(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-08
(45)【発行日】2025-12-16
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック及び繊維強化プラスチックの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20251209BHJP
B29C 70/12 20060101ALI20251209BHJP
B29K 105/12 20060101ALN20251209BHJP
【FI】
C08J5/04
B29C70/12
B29K105:12
(21)【出願番号】P 2021544245
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2021027404
(87)【国際公開番号】W WO2022024939
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2020126652
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 皓正
(72)【発明者】
【氏名】竹原 大洋
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅登
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/038591(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/060658(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066600(WO,A1)
【文献】特開昭48-034290(JP,A)
【文献】特開昭61-094726(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235485(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16,15/08-15/14
C08J 5/04-5/10,5/24
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の少なくとも一方の表層として、強化繊維と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が一体化されたマトリックスとを含む層を有する繊維強化プラスチックであって、
前記強化繊維は、ランダムに積み重なった不連続強化繊維束を形成するか、又は一方向に配列された不連続強化繊維束を形成し、
前記不連続強化繊維束の一部は、前記熱硬化性樹脂及び前記熱可塑性樹脂の双方と接しており、
前記表層の表面の少なくとも一部には前記熱可塑性樹脂が表出して
おり、
前記表層において、前記強化繊維の平均繊維長が5mm~100mmの範囲であり、
前記表層において、長手含浸距離が50μm以上である、繊維強化プラスチック。
【請求項2】
前記表層において、前記熱硬化性樹脂を主成分とする領域と、前記熱可塑性樹脂を主成分とする領域が界面を形成している、請求項1に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項3】
前記表層において、前記熱可塑性樹脂が表面から厚さ方向に連続した領域を有し、
前記領域内で前記熱可塑性樹脂が前記不連続強化繊維束と接する部分の厚さの最大値が10μm以上である、請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項4】
前記表層において、前記強化繊維の含有率が15体積%以上70体積%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項5】
前記表層において、前記強化繊維は、炭素繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項6】
前記表層において、前記不連続強化繊維束の長手方向の端部と接するボイドの存在比率が5面積%以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項7】
前記表層において、前記不連続強化繊維束同士の間に、前記熱可塑性樹脂が存在する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、隣接する任意の不連続繊維強化束の間を占有する、請求項
7に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項9】
厚さ方向の両方の表層に、前記不連続強化繊維束、前記熱可塑性樹脂及び前記熱硬化性樹脂を有し、
前記熱可塑性樹脂が前記両方の表層の表面に表出している、請求項1~
8のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項10】
繊維強化プラスチックを構成する不連続強化繊維束の少なくとも一部が面外方向に配向する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項11】
請求項1~1
0のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチックの製造方法であって、
熱硬化性樹脂を強化繊維束に含浸させる工程1と、
熱可塑性樹脂を強化繊維束に含浸させる工程2と、
強化繊維束を切断し不連続強化繊維束とする工程3と、
繊維強化プラスチックを構成する基材を、厚さ方向の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂が表出するように必要枚数積層する工程4と、
加熱及び加圧により繊維強化プラスチックを成形する工程5と、を含み、
前記工程5は、前記工程1~4が実施された後に実施されるか、前記工程1、3及び4が実施された後に前記工程2と同時に実施されるか、前記工程2、3及び4が実施された後に前記工程1と同時に実施される、繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂が表出した表層において、前記不連続強化繊維束の長手方向の端部が、前記熱硬化性樹脂又は前記熱可塑性樹脂と接するように流動させる工程6を含む、請求項1
1に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項13】
前記工程6において、
前記熱可塑性樹脂が表出した表層において、前記不連続強化繊維束の少なくとも一部が、前記熱硬化性樹脂及び前記熱可塑性樹脂の双方と接しており、
かつ前記強化繊維束を構成する少なくとも1本の前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂とが、前記強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接するように流動させる、
請求項1
1又は1
2に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック及び繊維強化プラスチックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂をマトリックスとして用い、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維と組み合わせた繊維強化プラスチックは、軽量でありながら、強度や剛性等の力学特性や耐熱性、耐食性に優れている。そのため、繊維強化プラスチックは、航空・宇宙、自動車、鉄道、船舶、土木建築及びスポーツ用品等の数多くの分野に応用されてきた。
【0003】
しかしながら、繊維強化プラスチックは、複雑な形状を有する部品や構造体を単一の成形工程で製造するには不向きであり、上記用途においては、繊維強化プラスチックからなる部材を製造し、次いで、同種又は異種の部材と一体化することが必要である。繊維強化プラスチックと、同種又は異種の部材とを一体化する手法として、ボルト、リベット、ビス等を使用する機械的接合方法や、接着剤を使用する接合方法が用いられている。
【0004】
機械的接合方法では、穴あけ工程等接合部分をあらかじめ加工する工程を必要とするため、製造工程の長時間化及び製造コストの増加につながり、また、穴をあけるため材料強度が低下するという問題があった。接着剤を使用する接合方法においても、接着剤の準備や接着剤の塗布作業を含む接着工程及び硬化工程を必要とするため、製造工程の長時間化につながり、また、接合強度においても信頼性に十分な満足が得られないという課題があった。
【0005】
熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂に用いた繊維強化プラスチックは、他の熱可塑性樹脂を用いた部材と溶着により接合することができるため、比較的工程を簡略化しやすいと言える。例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層が強化繊維束の内部に凹凸形状の境界面を形成している繊維強化樹脂製の積層体が開示されており、当該積層体の熱可塑性樹脂層を介して溶着により他部材と接合することによって、優れた接合強度の接合体が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている熱可塑性樹脂を用いた積層体においては、強化繊維束の内部に熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面が位置する。そのため、強化繊維が荷重を負担して熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面剥離を抑制すると同時に、別の部材と溶着したときに優れた接合強度が得られる。しかしながら、当該積層体は、強度よりも形状追従性を優先すべき用途には必ずしも適したものではなかった。
【0008】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂を介して別の部材と溶着による接合が可能であり、別の部材との接合強度に優れながらも、形状追従性にも優れた繊維強化プラスチックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために本発明は次の構成を有する。
<1>厚さ方向の少なくとも一方の表層として、強化繊維と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が一体化されたマトリックスとを含む層を有する繊維強化プラスチックであって、
前記強化繊維は、ランダムに積み重なった不連続強化繊維束を形成するか、又は一方向に配列された不連続強化繊維束を形成し、
前記不連続強化繊維束の一部は、前記熱硬化性樹脂及び前記熱可塑性樹脂の双方と接しており、
前記表層の表面の少なくとも一部には前記熱可塑性樹脂が表出している、繊維強化プラスチック。
<2>前記表層において、前記熱硬化性樹脂を主成分とする領域と、前記熱可塑性樹脂を主成分とする領域が界面を形成している、<1>に記載の繊維強化プラスチック。
<3>前記表層において、前記熱可塑性樹脂が表面から厚さ方向に連続した領域を有し、
前記領域内で前記熱可塑性樹脂が前記不連続強化繊維束と接する部分の厚さの最大値が10μm以上である、<1>又は<2>に記載の繊維強化プラスチック。
<4>前記表層において、前記強化繊維の含有率が15体積%以上70体積%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック。
<5>前記表層において、前記強化繊維の平均繊維長が5mm~100mmの範囲である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック。
<6>前記表層において、前記強化繊維は、炭素繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック。
<7>前記表層において、前記不連続強化繊維束の長手方向の端部と接するボイドの存在比率が5面積%以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック。
<8>前記表層において、長手含浸距離が20μm以上である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック。
<9>前記表層において、前記不連続強化繊維束同士の間に、前記熱可塑性樹脂が存在する、<1>~<8>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック。
<10>前記熱可塑性樹脂が、隣接する任意の不連続繊維強化束の間を占有する、<9>に記載の繊維強化プラスチック。
<11>厚さ方向の両方の表層に、前記不連続強化繊維束、前記熱可塑性樹脂及び前記熱硬化性樹脂を有し、
前記熱可塑性樹脂が前記両方の表層の表面に表出している、<1>~<10>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック。
<12>繊維強化プラスチックを構成する不連続強化繊維束の少なくとも一部が面外方向に配向する、<1>~<11>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチックの製造方法であって、
熱硬化性樹脂を強化繊維束に含浸させる工程1と、
熱可塑性樹脂を強化繊維束に含浸させる工程2と、
強化繊維束を切断し不連続強化繊維束とする工程3と、
繊維強化プラスチックを構成する基材を、厚さ方向の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂が表出するように必要枚数積層する工程4と、
加熱及び加圧により繊維強化プラスチックを成形する工程5と、を含み、
前記工程5は、前記工程1~4が実施された後に実施されるか、前記工程1、3及び4が実施された後に前記工程2と同時に実施されるか、前記工程2、3及び4が実施された後に前記工程1と同時に実施される、繊維強化プラスチックの製造方法。
<14>前記熱可塑性樹脂が表出した表層において、前記不連続強化繊維束の長手方向の端部が、前記熱硬化性樹脂又は前記熱可塑性樹脂と接するように流動させる工程6を含む、<13>に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
<15>前記工程6において、
前記熱可塑性樹脂が表出した表層において、前記不連続強化繊維束の少なくとも一部が、前記熱硬化性樹脂及び前記熱可塑性樹脂の双方と接しており、
かつ前記強化繊維束を構成する少なくとも1本の前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂とが、前記強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接するように流動させる、
<13>又は<14>に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維強化プラスチックは、表層の表面の少なくとも一部に熱可塑性樹脂が表出していることにより、熱可塑性樹脂を介して別の部材と溶着による接合が可能である。また、不連続強化繊維束の一部が熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方に接しているため、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面での剥離が起こりにくい。さらに、強化繊維が不連続強化繊維束であることにより形状追従性に優れるため、強度と形状追従性を両立すべき用途において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の繊維強化プラスチックの一実施形態を平面視したときの模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の繊維強化プラスチックの一実施形態の断面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の繊維強化プラスチックを製造する際に用いることができる切込プリプレグの一実施形態の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の繊維強化プラスチックの一実施形態の断面模式図であり、最大含浸距離の測定方法の説明を助けるものである。
【
図5】
図5は、本発明の繊維強化プラスチックの一実施形態の断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の繊維強化プラスチックの一実施形態の断面模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の繊維強化プラスチックの一実施形態の断面模式図であり、粗さ平均高さRcの測定方法の説明を助けるものである。
【
図8】
図8は、本発明の繊維強化プラスチックの一実施形態の断面模式図であり、長手含浸距離の測定方法の説明を助けるものである。
【
図9】
図9は、本発明の繊維強化プラスチックの一例であり、本発明の繊維強化プラスチックの形状の例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[繊維強化プラスチック]
以下、適宜図面を参照しながら本発明の繊維強化プラスチックについて説明するが、図面は本発明の理解を容易にするために便宜的に用いるものであって、何ら本発明を限定するものではない。なお、本明細書において繊維強化プラスチックの断面、という場合は、特に断った場合を除き、厚さ方向に平行に切断した断面を指すものとする。
【0013】
本発明の繊維強化プラスチックは、厚さ方向の少なくとも一方の表層として、強化繊維と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が一体化されたマトリックスとを含む層を有する繊維強化プラスチックであって、
前記強化繊維は、ランダムに積み重なった不連続強化繊維束を形成するか、又は一方向に配列された不連続強化繊維束を形成し、
前記不連続強化繊維束の一部は、前記熱硬化性樹脂及び前記熱可塑性樹脂の双方と接しており、
前記表層の表面の少なくとも一部には前記熱可塑性樹脂が表出している。
【0014】
本発明の繊維強化プラスチックには、強化繊維として複数の不連続強化繊維束が含まれる。不連続強化繊維束は、複数の不連続強化繊維から構成されている。不連続強化繊維が束となっていることで、剛性に優れる繊維強化プラスチックとすることが出来る。
【0015】
強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、玄武岩繊維等が挙げられる。これらの中でも、弾性率及び強度及び実用上の観点から、炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維が好ましい。これらの強化繊維は、単独で用いてもよいし、適宜2種以上併用してもよい。
【0016】
強化繊維としては、比重が小さく、高強度、高弾性率であることから、炭素繊維が特に好ましく使用される。炭素繊維の市販品としては、例えば、“トレカ(登録商標)”T800G-24K、“トレカ(登録商標)”T800S-24K、“トレカ(登録商標)”T700G-24K、“トレカ(登録商標)”T700S-24K、“トレカ(登録商標)”T300-3K、及び“トレカ(登録商標)”T1100G-24K(以上、東レ(株)製)等が挙げられる。
【0017】
これらの強化繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては、金属の被着処理、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理等がある。
【0018】
本発明においては、
図1に示すように、不連続強化繊維束2は繊維強化プラスチックの表層中でランダムに積み重なった状態で存在することができる。本発明の繊維強化プラスチックの表層を得る方法の一例としては、予め強化繊維束を切断して得られた不連続強化繊維束をキャリア上に堆積させることで互いに積み重なった状態とし、その後熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を含浸させた基材を成形する方法が挙げられる。本発明におけるランダムに積み重なった不連続強化繊維束の一例としては、シートモールディングコンパウンド(SMC)が挙げられる。不連続強化繊維束がランダムに積み重なっていることで、形状追従性を優れたものとすることができ、相対的に強度よりも形状追従性を優先すべき用途において有利となる。
【0019】
本発明においては、不連続強化繊維束2はランダムに積み重なることができる。ここで、不連続強化繊維束がランダムに積み重なっているとは、本発明の繊維強化プラスチックの表層を平面視したときに、不連続強化繊維束同士が重なる部分を有するもののうちから、無作為に抽出した1つの不連続強化繊維束の、平面に投影した配向方向を基準として、これとは別に無作為に抽出した20個の不連続強化繊維束の配向方向とが面内で交差してなる角度(不連続強化繊維束が交差しない場合、不連続強化繊維束の配向方向の延長線が面内で交差してなす角度とする。)の内、小さい方の角度(以下、これを「二次元配向角」と言うことがある。)を測定した平均値が、10度以上80度以下であることを指す。
【0020】
なお、不連続強化繊維束の平面に投影した配向方向は、平面視にて視認される不連続強化繊維束に含まれる強化繊維を一本選出し、選出した強化繊維の視認できる長手方向の端部を結んだ直線の方向とする。選出する強化繊維は任意であるが、不連続強化繊維束の繊維直交方向の中央付近に存在し、同じ不連続強化繊維束に含まれる周囲の強化繊維が、選出した強化繊維とほぼ平行であることが好ましい。不連続強化繊維束の配向方向の延長線が交差しない場合、二次元配向角は0度とする。
【0021】
本発明においては、二次元配向角の平均値は、より好ましくは30度以上60度以下であり、更に好ましくは40度以上50度以下であり、理想的な角度である45度に近づくほど好ましい。
【0022】
また、本発明においては、表層中の不連続強化繊維束は一方向に配列することができる。不連続強化繊維束が一方向に配列していると、繊維強化プラスチックの強度を優れたものとすることができ、相対的に形状追従性よりも強度を優先すべき用途において有利となる。ここで、不連続強化繊維束が一方向に配列しているとは、前記二次元配向角の平均値が、0度以上10度未満であることを指す。
【0023】
本発明の繊維強化プラスチックの表層を得る方法の一例としては、強化繊維が一方向に配列したプリプレグに含まれる当該強化繊維束の少なくとも一部を切断して不連続強化繊維束とした基材を成形する方法が挙げられる。このようなプリプレグの例としては、
図3に示すような、切込プリプレグ7が挙げられる。
【0024】
なお、切込プリプレグ7を用いる場合、プリプレグに挿入する切込は、強化繊維束の長手方向9に対して直交する切込でも斜めの切込でもよく、また、
図3のように、強化繊維束の長手方向9となす角度θ=±αとなるような斜めの対となる切込8でもよい。切込の形状や、不連続強化繊維束の形状は、特に制限されるものではない。また、切込プリプレグは、
図3に示す長手方向に強化繊維を分断する切込の他に、幅方向に繊維束を分断する強化繊維に平行な切込を有していてもよい。
【0025】
本発明の繊維強化プラスチックは、上記のような状態で存在する不連続強化繊維束を形成する強化繊維と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が一体化されたマトリックスとを含む表層を有する。さらに、前記不連続強化繊維束の一部は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接しており、表層の表面には熱可塑性樹脂が存在している(以下、「熱可塑性樹脂が表出している」と言うことがある)。
【0026】
これにより、熱可塑性樹脂を介して同種又は異種の部材との良好な溶着が可能であるため、熱硬化性樹脂と強化繊維のみからなる繊維強化プラスチックと比べて、接合工程に要する時間を短縮でき、構造部材の成形を高速化することが可能となる。
【0027】
本発明の繊維強化プラスチックにおける形状の例としては、側面に凹凸を有する平板形状、L字部材のような平面部と曲面部を有する形状、リブ形状や凹凸形状のような不連続強化繊維束の少なくとも一部が面外方向に配向する形状が挙げられるが、この限りではない。
【0028】
なお、不連続強化繊維束が面外方向に配向するとは、表層のとある不連続強化繊維束が水平になるように配置した際に、同じ表層の別の不連続強化繊維束の一部が水平に対してなす角度が、5度以上である組み合わせが存在することを指す。
【0029】
本発明の繊維強化プラスチックは、表層において、不連続強化繊維束を構成する強化繊維の平均繊維長が、5mm以上100mm以下であることが好ましい。当該平均繊維長が5mm以上であることによって、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面に存在する強化繊維が十分に荷重を負担することが出来る。よって、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面に負荷される応力が低減され、その結果界面剥離が抑制されるので、接合強度向上の効果が現れやすくなる。また、当該平均繊維長が100mm以下であることによって、繊維強化プラスチックを成形する際の形状追従性に優れるものとなる。
【0030】
また、表層に含まれる不連続強化繊維束それぞれを構成する強化繊維の繊維長は、実質的に同一であることが好ましい。当該繊維長が実質的に同一であることによって、本発明の繊維強化プラスチックの力学特性のばらつきを抑制することができる。
【0031】
ここで、当該繊維長が実質的に同一であるとは、当該表層中に含まれる1つの不連続強化繊維束を構成する強化繊維の平均繊維長(以下、「繊維束長」と言うことがある。)よりも10mm以上長い又は短い強化繊維の本数の割合が、該不連続強化繊維束中に含まれる全ての強化繊維に対して10%以下であることを指す。当該強化繊維の本数の割合は、0%に近いほど好ましいが、製造工程において、基材のずれ、刃の欠損などが生じて設計通りの切断ができず、当該強化繊維の本数の割合は0%より大きくなることがある。
【0032】
さらに、表層に含まれる不連続強化繊維束のうち、側面に接するものを除く全ての不連続強化繊維束の平均繊維長が実質的に同一であることがより好ましい。不連続強化繊維束の平均繊維長が実質的に同一であるとは、表層に含まれる不連続強化繊維束のうち、繊維束長の平均値に対して、繊維束長が10mm以上長い又は短い不連続繊維強化束の束数の割合が10%以下であることを意味する。当該不連続強化繊維束の割合は、0%に近いほど好ましいが、製造工程において、基材のずれ、刃の欠損などが生じて設計通りの切断ができず、当該不連続強化繊維束の束数の割合は0%より大きくなることがある。
【0033】
なお、本発明の繊維強化プラスチックにおいては、熱可塑性樹脂の表出面は、片面であっても両面であってもよい。すなわち、本発明の繊維強化プラスチックにおいては、厚さ方向の両方の表層に、不連続強化繊維束、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む層を有し、熱可塑性樹脂が両方の表層に表出していてもよい。
【0034】
以降、本発明の繊維強化プラスチックにおいて、表層に含まれる熱可塑性樹脂が表出している部分を含む面を「接合面」と呼ぶものとする。なお、繊維強化プラスチックの両面に熱可塑性樹脂が表出している場合には両面が「接合面」となる。
【0035】
接合面の表面における熱可塑性樹脂の占める割合は特に制限されるものではなく、熱可塑性樹脂は接合面の全面に表出していてもよく、接合面の一部のみに表出していてもよい。接合面に表出している熱可塑性樹脂の占める割合が大きいほど、接合に使用できる領域が大きいので、接合力の上昇が期待できる。接合面の表面における熱可塑性樹脂の占める割合として、好ましくは5面積%以上、より好ましくは10面積%以上、更に好ましくは20面積%以上である。
【0036】
さらに、本発明の繊維強化プラスチックにおいては、不連続強化繊維束の一部は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方に接している。このような構造が形成されることで、本発明の繊維強化プラスチックの接合面を用いて同種材又は異種材と接合し、荷重が負荷されたときに、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面をまたいで存在する不連続強化繊維束中の強固な強化繊維が荷重を負担する。そのため、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面にかかる荷重が小さくなり、その剥離を抑制するので、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との見かけ上の界面強度が向上する。
【0037】
また、強化繊維が熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方に接していることで熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面形状が複雑になるため、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との接触面積が増えるとともに、凹凸による引っかかりが生じることで、見かけ上の界面強度の向上がさらに期待される。
【0038】
本発明の繊維強化プラスチックは、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の接触面は、例えば混和層を形成するなど、どのような形態をとっても構わないが、より好ましい形態として、
図2に示すように、表層において、熱硬化性樹脂5を主成分とする領域と、熱可塑性樹脂4を主成分とする領域が界面6を形成していることが好ましい。このような界面構造をとることで、本発明の繊維強化プラスチックにおける、後述する熱可塑性樹脂が表面から厚さ方向に連続した領域の形成などを容易に確認することができる。
【0039】
本発明の繊維強化プラスチックの表層においては、不連続強化繊維束同士の間に、熱可塑性樹脂が存在することが好ましい。係る構成とすることで、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面形状が複雑化された構造をとることができ、接合強度の向上が期待される。係る構造は、例えば表層のとある不連続強化繊維束の長手方向を基準として、厚さ方向に平行な断面を切り出し観察することで確認することができる。
【0040】
ここで、不連続強化繊維束同士の間に熱可塑性樹脂が存在することについて、
図2の断面を例に説明する。繊維強化プラスチック1の厚さ方向に切断した断面において、ある不連続強化繊維束2の長手方向の端部から、別の不連続強化繊維束2の長手方向の端部又は側面を、強化繊維を通過せず、該繊維束間で最短距離になるように直線で結ぶ。その際、該直線は繊維束間に存在する熱可塑性樹脂4、熱硬化性樹脂5、ボイドを通過するが、該直線の全長に対して、熱可塑性樹脂4を通過する長さの合計が30%以上である直線が引けることが、不連続強化繊維束2同士の間に熱可塑性樹脂4が存在することを意味する。
【0041】
不連続強化繊維束同士の間に引いた直線のうち、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が30%以上である直線の中で、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が50%以上である直線の本数の割合としては、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上である。
【0042】
また、本発明の繊維強化プラスチックでは、熱可塑性樹脂が、隣接する任意の不連続強化繊維束の間を占有することが好ましい。係る構成とすることで、熱可塑性樹脂が当該不連続強化繊維束同士の間に十分含浸するので、結果として熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との界面がより複雑化された構造をとることができ、接合強度の向上が期待される。
【0043】
ここで、「熱可塑性樹脂が、隣接する任意の不連続強化繊維束の間を占有する」とは、前記不連続強化繊維束間の直線において、熱可塑性樹脂4を通過する長さの合計が100%である直線が引けることを意味する。複数の不連続強化繊維束の間で、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が100%である直線を引けることがより好ましい。
【0044】
本発明の繊維強化プラスチックにおいて、表層における強化繊維の体積含有率は15体積%以上70体積%以下であることが好ましい。当該体積含有率が15体積%以上であると、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の量が不連続強化繊維束に比べて多くなりすぎず、比強度と比弾性率に優れる傾向がある。また、当該体積含有率が70体積%以下であると、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の含浸不良が生じにくく、得られる繊維強化プラスチックのボイドが少なくなりやすい。当該体積含有率は、より好ましくは20体積%以上70体積%以下であり、更に好ましくは25体積%以上70体積%以下である。
【0045】
ここで、表層における強化繊維の体積含有率とは、強化繊維が存在する領域での体積含有率を意味し、繊維強化プラスチックの表面や層間における強化繊維を含まない、又は強化繊維の数が少なく樹脂が大部分を占める領域を除いて測定、計算する。測定は複数箇所、好ましくは5箇所以上で実施し、各箇所で強化繊維の体積含有率を計算し、その平均値を表層における強化繊維の体積含有率とする。
【0046】
本発明の繊維強化プラスチックでは、表層において、熱可塑性樹脂が表面から厚さ方向に連続した領域を有し、該領域内で熱可塑性樹脂が不連続強化繊維束と接する部分の厚さは、不連続強化繊維束が熱可塑性樹脂と接しやすくなり、接合時に接合面に働く荷重を強化繊維が負担しやすく、かつ接合強度がより向上する観点から、好ましくは最大値が10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、更に好ましくは50μm以上である(以下、当該厚さを「最大含浸距離」と言うことがある)。
【0047】
ここで、熱可塑性樹脂が表面から厚さ方向に連続した領域とは、
図4に示すように、厚さ方向の断面を観察したときに熱可塑性樹脂の境界が繊維強化プラスチック内で連続している領域を有することを言い、例えば
図5に示した、厚さ方向の断面を観察したときに熱可塑性樹脂4’のように境界が表出した熱可塑性樹脂4から連続していない領域は除く。
【0048】
また、最大含浸距離とは、
図4に示すように、厚さ方向に連続した熱可塑性樹脂が、強化繊維束と厚さ方向にて初めて接する箇所を起点に接合面に平行に引いた線を基準線11として、基準線11から描かれる垂基線12と、熱可塑性樹脂が表面から厚さ方向に連続した領域が他の構成要素(熱硬化性樹脂、強化繊維又はボイド)と接する境界線との交点(
図4において垂基線12上に黒点で示された測定点13)のうち、基準線11から最も遠い交点までの距離を言う。
【0049】
本発明においては、不連続強化繊維束がランダムに積み重なった場合は任意の方向の断面において、不連続強化繊維束が一方向に配列された場合は不連続強化繊維束の配列方向に対し45度の角度をなす断面において、後述する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均高さRcは、好ましくは3.5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。係る構造は、不連続強化繊維束及び熱硬化性樹脂・熱可塑性樹脂の流動によって形成されると考えられる。
【0050】
粗さ平均高さRcが3.5μm以上であることにより、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の接触面積がより増えるとともに、凹凸による引っかかりが複雑になることで、見かけ上の界面強度のさらなる向上が期待される。また、界面上に存在する不連続強化繊維が熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂と化学的及び/又は物理的に結合し、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂との界面強度が向上する。
【0051】
粗さ平均高さRcの測定方法としては、公知の手法を用いることが出来る。例えば、X線CTを用いて取得した繊維強化プラスチックの断面画像から測定する方法、エネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素分析マッピング画像から測定する方法、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定する方法が挙げられる。
【0052】
画像観察において、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂は、コントラストを調整するために染色されてもよい。上記のいずれかの手法により得られる画像において、500μm四方の範囲について、断面曲線の粗さ平均高さRcを測定する。
【0053】
粗さ平均高さRcの測定方法の一例を、
図6及び
図7を用いて示す。
図6は本発明の繊維強化プラスチックの断面模式図である。
図6中に示した、熱硬化性樹脂5と熱可塑性樹脂4とが接する界面6のうち、熱硬化性樹脂5と熱可塑性樹脂4の双方に接する不連続強化繊維3が含まれる不連続強化繊維束2を有する領域において粗さ平均高さRcを測定する。
【0054】
図7は
図6において粗さ平均高さRcの測定に用いた領域を拡大したものである。
図7において、熱硬化性樹脂5は熱可塑性樹脂4と界面6で接している。また、界面6上には、ある不連続強化繊維束に含まれる複数の不連続強化繊維3が存在している。基準線11から、熱可塑性樹脂4を通って熱硬化性樹脂5に向かって5μm間隔で垂基線12を描く。基準線11から描かれる垂基線12が初めて熱硬化性樹脂5と交わる測定点14をプロットし、プロットされた点を結んだ線を断面曲線とする。得られた断面曲線につき、JIS B0601(2001)に基づくフィルタリング処理を行い、断面曲線の粗さ平均高さRcを算出する。
【0055】
本発明の繊維強化プラスチックの表層に用いる熱可塑性樹脂の目付は、好ましくは10g/m2以上であり、より好ましくは20g/m2以上である。熱可塑性樹脂の目付が10g/m2以上であると、優れた接合強度を発現するための十分な厚みが得られる。
【0056】
表層における熱可塑性樹脂の目付の上限値は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の含有量が強化繊維の含有量に比べて多くなりすぎず、比強度と比弾性率に優れる繊維強化プラスチックが得られるため、500g/m2以下であることが好ましい。ここで熱可塑性樹脂の目付とは、繊維強化プラスチックの表層1m2あたりに含まれる熱可塑性樹脂の質量(g)を指す。
【0057】
本発明の繊維強化プラスチックの表層における単位面積あたりの強化繊維量は、30g/m2以上2,000g/m2以下であることが好ましい。強化繊維量が30g/m2以上であると、繊維強化プラスチック成形の際に所定の厚みを得るために必要な基材の枚数を少なくすることができ、作業が簡便となりやすい。一方で、強化繊維量が2,000g/m2以下であると、繊維強化プラスチックの前駆体としてのドレープ性が向上しやすくなる。
【0058】
また、本発明の繊維強化プラスチックの表層では、不連続強化繊維束の長手方向の端部と接するボイドの存在比率が5面積%以下であることが好ましい。係る構成とすることによって、不連続強化繊維束の長手方向の端部における応力集中を防ぎ、かつ成形品位及び強度に優れた繊維強化プラスチックを得ることができる。
【0059】
不連続強化繊維束の長手方向の端部と接するボイドの存在比率の測定は以下のように行う。まず、不連続強化繊維束がランダムに積み重なった場合は任意の方向の断面画像を、不連続強化繊維束が一方向に配列された場合は配列方向に平行な方向である厚さ方向の断面画像を複数枚取得する。次に、取得した各画像において、不連続強化繊維束の長手方向の端部が接するボイドの面積と、表層に相当する部分の面積をそれぞれ測定する。最後に、全ての画像において、測定したボイドの面積の合計を表層に相当する部分の面積の合計で割って100を乗じた値を不連続強化繊維束の長手方向の端部と接するボイドの存在比率(%)とする。不連続強化繊維束の長手方向の端部と接するボイドの存在比率は、より好ましくは3面積%以下であり、更に好ましくは1面積%以下である。
【0060】
なお、繊維強化プラスチックの断面画像は、任意の箇所で厚さ方向に切断し、包埋及び研磨後、光学顕微鏡を用いて観察するなどの方法で取得することができる。
【0061】
また、本発明の繊維強化プラスチックの表層において、強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から繊維の長手方向に連続して接している(以下、この接している部分の長さを「長手含浸距離」ということがある。)ことが好ましい。係る構成とすることで、強化繊維を通じた熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との界面形状がより複雑化された構造をとることができ、接合強度の向上が期待される。係る構造は、不連続強化繊維束並びに熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の流動によって形成されると考えられる。
【0062】
強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から繊維の長手方向に連続して接している長さとは、
図8に示すように、熱可塑性樹脂と長手方向の端部で接する任意の不連続強化繊維3の当該端部を起点に、当該強化繊維の側面に沿って引いた線を基準線15として、熱可塑性樹脂4が熱硬化性樹脂5又はボイドと初めて接する境界線との交点(
図8において基準線15上に黒点で示された測定点16)までの距離を言う。
【0063】
より具体的には、長手含浸距離の測定は以下のように行う。まず、表層付近に位置する不連続強化繊維束をランダムに5つ以上選び、当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の配向方向と平行になるように、厚さ方向の断面画像をそれぞれ取得する。次に、取得した各画像において、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方と接している強化繊維を対象に、当該強化繊維が熱可塑性樹脂と接している長手方向の端部から、強化繊維の長手方向に沿って基準線を引く。これが熱硬化性樹脂又はボイドと初めて交わる点を抽出し、端部からの距離を測定し、全ての測定値の平均を長手含浸距離とする。なお、長手含浸距離を測定するにあたり、繊維強化プラスチックの厚さ方向に平行に切断したときに、表層の熱可塑性樹脂が表出した面から厚さ方向に最も近い強化繊維の、表層に近い側の側面は、測定対象から除くものとする。
【0064】
本発明の繊維強化プラスチックでは、長手含浸距離は、接合面に働く荷重を強化繊維が負担しやすく、かつ接合強度がより向上する観点から、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、更に好ましくは100μm以上である。
【0065】
本発明の繊維強化プラスチックは、上記表層のみからなるものであってもよいが、表層以外の層を有する層構造を有していてもよい。このような層構造を有することで、本発明の繊維強化プラスチックの厚さを厚くすることができ、本発明の繊維強化プラスチックを構造部材に活用することができる。表層以外の層としては、連続又は不連続の強化繊維と、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂から構成されるマトリックスからなる層であることができる。このような層構造を構成する層の種類については特に制限はない。
【0066】
また、本発明の繊維強化プラスチックにおいては、強化繊維を含まず、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂からなる樹脂層が存在してもよい。
【0067】
本発明の繊維強化プラスチックにおいては、何らかの加熱手段によって、別の部材(以下、「被着材」と言うことがある。)を繊維強化プラスチックの接合面に存在する熱可塑性樹脂に接合させて、熱可塑性樹脂を通して繊維強化プラスチックと一体化(溶着)することができる。
【0068】
被着材としては、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂を含む部材、金属を含む部材が挙げられる。また、被着材として本発明の繊維強化プラスチックから構成される部材を用いることもできる。本発明の繊維強化プラスチックと被着材を一体化させる手法は特に制限はなく、例えば、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、抵抗溶着、誘導溶着、インサート射出成形、アウトサート射出成形等を挙げることができる。
【0069】
本発明の繊維強化プラスチックにおいてマトリックスに含まれる熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、熱硬化ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、これらの共重合体、これらの変性体、及び、これらの少なくとも2種類をブレンドした樹脂が挙げられる。耐衝撃性向上のために、熱硬化性樹脂には、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていてもよい。また、本発明の繊維強化プラスチックは、硬化を制御するため、硬化剤、硬化促進剤を含んでもよい。
【0070】
これらの中でも、実用性及び汎用性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0071】
エポキシ樹脂は、力学特性、耐熱性及び強化繊維との接着性に優れ、好ましい。エポキシ樹脂の主剤としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル等の臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、N,N,O-トリグリシジル-m-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-4-アミノ-3-メチルフェノール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-2,2’-ジエチル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0072】
また、本発明の繊維強化プラスチックにおいてマトリックスに含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン、ポリアミド6、ポリアミド66等のポリアミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等のポリアリーレンエーテルケトン、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、変性ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これら熱可塑性樹脂は、上述の樹脂の共重合体や変性体、及び/又は2種類以上ブレンドした樹脂等であってもよい。
【0073】
これらの中でも、耐熱性の観点から、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド及びポリエーテルイミドから選ばれる1種又は2種以上が、熱可塑性樹脂中に60質量%以上含まれることが好ましい。耐衝撃性向上のために、熱可塑性樹脂には、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていてもよい。
【0074】
さらに、用途等に応じ、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、他の充填材や添加剤を含有してもよい。熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤等を含有してもよい。
【0075】
本発明の繊維強化プラスチックは、その用途に特に制限はないが、航空機構造部材、風車羽根、自動車外板及びICトレイやノートパソコンの筐体等のコンピューター用途、さらにはゴルフシャフトやテニスラケット等スポーツ用途に好ましく用いられる。
【0076】
[繊維強化プラスチックの製造方法]
本発明の繊維強化プラスチックの製造方法は、
熱硬化性樹脂を強化繊維束に含浸させる工程1と、
熱可塑性樹脂を強化繊維束に含浸させる工程2と、
強化繊維束を切断し不連続強化繊維束とする工程3と、
繊維強化プラスチックを構成する基材を、厚さ方向の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂が表出するように必要枚数積層する工程4と、
加熱及び加圧により繊維強化プラスチックを成形する工程5と、を含み、
前記工程5は、前記工程1~4が実施された後に実施されるか、前記工程1、3及び4が実施された後に前記工程2と同時に実施されるか、前記工程2、3及び4が実施された後に前記工程1と同時に実施される。
【0077】
本発明の繊維強化プラスチックの製造方法においては、加熱によって熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の粘度が低下する。この状態で加圧することで、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とともに不連続強化繊維束が賦形及び/又は伸張などによって流動し、複雑形状に追従しながら、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が不連続強化繊維束に十分含浸した繊維強化プラスチックを成形することが出来る。
【0078】
工程5を工程1~4が実施された後に実施する場合、工程1~4については、どの順番で実施してもよく、その実施手順については制限されるものではない。厚さ方向の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂が表出するのであれば、例えば繊維強化プラスチックを構成する基材を積層後に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の含浸、強化繊維束の切断等を実施しても構わない。その後、工程5によって本発明の繊維強化プラスチックが成形される。
【0079】
また、工程5を工程2と同時に実施する場合、2つの工程を同時に実施できるため、本発明の繊維強化プラスチックを効率よく製造することが可能である。この場合、工程1、3、4はどの順番で実施してもよく、厚さ方向の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂が表出するのであれば、その実施手順については制限されるものではない。その後、工程5と工程2を同時に行うことによって、熱可塑性樹脂を不連続強化繊維束に含浸させながら、本発明の繊維強化プラスチックが成形される。
【0080】
同じく、工程5を工程1と同時に実施する場合、2つの工程を同時に実施できるため、本発明の繊維強化プラスチックを効率よく製造することが可能である。この場合、工程2、3、4はどの順番で実施してもよく、厚さ方向の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂が表出するのであれば、その実施手順については制限されるものではない。その後、工程5と工程1を同時に行うことによって、熱硬化性樹脂を不連続強化繊維束に含浸させながら、本発明の繊維強化プラスチックが成形される。
【0081】
工程1において、熱硬化性樹脂を強化繊維束に含浸させる方法については、特に制限されるものではないが、例えば、強化繊維束を所定の形状にカットした不連続強化繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させる方法、熱可塑性樹脂と不連続強化繊維束が含まれる中間体に熱硬化性樹脂を含浸させる方法、熱可塑性樹脂が含浸した一方向プリプレグをロールカッター等で一定の幅及び繊維長にカットした後に、シート状に分散させ、その片面又は両面から熱硬化性樹脂を含浸させる方法、又は前記一方向プリプレグの特定の箇所に、回転刃、トムソン刃、自動裁断機、レーザー照射等による切込を挿入した後に、その片面又は両面から熱硬化性樹脂を含浸させる方法等が挙げられる。
【0082】
工程2において、熱可塑性樹脂を強化繊維束に含浸させる方法については、特に制限されるものではないが、例えば、強化繊維束を所定の形状にカットした不連続強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる方法、熱硬化性樹脂と不連続強化繊維束が含まれる中間体に熱可塑性樹脂を含浸させる方法、熱硬化性樹脂が含浸した一方向プリプレグをロールカッター等で一定の幅及び繊維長にカットした後に、シート状に分散させ、その片面又は両面から熱可塑性樹脂を含浸させる方法、又は前記一方向プリプレグの特定の箇所に、回転刃、トムソン刃、自動裁断機、レーザー照射等による切込を挿入した後に、その片面又は両面から熱可塑性樹脂を含浸させる方法等が挙げられる。
【0083】
工程3において、強化繊維束を切断し不連続強化繊維束とする方法については、特に制限されるものではないが、例えば、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂が含浸した一方向プリプレグをロールカッター等で一定の幅及び繊維長にカットする方法、前記一方向プリプレグの特定の箇所に、回転刃、トムソン刃、自動裁断機、レーザー照射等による切込を挿入する方法等が挙げられる。
【0084】
工程4において、繊維強化プラスチックを構成する基材を、厚さ方向の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂が表出するように必要枚数積層する方法については、特に制限はなく、人の手によって積層する方法や、ロボットアームなどを用いて積層する方法等が挙げられる。
【0085】
工程5において、加熱温度及び加圧圧力は、本発明の繊維強化プラスチックに用いられる熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の種類によって異なる。加熱温度及び加圧圧力は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の双方が流動する温度及び圧力の範囲とすればよく、また必要に応じて、双方の樹脂とともに不連続強化繊維束が流動する温度及び圧力の範囲とすればよい。
【0086】
加熱及び加圧する方法としては、例えば、ヒートロールによる加熱加圧法、プレス成形法、オートクレーブ成形法、真空圧成形法、内圧成形法等が挙げられる。
【0087】
また、本発明の繊維強化プラスチックの製造方法は、さらに、熱可塑性樹脂が表出した表層において、不連続強化繊維束の長手方向の端部が、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と接するように基材を流動させる工程6を含むことが好ましい。
【0088】
不連続強化繊維束の長手方向の端部が、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と接することによって、不連続強化繊維束の長手方向の端部における応力集中を防ぎ、本発明の繊維強化プラスチックが持つ特徴がさらに発現でき、好ましい。
【0089】
工程6は、工程5よりも前又は工程5と同時に実施されることが好ましい。
【0090】
また、工程6において、熱可塑性樹脂が表出した表層において、不連続強化繊維束の少なくとも一部が、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接しており、かつ強化繊維束を構成する少なくとも1本の前記強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接するように基材を流動させることが好ましい。
【0091】
熱可塑性樹脂が強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接することによって、強化繊維を通じた熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との界面形状がより複雑化され、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との接合がより強固なものとなるので、本発明の繊維強化プラスチックが持つ特徴がさらに発現でき、好ましい。
【0092】
さらに、工程6において、不連続強化繊維束の長手方向の端部と、異なる不連続強化繊維束を結んだ直線上に、熱可塑性樹脂のみが存在する組み合わせを有するように基材を流動させることが好ましい。
【0093】
不連続強化繊維束の長手方向の端部と、異なる不連続強化繊維束を結んだ直線上に、熱可塑性樹脂のみが存在する組み合わせを有することによって、熱可塑性樹脂が繊維束間に深く含浸した構造を取りやすくなる。結果として熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との界面がより複雑化された構造をとることができ、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との接合がより強固なものとなるので、本発明の繊維強化プラスチックが持つ特徴がさらに発現でき、好ましい。
【0094】
本発明の繊維強化プラスチックは、繊維強化プラスチックを構成する基材を単独で、又は他のプリプレグ、シートモールディングコンパウンド、切込プリプレグ等と共に公知の方法で積層し、その後、得られる積層体を加熱及び加圧して硬化するなどの方法によって製造することができる。
【0095】
この場合、製造された繊維強化プラスチックの厚さ方向の少なくとも一方の表層に熱可塑性樹脂が表出していればよく、他の層の積層の順序については制限されない。
【0096】
また、本発明の繊維強化プラスチックは、繊維強化プラスチックを構成する基材をプレス成形によって伸張成形し製造してもよい。本発明の繊維強化プラスチックは、不連続強化繊維束を含有する。そのため、プレス成形を用いると、繊維強化プラスチックに含まれる熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が流動することに伴い、不連続強化繊維束も流動し、本発明の繊維強化プラスチックは形状追従性に優れる。形状追従性に優れる構造の例としては、リブ形状や凹凸形状のような、不連続強化繊維束が面外方向に配向する構造が挙げられるが、この限りではない。
【0097】
この場合、伸張成形により成形される形状は、基材が十分に形状追従し、かつ十分な表面品位及び接合強度が維持できる限りであれば、特に制限はないが、表層の表面積が、繊維強化プラスチックを構成する基材の表面積100%に対して、100%以上200%以下となるように成形することで、本発明の繊維強化プラスチックが持つ形状追従性に優れる特性が発現でき、好ましい。基材の表面積に対する成形品の表面積の範囲としては、好ましくは100%以上180%以下、更に好ましくは100%以上150%以下である。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種特性の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0099】
<材料>
以下に示す材料を用いた。
【0100】
・強化繊維[A]
炭素繊維〔“トレカ(登録商標)”T700S-24K、東レ(株)製、ストランド引張強度:4.9GPa〕を用いた。
【0101】
・熱硬化性樹脂[B]
エポキシ樹脂主剤〔“jER”(登録商標)828(三菱ケミカル(株)製)〕、〔“jER”(登録商標)1001(三菱ケミカル(株)製)〕、〔“jER”(登録商標)154(三菱ケミカル(株)製)〕をそれぞれ30質量部、40質量部、30質量部投入し、150℃で加熱混練を行い、各成分が相溶するまで混練した。次いで、混練を続けたまま、80℃まで降温させた後、硬化剤〔3,3’DAS(3,3’―ジアミノジフェニルスルホン、三菱化学ファイン(株)製)〕を26質量部投入し、80℃で30分混練することにより、熱硬化性樹脂[B]を得た。
【0102】
・熱可塑性樹脂[C]
ポリアミド6〔“アミラン”(登録商標)CM4000(東レ(株)製、3元共重合ポリアミド樹脂、融点155℃)〕のシートを用いた。
【0103】
<評価方法>
・最大含浸距離及び粗さ平均高さ
各実施例及び比較例で作製した繊維強化プラスチックの断面を包埋及び研磨後、光学顕微鏡を用いて接合面近傍の500μm四方の範囲について観察した。得られた画像のコントラストの違いから、炭素繊維、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を判別した。
【0104】
続いて、熱可塑性樹脂が厚さ方向に接合面から連続している領域において、初めて強化繊維と接する箇所を抽出し、その箇所を起点に接合面に平行に引いた線を基準線とした。当該基準線から熱可塑性樹脂を通って熱硬化性樹脂に向かって5μm間隔で垂基線を描き、垂基線が熱硬化性樹脂、強化繊維又はボイドと初めて交わる全ての点をプロットした。プロットされた点から基準線までの距離の最大値を最大含浸距離とした。
【0105】
また、後述の実施例1-1~1-4及び比較例1-1、1-2では任意の方向に対し、実施例2-1、2-2及び比較例2-1では接合面の強化繊維の配向方向に対し45度の角度をなす面を切り出し、断面を包埋及び研磨後、光学顕微鏡を用いて接合面近傍の500μm四方の範囲について観察した。そして最大含浸距離の測定と同様の方法にて基準線及び垂基線を作成し、当該垂基線が、初めて熱硬化性樹脂と交わる測定点をプロットし、プロットされた点を結んだ線を断面曲線とし、フィルタリング処理を行い、粗さ平均高さを算出した。
【0106】
・長手含浸距離
表層付近に位置する不連続強化繊維束をランダムに選び、当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の配向方向と平行になるように、繊維強化プラスチックを厚さ方向に平行に切り出した。厚さ方向に接合面から連続している熱可塑性樹脂が、当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の長手方向の端部と接する箇所を複数抽出した。当該不連続強化繊維束のうち、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方と接している強化繊維を対象に、当該強化繊維が熱可塑性樹脂と接している長手方向の端部から、強化繊維の長手方向に沿って基準線を引いた。これが熱硬化性樹脂又はボイドと初めて交わる点を抽出し、その平均値を長手含浸距離とした。
【0107】
・不連続強化繊維束間における熱可塑性樹脂を通過する長さの測定
上記長手含浸距離の測定に用いた画像において、不連続強化繊維束長手方向の端部から、最短距離となる別の不連続強化繊維束の端部または側面に向かって、強化繊維を通過しないように直線を引き、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計を計測した。このうち熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が30%以上である直線を対象に、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が50%以上である直線の本数の割合を、下記基準に基づいて評価した。
【0108】
A:80%以上
B:50%以上80%未満
C:30%以上50%未満
D:30%未満または熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が30%以上である直線がない
【0109】
・強化繊維の体積含有率
実施例1-1~1-4及び比較例1-1、1-2では、繊維強化プラスチックを任意の方向に切断し、包埋及び研磨後、光学顕微鏡を用いて表層中の不連続強化繊維束の断面画像を取得した。断面画像のうち、観察面に対してほぼ垂直に配向した不連続強化繊維束を選び、当該不連続強化繊維束の繊維体積含有率を面積比から計算した。複数の不連続強化繊維束において繊維体積含有率を計算し、その平均値を表層における強化繊維の体積含有率とした。
【0110】
また、実施例2-1、2-2及び比較例2-1では、繊維強化プラスチックを表層の強化繊維の配向方向に直交する方向に切断し、包埋及び研磨後、光学顕微鏡を用いて表層中の不連続強化繊維束の断面画像を取得した。続いて、断面画像中の不連続強化繊維の繊維体積含有率を面積比から計算した。複数箇所において繊維体積含有率を計算し、その平均値を表層における強化繊維の体積含有率とした。
【0111】
・引張せん断接合強度
各実施例及び比較例で作製した繊維強化プラスチックを、幅250mm、長さ92.5mmの形状に2枚カットし、真空オーブン中で24時間乾燥させた。その後、2枚の繊維強化プラスチックを、熱可塑性樹脂[C]を有する面同士を重ね合わせた。重ね合わせた面積は幅250mm×長さ12.5mmとした。
【0112】
そして、熱可塑性樹脂[C]の融点よりも20℃高い温度にて、3MPaの圧力をかけて、1分間保持することで、重ね合わせた面を溶着し、一体化成形品を得た。得られた一体化成形品に、ISO4587:1995(JIS K6850(1994))に準拠してタブを接着し、幅25mmでカットすることで、試験片を得た。
【0113】
得られた試験片を、真空オーブン中で24時間乾燥させ、ISO4587:1995(JIS K6850(1994))に基づき、引張せん断接合強度を測定し、測定結果を下記基準に基づいて評価した。
【0114】
A:30MPa以上
B:10MPa以上30MPa未満
C:10MPa未満(不合格)又は接合しなかったもの
【0115】
<実施例1-1>
強化繊維[A]を一方向に配列させた強化繊維シート(目付120g/m2)を引き出して連続強化繊維束を製造した。得られた連続強化繊維束に薄く熱硬化性樹脂[B]を塗布した後、周方向に25mm間隔で刃を設けたロータリーカッターに連続して挿入し、チョップド繊維束(不連続強化繊維束)を製造した。
【0116】
また、離型フィルム上に熱硬化性樹脂[B]を塗布し、熱硬化性樹脂[B]のシートを2枚作製した。
【0117】
そして、当該熱硬化性樹脂[B]シート1枚の上に前記チョップド繊維束を均一に散布し、その上にもう一枚の熱硬化性樹脂[B]シートを配置し、熱硬化性樹脂[B]が硬化しないように100℃で加熱しながら0.07MPaにてローラーを用いて圧着させて、SMCプリプレグを製造した。当該SMCプリプレグにおける強化繊維[A]の体積含有率は40%となるように調整した。当該SMCプリプレグにおいて、散布したチョップド繊維束が積み重なった状態となった。
【0118】
300mm角の大きさにカットしたSMCプリプレグを8枚積層し、熱可塑性樹脂[C]シートを片面の表層に貼り付け、繊維強化プラスチック未硬化物積層体を得た。
【0119】
上記繊維強化プラスチック未硬化物積層体を、表面積が300mm×300mmである金型にセットし、ボイドをなくすためプレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、繊維強化プラスチックを得た。
【0120】
得られた繊維強化プラスチックは、厚さにムラの少ないものであった。また、熱硬化性樹脂[B]を主成分とする領域と熱可塑性樹脂[C]を主成分とする領域とが接するように流動し界面を形成している様子、及び不連続強化繊維束間に熱可塑性樹脂[C]が含浸している様子が、断面の観察から確認可能であった。かつ、観察された全ての領域において、不連続強化繊維束の長手方向の端部は目視の範囲では熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と接していた。
【0121】
そして、表層に位置する不連続強化繊維束の一部は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接しており、当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の少なくとも一部は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方と接しており、かつ、強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接しているものが存在した。また、複数の不連続強化繊維束の間で、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が100%である直線を引けた。得られた繊維強化プラスチックでは、十分な接合強度が発現されていた。
【0122】
<実施例1-2>
繊維強化プラスチック未硬化物積層体を、表面積が350mm×350mmである金型にセットし、プレス機で3MPaの圧力をかけ伸張させた以外は、実施例1-1と同様にして、繊維強化プラスチックを得た。
【0123】
得られた繊維強化プラスチックは、実施例1-1と比べて厚さが薄くなったものの厚さにムラの少ないものであり、かつ、プレス後の繊維強化プラスチックは350mm角に隙間なく伸張され、形状追従性に優れたものであった。また、不連続強化繊維束間の距離が実施例1-1と比べて広くなったため、不連続強化繊維束間への熱可塑性樹脂[C]の含浸が実施例1-1に比べてもはっきりと目視可能であり、かつ、観察された全ての領域において、不連続強化繊維束の長手方向の端部は目視の範囲では熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と接していた。
【0124】
そして、表層に位置する不連続繊維強化繊維束の一部は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接しており、当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の少なくとも一部は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方と接しており、かつ、強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接しているものが存在した。また、複数の不連続強化繊維束の間で、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が100%である直線を引けた。得られた繊維強化プラスチックでは、十分な接合強度が発現されていた。
【0125】
<実施例1-3>
300mm角の大きさにカットしたSMCプリプレグと、熱可塑性樹脂[C]シートを8枚ずつ用意した。それぞれのSMCプリプレグの下面に熱可塑性樹脂[C]シートを1枚ずつ配置して、SMCプリプレグと熱可塑性樹脂[C]シートが交互に積層された繊維強化プラスチック未硬化物積層体を得た。当該繊維強化プラスチック未硬化物積層体を実施例1-1に記載の方法で硬化及び接合し、片側の表面に熱可塑性樹脂[C]が表出した繊維強化プラスチックを得た。
【0126】
得られた繊維強化プラスチックは、厚さにムラの少ないものであった。また、熱硬化性樹脂[B]を主成分とする領域と熱可塑性樹脂[C]を主成分とする領域とが接するように流動し、界面を形成している様子、及び不連続強化繊維束間に熱可塑性樹脂[C]が含浸している様子が、断面の観察から確認可能であった。かつ、観察された全ての領域において、不連続強化繊維束の長手方向の端部は目視の範囲では熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と接していた。
【0127】
そして、表層に位置する不連続強化繊維束の一部は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接しており、当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の少なくとも一部は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方と接しており、かつ、強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接しているものが存在した。また、複数の不連続強化繊維束の間で、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が100%である直線を引けた。表層以外の層では、層間に熱可塑性樹脂によって構成される層が観察された。得られた繊維強化プラスチックでは、十分な接合強度が発現されていた。
【0128】
<実施例1-4>
繊維強化プラスチック未硬化物積層体を、表面積が350mm×350mmである金型にセットし、プレス機で3MPaの圧力をかけ伸張させた以外は、実施例1-3と同様にして、繊維強化プラスチックを得た。
【0129】
得られた繊維強化プラスチックは、実施例1-3と比べて厚さが薄くなったものの厚さにムラの少ないものであり、かつ、プレス後の繊維強化プラスチックは350mm角に隙間なく伸張され、形状追従性に優れたものであった。また、不連続強化繊維束間の距離が実施例1-3と比べて広くなったため、不連続強化繊維束間への熱可塑性樹脂[C]の含浸が実施例1-3に比べてもはっきりと目視可能であり、かつ、観察された全ての領域において、不連続強化繊維束の長手方向の端部は目視の範囲では熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と接していた。
【0130】
そして、表層に位置する不連続強化繊維束の一部は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接しており、当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の少なくとも一部は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方と接しており、かつ、強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接しているものが存在した。また、複数の不連続強化繊維束の間で、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が100%である直線を引けた。表層以外の層では、層間に熱可塑性樹脂によって構成される層が観察された。得られた繊維強化プラスチックでは、十分な接合強度が発現されていた。
【0131】
<実施例2-1>
強化繊維[A]を一方向に整列させた連続した状態の強化繊維シート(目付120g/m2)を引き出し、一方向に走行させた。また、熱硬化性樹脂[B]を、離型フィルム上にコーティングし、熱硬化性樹脂[B]のシートを2枚製造した。そして、当該熱硬化性樹脂[B]シートを、前記一方向に走行させた強化繊維[A]シートの上下から、熱硬化性樹脂[B]が硬化しないように、100℃の温度で加熱しながら0.07MPaにてローラーを用いて圧着させて、一方向プリプレグを製造した。
【0132】
その後、回転刃を用いて、一方向プリプレグ中の強化繊維[A]の長手方向に対して14°の角度で、強化繊維[A]の繊維長が25mmとなるように切込を入れ、不連続強化繊維束が一方向に配列された切込プリプレグを得た。切込プリプレグにおける強化繊維[A]の体積含有率は60%となるように調整した。
【0133】
300mm角の大きさにカットした切込プリプレグを、接合面となる表層の強化繊維[A]の配向方向を0°として、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)となるように8枚積層した後、熱可塑性樹脂[C]シートを接合面の表層に貼り付け、繊維強化プラスチック未硬化物積層体を得た。
【0134】
繊維強化プラスチック未硬化物積層体を、表面積が300mm×300mmである金型にセットし、ボイドをなくすためプレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、繊維強化プラスチックを得た。
【0135】
得られた繊維強化プラスチックは、実施例1-1よりもさらに厚さにムラの少ないものであった。また、熱硬化性樹脂[B]を主成分とする領域と熱可塑性樹脂[C]を主成分とする領域とが接するように流動し、界面を形成している様子、及び不連続強化繊維束間に熱可塑性樹脂[C]が含浸している様子が、断面の観察から確認可能であった。かつ、観察された全ての領域において、不連続強化繊維束の長手方向の端部は目視の範囲では熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と接していた。当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の少なくとも一部は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方と接しており、かつ、強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接しているものが存在した。
【0136】
また、複数の不連続強化繊維束の間で、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が100%である直線を引けた。そして表層に位置する不連続強化繊維束の一部は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接していた。得られた繊維強化プラスチックでは、十分な接合強度が発現されていた。
【0137】
<実施例2-2>
繊維強化プラスチック未硬化物積層体を、表面積が350mm×350mmである金型にセットし、プレス機で3MPaの圧力をかけ伸張させた以外は、実施例2-1と同様にして、繊維強化プラスチックを得た。
【0138】
得られた繊維強化プラスチックは、実施例2-1と比べて厚さが薄くなったものの厚さにムラの少ないものであり、かつ、プレス後の繊維強化プラスチックは350mm角に隙間なく伸張され、形状追従性に優れたものであった。また、不連続強化繊維束間への熱可塑性樹脂[C]の含浸がはっきりと目視可能であり、かつ、観察された全ての領域において、不連続強化繊維束の長手方向の端部は目視の範囲では熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接していた。当該不連続強化繊維束を構成する強化繊維の少なくとも一部は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方と接しており、かつ、強化繊維と熱可塑性樹脂とが、強化繊維の長手方向の端部から長手方向に連続して接しているものが存在した。
【0139】
また、複数の不連続強化繊維束の間で、熱可塑性樹脂を通過する長さの合計が100%である直線を引けた。そして表層に位置する不連続強化繊維束の一部は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の双方と接していた。得られた繊維強化プラスチックでは、十分な接合強度が発現されていた。
【0140】
<比較例1-1>
熱可塑性樹脂[C]シートを用いなかった以外は実施例1-1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。
【0141】
得られた繊維強化プラスチックは、既に硬化した状態であったため、引張せん断接合強度測定用の試験片作製の際に、プレス時に積層体が接合せず、評価不能であった。
【0142】
<比較例1-2>
実施例1-1と同様にSMCプリプレグを8枚積層し、熱可塑性樹脂[C]シートを用いずに繊維強化プラスチック未硬化物積層体を作製した。
【0143】
上記繊維強化プラスチック未硬化物積層体を、表面積が300mm×300mmである金型にセットし、ボイドをなくすためプレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、硬化物を得た。その後、当該硬化物の片側表面に熱可塑性樹脂[C]シートを重ね合わせ、180℃及び2時間で溶融させ、熱可塑性樹脂[C]を硬化物に接着させて繊維強化プラスチックを得た。
【0144】
得られた繊維強化プラスチックは、厚さのムラの少ないものであったが、不連続繊維束への熱可塑性樹脂[C]の含浸はほとんど見られず、接合強度も十分とは言えないものであった。
【0145】
<比較例2-1>
熱可塑性樹脂[C]シートを用いなかった以外は実施例2-2と同様に切込プリプレグを積層し、前記繊維強化プラスチック未硬化物積層体を、表面積が350mm×350mmである金型にセットし、プレス機で3MPaの圧力をかけ伸張させ、熱可塑性樹脂[C]を含まない硬化物を作製した。その後、当該硬化物の片側表面に350mm×350mmの大きさにカットした熱可塑性樹脂[C]シートを重ね合わせ、表面積が350mm×350mmである金型にセットし、ボイドをなくすためプレス機で3MPaの圧力をかけ、180℃及び2時間で溶融させ、熱可塑性樹脂[C]を硬化物に接着させて繊維強化プラスチックを得た。
【0146】
プレス後の硬化物は350mm角に隙間なく伸張され、形状追従性に優れたものであった。また、得られた繊維強化プラスチックは、厚さにムラの少ないものであった。しかしながら、不連続繊維束間及び不連続繊維束への熱可塑性樹脂[C]の含浸はほとんど見られず、接合強度も十分とは言えないものであった。
【0147】
・形状追従性の評価
<実施例3-1>
実施例2-1にて製造した切込プリプレグを、接合面となる表層の強化繊維[A]の配向方向を0°として、200mm角の大きさに[0°/90°]sとなるように4枚積層した後、熱可塑性樹脂[C]シートを片面の表層に貼り付け、繊維強化プラスチック未硬化物積層体を得た。
【0148】
繊維強化プラスチック未硬化物積層体を、平面と曲面を有する形状の金型に熱可塑性樹脂[C]が上面になるようにセットし、ボイドをなくすためプレス機で3MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、
図9に示す形状となるような繊維強化プラスチックを得た。
【0149】
プレス後の繊維強化プラスチックの接合面の表層を目視観察したところ、曲面部で皺などは発生しなかった。かつ、曲面の角において後述の比較例3-1と比べて樹脂リッチ部が少なかった。
【0150】
<比較例3-1>
切込を挿入しなかった以外は、実施例3-1と同様に繊維強化プラスチックを得た。
【0151】
得られた繊維強化プラスチックの接合面の表層を目視観察したところ、曲面部の皺はほとんど発生しなかったが、曲面の角の一部領域にて樹脂リッチ部が実施例3-1に比べて多く、形状追従性及び均質性に劣るものであった。
【0152】
実施例1-1~1-4、2-1、2-2及び比較例1-1、1-2、2-1で作製した繊維強化プラスチックの概要と、最大含浸距離、粗さ平均高さ、表層の強化繊維の体積含有率及び引張せん断接合強度の評価結果を表1に示す。
【0153】
なお、実施例の最大含浸距離・粗さ平均高さ及び長手含浸距離は一の位を四捨五入した値であり、比較例に示した最大含浸距離・粗さ平均高さは、熱可塑性樹脂が強化繊維まで到達しなかったため、硬化物の表面を基準線として取得した参考値である。
【0154】
【0155】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2020年7月27日出願の日本特許出願(特願2020-126652)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0156】
1:繊維強化プラスチック
2:不連続強化繊維束
3:不連続強化繊維
4、4’:熱可塑性樹脂
5:熱硬化性樹脂
6:界面
7:切込プリプレグ
8:切込
9:強化繊維束の長手方向
10:強化繊維束の長手方向に直交する方向
11:基準線
12:垂基線
13:含浸距離の測定点
14:粗さ平均高さの測定点
15:強化繊維の側面に沿って引いた基準線
16:長手含浸距離の測定点