(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-12
(45)【発行日】2025-12-22
(54)【発明の名称】アモルファス材料及びクロスポイント型メモリ
(51)【国際特許分類】
H10B 63/00 20230101AFI20251215BHJP
H10N 70/20 20230101ALI20251215BHJP
【FI】
H10B63/00
H10N70/20
(21)【出願番号】P 2023556417
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2022039485
(87)【国際公開番号】W WO2023074609
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021175169
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】畑山 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】内田 紀行
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129239(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158430(WO,A1)
【文献】特開2021-136301(JP,A)
【文献】特開2021-132128(JP,A)
【文献】特開2020-064897(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103691(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/107945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 63/00
H10N 70/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hf、O及びTeを主成分として含み、
特定の閾値電圧で電気抵抗が第1の状態から前記第1の状態より低い第2の状態へ遷移する特性を有し、
バンドギャップEgが、1.0eV≦Eg≦1.4eVの範囲にある、アモルファス材料。
【請求項2】
一般式Hf
xTe
yO
100-x-y・・・(1)で表され、
式(1)中、23.0<x<32.0、10.0<y<22.0、35≦x+y≦50である
ことを特徴とする請求項1記載のアモルファス材料。
【請求項3】
式(1)中、23.0<x<30.0、13.0<y<22.0である
ことを特徴とする請求項2記載のアモルファス材料。
【請求項4】
式(1)中、23.0<x<28.0で、yが15.0<y<22.0である
ことを特徴とする請求項2記載のアモルファス材料。
【請求項5】
印可電圧を除荷させた際に特定の電圧で電気抵抗が前記第2の状態から前記第1の状態へ遷移する、請求項1に記載のアモルファス材料。
【請求項6】
Hf、O及びTeを主成分として含
み、
バンドギャップEgが、1.0eV≦Eg≦1.4eVの範囲にある、クロスポイント型メモリのセレクタ用のアモルファス材料。
【請求項7】
一般式Hf
xTe
yO
100-x-y・・・(1)で表され、
式(1)中、23.0<x<32.0、10.0<y<22.0、35≦x+y≦50である
ことを特徴とする請求項6記載のアモルファス材料。
【請求項8】
一般式Hf
xTe
yO
100-x-y・・・(1)で表され、
式(1)中、23.0<x<30.0、13.0<y<22.0である
ことを特徴とする請求項7記載のアモルファス材料。
【請求項9】
式(1)中、23.0<x<28.0で、yが15.0<y<22.0である
ことを特徴とする請求項7記載のアモルファス材料。
【請求項10】
第1の電極配線と、
第2の電極配線と、
メモリ部と、
請求項1乃至
9のいずれか1つ記載のアモルファス材料を含むセレクタ部と、
を有し、
前記メモリ部と前記セレクタ部とが、前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との間に配置される
クロスポイント型メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばクロスポイント型メモリのセレクタに使用可能なアモルファス材料及びクロスポイント型メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
クロスポイント型メモリは、高い集積度を実現可能な構造を有し、既に市販の不揮発性メモリにも採用されている。この構造では、
図1に示すように、上下の電極配線の間にセレクタ部とメモリ部とのペアを挟む形で形成される。メモリ部は、不揮発性の抵抗変化を示すものであり、例えばGe-Sb-Teからなる材料で形成されている。一方、セレクタ部は、書き換え及び読み取りを行うメモリ部を指定する役割を有しており、従来では、As-Se-Ge-Si系アモルファス材料で形成されていた。これは、アモルファスカルコゲナイド材料の非線形なI-V特性でオボニック閾値スイッチング(OTS:Ovonic Threshold Switching)を実現するためである。しかしながら、As-Se-Ge-Si系OTS材料には毒性があり、環境負荷の高いAs及びSeが含まれている。
【0003】
また、特許文献1には、セレクタの材料にはAs、Se、Pbのうち少なくとも1元素を含む3乃至4元系OTS材料が提案されている。As、Se、Pbのいずれも環境負荷が高く、毒性を持つ忌避元素であり、問題である。
【0004】
さらに、特許文献2には、セレクタとしてのテルル含有化合物層が、Sn、Cu、及びBiから選ばれる少なくとも1つのM1元素と、Teと、Oとを含むことが開示されている。しかしながら、M1元素にはHfは含まれておらず、その電気抵抗変化については詳細は不明である。
【0005】
また、特許文献3には、セレクタの材料として、Te、Se及びSから選ばれる少なくとも1種類のカルコゲン元素を含むことが記載されているが、Seを用いる場合には環境負荷が高い。
【0006】
さらに、非特許文献1には、ZnとTeから成るX-Zn-Te(X:Be、Mg、Ca)系材料が実用OTS材と同程度以下の閾値電圧Vthを有することを第一原理計算によって理論的に示しているが、第一原理計算による予測のみを示した研究であり、実際の電気抵抗変化については記載されていない。
【0007】
また、非特許文献2には、Si、Ge、As、Teから成るSi-Ge-As-Te系アモルファス材料のOTS特性を示しているが、Asが含まれており、環境負荷が高い。
【0008】
なお、非特許文献3には、アモルファス材料ではない結晶材料としてHf-Te-O系化合物であるHfTe3O8が示されているが、クロスポイント型メモリのセレクタとして用いることができるような特性を有しているかについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-198321号公報
【文献】特開2021-48258号公報
【文献】日本特許第6613142号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Yun-Jae Lee, Minwoo Han, Su-Hyun Yoo, and Aloysius Soon,"Tunable Threshold Voltage of ZnTe-Based Ovonic Switching Devices via Isovalent Cation Exchange", ACS Applied Electronic Materials 3, 1107-1114 (2021).
【文献】D. Garbin, W. Devulder, R. Degraeve, G. L. Donadio, S. Clima, K. Opsomer, A. Fantini, D. Cellier, W. G. Kim, M. Pakala, A. Cockburn, C. Detavernier, R. Delhougne, L. Goux, G. S. Kar, "Composition Optimization and Device Understanding of Si-Ge-As-Te Ovonic Threshold Switch Selector with Excellent Endurance", Proceedings of 2019 Int. Electron Devices Meeting (IEDM) 35.1.1-35.1.4
【文献】J. Galy, G. Meunier, "Sur de nouveaux composes de formule MTe3O8 (M= Ti, Zr, Hf, Sn) de structure fluorine deformee", Comptes Rendus des Seances de l'Academie des Sciences, Serie C: Sciences Chimiques 268 1249-1252 (1969).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、一側面によれば、環境負荷の低く、クロスポイント型メモリのセレクタに用いることが出来るような特性を有する新規な材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に係る材料は、Hf、O及びTeを主成分として含み、印加電圧を増加させる場合に電気抵抗が第1の状態から当該第1の状態より低い第2の状態へ特定の閾値電圧で遷移する特性を有するアモルファス材料である。
また、上記態様に係る材料は、印加電圧を除荷させる場合に電気抵抗が前記第2の状態から前記第1の状態へ特定の電圧で遷移する。
また、本発明の第2の態様に係る材料は、Hf、O及びTeを主成分として含む、クロスポイント型メモリのセレクタ用のアモルファス材料である。
また、上記態様に係るアモルファス材料は、一般式HfxTeyO100-x-y・・・(1)で表され、式(1)中、23.0<x<32.0、10.0<y<22.0、35≦x+y≦50であってもよい。
また、上記式(1)中、23.0<x<30.0、13.0<y<22.0であってもよい。
また上記式(1)中、23.0<x<28.0で、yが15.0<y<22.0であってもよい。
本発明の一態様に係るクロスポイント型メモリは、第1の電極配線と、第2の電極配線と、メモリ部と、上記態様に係るアモルファス材料を含むセレクタ部と、を有し、前記メモリ部と前記セレクタ部とが、前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との間に配置される。
【発明の効果】
【0013】
一側面によれば、環境負荷の低く、クロスポイント型メモリのセレクタに用いることが出来るような特性を有する材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、クロスポイント型メモリの構造例を示す図である。
【
図2】
図2は、Hf-Te-O膜の成膜工程を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施例及び比較例についてX線回折法によって測定した結果を示す図である。
【
図4】
図4は、閾値スイッチ特性の評価のための素子の断面図である。
【
図5】
図5は、比較例1のI-V特性を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1のI-V特性を示す図である。
【
図7】
図7は、数値シミュレーションにおけるバンドギャップEg=1.0eVの場合と実施例1とのI-V特性を示す図である。
【
図8】
図8は、数値シミュレーションにおけるI-V特性を示す図である。
【
図9】
図9は、数値シミュレーションにおけるバンドギャップEgと閾値電圧V
thとの関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る材料は、Hf、O及びTeを含み、印加電圧を増加させる場合に電気抵抗が高い状態から低い状態へ特定の閾値電圧Vthで遷移する閾値スイッチ特性を有するアモルファス材料である。
【0016】
このようなアモルファス材料は、クロスポイント型メモリのセレクタとして用いられ、閾値電圧Vth以上の電圧が印加されることで、電気抵抗の高いオフ状態から電気抵抗の低いオン状態へと急激な抵抗変化を示す。より具体的には、印加された電圧が閾値電圧Vthより低い場合には、セレクタ部がオフ状態となることでメモリ部への電流を遮断し、セレクタ部に印加された電圧が閾値電圧Vth以上になると、セレクタ部がオン状態になり、セレクタ部を介してメモリ部へと電流を流れるようになる。このようなセレクタ部の閾値スイッチ特性は、可逆的かつ急激に生じるものである。
【0017】
本実施形態に係るアモルファス材料は、アモルファス-アモルファス間で電気抵抗の低いオン状態及び電気抵抗の高いオフ状態の変化をする。電気抵抗の低いオン状態における電気抵抗に対する電気抵抗の高いオフ状態における電気抵抗の比率は、例えば、10倍以上である。
【0018】
クロスポイント型メモリのセレクタ用に用いるためには、本願発明者は、Hf、O及びTeを含むアモルファス材料のバンドギャップEgが、1.0eV≦Eg<1.5eVの範囲にあることが好ましいことを非自明的に見出した。
【0019】
このようなEgの範囲を、Hf、O及びTeを含むアモルファス材料の組成の範囲として表すと以下のようになる。すなわち、Hf、O及びTeには、一般式HfxTeyO100-x-y・・・(1)で表される関係が存在しており、式(1)中、x(at.%)は23.0<x<32.0、y(at.%)は10.0<y<22.0の範囲内で、35(at.%)≦x+y≦50(at.%)となるように選択される。
【0020】
さらに、閾値スイッチ特性として閾値電圧Vthは、0.8V≦Vth≦2.0Vの範囲に入ることが好ましい。このような条件は、式(1)中、xが、23.0<x<30.0で、yが13.0<y<22.0の範囲内であることに対応する。
【0021】
さらに、閾値スイッチ特性として閾値電圧Vthは、0.8<Vth<1.5Vの範囲に入ることがより好ましい。このような条件は、式(1)中、xが、23.0<x<28.0で、yが15.0<y<22.0の範囲内であることに対応する。
【0022】
なお、クロスポイント型メモリ100は、
図1に示したように、上下の電極配線の間、すなわち電極10-電極20間に、セレクタ部30とメモリ部40とのペアを複数挟む形で形成される。セレクタ部30が、上で述べたアモルファス材料で形成される。セレクタ部30は、例えば、絶縁体でバンドギャップEgが大きいHfO
2(Eg=5.6eV)と半金属のHfTe
2(Eg=0eV)とを、同時にスパッタリングにて成膜することで形成される。すなわち、上記セレクタ部30を形成するためには、例えば、HfO
2で構成された第1合金ターゲットT1及びHfTe
2で構成された第2合金ターゲットT2を用いてスパッタリングを行い、Si又はガラスで構成された基板Sに対して成膜をすればよい。このように極端にバンドギャップEgが異なる2つの材料を、スパッタリングにおけるターゲット出力を制御することで、Hf、Te及びOの組成を、閾値スイッチ特性を有するような組成域に入るように調整する。
【実施例】
【0023】
以下、本発明について、実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0024】
<成膜>
図2は、Hf-Te-O膜の成膜工程を説明するための図である。
図2に模式的に示すように、RFマグネトロンスパッタリング法により、SiO
2/Si基板及びサファイア基板上に、室温でHf-Te-O膜を成膜した。ここでは、HfO
2の合金ターゲットと、HfTe
2の合金ターゲットとを用いて、それぞれの出力比を制御することによって、組成の異なる複数の薄膜試料を作製し、実施例1及び比較例1~比較例4とした。ここで、上記の通り、実施例1及び比較例1~比較例4は、それぞれ便宜上SiO
2/Si基板上にHf-Te-O膜を形成した試料及びサファイア基板上にHf-Te-O膜を形成した試料が存在する。しかしながら、各実施例及び比較例において形成されたHf-Te-O膜は、基板の種類に拠らず特性が同様であると考えられる。
【0025】
SiO2/Si基板上に作製した、オフ状態の実施例1及び比較例1~比較例4の試料の組成をラザフォード後方散乱分光法によって測定した。ラザフォード後方散乱分光法は、以下の条件で行った。
入射イオン:4He++, 入射エネルギー:2300keV, 入射角:0°, 散乱角:160°, 試料電流18nA, ビーム径:2mmφ, 面内回転:無, 照射量:150μC
実施例1及び比較例1乃至4に関して得られた組成は、以下の表1のとおりである。
【0026】
【0027】
また、X線回折法によって、SiO
2/Si基板上に作製した実施例1及び比較例1乃至4の全ての試料がアモルファス相を呈することを確認した。これを
図3に示す。
図3は、実施例及び比較例についてX線回折法によって測定した結果を示す図である。
図3では、縦軸は、任意単位の強度を表し、横軸は回折角2θ(度)を表している。
図3には、Si基板からの反射ピークを示している。いずれのパターンもSi基板由来のピークを除いて明瞭なピークを有しておらず、アモルファス相を呈していることが分かる。
【0028】
<バンドギャップEg測定>
サファイア基板上に成膜したHf-Te-O膜に関して透過率スペクトル測定を行い、得られた結果より吸収係数を算出した。得られた吸収係数を基にTaucプロットを行い、各試料のバンドギャップEgを見積もり、表1に示す結果が得られた。このように、比較例1乃至4では、バンドギャップEgは0.52以下、或いは、1.5以上となっていることが分かる。一方、実施例1のバンドギャップEgは、0.52及び1.5の間の値をとることが確認された。
【0029】
<閾値スイッチ特性の評価>
Hf-Te-O膜の閾値スイッチ特性を評価するために、
図4に示すような素子を作製した。
図4は、閾値スイッチ特性の評価のための素子50の断面図である。素子50を作製するために、先ず、SiO
2/Si基板4上に、下部電極3としてTiN/Wを65nm成膜し、下部電極3の一部を被覆した状態でHf-Te-O膜2を100nm成膜した。このHf-Te-O膜2を成膜した時の被覆は、下部電極3の一部を露呈させる目的としている。その後、フォトリソグラフィを用いてレジストパターンを形成し、上部電極1としてW/TiNを115nm成膜した。最後にリフトオフによるレジストの除去を行った。尚、素子としては、Hf-Te-O膜2の形成を実施例1と同様の条件で作製したもの、及びHf-Te-O膜2の形成を比較例1と同様の条件で作製したものの2種類を用意した。
閾値スイッチ特性の評価のための素子50としては、Hf-Te-O膜2を実施例1の条件で形成したもの、及び、比較例1の条件で形成したものを用意した。
【0030】
図4に示した素子の上部電極1から下部電極3にかけてDC電圧を印加し、流れる電流を計測することでI(電流)-V(電圧)特性を評価した。
図5は比較例1のI-V特性を表す。低電圧域では高抵抗状態を示し、約11Vで急激な電流増加が確認されたが、電圧の除荷後は高抵抗に戻らず低抵抗状態のままであった。この抵抗変化は絶縁破壊によるものであり、不可逆なものである。このことから、比較例1のようにバンドギャップEgが大きい材料の場合、閾値スイッチ特性を示さず、セレクタ部として機能しないことが分かる。なお、印加電圧の最大値を15Vに設定しており、0から15Vまで電圧を増加する過程と15から0Vまで電圧を除荷する過程の電流を測定している。また、急激な電流増加によって素子が壊れることを防ぐため、コンプライアンス電流を1mAに設定している。また、具体的な説明は省略するが、比較例2についても閾値スイッチ特性を有しなかった。
【0031】
一方、
図6に示した実施例1のI-V特性では閾値スイッチ特性が確認された。電圧増加過程の低電圧では数μA乃至数十μAの電流しか流れておらず高抵抗を示しているが、約0.8Vで急激な電流の増加を見せて低抵抗化し、コンプライアンス電流値1mAに到達した。その後、電圧除荷過程において、約0.6Vに到達すると急激な電流の減少が確認され、再び高抵抗状態を示し、電圧特性可逆的であることが確認された。これらの結果は実施例1が閾値スイッチ特性を示すことを実証しており、セレクタ部として利用可能であることを示している。
【0032】
これらの結果から、バンドギャップEgが大きすぎると閾値スイッチ特性は得られないため、バンドギャップEgを適切な範囲に入るようにすることが求められる。一方、比較例3及び4の値までバンドギャップEgが減少すると、素子の電気抵抗が低くなりすぎてオフ状態を示さなくなることが後述するシミュレーションにより確認された。
【0033】
図7は、数値シミュレーションにおけるバンドギャップEg=1.0eVの場合と実施例1とのI-V特性を示す図である。
図7に示すように、数値シミュレーションで実施例1のI-V特性をほぼ再現できている。当該数値シミュレーションにおいて、バンドギャップEgを変化させた結果を
図8及び
図9に示す。
図8は、数値シミュレーションにおけるI-V特性を示す図である。
図8は、Eg=1.0eV、1.1eV、1.2eV、1.3eV、1.4eVの場合におけるI-V特性を表す。
図8において、上記いずれのバンドギャップであっても、閾値スイッチ特性を有することを示している。一方、
図9は、バンドギャップEgに対する閾値電圧V
thを表す。
図9では、バンドギャップEg=1.0eV乃至1.4eVのそれぞれにおける閾値電圧V
thが示されている。閾値電圧V
thは小さい方が好ましいが、バンドギャップEg=1.0eVに対応する閾値電圧V
th=0.8Vより小さくなると、素子の抵抗が小さくなりすぎてしまうため、好ましくない。一方、本数値シミュレーションでは、バンドギャップEg=1.4eVに対応する閾値電圧V
thは約2.4Vであり、典型的なOTS材料の閾値電圧V
thの上限2.7Vよりは小さくなっている。但し、閾値電圧V
thは小さい方が好ましいので、閾値電圧V
thが2.0V以下とすれば、この数値シミュレーションでは、バンドギャップEgは約1.3eV以下の範囲になる。また、閾値電圧V
thが1.5V以下とすれば、この数値シミュレーションでは、バンドギャップEgは約1.2eV以下の範囲になる。また、Hf、Te及びOについての原子重量比の範囲についても、上記の閾値電圧の範囲に対応して算出することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1,3:電極、2:Hf-Te-O膜、4:基板、10:電極(書き込み電極)、20:電極(読み込み電極)、30:セレクタ部、40:メモリ部、50:閾値スイッチ、100:クロスポイント型メモリ