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7780654非燃焼加熱型香味吸引器用再生たばこ及びその製造方法、非燃焼加熱型香味吸引器、並びに非燃焼加熱型香味吸引システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-26
(45)【発行日】2025-12-04
(54)【発明の名称】非燃焼加熱型香味吸引器用再生たばこ及びその製造方法、非燃焼加熱型香味吸引器、並びに非燃焼加熱型香味吸引システム
(51)【国際特許分類】
   A24B 3/14 20060101AFI20251127BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20251127BHJP
   A24B 15/26 20060101ALI20251127BHJP
   A24B 15/12 20060101ALI20251127BHJP
【FI】
A24B3/14
A24D1/20
A24B15/26
A24B15/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024536728
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2022029285
(87)【国際公開番号】W WO2024024083
(87)【国際公開日】2024-02-01
【審査請求日】2025-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】春木 渓介
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/138261(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097641(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112385890(CN,A)
【文献】特許第6019216(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 3/14
A24D 1/20
A24B 15/26
A24B 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ材料と、たばこ成分と、を含む非燃焼加熱型香味吸引器用の再生たばこであって、
前記たばこ材料はFT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の最大吸光度が0.40以上であり、
前記たばこ材料の比熱が5mJ/mg・℃以下である、再生たばこ。
【請求項2】
前記たばこ材料を23℃の水中に900秒浸漬した際の吸水量が4.0~6.0g/gである、請求項1に記載の再生たばこ。
【請求項3】
前記たばこ材料の安息角が40°以下である、請求項1に記載の再生たばこ。
【請求項4】
たばこ原料からたばこ成分を抽出して得られるたばこ抽出液を含む、請求項1に記載の再生たばこ。
【請求項5】
さらにバインダを含む、請求項1に記載の再生たばこ。
【請求項6】
さらに繊維材料を含む、請求項1に記載の再生たばこ。
【請求項7】
シート状の再生たばこ、又は該シート状の再生たばこを裁断したシート刻状の再生たばこである、請求項1に記載の再生たばこ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の再生たばこが充填された、たばこ含有セグメントを備える非燃焼加熱型香味吸引器。
【請求項9】
請求項8に記載の非燃焼加熱型香味吸引器と、
前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、
を備える非燃焼加熱型香味吸引システム。
【請求項10】
請求項1に記載の再生たばこの製造方法であって、
たばこ原料からたばこ成分を抽出して、たばこ抽出液とたばこ残渣を得る工程と、
前記たばこ残渣をアルカリ蒸解処理した後、pHを4.0~6.5に調整する工程と、
pH調整後の前記たばこ残渣に前記たばこ抽出液をかけ戻す工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記アルカリ蒸解処理が、前記たばこ残渣にアルカリ金属の水酸化物を添加し、130~230℃で5分間~6時間加熱する処理である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非燃焼加熱型香味吸引器用再生たばこ及びその製造方法、非燃焼加熱型香味吸引器、並びに非燃焼加熱型香味吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼型香味吸引器(シガレット)では、葉たばこを含むたばこ充填物を燃焼して香味を得る。該燃焼型香味吸引器の代替として、たばこ充填物を燃焼する代わりに加熱して香味を得る非燃焼加熱型香味吸引器が提案されている。非燃焼加熱型香味吸引器の加熱温度は、燃焼型香味吸引器の燃焼温度より低く、例えば約400℃以下である。このように、非燃焼加熱型香味吸引器の加熱温度は低いため、煙量を増加させる観点から、非燃焼加熱型香味吸引器ではたばこ充填物にグリセリン等のエアロゾル発生剤が添加される。エアロゾル発生剤は加熱により気化し、エアロゾルを発生する。該エアロゾルはたばこ成分等の香味成分を伴い使用者に供給されるため、使用者は十分な香味を得ることができる。
【0003】
非燃焼加熱型香味吸引器は、たばこ充填物が充填されたたばこ含有セグメントを例えば加熱装置のヒーターによって加熱することで使用することができる。加熱装置は通常電池ユニットを有し、該電池ユニットより電力が供給されることで、ヒーターの加熱が行われる。使用者の利便性の観点から、加熱装置を用いて非燃焼加熱型香味吸引器を使用する際に、電力消費量を抑制して、使用可能時間や使用可能本数を増加させることが望まれる。
【0004】
一方、特許文献1には、たばこ原料をアルカリ性条件下で蒸解することにより、バニリン含有量が多い黒液が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6019216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製品のサイズを変更せずに電力消費量を抑制する方法の一つとして、非燃焼加熱型香味吸引器に含まれるたばこ材料を工夫することで、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制することが考えられる。
【0007】
本発明は、使用時に、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制可能な再生たばこ、非燃焼加熱型香味吸引器、及び非燃焼加熱型香味吸引システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の実施態様を含む。
【0009】
[1]たばこ材料と、たばこ成分と、を含む非燃焼加熱型香味吸引器用の再生たばこであって、
前記たばこ材料はFT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の最大吸光度が0.40以上であり、
前記たばこ材料の比熱が5mJ/mg・℃以下である、再生たばこ。
【0010】
[2]前記たばこ材料を23℃の水中に900秒浸漬した際の吸水量が4.0~6.0g/gである、[1]に記載の再生たばこ。
【0011】
[3]前記たばこ材料の安息角が40°以下である、[1]又は[2]に記載の再生たばこ。
【0012】
[4]たばこ原料からたばこ成分を抽出して得られるたばこ抽出液を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の再生たばこ。
【0013】
[5]さらにバインダを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の再生たばこ。
【0014】
[6]さらに繊維材料を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の再生たばこ。
【0015】
[7]シート状の再生たばこ、又は該シート状の再生たばこを裁断したシート刻状の再生たばこである、[1]~[6]のいずれかに記載の再生たばこ。
【0016】
[8][1]~[7]のいずれかに記載の再生たばこが充填された、たばこ含有セグメントを備える非燃焼加熱型香味吸引器。
【0017】
[9][8]に記載の非燃焼加熱型香味吸引器と、
前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、
を備える非燃焼加熱型香味吸引システム。
【0018】
[10][1]~[7]のいずれかに記載の再生たばこの製造方法であって、
たばこ原料からたばこ成分を抽出して、たばこ抽出液とたばこ残渣を得る工程と、
前記たばこ残渣をアルカリ蒸解処理した後、pHを4.0~6.5に調整する工程と、
pH調整後の前記たばこ残渣に前記たばこ抽出液をかけ戻す工程と、
を含む、方法。
【0019】
[11]前記アルカリ蒸解処理が、前記たばこ残渣にアルカリ金属の水酸化物を添加し、130~230℃で5分間~6時間加熱する処理である、[10]に記載の方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、使用時に、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制可能な再生たばこ、非燃焼加熱型香味吸引器、及び非燃焼加熱型香味吸引システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例であって、(a)非燃焼加熱型香味吸引器を加熱装置に挿入する前の状態、(b)非燃焼加熱型香味吸引器を加熱装置に挿入して加熱する状態、を示す断面図である。
図3】実施例1、比較例1及び比較例3における、各パフにおけるニコチンデリバリー量を示すグラフである。
図4】実施例1、比較例1及び比較例3における、各パフにおけるグリセリンデリバリー量を示すグラフである。
図5】実施例1、比較例1及び比較例3における、再生たばこの基材の比熱に対する電力消費量(エネルギー)当りの主流煙へのニコチン移行率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態に係る再生たばこは、たばこ材料と、たばこ成分と、を含む非燃焼加熱型香味吸引器用の再生たばこである。ここで、前記たばこ材料はFT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の最大吸光度が0.40以上である。また、前記たばこ材料の比熱は5mJ/mg・℃以下である。
【0023】
本発明者等は、非燃焼加熱型香味吸引器に含まれるたばこ材料として、低比熱のたばこ材料を使用することで、加熱効率が向上し、結果として非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制できると考えた。本発明者等は鋭意検討した結果、FT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の最大吸光度が0.40以上であり、かつ、比熱が5mJ/mg・℃以下であるたばこ材料と、たばこ成分と、を含む再生たばこを、非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ材料として使用することで、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制できることを見出した。FT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の吸収は水酸基の伸縮振動に由来する。例えばたばこ原料がアルカリ蒸解処理され、中和処理されることで、得られるたばこ材料の水酸基量が増加し、前記最大吸光度を増加させることができる。なお、この場合、たばこ原料はアルカリ蒸解処理後に中和されるため、前記最大吸光度の増加は遊離しているOH由来ではなく、たばこ材料に共有結合する水酸基に由来する。このように、たばこ材料の水酸基量がある一定以上になると、たばこ材料の比熱が低くなることを見出した。該たばこ材料を再生たばこの基材として用いることで、再生たばこの比熱を低減することができ、該再生たばこを加熱する際に、少ない電力で再生たばこの温度を上昇させることができる。したがって、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制することができる。なお、「再生たばこ」とは、たばこ成分と他の材料とが混合され、再構成されたたばこ材料を示す。
【0024】
本実施形態に係る再生たばこは、前記たばこ材料、たばこ成分以外にも、例えばバインダ、繊維材料、エアロゾル発生剤等を含むことができる。
【0025】
(たばこ材料)
本実施形態に係るたばこ材料は、FT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の最大吸光度が0.40以上である。水酸基の伸縮振動に由来する、波長3200~3600cm-1の範囲の最大吸光度が0.40以上であることにより、たばこ材料の比熱を低減でき、再生たばこ全体の比熱を低減できるため、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制することができる。前記波長3200~3600cm-1の最大吸光度は0.42以上であることが好ましく、0.45以上であることがより好ましい。前記波長3200~3600cm-1の最大吸光度の範囲の上限は特に限定されないが、例えば1.0以下であることができる。
【0026】
たばこ材料のFT-IR分析は、以下の方法により実施することができる。たばこ材料のサンプルをATR測定用ダイヤモンドクリスタルに密着させ、赤外吸収スペクトルを測定する。測定装置としては、フーリエ変換赤外分光装置(商品名:Thermo Scientific Nicolet iS50、Thermo Scientific社製)を用いることができる。測定方法:ATR法、分解能:4cm-1、積算回数:32回(n=2)の条件で測定を実施することができる。
【0027】
たばこ材料の前記最大吸光度を0.40以上とする方法としては、例えばたばこ原料をアルカリ蒸解処理した後、中和する方法が挙げられる。たばこ原料としては、例えば葉たばこ、たばこの葉脈部、幹部、根、花等が挙げられ、これらは裁刻されていてもよく、粉末状であってもよい。前記葉たばこの種類は特に限定されず、どの品種も適用可能であるが、例えば黄色種、バーレー種、在来種、オリエント葉等や、それらの発酵葉等であることができる。これらのたばこ原料は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。特に、アルカリ蒸解処理を行うたばこ原料としては、たばこ原料からたばこ成分を含むたばこ抽出液を抽出した後のたばこ残渣であることが好ましい。通常は廃棄されるたばこ残渣を再利用できるため、環境負荷を低減でき、またコスト面でも有利なためである。さらに、得られるたばこ抽出液は、再生たばこのたばこ成分として使用することができる。アルカリ蒸解処理及び中和の方法としては、例えば後述する本実施形態に係る再生たばこの製造方法におけるアルカリ蒸解処理及び中和の方法が挙げられる。
【0028】
前記たばこ材料の比熱は、5mJ/mg・℃以下である。該比熱が5mJ/mg・℃以下であることにより、再生たばこ全体の比熱を十分に低減でき、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制することができる。該比熱は4mJ/mg・℃以下であることが好ましく、3mJ/mg・℃以下であることがより好ましく、2mJ/mg・℃以下であることがさらに好ましい。該比熱は低ければ低い方が好ましく、該比熱の範囲の下限は特に限定されないが、例えば0.1mJ/mg・℃以上であることができる。なお、たばこ材料の比熱は、例えばFT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の最大吸光度を0.40以上にすることにより、5mJ/mg・℃以下とすることができる。
【0029】
たばこ材料の比熱は、DSC(示差走査熱量測定)により測定される、300℃までの最大比熱容量(mJ/mg・℃)で示される。例えば、示差走査熱量計(商品名:DSC7020、(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて、以下の条件により測定することができる。昇温速度:10℃/min、保持時間:2分、パン:Al、サンプル質量:10mg、リファレンス:Al
【0030】
前記たばこ材料を23℃の水中に900秒浸漬した際の吸水量は、4.0~6.0g/gであることが好ましい。前記吸水量が4.0~6.0g/gであることにより、べたつきが少なくハンドリング性に優れ、原料投入時に原料が投入しやすくなる。また、非燃焼加熱型香味吸引器の製造の巻き上げの際に、巻き上げがしやすくなる。前記吸水量は、4.2~5.8g/gであることがより好ましく、4.5~5.5g/gであることがさらに好ましい。
【0031】
たばこ材料の前記吸水量は、以下の方法により測定することができる。φ55×80mmのステンレス管に1mm径の穴19個が開いた円筒容器を用意する。ろ紙を該円筒容器内に設置し、その上にたばこ材料のサンプルを3~6g入れる。バットに水道水を張り、バット内に該円筒容器を入れ、900秒後の質量を測定し、1g当たりの吸水量を測定する。該測定を3回実施し、その平均値を吸水量とする。
【0032】
前記たばこ材料の安息角は、40°以下であることが好ましい。該安息角が40°以下であることにより、再生たばこの製造において、原料投入時に原料が投入しやすくなり、製造上好ましい。該安息角は10~40°であることがより好ましく、20~30°であることがさらに好ましい。
【0033】
たばこ材料の安息角は、以下の方法により測定することができる。25mm×25mmの計測台(ピーク材)の4cm上から漏斗にてたばこ材料のサンプルを落とす。計測台からサンプルがこぼれる程度まで落としたら写真を撮影し、画像解析ソフト(キーエンス社製顕微鏡)にて角度を測定する。この測定を3回実施し、その平均値を安息角の値とする。
【0034】
再生たばこに含まれるたばこ材料の量は、再生たばこの質量を100質量%とするとき、20~80質量%であることが好ましく、20~65質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
(たばこ成分)
たばこ成分は、前記たばこ原料に含まれるたばこ由来の成分であり、主な成分としては香喫味に寄与する成分が挙げられる。本実施形態に係る再生たばこは、たばこ成分を単体として含んでもよいが、たばこ原料からたばこ成分を抽出して得られるたばこ抽出液として含むことが好ましい。この場合、たばこ抽出液を抽出した後のたばこ残渣は、たばこ材料の原料として使用することができるため、環境負荷を低減でき、またコスト面でも有利である。再生たばこに含まれるたばこ成分の量は、目的とする香味に応じて適宜設定することができる。
【0036】
(バインダ)
本実施形態に係る再生たばこは、バインダを含むことが好ましい。再生たばこがバインダを含むことで、各原料を結合することができ、所望の形状に好適に成形することができる。バインダの種類は特に限定されないが、例えばグアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。再生たばこに含まれるバインダの量は、再生たばこの質量を100質量%とするとき、1~10質量%であることが好ましく、3~6質量%であることがより好ましい。
【0037】
(繊維材料)
本実施形態に係る再生たばこは、繊維材料を含むことが好ましい。再生たばこが繊維材料を含むことで、再生たばこを成形する際に形成しやすく、またその形状を維持することができる。繊維材料の種類は特に限定されないが、例えばパルプが挙げられる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ以外にも、亜麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ製品用の巻紙に使用される非木材パルプを併用してもよい。再生たばこに含まれる繊維材料の量は、再生たばこの質量を100質量%とするとき、1~15質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。
【0038】
(エアロゾル発生剤)
本実施形態に係る再生たばこは、エアロゾル発生剤を含むことができる。エアロゾル発生剤とは、加熱後、冷却されることによりエアロゾルを生成する材料を示す。エアロゾル発生剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の多価アルコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。再生たばこに含まれるエアロゾル発生剤の量は、再生たばこの質量を100質量%とするとき、5~40質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがより好ましい。
【0039】
(その他材料)
本実施形態に係る再生たばこは、前記たばこ材料、前記たばこ成分、前記バインダ、前記繊維材料、前記エアロゾル発生剤以外にも、例えば香料等のその他材料を含むことができる。香料の種類は、特に限定されず、良好な香味の付与の観点から、特に好ましくはメンソールである。また、香料は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。再生たばこに含まれるその他材料の量は、再生たばこの質量を100質量%とするとき、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。本実施形態に係る再生たばこは、その他材料を含まなくてもよい。
【0040】
(再生たばこの形状)
本実施形態に係る再生たばこは、シート状の再生たばこ、又は該シート状の再生たばこを裁断したシート刻状の再生たばこであることが好ましい。再生たばこがシート状であることにより、たばこ材料、たばこ成分、バインダ、エアロゾル発生剤等の各成分を均質化することができ、加熱時に効率的にエアロゾル発生剤や香味成分を加熱し霧化することができる。また、シート刻みにすることによって巻き上げ時の効率化などの製造適正を得ることができる。再生たばこがシート状である場合、シートの長さ及び幅は、特段制限されることはなく、充填する態様に合わせて適宜調整できる。再生たばこがシート刻状である場合、例えばシート刻の幅は0.4~1.5mm、シート刻の長さは5~15mmであることができる。シート又はシート刻の厚さは、伝熱効率と強度の兼ね合いから、50~800μmが好ましく、100~600μmがより好ましい。
【0041】
また、本実施形態に係る再生たばこは、不織布状のたばこシート(ラミネートシート)であってもよい。ラミネートシートは、たばこ材料と、たばこ成分と、バインダとを含む混合物を不織布によって挟み、得られる積層物を熱溶着によって一定形状に成形して得られる。
【0042】
[再生たばこの製造方法]
本実施形態に係る再生たばこの製造方法は、以下の工程を含む。たばこ原料からたばこ成分を抽出して、たばこ抽出液とたばこ残渣を得る工程(以下、「抽出工程」ともいう。);前記たばこ残渣をアルカリ蒸解処理した後、pHを4.0~6.5に調整する工程(以下、「アルカリ蒸解処理工程」ともいう。);pH調整後の前記たばこ残渣に前記たばこ抽出液をかけ戻す工程(以下、「かけ戻し工程」ともいう。)。前記方法によれば、本実施形態に係る再生たばこを簡便に、効率よく製造することができる。また、環境負荷及びコストを低減することができる。本実施形態に係る方法は、抽出工程、アルカリ蒸解処理工程、かけ戻し工程以外にも、例えば成形工程等の他の工程を含んでもよい。
【0043】
(抽出工程)
本工程では、たばこ原料からたばこ成分を抽出して、たばこ抽出液とたばこ残渣を得る。たばこ原料からたばこ成分を抽出する方法は特に限定されないが、例えばたばこ原料を溶媒に浸漬してたばこ成分を抽出することができる。また、たばこ原料を加熱してたばこ原料からたばこ成分を揮発させ、その蒸気を回収してもよい。
【0044】
たばこ原料を溶媒に浸漬してたばこ成分を抽出する場合、該溶媒としては、例えば水、エタノール等のアルコール、酢酸エチル等が挙げられる。抽出温度、抽出時間は抽出溶媒にもよるが、例えば10~60℃で1~3時間であることができる。たばこ原料を加熱してたばこ原料からたばこ成分を揮発させ、その蒸気を回収する場合、たばこ材料の加熱温度は例えば150~300℃であることができる。蒸気の回収方法は特に限定されないが、例えば生成する蒸気を冷却して回収する、生成する蒸気を蒸留水、エタノール、ヘキサン、2-プロパノール、1-プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン等の溶媒中に通過させて該溶媒中に捕集する、吸着剤やカラム、フィルター等を用いて捕集しその後溶出させる等の方法が挙げられる。
【0045】
(アルカリ蒸解処理工程)
本工程では、前記抽出工程で得られたたばこ残渣をアルカリ蒸解処理した後、pHを4.0~6.5に調整する。アルカリ蒸解処理とは、原料にアルカリ性物質を添加し、加熱処理することを示す。アルカリ蒸解処理としては、水酸化ナトリウムと硫酸ナトリウムの混合液を使用するクラフトパルプ法、水酸化ナトリウム水溶液を使用するソーダパルプ法、重亜硫酸塩および亜硫酸ガス等を使用する酸性亜硫酸塩法、水酸化ナトリウムと重亜硫酸塩を使用する中性亜硫酸塩法等が挙げられる。アルカリ性物質としては特に限定されないが、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム等が挙げられる。アルカリ性物質はアルカリ性物質の水溶液として添加してもよい。アルカリ性物質をアルカリ性物質の水溶液(薬液)として添加する場合、薬液の添加量としては、薬液のpHにもよるが、例えばたばこ残渣(g)と薬液(mL)との比が、1:2~1:100であることが好ましく、1:3~1:100であることがより好ましく、1:3~1:50であることが更に好ましく、1:5~1:50であることが更に好ましく、1:10~1:50であることが特に好ましい。
【0046】
アルカリ蒸解処理は、一般的に、120~180℃で行われる。本実施形態でも、前記一般的な温度で行うことが可能であるが、好ましくは130~230℃、より好ましくは150~180℃である。また、アルカリ蒸解処理の処理時間は、たばこ残渣が十分に蒸解される時間であれば特に限定されない。使用する薬液のpH等によっても異なるが、例えば、5分間~6時間が好ましく、30分間~6時間がより好ましく、1時間~6時間がさらに好ましい。
【0047】
アルカリ蒸解処理後、たばこ残渣のpHを4.0~6.5に調整する。pHの調整は、クエン酸、塩酸、硫酸、硝酸等のpH調整剤を用いることで行うことができる。前記pHは、4.5~6.0であることが好ましく、5.0~6.0であることがより好ましい。なお、たばこ残渣のpHは、以下の方法で測定することができる。たばこ残渣のサンプル1gに対して超純水10mLを添加し、200rpmで10分間震盪する。得られた液のpHを、卓上型pHメーター(商品名:SS211、HORIBA社製)で測定する。
【0048】
(かけ戻し工程)
本工程では、pH調整後の前記たばこ残渣に前記たばこ抽出液をかけ戻す。本工程により、予めたばこ原料から取り出していたたばこ成分をたばこ残渣に戻す。低比熱化されたたばこ残渣を基材として、該基材にたばこ成分を戻すことで、比熱の低い再生たばこを得ることができる。たばこ残渣にたばこ抽出液をかけ戻す方法は特に限定されない。例えば、たばこ残渣にたばこ抽出液を添加して混合し、たばこ残渣にたばこ抽出液を染み込ませることでかけ戻すことができる。かけ戻した後でたばこ抽出液を含むたばこ残渣を乾燥してもよい。
【0049】
(成形工程)
本実施形態に係る方法では、得られた再生たばこをシート状、シート刻状等に成形してもよい。例えば、かけ戻し工程により得られたたばこ成分を含むたばこ残渣と、前記バインダと、前記繊維材料とを混合し、抄造法、キャスト法、圧延法等の公知の方法でシート状に成形することができる。また、シート状に成形された再生たばこを裁刻することで、シート刻状に成形することができる。
【0050】
[非燃焼加熱型香味吸引器]
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器は、本実施形態に係る再生たばこが充填された、たばこ含有セグメントを備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器は、本実施形態に係る再生たばこが充填されたたばこ含有セグメントを備えるため、該たばこ含有セグメントを加熱する際に、少ない電力でたばこ含有セグメントの温度を上昇させることができる。したがって、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制することができる。
【0051】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の一例を図1に示す。図1に示される非燃焼加熱型香味吸引器1は、本実施形態に係る再生たばこが充填されたたばこ含有セグメント2と、周上に穿孔8を有する筒状の冷却セグメント3と、センターホールセグメント4と、フィルターセグメント5と、を備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器は、たばこ含有セグメント、冷却セグメント、センターホールセグメント及びフィルターセグメント以外にも、他のセグメントを有していてもよい。
【0052】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器の軸方向の長さは特に限定されないが、40mm以上、90mm以下であることが好ましく、50mm以上、75mm以下であることがより好ましく、50mm以上、60mm以下であることがさらに好ましい。また、非燃焼加熱型香味吸引器の周の長さは16mm以上、25mm以下であることが好ましく、20mm以上、24mm以下であることがより好ましく、21mm以上、23mm以下であることがさらに好ましい。例えば、たばこ含有セグメントの長さは20mm、冷却セグメントの長さは20mm、センターホールセグメントの長さは8mm、フィルターセグメントの長さは7mmである態様を挙げることができる。なお、フィルターセグメントの長さは4mm以上、10mm以下の範囲内で選択可能である。また、その際のフィルターセグメントの通気抵抗は、セグメント当たり15mmHO/seg以上、60mmHO/seg以下であるように選択できる。これら個々のセグメント長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。さらには、センターホールセグメントを用いずに、冷却セグメントの下流側にフィルターセグメントのみを配置しても、非燃焼加熱型香味吸引器として機能させることができる。
【0053】
(たばこ含有セグメント)
たばこ含有セグメント2は、本実施形態に係る再生たばこが巻紙(以下、ラッパーともいう)内に充填されている。再生たばこを巻紙内に充填する方法は特に限定されないが、例えば再生たばこをラッパーで包んでもよく、筒状のラッパー内に再生たばこを充填してもよい。再生たばこの形状が矩形状のように長手方向を有する場合、再生たばこは該長手方向がラッパー内でそれぞれ不特定の方向となるように充填されていてもよく、たばこ含有セグメント2の軸方向又は該軸方向に対して垂直な方向となるように整列させて充填されていてもよい。
【0054】
(冷却セグメント)
図1に示されるように、冷却セグメント3は筒状部材7で構成される態様を挙げることができる。筒状部材7は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管であってもよい。
【0055】
筒状部材7及び後述するマウスピースライニングペーパー12には、両者を貫通する穿孔8が設けられている。穿孔8の存在により、吸引時に外気が冷却セグメント3内に導入される。これにより、たばこ含有セグメント2が加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾルが形成される。穿孔8の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5mm以上、1.5mm以下であってもよい。穿孔8の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔8は冷却セグメント3の周上に複数設けられていてもよい。
【0056】
穿孔8から導入される外気量は、使用者により吸引される気体全体の体積に対して85体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましい。前記外気量の割合が85体積%以下であることにより、外気によって希釈されることによる香味の低減を十分に抑制することができる。なお、これを別の言い方ではベンチレーション割合ともいう。ベンチレーション割合の範囲の下限は、冷却性の観点から、55体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましい。
【0057】
また、冷却セグメントは、しわ付けされた、ひだ付けされた、ギャザー加工された、又は折り畳まれた適切な構成材料のシートを含むセグメントであってもよい。そのような要素の断面プロフィールは、ランダムに向いたチャネルを示す場合がある。また、冷却セグメントは、縦方向延在チューブの束を含んでいてもよい。このような冷却セグメントは、例えば、ひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれたシート材料を巻紙で巻装して形成することができる。
【0058】
冷却セグメントの軸方向の長さは、例えば7mm以上、28mm以下であることができ、例えば18mmであることができる。また、冷却セグメントは、その軸方向断面形状として実質的に円形であることができ、その直径は例えば5mm以上、10mm以下であることができ、例えば約7mmであることができる。
【0059】
(センターホールセグメント)
センターホールセグメントは1つまたは複数の中空部を有する充填層と、該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻紙)とで構成される。例えば、図1に示されるように、センターホールセグメント4は、中空部を有する第一の充填層9と、第一の充填層9を覆う第一のインナープラグラッパー10とで構成される。センターホールセグメント4は、マウスピースセグメント6の強度を高める機能を有する。第一の充填層9は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース質量に対して、6質量%以上、20質量%以下添加されて硬化された内径φ1.0mm以上、φ5.0mm以下のロッドとすることができる。第一の充填層9は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、第一の充填層9内はほとんど流れない。センターホールセグメント4内部の第一の充填層9が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。なお、センターホールセグメント4が第一のインナープラグラッパー10を持たず、熱成型によってその形が保たれていてもよい。
【0060】
(フィルターセグメント)
フィルターセグメント5の構成は特に限定されないが、単数または複数の充填層から構成されてよい。充填層の外側は一枚または複数枚の巻紙で巻装されてよい。フィルターセグメント5のセグメント当たりの通気抵抗は、フィルターセグメント5に充填される充填物の量、材料等により適宜変更することができる。例えば、充填物が酢酸セルロース繊維である場合、フィルターセグメント5に充填される酢酸セルロース繊維の量を増加させれば、通気抵抗を増加させることができる。充填物が酢酸セルロース繊維である場合、酢酸セルロース繊維の充填密度は0.13~0.18g/cmであることができる。なお、通気抵抗は通気抵抗測定器(商品名:SODIMAX、SODIM製)により測定される値である。
【0061】
フィルターセグメント5の周の長さは特に限定されないが、16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。フィルターセグメント5の軸方向の長さは4~10mmを選択可能であり、その通気抵抗が15~60mmHO/segとなるように選択される。フィルターセグメント5の軸方向の長さは5~9mmが好ましく、6~8mmがより好ましい。フィルターセグメント5の断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等であることができる。また、フィルターセグメント5には香料を含んだ破壊性カプセル、香料ビーズ、香料を直接添加していてもよい。
【0062】
図1に示されるように、センターホールセグメント4と、フィルターセグメント5とはアウタープラグラッパー(外側巻紙)11で接続できる。アウタープラグラッパー11は、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこ含有セグメント2と、冷却セグメント3と、接続済みのセンターホールセグメント4及びフィルターセグメント5とは、マウスピースライニングペーパー12により接続できる。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー12の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つのセグメントを入れて巻くことで接続することができる。なお、これらのセグメントは複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。
【0063】
[非燃焼加熱型香味吸引システム]
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器と、該非燃焼加熱型香味吸引器のたばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、を備える。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器を備えるため、非燃焼加熱型香味吸引器1本あたりの電力消費量を抑制することができる。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器及び前記加熱装置以外に、他の構成を有していてもよい。
【0064】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例を図2に示す。図2に示される非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器1と、非燃焼加熱型香味吸引器1のたばこ含有セグメントを外側から加熱する加熱装置13とを備える。
【0065】
図2(a)は非燃焼加熱型香味吸引器1を加熱装置13に挿入する前の状態を示し、図2(b)は非燃焼加熱型香味吸引器1を加熱装置13に挿入して加熱する状態を示す。図2に示される加熱装置13は、ボディ14と、ヒーター15と、金属管16と、電池ユニット17と、制御ユニット18とを備える。ボディ14は筒状の凹部19を有し、凹部19の内側側面であって、凹部19に挿入される非燃焼加熱型香味吸引器1のたばこ含有セグメントと対応する位置に、ヒーター15及び金属管16が配置されている。ヒーター15は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット18からの指示により電池ユニット17より電力が供給され、ヒーター15の加熱が行われる。ヒーター15から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管16を通じて非燃焼加熱型香味吸引器1のたばこ含有セグメントへ伝えられる。
【0066】
図2(b)においては、模式的に図示しているため、非燃焼加熱型香味吸引器1の外周と金属管16の内周との間に隙間があるが、実際は、熱を効率的に伝達する目的で非燃焼加熱型香味吸引器1の外周と金属管16の内周との間に隙間は無い方が望ましい。なお、加熱装置13は非燃焼加熱型香味吸引器1のたばこ含有セグメントを外側から加熱するが、内側から加熱するものであってもよい。
【0067】
加熱装置による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150℃以上400℃以下であることがより好ましく、200℃以上350℃以下であることがさらに好ましい。なお、加熱温度とは加熱装置のヒーターの温度を示す。
【実施例
【0068】
以下、本実施形態を実施例により詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されない。なお、FT-IR分析における波長3200~3600cm-1の最大吸光度の測定、吸水量の測定、安息角の測定、比熱の測定、及びべたつきの評価は、以下の方法により実施した。
【0069】
[FT-IR分析における波長3200~3600cm-1の最大吸光度の測定]
たばこ材料のFT-IR分析における波長3200~3600cm-1の最大吸光度の測定は、以下の方法により行った。たばこ材料のサンプルをATR測定用ダイヤモンドクリスタルに密着させ、赤外吸収スペクトルを測定した。測定装置としては、フーリエ変換赤外分光装置(商品名:Thermo Scientific Nicolet iS50、Thermo Scientific社製)を用いた。測定方法:ATR法、分解能:4cm-1、積算回数:32回(n=2)の条件で測定を実施した。
【0070】
[吸水量の測定]
たばこ材料の吸水量は、以下の方法により測定した。φ55×80mmのステンレス管に1mm径の穴19個が開いた円筒容器を用意した。ろ紙を該円筒容器内に設置し、その上にたばこ材料のサンプルを3~6g入れた。バットに水道水を張り、バット内に該円筒容器を入れ、900秒後の質量を測定し、1g当たりの吸水量を測定した。該測定を3回実施し、その平均値を各時間における吸水量とした。
【0071】
[安息角の測定]
たばこ材料の安息角は、以下の方法により測定した。25mm×25mmの計測台(ピーク材)の4cm上から漏斗にてたばこ材料のサンプルを落とした。計測台からサンプルがこぼれる程度まで落としたら写真を撮影し、画像解析ソフト(キーエンス社製顕微鏡)にて角度を測定した。この測定を3回実施し、その平均値を安息角の値とした。
【0072】
[比熱の測定]
たばこ材料の比熱として、DSC(示差走査熱量測定)により300℃までの最大比熱容量(mJ/mg・℃)を測定した。具体的には、示差走査熱量計(商品名:DSC7020、(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて、以下の条件により測定した。昇温速度:10℃/min、保持時間:2分、パン:Al、サンプル質量:10mg、リファレンス:Al
【0073】
[べたつきの評価]
たばこ材料のべたつきの評価は、パネラー5名がたばこ材料を手で触り、5件法にて評価した(n=1)。具体的には、「全くべたついていない」を0点、「非常にべたついている」を5点として、0~5点で評価した。なお、前記パネラーは訓練が十分に行われており、べたつきに関する評価の閾値が等しく、パネラー間で統一化されていることが確認されている。
【0074】
[実施例1]
(再生たばこの調製)
たばこ原料として黄色葉を準備した。前記たばこ原料に対して原料質量の12倍の水を加え、50℃、300rpmで1時間攪拌した。その後、手絞りによって抽出液を回収した。これにより、前記たばこ原料からたばこ成分を抽出し、たばこ抽出液とたばこ残渣を得た。次に、前記たばこ残渣に2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を100g/L投入し、180℃で3時間加熱した。その後、クエン酸を添加してpHを5.6に調整することで、たばこ材料を得た。該たばこ材料について、前記方法により、FT-IR分析における波長3200~3600cm-1の最大吸光度、吸水量、安息角、及び比熱の測定、並びにべたつきの評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
得られたたばこ材料を基材として、該たばこ材料に前記たばこ抽出液をかけ戻した。たばこ抽出液をかけ戻したたばこ材料を100質量部と、バインダとしてのグアーガムを3.7質量部と、繊維材料としての針葉樹パルプを3.7質量部と、エアロゾル発生剤としてのグリセリンを14.6質量部と、を混合し、キャスト法にてシート状に成形した。以上により、シート状の再生たばこを調製した。再生たばこの厚みは428μm、密度は0.67mgWB/mm、坪量は285gWB/m、グリセリン含有量は12.7質量%WB、水分含有量は12.1質量%WBであった。
【0076】
(評価)
前記シート状の再生たばこを、図1に示される非燃焼加熱型香味吸引器1のたばこ含有セグメント2内に充填し、非燃焼加熱型香味吸引器を得た。該非燃焼加熱型香味吸引器について加熱試験を実施し、ニコチンデリバリー量と、グリセリンデリバリー量を測定した。具体的には、図2に示される加熱装置13に非燃焼加熱型香味吸引器1を挿入し、たばこ含有セグメントを200℃に加熱した。30秒の予備加熱の後、非燃焼加熱型香味吸引器1の吸口部から吸引することで、吸引する主流煙中に含まれるニコチン及びグリセリンの量を測定した。吸引には吸引機(商品名:RM-20、Borgwaldt社製)を用いた。吸引(パフ)は、30秒に1回、1回あたり55mlを2秒間かけて、計10回行い、パフ毎にニコチン量及びグリセリン量の測定を行った。ニコチン量及びグリセリン量の測定は、GC-FIDを用いて行った。各パフにおけるニコチンデリバリー量を図3、各パフにおけるグリセリンデリバリー量を図4にそれぞれ示す。また、電力消費量(エネルギー)当りの主流煙へのニコチン移行率を表1に示す。ただし、ニコチンおよびグリセリンは本実施形態における再生たばこに含まれる複数の成分の中から成分の指標として示しており、特にニコチンやグリセリンを特異的にデリバリー容易としているものではない。
【0077】
[比較例1]
たばこ原料として黄色葉を準備した。前記たばこ原料に対して原料質量の12倍の水を加え、50℃、300rpmで1時間攪拌した。その後、手絞りによって抽出液を回収した。これにより、前記たばこ原料からたばこ成分を抽出し、たばこ抽出液とたばこ残渣を得た。次に、前記たばこ残渣をオーブン内に入れ、N:Air=92%:8%(酸素濃度:1.7%)の混合気体を1L/分で流通させながら、前記たばこ残渣を230℃で1時間加熱した。これにより、前記たばこ残渣は炭化され、炭化たばこを得た。該炭化たばこについて、前記方法により、FT-IR分析における波長3200~3600cm-1の最大吸光度、安息角、及び比熱の測定、並びにべたつきの評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
得られた炭化たばこを基材として、該炭化たばこに前記たばこ抽出液をかけ戻した。たばこ抽出液をかけ戻した炭化たばこを100質量部と、バインダとしてのグアーガムを3.7質量部と、繊維材料としての針葉樹パルプを3.7質量部と、エアロゾル発生剤としてのグリセリンを14.6質量部と、を混合し、キャスト法にてシート状に成形した。以上により、シート状の再生たばこを調製した。該再生たばこを用いて実施例1と同様に非燃焼加熱型香味吸引器を作製し、評価した。結果を図3図4及び表1に示す。
【0079】
[比較例2]
活性炭(商品名:クラレコール、(株)クラレ製)に、実施例1で得られたたばこ抽出液を添加した。該活性炭を、たばこ抽出液をかけ戻したたばこ残渣の代わりに用いた以外は、実施例1と同様にシート状の再生たばこを調製した。活性炭自体の比熱と吸水量の測定結果、及びべたつきの評価結果を表1に示す。
【0080】
[比較例3]
実施例1と同様にたばこ抽出液とたばこ残渣を得た。その後、たばこ残渣のアルカリ蒸解処理を行わずに、該たばこ残渣に前記たばこ抽出液をかけ戻した。それ以外は実施例1と同様にシート状の再生たばこを調製し、評価した。たばこ残渣自体の各物性の測定結果を表1に示す。また、非燃焼加熱型香味吸引器の評価結果を図3図4及び表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
図3及び図4に示されるように、FT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の最大吸光度が0.40以上であり、かつ、比熱が5mJ/mg・℃以下であるたばこ材料を基材として用い、再生たばこを調製した実施例1では、該再生たばこを含む非燃焼加熱型香味吸引器の評価において、特にパフ数が増加した時にニコチン及びグリセリンデリバリー量が多いことが分かった。また、これに伴い電力消費量(エネルギー)当りの主流煙へのニコチン移行率が高かった(表1)。一方、FT-IR分析にて波長3200~3600cm-1の最大吸光度が0.40未満である、又は、比熱が5mJ/mg・℃を超えるたばこ材料を基材として用い、再生たばこを調製した比較例1及び3では、該再生たばこを含む非燃焼加熱型香味吸引器の評価において、ニコチン及びグリセリンデリバリー量が実施例1よりも少なかった(図3及び図4)。そのため、電力消費量(エネルギー)当りの主流煙へのニコチン移行率が実施例1よりも低かった(表1)。再生たばこの基材の比熱に対する電力消費量(エネルギー)当りの主流煙へのニコチン移行率を示した図5のグラフに示されるように、実施例1では、基材であるたばこ材料の前記最大吸光度が0.40以上であり、かつ比熱が5mJ/mg・℃以下であることにより、電力消費量(エネルギー)当りの主流煙へのニコチン移行率が向上したことが理解できる。また、表1より、実施例1の基材は比較例1及び3の基材よりも安息角が低く、原料投入時に原料が投入しやすくなり、製造適性に優れることが分かった。さらに、実施例1の基材は比較例1及び3の基材と同等の吸水量を示し、べたつきの評価はこれらと同等であった。これより、アルカリ蒸解処理を行っても基材のべたつきに大きな変化はなく、同様にハンドリング性に優れ、原料投入時に原料は投入しやすいことが分かった。
【符号の説明】
【0083】
1 非燃焼加熱型香味吸引器
2 たばこ含有セグメント
3 冷却セグメント
4 センターホールセグメント
5 フィルターセグメント
6 マウスピースセグメント
7 筒状部材
8 穿孔
9 第一の充填層
10 第一のインナープラグラッパー
11 アウタープラグラッパー
12 マウスピースライニングペーパー
13 加熱装置
14 ボディ
15 ヒーター
16 金属管
17 電池ユニット
18 制御ユニット
19 凹部
図1
図2
図3
図4
図5