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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-16
(45)【発行日】2025-12-24
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両のモータアシスト制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20251217BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20251217BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20251217BHJP
   B60K 23/00 20060101ALI20251217BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20251217BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20251217BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20251217BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20251217BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20251217BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20251217BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20251217BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60K23/00 C
B60L15/20 K
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
B60W10/02 900
B60W20/10
F16D48/02 640A
F16D48/02 640K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020102261
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021194990
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-09
【審判番号】
【審判請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤川 真也
(72)【発明者】
【氏名】飯野 隼人
【合議体】
【審判長】八木 誠
【審判官】遠藤 秀明
【審判官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-207520(JP,A)
【文献】特開2019-55771(JP,A)
【文献】特開2005-186740(JP,A)
【文献】特開2005-325967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータと、前記エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、前記エンジンと前記駆動軸との間の動力伝達を開放または接続するクラッチと、前記自動変速機の変速時における前記クラッチの非完全係合期間に前記モータにアシストトルクを出力させるハイブリッド車両のモータアシスト制御装置であって、
前記自動変速機の変速中のクラッチ開放過程において、前記自動変速機から出力されるクラッチトルクと前記アシストトルクの和が、ドライバの要求するドライバ要求トルクよりも小さくなる場合、前記自動変速機の変速中のクラッチ開放過程において出力された前記モータの最大トルクをクラッチ接続過程においても、前記自動変速機から出力されるクラッチトルクと前記アシストトルクの和が、前記ドライバ要求トルクより小さい間、維持させ、前記自動変速機から出力されるクラッチトルクと前記アシストトルクの和が前記ドライバ要求トルク以上となった場合には、前記モータの最大トルクの維持を終了し、前記クラッチの接続速度を上昇させて前記クラッチトルクを増やす制御部を備えるハイブリッド車両のモータアシスト制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記クラッチ接続過程において、前記クラッチトルクと前記アシストトルクの和が、前記ドライバ要求トルク以上となった場合には、前記ドライバ要求トルクと前記クラッチトルクの差を前記アシストトルクとする請求項1に記載のハイブリッド車両のモータアシスト制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記クラッチ開放過程では、前記自動変速機から出力されるクラッチトルクが第1のトルクまで減少すると、クラッチ開放速度を速めて、前記モータから前記アシストトルクを出力させる請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両のモータアシスト制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記クラッチ開放過程では、前記第1のトルクと前記クラッチトルクとの差を、前記アシストトルクとして出力させる請求項に記載のハイブリッド車両のモータアシスト制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記モータの、所定の時点での出力可能な最大トルクであるモータ出力可能トルクを前記第1のトルクとする請求項3または請求項4に記載のハイブリッド車両のモータアシスト制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記自動変速機の変速開始時の、前記モータに電力を供給するバッテリの充電量、または前記モータの発熱状態に基づいて前記モータ出力可能トルクを算出する請求項に記載のハイブリッド車両のモータアシスト制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両のモータアシスト制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ギアシフトフェーズ中に車輌の乗員に感じられる車輌の減速度を最小化することと、同時に、電気モータのエネルギ消耗を削減することを目的として、ギアシフトフェーズの開始の直前に、電気モータによって伝達され得る最大トルクの値が、熱機関によって車輪に伝達されている初期トルク値よりも低い場合に、熱機関によって車輪に伝達されているトルクが電気モータによって伝達され得る最大トルクの値と同等の減少トルク値になるまでの期間は、摩擦クラッチが徐々に切り離され、熱機関によって車輪に伝達されているトルクが減少トルク値から初期トルク値になるまでの期間は、摩擦クラッチが徐々に締結され、それぞれの期間では電気モータがトルクを伝達しないようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-55771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気モータによって伝達され得る最大トルクの値が、熱機関によって車輪に伝達されている初期トルク値と少なくとも同等である場合の第1のトルク制御(特許文献1の図2に示される、アシストエネルギの最小化を考慮していないアシスト制御)と、電気モータによって伝達され得る最大トルクの値が、熱機関によって車輪に伝達されている初期トルク値よりも低い場合の第2のトルク制御(特許文献1の図3に示される、電気モータのアシストエネルギを最小化させるアシスト制御)を比較すると、第2のトルク制御は、変速期間が長引くことになる。このため、変速開始前の車輪に伝達されていたトルクに復帰するまでの時間が長くなるおそれがあり、車輌の乗員がトルク抜けを感じることについて改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、変速時のトルク抜けをドライバに感じさせることを抑えることができるハイブリッド車両のモータアシスト制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、エンジンと、モータと、前記エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、前記エンジンと前記駆動軸との間の動力伝達を開放または接続するクラッチと、前記自動変速機の変速時における前記クラッチの非完全係合期間に前記モータにアシストトルクを出力させるハイブリッド車両のモータアシスト制御装置であって、前記自動変速機の変速中のクラッチ開放過程において、前記自動変速機から出力されるクラッチトルクと前記アシストトルクの和が、ドライバの要求するドライバ要求トルクよりも小さくなる場合、前記自動変速機の変速中のクラッチ開放過程において出力された前記モータの最大トルクをクラッチ接続過程においても、前記自動変速機から出力されるクラッチトルクと前記アシストトルクの和が、前記ドライバ要求トルクより小さい間、維持させ、前記自動変速機から出力されるクラッチトルクと前記アシストトルクの和が前記ドライバ要求トルク以上となった場合には、前記モータの最大トルクの維持を終了し、前記クラッチの接続速度を上昇させて前記クラッチトルクを増やす制御部を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、変速時のトルク抜けをドライバに感じさせることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るモータアシスト制御装置のモータアシスト制御処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係るモータアシスト制御装置のモータアシスト制御処理によるクラッチ接続過程において一定速度でクラッチを接続する場合のトルクの変化を示すタイムチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係るモータアシスト制御装置のモータアシスト制御処理によるクラッチ接続過程において途中でクラッチ接続速度を上昇させる場合のトルクの変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両のモータアシスト制御装置は、エンジンと、モータと、エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、エンジンと駆動軸との間の動力伝達を開放または接続するクラッチと、自動変速機の変速時におけるクラッチの非完全係合期間にモータにアシストトルクを出力させるハイブリッド車両のモータアシスト制御装置であって、自動変速機の変速中のクラッチ開放過程において出力されたモータの最大トルクをクラッチ接続過程においても維持させる制御部を備えるよう構成されている。
【0010】
これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両のモータアシスト制御装置は、変速時のトルク抜けをドライバに感じさせることを抑えることできる。
【実施例
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るモータアシスト制御装置を搭載したハイブリッド車両について詳細に説明する。
【0012】
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、自動変速機としての変速機3と、モータ4と、インバータ5と、高電圧バッテリ6と、低電圧バッテリ7と、制御部8とを含んで構成される。
【0013】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0014】
エンジン2には、始動装置21が連結されている。始動装置21は、図示しないベルトを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。始動装置21は、電力が供給されることにより回転することでクランクシャフトを回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与える。
【0015】
始動装置21は、スタータやISG(Integrated Starter Generator)により構成される。始動装置21として、スタータとISGの両方を備えるようにしてもよい。
【0016】
変速機3は、エンジン2から出力された回転を変速し、駆動軸11を介して駆動輪10を駆動する。変速機3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の図示しない変速機構と、図示しないアクチュエータとを備えている。
【0017】
エンジン2と変速機3の間には、乾式単板式のクラッチ31が設けられており、クラッチ31は、エンジン2と変速機3との間の動力伝達を接続または切断する。
【0018】
変速機3は、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、図示しないアクチュエータにより変速機構における変速段の切換えとクラッチ31の断接が行なわれる。
【0019】
変速機3と駆動輪10の間にはディファレンシャル機構32が設けられている。ディファレンシャル機構32と駆動輪10は駆動軸11により連結されている。
【0020】
モータ4は、ディファレンシャル機構32に対して、チェーン等の図示しない減速機を介して連結されている。モータ4は、電動機として機能する。モータ4は、発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行う。
【0021】
モータ4には、モータ4の温度を検出する温度センサ41が設けられている。温度センサ41は、制御部8に接続されている。
【0022】
インバータ5は、制御部8の制御により、高電圧バッテリ6などから供給された直流の電力を、三相の交流電力に変換してモータ4に供給する。
【0023】
インバータ5は、制御部8の制御により、モータ4によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、高電圧バッテリ6を充電する。
【0024】
高電圧バッテリ6は、例えばリチウムイオン蓄電池で構成されている。高電圧バッテリ6は、インバータ5に電力を供給する。
【0025】
高電圧バッテリ6には、バッテリ状態センサ61が設けられている。バッテリ状態センサ61は、高電圧バッテリ6の充放電電流、電圧及びバッテリ温度を検出する。バッテリ状態センサ61は、制御部8に接続されている。制御部8は、バッテリ状態センサ61の出力により高電圧バッテリ6の充電量を検知できるようになっている。
【0026】
低電圧バッテリ7は、例えば鉛電池で構成されている。低電圧バッテリ7は、始動装置21などのハイブリッド車両1の電気負荷に電力を供給する。
【0027】
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成しており、エンジン2及びモータ4の少なくとも一方が出力する動力により走行するようになっている。
【0028】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0029】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部8として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0030】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例における制御部8として機能する。
【0031】
制御部8の入力ポートには、上述の温度センサ41、バッテリ状態センサ61に加え、アクセル開度センサ81、クラッチストロークセンサ82を含む各種センサ類が接続されている。
【0032】
アクセル開度センサ81は、図示しないアクセルペダルの操作量をアクセル開度として検出する。クラッチストロークセンサ82は、クラッチ31の係合度を検出する。
【0033】
一方、制御部8の出力ポートには、上述の始動装置21、変速機3のアクチュエータ、インバータ5に加え、図示しないインジェクタを含む各種制御対象類が接続されている。
【0034】
本実施例において、制御部8は、アクセル開度などに基づいて、ドライバの要求するドライバ要求トルクを算出する。制御部8は、ドライバ要求トルクが駆動輪10に出力されるようエンジン2、変速機3、クラッチ31、モータ4を制御する。
【0035】
また、制御部8は、変速時のクラッチ31が開放されている間、モータ4から駆動輪10に対してアシストトルクを出力するアシストトルク出力制御を実行するようになっている。「クラッチ31が開放されている間」とは、クラッチ31の完全係合が解除されている期間(以下、この期間を「非完全係合期間」という)であり、当該非完全係合期間には、いわゆる半クラッチ状態が含まれる。半クラッチ状態とは、クラッチ31の摩擦材同士がスリップした状態で係合して動力を伝達する状態をいう。
【0036】
変速機構とエンジンとの間の動力伝達経路にクラッチが設けられた車両においては、変速時のクラッチの非完全係合期間中、エンジンからのトルクが駆動輪に伝達されないため、加減速感が喪失する、いわゆるトルク抜けが生じ、このトルク抜けによって空走感が生じてしまう。
【0037】
アシストトルク出力制御は、変速時のクラッチの非完全係合期間中にモータ4から駆動輪10に対してアシストトルクを出力することで、トルク抜けによる空走感の発生を回避するものである。
【0038】
制御部8は、変速時のクラッチ開放過程において出力されたモータ4の最大トルクを、変速機3の変速機構の変速段切替後のクラッチ接続過程においても維持させる。
【0039】
クラッチ開放過程とは、クラッチ31の完全係合が解除され始めてから、クラッチ31が完全に開放されるまでの期間をいう。
【0040】
クラッチ接続過程とは、変速機3の変速機構の変速段切替後に、クラッチ31の係合が開始してから、クラッチ31が完全に係合されるまでの期間をいう。
【0041】
制御部8は、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、第1のトルクより小さい間、クラッチ開放過程において出力されたモータ4の最大トルクを維持する。
【0042】
クラッチトルクとは、変速機3の出力軸のトルクであり、ディファレンシャル機構32に出力されるトルクである。
【0043】
制御部8は、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、第1のトルク以上となった場合には、第1のトルクとクラッチトルクの差をモータ4のアシストトルクとする。
【0044】
第1のトルクとしては、ドライバ要求トルクや、変速開始前の駆動トルクが設定される。ドライバ要求トルクは、ドライバの要求に応じて変化するトルクであり、ドライバ要求トルクを第1のトルクとした場合には、ドライバの要求に応じてトルクが制御され、変速処理が終了したときにドライバが要求するトルクを出力させることができる。変速開始前の駆動トルクとは、今回の変速が開始される直前に駆動軸11に出力されていたトルクであり、変速開始前の駆動トルクを第1のトルクとした場合には、変速開始前の駆動トルクの値に基づいてトルクが制御され、変速処理が終了したときに変速開始前の駆動トルクに復帰させることができる。また、変速開始前の駆動トルクを第1のトルクとした場合には、一定の値に基づいて制御するため、制御処理の負荷を抑えることができる。
【0045】
制御部8は、クラッチ接続過程では、一定の速度でクラッチ31を接続する。制御部8は、クラッチ接続過程では、クラッチ31が完全に係合されるまでモータ4からアシストトルクを出力させる。
【0046】
制御部8は、クラッチ接続過程において、クラッチ31の接続速度を途中で上昇させてもよい。制御部8は、例えば、クラッチトルクとモータトルクの和が、第1のトルクと等しくなったとき、クラッチ31の接続速度を、それまでに比べ速くする。
【0047】
制御部8は、クラッチ開放過程では、クラッチトルクが第2のトルクまで減少すると、クラッチ開放速度を速めて、モータ4からアシストトルクを出力させる。
【0048】
制御部8は、クラッチ開放過程でのクラッチトルクが第2のトルクまで減少してからのクラッチ31の開放速度と、クラッチ接続過程でのクラッチ31の接続速度とを同一としてもよい。
【0049】
制御部8は、クラッチ開放過程では、第2のトルクとクラッチトルクとの差を、モータ4のアシストトルクとして出力させる。
【0050】
第2のトルクは、例えば、モータ4の、所定の時点での出力可能な最大トルクであるモータ出力可能トルクとする。
【0051】
制御部8は、例えば、所定の周期でモータ出力可能トルクを算出し、モータ出力可能トルクとクラッチトルクが等しくなった時点でクラッチ開放速度を速めて、モータ4からアシストトルクを出力させてもよい。この場合、モータ出力可能トルクとクラッチトルクが等しくなった時点でのモータ出力可能トルクを第2のトルクとする。
【0052】
また、制御部8は、クラッチ解放過程が始まる所定時間前から、モータ出力可能トルクとクラッチトルクが等しくなるまでの間の所定の時点でのモータ出力可能トルクを第2のトルクとしてもよい。
【0053】
制御部8は、高電圧バッテリ6の充電量、またはモータ4の発熱状態に基づいてモータ出力可能トルクを算出する。
【0054】
以上のように構成された本実施例に係るモータアシスト制御装置によるモータアシスト制御処理について、図2を参照して説明する。なお、以下に説明するモータアシスト制御処理は、制御部8が変速の制御を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0055】
ステップS1において、制御部8は、現在がクラッチ接続過程であるか否かを判定する。現在がクラッチ接続過程であると判定した場合には、制御部8は、ステップS6の処理を実行する。現在がクラッチ接続過程でないと判定した場合には、制御部8は、ステップS2の処理を実行する。
【0056】
ステップS2において、制御部8は、現在がクラッチ開放過程であるか否かを判定する。現在がクラッチ開放過程であると判定した場合には、制御部8は、ステップS3の処理を実行する。現在がクラッチ開放過程でないと判定した場合には、制御部8は、ステップS9の処理を実行する。
【0057】
ステップS3において、制御部8は、クラッチトルクがモータ出力可能トルクより大きいか否かを判定する。クラッチトルクがモータ出力可能トルクより大きいと判定した場合には、制御部8は、ステップS4の処理を実行する。クラッチトルクがモータ出力可能トルクより大きくないと判定した場合には、制御部8は、ステップS5の処理を実行する。
【0058】
ステップS4において、制御部8は、モータアシストを行なわない。ステップS4の処理を実行した後、制御部8は、モータアシスト制御処理を終了する。
【0059】
ステップS5において、制御部8は、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの差を目標モータトルクとして、モータ4にアシストトルクを出力させる。ステップS5の処理を実行した後、制御部8は、モータアシスト制御処理を終了する。
【0060】
ステップS6において、制御部8は、クラッチトルクとモータ出力可能トルクとの和がドライバ要求トルクより大きいか否かを判定する。クラッチトルクとモータ出力可能トルクとの和がドライバ要求トルクより大きいと判定した場合には、制御部8は、ステップS7の処理を実行する。クラッチトルクとモータ出力可能トルクとの和がドライバ要求トルクより大きくないと判定した場合には、制御部8は、ステップS8の処理を実行する。
【0061】
ステップS7において、制御部8は、ドライバ要求トルクとクラッチトルクの差を目標モータトルクとして、モータ4にアシストトルクを出力させる。ステップS7の処理を実行した後、制御部8は、モータアシスト制御処理を終了する。
【0062】
ステップS8において、制御部8は、モータ出力可能トルクを目標モータトルクとして、モータ4にアシストトルクを出力させる。ステップS8の処理を実行した後、制御部8は、モータアシスト制御処理を終了する。
【0063】
ステップS9において、制御部8は、モータ出力可能トルクを目標モータトルクとして、モータ4にアシストトルクを出力させる。ステップS9の処理を実行した後、制御部8は、モータアシスト制御処理を終了する。
【0064】
このようなモータアシスト制御処理による動作について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3の例では、クラッチ31が完全に係合したとき、クラッチトルクがドライバ要求トルクになるように制御し、クラッチ接続過程では一定の速度でクラッチ31を接続する場合を示している。
【0065】
変速処理が開始され、クラッチ31の完全係合の解除が開始されると、クラッチトルクが低下し、駆動軸11に伝わるトルクも低下していく。このとき、クラッチトルクがモータ出力可能トルクより大きいため、モータ4によるアシストトルクの出力は行なわれない。
【0066】
時刻t1において、クラッチトルクがモータ出力可能トルクと等しくなると、モータ4によるアシストトルクの出力が開始され、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの差を目標モータトルクとして、モータ4によりアシストトルクが出力される。このとき、クラッチ31の開放速度は、モータアシストを行なっていない時刻t1以前よりも速くする。
【0067】
時刻t2において、クラッチ31が完全に開放されると、変速機3の変速機構の変速段の切替が開始され、その間は、モータ4によるモータ出力可能トルクでのモータアシストが行なわれる。
【0068】
時刻t3において、変速機3の変速機構の変速段の切替が完了すると、クラッチ31の係合が開始され、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの和がドライバ要求トルクよりも小さい間は、モータ4によるモータ出力可能トルクでのモータアシストが行なわれる。
【0069】
時刻t4において、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの和がドライバ要求トルクと等しくなると、モータ4によるアシストトルクは、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの和がドライバ要求トルクと等しくなるように減らされ、クラッチ31が完全に係合すると、モータアシストは終了する。
【0070】
図4の例は、クラッチ31が完全に係合したとき、クラッチトルクがドライバ要求トルクになるように制御し、クラッチ接続過程ではクラッチトルクとモータトルクの和がドライバ要求トルクと等しくなったとき、クラッチ31の接続速度を、それまでに比べ速くする場合を示している。
【0071】
変速処理が開始され、クラッチ31の完全係合の解除が開始されると、クラッチトルクが低下し、駆動軸11に伝わるトルクも低下していく。このとき、クラッチトルクがモータ出力可能トルクより大きいため、モータ4によるアシストトルクの出力は行なわれない。
【0072】
時刻t11において、クラッチトルクがモータ出力可能トルクと等しくなると、モータ4によるアシストトルクの出力が開始され、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの差を目標モータトルクとして、モータ4によりアシストトルクが出力される。このとき、クラッチ31の開放速度は、モータアシストを行なっていない時刻t11以前よりも速くする。
【0073】
時刻t12において、クラッチ31が完全に開放されると、変速機3の変速機構の変速段の切替が開始され、その間は、モータ4によるモータ出力可能トルクでのモータアシストが行なわれる。
【0074】
時刻t13において、変速機3の変速機構の変速段の切替が完了すると、クラッチ31の係合が開始され、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの和がドライバ要求トルクよりも小さい間は、モータ4によるモータ出力可能トルクでのモータアシストが行なわれる。
【0075】
時刻t14において、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの和がドライバ要求トルクと等しくなると、クラッチ31の接続速度が速められ、モータ4によるアシストトルクは、モータ出力可能トルクとクラッチトルクの和がドライバ要求トルクと等しくなるように減らされ、クラッチ31が完全に係合すると、モータアシストは終了する。
【0076】
このように、本実施例では、制御部8は、変速機3の変速中のクラッチ開放過程において出力されたモータ4の最大トルクを、クラッチ接続過程においても維持する。
【0077】
これにより、クラッチ接続過程において、クラッチ開放過程において出力されたモータ4の最大トルクが出力される。このため、徐々にエンジントルクが増加するクラッチ接続過程において、駆動軸11に伝わるトルクを素早く上昇させることができ、トルク抜け期間を短くすることができる。
【0078】
また、制御部8は、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、ドライバ要求トルクより小さい間、クラッチ開放過程において出力されたモータ4の最大トルクを維持する。
【0079】
これにより、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、ドライバ要求トルクより小さい間、クラッチ開放過程において出力されたモータ4の最大トルクが出力される。このため、クラッチ接続過程において、駆動軸11に伝わるトルクを素早くドライバ要求トルクに上昇させることができ、トルク抜け期間を短くすることができる。
【0080】
また、制御部8は、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、ドライバ要求トルク以上となった場合には、ドライバ要求トルクとクラッチトルクの差をモータ4のアシストトルクとする。
【0081】
これにより、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、ドライバ要求トルク以上となった場合には、ドライバ要求トルクとクラッチトルクの差がモータ4のアシストトルクとされる。このため、クラッチ接続過程において、ドライバ要求トルクに上昇した駆動軸11に伝わるトルクを維持しつつ、クラッチ31を完全に係合させることができる。
【0082】
また、制御部8は、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、変速開始前の駆動トルクより小さい間、クラッチ開放過程において出力されたモータ4の最大トルクを維持するようにしてもよい。
【0083】
これにより、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、変速開始前の駆動トルクより小さい間、クラッチ開放過程において出力されたモータ4の最大トルクが出力される。このため、クラッチ接続過程において、駆動軸11に伝わるトルクを素早く変速開始前の駆動トルクに上昇させることができ、トルク抜け期間を短くすることができる。
【0084】
また、制御部8は、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、変速開始前の駆動トルク以上となった場合には、変速開始前の駆動トルクとクラッチトルクの差をモータ4のアシストトルクとしてもよい。
【0085】
これにより、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、変速開始前の駆動トルク以上となった場合には、変速開始前の駆動トルクとクラッチトルクの差がモータ4のアシストトルクとされる。このため、クラッチ接続過程において、変速開始前の駆動トルクに上昇した駆動軸11に伝わるトルクを維持しつつ、クラッチ31を完全に係合させることができる。
【0086】
また、制御部8は、クラッチ接続過程において、一定のクラッチ接続速度でクラッチ31を接続させる。
【0087】
これにより、クラッチ接続過程において、一定のクラッチ接続速度でクラッチ31が接続される。このため、クラッチ接続過程でクラッチ31を素早く接続させることができ、モータアシスト時間を短くして、変速時に使用される電力を抑えることができる。
【0088】
また、制御部8は、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、第1のトルクと等しくなったとき、クラッチ31の接続速度を、クラッチ31の接続開始からクラッチトルクとモータトルクの和が、第1のトルクと等しくなるまでの速度に比べ速くする。
【0089】
これにより、クラッチ接続過程において、クラッチトルクとモータトルクの和が、第1のトルクと等しくなったとき、クラッチ接続速度が速められる。このため、一定の速度でクラッチ31を接続する場合に比べ、モータトルクを減らすとともにクラッチトルクを増やしてモータトルクとクラッチトルクを入れ替える期間を短くすることができ、変速完了までにかかる時間を短くすることができる。また、クラッチ31の接続速度を上昇させるタイミングは駆動軸11に出力されるトルクが第1のトルクに復帰した後であるため、変速の過程で、駆動軸11に出力されるトルクが変動することなく、変速に基づく車両への振動を抑えることができる。
【0090】
また、制御部8は、クラッチ開放過程において、クラッチトルクが所定量まで減少すると、クラッチ開放速度を速めて、モータ4からアシストトルクを出力させる。
【0091】
これにより、クラッチ開放過程において、クラッチトルクが所定量まで減少すると、クラッチ開放速度が速められ、モータ4からアシストトルクが出力される。このため、モータアシスト時間を短くして、変速時に使用される電力を抑えることができる。
【0092】
また、制御部8は、クラッチ開放過程でのクラッチトルクが所定量まで減少してからのクラッチ31の開放速度と、クラッチ接続過程でのクラッチ31の接続速度とを同一とする。
【0093】
これにより、クラッチ開放過程でのクラッチトルクが所定量まで減少してからのクラッチ31の開放速度と、クラッチ接続過程でのクラッチ31の接続速度とが同一とされる。このため、モータアシスト時間を短くして、変速時に使用される電力を抑えることができる。
【0094】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0095】
1 ハイブリッド車両
2 エンジン
3 変速機(自動変速機)
4 モータ
6 高電圧バッテリ(バッテリ)
8 制御部
11 駆動軸
31 クラッチ
41 温度センサ
61 バッテリ状態センサ
81 アクセル開度センサ
82 クラッチストロークセンサ
図1
図2
図3
図4