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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-26
(45)【発行日】2025-12-04
(54)【発明の名称】水晶振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/10 20060101AFI20251127BHJP
【FI】
H03H9/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2025034326
(22)【出願日】2025-03-05
(65)【公開番号】P2025168236
(43)【公開日】2025-11-07
【審査請求日】2025-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2024072183
(32)【優先日】2024-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2025017241
(32)【優先日】2025-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂梨 明大
(72)【発明者】
【氏名】小川 幹
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-161908(JP,A)
【文献】特開2022-140662(JP,A)
【文献】特開2015-170950(JP,A)
【文献】特開2022-025452(JP,A)
【文献】国際公開第2023/276201(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が四角形状のATカットの水晶振動片と、第1方向に沿って設けた2つの接着パッドを有する容器と、前記水晶振動片及び前記2つの接着パッド間に設けた水晶製の台座と、前記水晶振動片、前記台座及び前記接着パッドを接続するシリコーン系の導電性接着剤と、を備え、
前記水晶振動片は、水晶のX軸に沿う2箇所又は水晶のZ′軸に沿う2箇所で前記台座に設着してあり、
前記水晶製の台座は、当該台座に対し前記水晶振動片が、前記X軸に沿う2箇所で接着されているか前記Z′軸に沿う2箇所で接着されているかに応じ、水晶のX軸又はZ′軸を、面に平行な方向に有するものであり、かつ、前記X軸又は前記Z′軸が前記第1方向に平行になる位置関係で前記2つの接着パッドに接着してあり、
前記接着パッド、前記台座及び前記水晶振動片の一端は、前記シリコーン系の導電性接着剤を介して鉛直方向で重なっている水晶振動子において、
前記水晶振動片は、前記X軸に沿う寸法が約0.75mm、前記Z′軸に沿う寸法が約0.51mm、かつ、発振周波数が76.8MHzのものであり、
前記台座の厚みは30~60μmから選ばれた厚みであり、
前記水晶振動片と台座との成す角度が、前記台座と前記水晶振動片が前記導電性接着剤で接着される個所から離れる方向にいくに従い遠ざかるような0.5度以上の角度であることを特徴とする水晶振動子(ただし、前記Z′軸とは、ATカット水晶片の切断角度に由来して水晶の真のZ軸から、ずれた軸である)。
【請求項2】
前記台座は、ATカット水晶片であり、その水晶のX軸に沿う2点で前記2つの接着パッドに接着してあることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記台座は、ATカット水晶片であり、その水晶のZ′軸に沿う2点で前記2つの接着パッドに接着してあることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記台座は、Zカット水晶片であり、その水晶のX軸に沿う2点で前記2つの接着パッドに接着してあることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項5】
前記台座は、先端が前記水晶振動片に備わる励振用電極より前記接着パッド側に位置する大きさのものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の水晶振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台座を有した水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の基準信号源としてATカットの水晶振動子が多用されている。ATカットの水晶振動子の典型例は、容器と容器内に接着された水晶振動片とを備えるものである。
ATカットの水晶振動子に対し、益々、高精度の特性が要求されている。高精度化を図る1つの策として、水晶振動片と容器との間に台座を設ける構造が提案されている。
例えば特許文献1に、台座として水晶振動片と同一の膨張係数を持つ台座を用いる点が記載されている(特許文献1の例えば請求項1)。さらに、台座として、水晶振動片と同じ切断角度の水晶板を用いる点が記載されている(特許文献1の例えば段落4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-135890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水晶振動片と容器との間に台座を介在させる構造において、台座として、水晶振動片と同じ切断角度の水晶板を用いることは、接着構造に起因する熱応力低減に確かに有効と考える。しかし、この出願に係る発明者の検討によれば、接着構造に起因する熱応力を低減するさらなる適正化が必要なことが分かった。
この出願はこのような点に鑑みなされたものであり、従ってこの出願の目的は、水晶振動片と容器との間に水晶片で構成された台座を備える水晶振動子であって、熱応力の低減をさらに図れる新規な構造を有した水晶振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的の達成を図るため、この発明によれば、平面視四角形状のATカットの水晶振動片と、第1方向に沿って設けた2つの接着パッドを有する容器と、前記水晶振動片及び前記2つの接着パッド間に設けた水晶製の台座と、前記水晶振動片、台座及び接着パッドを接続する導電性接着剤と、を備える水晶振動子において、
前記水晶振動片は、水晶のX軸に沿う2箇所又は水晶のZ′軸に沿う2箇所で前記台座に設着してあり、
前記水晶製の台座は、当該台座に対し前記水晶振動片が、前記X軸に沿う2箇所で接着されているか前記Z′軸に沿う2箇所で接着されているかに応じ、水晶のX軸又はZ′軸若しくはZ軸を、面に平行な方向に有するものであり、かつ、厚みTが前記水晶振動片の厚みtに対し、0.9t≦T≦3.1tのものであり、かつ、前記有する軸が前記第1方向に平行になる位置関係で前記2つの接着パッドに接着してあることを特徴とする(ただし、前記Z′軸とは、ATカット水晶片の切断角度に由来して水晶の真のZ軸から、ずれた軸である)。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、水晶製台座を接着パッドに片持ち支持で接着し、この水晶製台座に、ATカットの水晶振動片を片持ち支持で接着してある、片持ち支持構造が多用された水晶振動子を実現できる。
然も、水晶振動片を台座に水晶のX軸に沿う2箇所で接続しているか、水晶のZ′軸に沿う2箇所で接続しているかに応じ、この軸に対応する軸を面に平行な方向に有する水晶製の台座であって所定の厚さの水晶製の台座を用い、かつ、水晶振動片の結晶軸と台座の結晶軸が平行な関係になるような位置関係で水晶振動片及び水晶製台座を接着している構造を持つ晶振動子を実現できる。従って、水晶振動片及び水晶製台座の、熱応力等の影響が最も及び易いと言える2つの接着点の間の部分の結晶学的条件が互いに近い状態で、水晶振動片及び水晶製台座を配置できるので、そうしない場合に比べ、熱膨張係数の影響などを軽減できる。然も、台座は所定厚みのものとしてあるので、後述する実験結果及び解析結果からも分かる通り熱応力低減効果がより図れ、然も、水晶振動子の厚さが厚くなることを抑制できる。
従って、熱応力の低減をさらに図れる新規な構造を有した水晶振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の水晶振動子10を説明するための図である。
図2】第2の実施形態の水晶振動子30を説明するための図である。
図3】本発明における水晶振動片と台座との関係を説明するための図であって、特に水晶の結晶軸に関する関係性を説明するための図である。
図4】本発明を適用した温度補償型水晶発振器の例を説明するための図である。
図5】本発明に係る実験や解析を説明するための図である。
図6】水晶製台座の厚みと応力緩和具合を説明するための図である。
図7】水晶振動片及び水晶製台座の間の距離hや、水晶振動片と水晶製台座とが成す角度θと、クリスタルインピダンスとの関係を説明するための図である。
図8】水晶振動片や励振用電極に対する水晶製台座の寸法と、台座構造の変形例を説明するための図である。
図9】好ましい容器及び好ましい台座を説明するための図である。
図10】水晶振動片の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明中で述べる構造例、使用部材等は、この発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0009】
1. 水晶振動子の実施形態
1-1.第1の実施形態
図1図2は、第1の実施形態の水晶振動子10を説明するための図である。特に、図1(A)は水晶振動子10の上面図、図1(B)は図1(A)中のP-P線に沿った断面図、図1(C)は底面図である。ただし、図1(A)では、蓋部材19を外した状態を示してある。また、図2は、特に水晶振動片11と台座23との関係を説明するための図である。
【0010】
この水晶振動子10は、平面視四角形状のATカットの水晶振動片11と、第1方向aに沿って所定間隔を空けて設けた2つの接着パッド13a、13bを有する容器13と、水晶振動片11及び2つの接着パッド13a、13b間に設けた水晶製の台座23と、水晶振動片11、台座23及び接着パッド13a、13bを接続する導電性接着剤21,25と、を備える水晶振動子である。ここで、この例の場合、第1方向aは、容器13の短手方向に平行な方向としてある。
水晶振動片11は、詳細は後述するが、水晶のX軸に沿う2箇所又は水晶のZ′軸に沿う2箇所で台座23に設着してある。
水晶製の台座23は、詳細は後述するが、当該台座に対し水晶振動片11が、水晶の結晶軸であるX軸に沿う2箇所で接着されているか水晶の結晶軸であるZ′軸に沿う2箇所で接着されているかに応じ、水晶のX軸又はZ′軸若しくはZ軸を、面に平行な方向に有するものであり、かつ、この軸が第1方向aに平行になる位置関係で2つの接着パッド13a、13bに接着してあるものであり、かつ、厚みTが水晶振動片の厚みtに対し、0.9t≦T≦3.1tのものである。なお、前記Z′軸とは、ATカット水晶片の切断角度に由来して水晶の真のZ軸から、ずれた軸である。
水晶振動片11は蓋部材19によって気密封止、例えば真空封止してある。以下、各構成成分について具体的に説明する。
【0011】
ATカットの水晶振動片11は、特に図2に示すように、平面視で四角形状、この例では長方形状のもので、発振周波数に応じた所定の厚みを有するもので、かつ、表裏の主面に励振用電極11aと、励振用電極11aから水晶振動片の1つの短辺に引き出された引出電極11bとを備えたものである。
水晶振動片11は、長辺が水晶の結晶軸であるX軸に平行で、短辺が水晶の結晶軸であるZ′軸に平行な、いわゆるXロングのもの、若しくは、長辺が水晶のZ′軸に平行で、短辺が水晶のX軸に平行な、いわゆるZロングのもの、又は、平面形状が四角形であって、1つ辺が水晶のX軸に平行か、Z′軸に平行なものから、水晶振動子の設計に応じたものを選択する。
【0012】
容器13は、この場合、平面形状が四角形状、具体的には長方形状のセラミックパッケージで構成してある。容器13は、縁に沿って土手部13cを備えている。土手部13cによって囲まれた空間を利用して水晶振動片11を接着パッド13a,13bに実装してある。
また、容器13の外側底面の四隅に、水晶振動子10を任意の電子機器例えば携帯電話用の電子基板に接続するための外部接続端子13d、13e、13f、13gを備えている(図1(C)参照)。4つの端子の2つは、容器内の接着パッド13a、接着パッド13bに、図示しないビア配線又はキャスタレーション配線によって、電気的に接続してある。4つの端子の残りの2つは、目的に応じた任意の利用ができる。
容器13の土手部13cの天面に封止方式に応じた手当をしてある。この例の場合、封止はシーム封止方式を用いることとしているので、土手部13cの天面上に図示しないシームリングを設けてある。封止方式は、金錫等のロー材による封止方式であっても良い。その場合は、土手部13cの天面上に金錫封止封止用のメタライズパターンを設ければ良い。土手部13cは、セラミック製のものとしてある。そして、図1(B)に示すように、土手部13c及び容器13の所定位置に、蓋部材19と外部接続端子のうちの温度センサ用の端子の一方の端子13fとを電気的に接続するための導体13mを、埋め込んである。外部接続端子13fは、当該水晶振動子10が接続される電子装置(図示せず)のアースに接続されるもので、この接続構造により、水晶振動子10の電磁シールド構造が確保できる。
接着パッド13a、13b、土手部13c、導体13m、外部接続端子13d、13e、13f、13gを含む容器13は、例えば、セラミックパッケージ製造技術によって製造できる。
【0013】
蓋部材19は、封止方式に応じた任意のものとできる。封止方式をシーム封止とする場合、蓋部材19は例えばコバール材にニッケルメッキをしたもので構成できる。
第1導電性接着剤21、第2導電性接着剤25は、これに限られないが、シリコーン系の導電性接着剤を用いるのが良い。第1導電性接着剤21、第2導電性接着剤25は同じものを用いても、異なるものを用いても良いが、同じものを用いるのが好ましい。
【0014】
台座23は、これに限られないが、平面視で四角形状のものを用いるのが良い。台座の加工が容易だからである。ただし、台座23の平面形状は例えば三角形や、先端側の幅が狭くなった台形状等、他のものでも良い。
台座23の大きさは、これに限らないが、この例では水晶振動片11より平面的に大きなものとしてある。台座の大きさは水晶振動片より小さい方が好ましい場合がある。この点については、後述する。また、台座23の厚みは、発明者の検討によれば好ましい値があることが分かっている。この点についても、後述する。
台座23は、水晶振動片11が水晶のX軸に沿う2箇所で当該台座に接続されているか、或いは、前記水晶振動片が水晶のZ′軸に沿う2箇所で当該台座に接続されているかによって、それに適したものを用いる。これについて、図2を参照して具体的に説明する。なお、図2中にX,Y′、Z′で示した座標軸は、ATカットに由来する水晶の結晶軸である。軸Y′、軸Z′は、水晶の本来のY軸、Z軸から、ATカットの切断角度に応じて軸がずれていることを示している。
【0015】
図2(A)は、水晶振動片11が水晶のX軸に沿う2箇所で台座23に接続される場合の台座の説明である。すなわち、引出電極11bの末端が水晶振動片11の水晶のX軸に沿って離れた2箇所にあり、これらの箇所で水晶振動片11が台座23aや台座23bに接着される例である。この場合の台座23は、面に平行に水晶のX軸を含みかつこのX軸に沿う2箇所で水晶振動片11を接続できるものである。具体的には、図2(A)左下側に示した、ATカットの水晶片で構成した台座23aであって、水晶のX軸に沿った2箇所に接着用配線23a1、23a2を備えたものである。また、図2(A)の右下側に示しZカットの水晶片で構成した台座23bであって、水晶のX軸に沿った2箇所に接着用配線23a1、23a2を備えたものであっても良い。
水晶振動片11と、台座23aまたは23bは、互いの水晶のX軸が第1方向a(図1(A)参照)に平行な位置関係になるように、台座は接着パッドに、水晶振動片11は台座にそれぞれ接着してある。
【0016】
図2(B)は、水晶振動片11が水晶のZ′軸に沿う2箇所で台座23に接続される場合の台座の説明図である。この場合の台座23cは、面内に水晶のZ軸又はZ′軸を含みかつこのZ軸又はZ′軸に沿う2箇所で水晶振動片11を接続できるものである。具体的には、ATカットの水晶片で構成した台座23cであって、水晶振動片11の引出電極11bに対応して、台座の水晶のZ′軸に沿って接着用配線23c1、23c2を備えたものである。
水晶振動片11と、台座23cは、互いの水晶のZ′軸が第1方向a(図1(A)参照)に平行な位置関係になるように、台座は接着パッドに、水晶振動片11は台座にそれぞれ接着してある。
なお、上記の各台座23a、23b、23cにおいて、水晶振動片のX軸やZ′軸に対し台座のX軸やZ′軸は、真に同一でなくても良い。本発明の目的の範囲内で両者の軸各々は多少の角度ずれる場合や、両者の平行性がずれる場合があっても良い。
【0017】
この実施形態の水晶振動子10では、図1(A),(B)に示したように、水晶製台座23は、1つの短辺側で、容器13の接着パッド13a、13bの位置で、容器13に、第1導電性接着剤21によって片持ち支持された状態で接続固定してある。また、水晶振動片11は、1つの短辺側で、水晶製台座23の接着用配線(23c1、23c2)の位置で、第2導電性接着剤25によって片持ち支持された状態で水晶製台座23に接続固定されている。従って、水晶振動子10の場合は、接着パッド13a、第1導電性接着剤21、台座23の一端、第2導電性接着剤25、水晶振動片11の一端が鉛直方向で重なる状態の構造を有し、かつ、水晶製台座23と水晶振動片11は、同一端で片持ち支持された構造を有したものとなっている。この構造による効果については、後に、実験結果や有限要素法による解析結果を参照して詳述する。
【0018】
1-2.第2の実施形態
次に、第2の実施形態である水晶振動子30について説明する。これについて図3を参照して説明する。図3は、水晶振動子30の図1(B)に示した図に相当する断面図である。
第1の実施形態の水晶振動子10の場合、図1に示しかつ上記したように、接着パッド13a、13b、第1導電性接着剤21、台座23の一端、第2導電性接着剤25、水晶振動片11の一端が、鉛直方向で重なる状態の構造を有し、かつ、水晶製台座23と水晶振動片11は、同一端で片持ち支持された構造を有したものとなっている。これに対し、第2の実施形態の水晶振動子30は、図3に示したように、接着パッド13a,13bに台座23dの一端が第1導電性接着剤21によって接続され、台座23dの長手方向の他端に水晶振動片11の一端が第2導電性接着剤25によって接続されている。すなわち、第1導電性接着剤21による接着点と第2導電性接着剤26による接着点とは台座23dの長手方向の両端に分かれて配置された構造になっている。そのため、この場合の台座23の接着用配線(図示せず)は、台座23の長手方向に渡って長尺な形状のものとする。この水晶振動子30の場合、台座23の自由端側の部分上に水晶振動片11が接着される構造であるので、台座23の先端が揺れた場合の懸念もあるが、熱応力の軽減については、水晶振動子10と同様の効果又はそれ以上の効果が得られる。
【0019】
2.本発明の適用例
図4は、本発明の適用例を説明するための図であり、本発明を適用した温度補償型の水晶発振器40の断面図である。すなわち、図1図2を参照して上記にて説明した第1の実施形態の水晶振動子に温度補償用の集積回路41を設けたものである。温度補償型の水晶発振器に対し本発明を適用したので、台座43の効果が加わるので、その分、精度の高い温度補償型の水晶発振器が期待できる。なお、温度補償型の水晶発振器であるため、それに応じた配線、端子数の変更をしてあるが、それについての説明は省略する。
【0020】
3.本発明の特徴を説明する実験結果、有限要素法解析結果
3-1.台座について
本発明では台座として水晶製の所定の台座を用いる点を特徴の1つとしているがそこに至った検討結果を以下に説明する。
3-1-1.台座有無の周波数ヒステリシス
先ず、台座の有無について検討した。その検討を容易にするために、図5(A)、(B)、(C)に平面図、断面図、底面図で示すような、温度センサ内蔵型の水晶振動子10x(以下、評価試料と略称する場合もある)を用いた。この評価試料10xは、容器13の底側の部分に凹部17を設けてあり、かつ、凹部17内に温度センサとしてのサーミスタ15を内蔵したものである。凹部17の底面にサーミスタ用の端子17a,17bを設けてある。これら端子17a、17bは、容器外側底面の外部接続端子13d、13fに図示しないビア配線やキャスタレーション配線を介して接続してある。
【0021】
この出願に係る発明者は、評価試料として、図1及び図2を参照して説明した水晶振動子10の台座構造を有した実施例の評価試料と、台座を用いない水晶振動子、すなわち、接着パッド13a、13bに水晶振動片11をその一端の位置でシリコーン性導電性接着剤によって直接接着した構造を有した比較例の評価試料を、それぞれ複数個ずつ作製した。
実施例、比較例いずれも、いわゆる1612サイズのセラミックパッケージを用いて試作したものである。実施例、比較例いずれも、実験に用いたATカットの水晶振動片は、Xロングのもので、1612サイズのセラミックパッケージに実装できる大きさのもので、発振周波数が76.8MHz(水晶振動片の厚さは約22μm)のもので、所定の励振用電極を有したものである。用いた水晶振動片の外形寸法は、具体的には、X寸法が約0.75mm、Z′寸法が約0.51mmである。また、実施例で用いた台座は、X寸法が1.0mm、Z′寸法が0.8mm、厚みが40μmのATカット水晶片である。ここで、1612サイズのセラミックパッケージとは、外形の長辺寸法が約1.6mm、短辺寸法が約1.2mmのものであり、その内部は図1を用いて説明した構造のものである。
【0022】
次に、これら実施例及び比較例の評価試料それぞれの周波数温度特性のヒステリシス特性を、測定した。測定は、図示を省略するが、ペルチェ素子を有した基板とペルチェ素子の温度を制御する温度制御部とを有する温度制御装置と、周波数測定装置と、温度測定装置とを用いて行った。
具体的には、ペルチェ素子を有した基板に、実施例及び比較例の評価用試料を、接続する。この評価試料の外部接続端子(図5(C)の13d~13g)のうち水晶振動片11に接続されている端子13e、13gに周波数測定装置を接続し、温度センサ15に接続されている端子13d、13fに温度測定装置を接続する。
次に、温度制御装置によって、ペルチェ素子の温度をt1度~tn(tn>t1)度に所定温度間隔かつ所定昇温条件で上昇させ、その後すぐに昇温時と同じ温度変更条件でt1度に降温する。この昇温、降温時それぞれの評価試料10xの実際の温度は、温度センサ15及び温度測定装置で測定し、水晶振動片11の周波数は周波数測定装置で測定した。これら測定結果に基づき昇温時周波数温度特性と降温時周波数温度特性を抽出した。
次に、昇温時周波数温度特性と降温時周波数温度特性の、各々同じ温度の周波数差すなわち周波数ヒステリシス情報を求め、評価試料ごとに、周波数差の平均値を算出した。
そして、これら平均値を用いて実施例の試料群の上記周波数差の平均値、最大値、最小値と、比較例の試料群の上記周波数差の平均値、最大値、最小値とを求めた。これらの結果を表1に示す。なお、周波数差は、周波数差を発振周波数で除した比率であるppm単位で示してある。表1から、上記定義した昇温時と降温時の周波数差は、平均値で比較すると、実施例のものは比較例のものに対し、0.06/0.026≒0.23であり5分の1程度まで小さくなることが分かる。最大値も実施例のものは比較例に比べ0.09/0.96≒0.09であり11分の1程度に小さいことが分かる。
【0023】
3-1-2.台座の材質と台座の結晶軸
また、別の評価として、有限要素法による下記の評価を実施した。図1を用いて説明した水晶振動子10を模した有限要素法のモデルであって、ATカットの水晶振動片の2つの接着点が並ぶ方向についての水晶の結晶軸条件、台座の材質及び結晶軸の条件を下記表2に示すように設定した4種類の解析モデルを作製した。そして、各解析モデルを25℃から105℃の温度に変化させた際に解析モデル中の水晶振動片の中心点で生じるフォン・ミーゼス応力を求めた。その結果を表2に示す。
【0024】
表2から、上記温度変化によって水晶振動片の中心に生じる応力は、解析モデル1、解析モデル2では366~386kPa程度であるのに対し、解析モデル3、解析モデル4では10kPa程度であり、37分の1程度に小さくなることが分かる。水晶振動片の2つの接着点を結ぶ線分に相当する結晶軸と、水晶製台座であってこの結晶軸に適合する結晶軸を有した水晶製台座を適正な軸関係をもって使用すると、応力を小さくできることが分かる。
従って、表1の結果及び表2の結果から、ATカットの水晶振動片の2点の接着方向を考慮して、台座としてATカット水晶製の台座、Zカット水晶製台座を、適正に選択して使用することは、水晶振動子の接着構造部分の熱応力低減に有効なことが分かる。
【0025】
3-1-3.台座厚みと水晶振動片での応力
また、有限要素法によるさらに別の評価として、水晶製の台座の厚みが水晶振動片での応力にどう影響するかについて検討した。具体的には、表2中の解析モデル4であって、ATカット水晶製の台座の厚みをT、10μmから80μmの間で、10μmステップで違えた8種類の解析モデルを作製した。そして、各解析モデルを、25℃から105℃の温度に変化させた際にモデル中の水晶振動片の中心点で生じるフォン・ミーゼス応力を求めた。図6(A)はその結果を示した図であり、横軸に台座の厚みをとり、縦軸に応力値(相対値)をとって示した図である。また、図6(B)は、台座23の厚みTや水晶振動片11の厚みtの定義を示した図である。
図6(A)から、台座の厚みTが10μmの時の応力を基準にして考えると、台座の厚みTが20μmでは応力は約3分の1になり、台座の厚みTが30μmでは応力は約6分の1になり、台座の厚みTが60μmまで応力は基準の5分の1程度まで上昇し、台座の厚みTがさらに増すと応力は低下する傾向を示すことが分かる。
従って、台座の厚みTは厚い方が良いと言えるが、厚すぎると水晶振動子の容器内に台座が収まらなくなるので限度がある。それらを踏まえて、台座の厚みの適正値を検討すると、下記が言える。
【0026】
この解析モデルの場合、水晶振動片の厚みは約22μm(発振周波数76.8MHz由来)であるので、水晶振動片の厚み22μmを基準にすると、台座の厚みTは、20μm≦T、若しくは水晶振動片の厚み以上の厚みが良く、容器に収納できることを考慮すると20μm≦T≦70μm、若しく、(水晶振動片の厚み≦T≦70μmが良い。また、応力は台座の厚みTが水晶振動片の厚みよりやや薄い20μm程度から60μmまでの範囲で他の場合より小さくなるので、台座の厚みTは20μm≦T≦60μmが良く、さらに30μm≦T≦60μmが良い。上記検討結果を一般化して見ると、次の事も言えると考える。
水晶振動片の厚みをt、台座の厚みをTとしたとき、T≧0.9tが良く。好ましくは0.9t≦T≦3.1t又はt≦T≦3.1tが良く、より好ましくは、0.9t≦T≦2.7t又はt≦T≦2.7tが良く、さらに好ましくは1.3t≦T≦2.7tが良い。ここで、0.9という数値は上記下数値中の20/22≒0.9に基づく。3.1という数値は70/22≒3.18に基づく。2.7という数値は60/22≒2.7に基づく。1.3という数値は30/22≒1.36に基づく。
【0027】
3-1-4.水晶振動片と台座との距離、両者が成す角度
また、別の評価として次の評価を行った。図7はその説明のための図である。上記の3-1-1項で試作した実施例の試料のクリスタルインピダンス(CI)をそれぞれ測定した。そして、各試料について、図7(A)に示すように、水晶振動片11の先端と台座23との距離hと、水晶振動片11と台座23との成す角度θを測定した。
図7(B)は、上記測定結果に基づいて、水晶振動片11の先端と台座23との距離hに対するCIの関係を示した図である。図7(B)から、距離hは、ある程度大きい方が、CIが良化すると言える。また、距離hが小さいと、水晶振動子に衝撃が及んだ際に、水晶振動片11の先端が台座23に接触し破損等の不具合が生じる懸念もあるので、この点からも距離hは、ある程度大きい方が良い。
この例の場合、図7(B)から、距離hを20μm以上であって容器の高さ方向の制約などを考慮した妥当な値にするのが良いと言える。この点を今回試作した水晶振動片の厚み22μmに照らして考えると、距離hは、水晶振動片の厚みtに対し20/22≒0.9t以上の妥当な値にするのが良いとも言える。
図7(C)は、上記測定結果に基づいて、水晶振動片11と台座23との成す角度θに対するCIの関係を示した図である。図7(C)から、角度θはある程度大きい方がCIが良化すると言える。また、上記したように、耐衝撃性を高める観点でも、角度θはある程度大きい方が良いと言える。この例の場合、図7(C)から、角度θを0.5度以上の妥当な角度にするのが良いと言える。
距離hや角度θをある程度大きくすると、導電性接着剤25が水晶振動片11の中央側に流れにくくなると考えられ、導電接着剤の振動部への影響が低減できると考えられ、CIの悪化を防止できると考える。
また、距離hが小さい場合、励振用電極に対する台座からの浮遊容量の悪影響も生じる場合があるので、その対策を考えても距離hはある程度大きい方が良い。
【0028】
3-1-5.台座の大きさ、形状
上記した実施形態では、台座は水晶振動片より大きい例を説明した。しかし。台座は、水晶振動片への熱応力の影響軽減が図れ、かつ、接着強度的に問題が無い範囲であれば、また、水晶振動片と台座との接触を回避する等の理由からも、それほど大きい必要はないと考える。上記の距離hや角度θの影響を考慮しても、台座は、それほど大きい必要はない。この台座の大きさに関する考察を、図8(A)を参照して説明する。
図8(A)は、水晶振動子10の図1(B)に対応する断面図と、台座23の平面図と、水晶振動片11の平面図とを併せて示した図である。水晶振動片11の長辺寸法をLbとし、台座の長辺の各種の寸法例を示している。なお、図8(A)において、Laで示した台座の長手寸法Laは、水晶振動片の長手寸法Lbより大きな寸法を示している。
上記した通り、台座は、水晶振動片への熱応力の影響軽減、耐衝撃対策、浮遊容量対策を考えると、接着強度的に問題が無い範囲であれば、それほど大きい必要が無いと考えたとき、図8(A)の例では、水晶振動片11の先端位置と励振用電極11aの先端位置に対し、台座23の先端位置が異なる4つの例を示してある。
【0029】
第1の例は、台座23の先端位置が、水晶振動片の先端位置と励振用電極の先端位置との間に位置するように台座の長辺寸法をLa1としたものである。
第2の例は、台座23の先端位置が、励振用電極の先端位置と励振用電極の中央位置との間に位置するように台座の長辺寸法をLxとしたものである。
第3の例は、台座23の先端位置が、励振用電極の中央位置と励振用電極の導電性接着剤25側の端の位置との間に位置するように台座の長辺寸法をLyとしたものである。
第4の例は、台座23の先端位置が、励振用電極の導電性接着剤25側の端の位置より導電性接着剤25との間に位置するように台座の長辺寸法をLzとしたものである。
台座の長辺寸法を、La1、Lx、Ly、Lzのいずれにするかは、水晶振動子10の設計に応じ決めれば良い。ただし、台座は、水晶振動片への熱応力の影響軽減等が図れ、かつ、接着強度的に問題が無い範囲であれば良い点を考えると、台座の長辺寸法をLzとするのが良いと考える。すなわち、台座23が励振用電極11aに対向しないように、台座の先端位置が励振用電極の導電性接着剤25側の端の位置より導電性接着剤25との間に位置するようにするのが良いと考える。
【0030】
また、台座の立体的構造であるが、図8(B)、図8(C)に示すように、台座は、台座の厚みを長手方向の途中から他端まで、例えば励振用電極と対向する手前から他端まで薄くした台座23x(図8(B))、台座の厚みを長手方向の中央領域で、例えば励振用電極と対向する領域より少し広い領域で、薄くした台座23y(図8(C))でも良い。
【0031】
上述した実施形態は、発振周波数が76.8MHzの例を示したが、他の周波数であっても本発明は適用できる。例えば、基準信号源として実績の各種周波数帯のものに対しても本発明は有用である。さらに、今後利用されるさらに高周波のもの例えば152MHz帯のもの等に対しても益々有用である。
また、上述した実施形態は、パッケージの外形寸法で言って1612型のものの例を挙げたが、他のサイズのものにも適用できる。パッケージの外形寸法で言って1210のもの、1008のもの、さらに小型のものや、1612サイズより大きなものにも適用できる。特に小型のものの場合、水晶振動片がさらに小型になるので熱応力の影響はより大きくなるから、本発明を適用することで熱応力の低減が図り易いと考える。
【0032】
4.他の好ましい容器と他の好ましい台座
上記の実施形態では、容器の一例として、図1(A)、(B)等を参照して説明した容器13を例示した。すなわち、平面形状が四角形状、具体的には長方形状で、縁に沿ってセラミック製の土手部13cを備え、土手部13cの天面上に図示しないシームリングを備えている容器13を例示した。また、台座の一例として、図2図8等を参照して説明した台座23を例示した。すなわち、平面視で長方形状の台座23であって、配線23a1等が容器13の土手部13c側の側面に引き回してある台座23を例示した。
しかし、圧電デバイスのさらなる特性向上や小型化を図る場合、例えば以下のような構造の容器や台座が好ましい。以下、それらについて、図9(A)、(B)を参照して説明する。ここで、図9(A)は好ましい容器70を説明するため、図1(B)に対応する断面図である。図9(B)は好ましい台座80を説明するための側面図、上面図、背面図(透視図)である。
【0033】
好ましい容器70は、セラミック製の本体部70aと、前記前記本体部70aに接続されていて前記水晶振動片を収容する平面視で四角形状の凹部70bの側壁としての金属製のリング状部材70cとを備えている。詳細には、本体部70aは、平面形状が四角形状、具体的には長方形状のものである。また、金属製のリング状部材70cは、本体部70aの接着パッド13a等が形成されている面の縁に沿って本体部70aに例えばロー材によって接続したものである。従って、金属製のリング状部材70cが、凹部70bの側壁を構成している。従って、金属製のリング状部材70cの平面形状は、図1(A)に示した土手部13cと同様な形状である。金属製のリング状部材70cは、典型的にはコバール材で形成してある。また、図9(A)に示したように、セラミック製の本体部70aの所定位置に、金属製のリング状部材70cと外部接続端子のうちの1つの端子13fとを電気的に接続するための導体13mを、埋め込んである。外部接続端子13fは、当該水晶振動子10が接続される電子装置(図示せず)のアースに接続されるもので、この接続構造により、水晶振動子10の電磁シールド構造が確保できる。
2つの接着パッド13a、13b(図1参照)は、本体部70aの、前記リング状部材70cの第1の辺に相当する第1側壁70ca側の部分上に沿って、設けてある。
この好ましい容器70の場合は、水晶振動片11を実装する凹部が金属製のリング状部材70cで囲われるので、蓋部材19である金属製の蓋と相俟って電磁シールドをより強固にできる等の利点が得られる。従って、水晶振動子の電磁シールド耐性を高めることができる。また、水晶振動片11を実装する凹部(キャビティ)領域を、金属製のリングで規定できるので、所望の凹部を容易に形成できる。また、実施形態の水晶振動子10では図1(A)に示したように、土手部13cとシールリング(図示せず)を用いていたのに対し、容器70の場合は、土手部13cの代わりに金属製のリング状部材を用いるので、水晶振動子の低背化が図り易い。
【0034】
一方、好ましい台座80は、第1面に水晶振動片との接続用の第1配線パターン80a、前記第1面と反対の第2面に容器との接続用、具体的には2つの接着パッド13a、13bとの接続用の第2配線パターン80b、並びに、側壁に第1配線パターン80a及び第2配線パターン80bを接続する第3配線パターン80cを備え、かつ、第3配線パターン80cは、当該台座80の、前記第1側壁70caと対向する側壁とは反対側に位置する側壁に、設けてある。
好ましい台座80は、さらに、第1側壁70caと対向する側壁の両端部に切り欠き部80xを備えている。切り欠き部80xは、C面取り部で構成するのが良い。切欠き部80xの大きさであるが、これに限られないが、例えばC寸法で言って20~70μm好ましくは30~50μm程度が良い。
【0035】
また、第1配線パターン80a及び第2配線パターン80bそれぞれは、台座80の少なくとも第1側壁70ca側に、台座80の縁から中央側に後退する後退部80dを備えている。後退部80dの後退寸法S1は、台座80が金属製のリング状部材70cに接触した場合でも、第1配線パターン80aが金属製のリング状部材70cに接触(短絡)することを防止できる程度の寸法であれば良い。後退寸法S1が大きすぎると配線パターンの面積が小さくなるので、好ましくない。これに限られないが、後退寸法S1は例えば30~50μm程度が良い。
第1配線パターン80a及び第2配線パターン80bそれぞれは、台座80の、容器の第1側壁70caと対向する側壁と交差する2つの側壁の側に、後退部80eをさらに備えている。後退部80eの後退寸法S2は、上記寸法S1と同様に決めればよい。S1とS2は、同じ寸法でも異なる寸法でも良い。また、第2配線パターン80bは、後退部80dに加えて、台座80の後退部80dを設けた辺の中央付近で台座80の縁から台座80の中央側に、後退部80dの後退寸法より大きな後退寸法S3となった後退部80fを備えている。この後退部80fは、台座80をウエハ状態で多数制作した後にウエハから各台座を折り取る際に使用する折り取り治具によって第2配線パターン80bを傷つけないための後退部である。後退部80fの幅や後退寸法S3は、折り取り治具の大きさを考慮して決める。ただし、後退部80fの幅や後退寸法S3が大きすぎると第2配線パターン80bの面積が狭くなり導通の意味で好ましくないので、これら寸法はこの点も考慮するのが良い。
【0036】
上記の好ましい台座80は、第1の凹部70bの側壁を金属製のリング状部材70cで構成した容器70を用いた場合でも、台座を容器70の壁の際まで寄せて配置できる。なぜなら、上記の所定の後退部80d等及び又は切り欠き部80xを備えているので、台座を容器70の壁の際まで寄せて配置しても、台座80の第1配線パターン80a、第2配線パターン80b、第3配線パターン80cが、金属製のリング状部材70cと短絡することは生じない。従って、水晶振動子が益々小型化されて台座80の容器70への実装余裕が狭くなっても、実装を容易にできる。
【0037】
なお、好ましい容器70、好ましい台座80は、図3図4図5を参照して説明した各種の水晶振動子の容器13及び台座23の代わりに用いても勿論良い。
また、上述においては、水晶振動片11は、厚さが一様で平面形状が長方形状のものであったが、水晶振動子の形状は上記の例に限られない。
例えば、図10(A)に示したように、周波数に応じた厚さを有した振動部11cと振動部11cに比べ厚さが厚い支持部11dとを有したいわゆる一辺額縁構造の水晶振動片であっても良い。また、図10(B)に示したように、水晶振動片の振動部と支持部との間に切欠き部11eを有した構造の水晶振動片であっても良い。また、図10(C)に示したように、水晶振動片の振動部と支持部との間に貫通孔11fを有した構造の水晶振動片であっても良い。切欠き部11eや貫通孔17fは、厚さが一様な水晶振動片に設けても良く、また、図10(A)に示した一辺額縁構造の水晶振動片に設けても良い。
【符号の説明】
【0038】
10、30、40:実施形態の水晶振動子、
11:ATカットの水晶振動片 13:容器
13a、13b:第1方向に沿って設けた2つの接着パッド
15:温度センサ 17:温度センサを実装する凹部
19:蓋部材 21:導電性接着剤(第1導電性接着剤)
23:水晶製の台座 25:導電性接着剤(第2導電性接着剤)
70:好ましい容器 70a:セラミック製の本体部
70b:水晶振動片を実装する凹部
70c:金属製のリング状部材 70ca:第1側壁
80:好ましい台座 80a:第1配線パターン
80b:第2配線パターン 80c:第3配線パターン
80d,80e,80f:後退部 80x:切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10