(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-10
(45)【発行日】2025-12-18
(54)【発明の名称】再生プラスチック組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 29/44 20060101AFI20251211BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20251211BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20251211BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20251211BHJP
B29B 7/00 20060101ALI20251211BHJP
【FI】
B01J29/44 M
A61L9/00 C
A61L9/01 B
C08L101/00
B29B7/00
(21)【出願番号】P 2021139089
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 直
(72)【発明者】
【氏名】福本 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】川原 潤
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 奨
【審査官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-025824(JP,A)
【文献】特開2005-187794(JP,A)
【文献】特開平7-33172(JP,A)
【文献】特開平11-293032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0002110(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2016-0069818(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
A61L 9/00 ー 9/22
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック(A)と、
下記(B1)からなる臭い除去触媒(B)とを含有し、
前記臭い除去触媒(B)の含有量が0.01~30質量%である、再生プラスチック組成物;
(B1)
Ptが、MFI型ゼオライトに担持されてなる臭い除去触媒。
【請求項2】
廃プラスチック(A)が、ASR(Automobile Shredder Residue)である、
請求項1に記載の再生プラスチック組成物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の再生プラスチック組成物を、溶融混練および/または加熱することを特徴とする脱臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックを含む再生プラスチック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック類は、成形が容易で軽量であり適度な耐久性を有する等の特性から、各種用途に広く用いられており、これに伴い多量の廃プラスチック(プラスチック廃棄物)が排出されている。そして、省資源化、環境保護等の観点から、廃プラスチックの再生利用の拡大が望まれている。しかしながら、廃プラスチックをリサイクル使用して得られた再生プラスチック製品は、廃プラスチックを洗浄処理して用いた場合においても、廃プラスチックに染み付いた成分などに起因して臭気を発生するという問題があった。このため、再生プラスチックの臭気の除去が求められていた。
【0003】
再生プラスチック等の臭気を脱臭する技術として、特許文献1には、廃プラスチックに、1~5重量%の水酸化カルシウムを添加することにより、刺激臭や生ごみ臭などの臭気が除去され、且つ実用に供し得る強度が確保された再生プラスチック成形品を製造することが開示されている。特許文献2には、天然繊維を含有するプラスチック成形品の、天然繊維に起因する悪臭発生を、酸化カルシウム/水酸化カルシウムを添加することにより防止することが開示されている。特許文献3には、廃棄物を水蒸気共存下で加熱するか、又は加熱後の排気ガスに水蒸気を混合し、冷却して露結させる事により、プラスチック等の廃棄物を加熱する際の排気の臭気を低減することが開示されている。特許文献4には、魚用荷箱などの使用済みの発泡成形体を(a)燐酸、水溶性の燐酸塩または混合物の水溶液で処理するか、(b)水蒸気で処理することにより、脱臭することが開示されている。また特許文献5には、ポリエチレン及び/又はポリプロピレン、珪藻土、酸化鉄マスターバッチ及び潤滑剤を配合し、乾燥後に、加温造粒したプラスチック材料が、難燃・消臭等の特性を有し、再生利用も可能なことが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-210199号公報
【文献】特開2002-194231号公報
【文献】特開2001-162249号公報
【文献】特開平6-322174号公報
【文献】特開2018-28023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、廃プラスチックの再生利用は広く望まれているが、廃プラスチックに由来する臭気を充分に低減できない場合があった。
また使用済みの自動車についても再生利用の拡大が求められており、ASR(Automobile Shredder Residue、自動車破砕残さ)についても再生利用が望まれているが、ASRは、スチーム洗浄等を施して再成形した後においても特有の臭気を有するため、種々の用途に適用するためにはさらなる脱臭が求められている。
【0006】
本発明は、廃プラスチックを含み、臭気を高度に低減した再生プラスチック組成物を提供することを課題とする。特に、ASRなどの一般的な脱臭方法では除去できない臭気を有する廃プラスチックの臭気を充分に低減した再生プラスチック組成物を提供すること、廃プラスチックの臭気低減方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の状況に鑑みて鋭意検討した結果、廃プラスチックの臭気成分を分解し得るとともに、廃プラスチックの分解は生じない、特定の臭い除去触媒を含有する再生プラスチック組成物が、上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば以下の〔1〕~〔7〕の事項に関する。
〔1〕廃プラスチック(A)と、
下記(B1)および(B2)の1種以上からなる臭い除去触媒(B)とを含有し、
前記臭い除去触媒(B)の含有量が0.01~30質量%である、再生プラスチック組成物;
(B1)第8~12族の金属元素の1種以上が、多孔質担体に担持されてなる臭い除去触媒、
(B2)2種以上の遷移金属元素を含む複合酸化物、または、2種以上の遷移金属元素酸化物の混合物からなる臭い除去触媒。
【0009】
〔2〕前記臭い除去触媒(B1)が、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuから選ばれる元素を含む、〔1〕に記載の再生プラスチック組成物。
〔3〕前記臭い除去触媒(B1)がPtを含む、〔1〕または〔2〕に記載の再生プラスチック組成物。
【0010】
〔4〕前記臭い除去触媒(B2)が、
Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の第1金属元素、
Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、La
およびSmからなる群から選択される少なくとも1種の第2金属元素、および
Ceの、酸化物または複合酸化物を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の再生プラスチック組成物。
【0011】
〔5〕前記臭い除去触媒(B2)が、Ru、CuおよびCeの、酸化物または複合酸化物を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の再生プラスチック組成物。
〔6〕廃プラスチック(A)が、ASR(Automobile Shredder Residue)中のプラスチック成分を含有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の再生プラスチック組成物。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の再生プラスチック組成物を、溶融混練および/または加熱することを特徴とする脱臭方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃プラスチックを含み、臭気を高度に低減した再生プラスチック組成物ならびに脱臭方法を提供することができる。また特に、ASRなどの一般的な脱臭方法では除去できない臭気を有する廃プラスチックの臭気を充分に低減した再生プラスチック組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<廃プラスチック(A)>
本発明で用いる廃プラスチック(A)は、プラスチック製品の廃棄物全般を意味し、産業系廃棄物および一般廃棄物のいずれであってもよい。
【0014】
産業系廃棄物とは樹脂メーカーや成形メーカーからでる廃棄物すべてあり、産業廃棄物である廃プラスチック(A)としては、例えば、エチレンープロピレン系共重合体(EPR、EPDM)、スチレンーブタジエンースチレン共重合体(SBS)やその水素添加物(SEBS)などのゴム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びこれらを主体とする共重合体などのオレフィン系共重合体、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS)、アクリロニトルーブタジエンースチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのビニル系重合体、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PBT、PET)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)などのエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。これらの廃棄物はポリアーアロイ化、ラミネート化されているものや、ゴミとして複数混合された状態のものも含まれる。
【0015】
また、本発明で用いる廃プラスチック(A)として、自動車、家庭用器具、電子機器などの耐久性消費財を破砕した後、金属を回収した後に得られる廃プラスチックを上げることができる。特に、自動車を破砕した後、金属を回収した残りの、プラスチックを主成分とした残渣をASR(Automobile Shredder Residue)と称し、本発明で用いる廃プラスチックとして挙げることができる。
【0016】
また一般廃棄物とは一般家庭から出される廃棄物すべてであり、一般廃棄物である廃プラスチック(A)としては、具体的には産業系廃棄物である廃プラスチック(A)と同様のものを挙げることができる。さらに本発明で用いる廃プラスチック(A)は、産業系廃棄物と、一般廃棄物とが混合していても構わない。
【0017】
<臭い除去触媒(B)>
本発明に係る臭い除去触媒は、下記(B1)および(B2)の1種以上からなる。
【0018】
臭い除去触媒(B1)
本発明に係る臭い除去触媒(B1)は、第8~12族の金属元素の1種以上が、多孔質担体に担持されてなる臭い除去触媒である。
・多孔質担体
臭い除去触媒(B1)を構成する多孔質担体は、第8~12族の金属元素の1種以上からなる金属成分を担持し得るものであり、たとえば、ゼオライト、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、チタニア等の酸化物系担体や、活性炭系担体等が挙げられる。これらのうちでは酸化物系担体が好ましく、より好ましくは複合酸化物担体である。
複合酸化物担体としては、金属成分を担持し得るものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、チタン酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらのうちでも、ゼオライト(結晶性アルミノケイ酸塩)が好ましく、MFI型ゼオライトが特に好ましい。
【0019】
複合酸化物担体がMFI型ゼオライトである場合、そのシリカ/アルミナ比(SiO2/Al2O3 (mol/mol))は通常45以下、好ましくは40以下、より好ましくは20~30の範囲であることが望ましい。シリカ/アルミナ比がこのような範囲であると、臭気物質等の吸着効果に優れるため好ましい。複合酸化物担体の平均粒径は、いずれも10nm~20μmの範囲であるのがより好ましく、特に好ましい範囲は10nm~10μmである。
【0020】
・第8~12族の金属元素(金属成分)
本発明に係る臭い除去触媒(B1)では、第8~12族の金属元素(金属成分)の1種以上が、多孔質担体に担持されている。担持されている金属成分は、周期表第8~12族の金属元素であって、たとえば、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、ZnおよびCd、好ましくは、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAu、の1種以上が挙げられる。
【0021】
金属成分は、第8~12族の金属元素の1種以上を含めばよいが、好ましくはPt(白金)を含む。すなわち、本発明に係る臭い除去触媒(B1)は、Ptを含む1種以上の金属成分が担持されたものであることが好ましく、具体的には、金属成分としてPtのみが多孔質担体に担持されていてもよく、PtとPt以外の金属元素が多孔質担体に担持されていてもよい。金属成分が、Ptと、Pt以外の金属元素を含む場合、Pt以外の金属元素としては、たとえば、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Cu、AgおよびAuが挙げられる。担持されている金属種は、Ptのみであってもよく、Ptとその他の金属との組み合わせであってもよく、好ましくは、Ptのみ、あるいはPtと、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Cu、AgおよびAuから選ばれる少なくとも1つとの組み合わせである。担持されている金属元素全体(Ptとその他の金属の合計)中のPtの割合は、通常1mol%以上、好ましくは10mol%以上である。
【0022】
臭い除去触媒(B1)中における金属成分量は、金属成分全体の金属換算量で、通常0.01~10質量%、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.01~1質量%の範囲である。金属成分の担持量がこのような範囲であると、十分な臭い除去効果を達成できるため好ましい。
本発明に係る臭い除去触媒(B1)は、1種単独であってもよく、2種以上が組み合わされていてもよい。
【0023】
・臭い除去触媒(B1)の製造方法
本発明に係る臭い除去触媒(B1)を製造する方法としては、上述した多孔質担体に、上述した第8~12族の金属元素成分を担持させる方法を、特に制限なく採用することができる。
【0024】
臭い除去触媒(B1)の製造方法としては、例えば、第8~12族の金属、金属化合物あるいはそれらの混合物を、含浸担持、物理混合、イオン交換法、ポアフィリング法等により複合酸化物等の多孔質担体に担持し、必要に応じて還元する方法が挙げられる。好ましくは、金属化合物の溶液あるいは分散液を多孔質担体に含浸させ、必要に応じて乾燥した後、還元する方法が挙げられる。
【0025】
金属成分がPtを含む場合、含浸に用いられるPtの化合物としては、例えば、塩化白金、酸化白金、硝酸白金、ジニトロジアミン白金、酢酸白金、シュウ酸白金等が挙げられる。また、その他の金属の化合物としては、金属塩、金属酸化物等が挙げられる。さらに、複数の金属を担持する場合、含浸に用いられる金属化合物は、複数の金属を含む複塩等であってもよい。
【0026】
含浸により担持された金属化合物の還元は、例えば、熱分解による還元方法、水素や一酸化炭素による気体の還元剤による還元方法、エタノール、メタノール、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムのような液体の還元剤による還元方法により行うことができる。また、液相還元法を使用することにより、多孔質担体への金属成分の担持と還元を同時的に行うこともできる。金属化合物の担持及び還元は、一度の操作で行ってもよく、複数回繰り返して行ってもよい。
【0027】
臭い除去触媒(B2)
本発明に係る臭い除去触媒(B2)は、2種以上の遷移金属元素を含む複合酸化物、または、2種以上の遷移金属元素酸化物の混合物からなる。
【0028】
好ましくは、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)およびPt(白金)からなる群から選択される少なくとも1種の第1金属元素、
Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)、Sc(スカンジウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Y(イットリウム)、La(ランタン)およびSm(サマリウム)からなる群から選択される少なくとも1種の第2金属元素、
ならびにCe(セリウム)の、
複合酸化物あるいは酸化物の混合物からなる。本発明に係る臭い除去触媒(B2)が、前記第1金属元素、第2金属元素およびCeの、複合酸化物あるいは酸化物の混合物(以下、酸化物類ともいう)である場合、前記第1金属元素の原子、前記第2金属元素の原子およびCe原子の合計に対するCe原子の割合が15モル%以上であることが好ましい。
【0029】
前記第1金属元素はRuと同様に高い酸化作用を示す貴金属元素であり、前記第2金属元素は前記第1金属元素が分散するのに寄与する元素である。第2金属元素のうち、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnは遷移金属元素(Znも遷移金属元素に含まれるものとする。)であって価数変化し易いことから、Ceの価数変化を促すことにより、酸素欠陥生成を促進する。酸素欠陥の存在により、前記第1金属元素(のみ)の酸化物が、小さい粒子であっても安定化されることにより、Ceおよび第2金属元素の酸化物粒子中に高分散化される。第2金属元素のうち、希土類に属するSc、Y、LaおよびSmは、Ce酸化物に固溶しやすく、酸素欠陥生成を促進することにより、第1金属元素の高分散化に寄与する。さらに、第2金属元素のうちAlおよびSiは、それらの酸化物が高比表面積であり、それにより前記第1金属元素の高分散化に寄与する。第2金属元素はこのように機能するものと推測される。このため本発明に係る臭い除去触媒(B2)は、良好な臭い除去性能を発揮するものと推測される。
【0030】
前記第1金属元素は、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくはRu、RhおよびPdからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはRuである。
【0031】
前記第2金属元素は、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、LaおよびSmからなる群から選択される少なくとも1種であり、たとえばTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種、Sc、Y、LaおよびSmからなる群から選択される少なくとも1種、またはAlおよびSiからなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくはFe、Co、NiおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはCuである。
【0032】
前記酸化物類の例としては、前記第1金属元素の酸化物、前記第2金属元素の酸化物およびCeの酸化物の混合物(以下「酸化物混合物」とも記載する。)、前記第1金属元素、前記第2金属元素およびCeの複合酸化物が挙げられる。これらの中でも前記複合酸化物が好ましい。前記複合酸化物の詳細な構造は必ずしも明らかではないが、前記複合酸化物は、たとえば、Ceを含む酸化物に第1金属元素または第2金属元素が固溶したもの、Ceおよび第2金属元素の酸化物粒子中に第1金属元素の酸化物粒子が分散したもの、なども含み得る。
【0033】
前記酸化物混合物は、好ましくはRu、RhおよびPdからなる群から選択される少なくとも1種である前記第1金属元素の酸化物、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種である前記第2金属元素の酸化物、ならびにCeの酸化物の混合物であり、より好ましくはRuの酸化物、Cuの酸化物およびCeの酸化物の混合物である。
【0034】
前記複合酸化物は、好ましくはRu、RhおよびPdからなる群から選択される少なくとも1種である前記第1金属元素、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種である前記第2金属元素、ならびにCeの複合酸化物であり、より好ましくはRu、CuおよびCeの複合酸化物である。
【0035】
前記酸化物類中の前記第1金属元素の原子、前記第2金属元素の原子およびCe原子の合計に対するCe原子の割合は、15モル%以上である。Ceの割合がこの範囲にあると、臭い除去性能が良好な臭い除去触媒を得ることができる。一方、この割合が15モル%よりも過少であると、得られる臭い除去触媒の除去性能が劣る場合がある。
【0036】
前記酸化物類中の前記第1金属元素の原子、前記第2金属元素の原子およびCe原子の割合は、上記の基準で、好ましくはそれぞれ0.05~75モル%、5~79.95モル%、18~94.95モル%であり、より好ましくはそれぞれ0.05~10モル%、5~75モル%、18~85モル%であり、さらに好ましくはそれぞれ0.05~7モル%、15~75モル%、20~84.95モル%である。
【0037】
前記酸化物類中には、価数の異なる前記第1金属元素(たとえば、Ru(III)およびRu(IV))、価数の異なる前記第2金属元素(たとえば、Cu(I)およびCu(II))、ならびに価数の異なるCe(たとえば、Ce(III)およびCe(IV))が含まれていてもよい。
【0038】
本発明に係る臭い除去触媒(B2)のBET法で測定される比表面積は、たとえば50~500m2/g、好ましくは100~300m2/gである。この比表面積は、たとえば臭い除去触媒(B2)を粉砕することにより、調製することができる。
本発明に係る臭い除去触媒(B2)は、1種単独であってもよく、2種以上が組み合わされていてもよい。
【0039】
・臭い除去触媒(B2)の製造方法
本発明に係る臭い除去触媒(B2)を製造する方法としては、2種以上の遷移金属元素を含む複合酸化物、または、2種以上の遷移金属元素酸化物の混合物を製造しうる方法を、特に制限なく採用することができる。
【0040】
本発明に係る臭い除去触媒(B2)が、前記第1金属元素の酸化物、前記第2金属元素の酸化物、およびCeの酸化物の混合物である場合には、前記第1金属元素の酸化物(たとえば、酸化ルテニウム)、前記第2金属元素の酸化物(たとえば、酸化銅)およびCeの酸化物を混合する工程を含む方法が挙げられる。これらの酸化物に含まれる前記第1金属元素の原子、前記第2金属元素の原子およびCe原子の合計に対するCe原子の割合は、好ましくは15モル%以上であることが好ましい。Ceの割合がこの範囲にあると、臭い除去性能が良好な臭い除去触媒(B2)を得ることができる。一方、この割合が15モル%よりも過少であると、得られる臭い除去触媒の除去性能が劣る場合がある。これらの酸化物は、本発明に係る臭い除去触媒(B2)中の、前記第1金属元素の原子、前記第2金属元素の原子およびCe原子の合計に対する前記第1金属元素の原子、前記第2金属元素の原子およびCe原子の割合が、上述の割合となるように混合される。前記酸化物は、好ましくは粉末ないし粒子状である。
【0041】
本発明に係る臭い除去触媒(B2)が、前記第1金属元素、前記第2金属元素、およびCeの複合酸化物である場合、これを製造する方法としては、たとえば、
前記第1金属元素の塩、前記第2金属元素の塩、およびCeの塩を、前記塩を可溶な溶媒(好ましくは、水)に溶解させて溶液(好ましくは、水溶液)を調製する工程(1)、
前記溶液と塩基とを混合して沈殿物を生成させ、スラリーを調製する工程(2)、
前記スラリーから触媒前駆体を得る工程(3)、および
前記触媒前駆体を焼成して臭い除去触媒を製造する工程(4)
を含む方法が挙げられる。
【0042】
工程(1)で用いられる塩の例としては、前記第1金属元素、前記第2金属元素、またはCeの、塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩が挙げられ、好ましくは塩化物、硝酸塩、酢酸塩が挙げられる。これらは水和物であってもよい。前記塩の具体例としては、塩化ルテニウム(III)、硝酸銅(II)三水和物、硝酸セリウム(III)六水和物が挙げられる。
【0043】
前記溶液には、さらに前記第1金属元素、前記第2金属元素およびCeからなる群から選択される1種以上の元素の酸化物が混合されていてもよく、混合されていなくてもよい。これらの酸化物は、前記第1金属元素の塩、前記第2金属元素の塩、およびCeの塩を溶媒に溶解させる際に溶媒に加えてもよく、調製された前記溶液と混合してもよい。前記酸化物の例としては、酸化ルテニウム等の前記第1金属元素の酸化物、酸化銅等の前記第2金属元素の酸化物、および酸化セリウムが挙げられる。前記酸化物は、好ましくは粉末ないし粒子状である。
【0044】
これらの塩および任意の酸化物に含まれる前記第1金属元素の原子、前記第2金属元素の原子およびCe原子の合計に対するCe原子の割合は、15モル%以上であることが好ましい。Ceの割合がこの範囲にあると、臭い除去性能が良好な臭い除去触媒を得ることができる。一方、この割合が15モル%よりも過少であると、得られる臭い除去触媒の除去性能が劣る場合がある。
【0045】
これらの塩および任意の酸化物に含まれる前記第1金属元素の原子、前記第2金属元素の原子およびCe原子の割合は、上記の基準で、好ましくはそれぞれ0.05~75モル%、5~79.95モル%、18~94.95モル%であり、より好ましくはそれぞれ0.05~10モル%、5~75モル%、18~85モル%であり、さらに好ましくはそれぞれ0.05~7モル%、15~75モル%、20~84.95モル%である。
【0046】
工程(2)で用いられる塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、尿素が挙げられる。これらは、溶液(好ましくは、水溶液)の態様であってもよい。得られたスラリーは、好ましくは撹拌される。
【0047】
工程(3)では、工程(2)で得られたスラリーから触媒前駆体を得る。触媒前駆体は、前記スラリーから(ろ過などの手段により)回収される固形分であってもよく、前記スラリーを水熱合成に供して調製される固形分であってもよく、好ましくは後者である。この水熱合成は、たとえば80~300℃で、5~48時間実施される。触媒前駆体は、好ましくは、蒸留水で洗浄され、次いで加熱乾燥される。
【0048】
工程(4)での焼成は、たとえば120~600℃で、1~48時間実施される。焼成は、好ましくは酸素含有雰囲気で、たとえば空気流通下で実施される。
焼成により得られた臭い除去触媒は、そのまま使用してもよく、粉砕してから使用してもよい。
【0049】
複合酸化物である臭い除去触媒(B2)を製造する方法としては、さらに、
前記第1金属元素の塩、および前記第2金属元素の塩を、前記塩を可溶な溶媒(好ましくは、水)に溶解させて溶液(好ましくは、水溶液)を調製する工程(11)、
前記溶液に酸化セリウムを分散させて分散液を調製する工程(12)、
前記分散液から溶媒を除去して固形分を得る工程(13)、および
前記固形分を焼成して臭い除去触媒を製造する工程(14)
を含む方法が挙げられる。
【0050】
工程(11)で用いられる前記第1金属元素の塩、および前記第2金属元素の塩の詳細は、上述した工程(1)で用いられるこれらの塩の詳細と同様である。
工程(12)で用いられる酸化セリウムは、好ましくは粉末ないし粒子状である。
【0051】
工程(13)において溶媒を除去する方法としては、前記分散液を加熱して溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。
工程(14)における焼成条件は、上述した工程(4)における焼成条件と同様である。焼成により得られた臭い除去触媒は、そのまま使用してもよく、粉砕してから使用してもよい。
【0052】
・臭い除去触媒(B)
本発明に係る臭い除去触媒(B)は、前記臭い除去触媒(B1)および前記臭い除去触媒(B2)の1種以上からなる。すなわち本発明に係る臭い除去触媒(B)は、前記臭い除去触媒(B1)または前記臭い除去触媒(B2)のいずれか1方のみであってもよく、前記臭い除去触媒(B1)および前記臭い除去触媒(B2)を任意の割合で組み合わせたものであってもよい。
【0053】
本発明に係る臭い除去触媒(B1)および臭い除去触媒(B2)はいずれも、優れた脱臭効果を有し、特に、アルデヒド類、カルボン酸類、エステル類などの臭気物質を好適に低減・除去することができる。具体的には、本発明の臭い除去触媒に接触した周囲の気体中の臭気物質の少なくとも一部は分解し、その結果、臭気物質を低減・除去することができる。
【0054】
本発明に係る臭い除去触媒(B1)および臭い除去触媒(B2)はいずれも、高温にさらされた場合にも、臭気物質を放出して臭いを拡散するという問題を生じにくく、また、吸着した臭気物質が分解されて拡散されることにより、吸着能が著しく低下することがなく、長期にわたって脱臭に用いることができる。このため、廃プラスチック(A)との混合後に加熱および溶融混練を、再生プラスチック組成物の製造ならびに成形においても、脱臭性能を損なうことなく廃プラスチック(A)の臭気を分解・低減することができる。
【0055】
また、本発明に係る臭い除去触媒(B1)および臭い除去触媒(B2)はいずれも、プラスチック類の分解を生じにくいものであるため、再生プラスチック組成物中においてプラスチックの分解を促進せず、再生プラスチック組成物から得られる成形体等の本来の強度を損なうことなく、廃プラスチック(A)に由来する臭気を分解・低減することができる。
【0056】
なお、臭い分解能を有する触媒としては、光触媒TiO2が知られており、該触媒は樹脂に混練可能な形態であるが、該触媒を廃プラスチックに混合した場合には、臭いを分解するとともに樹脂の分解を引き起こすため、再生プラスチックとして成形体製造用の用途等に用いた場合には短期間で劣化を生じる問題がある。
【0057】
<再生プラスチック組成物>
本発明の再生プラスチック組成物は、前記廃プラスチック(A)と、前記臭い除去触媒(B)とを含有する。本発明の再生プラスチック組成物中において、前記臭い除去触媒(B)の含有量は、通常0.01~30質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%である。
【0058】
再生プラスチック組成物は、前記廃プラスチック(A)および臭い除去触媒(B)のみから構成されてもよく、発明の目的を損なわない範囲で未使用の樹脂および各種添加剤等任意成分として含んでもよい。
未使用の樹脂としては、例えば、エチレンープロピレン系共重合体(EPR、EPDM)、スチレンーブタジエンースチレン共重合体(SBS)やその水素添加物(SEBS)などのゴム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びこれらを主体とする共重合体などのオレフィン系共重合体、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS)、アクリロニトルーブタジエンースチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのビニル系重合体、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PBT、PET)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)などのエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
【0059】
添加剤としては、プラスチック組成物に添加可能な添加剤を用途等に応じて特に制限なく用いることができ、例えば、核剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
本発明の再生プラスチック組成物は、各成分を単に混合したものであってもよく、溶融混練して調製されたものであってもよい。本発明の再生プラスチック組成物は、溶融混練または加熱されることで、廃プラスチックの臭気が脱臭されるため、溶融混練して調整された本発明の再生プラスチック組成物は、廃プラスチック(A)に起因する臭いが低減・除去されたものとなる。また、本発明の再生プラスチック組成物が、各成分を単に混合したものである場合、成形利用時などに溶融混練または加熱を行うことで廃プラスチック(A)に起因する臭いが低減・除去されたものとなる。
【0061】
<臭いの除去方法>
本発明の再生プラスチック組成物は、溶融混練または加熱されることで、廃プラスチックの臭気が脱臭される。すなわち、本発明の臭いの除去方法で、上述した本発明の再生プラスチック組成物を、溶融混練および/または加熱する工程を有する。溶融混練および/または加熱は、本発明に係る再生プラスチック組成物を、たとえば、一軸もしくは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダー等で溶融混練する方法などが挙げられる。溶融混練する温度については、廃プラスチック(A)の少なくとも一部、好ましくは全体が溶融する温度を採用するのが好ましいが、たとえば、通常130~400℃、好ましくは160~280℃の温度範囲で実施することができる。また、臭いの除去を、溶融混練を伴わない加熱により行う場合においては、通常50~200℃、好ましくは80~150℃の温度範囲で実施することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
[製造例1]
臭い除去触媒Aの調製
Ptを含む化合物として、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)0.05gを秤量し、50ccの蒸留水に溶解させた。この溶液を200ccナス型フラスコに投入し、次いでMFI型ゼオライト(H-ZSM‐5、東ソー(株)製
HSZ 822HOA、シリカ/アルミナ比(SiO2/Al2O3 比(mol/mol)):23、平均粒径:5μm)を2.0g投入して、1%Pt/ゼオライトとなるようにして、Pt化合物溶液をゼオライトに含浸させた。次いでフラスコをエバポレーター装置に取り付け、80℃、真空下にて水を蒸発させ、残った粉体を回収した。回収した粉体を、100%H2流通下で、5℃/minで120℃まで昇温して2時間水素還元を行い、Pt/ゼオライト触媒である臭い除去触媒Aを調製した。
【0064】
[実施例1]
再生プラスチック組成物(1)の調製及び評価
回収プラスチックASR -1(Automobile Shredder Residue)は、「自動車リサイクル高度化等に資する調査・研究・実証等に関わる助成事業」から入手した。組成は次の通り;PP 91%、PE9%。
ARS-1 10gと、製造例1で得た臭い除去触媒A 1gとを、小型混練基DSM-Xplore(DSM製)を用い、混練温度200℃にて混練して、再生プラスチック組成物(1)のストランドを得た。得られたストランドをカットし、その1gを3Lサンプリングバック:フレックサンプラー(近江オドエアーサービス株式会社製)に入れた。活性炭フィルターを通した空気を2.5L導入し、専用の蓋を閉めた。80℃に静置して、1日後、3日後の臭気強度を官能評価し、表1に示した。ここで、臭気強度は、表2に示す臭いの程度を数値化した指標である。なお、この官能評価における指標は以下の実施例および比較例においても同様に用いた。
【0065】
[実施例2]
再生プラスチック組成物(2)の調製及び評価
実施例1において、臭い除去触媒Aの使用量を0.1gとしたこと以外は、実施例1と同様にして再生プラスチック(2)を調整し、これを評価した。結果を表1に示した。
【0066】
[比較例1]
実施例1において、ARS-1 10gのみを使用したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0067】
【0068】