、段部52は、軸線Oに対して直交する方向に突設されていてもよい。上筒部50は、段部52の上端部から上方に延設されている。上筒部50内の下部には、ピストンガイド24の装着部46が嵌合されている。したがって、ピストンガイド24は、ステム22の上下動に伴って上下動する。
【0029】
ピストン23は、外筒54と内筒55とが連結部56によって連結された構成を有する。外筒54は、上下方向の中央部から両側に向かうに従って外径が拡大している。外筒54は、上下方向の両端部が摺動筒29の内周面上を上下方向に摺動可能に構成されている。内筒55は、ステム22の下筒部49に上下方向に摺動可能に嵌合される。
【0030】
ピストン23は、ステム22の上昇端位置において、外筒54によってシリンダ18の導入孔29hを閉塞する。具体的には、外筒54の上端が摺動筒29の導入孔29hの上側に当接し、外筒54の下端が摺動筒29の導入孔29hの下側に当接することにより、導入孔29hが閉塞される。
【0031】
付勢部材20は、シリンダ18内において、ピストンガイド24と下部弁体19との間に介在している。付勢部材20は、例えばコイルスプリングで構成される。付勢部材20は、シリンダ18内で下部弁体19の周囲を取り囲んで設けられている。付勢部材20の下端は、下部弁体19の支持凸部44の上面に支持されている。付勢部材20の上端は、ピストン支持部47の下面に支持されている。付勢部材20は、ピストンガイド24を介してステム22を上方に向けて付勢している。
【0032】
付勢部材20は、廃棄の際に吐出器13における他の構成部材とは分別が必要な材料によって構成されている。このような材料として、製造の容易さ、または、長期にわたって圧縮された状態であっても復元力が低下し難い物性等を考慮すると、金属が用いられることが好ましい。本実施形態において、他の構成部材は、合成樹脂材料により形成されている。なお、付勢部材20は、コイルスプリングに限定されない。
【0033】
図3に示すように、閉塞部材25は、ステム22が挿通された状態でシリンダ18に嵌合されている。閉塞部材25は、ステム22の上筒部50の周囲を取り囲む上筒部58と、ステム22の下筒部49の周囲を取り囲む下筒部59と、上筒部58と下筒部59との間に形成されたフランジ部60と、を有している。
【0034】
本実施形態の場合、閉塞部材25は、シリンダ18よりも硬い合成樹脂材料により構成されている。具体的には、シリンダ18が例えばポリプロピレン(PP)から構成されているのに対し、閉塞部材25は例えばポリエチレンテフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等から構成されている。
【0035】
上筒部58には、径方向外側に向けて突出し、上下方向に延びる縦リブ62が形成されている。閉塞部材25は、縦リブ62が装着キャップ33の内周面に形成された係止部63に係止されることによって、装着キャップ33に対して相対回転不能に構成されている。下筒部59は、シリンダ18の突出筒30の外周面に当接する内周面に形成されたねじ部64を有している。
【0036】
フランジ部60は、下筒部59の上端外周から径方向外側に向けて突出し、シリンダ18の突出筒30の頂壁に当接している。また、フランジ部60の内周面は、ステム22の段部52に対応して、上方に向かうに従って径方向の内側に向けて縮径するテーパ状に形成されている。
【0037】
上述したように、シリンダ18の突出筒30の外周面には、複数の縦リブ39が形成されている。複数の縦リブ39は、周方向に互いに間隔をおいて形成されている。縦リブ39は、吐出器13の製造工程における打栓によって突出筒30が閉塞部材25の内側に嵌合された際に、閉塞部材25のねじ部64のねじ山によって径方向の内側に向けて押し付けられる。すなわち、縦リブ39は、ねじ部64のねじ山によって変形させられた状態で、閉塞部材25の内部に打栓される。これにより、シリンダ18の縦リブ39には、閉塞部材25のねじ部64の外形が転写された係合部40が形成される。係合部40は、ねじ部64のねじ溝内に進入して、ねじ山に対して上下方向で係合している。これにより、閉塞部材25は、シリンダ18に対する上方移動が規制される。
【0038】
なお、縦リブ39のうち、ねじ山が押し付けられている個所は、持続応力の作用によってクリープ変形(塑性変形)が発生していてもよく、閉塞部材25をシリンダ18から離脱させた際に復元変形してもよい。また、縦リブ39は、閉塞部材25の打栓前の状態において、ねじ山よりも径方向外側に位置し、閉塞部材25の内周面よりも径方向内側に位置していればよい。
【0039】
図1に示すように、外装部材16は、吐出器13が容器本体11に装着された状態において、吐出器13の外部に露出している。
【0040】
装着キャップ33は、挿通筒66と、挿通筒66よりも大径に形成されたキャップ本体67と、を有する。挿通筒66内には、上述の閉塞部材25、ステム22、およびピストンガイド24が挿通されている。キャップ本体67は、容器本体11の口部12に対して着脱可能に螺着される。すなわち、ポンプ機構15は、装着キャップ33を介して容器本体11に装着される。なお、装着キャップ33は、例えばアンダーカット嵌合等、螺着以外の方法によって口部12に装着されていてもよい。
【0041】
吐出ヘッド34は、操作部69と、装着筒70と、外装筒71と、吐出筒72と、を備えている。操作部69は、使用者が吐出ヘッド34を手で押下する部位であって、有頂筒状に形成されている。
【0042】
装着筒70は、操作部69の頂壁から下方に延在している。装着筒70は、軸線Oと同軸に筒状に配置されている。装着筒70の下部は、ステム22の上部が打栓等によって嵌合されている。外装筒71は、吐出ヘッド34の周壁部から下方に延在し、装着キャップ33の挿通筒66の周囲を取り囲んでいる。吐出ヘッド34が押下された際に、外装筒71の下端は、装着キャップ33の上面に当接する。これにより、吐出ヘッド34の下降位置、すなわち、ステム22の下降端位置が規制される。
【0043】
吐出筒72は、操作部69の周壁部および外装筒71を径方向に貫くように形成されている。吐出筒72における径方向の内側開口部は、装着筒70内に連通している。吐出筒72における径方向の外側開口部は、装着筒70および吐出筒72を通してステム22の内部空間に連通する吐出口72aを構成する。
【0044】
また、シリンダ18の摺動筒29の外周面には、ローレット加工が施され、滑り止め用の凹凸74が形成されている。図示の例では、凹凸として、上下方向に延びる複数の凸条が形成されているが、凹凸の形状は特に限定されない。
【0045】
以下、上記構成の吐出容器10を用いた内容物の吐出方法について説明する。
図1に示すように、吐出ヘッド34が押下されていない状態においては、付勢部材20の上方への付勢力によって、ピストンガイド24、ピストン23、ステム22、および吐出ヘッド34が上昇位置にある。このとき、吐出ヘッド34が押下されている状態での圧力に対してシリンダ18内が減圧され、下部弁体19がシリンダ18の内周面から離間し、シリンダ18の下端開口が開放される。これにより、容器本体11内の内容物が吸上筒31を通してシリンダ18内に流入する。また、ピストン23の外筒54によってシリンダ18の導入孔29hが閉塞される。
【0046】
この状態から、吐出ヘッド34が押下されると、ピストン23が移動しない状態のまま、ステム22およびピストンガイド24が下方移動し、ステム22の下端部がピストン23に当接するとともに、ピストンガイド24のピストン支持部47がピストン23から離間する。これにより、ピストン23とピストンガイド24との間の空間が連通口46hを介してステム22の内部空間と連通する。
【0047】
その後、ステム22およびピストンガイド24がさらに下方移動すると、ステム22およびピストンガイド24とともにピストン23も下方移動する。これにより、ピストン23が導入孔29hから下方に離間しつつ、シリンダ18内の内容物が、ピストンガイド24とシリンダ18との間隙を通り、ピストン23とピストンガイド24との間の空間から連通口46hを通ってステム22内に流入する。その結果、ステム22内の内容物が吐出ヘッド34の吐出筒72内を通って、吐出口72aから吐出される。
【0048】
次に、吐出ヘッド34の押下が解除されると、付勢部材20の上方への付勢力により、吐出ヘッド34が押し上げられる。これにより、ステム22、ピストンガイド24、およびピストン23が、吐出ヘッド34とともに上方に復元移動する。このとき、ステム22等の上方移動に伴い、上述したように、容器本体11内の内容物が吸上筒31を通じてシリンダ18内に流入する。
【0049】
次に、吐出器13の分解方法について説明する。
なお、吐出器13の分解作業は、吐出器13を容器本体11から取り外した状態で行うことが好ましい。
図1に示すように、上昇端位置にある吐出器13に対し、例えばシリンダ18と装着キャップ33とを把持した状態で、シリンダ18と装着キャップ33とを軸線O回りに相対回転させる。このとき、上述したように、閉塞部材25が装着キャップ33に対して相対回転不能に構成されているため、装着キャップ33に固定された閉塞部材25とシリンダ18とが相対回転し、ねじ部64と係合部40との締結が解除される。ねじ部64と係合部40との締結が解除されることにより、閉塞部材25はステム22が挿入された状態で、シリンダ18に対して上下動可能となる。
【0050】
ここで、図2に示すように、装着キャップ33および吐出ヘッド34をシリンダ18から上方に引き上げることにより、ステム22、ピストン23、ピストンガイド24、および閉塞部材25が一体となったポンプモジュール17が、シリンダ18から引き抜かれる。本実施形態の場合、付勢部材20の上端は、ピストンガイド24のピストン支持部47に形成されたスプリング係合部48に係合されている。スプリング係合部48は、例えば上下方向に延びる縦リブ状に形成されている。これにより、ステム22、ピストン23、ピストンガイド24、および閉塞部材25等を含むポンプモジュール17とともに、付勢部材20もシリンダ18から引き抜かれる。この構成により、付勢部材20のみをピストンガイド24から容易に分別することができる。このようにして、吐出器13の構成部材の中から、分別が必要な付勢部材20を取り外すことができる。その後、付勢部材20と他の構成部材とを分別して廃棄する。
【0051】
なお、付勢部材20は、スプリング係合部48が設けられていたとしても、ポンプモジュール17がシリンダ18から引き抜かれた際にシリンダ18内に残存してもよい。また、付勢部材20は、必ずしもピストンガイド24、すなわち、ポンプモジュール17に係合されていなくてもよく、ポンプモジュール17がシリンダ18から引き抜かれた際にシリンダ18内に残存する構成であってもよい。この構成であっても、付勢部材20の上方に各種の部材が存在しない状態となるため、付勢部材20をシリンダ18内から容易に取り出すことができる。
【0052】
例えば上記の閉塞部材25がアンダーカット嵌合等の手段によってシリンダ18に固定されている構成であったとすると、シリンダ18内に配置された付勢部材20を容易に取り出すことが難しく、付勢部材20の分別が難しいという問題があった。この問題に対して、本実施形態の吐出器13においては、上述したように、シリンダ18が閉塞部材25に形成されたねじ部64の外形が転写された状態で、ねじ部64に係合する係合部40を備えている。
【0053】
この構成によれば、シリンダ18と閉塞部材25との締結を解除することによって、シリンダ18の上端開口を開放させることができる。これにより、吐出器13の構成部材の中から、シリンダ18内に配置された付勢部材20を取り出すことができる。そのため、廃棄時に付勢部材20を容易に取り外すことができ、付勢部材20とその他の構成部材とを分別することができる。その結果、本実施形態の吐出器13は、環境負荷の低減、廃棄物の処理効率の向上などに対応することができる。さらに、閉塞部材25に形成されたねじ部64にシリンダ18の係合部40が係合されているため、閉塞部材25とシリンダ18とを締結解除方向に相対回転させることにより、閉塞部材25を容易にシリンダ18から離脱させることができる。これにより、付勢部材20を容易に取り出すことができる。
【0054】
特に本実施形態の吐出器13によれば、閉塞部材25をシリンダ18に嵌合することにより、閉塞部材25のねじ部64の外形をシリンダ18に転写することができるため、シリンダ18にねじ部を予め形成しておく必要がない。例えば打栓作業等によって閉塞部材25をシリンダ18に嵌合させるだけで、閉塞部材25のねじ部64の外形をシリンダ18に容易に転写することができる。そのため、シリンダ18にねじ部を形成するための設備を用意する必要がなく、吐出器13の製造効率の向上および製造コストの削減を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態の吐出器13において、シリンダ18は、突出筒30の径方向に突出するとともに、上下方向に延びる縦リブ39を備え、係合部40は縦リブ39に対してねじ部64の外形が転写されて形成されている。
この構成によれば、シリンダ18の全周にわたってねじ部64の外形を転写する場合に比べて、シリンダ18とねじ部64との接触面積を小さくすることができる。そのため、シリンダ18の縦リブ39とねじ部64との間に作用する面圧を高めることができる。これにより、ねじ部64の外形をシリンダ18に良好に転写させることができる。
【0056】
また、本実施形態の吐出器13において、閉塞部材25は、シリンダ18よりも硬い合成樹脂材料により形成されている。
この構成によれば、閉塞部材25をシリンダ18に嵌合させた際に、ねじ部64の変形を抑えつつ、ねじ部64の外形をシリンダ18に良好に転写させることができる。
【0057】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図4を用いて説明する。
第2実施形態の吐出器の基本構成は第1実施形態と同様であり、シリンダの構成が第1実施形態と異なる。そのため、本実施形態では、吐出器の全体の説明は省略する。
図4は、第2実施形態の吐出器の一部を破断した状態を示す縦断面図である。
図4において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
本実施形態の吐出容器80において、吐出器83は、ポンプ機構85と、ポンプ機構85に取り付けられる外装部材16と、を備えている。ポンプ機構85は、ポンプモジュール17と、ポンプモジュール17が装入されるシリンダ87と、下部弁体19と、付勢部材20と、を備えている。
【0059】
第1実施形態の吐出器13において、シリンダ18の外周面にローレット加工が施されていたのに対し、本実施形態の吐出器83においては、シリンダ87の摺動筒の外周面にはローレット加工が施されておらず、外周面は、凹凸がない、滑らかな曲面で構成された表示部87fとして機能する。表示部87fには、例えば使用者が表示部87fを把持することの表示、相対的な回転を行うための矢印表示などを行うことができる。また、表示部87fには、印刷等による表示の他、金型によって表示を刻印することもできる。
吐出器83のその他の構成は、第1実施形態の吐出器13と同様である。
【0060】
本実施形態の吐出器83を分解する際にも、第1実施形態と同様、シリンダ87と装着キャップ33とを軸線O回りに相対回転させればよい。この際、例えばシリンダ87の外周面87fを把持し、装着キャップ33側、すなわち、吐出ヘッド34側を矢印Dで示す方向に回転させればよい。
【0061】
本実施形態の吐出器83においても、環境負荷の低減、廃棄物の処理効率の向上などに対応できる、吐出器83の製造効率の向上および製造コストの削減を図ることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、シリンダに縦リブを形成し、閉塞部材のねじ部の外形を縦リブに転写する構成について説明したが、必ずしもこの構成に限定されない。例えば、ねじ部の外形を縦リブが存在しないシリンダの外周面に転写してもよい。
【0063】
その他、吐出器の各種構成要素の数、形状、配置等については、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
11 容器本体
12 口部
13,83 吐出器
18,87 シリンダ
20 付勢部材
22 ステム
23 ピストン
25 閉塞部材
30 突出筒(筒部)
33 装着キャップ
34 吐出ヘッド
39 縦リブ
40 係合部
64 ねじ部
図1
図2
図3
図4