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7789606異常検出方法、異常検出装置及びトンネル掘削機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-12
(45)【発行日】2025-12-22
(54)【発明の名称】異常検出方法、異常検出装置及びトンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20251215BHJP
   G01N 29/11 20060101ALI20251215BHJP
   G01N 29/48 20060101ALI20251215BHJP
【FI】
E21D9/087 A
G01N29/11
G01N29/48
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022050715
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2023143384
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2025-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平塚 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】森岡 栄一
(72)【発明者】
【氏名】小野 数彦
(72)【発明者】
【氏名】川合 一成
(72)【発明者】
【氏名】植竹 正明
(72)【発明者】
【氏名】天野 昌春
(72)【発明者】
【氏名】王生 翔平
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-124468(JP,A)
【文献】特開2003-082986(JP,A)
【文献】特開平05-045342(JP,A)
【文献】特開平02-151761(JP,A)
【文献】特開2003-307095(JP,A)
【文献】特開2021-107650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0248848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/087
G01N 29/11
G01N 29/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止中のトンネル掘削機のディスクカッタの異常を検出する異常検出方法であって、
超音波センサを前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触させて、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信し、
前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信し、
受信した前記信号から前記ディスクカッタの外周に生じた異常を検出する、
異常検出方法。
【請求項2】
前記異常とは、偏摩耗、リング割れ、または欠けの少なくともいずれかである、
請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項3】
前記ディスクカッタの前方に発生した異常を検出する、
請求項1または請求項2に記載の異常検出方法。
【請求項4】
前記受信した信号から、前記ディスクカッタの想定円周長である想定範囲に検出された、周回波である第1波形のピーク値の表面波路程距離に基づいて前記ディスクカッタの摩耗高さを算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項5】
前記受信した信号から前記ディスクカッタの外周の周長を算出して摩耗高さを算出する、
請求項4に記載の異常検出方法。
【請求項6】
前記受信した信号が、前記想定範囲に検出された前記第1波形と、前記第1波形と異なる複数の第2波形とが測定されたことを示す場合、偏摩耗の可能性があると判断する、
請求項4又は請求項5に記載の異常検出方法。
【請求項7】
前記受信した信号が、前記想定範囲に検出された前記第1波形と、前記第1波形と異なる1つの第2波形とが測定されたことを示す場合、リング割れ又は欠けの可能性があると判断する、
請求項4から6のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項8】
前記第2波形は、前記第1波形よりピーク値が低い、
請求項6又は7に記載の異常検出方法。
【請求項9】
前記カッタ頂部の第1接触位置に前記超音波センサを接触した状態で、前記超音波センサから発信された第1接触位置信号と、前記カッタ頂部の前記第1接触位置と異なる第2接触位置に前記超音波センサを接触した状態で、前記超音波センサから発信された第2接触位置信号とを受信し、
前記第1接触位置信号と前記第2接触位置信号とに基づいて、前記異常を検出する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項10】
静止中のトンネル掘削機のディスクカッタの摩耗を測定する異常検出装置であって、
前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触し、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信する超音波センサと、
前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部によって受信した信号に基づいて、前記ディスクカッタの外周に生じた異常を検出する異常検出部と、
を備える、異常検出装置。
【請求項11】
前記異常検出部は、アルゴリズムベースのプログラム、AI(Artificial Intelligence)又は機械学習を用いた推論システムのいずれかによって算出する、
請求項10に記載の異常検出装置。
【請求項12】
静止中のトンネル掘削機のディスクカッタの摩耗を測定する異常検出装置であって、
前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触し、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信する超音波センサと、
前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部によって受信した信号に基づいて、前記ディスクカッタの外周の周長を算出する算出部、
を備える、異常検出装置。
【請求項13】
前記算出部は、アルゴリズムベースのプログラム、AI(Artificial Intelligence)又は機械学習を用いた推論システムのいずれかによって算出する、
請求項12に記載の異常検出装置。
【請求項14】
静止中にディスクカッタの摩耗が測定されるトンネル掘削機であって、
本体と、
前記本体の前側に設置され、岩盤を掘削するカッタヘッドと、
前記カッタヘッドの前方に設けられ、前記カッタヘッドに対して回転可能に支持されるディスクカッタと、
前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触し、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信する超音波センサと、
前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部によって受信した信号に基づいて、前記ディスクカッタの外周に生じた異常を検出する異常検出部と、
を備える、トンネル掘削機。
【請求項15】
静止中にディスクカッタの摩耗が測定されるトンネル掘削機であって、
本体と、
前記本体の前側に設置され、岩盤を掘削するカッタヘッドと、
前記カッタヘッドの前方に設けられ、前記カッタヘッドに対して回転可能に支持されるディスクカッタと、
前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触し、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信する超音波センサと、
前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部によって受信した信号に基づいて、前記ディスクカッタの外周の周長を算出する算出部と、
を備える、トンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出方法、異常検出装置及びトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサを用いて、トンネル掘削機のカッタヘッドに設けられたディスクカッタの後方半径方向から非接触にディスクカッタの刃先に向かって発した超音波の反射波を受ける時間に基づいて刃先までの距離を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術は、検出したディスクカッタの刃先との距離から、ディスクカッタの摩耗状態を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-082986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、トンネル掘削機1の静止中にディスクカッタの摩耗量を測定する場合、ディスクカッタ前方側の摩耗を検知することができない。
【0005】
本発明は、トンネル掘削機1の静止中にディスクカッタの外周に生じた偏摩耗、リング割れ及び欠けのいずれかの異常を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、静止中のトンネル掘削機のディスクカッタの異常を検出する異常検出方法であって、超音波センサを前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触させて、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信し、前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信し、受信した前記信号から前記ディスクカッタの外周に生じた異常を検出する、異常検出方法が提供される。
【0007】
本発明の態様に従えば、静止中のトンネル掘削機のディスクカッタの摩耗を測定する異常検出装置であって、前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触し、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信する超音波センサと、前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部によって受信した信号に基づいて、前記ディスクカッタの外周に生じた偏摩耗、リング割れ及び欠けのいずれかの異常を検出する異常検出部とを備える、異常検出装置が提供される。
【0008】
本発明の態様に従えば、静止中のトンネル掘削機のディスクカッタの摩耗を測定する異常検出装置であって、前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触し、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信する超音波センサと、前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部によって受信した信号に基づいて、前記ディスクカッタの外周の周長を算出する算出部とを備える、異常検出装置が提供される。
【0009】
本発明の態様に従えば、静止中にディスクカッタの摩耗が測定されるトンネル掘削機であって、本体と、前記本体の前側に設置され、岩盤を掘削するカッタヘッドと、前記カッタヘッドの前方に設けられ、前記カッタヘッドに対して回転可能に支持されるディスクカッタと、前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触し、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信する超音波センサと、前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部によって受信した信号に基づいて、前記ディスクカッタの外周に生じた異常を検出する異常検出部とを備える、トンネル掘削機が提供される。
【0010】
本発明の態様に従えば、静止中にディスクカッタの摩耗が測定されるトンネル掘削機であって、本体と、前記本体の前側に設置され、岩盤を掘削するカッタヘッドと、前記カッタヘッドの前方に設けられ、前記カッタヘッドに対して回転可能に支持されるディスクカッタと、前記ディスクカッタのカッタ頂部に接触し、前記カッタ頂部の周方向に沿って表面波を発信する超音波センサと、前記超音波センサから発信され、前記超音波センサに戻った信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部によって受信した信号に基づいて、前記ディスクカッタの外周の周長を算出する算出部とを備える、トンネル掘削機が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トンネル掘削機1の静止中にディスクカッタの外周に生じた偏摩耗、リング割れ及び欠けのいずれかの異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るトンネル掘削機の構成を示す側面図である。
図2図2は、実施形態に係るトンネル掘削機のカッタヘッドの概略を示す斜視図である。
図3図3は、ディスクカッタがケースに装着された状態を示す側面図である。
図4図4は、ディスクカッタの周上の一部のみが摩耗したディスクカッタのカッタリングを示す側面図である。
図5図5は、ディスクカッタの周上の一部のみが摩耗したディスクカッタのカッタリングを示す正面図である。
図6図6は、駆動コントローラの構成を示すブロック図である。
図7図7は、異常検出装置の変形例を説明する模式図である。
図8図8は、図7の側面図である。
図9図9は、測定コントローラの構成を示すブロック図である。
図10図10は、測定波形の一例を説明する模式図である。
図11図11は、測定波形の他の例を説明する模式図である。
図12図12は、実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
図13図13は、測定方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、他の異常検出方法で異常検出装置がディスクカッタを測定する状態を説明する模式図である。
図15図15は、測定波形の一例を説明する模式図である。
図16図16は、他の異常検出方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図17図17は、異常検出装置がディスクカッタを測定する状態の一例を説明する模式図である。
図18図18は、異常検出装置の変形例を説明する模式図である。
図19図19は、測定コントローラの構成を示すブロック図である。
図20図20は、測定コントローラの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0014】
(実施形態)
[トンネル掘削機]
図1は、実施形態に係るトンネル掘削機1の構成を示す側面図である。図2は、実施形態に係るトンネル掘削機1のカッタヘッド30の概略を示す斜視図である。トンネル掘削機1は、例えば、トンネルや水道などの地下構造物の建設において、岩盤を掘削する。トンネル掘削機1は、本体10と、本体10の前側に設置され、岩盤を掘削するカッタヘッド30とを備える。図1図2に示すように、カッタヘッド30はドーム状の形状であり、その内部に、掘削によって発生する掘削ズリが取り込まれる空間であるカッタチャンバ30Cが形成される。
【0015】
本体10は、前後方向に延びるメインビーム14と、メインビーム14の前端に設けられたカッタヘッドサポート22とを有する。カッタヘッド30はベアリング23を介してカッタヘッドサポート22に回転可能に結合される。本体10のカッタヘッドサポート22には、その上部にルーフサポート11が、その側部にサイドサポート12が、その下部にバーチカルサポート13が、それぞれ設置される。ルーフサポート11と、サイドサポート12と、バーチカルサポート13とは、図2に示すように、その外周が掘削断面形状に沿うように円筒形状に設置される。
【0016】
本体10の内部には、トンネルの坑壁に押し付けられるグリッパ15と、メインビーム14に沿って伸縮可能なスラストジャッキ16とが設置される。スラストジャッキ16は、軸方向の前側の端部がメインビーム14の前側に取り付けられ、後側の端部がグリッパ15に取り付けられる。スラストジャッキ16は、前後方向に伸縮可能に設置される。トンネル掘削機1は、スラストジャッキ16が伸縮することによって、推進力を発生させる。トンネル掘削機1は、グリッパ15をトンネルの坑壁に押し付けることによって、推進反力を得る。
【0017】
本体10の内部には、前後方向に延びるベルトコンベヤ20と、ベルトコンベヤ20の前側の上部に設置されたホッパシュート21と、メインビーム14の前側の端部に設置されたカッタヘッドサポート22と、駆動モータ29とを有する。ベルトコンベヤ20は、掘削によって生じた掘削ズリを後方へ運搬する。ベルトコンベヤ20は、筒形状に形成されたメインビーム14の内側に設置され、先端側はカッタヘッドサポート22を貫通してカッタチャンバ30C内まで伸びる。ホッパシュート21は、カッタチャンバ30C内に開口し、カッタヘッド30のバケット39がすくい込んだ掘削ズリをベルトコンベヤ20へ案内する。カッタヘッドサポート22は、カッタヘッド30をその回転軸AX1を中心に回転可能に支持する。カッタヘッドサポート22には、カッタヘッド30を回転させるための駆動モータ29が設置される。駆動モータ29は、油圧モータ又は電動モータである。
【0018】
カッタヘッド30がベアリング23を介して接続されるカッタヘッドサポート22には駆動モータ29が設置される。カッタヘッド30は、駆動モータ29によって、回転軸AX1を中心に回転する。カッタヘッド30は、スラストジャッキ16が伸縮することによって、グリッパ15に対して前後方向に移動する。カッタヘッド30には、複数のディスクカッタ40が装着される。カッタヘッド30は、本体10の前方に設置される。カッタヘッド30には、ディスクカッタ40を収容して保持する円筒状のケース32が複数設置される。すなわち、ケース32は、カッタヘッド30に設置するディスクカッタ40の位置に合わせてカッタヘッド30に設置される。
【0019】
[ディスクカッタ]
図3ないし図5を用いて、ディスクカッタ40について説明する。図3は、ディスクカッタ40の側面図である。図4は、周上の一部のみが摩耗したディスクカッタのカッタリングを示す側面図である。図5は、周上の一部のみが摩耗したディスクカッタのカッタリングを示す正面図である。図4図5に示すディスクカッタ40は、カッタリング41の刃先であるカッタ頂部44が偏摩耗した状態を示す。ディスクカッタ40は、カッタヘッド30に対して回転可能に支持される。ディスクカッタ40は、その回転軸(後述する固定軸AX2)がカッタヘッド30の回転軸AX1と交わる向きとなるように、前記カッタヘッド30に設置される。ディスクカッタ40がトンネルの掘削面に押し付けられながら回転することによって、岩盤を破砕する。より詳しくは、カッタヘッド30がAX1軸を中心に回転した状態で、本体10及びカッタヘッド30に対して前方への推進力をかけることによって、ディスクカッタ40が岩盤に圧着しながらAX2軸を中心に回転する。ディスクカッタ40が岩盤に圧着した状態で回転することによって、ディスクカッタ40のカッタ頂部44と岩盤との接触部では、岩盤が粉砕されるとともに、岩盤に亀裂が生じる。岩盤に生じた亀裂が隣接する他の亀裂とつながって隣接破砕が生じて岩盤が掘削される。岩盤の掘削時に生じた掘削ズリは、カッタヘッド30に設置されたバケット39によってカッタチャンバ30C内に開口するホッパシュート21にすくい込まれて、ベルトコンベヤ20によって後方へ運搬される。
【0020】
ディスクカッタ40は、カッタリング41と、カッタリング41を回転不能に支持するハブ42と、ハブ42を軸受(図示せず)を介して回転可能に支持するシャフト(図示せず)と、ハブ42を軸方向の両側から挟む位置に設けられて前記シャフトを保持する一対のリテーナ43とを有する。一対のリテーナ43によって保持されるシャフトの中心線は、図3では固定軸AX2として示される。すなわち、固定軸AX2には、図示しない軸受を介して、カッタリング41及びハブ42が回転可能に支持される。カッタリング41及びハブ42は、一体に回転可能である。一対のリテーナ43は、カッタリングを軸方向に挟んで回転可能に保持する保持部である。カッタリング41は、トンネルの掘削面に押し付けられながら回転することによって、掘削面を掘削する。
【0021】
カッタリング41は、カッタ頂部44を有する。カッタ頂部44は、ケース32より前方及び後方に突出している。カッタ頂部44は、ケース32の前面及び背面に露出している。カッタ頂部44は、カッタヘッド30の前面部31より前方に突出している。
【0022】
カッタリング41は、例えば、硬い岩盤を掘削すること、または、経年劣化することにより、カッタ頂部44が偏摩耗することがある。カッタ頂部44が偏摩耗すると、カッタ頂部44の外周の弧の一部が弦になった偏摩耗部44Aが生じる。
【0023】
カッタリング41は、リング割れ・リング欠けをすることがある。リング割れとは、単にカッタ頂部44にクラックが入った状態を指す。リング欠けとは、クラックのみならず、カッタ頂部44の一部が欠けて紛失した状態を指す。
【0024】
[トンネル掘削機の制御系]
図6を用いて、駆動コントローラ100について説明する。図6は、駆動コントローラ100の構成を示すブロック図である。トンネル掘削機1は、例えば、駆動コントローラ100によって制御される。駆動コントローラ100は、例えば、図示しない操作盤などを介して入力された操作情報、又は、図示しない掘削管理システムを介して入力された運転情報に基づいて、トンネル掘削機1を作動させる。駆動コントローラ100は、駆動モータ制御部101によって、駆動モータ29の回転と停止とを制御する。
【0025】
[異常検出装置]
図7ないし図9を用いて、トンネル掘削機1が備える、ディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を測定するための異常検出装置60について説明する。図7は、異常検出装置の変形例を説明する模式図である。図8は、図7の側面図である。図9は、測定コントローラの構成を示すブロック図である。異常検出装置60は、超音波センサ61と、表示部であるモニタ62と、測定コントローラ110とを備える。超音波センサ61及びモニタ62と、測定コントローラ110とは、有線又は無線でデータを通信可能である。
【0026】
超音波センサ61は、表面波を発信する超音波センサである。図7図8に示すように、超音波センサ61は、発振子611と、超音波を透過させる部材の一例であるアクリル材612とを備える。発振子611は、超音波を発信する。発振子611は、圧電素子で構成される。発振子611は、圧電素子に電圧をかけることにより圧電素子が振動し超音波を発生する。
【0027】
発振子611は、反射波を受信する受信部としての機能も有する。より詳しくは、発振子611は、外部から反射波等の振動が圧電素子にかけられた場合に電圧が発生する。発生した電圧を測定コントローラ110によって検知して、図10に示すような波形を表示させる。
【0028】
発振子611は、アクリル材612に配置されている。アクリル材612は、例えば、超音波を透過させる透明なアクリル樹脂で形成されている。アクリル材612は、一例であり、超音波を透過させる材料であればよく、アクリル材に限定されない。
【0029】
図7図8に示すアクリル材612は、外周面にクサビ部612Aが設けられた、くさび形状に形成されている。クサビ部612Aには、ディスクカッタ40のカッタ頂部44が進入可能である。超音波センサ61は、アクリル材612のクサビ部612Aをディスクカッタ40のカッタ頂部44の表面に接触させた状態で、発振子611から図5におけるカッタ頂部44の周方向Aに沿って表面波を発信する。なお、クサビ部612Aは必須の構成ではなく、アクリル材612は、各面が平面で構成された形状であってもよい。
【0030】
超音波センサ61は、アクリル材612をディスクカッタ40のカッタ頂部44の表面に接触させた状態で、発振子611から図5におけるカッタ頂部44の周方向Aに沿って表面波を発信する。
【0031】
表面波は、超音波の一種で、物体の表面に沿うように伝わる。発振子611の向きが斜めになるようにアクリル材612を計測対象物に接触させた状態で超音波を発生させると、発振子611からの超音波が屈折によって対象物の表面に沿うように伝わる表面波になる。これにより、発振子611から発せられた超音波は、ディスクカッタ40のカッタ頂部44の表面に伝わる際に屈折によって表面波となり、それによる周回波や反射波を発振子611が受けてその電圧信号を受信する。
【0032】
超音波センサ61は、測定コントローラ110の超音波センサ制御部111(図9参照)からの制御信号に基づいて表面波を発信する。超音波センサ61は、発信された表面波が超音波センサに戻ってくる信号を受信し、カッタ頂部44の表面の周方向の形状を示す信号を測定コントローラ110の信号受信部112(図9参照)へ出力する。超音波センサに戻ってくる信号の一例として、後述する周回波と反射波がある。
【0033】
モニタ62は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)又は有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display:OELD)のようなディスプレイを含む。モニタ62は、測定コントローラ110と別体であってもよいし、測定コントローラ110の内部にあってもよい。モニタ62は、測定コントローラ110の表示制御部113(図9参照)からの映像信号に基づいて映像を表示する。モニタ62は、超音波センサ61の発振子611から発せられた超音波が一周回って発振子611に伝わる周回波や、後述する偏摩耗、割れ・欠け等の異常による反射波が発振子611に伝わるものが波形として表示される。
【0034】
掘削中のカッタリング41には偏摩耗が形成されることがある。通常、カッタリング41は、回転しながら地盤を掘削するため均一に摩耗されるが、いったん偏摩耗が形成されると、偏摩耗の位置でカッタリング41が掘削面に拘束されて、そこからカッタリング41が回転することができなくなる。その状態で掘削が継続されると、偏摩耗が増大し、カッタリング41の破損や、さらにはカッタリング41の回転軸の損傷といったより重大な問題を生じることにつながるため、偏摩耗は早期の発見が望まれる。
【0035】
図10を参照して、偏摩耗、割れ・欠け等の異常を生じていないカッタ頂部44の測定波形について説明する。図10は、測定波形の一例を説明する模式図である。図10は、偏摩耗、リング割れ及び欠け等の異常のいずれも生じていない、言い換えると、新品又は全周が均等に摩耗したカッタ頂部44の測定波形である。測定波形200には、発振子611から発せられた表面波がカッタ頂部44を周回して発振子611により検出された周回波である第1波形P11のみが表れる。図10に示す例では、カッタリング41に偏摩耗などの異常が発生していないため、反射波は検出されず周回波のみ検出される。第1波形P11のピーク値の表面波路程距離が、カッタ頂部44の外周長さである。第1波形P11は、測定波形200の想定範囲Q内に表れる。
【0036】
第1波形は、測定波形内において検出された所定の閾値を上回るピーク値を有する波形の内、最も高いピーク値を有する波形である。実施形態では、第1波形は、周回波であることを想定している。
【0037】
路程距離とは、超音波センサ61からの表面波を用いて、その反射波や周回波が戻ってくる時間に基づいて異常のある位置を特定することができる。図10における路程距離とは、表面波が発振子611から発せられてから反射波もしくは周回波が戻ってくるまでに通過した距離である。
【0038】
想定範囲Qとは、現状のあるべき想定円周長の範囲である。想定範囲Qとは、偏摩耗を含む摩耗を生じていないカッタ頂部44の外周長さの前後を含む範囲である。カッタ頂部44の外周長さの前後を含む範囲とは、掘削に異常ではない摩耗によって外周が短くなった範囲を許容する範囲である。異常ではない通常の摩耗が生じていた場合、第1波形が立ち上がる路程距離は、摩耗が生じる前の第1波形の路程距離よりも短くなる。カッタ頂部44の外周長さの前後を含む範囲とは、測定誤差を許容する範囲である。
【0039】
カッタリング41のカッタ頂部44に偏摩耗が生じた場合、カッタ頂部44の外周の弧が弦になるので、カッタ頂部44の外周の表面波路程距離が短くなる。これにより、偏摩耗が生じた場合の測定波形200に表れる第1波形P11のピーク値は、偏摩耗が生じていない状態に対して路程距離が短くなる。偏摩耗が生じていないと仮定した場合の理論路程距離とカッタ頂部44の外周の路程距離の差から、偏摩耗部44Aの摩耗高さが算出される。
【0040】
カッタリング41のカッタ頂部44に偏摩耗が生じた場合、カッタ頂部44の偏摩耗部44Aの周方向の両端の変曲点において反射波が生じる。これにより、偏摩耗が生じた場合の測定波形200には、第1波形P11以外の波形が表れる。単に第1波形P11の路程距離が短くなっただけでは通常のカッタリング41の摩耗と判断されるが、以下の方法により偏摩耗が発生していると判断することができる。
【0041】
図11を参照して、偏摩耗を生じたカッタ頂部44の測定波形について説明する。図11は、測定波形の他の例を説明する模式図である。図11は、偏摩耗を生じたカッタ頂部44の測定波形である。測定波形201には、想定範囲内に第1波形P11が表れる。偏摩耗以外の場所を基準とした際の外径が同じカッタリング41の場合、図11の第1波形P11のピーク値は、図10の第1波形P11のピーク値より路程距離が短い。また、測定波形201には、偏摩耗部44Aの周方向の両端の変曲点である角部44B及び角部44Cにおける反射波として、第1波形P11以外の第2波形P12及び第2波形P13が表れる。図11に示す例では、測定波形201には、想定範囲外で第2波形P12及び第2波形P13が表れる。第2波形P12は、図5に示すカッタ頂部44の偏摩耗部44Aの角部44Bに対応する波形である。第2波形P13は、図5に示すカッタ頂部44の偏摩耗部44Aの角部44Cに対応する波形である。第2波形P12に対応する角部44Bは超音波センサ61の当接位置から180度よりも手前にあるため第1波形P11よりも手前の路程距離で検出されている。第2波形P13に対応する角部44Cは超音波センサ61の当接位置から180度よりも奥にあるため第1波形P11よりも先の路程距離で検出されている。
【0042】
第2波形は、測定波形内において検出された受信強度が所定の閾値を上回るピーク値を有する波形の内、第1波形よりもピーク値が低い波形である。実施形態では、第2波形は、偏摩耗、割れ、欠けといった異常を原因とした波形を想定している。
【0043】
[異常検出装置の制御系]
図9に示すように、異常検出装置60の超音波センサ61及びモニタ62は、測定コントローラ110によって制御される。測定コントローラ110は、超音波センサ制御部111と、信号受信部112と、表示制御部113とを備える。測定コントローラ110は、超音波センサ制御部111によって超音波センサ61からの表面波の発信を制御する。測定コントローラ110は、信号受信部112によって超音波センサ61の発振子611が受けた周回波や反射波の超音波を電圧信号として受信する。測定コントローラ110は、表示制御部113によって受信した信号をモニタ62に表示するよう制御する。
【0044】
[コンピュータシステム]
図12を用いて、コンピュータシステム1000について説明する。図12は、実施形態に係るコンピュータシステム1000を示すブロック図である。上述の駆動コントローラ100は、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の駆動コントローラ100及び測定コントローラ110の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶される。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0045】
[摩耗量の測定方法]
次に、静止中のトンネル掘削機1における、異常検出装置60を用いたディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量の測定方法・測定処理について説明する。図13は、測定方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。例えば、毎日の作業の開始前、又は、所定期間ごとなどに、ディスクカッタ40のカッタリング41の摩耗量を測定する。実施形態では、ステップST15ないしステップST21は、測定者が行うものとして説明する。
【0046】
まず、カッタヘッド30の位置合わせを行う(ステップST11)。駆動コントローラ100は、これから測定する測定対象のディスクカッタ40に超音波センサ61を用いて測定可能になるように、駆動モータ制御部101によって駆動モータ29を制御してカッタヘッド30を回転させる。駆動コントローラ100は、ステップST12へ進む。
【0047】
カッタヘッド30を停止したか否かを判断する(ステップST12)。駆動コントローラ100は、駆動モータ制御部101によって駆動モータ29が停止されたか否かによって、カッタヘッド30を停止したか否かを判断する。駆動コントローラ100は、カッタヘッド30が停止したと判断する場合(ステップST12でYes)、ステップST13へ進む。駆動コントローラ100は、カッタヘッド30が停止したと判断しない場合(ステップST12でNo)、ステップST12の処理を再度実行する。
【0048】
カッタヘッド30が停止したと判断する場合(ステップST12でYes)、測定者は測定対象のディスクカッタ40のカッタ頂部44に超音波センサ61を接触させて測定する(ステップST13)。測定者は、測定コントローラ110の図示しない操作部に対して測定開始操作を入力する。そして、測定コントローラ110は、超音波センサ制御部111によって発振子611から超音波を発信する。そして、測定コントローラ110は、信号受信部112によって発振子611から発せられた超音波が屈折によって表面波となりディスクカッタ40のカッタ頂部44の表面に伝わり、それによる周回波や反射波を発振子611が受けてその電圧信号を受信する。測定コントローラ110は、ステップST14へ進む。
【0049】
信号受信部112が受信した電圧信号に基づいて、波形をモニタ62に表示する(ステップST14)。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、信号受信部112が受信した信号が示す測定波形をモニタ62に表示するよう制御する。測定コントローラ110は、ステップST15へ進む。
【0050】
測定者は、モニタ62に表示された測定波形を確認して、波形を正常に測定できたか否かを判断する(ステップST15)。例えば、モニタ62に表示された測定波形に周回波に相当するピーク値が見られない場合、または、例えば、ノイズが大きすぎて第1波形や第2波形が識別困難である場合等のように測定波形の形状が予測される形状と明らかに異なる場合、測定者は、波形を正常に測定できていないと判断する。測定者が、波形が正常に測定できたと判断する場合(ステップST15でYes)、ステップST16へ進む。測定者が、波形が正常に測定できたと判断しない場合(ステップST15でNo)、ステップST18へ進む。
【0051】
表示された波形が正常に測定できたと判断する場合(ステップST15でYes)、測定者は、想定範囲内にカッタ頂部44を1周まわった周回波である第1波形のみが測定されたか否かを判断する(ステップST16)。測定者は、モニタ62に表示された測定波形を確認して、想定範囲内に第1波形のみが表示されているか否かを判断する。測定者は、想定範囲内に第1波形のみが表示されている場合、想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断する。想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断する場合(ステップST16でYes)、ステップST17へ進む。想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断しない場合(ステップST16でNo)、ステップST19へ進む。
【0052】
想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断する場合(ステップST16でYes)、測定者は、カッタ頂部に異常(偏摩耗、割れ、欠け等)が発生しておらず通常の摩耗が生じていると判断し、摩耗高さを算出する(ステップST17)。測定者は、周回波と思われる第1波形が発生した路程距離から、カッタリング41の摩耗高さを算出する。測定者は、算出された摩耗高さが閾値以下である場合、「正常」と判断してもよい。測定者は、算出された摩耗高さが閾値より大きい場合、「異常」と判断してもよい。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、摩耗高さ及び判断結果をモニタ62に表示してもよい。測定者は、「異常」との判断結果を確認すると、測定を中断する。そして、測定者は、例えば、ディスクカッタ40を交換する。
【0053】
モニタ62に表示された波形が正常に測定できたと判断しない場合(ステップST15でNo)、測定者は、「測定エラー」と判断する(ステップST18)。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、「測定エラー」との判断結果をモニタ62に表示してもよい。測定者は、「測定エラー」との判断結果を確認すると、測定を中断する。そして、測定者は、例えば、超音波センサ61の位置及び向きなどを確認する。
【0054】
想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断しない場合(ステップST16でNo)、測定者は、カッタ頂部に異常(偏摩耗、割れ、欠け等)が発生している可能性があると判断し、さらに複数の第2波形が測定されたか否かを判断する(ステップST19)。測定者は、モニタ62に表示された測定波形を確認して、複数の第2波形が表示されているか否かを判断する。複数の第2波形が測定されたと判断する場合(ステップST19でYes)、ステップST21へ進む。複数の第2波形が測定されたと判断しない場合(ステップST19でNo)、ステップST20へ進む。
【0055】
複数の第2波形が測定されたと判断しない場合(ステップST19でNo)、測定者は、「リング割れ、欠けの可能性あり」と判断する(ステップST20)。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、「リング割れ、欠けの可能性あり」との判断結果をモニタ62に表示してもよい。測定者は、「リング割れ、欠けの可能性あり」との判断結果を確認すると、測定を中断する。そして、測定者は、例えば、ディスクカッタに割れ、欠けが発生しているか目視で確認し、本当に割れもしくは欠けが発生している場合、ディスクカッタ40を交換する。
【0056】
複数の第2波形が測定されたと判断する場合(ステップST19でYes)、測定者は、「偏摩耗の可能性あり」と判断する(ステップST21)。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、「偏摩耗の可能性あり」との判断結果をモニタ62に表示してもよい。測定者は、「偏摩耗の可能性あり」との判断結果を確認すると、測定を中断する。そして、測定者は、例えば、ディスクカッタに偏摩耗が発生しているか目視で確認し、本当に偏摩耗が発生している場合、ディスクカッタ40を交換する。
【0057】
このような処理を繰り返し、測定対象のすべてのディスクカッタ40について、カッタ頂部44の摩耗量を測定する。
【0058】
[効果]
実施形態では、トンネル掘削機1の静止中に、ディスクカッタ40のカッタ頂部44に対して超音波センサ61から表面波を発信して、受信した信号が示す測定波形をモニタ62に表示することができる。実施形態によれば、測定波形から、トンネル掘削機1の静止中にディスクカッタ40の摩耗量を測定することができる。実施形態では、表面波を用いることにより、ディスクカッタ40のカッタ頂部44の前方側が摩耗していても、トンネル掘削機1の静止中にディスクカッタ40の摩耗量を測定することができる。
【0059】
実施形態では、ディスクカッタ40のカッタ頂部44に超音波センサ61を接触させて測定する。実施形態によれば、カッタ頂部44に対する超音波センサ61の接触角度の安定化及び接触部面積の拡大を図り、入力強度及び出力強度を強くすることができる。実施形態によれば、カッタ頂部44に対する超音波センサ61の位置ずれを規制して、表面波の進行方向に対する方向ずれがなくなり安定化することができる。
【0060】
[周回波位置及び異常検出(偏摩耗・割れ・欠け位置等)の検出精度向上手法]
図14ないし図16を参照して、周回波位置及び異常検出(偏摩耗・割れ・欠け位置等)の検出精度向上手法について説明する。図14は、異常検出の検出精度向上手法を用いて異常検出装置がディスクカッタを測定する状態を説明する模式図である。図15は、測定波形の一例を説明する模式図である。図16は、異常検出の検出精度向上手法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0061】
この異常検出の検出精度向上手法では、図14に示すように、カッタ頂部44の第1接触位置X1に超音波センサ61を接触した状態で、超音波センサ61から発信された第1接触位置信号を受信すると共に、カッタ頂部44の第1接触位置X1と異なる第2接触位置X2に超音波センサ61を接触した状態で、超音波センサ61から発信された第2接触位置信号を受信する。そして、第1接触位置信号が示す第1測定波形200と、第2接触位置信号が示す第2測定波形200´とに基づいて、偏摩耗などの異常発生を精度よく確認し、発生位置を精度よく特定する。
【0062】
図15を参照して、異常検出の検出精度向上手法によって測定される測定波形について説明する。図15に示す例では、第1接触位置信号が示す測定波形200を実線で示し、第2接触位置信号が示す測定波形200´を破線で示している。図15は、偏摩耗を生じたカッタ頂部44の第1測定波形200、第2測定波形200´である。カッタ頂部44における超音波センサ61の接触位置を変えた場合でも、同じ位置にカッタ頂部44を周回した周回波である第1波形P11、第1波形P11´が表れる。第1波形P11、第1波形P11´は、測定位置を変更しただけで、カッタ頂部の外周距離、すなわち路程距離は変更されていないためである。2つの測定波形200、200´における第1波形P11、P11´のピーク値の路程距離の平均値を、カッタ頂部44の外周長さの路程距離としてもよい。また、カッタ頂部44における超音波センサ61の接触位置を変えた場合、カッタ頂部44の偏摩耗部44Aの変曲点における反射波は、接触位置から変曲点までの路程距離が変わる。変曲点44B及び変曲点44Cにおいて発生する反射波にそれぞれ相当する第2測定波形200´における第2波形P12´及び第2波形P13´の路程距離と、第1測定波形200における第2波形P12及び第2波形P13の路程距離とは異なる。
【0063】
一方、第1測定波形200における第2波形P12及び第2波形P13との路程距離の差分と、第2測定波形200´における第2波形P12´及び第2波形P13´との路程距離の差分は同一となる。接触位置が異なるだけで偏摩耗量は同一のためである。
【0064】
次に、図16を用いて、異常検出装置60を用いたディスクカッタ40のカッタリング41の異常検出の検出精度向上手法・処理について説明する。ステップST31、ステップST32、ステップST37、ステップST38は、図13に示すフローチャートのステップST11、ステップST12、ステップST17、ステップST18と同様の処理を行う。実施形態では、ステップST36ないしステップST38は、測定者が行うものとして説明する。
【0065】
カッタヘッド30が停止したと判断する場合(ステップST32でYes)、測定対象のディスクカッタ40のカッタ頂部44の第1接触位置X1に超音波センサ61を接触させて測定する(ステップST33)。測定者は、測定対象のディスクカッタ40のカッタ頂部44の第1接触位置X1に超音波センサ61を接触させる。測定者は、超音波センサ61の図示しない操作部に対して測定開始操作を入力する。そして、測定コントローラ110は、超音波センサ制御部111によって発振子611から超音波を発信する。そして、測定コントローラ110は、信号受信部112によって発振子611から表面波として発信された信号を受信する。測定コントローラ110は、ステップST34へ進む。
【0066】
測定対象のディスクカッタ40のカッタ頂部44の第2接触位置X2に超音波センサ61を接触させて測定する(ステップST34)。測定者は、測定対象のディスクカッタ40のカッタ頂部44の第2接触位置X2に超音波センサ61を接触させる。測定者は、超音波センサ61の図示しない操作部に対して測定開始操作を入力する。そして、測定コントローラ110は、超音波センサ制御部111によって発振子611から超音波を発信する。そして、測定コントローラ110は、信号受信部112によって発振子611から表面波として発信された信号を受信する。測定コントローラ110は、ステップST35へ進む。
【0067】
2つの波形をモニタ62に表示する(ステップST35)。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、ステップST33及びステップST34において受信した信号が示す2つの測定波形をモニタ62に表示するよう制御する。測定コントローラ110は、ステップST36へ進む。
【0068】
測定者は、モニタ62に表示された2つの測定波形を確認して、波形を正常に測定できたか否かを判断する(ステップST36)。波形を正常に測定できたか否かの判断は、第1実施形態と同様である。測定者がモニタ62に表示された2つの波形が正常に測定できたと判断する場合(ステップST36でYes)、ステップST37へ進む。測定者がモニタ62に表示された2つの波形が正常に測定できたと判断しない場合(ステップST36でNo)、ステップST38へ進む。
【0069】
表示された2つの波形が正常に測定できたと判断する場合(ステップST36でYes)、測定者は、想定範囲内にカッタ頂部44を1周まわった周回波である第1波形のみが測定されたか否かを判断する(ステップST37)。測定者は、モニタ62に表示された測定波形を確認して、想定範囲内に第1波形のみが表示されているか否かを判断する。測定者は、想定範囲内に第1波形のみが表示されている場合、想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断する。想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断する場合(ステップST37でYes)、ステップST38へ進む。想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断しない場合(ステップST37でNo)、ステップST40へ進む。
【0070】
想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断する場合(ステップST37でYes)、測定者は、カッタ頂部に異常(偏摩耗、割れ、欠け等)が発生しておらず通常の摩耗が生じていると判断し、摩耗高さを算出する(ステップST38)。測定者は、周回波と思われる第1波形が発生した路程距離から、カッタリング41の摩耗高さを算出する。摩耗高さは、2つの波形の路程距離の平均値を用いて算出してもよい。測定者は、算出された摩耗高さが閾値以下である場合、「正常」と判断してもよい。測定者は、算出された摩耗高さが閾値より大きい場合、「異常」と判断してもよい。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、摩耗高さ及び判断結果をモニタ62に表示してもよい。測定者は、「異常」との判断結果を確認すると、測定を中断する。そして、測定者は、例えば、ディスクカッタ40を交換する。
【0071】
モニタ62に表示された2つの波形のいずれかが正常に測定できたと判断しない場合(ステップST36でNo)、測定者は、「測定エラー」と判断する(ステップST39)。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、「測定エラー」との判断結果をモニタ62に表示してもよい。測定者は、「測定エラー」との判断結果を確認すると、測定を中断する。そして、測定者は、例えば、超音波センサ61の位置及び向きなどを確認する。
【0072】
想定範囲内に第1波形のみが測定されたと判断しない場合(ステップST37でNo)、測定者は、カッタ頂部に異常(偏摩耗、割れ、欠け等)が発生している可能性があると判断し、さらに2つの波形において複数の第2波形が測定されたか否かを判断する(ステップST40)。測定者は、モニタ62に表示された測定波形を確認して、複数の第2波形が表示されているか否かを判断する。複数の第2波形が測定されたと判断する場合(ステップST40でYes)、ステップST42へ進む。複数の第2波形が測定されたと判断しない場合(ステップST40でNo)、ステップST41へ進む。
【0073】
複数の第2波形が測定されたと判断しない場合(ステップST40でNo)、測定者は、「リング割れ、欠けの可能性あり」と判断する(ステップST41)。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、「リング割れ、欠けの可能性あり」との判断結果をモニタ62に表示してもよい。測定者は、「リング割れ、欠けの可能性あり」との判断結果を確認すると、測定を中断する。そして、測定者は、例えば、ディスクカッタに割れ、欠けが発生しているか目視で確認し、本当に割れもしくは欠けが発生している場合、ディスクカッタ40を交換する。
【0074】
複数の第2波形が測定されたと判断する場合(ステップST40でYes)、測定者は、「偏摩耗の可能性あり」と判断する(ステップST42)。測定コントローラ110は、表示制御部113によって、「偏摩耗の可能性あり」との判断結果をモニタ62に表示してもよい。測定者は、「偏摩耗の可能性あり」との判断結果を確認すると、測定を中断する。そして、測定者は、例えば、ディスクカッタに偏摩耗が発生しているか目視で確認し、本当に偏摩耗が発生している場合、ディスクカッタ40を交換する。
【0075】
[超音波センサの変形例1]
図17は、異常検出装置がディスクカッタを測定する状態の一例を説明する模式図である。
【0076】
治具613は、ディスクカッタ40に対してアクリル材612を固定する。治具613の内壁は、ディスクカッタ40のカッタリング41の側面に接触する。治具613は、ディスクカッタ40のカッタ頂部44及びカッタリング41の一部を覆った状態で配置される。図17に示す治具613は、上部及び側部に壁部が配置され、下部が開口した角筒状に形成されている。治具613の上部の壁部に、発振子611及びアクリル材612が配置されている。内部の空間613Aに、ディスクカッタ40のカッタ頂部44及びカッタリング41の一部が収容されている。変形例によれば、測定時に、測定者が手で超音波センサ61を保持しなくてもよくなる。変形例によれば、治具613により、アクリル材612をカッタ頂部44に対して安定化することができる。
【0077】
[超音波センサの変形例2]
図18は、異常検出装置の変形例を説明する模式図である。超音波センサ61は、図7に示す構成に加えてバネ614を備える。バネ614は、アクリル材612を図18の上下方向にのみ可動させる。変形例によれば、バネ614により、アクリル材612をカッタ頂部44に対してより安定化することができる。
【0078】
図19は、測定コントローラの構成を示すブロック図である。上記では、図13に示すフローチャートのステップST15ないしステップST17、及び、図16に示すフローチャートのステップST36ないしステップST38は、測定者が行うものとして説明したが、これらの処理を測定コントローラ110の算出部114が行ってもよい。算出部は、図13に示すフローチャートのステップST15ないしステップST17、又は、図16に示すフローチャートのステップST36ないしステップST38に相当する機能を有する。算出部は、例えば、アルゴリズムベースのプログラム、AI(Artificial Intelligence)又は機械学習を用いた推論システムによって、これらの処理を実行する。図12を用いて上述したコンピュータシステム1000に係る説明は、図19に示す測定コントローラ110にも適用される。
【0079】
図20は、測定コントローラの構成を示すブロック図である。上記では、図13に示すフローチャートのステップST15ないしステップST21、及び、図16に示すフローチャートのステップST36ないしステップST42は、測定者が行うものとして説明したが、これらの処理を測定コントローラ110の異常検出部115が行ってもよい。異常検出部は、図13に示すフローチャートのステップST15ないしステップST21、及び、図16に示すフローチャートのステップST36ないしステップST42に相当する機能を有する。異常検出部は、例えば、アルゴリズムベースのプログラム、AI又は機械学習を用いた推論システムによって、これらの処理を実行する。図12を用いて上述したコンピュータシステム1000に係る説明は、図20に示す測定コントローラ110にも適用される。
【0080】
上記では、図13に示すフローチャートのステップST13、及び、図16に示すフローチャートのステップST33、ステップST34は、測定者が、測定対象のディスクカッタ40のカッタ頂部44に超音波センサ61のアクリル材612を接触させるものとして説明したが、これに限定されない。超音波センサ61をディスクカッタ40に対して所望の位置に移動させるアクチュエータを含む移動機構を備え、駆動コントローラ100によってアクチュエータを駆動させて超音波センサ61を移動させてもよい。
【0081】
上記では、駆動コントローラ100と測定コントローラ110とは別々のものとして記載されているが、本発明はこれに限定されない。駆動コントローラ100、測定コントローラ110が一体であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…トンネル掘削機、10…本体、20…ベルトコンベヤ、29…駆動モータ、30…カッタヘッド、32…ケース、40…ディスクカッタ、41…カッタリング、42…ハブ、43…リテーナ(保持部)、44…カッタ頂部、60…異常検出装置、61…超音波センサ、611…発振子、612…アクリル材、62…モニタ(表示部)、100…駆動コントローラ、101…駆動モータ制御部、110…測定コントローラ、111…超音波センサ制御部、112…信号受信部、113…表示制御部、200…測定波形、A…周方向、P11…第1波形、P12…第2波形、P13…第2波形、Q…想定範囲。
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