(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-26
(45)【発行日】2025-12-04
(54)【発明の名称】実装システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20251127BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20251127BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
H05K13/02 Z
(21)【出願番号】P 2022579185
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2021003738
(87)【国際公開番号】W WO2022168165
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-12-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 茂人
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187033(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/208287(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/008148(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/039546(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の実装に関する実装関連処理を行う複数の実装関連装置が並んで配置され、前記実装関連処理に用いられる部材を自動で交換する自動交換作業を行うローダにより前記実装関連処理に用いられた前記部材が所定箇所に回収されるとともに前記所定箇所に配膳された前記部材が前記ローダによって自動交換作業がされて前記実装関連処理に用いられる実装ラインを備え、自動搬送車により前記所定箇所から前記部材が回収されるとともに前記自動搬送車により所定箇所へ前記部材が配膳される実装システムであって
、
前記所定箇所における前記部材の回収状況に基づいて、前記所定箇所への前記部材の配膳
と前記所定箇所からの前記部材の回収
とを連続して行うための前記所定箇所への前記自動搬送車の走行を制御する制御装置
を備える実装システム。
【請求項2】
請求項1に記載の実装システムであって、
前記制御装置は、前記所定箇所に回収対象の前記部材が揃った場合に所定の走行開始位置から前記所定箇所への走行を開始するように、前記自動搬送車を制御する
実装システム。
【請求項3】
部品の実装に関する実装関連処理を行う複数の実装関連装置が並んで配置され、前記実装関連処理に用いられた部材が所定箇所に回収される実装ラインを備え、自動搬送車により前記所定箇所から前記部材が回収される実装システムであって、
前記所定箇所における前記部材の回収状況に基づいて、前記所定箇所への前記自動搬送車の走行を制御する制御装置
を備え、
前記制御装置は、前記所定箇所に回収対象の前記部材が揃う前に所定の走行開始位置から前記所定箇所への走行を開始し、前記走行開始位置よりも前記所定箇所に近い所定の待機位置で回収対象の前記部材が揃うまで待機するように、前記自動搬送車を制御する
実装システム。
【請求項4】
請求項3に記載の実装システムであって、
前記制御装置は、前記回収対象の前記部材が揃う前において該回収対象のうち所定割合以上の前記部材が揃った場合に前記走行開始位置から走行を開始するように、前記自動搬送車を制御する
実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、実装システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品を基板に実装する実装装置などの実装関連設備と、実装に用いられる部材を実装関連設備に補給したり実装関連設備から回収したりする交換装置と、を備える実装システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この実装システムでは、交換装置として、実装装置本体の背後で交換テーブルが所定方向に往復移動可能なテーブル移動装置と、テーブル移動装置の背後に配置され所定方向に沿って移動可能な台車とを備えるものが記載されている。そして、部材を搭載した交換テーブルを、実装装置とテーブル移動装置との間およびテーブル移動装置と台車との間をスライドさせることにより、部材を交換テーブルごと交換するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した実装システムが、使用済みの部材を所定箇所にまとめて回収しておき、自動搬送車により所定箇所から回収されるように構成される場合がある。しかしながら、自動搬送車が所定箇所に到着した場合に、部材の回収が予定通り行われていないと、部材が回収されるまで自動搬送車を待機させる必要があり、搬送車による部材の回収効率が低下してしまう。
【0005】
本開示は、自動搬送車による部材の回収を効率よく行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の実装システムは、
部品の実装に関する実装関連処理を行う複数の実装関連装置が並んで配置され、前記実装関連処理に用いられた部材が所定箇所に回収される実装ラインを備え、自動搬送車により前記所定箇所から前記部材が回収される実装システムであって、
前記所定箇所における前記部材の回収状況に基づいて、前記所定箇所への前記自動搬送車の走行を制御する制御装置
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の実装システムでは、所定箇所における部材の回収状況に基づいて、所定箇所への自動搬送車の走行を制御する。このため、自動搬送車が所定箇所に到着したり近付いた際に部材の回収が完了していない状況となるのを抑制することができる。したがって、自動搬送車が所定箇所への部材の回収を待つ待機時間を削減することができるから、自動搬送車による部材の回収を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実装システム1の制御に関する構成を示すブロック図。
【
図5】AGV走行制御の一例を示すフローチャート。
【
図6】AGV55が保管庫16へ走行する様子の一例を示す説明図。
【
図7】変形例のAGV走行制御を示すフローチャート。
【
図8】変形例においてAGV55が保管庫16へ走行する様子を示す説明図。
【
図9】変形例のAGV走行制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、実装システム1の一例を示す説明図である。
図2は、実装ライン10の構成の概略を示す説明図である。
図3は、実装装置20の構成の概略を示す説明図である。
図4は、実装システム1の制御に関する構成を示すブロック図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、
図2,3に示した通りとする。
【0011】
実装システム1は、基板Sへの部品の実装に関する実装関連処理が行われる複数(
図1では2つを例示)の実装ライン10(10A,10B)を備え、実装関連処理に用いられる各種部材の搬送処理が搬送システム50により行われる。また、実装システム1は、システム全体の処理を管理する管理装置5を備える。各実装ライン10は、実装関連処理を行う複数の実装関連装置と、複数の実装関連装置を制御する実装制御装置38とを備える。また、搬送システム50は、複数台の自動搬送車55(以下、AGV55)と、充電ステーション57と、搬送制御装置58とを備える。なお、実装ライン10は、複数に限られず、1つでもよい。
【0012】
実装ライン10の複数の実装関連装置には、例えば、印刷装置12、印刷検査装置14、保管庫16、実装装置20、実装検査装置28、リフロー装置30、リフロー検査装置32などのうち1以上が含まれている。これらは、基板Sの搬送方向(X軸方向)に沿って並んで配置されている。また、本実施形態の実装ライン10には、実装ライン10に沿って移動可能なローダ18を含む。なお、各実装ライン10(10A,10B)は、同じ構成とするが、異なる構成でもよく、
図2,
図4では1の実装ライン10(10A)のみを図示する。
【0013】
印刷装置12は、スクリーンマスクに形成されたパターン孔にはんだを押し込むことで基板S(
図3参照)に印刷する。印刷検査装置14は、印刷装置12で印刷されたはんだの状態を検査する。実装検査装置28は、実装装置20で基板Sに実装された部品の実装状態を検査する。リフロー装置30は、はんだ上に部品が配置された基板Sを加熱することによりはんだを溶融し、その後冷却することにより各部品を基板S上に電気的に接続、固定する。リフロー検査装置32は、リフロー後の基板S上の部品の状態を検査する。
【0014】
実装装置20は、基板Sの搬送方向に沿って複数配置されており、基板Sに部品を実装する。実装装置20は、
図3に示すように、実装ユニット22と、フィーダ24とを備える。実装ユニット22は、ノズルなどの採取部材を装着した実装ヘッドにより、部品を採取して基板S上に実装するユニットである。フィーダ24は、部品を所定ピッチで保持するテープが巻回されたリールが着脱可能に取り付けられ、リールを回転させることによりテープを送り出して部品を供給するテープフィーダとして構成されている。
【0015】
ローダ18は、複数の実装装置20および保管庫16の前面側において、基板Sの搬送方向に沿った移動エリア内(
図1の点線エリア)で移動可能に構成されている。ローダ18は、移動エリア内で移動して、実装処理に用いられる部材を自動で交換(回収や補給)する自動交換作業を行う。例えば、ローダ18は、実装装置20に対して交換可能な作業ユニットであるフィーダ24を自動で交換するが、実装ユニット22が備えるヘッド、ノズルなどの採取部材、はんだの収容部材、スクリーンマスクなど、実装関連処理に用いられる部材を自動で交換可能であればよい。
【0016】
保管庫16は、実装関連処理で使用される各種部材を各実装ライン10内で保管するライン内保管庫であり、例えばフィーダ24を保管する。保管庫16では、作業者Mがフィーダ24を供給(補給)したり回収したりすることができる。また、ローダ18は、保管庫16に対してフィーダ24の自動交換作業が可能であり、必要なフィーダ24を保管庫16から取り出して実装装置20に補給したり、使用したフィーダ24を実装装置20から取り出して保管庫16に回収したりする。また、保管庫16では、AGV55もフィーダ24を補給したり回収したりすることができる。また、保管庫16は、例えば第1保管部16aと第2保管部16bなどの複数の保管部に区画されており、各保管部にフィーダ24を保管可能となっている。
【0017】
実装制御装置38は、CPUやROM、RAM、HDDなどを含む汎用のコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力デバイスやディスプレイなどの出力デバイスが接続される。実装制御装置38のHDDなどの記憶装置には、基板Sの生産計画や基板Sの生産に関連した生産情報が記憶される。生産計画は、基板Sへの部品の実装順や、基板Sの生産数等を規定する。また、生産情報は、基板Sにおけるはんだの印刷位置を示す情報や、基板Sに実装される部品の情報、各部品の実装位置などが含まれる。部品の情報には、各実装装置20で実装される部品種の他、部品の在庫状況として、各実装装置20や保管庫16へのフィーダ24の配置状況などを示す。実装制御装置38は、基板Sの生産に際し、生産計画および生産情報に基づいて、印刷装置12や印刷検査装置14、ローダ18、実装装置20、実装検査装置28、リフロー装置30、リフロー検査装置32などに各種指令信号を与える。また、実装制御装置38は、搬送制御装置58と通信可能に接続されており、ローダ18の作業状況に関する情報やAGV55の走行状況に関する情報などをやり取りする。
【0018】
AGV55は、図示は省略するが、車輪を回転駆動させるモータや電力を供給するバッテリなどを備え、フィーダ24などの実装関連処理に用いられる部材を、倉庫60と保管庫16との間などで自動搬送する。AGV55は、例えば、倉庫60から必要なフィーダ24を取り出して保管庫16に自動搬送して配膳(供給)したり、保管庫16から使用済みのフィーダ24を回収して倉庫60に自動搬送して収容したりする。なお、AGV55は、フィーダ24を自動で搬送するが、実装ユニット22が備えるヘッド、ノズルなどの採取部材、はんだの収容部材、スクリーンマスクなど、実装関連処理に用いられる部材を自動で搬送するものであればよい。
【0019】
ここで、AGV55と保管庫16との間では、例えば複数のフィーダ24を所定の搭載部材としてのマガジン55aに搭載した状態で、マガジン55aごと一括で自動交換可能となっている。ローダ18は、保管庫16の上述した第1保管部16aおよび第2保管部16bのうち一方の保管部が空いた状態で、他方の保管部に対してフィーダ24を出し入れして使用済みのフィーダ24を他方の保管部に回収する。AGV55は、フィーダ24の配膳と回収とを行う場合、まず、保管庫16の第1保管部16aおよび第2保管部16bのうち一方の保管部に対し、配膳対象の複数のフィーダ24をマガジン55aごと払い出して配膳する。次に、AGV55は、第1保管部16aおよび第2保管部16bのうち他方の保管部に回収された複数のフィーダ24をマガジン55aごと受け取って回収する。AGV55は、回収したフィーダ24を倉庫60まで自動搬送する。
【0020】
倉庫60には、作業者Mにより収容されたフィーダ24やAGV55により自動搬送されたフィーダ24などの各種部材が保管されている。なお、AGV55は、倉庫60に対して複数のフィーダ24をマガジン55aごと一括で出し入れすることができる。また、充電ステーション57は、所定の充電位置に駐車した1または複数台のAGV55のバッテリを充電する設備である。なお、充電ステーション57は、所定の充電位置にAGV55が駐車すると、コネクタが接続されて給電可能となる構成でもよいし、非接触で給電可能となる構成でもよい。
【0021】
搬送制御装置58は、CPUやROM、RAM、HDDなどを含む汎用のコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力デバイスやディスプレイなどの出力デバイスが接続される。搬送制御装置58は、無線によりAGV55と通信接続が可能に構成されており、AGV55の位置情報を取得したり、AGV55の発車や待機などの走行制御を行ったり、AGV55のバッテリ残量などの状態を取得したりする。また、搬送制御装置58は、充電ステーション57におけるAGV55の充電制御なども行う。
【0022】
管理装置5は、CPUやROM、RAM、HDDなどを含む汎用のコンピュータであり、キーボードやマウスなどの入力デバイスやディスプレイなどの出力デバイスが接続される。管理装置5は、各実装ライン10の各実装制御装置38や搬送制御装置58と通信可能に構成されている。管理装置5は、各実装ライン10の基板Sの生産計画や生産情報を各実装制御装置38に送信する。管理装置5は、各実装制御装置38から基板Sの生産状況や生産に必要なフィーダ24の使用状況、保管庫16におけるフィーダ24の配置状況などを受信する。なお、生産状況には、異なる種類の基板に対する生産準備としてスクリーンマスクの交換やフィーダ24の交換などを行う段取り替えの状況を含む。また、管理装置5は、各AGV55の走行計画(搬送計画)を搬送制御装置58に送信したり、搬送制御装置58から各AGV55の走行状況やバッテリ残量、充電状況などを受信したりする。なお、管理装置5は、各実装ライン10の基板Sの生産計画や基板Sの生産状況、生産に必要なフィーダ24に関する情報などに基づいて、各AGV55におけるフィーダ24の搬送予定や充電予定などを含む走行計画を作成する。
【0023】
こうして構成された実装システム1の動作、特にAGV55の走行制御について説明する。
図5は、AGV走行制御の一例を示すフローチャートであり、保管庫16のフィーダ24をAGV55に回収させる際に搬送制御装置58により実行される。また、
図6は、AGV55が保管庫16へ走行する様子の一例を示す説明図である。
【0024】
まず、搬送制御装置58は、実装制御装置38との通信により保管庫16におけるフィーダ24の回収状況を取得し(S100)、回収割合Rが所定割合Rref以上であるか否かを判定する(S110)。回収割合Rは、回収先の保管部(第1保管部16aまたは第2保管部16b)に回収される予定のフィーダ24の数のうち回収済みのフィーダ24の数の割合、即ち回収予定数に対する回収済み数の割合を示すものである。例えば、本実施形態の所定割合Rrefは、100%よりも小さな80%などの値に予め定められている。なお、所定割合Rrefを100%に定めて、S110で回収が完了しているか否かが判定されてもよい。また、S100のフィーダ24の回収状況として、S110の判定を実装制御装置38が行った結果が送信されてもよい。搬送制御装置58は、S110で回収割合Rが所定割合Rref以上であると判定すると、AGV55を走行開始位置P1(
図6参照)から目的地である保管庫16に向けて走行を開始させる(S120)。
【0025】
そして、搬送制御装置58は、AGV55の位置情報に基づいてAGV55が待機位置P2(
図6参照)に到着するのを待つ(S130)。待機位置P2は、目的地である保管庫16よりも手前の位置であって、AGV55が待機してもローダ18の作業や移動に干渉しない位置として定められている。搬送制御装置58は、AGV55が待機位置P2に到着したと判定すると、実装制御装置38との通信により保管庫16におけるフィーダ24の回収状況とローダ18の退避状況とを取得する(S140)。なお、回収状況は、S100と同様に、回収先の保管部(第1保管部16aまたは第2保管部16b)における割合を示す。次に、搬送制御装置58は、フィーダ24の回収が完了即ち回収割合Rが100%となったか否か(S150)、ローダ18が保管庫16前から退避したか否か(S160)、をそれぞれ判定する。なお、実装制御装置38は、フィーダ24の回収が完了すると、速やかにローダ18を保管庫16前から退避させるものとする。あるいは、実装制御装置38は、搬送制御装置58との通信によりAGV55が待機位置P2に到着する前にローダ18の作業を中断させて保管庫16前から退避させてもよい。
【0026】
搬送制御装置58は、S150でフィーダ24の回収が完了していないと判定するか、S160でローダ18が保管庫16前から退避していないと判定すると、待機位置P2で待機するようにAGV55に待機指示を出力して(S170)、S140~S160の処理を繰り返す。即ち、搬送制御装置58は、AGV55を待機位置P2で待機させながら、保管庫16におけるフィーダ24の回収が完了してローダ18が退避するのを待つ。なお、搬送制御装置58は、先にS170の処理を行って待機位置P2でAGV55を待機させてから、S140~S160の処理を行ってもよい。
【0027】
一方、搬送制御装置58は、保管庫16へのフィーダ24の回収が完了し且つローダ18が退避したと判定すると、AGV55を回収先の保管部(例えば
図6では第1保管部16a)前に移動させてフィーダ24の回収作業を実行させる(S180)。次に、搬送制御装置58は、AGV55によるフィーダ24の回収作業が完了するのを待ち(S190)、回収作業が完了したと判定すると、目的地を倉庫60としてAGV55の走行を開始させることにより(S200)、フィーダ24を倉庫60に回収させて、AGV走行制御を終了する。なお、倉庫60までのAGV55の走行制御は、本発明の要旨をなさないから説明を省略する。搬送制御装置58は、AGV55の走行を開始させると、作業完了通知を実装制御装置38に送信する。作業完了通知を受けた実装制御装置38は、ローダ18の保管庫16への移動および作業を許可する。
【0028】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の実装ライン10が実装ラインに相当し、AGV55が自動搬送車に相当し、搬送制御装置58が制御装置に相当する。
【0029】
以上説明した実装システム1では、保管庫16におけるフィーダ24の回収状況に基づいて、保管庫16へのAGV55の走行を制御するから、AGV55が保管庫16に近付いた際にフィーダ24の回収が完了していない状況となるのを抑制することができる。したがって、AGV55がフィーダ24の回収を待つ待機時間を削減して、AGV55によるフィーダ24の回収を効率よく行うことができる。
【0030】
また、保管庫16に回収対象のフィーダ24が揃う前にAGV55の走行を開始させて待機位置P2でフィーダ24が揃うまでAGV55を待機させるから、フィーダ24が揃えばAGV55を速やかに保管庫16に移動させて回収作業を行わせることができる。また、フィーダ24の回収割合Rが所定割合Rref以上となった場合にAGV55の走行を開始させるから、走行を開始するタイミングを簡易な処理で適切に定めて待機位置P2での待機時間が長くなるのを抑制することができる。このため、待機位置P2で待機するAGV55が、他のAGV55の走行を阻害するのを抑制することができる。
【0031】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、搬送制御装置58は、S130ではAGV55の位置情報に基づいてAGV55が待機位置P2に到着したか否かを判定したが、これに限られるものではない。搬送制御装置58は、AGV55の走行開始タイミングやAGV55の速度、待機位置P2までの距離などから待機位置P2への到着タイミングを予測し、S130ではその到着タイミングとなったか否かを判定してもよい。
【0033】
実施形態では、所定割合Rrefを100%よりも小さな値としたが、上述したように100%としてもよい。即ち、保管庫16に回収対象のフィーダ24が揃った場合に走行開始位置P1から保管庫16への走行を開始するように、AGV55を制御してもよい。こうすれば、AGV55が保管庫16に近付いた際に、保管庫16へのフィーダ24の回収を待つための待機時間を確実に削減することができる。また、待機位置P2でAGV55が待機することにより、他のAGV55と干渉するのを防止することができる。
【0034】
実施形態では、所定割合Rrefを予め定められた値(固定値)としたが、これに限られず、作業者などから所定割合Rrefの入力を受け付けて設定可能なものとしてもよい。あるいは、搬送制御装置58が、走行開始位置P1から目的地である保管庫16または待機位置P2までのAGV55の走行距離が長いほど小さくなる傾向に所定割合Rrefを設定可能なものとしてもよい。こうすれば、AGV55の走行距離が長いほどAGV55を早めに走行開始させることになる。即ち、待機位置P2でAGV55が待機する時間を削減するように走行開始タイミングを定めることができるから、AGV55が他のAGV55などと干渉するのをより確実に防止しつつフィーダ24の回収をより効率よく行うことができる。
【0035】
実施形態では、保管庫16からフィーダ24を回収する場合を例示して説明したが、これに限られず、保管庫16へのフィーダ24の配膳と保管庫16からのフィーダ24の回収とを連続して行ってもよい。
図7は、変形例のAGV走行制御を示すフローチャートであり、
図8は、変形例においてAGV55が保管庫16へ走行する様子を示す説明図である。変形例では、実施形態と同じ処理には同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
図7の変形例では、搬送制御装置58は、まず配膳対象のフィーダ24が揃ったか否かを判定する(S210)。S210では、搬送制御装置58は、倉庫60またはその近傍において、配膳対象の全てのフィーダ24がAGV55に搭載された状態であるか否かを判定すればよい。また、搬送制御装置58は、配膳対象の全てのフィーダ24が搭載されたAGV55の発車準備が完了しているか否かを判定してもよい。搬送制御装置58は、S210で配膳対象のフィーダ24が揃ったと判定すると、S100で保管庫16におけるフィーダ24の回収状況を取得し、フィーダ24の回収が可能であるか否かを判定する(S110b)。例えばS110bでは、第1保管部16aおよび第2保管部16bのいずれかに回収対象のフィーダ24が揃っているか否か即ち回収割合Rが100%であるか否かが判定される。搬送制御装置58は、S110bで回収可能であると判定すると、S120で保管庫16へのAGV55の走行を開始させる。
【0037】
この変形例では、S110bでフィーダ24の回収が可能であることを判定した上でAGV55の走行を開始させる。このため、搬送制御装置58は、S130でAGV55が待機位置P2に到着した際にフィーダ24の回収状況を再度取得して回収完了を判定する必要がないから、S140bではローダ18の退避状況を取得し、S150の処理を省略する。なお、変形例でも、搬送制御装置58がS110bで回収割合Rが所定割合Rref以上であることを判定するものとして、実施形態と同様にS140,S150の処理を行ってもよい。搬送制御装置58は、S160で保管庫16からローダ18が退避したと判定すると、まず、AGV55を配膳先の一方の保管部(例えば
図8では第1保管部16a)前に移動させてフィーダ24の配膳作業を実行させる(S175)。次に、搬送制御装置58は、配膳作業が完了したと判定すると(S177)、AGV55を回収先の他方の保管部(例えば
図8では第2保管部16b)前に移動させてフィーダ24の回収作業を実行させる。
【0038】
このように、
図7の変形例では、配膳対象のフィーダ24が揃っても直ちにAGV55を発車させずに、回収対象のフィーダ24を回収可能であることを確認してからAGV55を発車させる。このため、AGV55が待機位置P2に到着してから、フィーダ24の回収が可能な状態となるのを待つ必要がない。また、AGV55は、フィーダ24の配膳と回収とを連続的に行うから、別々に行うものに比して移動ロスを低減して効率よく行うことができる。
【0039】
また、
図9の変形例も、保管庫16へのフィーダ24の配膳と保管庫16からのフィーダ24の回収とを連続的に行うものである。
図9の変形例では、搬送制御装置58は、まず、保管庫16におけるフィーダ24の状況として空き状況と回収状況とを取得し(S100b)、配膳対象のフィーダ24を配膳可能で且つ回収対象のフィーダ24を回収可能であるか否かを判定する(S110c)。S110cでは、第1保管部16aおよび第2保管部16bの一方が空いているか否かが判定されると共に、第1保管部16aおよび第2保管部16bの他方に回収対象のフィーダ24が揃っているか否か即ち回収割合Rが100%であるか否かが判定される。搬送制御装置58は、S110cで配膳可能で且つ回収可能であると判定すると、S120で保管庫16へのAGV55の走行を開始させる。以降は
図7と同じ処理を行うため、説明を省略する。
【0040】
このように、
図9の変形例では、回収対象のフィーダ24を回収可能で且つ配膳対象のフィーダ24を配膳可能であることを確認してからAGV55を発車させる。このため、AGV55が待機位置P2に到着してから、フィーダ24の配膳が可能な状態や回収が可能な状態となるのを待つ必要がない。また、
図7の変形例と同様に、フィーダ24の配膳と回収とを連続的に効率よく行うことができる。なお、
図9の変形例においても、
図7と同様に、S100bの前にS210の判定を行ってもよい。
【0041】
実施形態では、実装システム1(実装ライン10)がローダ18を備えたが、これに限られず、ローダ18を備えなくてもよい。例えば作業者が保管庫16と実装装置20との間でフィーダ24を交換して、取り外したフィーダ24を保管庫16に回収するものなどとしてもよい。このようにした場合でも、回収対象のフィーダ24が保管庫16に揃うことなどを待つためにAGV55の待機が必要となることがあるため、実施形態と同様に回収状況に基づいてAGV55の走行を制御することによる効果がある。
【0042】
実施形態では、フィーダ24などの実装関連処理に用いられる部材が、AGV55により実装ライン10内の専用の保管庫16に搬送されたが、これに限られず、実装ライン10の所定箇所に搬送されるものであればよい。例えば、
図3の実装装置20の下方に設けられた保管庫など、各装置(印刷装置12や印刷装置14、実装装置20、実装検査装置28など)に設けられた保管庫に搬送されるものでもよい。
【0043】
ここで、本開示の実装システムは、以下のように構成してもよい。例えば、本開示の実装システムにおいて、前記制御装置は、前記所定箇所に回収対象の前記部材が揃った場合に所定の走行開始位置から前記所定箇所への走行を開始するように、前記自動搬送車を制御するものとしてもよい。こうすれば、自動搬送車が所定箇所に到着したり近付いた際に、自動搬送車が所定箇所への部材の回収を待つのを防止して、待機時間を確実に削減することができる。また、所定箇所の近くで自動搬送車が待機することにより、待機中の自動搬送車と他の装置とが干渉するのを防止することができる。
【0044】
本開示の実装システムにおいて、前記制御装置は、前記所定箇所に回収対象の前記部材が揃う前に所定の走行開始位置から前記所定箇所への走行を開始し、前記走行開始位置よりも前記所定箇所に近い所定の待機位置で回収対象の前記部材が揃うまで待機するように、前記自動搬送車を制御するものとしてもよい。こうすれば、所定箇所に回収対象の部材が揃えば、自動搬送車を速やかに所定箇所に移動させることができるから、部材をより効率よく回収することができる。
【0045】
本開示の実装システムにおいて、前記制御装置は、前記回収対象の前記部材が揃う前において該回収対象のうち所定割合以上の前記部材が揃った場合に前記走行開始位置から走行を開始するように、前記自動搬送車を制御するものとしてもよい。こうすれば、自動搬送車が所定箇所に向けて走行を開始するタイミングを簡易な処理で適切に定めることができるから、待機位置での待機時間が長くなるのを抑制することができる。
【0046】
本開示の実装システムにおいて、前記所定箇所には、前記部材が回収される回収箇所と、前記部材が配膳される配膳箇所とが設けられており、前記制御装置は、前記配膳箇所に配膳される配膳対象の前記部材が揃った状態で、前記回収箇所における前記部材の回収状況に基づいて回収対象の前記部材が揃ったことを確認した場合に、配膳対象の前記部材が搭載された前記自動搬送車が所定の走行開始位置から前記所定箇所への走行を開始し、前記所定箇所では前記配膳箇所に配膳対象の前記部材を配膳した後に前記回収箇所から回収対象の前記部材を回収するように、前記自動搬送車を制御するものとしてもよい。こうすれば、自動搬送車は、部材の配膳と回収とを連続的に行うことができるから、部材の配膳と回収とをそれぞれ別々に行うために移動するものに比して移動ロスを低減することができる。したがって、部材の回収効率と配膳効率とを向上させることができる。
【0047】
本開示の実装システムにおいて、前記所定箇所には、前記部材が回収される回収箇所と、前記部材が配膳される配膳箇所とが設けられており、前記制御装置は、前記回収箇所における前記部材の回収状況と前記配膳箇所における前記部材の配膳状況とに基づいて回収対象の前記部材が揃うと共に前記配膳箇所に配膳対象の前記部材の配膳が可能であることを確認した場合に、配膳対象の前記部材が搭載された前記自動搬送車が所定の走行開始位置から前記所定箇所への走行を開始し、前記所定箇所では前記配膳箇所に配膳対象の前記部材を配膳した後に前記回収箇所から回収対象の前記部材を回収するように、前記自動搬送車を制御するものとしてもよい。こうすれば、自動搬送車は、部材の配膳と回収とを連続的に行うことができるから、移動ロスを低減することができる。また、自動搬送車が所定箇所に到着したり近付いた際に、部材の配膳が可能な状況や部材の回収が可能な状況となるのを待つ必要がない。したがって、部材の回収効率と配膳効率とを向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示は、部材が自動搬送車で回収される実装システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 実装システム、5 管理装置、10,10A,10B 実装ライン、12 印刷装置、14 印刷検査装置、16 保管庫、16a 第1保管部、16b 第2保管部、18 ローダ、20 実装装置、22 実装ユニット、24 フィーダ、28 実装検査装置、30 リフロー装置、32 リフロー検査装置、38 実装制御装置、50 搬送システム、55 自動搬送車(AGV)、55a マガジン、57 充電ステーション、58 搬送制御装置、60 倉庫、M 作業者、S 基板。