(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-11
(45)【発行日】2025-12-19
(54)【発明の名称】熱電変換材料、および熱電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10N 10/856 20230101AFI20251212BHJP
H10N 10/857 20230101ALI20251212BHJP
【FI】
H10N10/856
H10N10/857
(21)【出願番号】P 2021209056
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】松田 雪恵
(72)【発明者】
【氏名】向田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】桐原 和大
(72)【発明者】
【氏名】衛 慶碩
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-103743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0194686(US,A1)
【文献】特開2021-190554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/856
H10N 10/857
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(A)、導電性材料(B)、および(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体(C)を含有し、
前記導電性材料(B)の全質量に対して、前記1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(A)の含有率が25質量%以上である、熱電変換材料。
【請求項2】
前記重合体(C)における(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位の含有率が、50~100質量%である、請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項3】
前記重合体(C)の含有率が、前記導電性材料(B)の全質量に対して5~100質量%である、請求項1または2に記載の熱電変換材料。
【請求項4】
前記導電性材料(B)が、黒鉛、カーボンナノチューブ、及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項5】
前記重合体(C)が、(メタ)アクリロニトリルと、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはスチレンとの共重合体である、請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の熱電変換材料を用いて形成される熱電変換膜と、電極とを有し、前記熱電変換膜と前記電極とが、電気的に接続されている、熱電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱電変換材料、および熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンエネルギーとして、熱を電気に変換する熱電変換技術が注目されている。熱電変換技術は、自然界における様々な熱に加えて、工場、車、および家庭から排出される排熱、並びに体温等の微弱な熱のエネルギーを電気に変換することができる。熱電変換技術に活用される熱電効果は様々存在するが、ゼーベック効果を活用したシステムが主流である。ゼーベック効果では、半導体又は金属の組合せから構成される材料の両端に2つの異なる温度を与えた際に、その温度差に応じて材料内に生じた電子勾配によって起電力が発生する。
【0003】
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換できる熱電変換材料は、熱電発電素子、またはペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。熱電変換素子とは、熱を電力に変換する素子であり、一般的には、半導体又は金属の組合せから構成される。代表的な熱電変換素子の構成としては、p型半導体単独、n型半導体単独、およびp型半導体とn型半導体との組合せに分類される。より大きな電位差を得るために、一般的に、熱電変換素子では、材料としてp型半導体とn型半導体とを組合せて用いる。
【0004】
また、熱電変換素子は、ペルチェ素子に代表されるように、多数の素子を板状、または円筒状に組合せてなる熱電モジュールとして用いられる。熱電変換素子は熱エネルギーを直接電力に変換することができる。そのため、例えば、体温で作動する腕時計、地上用発電および人工衛星用発電における電源として、熱電変換素子を利用できる。熱電変換素子の性能は、熱電変換材料の性能、およびモジュールの耐久性等に依存する。
【0005】
非特許文献1に記載されているとおり、熱電変換材料の性能を表す指標として、無次元熱電性能指数ZTが用いられる。また、熱電変換材料の性能を表す指標として、パワーファクターPF(=S2・σ)を用いる場合もある。
上記無次元熱電性能指数ZTは、下記式(1)により表される。
ZT=((S2・σ)/к)・T 式(1)
ここで、Sはゼーベック係数(V/K)、σは導電率(S/m)、Tは絶対温度(K)、およびкは熱伝導率(W/(m・K))である。熱伝導率кは下記式(2)で表される。
к=α・ρ・C 式(2)
ここで、αは熱拡散率(m2/s)、ρは密度(kg/m3)、およびCは比熱容量(J/(kg・K))である。
すなわち、熱電変換材料の性能(以下、熱電特性とも称す)を向上させるためには、ゼーベック係数または導電率を向上させ、その一方で熱伝導率を低下させることが重要である。
【0006】
近年、従来の無機材料に代えて、有機材料を用いた熱電変換素子に関する検討が進められている。有機材料は、軽量であることに加えて、優れた成型性を有し、かつ無機材料よりも優れた可撓性を有する。そのため、有機材料は、それ自身が分解しない温度範囲での汎用性が高い。また、有機材料は、印刷技術等を容易に活用できるため、製造エネルギーおよび製造コストの観点からも、無機材料よりも有利である。
【0007】
例えば、特許文献1には、有機色素骨格を有する高分子分散剤とカーボンナノチューブ(CNT)とを含有する熱電変換材料、およびそれを用いた熱電変換素子が開示されている。また、特許文献2には、キャリア輸送特性を有する多環芳香族環とアルキル基を含む置換基とが結合した導電性化合物を含む熱電変換材料、およびそれを用いた熱電変換素子が開示されている。
しかし、特許文献1の発明では、熱電変換素子として十分な性能は得られていない。特許文献2の発明では、導電率が10-8~10-7S/cmと低く、熱電変換素子として実用的な値は得られていない。また、熱電変換素子としての性能に加えて、従来から知られている熱電変換素子は、高温高湿下での経時安定性に乏しい。このようなことから、熱電変換素子の性能を高めることができる熱電変換材料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/050113号
【文献】国際公開第2015/129877号
【非特許文献】
【0009】
【文献】梶川武信著、「熱電変換技術ハンドブック(初版)」、エヌ・ティー・エス出版、19頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、上述の状況に鑑み、熱電変換性能に優れ、かつ高温高湿での経時安定性に優れた熱電変換材料、及び当該熱電交換材料を用いた熱電変換素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の実施形態は、以下に関する。ただし、本発明は以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態を含む。
本発明の一実施形態は、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(A)、導電性材料(B)、および(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体(C)を含有する、熱電変換材料に関する。
【0012】
上記実施形態において、上記重合体(C)における上記(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位の含有率は、50~100質量%であることが好ましい。
【0013】
上記実施形態において、上記重合体(C)の含有率は、上記導電性材料(B)の全質量に対して、5~100質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明の他の実施形態は、上記実施形態の熱電変換材料を用いて形成される熱電変換膜と、電極とを有し、上記熱電変換膜と上記電極とが、電気的に接続されている、熱電変換素子に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、熱電変換性能に優れ、かつ高温高湿での経時安定性に優れる熱電変換材料、及び当該熱電交換材料を用いた熱電変換素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロ」、および「(メタ)アクリル酸」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロまたはメタクリロ」、および「アクリル酸またはメタクリル酸」を表すものとする。
また、「(メタ)アクリレート」、および「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリレートまたはメタクリレート」および「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
また、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(A)は、化合物(A)と略記することがある。
【0017】
<熱電変換材料>
本発明の一実施形態である熱電変換材料は、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(A)、導電性材料(B)、および(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体(C)を含有する。化合物(A)、導電性材料(B)、および重合体(C)を含む熱電変換材料は、主にn型半導体の性質を示すと推察される。以下、各成分について具体的に説明する。
【0018】
<化合物(A)>
化合物(A)は、導電性材料(B)に電子を安定的に供給することができ、その結果、熱電変換性能の向上に寄与する。化合物(A)は、市販品として入手することができるが、当業者に周知の方法に従って合成した化合物を用いることもできる。化合物(A)の含有率は、導電性材料(B)の全質量に対して、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましい。化合物(A)の含有率は、100質量%であってもよい。化合物(A)の含有率を上記範囲内に調整した場合、優れた導電性を容易に得ることができる。
【0019】
<導電性材料(B)>
導電性材料(B)は、導電性に寄与する材料である。そのため、導電性材料(B)の含有量を増やすことで導電性を容易に向上させることができる。導電性材料(B)は、導電性を有する材料であれば、特に制限されない。例えば、炭素材料、金属材料、および導電性高分子を用いることができる。
【0020】
炭素材料としては、例えば、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(グラフェンナノプレートを含む)等が挙げられる。
【0021】
金属材料としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ゲルマニウム、ガリウムおよび白金等の金属粉、並びに、これら金属の合金及び複合粉が挙げられる。上記金属の合金は、例えば、ZnSe、CdS、InP、GaN、SiC、およびSiGe等であってよい。
上記金属材料は、核体と、上記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子であってもよい。具体的には、例えば、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。また、上記金属材料は、例えば、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、およびGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の金属酸化物の粉末、並びにこれらの金属酸化物で表面被覆した粉末等が挙げられる。
導電性高分子としては、例えば、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とからなる複合物)、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、およびポリパラフェニレン等が挙げられる。
【0022】
導電性材料は、1種を単独で用いても、又は2種以上を組合せて用いてもよい。また、導電性材料(B)の形状は、特に限定されず、様々な形状を有してよい。例えば、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、およびワイヤー状等の形状を有する導電性材料を用いることができる。
【0023】
ゼーベック係数と導電性との両立の観点から、導電性材料(B)は、少なくとも炭素材料を含むことが好ましい。炭素材料のなかでも、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、およびグラフェン(グラフェンナノプレートを含む)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。一実施形態において、導電性材料(B)は、カーボンナノチューブを含むことが更に好ましく、単層カーボンナノチューブを含むことが特に好ましい。
【0024】
本発明の実施形態で用いることができる炭素材料は、市販品として入手可能である。
例えば、薄片状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のCMX、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-60、LEP、F#1、F#2、およびF#3、中越黒鉛工業所社製のBF-3AK、FBF、BF-15AK、CBR、CPB-6S、CPB-3、96L、96L-3、K-3、SC-120、SC-60、HLP、CP-150、およびSB-1、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、およびEC50、並びに西村黒鉛社製の10099M、およびPB-99等が挙げられる。
球状天然黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC-20、CGC-50、CGB-20、およびCGB-50が挙げられる。
【0025】
土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、およびP#1、並びに中越黒鉛社製のAPR、K-5、AP-2000、AP-6、300F、150Fが挙げられる。
人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、およびHAG-150、中越黒鉛社製のG-4AK、G-6S、G-3G-150、G-30、G-80、G-50、SMF、EMF、SFF、SFF-80B、SS-100、BSP-15AK、BSP-100AK、およびWF-15C、並びにSECカーボン社製のSGP-100、SGP-50、SGP-25、SGP-15、SGP-5、SGP-1、SGO-100、SGO-50、SGO-25、SGO-15、SGO-5、SGO-1、SGX-100、SGX-50、SGX-25、SGX-15、SGX-5、およびSGX-1が挙げられる。
【0026】
導電性炭素繊維、およびカーボンナノチューブとしては、昭和電工社製のVGCF等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.5,およびEC1.5-P、楠本化成社製のTUBALL、ゼオンナノテクノロジー社製のZEONANO等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube7000、およびFloTube2000、Nanocyl社製のNC7000、並びにKnano社製の100T、200P等が挙げられる。
【0027】
カーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、および#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA、PUERBLACK100、115、および205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、および#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、およびBlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、およびSuperP-Li等のファーネスブラック、ライオン社製のEC-300J、およびEC-600JD等のケッチェンブラック、並びに電気化学工業社製のデンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35等のアセチレンブラックが挙げられる。
【0028】
導電性材料(B)は、炭素材料として例示した上記化合物の1種を単独で、又は2種以上を含んでよい。ただし、導電性材料(B)は、炭素材料として例示した上記化合物に特に限定されることなく、様々な炭素材料を含んでよい。
【0029】
導電性材料(B)の含有率は、化合物(A)、導電性材料(B)、および重合体(C)の合計質量に対して、15質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。導電性材料(B)の含有率を上記範囲内に調整した場合、導電パスの形成によって、優れた導電性を容易に得ることができる。また、導電性材料(B)を十分に分散させることができ、優れた塗膜形成性および塗膜特性を容易に得ることができる。
【0030】
<重合体(C)>
重合体(C)は、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体である。
(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体としては、ポリ(メタ)アクリロニトリルおよび(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位とその他単量体単位からなる共重合体が挙げられる。重合体(C)が共重合体である場合、ランダム共重合体、およびブロック共重合体のいずれの形態であってもよい。
【0031】
上記共重合体を形成するために用いることができる、その他単量体としては、例えば、二重結合を有する芳香族炭化水素、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
二重結合を有する芳香族炭化水素としては、スチレン、スチレンマクロマー等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0032】
一実施形態において、その他単量体として、スチレン、スチレンマクロマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。一実施形態において、その他の単量体として、スチレン、又は(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキエチレングリコールを用いることがより好ましい。
【0033】
一実施形態において、重合体(C)は、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位とその他単量体単位とからなる共重合体であることが好ましい。共重合体は、(メタ)アクリロニトリルと、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、スチレン、およびブチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種との共重合体であることが好ましい。上記共重合体は、(メタ)アクリロニトリルと、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、スチレン、およびブチルアクリレートからなる群から選択される1種との共重合体であることがより好ましい。上記共重合体は、(メタ)アクリロニトリルと、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、またはスチレンとの共重合体であることがさらに好ましい。
【0034】
重合体(C)は、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位におけるシアノ基の強い極性によって、導電性材料(B)に対する吸着性が向上し、さらに、導電性材料(B)に対する化合物(A)の吸着性も向上すると考えられる。その結果、導電性材料(B)同士の凝集、および導電性材料(B)への水分の吸着が抑制され、熱電変換材料の安定性が高まると推察される。
【0035】
上述の観点から、重合体(C)における(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を形成する単量体の含有量は、重合体(C)を構成する原料とした単量体の全質量を基準として50~100質量%であってよい。
【0036】
一実施形態において、重合体(C)における(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位の含有率は、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、さらにより好ましくは80質量%以上である。一実施形態において、上記含有率は100質量%であってもよい。すなわち、重合体(C)は、(メタ)アクリロニトリルの単独重合体であってよい。
他の実施形態において、重合体(C)は、(メタ)アクリロニトリルと、その他の単量体との共重合体であってよく、上記含有率は、好ましくは50~95質量%であってよい。上記含有率は、より好ましくは60~90質量%であってよく、さらに好ましくは75~85質量%であってよい。
【0037】
重合体(C)の含有率は、導電性材料(B)の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。重合体(C)の含有率は、100質量%であってもよいが、80質量%以下であることがより好ましい。一実施形態において、重合体(C)の含有率は、好ましくは5~100質量%の範囲であってよく、より好ましくは50~100質量%であってよく、さらに好ましくは50~80質量%であってよい。
【0038】
重合体(C)の製造方法は、特に限定はされず、当技術分野で周知の方法を適用することができる。例えば、溶解重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法、沈殿重合等のいずれの方法を用いることができる。一実施形態において、重合体(C)の製造方法は、溶解重合法、または沈殿重合法が好ましく、沈殿重合法が最も好ましい。
【0039】
沈殿重合法では、重合時に使用する溶媒に低分子量成分および残存単量体が溶解するため、これらを重合後に速やかに除去できる。そのため、沈殿重合法では、重合体(C)の分子量分布を狭く制御することが可能であり、また残存単量体量も限りなく低減でき、分散剤として機能する分子量を有する重合体(C)を効率的に得ることができる。重合反応の系としては、イオン重合、フリーラジカル重合、およびリビングラジカル重合等の付加重合を用いることができる。一実施形態では、フリーラジカル重合、またはリビングラジカル重合が好ましい。反応時にラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。例えば、過酸化物、およびアゾ系開始剤などから選ばれた化合物、またはそれらの混合物を用いることができる。また、反応時に、必要に応じて、連鎖移動剤等の分子量調整剤を用いてもよい。
【0040】
重合体(C)の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、3000以上500000以下の範囲が好ましく、4000以上200000以下の範囲がより好ましく、5000以上100000以下の範囲がさらに好ましく、10000以上100000以下の範囲が特に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内である重合体(C)を用いた場合、導電性材料(B)に対する吸着性を容易に向上できる。
【0041】
(分散媒)
一実施形態において、上記実施形態の熱電変換材料は、さらに分散媒を含むことが好ましい。分散媒は、化合物(A)と導電性材料(B)との混合、または化合物(A)と導電性材料(B)と重合体(C)との混合時に媒体として用いることができる。分散媒を含有することによって、熱電変換材料はインキまたはペーストの状態となるため、印刷または塗工によって、熱電変換膜を形成することができる。
分散媒としては、化合物(A)と、導電性材料(B)と、重合体(C)とを溶解または良分散できる媒体が好ましい。具体例として、有機溶剤、および水が挙げられる。分散媒は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0042】
分散媒として使用できる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブチレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、トリフルオロエタノール、m-クレゾール、およびチオジグリコール等のアルコール類、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノン等のケトン類、
テトラヒドロフラン、ジオキサン、およびエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、
ヘキサン、ヘプタン、およびオクタン等の炭化水素類、
ベンゼン、トルエン、キシレン、およびクメン等の芳香族炭化水素類、
酢酸エチル、および酢酸ブチル等のエステル類、並びに
N-メチルピロリドンの含窒素複素環類、等が挙げられる。
これら例示した化合物の1種を単独で用いても、又は必要に応じて2種以上を組合せて用いることができる。一実施形態において、分散性および溶解性の観点から、N-メチルピロリドンが特に好ましい。
【0043】
(無機熱電変換材料)
一実施形態において、上記実施形態の熱電変換材料は、熱電変換性能を高めるために、必要に応じて、無機熱電変換材料をさらに含んでもよい。無機熱電変換材料は、特に限定されず、当技術分野で熱電変換材料として周知の材料を用いることができる。
【0044】
(重合体)
一実施形態において、上記実施形態の熱電変換材料は、必要に応じて、重合体(C)以外の重合体をさらに含んでもよい。重合体(C)以外の重合体とは、分子内に(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含まない重合体を意味する。このような重合体は、特に限定されず、当技術分野で重合体として周知の材料を用いることができる。
【0045】
<熱電変換素子>
本発明の他の実施形態は、熱電変換素子に関する。熱電変換素子は、上記実施形態の熱電変換材料を用いて形成された熱電変換膜と、電極とを有し、熱電変換膜と電極とが、電気的に接続されている構造を有する。上記熱電変換膜は、導電性および熱電特性に加えて、耐熱性および可撓性の点でも優れる。そのため、上記実施形態の熱電変換材料を用いて、高品質の熱電変換素子を容易に作製することができる。
【0046】
熱電変換膜は、例えば、基材上に熱電変換材料を塗布して得られる膜であってもよい。熱電変換材料は、優れた成型性を有する。そのため、熱電変換材料の塗布または印刷によって、良好な膜を容易に得ることができる。熱電変換膜の製造方法としては、目的とする熱電変換膜を得ることができれば特に限定はなく、熱電変換材料の粘度等の特性、必要とされる膜厚、面積、および形状等の条件に応じて、適宜選択することができる。
【0047】
熱電交換膜の製造方法として、例えば、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ブレードコート、コンマコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、ディップコート、ディスペンサー、スクリーンコート、およびインクジェット印刷等の各種手段を適用することができる。
【0048】
熱電変換膜の膜厚は、特に限定されず、必要とされる電流値、電圧値、および抵抗等の電気的性質、並びに熱電特性に応じて設定することができる。例えば、後述するように、熱電変換膜の厚さ方向または面方向に温度差を生じ、かつ伝達できるように、一定以上の厚みを有するように形成されることが好ましい。
一実施形態において、熱電特性および可撓性の観点から、熱電変換膜の膜厚は、0.1~200μmの範囲であることが好ましく、1~100μmの範囲が更に好ましく、1~60μmの範囲であることが特に好ましい。
【0049】
基材としては、特に制限はない。例えば、不織布、紙、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリカーボネート、およびセルローストリアセテート等の材料からなるプラスチックフィルム、またはガラス等を用いることができる。これら基材の表面に、水または酸素の影響による熱電変換材料の劣化を防ぐために、アルミ蒸着層またはバリア層を設けてもよい。
【0050】
基材と熱電変換膜との密着性を向上させる目的で、基材の表面に、様々な処理を行うこともできる。具体的には、熱電変換材料の塗布に先立ち、UVオゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理、または易接着処理を行ってもよい。
【0051】
熱電変換膜は、基材に積層された形態であっても、または基材を有さない自立膜の形態であってもよい。自立膜を作製する場合、その方法に特に制限はない。例えば、剥離性シート上に熱電変換膜を形成した後に、剥離コートを除去することによって、自立膜を得ることができる。
【0052】
剥離性シートとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムの表面を離型処理したものであってよい。
【0053】
熱電変換素子は、上記実施形態の熱電変換材料を用いて構成されることを除き、当技術分野で周知の技術を適用して構成することができる。以下、熱電変換素子の構成、および製造方法について、より具体的に説明する。
【0054】
熱電変換素子において、熱電変換膜と電極とは電気的に接続している。ここで、「電気的に接続する」とは、互いに接合しているか、またはワイヤー等の他の構成部分を介して通電できる状態であることを意味する。
【0055】
電極の材料は、電極として働くものであれば特に制限はない。電極の材料は、例えば、金属、合金、および半導体から選択することができる。一実施形態において、導電率が高く、熱電変換膜の接触抵抗が低いほうが好ましいことから、金属および合金が好ましい。電極は、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。電極は銀を含むことがさらに好ましい。
【0056】
電極の形成方法は特に限定されず、真空蒸着法、電極材料箔または電極材料膜を有するフィルムの熱圧着、電極材料の微粒子を分散したペーストの塗布等の方法によって形成することができる。プロセスの簡便さの観点から、電極材料箔または電極材料膜を有するフィルムの熱圧着、電極材料を分散したペーストの塗布による方法が好ましい。
【0057】
熱電変換素子の構造の典型例としては、熱電変換膜と一対の電極との位置関係から、(1)本発明による熱電変換膜の両端に電極が形成されている構造と、(2)本発明の熱電変換膜が2つの電極で挟持されている構造とに大別される。
【0058】
上記(1)の構造を有する熱電変換素子は、例えば、基材上に熱電変換膜を形成した後に、その両端にそれぞれ銀ペーストを塗布して第1および第2の電極を形成することによって得ることができる。このように熱電変換膜の両端に電極が形成された熱電変換素子は、2つの電極間の距離を広くすることが容易である。そのため、2つの電極間で大きな温度差を発生させて、効率よく熱電変換を行うことが容易にできる。
【0059】
上記(2)の構造を有する熱電変換素子は、例えば、基材上に銀ペーストを塗布して第1の電極を形成し、その上に本発明の熱電変換膜を形成し、さらにその上に銀ペーストを塗工して第2の電極を形成することによって得ることができる。このように2つの電極で本発明の熱電変換膜を挟持する熱電変換素子では、熱電変換膜の膜厚方向、つまり基材に対して垂直な方向の温度差を利用できることから、発熱原に貼り付ける形態での利用が可能である。そのため、熱源から広範囲で熱を取り出すことができる等の利点があるため好ましい。上記(2)の構造を有する熱電変換素子では、膜厚を厚くすることで2つの電極間の距離を広くし、温度差を確保することも可能である。
【0060】
熱電変換素子は、直列に接続することで高い電圧を発生させることが可能であり、並列に接続することで大きな電流を発生させることが可能である。また、熱電変換素子は、2つ以上の熱電変換素子を接続したものであってもよい。本発明の実施形態によれば、熱電変換素子が優れた可撓性を有するため、平面ではない形状を有する熱源に対しても追随して良好に設置することが可能である。
【0061】
一実施形態において、熱電変換素子は、熱源から効率良く熱を伝えるために、吸熱層または蓄熱層をさらに有してもよい。また、温度差を確保するために、断熱層または放熱層をさらに有してもよい。
また、用途および必要な電力量に応じて、熱電変換素子から取り出した電気エネルギーを、昇圧回路を用いて昇圧してから用いてもよい。また、熱電変換素子から取り出した電気エネルギーを、コンデンサー、キャパシタ、および二次電池等に一時的に溜めて用いることもできる。
【実施例】
【0062】
以下、実験例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下に記載において、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0063】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
重量平均分子量(Mw)は、示差屈折率(RI)検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置は、HLC-8320GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを3本直列に繋いた。3本の分離カラムの充填剤には、順に、東ソー社製「TSK-GELSUPERAW-4000」、「AW-3000」及び「AW-2500」を用いた。
測定は、オーブン温度40℃、溶離液として30mMトリエチルアミン及び10mMLiBrのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を用い、流速0.6mL/分で実施した。
測定用試料は、上記溶離液からなる分散媒に1%の濃度で調整し、20μL注入した。分子量は、ポリスチレン換算値である。
【0064】
<1>重合体(C)の製造
<製造例1>
(重合体(C-1)の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、および攪拌機を備えた反応容器に、溶剤としてアセトニトリル100部、アクリロニトリル100部、連鎖移動剤として3-メルカプト-1,2-プロパンジオール1部を仕込み、反応容器内を窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、アセトニトリル10部と、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製:V-65)0.4部とからなる混合物を、6時間かけて反応容器内に滴下し、重合反応を行った。
滴下終了後、70℃で1時間反応させた後、V-65を0.1部添加し、さらに70℃で1時間反応を続け、目的とする生成物を沈殿物として得た。その後、不揮発分測定にて転化率が98%を超えたことを確認した。上記生成物(沈殿物)を減圧濾過によって濾別し、アセトニトリル100部にて洗浄を行い、減圧乾燥によって溶媒を完全に除去して、重合体(C-1)を得た。
【0065】
<製造例2~20>
(重合体(C-2)~(C-20)の製造)
表1に示すように単量体の種類と配合量をそれぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、重合体(C-2)~(C-20)をそれぞれ製造した。各重合体のMwを表1に示す。なお、重合体(C-2)~(C-20)の製造では、連鎖移動剤の添加、重合開始剤の量を調整し、さらに反応条件、および反応溶媒等を適宜変更することによって、Mwを調整した。また、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を用い、連鎖移動剤として3-メルカプト-1,2-プロパンジオールを用いた。
【0066】
表1において、数値は特に断りのない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。表1に記載した略号は、以下のとおりである。
AA:アクリル酸
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
PME1000:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油社製ブレンマー(登録商標)PME-1000、オキシエチレン基数23)
St:スチレン
BA:ブチルアクリレート
【0067】
<2-1>熱電変換材料を含む分散液の製造
[実施例1]
(分散液1)
化合物(A)0.4部、SWCNT(OCSiAl社製単層カーボンナノチューブ「TUBALL」)0.4部、重合体(C-1)0.3部、NMP(N-メチルピロリドン)79.3部をそれぞれ秤量して混合した。さらにビーズを加え、スキャンデックスで4時間振とう後、ろ過してビーズを取り除き、熱電変換材料の分散液1を得た。
【0068】
[実施例2~35、比較例1~2]
(分散液2~35、101~102)
材料の種類および配合量を表2に示す内容にそれぞれ変更した以外は、分散液1の製造方法と同様にして、熱電変換材料の分散液2~35、101をそれぞれ得た。
【0069】
表2に記載した略号の材料を以下に示す。
導電性材料(B)
SWCNT:OCSiAl社製単層カーボンナノチューブ「TUBALL」
MWCNT:(KUMHO PETROCHEMICAL社製多層カーボンナノチューブ「Knanos100P」)
CB:(ライオン社製 ケッチェンブラック「EC-300J」)
【0070】
<2-2>熱電変換材料の評価
各実施例および比較例で得られた分散液1~35および101~102を、それぞれ基材上にアプリケータを用いて塗布した。上記基材としては、シート状基材である厚さ75μmのPETフィルムを用いた。その後、120℃で30分間乾燥して、膜厚5μmの熱電変換膜を有する、積層体をそれぞれ得た。
上述のようにして得られた熱電変換膜(以下、塗膜ともいう)を有する積層体について、以下の方法に従って、導電率、ゼーベック係数、および100℃での経時安定性をそれぞれ評価した。結果を表2に示す。
【0071】
(導電率(抵抗率))
作製直後の積層体を2.5cm×5cmの大きさに切り取り、JIS-K7194に準じて、ロレスタGX MCP-T700(三菱化学アナリテック社製)を用いて、四探針法で、導電率を測定した。その測定値を比較例1の導電率を1とした時の相対値として、表2に示す。
【0072】
(ゼーベック係数)
作製直後の積層体を3mm×10mmの大きさに切り取り、アドバンス理工株式会社製のZEM-3LWを用いて、80℃におけるゼーベック係数(μV/K)を測定した。その測定値を比較例1のゼーベック係数を1としたときの相対値として、表2に示す。
【0073】
(高温高湿条件下での経時安定性)
作製直後の積層体を、85℃、相対湿度85%の環境下で20日間静置した後に、上記と同じ条件でゼーベック係数を測定した。作製直後の積層体のゼーベック係数(表2に挙げたゼーベック係数)に対するゼーベック係数の変化率を求め、下記基準に基づいて評価した。ゼーベック係数の変化率が小さいものほど良好であり、変化率が70%より大きいものは不良である。すなわち、以下の評価基準「1」~「7」は良好であり、その数値が小さいほど経時安定性に優れている。評価基準「8」は不良である。
(評価基準)
1:ゼーベック係数の変化率が10%以下。
2:ゼーベック係数の変化率が10%より大きく15%以下。
3:ゼーベック係数の変化率が15%より大きく20%以下。
4:ゼーベック係数の変化率が20%より大きく25%以下。
5:ゼーベック係数の変化率が25%より大きく30%以下。
6:ゼーベック係数の変化率が30%より大きく50%以下。
7:ゼーベック係数の変化率が50%より大きく70%以下。
8:ゼーベック係数の変化率が70%より大きい。
【0074】
表2に見られように、本発明の実施形態による熱電変換材料は、高い導電率と、高いゼーベック係数を示し、更に高温高湿条件下での経時安定性に優れていることが確認された。これは、化合物(A)が導電性材料(B)に安定的に吸着しているためと考えられる。また、上記熱電変換材料に更に重合体(C)を添加することによって、化合物(A)の導電性材料(B)に対する吸着性がより高まると考えられる。そして、これらのことより、導電性材料(B)の凝集または導電性材料(B)への水分の吸着が抑制され、熱電変換材料中に導電性材料(B)を安定に存在させることが可能になったと推察される。
【0075】
<3>熱電変換素子の製造
厚さ50μmのPETフィルム上に、各実施例および比較例で得た分散液をそれぞれ塗布することによって、厚さ20μm、5mm×30mmの形状を有する熱電変換層を、それぞれ10mm間隔に5つ作製した。次いで、各熱電変換層がそれぞれ直列に接続されるように、銀ペーストを用いて、厚さ10μm、5mm×33mmの形状を有する銀回路(電極)を4つ作製し、熱電変換素子をそれぞれ製造した。上記銀ペーストとしては、東洋インキ株式会社製のREXALPHA RA-FS 074を用いた。
得られた各熱電変換素子について起電力を測定したところ、実施例1~35で製造した分散液を用いて製造した熱電変換素子は、いずれも比較例1で製造した分散液を用いて製造した熱電変換素子よりもゼーベック係数が優れていることを確認した。
【0076】
【0077】