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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-11
(45)【発行日】2025-12-19
(54)【発明の名称】光通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/60 20130101AFI20251212BHJP
   H04B 10/2507 20130101ALI20251212BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20251212BHJP
【FI】
H04B10/60
H04B10/2507
H04B10/077 150
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022205959
(22)【出願日】2022-12-22
(65)【公開番号】P2024090215
(43)【公開日】2024-07-04
【審査請求日】2025-01-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G通信インフラを高効率に構成するメトロアクセス光技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和樹
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160767(JP,A)
【文献】特開2014-023145(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031514(WO,A1)
【文献】特開2022-108790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1変調光の偏波の回転量を時間経過に応じて変化させる第1モードと、前記回転量を設定値に固定する第2モードとの内のいずれかの動作モードで動作する対向光通信装置と光伝送路を介して通信する光通信装置であって、
第1期間において、データを搬送する前記第1変調光を前記対向光通信装置から受信し、第2期間において、測定信号を搬送する前記第1変調光を前記対向光通信装置から受信して復調する復調手段であって、前記第1期間と前記第2期間は交互に繰り返される、前記復調手段と、
前記対向光通信装置の前記動作モードを決定し、前記対向光通信装置に制御信号を送信することで、前記対向光通信装置が前記決定した動作モードで動作する様に制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記対向光通信装置が前記第2モードで動作している場合、前記測定信号に基づき判定される前記第2モードでの伝送品質が閾値より劣化すると、前記対向光通信装置の動作モードを前記第1モードに変更する、光通信装置。
【請求項2】
前記制御信号は、前記第1期間において前記第1変調光とは異なる周波数の第2変調光により前記光伝送路を介して前記対向光通信装置に送信される、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記対向光通信装置の前記動作モードを前記第2モードから前記第1モードに遷移させてから第1期間が経過すると、前記対向光通信装置の前記動作モードを前記第2モードに変更する、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記対向光通信装置の前記動作モードを前記第1モードから前記第2モードに遷移させてから第2期間が経過すると、前記対向光通信装置の前記動作モードを前記第1モードに変更する、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記対向光通信装置の前記動作モードを前記第2モードから前記第1モードに遷移させた場合、前記測定信号に基づき判定される前記第1モードでの伝送品質に基づき前記閾値を更新する、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記対向光通信装置の前記動作モードを前記第1モードから前記第2モードに遷移させた場合、前記制御信号により前記対向光通信装置における前記回転量の前記設定値を所定値だけ増加させて前記測定信号に基づき前記第2モードでの前記伝送品質を判定することを、前記伝送品質が前回判定した前記伝送品質より劣化するまで繰り返し、前記伝送品質が前回判定した前記伝送品質より劣化した場合、判定した前記伝送品質の内の最も良い伝送品質が得られた前記回転量に固定することを前記制御信号により前記対向光通信装置に通知する、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項7】
光伝送路を介して対向光通信装置に第1変調光を送信する光通信装置であって、
第1期間において、データを搬送する前記第1変調光を生成し、第2期間において、測定信号を搬送する前記第1変調光を生成する変調手段であって、前記第1期間と前記第2期間は交互に繰り返される、前記変調手段と、
動作モードが第1モードである場合、前記第1変調光の偏波の回転量を時間経過に応じて変化させ、前記動作モードが第2モードである場合、前記回転量を設定値に固定する偏波制御手段と、
前記対向光通信装置から前記動作モードを指定する制御信号を受信する受信手段と、
を備えている、光通信装置。
【請求項8】
前記制御信号は、前記第1期間において前記第1変調光とは異なる周波数の第2変調光により前記光伝送路を介して前記対向光通信装置から受信される、請求項7に記載の光通信装置。
【請求項9】
前記制御信号は、前記動作モードが前記第2モードである場合、前記回転量の前記設定値を変更するために使用される、請求項7に記載の光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光通信システムにおいて反射光の影響を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送路には光ファイバ同士を接続するための複数の接続点が存在する。光ファイバ同士は、光コネクタや、融着により接続される。この接続点において、光通信装置の送信機から光通信装置の受信機に送信される変調光の一部は、送信機に向けて反射される。送信機に向けて反射された変調光の一部は、さらに、別の接続点において受信機に向けて反射され得る。送信機は、送信した変調光とは逆向きに伝搬される光を阻止するアイソレータ等を有するため、反射した変調光が送信機に到達しても問題はない。一方、受信機は、光伝送路において反射することなく受信機に到達した変調光(以下、直接光と表記する)と、光伝送路において偶数回だけ反射して受信機に到達した変調光(以下、反射光と表記する)と、を含む受信光を受光する。直接光と反射光の伝搬遅延は異なるため、反射光は直接光の干渉光となり、直接光の復調に影響を与える。
【0003】
特許文献1及び非特許文献1は、反射光の影響を抑えるためにディザリングを行う構成を開示している。具体的には、非特許文献1は、ディザリング専用の位相変調器を使用してディザリング光を生成する構成を開示している。また、特許文献1は、情報を搬送する信号とディザリング用の信号の両方の信号で光源を駆動することにより変調光及びディザリング光を含む送信光を生成する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-232764号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Byung Gon Kim,et.al.,"Reflection-Tolerant RoF-Based Mobile Fronthaul Network for 5G Wireless Systems",JOURNAL OF TECHNOLOGY,VOL.37,NO.24,2019年12月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディザリングにより反射光の影響を抑えるには、ディザリング光を光通信システム毎に調整する必要がある。したがって、サービス開始後の光通信システムの状態変化によりディザリング光が光通信システムに適したものとならなくなることが生じ得る。
【0007】
本開示は、光通信システムの状態変化があっても反射光の影響を抑えることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、第1変調光の偏波の回転量を時間経過に応じて変化させる第1モードと、前記回転量を設定値に固定する第2モードとの内のいずれかの動作モードで動作する対向光通信装置と光伝送路を介して通信する光通信装置は、第1期間において、データを搬送する前記第1変調光を前記対向光通信装置から受信し、第2期間において、測定信号を搬送する前記第1変調光を前記対向光通信装置から受信して復調する復調手段であって、前記第1期間と前記第2期間は交互に繰り返される、前記復調手段と、前記対向光通信装置の前記動作モードを決定し、前記対向光通信装置に制御信号を送信することで、前記対向光通信装置が前記決定した動作モードで動作する様に制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記対向光通信装置が前記第2モードで動作している場合、前記測定信号に基づき判定される前記第2モードでの伝送品質が閾値より劣化すると、前記対向光通信装置の動作モードを前記第1モードに変更する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、光通信システムの状態変化があっても反射光の影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態による、光通信システムの構成図。
図2】幾つかの実施形態による、上り期間及び下り期間それぞれで送信される信号を示す図。
図3】幾つかの実施形態による、下り方向における反射光の影響を抑えるための構成図。
図4】幾つかの実施形態による、下り方向の動作モードを決定する処理のシーケンス図。
図5】幾つかの実施形態による、下り方向の動作モードの状態遷移図。
図6】幾つかの実施形態による、モード制御部が行う処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による光通信システムの構成図である。2つの光通信装置1と光通信装置2は、光伝送路3を介して接続される。光通信装置1からみて光通信装置2は対向光通信装置であり、光通信装置2からみて光通信装置1は対向光通信装置である。光伝送路3は、複数の接続点(反射点)を有する。本実施形態において、光通信装置1と光通信装置2は、時分割複信(TDD)、かつ、周波数分割複信(FDD)で双方向の通信を行う。以下では、光通信装置1から光通信装置2への方向を下り方向と表記し、光通信装置2から光通信装置1への方向を上り方向と表記する。また、下り方向の通信で使用される光搬送波の周波数をf1とし、上り方向の通信で使用される光搬送波の周波数をf2とする。
【0013】
図2に示す様に、上り期間において、光通信装置2は、周波数f2の光搬送波を使用して、上り方向のデータを光通信装置1に送信する。この上り期間において、光通信装置1は、周波数f1の光搬送波を使用して、下り方向の伝送品質を測定するための測定信号と、上り方向の動作モードを制御するための制御信号(以下、上り制御信号)を光通信装置2に送信する。なお、上り方向の動作モードは、光通信装置2の動作モードでもある。動作モードの詳細については後述する。同様に、上り期間に続く下り期間において、光通信装置1は、周波数f1の光搬送波を使用して下り方向のデータを光通信装置2に送信する。この下り期間において、光通信装置2は、周波数f2の光搬送波を使用して、上り方向の伝送品質を測定するための測定信号と、下り方向の動作モードを制御するための制御信号(以下、下り制御信号)を光通信装置1に送信する。なお、下り方向の動作モードは、光通信装置1の動作モードでもある。下り期間に続いて図2の上り期間が開始される。図2に示す様に、下り方向の処理と上り方向の処理は、方向が異なること以外は同じであるため、以下では下り方向の処理についてのみ説明する。
【0014】
図3は、下り方向における反射光の影響を抑えるための光通信システムの構成図である。変調部10は、周波数f1の光搬送波に基づき変調光を生成して偏波制御部11に出力する。なお、変調光は、下り期間においては下り方向のデータを搬送し、上り期間においては、下り方向の測定信号と、上り制御信号と、を搬送する。下り方向の測定信号と、上り制御信号とは、例えば、電気ドメインにおいて時分割多重や周波数分割多重等の任意の多重化方法で多重化され、周波数f1の光搬送波で搬送される。なお、上り制御信号は、下り方向における反射光の影響を抑えるための処理には無関係であるため、以下では、上り制御信号について省略する。
【0015】
偏波制御部11は、光通信装置1の動作モードに応じて変調部10からの変調光の偏波を変化(回転)させて出力する。以下、偏波制御部11が変調部10からの変調光の偏波に与える偏波の変化量を回転量と表記する。本実施形態において、光通信装置1の動作モードは、第1モードと第2モードのいずれかである。光通信装置1が第1モードに設定されている場合、偏波制御部11は、1つの上り期間や1つの下り期間内において時間の経過と共に回転量を変化させる。回転量は、例えば、時間の経過と共にランダムに変化され得る。或いは、回転量は、時間経過量と回転量との関係を示す回転情報に従い変化され得る。一方、光通信装置1が第2モードに設定されている場合、偏波制御部11は、回転量を設定値で一定にする。第2モードにおいては、回転量の設定値が変更されたときを除き、回転量は変更されない。設定値は、例えば、0度以上、かつ、360度未満の値であり得る。設定値が0度である場合、偏波制御部11は、変調部10からの変調光の偏波を回転させることなくそのまま出力する。偏波制御部11を通過した変調光は、光伝送路3を介して光通信装置2に送信される。
【0016】
光通信装置2は、光伝送路3を介して直接光及び反射光を含む受信光を受信する。直接光は、光伝送路3で反射することなく光通信装置2に到達した変調光であり、反射光は、光伝送路3で偶数回だけ反射して光通信装置2に到達した変調光である。下り期間において、復調部25は、受信光を復調して下り方向のデータを図示しない処理部に出力する。上り期間において、復調部25は、受信光を復調して下り方向の測定信号をモード制御部26に出力する。下り方向の測定信号は、光通信装置2にとって既知の信号であり、モード制御部26は、復調部25が復調した測定信号と、既知の測定信号と、を比較することで下り方向の伝送品質を判定する。伝送品質は、例えば、信号対雑音比(SNR)で評価され得る。或いは、伝送品質は、EVMで評価され得る。EVMとは、既知の測定信号の複素平面における座標から受信した測定信号の複素平面における座標に向かうベクトルに基づく値である。さらに、伝送品質は、測定信号のビット誤り率で評価され得る。
【0017】
モード制御部26は、光通信装置1の動作モードを、所定の決定基準に従い決定する。この決定基準においては、測定信号に基づき判定した下り方向の伝送品質が使用される。モード制御部26は、下り期間において、下り制御信号により光通信装置1の動作モードを光通信装置1に送信する。なお、下り制御信号は、実際には、光通信装置2の変調部と、光通信装置1の復調部を介して光通信装置1の偏波制御部11に入力されるが、図の簡略化のため光通信装置2の変調部と光通信装置1の復調部については図から省略している。
【0018】
図4は、下り方向の動作モード、つまり、光通信装置1の動作モードを制御する処理のシーケンス図である。上り期間内のS1において、光通信装置1は、下り方向の測定信号を光通信装置2に送信する。光通信装置1が第1モードであると、偏波制御部11は、下り方向の測定信号を搬送する変調光の偏波を時間と共に回転(変化)させる。一方、光通信装置1が第2モードであると、偏波制御部11は、下り方向の測定信号を搬送する変調光の偏波を時間と共に回転させない。光通信装置2のモード制御部26は、上り期間内のS2において、次の下り期間からの光通信装置1の動作モードを決定する。光通信装置2のモード制御部26は、下り期間内のS3において、下り制御信号により、決定した動作モードを光通信装置1に通知する。光通信装置1の偏波制御部11は、光通信装置2から通知された動作モードが現在の動作モードとは異なる場合、動作モードの切り替えを行う。光通信装置1は、下り期間内のS4において、現在の動作モードに従い下り方向のデータを搬送する変調光を光通信装置2に送信する。
【0019】
なお、例えば、S3における下り制御信号の送信は、下り期間の開始と共に送信され、光通信装置1は、下り制御信号を受信して動作モードを設定後に下り方向のデータ送信を開始する。しかしながら、本実施形態はその様な構成に限定されない。例えば、S3における下り制御信号の送信は、下り期間内で行われれば良い。光通信装置1は、下り制御信号で通知された動作モードが現在の動作モードと異なる場合、下り制御信号による通知に従い動作モードの切り替えを行う。したがって、図4では、光通信装置2のモード制御部26は、上り期間内において光通信装置1の動作モードを決定するとしたが(S2)、続く下り期間内において下り制御信号により光通信装置1の動作モードを制御する限り、S2の処理は、下り期間内に行われても良い。
【0020】
さらに、光通信装置2のモード制御部26は、光通信装置1の動作モードが切り替わる場合にのみ下り制御信号を光通信装置1に送信し、光通信装置1の動作モードが切り替わらない場合には下り制御信号を光通信装置1に送信しない構成とすることもできる。
【0021】
図5は、モード制御部26が光通信装置1の動作モードを決定する処理の説明図である。モード制御部26は、伝送品質の基準値を保持している。伝送品質の基準値の初期値は、例えば、サービス開始前に光通信装置1の動作モードを第1モードとして実測した伝送品質である。また、モード制御部26は、基準値からの劣化量に対応する所定値αを保持している。モード制御部26は、基準値から所定値αだけ低い伝送品質を閾値Thに設定する。
【0022】
図5に示す様に、モード制御部26は、第1モードにしてから所定期間T0が経過すると、光通信装置1の動作モードを第2モードに遷移させる。本実施形態において偏波制御部11は、第1モードから第2モードに遷移すると、回転量の設定値を初期値にする。初期値は、例えば、0度といった所定値であり得る。或いは、初期値は、第1モードから第2モードに遷移した際の回転量であり得る。モード制御部26は、光通信装置1が第2モードで動作しているときに下り方向の測定信号に基づき伝送品質を判定する。判定した伝送品質が閾値より劣化していない場合、モード制御部26は、光通信装置1の動作モードを第2モードのままとする。一方、モード制御部26は、判定した伝送品質が閾値より劣化した場合、光通信装置1の動作モードを第1モードに遷移させる。オプションとして、モード制御部26は、第2モードにしてから所定期間T1が経過すると、光通信装置1の動作モードを第1モードに遷移させることができる。なお、モード制御部26は、下り制御信号により光通信装置1を第1モードに切り替えた後、上り期間において受信する下り方向の測定信号に基づき判定される伝送品質に基準値を更新し、更新後の基準値に基づき閾値を更新する。
【0023】
光通信装置2が光通信装置1から受信する受信光は、上述した様に、直接光と、反射光と、を含む。なお、受信光に含まれる反射光は1つではなく、反射位置の異なる複数の反射光が含まれ得る。例えば、光伝送路3に第1反射点~第3反射点の3つの反射点が存在する場合、受信光は、第1反射点及び第2反射点で反射した第1反射光と、第1反射点及び第3反射点で反射した第2反射光と、第2反射点及び第3反射点で反射した第3反射光の3つの反射光と、を含み得る。なお、第1反射光~第3反射光それぞれの伝搬遅延は異なり得る。さらに、光伝送路3に4つの反射点が存在する場合、受信光は、4つの反射点で反射した反射光も含み得る。
【0024】
ここで、反射光の影響は、直接光と反射光の偏波面が一致している場合に大きくなり、直接光と反射光の偏波面が直交関係に近い程、小さくなる。したがって、直接光が、1つ以上の反射光の総てに対して直交している場合、反射光の影響は最小となり、直接光が、1つ以上の反射光の総てと同じ偏波である場合、反射光の影響は最大となる。本実施形態では、第1モードで動作している場合、偏波制御部11は、時間の経過と共に変調光の偏波を回転させることで、直接光と、1つ以上の反射光それぞれとの偏波の関係を時間軸方向において変化させる。したがって、反射光の影響は、最小と最大の中間付近になり、この時に測定した伝送品質を基準値とする。
【0025】
しかしながら、反射光の大部分のレベルが小さく、直接光に影響を与えるレベルの反射光が1つ又は2つといった少数であり、かつ、偏波制御部11が第2モードで動作している場合に、直接光と、直接光に影響を与えるレベルの反射光が復調部25の受信点において直交している場合も生じ得る。この様な場合には、偏波制御部11を第1モードで動作させるのではなく、第2モードで動作させた方が反射光の影響は小さくなる。
【0026】
ここで、光通信システムの状態は時間の経過と共に変化し得る。例えば、屋外利用時には風等の影響でファイバが振動や回転もし得る。光通信システムを構成する光伝送路3は、その運用中において様々な理由により部分的な取り換えや、部分的なルート変更等が行われ得る。また、変調光についても変調部10の交換等に応じて変化し得る。したがって、直接光と反射光との偏波の関係も時間経過により変化し得る。このため、本実施形態では、基準値に基づき設定した閾値と第2モードでの伝送品質との比較結果や時間経過に応じて動作モードを切り替えることで、直接光と反射光との偏波の関係が変化しても、反射光が定常的に直接光に強い影響を与える状態となることを防ぐことができる。
【0027】
なお、本実施形態は、特許文献1や非特許文献1に記載されたディザリングを併用することもできる。つまり、変調部10が、変調光とディザリング光とを含む送信光を偏波制御部11に出力する構成とすることができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、光通信装置1が第2モードで動作している場合、モード制御部26は、1つの上り期間内の測定信号に基づき伝送品質を判定して光通信装置1の動作モードを決定し、当該上り期間に続く下り期間において下り制御信号を使用して光通信装置1に動作モードを通知するものとした。しかしながら、1つの上り期間内における測定信号に基づき伝送品質を判定するのではなく、連続する複数の上り期間における測定信号に基づき伝送品質を判定する構成とすることもできる。また、モード制御部26は、光通信装置1の動作モードを変更する場合、下り期間内における任意のタイミングで動作モードの変更を光通信装置1に通知する構成とすることができる。なお、光通信装置1の偏波制御部11が動作モードを切り替えたタイミングについては、例えば、下り制御信号を送信したタイミングから事前に測定した期間だけ後のタイミングであると、モード制御部26が判定する構成とすることができる。或いは、光通信装置1が動作モードを切り替えたことを上り制御信号で光通信装置2に通知する構成とすることもできる。
【0029】
さらに、本実施形態において、光通信装置1と光通信装置2とは、光伝送路3を介して上り制御信号や下り制御信号を送受信していたが、図示しないネットワークを介して制御信号を送受信する構成とすることができる。この場合、上り制御信号及び下り制御信号を送信するタイミングは光伝送路3における上り期間や下り期間とは無関係にすることができる。さらに、光通信装置1が上り制御信号を周波数f1及び周波数f2とは異なる周波数f3の光搬送波で光伝送路3を介して送信し、光通信装置2が下り制御信号を周波数f1~周波数f3とは異なる周波数f4の光搬送波で光伝送路3を介して送信する構成とすることもできる。
【0030】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態において、第2モードにおける偏波制御部11での偏波の回転量は、第2モードに遷移した際に設定した初期値で一定であった。本実施形態において、モード制御部26は、光通信装置1を第2モードに遷移させた後、偏波制御部11における回転量も制御する。
【0031】
図6は、本実施形態においてモード制御部26が実行する処理のフローチャートである。図6の処理は、図5に示す期間T0が経過したことにより光通信装置1を第1モードに遷移させたことに応答して開始される。
【0032】
S10で、モード制御部26は、光通信装置1を第2モードに遷移させた後の最初の上り期間において、下り方向の測定信号に基づき伝送品質を判定する。なお、このときの偏波制御部11における偏波の回転量は初期値である。モード制御部26は、S11で、伝送品質が閾値以上であるかを判定する。伝送品質が閾値以上ではない場合、モード制御部26は、S18で、下り制御信号により第1モードへの遷移を光通信装置1に指示して図6の処理を終了する。
【0033】
一方、伝送品質が閾値以上である場合、モード制御部26は、S12で、下り制御信号により回転量の増加を指示する。偏波制御部11は、回転量の増加を指示する下り制御信号に応答して、回転量を所定値だけ増加させる。S13において、モード制御部26は、次の上り期間内における下り方向の測定信号に基づき伝送品質を判定する。モード制御部26は、S14で、伝送品質が前回の測定時の伝送品質より劣化しているか否かを判定する。伝送品質が前回の測定時の伝送品質より劣化していない場合、モード制御部26は、S12から処理を繰り返す。
【0034】
一方、伝送品質が前回の測定時の伝送品質より劣化している場合、モード制御部26は、S15において、下り制御信号により回転量の減少を指示する。偏波制御部11は、回転量の減少を指示する下り制御信号に応答して、回転量を所定値だけ減少させる。言い換えると、偏波制御部11は、回転量の減少を指示する下り制御信号に応答して、回転量を前回の測定時の回転量に戻す。
【0035】
その後、モード制御部26は、偏波制御部11の回転量を変化させることなく、S16で伝送品質を測定し、S17で伝送品質が閾値以上であるかを判定することを、伝送品質が閾値より劣化するまで繰り返す。伝送品質が閾値より劣化した場合、モード制御部26は、S18で、下り制御信号により第1モードへの遷移を光通信装置1に指示して図6の処理を終了する。なお、図6のフローチャートには示していないが、第一実施形態と同様に光通信装置1を第2モードに遷移させてから所定期間T1が経過すると、伝送品質に拘わらず、光通信装置1を第1モードに遷移させる構成とすることができる。
【0036】
以上、本実施形態では、第2モードに遷移後、偏波制御部11における回転量を徐々に変化させることを、伝送品質が前回の伝送品質より劣化しない限り繰り返す。そして、伝送品質が前回測定した伝送品質より劣化したことを検出することで、伝送品質を測定した範囲において伝送品質を最高にする回転量に固定する。この構成により、第2モードにおける伝送品質を第一実施形態の構成より良くすることができる。
【0037】
なお、図6の説明においても伝送品質の測定と下り制御信号の送信を各上り期間及び各下り区間において行うとしたが、複数の下り期間で受信した測定信号に基づき伝送品質を判定する構成とすることができ、下り制御信号の送信も下り期間の任意のタイミングで行う構成とすることができる。さらに、第一実施形態でも述べた様に、制御信号を図示しないネットワークを介して送受信する構成や、周波数f1及び周波数f2とは異なる光搬送波で光伝送路3を介して送受する構成とすることができる。
【0038】
以上の構成により、光通信システムの状態変化があっても反射光の影響を抑えることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0039】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
25:復調部、26:モード制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6