(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-16
(45)【発行日】2025-12-24
(54)【発明の名称】高分子固体電解質の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20251217BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20251217BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20251217BHJP
【FI】
H01B13/00 Z
H01M10/052
H01M10/0565
(21)【出願番号】P 2024540985
(86)(22)【出願日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2023007476
(87)【国際公開番号】W WO2023234715
(87)【国際公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】10-2022-0066932
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0070122
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スンヒョン・ナム
(72)【発明者】
【氏名】ヒャウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・キュ・キム
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/133388(WO,A1)
【文献】特開2019-029330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01M 10/052
H01M 10/0565
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)架橋結合性官能基を含む高分子溶液
にリチウム塩を
添加して高分子固体電解質形成用溶液を製造する段階
であって、
前記架橋結合性官能基を含む高分子溶液は、架橋結合性官能基を含む高分子と、溶媒とを含む、段階、
(2)アンワインダーを用いて基材フィルムを巻き出し、搬送経路に供給する段階、
(3)前記基材フィルム上に前記高分子固体電解質形成用溶液を塗布して塗布膜を形成する段階、
(4)前記塗布膜が形成された基材フィルムを冷凍区間へ搬送し、塗布膜を冷凍する段階、
(5)前記冷凍された塗布膜が形成された基材フィルムを解凍区間へ移送し、冷凍された塗布膜を解凍して高分子固体電解質層を製造する段階、および
(6)リワインダーを用いて前記高分子固体電解質層を含む基材フィルムを巻き取り回収する段階を含む、高分子固体電解質の製造方法
であって、
前記架橋結合性官能基を含む高分子の重量平均分子量(Mw)は、80,000g/molないし130,000g/molであり、
前記架橋結合性官能基を含む高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)を含み、
前記高分子の架橋結合性官能基([G])に対する前記リチウム塩のリチウム([Li])のモル比([Li]/[G])は、0.1超、0.5未満である、高分子固体電解質の製造方法。
【請求項2】
前記架橋結合性官能基は、ヒドロキシル基(hydroxyl group)、カルボキシル基(carboxyl group)及びアミド基(amide group)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項3】
前記架橋結合性官能基を含む高分子の重量平均分子量(Mw)は、8
3,000g/molないし1
10,000g/molである、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項4】
前記リチウム塩は、LiNO
3、LiOH、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、LiSCN、LiC(CF
3SO
2)
3、(CF
3SO
2)
2NLi、及び(FSO
2)
2NLiからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項5】
前記架橋結合性官能基を含む高分子溶液の総重量に対し、前記架橋結合性官能基を含む高分子は、5重量%ないし20重量%含まれる、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項6】
前記架橋結合性官能基を含む高分子溶液の
前記溶媒は水である、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項7】
前記高分子の架橋結合性官能基([G])に対する前記リチウム塩のリチウム([Li])のモル比([Li]/[G])は、0.
2以上、0.
4以下である、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項8】
前記冷凍は、-30℃ないし-10℃で行われる、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項9】
前記解凍は15℃ないし35℃で行われる、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項10】
前記(4)段階の冷凍及び(5)段階の解凍を繰り返す、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項11】
前記高分子固体電解質は、架橋結合構造、前記架橋結合性官能基を含むアモルファス高分子鎖(amorphous polymer chain)を含み、
前記架橋結合構造は、(a)架橋結合性官能基間の架橋結合、(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合、および(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合を含み、
前記(a)架橋結合性官能基間の架橋結合は、水素結合を含み、
前記(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合は、水素結合を含み、
前記(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合は、ルイス酸-塩基相互作用(Lewis acid-base interaction)による結合を含む、 請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項12】
前記溶媒は、水を含む、請求項1
1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項13】
前記架橋結合構造、および前記架橋結合性官能基を含むアモルファス高分子鎖は、前記(4)段階で形成される、請求項1
1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項14】
前記(5)段階の後、前記(6)段階の前に、前記高分子固体電解質層を液体電解質に浸漬した後乾燥させる段階をさらに含む、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項15】
前記高分子固体電解質のイオン伝導度は、10
-4S/cm以上である、請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年5月31日付韓国特許出願第10-2022-0066932号及び2023年5月31日付韓国特許出願第10-2023-0070122号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、高分子固体電解質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液体電解質を使用するリチウムイオン電池は、分離膜によって負極と正極が区画される構造であるため、変形や外部衝撃により分離膜が破損すると短絡が発生する可能性があり、これにより過熱や爆発などの危険につながる可能性がある。したがって、リチウムイオン二次電池分野において安全性を確保できる固体電解質の開発は非常に重要な課題といえる。
【0004】
固体電解質を用いたリチウム二次電池は、電池の安全性が増大し、電解液の漏れを防ぐことができるため、電池の信頼性が向上し、薄型の電池製作が容易という利点がある。また、負極にリチウム金属を使用できるため、エネルギー密度を向上させることができ、これにより小型二次電池とともに電気自動車用の大容量二次電池などへの応用が期待され、次世代電池として注目されている。
【0005】
固体電解質の中でも高分子固体電解質は、イオン伝導性材質の高分子材料が使用されるか、イオン伝導特性を有する酸化物や硫化物の無機材料が使用されることがあるが、高分子材料と無機材料が混合されたハイブリッド形態の材料も提案されている。
【0006】
このような従来の高分子固体電解質は、ソリューションキャスティング(solution casting)及び高温乾燥工程を通じて製造された。しかし、従来の高分子固体電解質製造技術は、結晶性高分子(crystalline polymer)または半結晶性高分子(semi-crystalline polymer)が持つ高い結晶性のため、イオン伝導度が向上した高分子固体電解質を製造することが難しいという限界があった。つまり、高分子の高い結晶化度は、高分子鎖の移動度(chain mobility)を阻害するため、高分子固体電解質の内部でリチウムイオンが移動するのにも制約があり、高分子固体電解質のイオン伝導度を向上させることが難しかった。
【0007】
例えば、従来の高分子固体電解質は、高分子として架橋結合性官能基であるヒドロキシル基を含むポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)を使用して、塗布膜を形成した後、高温乾燥工程を経て製造することができる。具体的には、前記PVAを水に溶解させてPVA水溶液を製造した後、前記PVA水溶液を基材上にソリューションキャスティングで塗布して塗布膜を形成し、常温または高温で乾燥させて、PVAフィルム状の高分子固体電解質を製造することができる。このとき、高温とは、PVAのガラス転移温度(Tg)である80℃以上を意味する。前記乾燥工程で、水分が蒸発した後、PVAに含まれる架橋結合性官能基間の水素結合が形成され、前記水素結合により高分子鎖フォールディング(chain folding)が発生し、高分子フィルムの結晶化度が高くなる現象が現れる。結晶化度が高くなるほど脆性(brittleness)を持つ高分子フィルムが形成される。結晶化度が高く脆性を持つ高分子フィルムでは、高分子鎖の移動度(chain mobility)が減少し、高分子フィルム内部に解離したイオンが存在する場合、イオン移動性も著しく減少する現象が発生する。このため、前述のように塗布膜を形成した後、高温乾燥する工程によって製造された一般的なPVAフィルムは、リチウム二次電池用の高分子固体電解質としては適さない物性を示すことになる。
【0008】
従来、高分子固体電解質のこのような限界を克服するために、結晶性高分子または半結晶性高分子に可塑剤(plasticizer)を添加して高分子鎖の移動度を改善させ、高分子固体電解質のイオン伝導度を向上させようとする技術が開発された。しかし、可塑剤を利用する場合、高分子と可塑剤間の適切な分散度及び混和性(miscibility)を確保しなければならないため、工程条件を設定することが難しい場合がある。また、液状の可塑剤を適用する場合、高分子との親和性(compatibility)が減少し、高分子固体電解質で製造工程を行うのに困難がある。
【0009】
そこで、可塑剤のような別の添加剤を使用せず、連続工程が可能なフリースタンディングフィルム(free-standing film)形態の高分子固体電解質の製造方法に対する技術開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】中国特許出願公開第112259788号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、イオン伝導度改善及び連続工程が可能な高分子固体電解質の製造方法を提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、前記製造方法で製造された高分子固体電解質を含む全固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
技術的な解決方法
前記目的を達成するため、
本発明は、
(1)架橋結合性官能基を含む高分子溶液及びリチウム塩を含む高分子固体電解質形成用溶液を製造する段階、
(2)アンワインダーを用いて基材フィルムを巻き出し、搬送経路に供給する段階、
(3)前記基材フィルム上に前記高分子固体電解質形成用溶液を塗布して塗布膜を形成する段階、
(4)前記塗布膜が形成された基材フィルムを冷凍区間へ搬送し、塗布膜を冷凍する段階、
(5)前記冷凍された塗布膜が形成された基材フィルムを解凍区間へ移送し、冷凍された塗布膜を解凍し、高分子固体電解質層を製造する段階、及び
(6)リワインダーを用いて前記高分子固体電解質層を含む基材フィルムを巻き取って回収する段階を含む、高分子固体電解質の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記本発明の製造方法で製造された高分子固体電解質を含む全固体電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による高分子固体電解質の製造方法は、高分子に含まれる架橋結合性官能基によって形成された架橋結合構造及びアモルファス高分子鎖を含む構造により、高分子の結晶性を減少させ、それによってイオン伝導度を向上させることができる。また、前記構造的な特徴により脆性、延性及び粘性を減少させることができる。
【0016】
また、本発明による高分子固体電解質の製造方法は、連続工程で高分子固体電解質を製造することができ、大量生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の高分子固体電解質の製造方法のフローチャートである。
【
図2】架橋結合性官能基とリチウム塩のモル比([Li]/[OH])による電解質のイオン伝導度の傾向を示したグラフである。
【
図3】架橋結合性官能基とリチウムのモル比([Li]/[OH]による電解質の形態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の理解を助けるために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
本明細書及び請求の範囲に使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。
【0020】
本明細書で使用された用語「架橋結合構造」とは、高分子鎖によって形成された立体形状のフレーム(frame)と前記フレームの内部空間を含む構造を意味する。前記高分子鎖は、高分子に含まれる架橋結合性官能基を含む架橋結合によって形成されたものである。前記架橋結合構造は、3次元の立体形状を持ち、高分子鎖が互いに絡み合っている形態を持つので、3次元ネットワーク構造とも言える。
【0021】
高分子固体電解質の製造方法
本発明は、高分子固体電解質の製造方法に関し、本発明の高分子固体電解質の製造方法は、
(1)架橋結合性官能基を含む高分子溶液及びリチウム塩を含む高分子固体電解質形成用溶液を製造する段階、
(2)アンワインダーを用いて基材フィルムを巻き出し、搬送経路に供給する段階、
(3)前記基材フィルム上に前記高分子固体電解質形成用溶液を塗布して塗布膜を形成する段階、
(4)前記塗布膜が形成された基材フィルムを冷凍区間へ搬送し、塗布膜を冷凍する段階、
(5)前記冷凍された塗布膜が形成された基材フィルムを解凍区間へ移送し、冷凍された塗布膜を解凍して高分子固体電解質層を製造する段階、および
(6)リワインダーを用いて、前記高分子固体電解質層を含む基材フィルムを巻き取り回収する段階を含む。
【0022】
前記(1)段階は、架橋結合性官能基を含む高分子水溶液及びリチウム塩を含む高分子固体電解質形成用溶液を製造する段階である。
【0023】
本発明において、前記架橋結合性官能基を含む高分子は、(a)架橋結合性官能基間の架橋結合、(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合、及び(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合を行い、架橋結合構造を形成できる架橋結合性官能基を含む高分子である。前記(a)、(b)及び(c)の結合は、より詳細に後述する。
【0024】
例えば、前記架橋結合性官能基は、ヒドロキシル基(hydroxyl group)、カルボキシル基(carboxyl group)及びアミド基(amide group)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0025】
また、前記架橋結合性官能基を含む高分子の重量平均分子量(Mw)は、80,000g/molないし130,000g/molであり、具体的には、80,000g/mol以上、83,000g/mol以上、または85,000g/mol以上であり、90,000g/mol以下、110,000g/mol以下、または130,000g/mol以下である。前記架橋結合性官能基を含む高分子の重量平均分子量(Mw)が80,000g/mol未満であれば、架橋結合性官能基による結合が架橋結合構造を得ることができるほど十分に形成されない場合がある。前記架橋結合性官能基を含む高分子の重量平均分子量(Mw)が130,000g/molを超えると、高分子水溶液中で高分子鎖の絡み合い(entanglement)が増加し、高分子鎖内部への溶媒浸透率が低下する。これにより、高分子のゲル化(gelation)が加速され、前記高分子の溶解度が低下し、架橋結合性官能基による結合が円滑に行われず、架橋結合構造形成が容易でない場合がある。
【0026】
また、前記架橋結合性官能基を含む高分子は、前記高分子溶液内で高分子と溶媒との相分離が円滑に行われ、前記(4)段階の塗布膜を凍結させる段階で前記相分離された高分子に含まれる架橋結合性官能基により、前記(a)、(b)及び(c)の結合がよく形成される特徴を有するものである。
【0027】
例えば、前記架橋結合性官能基を含む高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ゼラチン(gelatin)、メチルセルロース(methylcellulose)、寒天(agar)、デキストラン(dextran)、ポリビニルピロリドン(poly(vinyl pyrrolidone))、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide))、ポリアクリルアミド(poly(acrylic amide))、ポリアクリル酸(poly(acrylic acid))、PAA)、デンプン-カルボキシメチルセルロース(starch-carboxymethyl cellulose)、ヒアルロン酸-メチルセルロース(hyaluronic acid-methylcellulose)、キトサン(chitosan)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(poly(N-isopropylacrylamide)及びアミノ基末端ポリエチレングリコール(amino-terminated PEG)からなる群から選択される1種以上を含む。好ましくは、前記架橋結合性官能基を含む高分子は、ポリビニルアルコールであり、前記ポリビニルアルコールは、前記(4)段階の塗布膜を凍結させる段階で、ポリビニルアルコールと溶媒との相分離が効率的に行われ、前記溶媒と相分離されたポリビニルアルコールの架橋結合性官能基から誘導される前記(a)、(b)及び(c)結合によって架橋結合構造を形成するのに有利である。
【0028】
本発明において、前記リチウム塩は、前記架橋結合構造の内部空間に解離した状態で含まれており、高分子固体電解質のイオン伝導度を向上させることができる。
【0029】
また、前記リチウム塩は、後述する(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合を形成し、高分子固体電解質の結晶性の発生を防止し、同時にアモルファス高分子鎖の形成を促進させることができる。
【0030】
前記リチウム塩は、LiNO3、LiOH、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiSCN、LiC(CF3SO2)3、(CF3SO2)2NLi及び(FSO2)2NLiからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0031】
本発明において、前記高分子固体電解質に含まれる前記架橋結合性官能基を含む高分子の架橋結合性官能基([G])とリチウム塩のリチウム([Li])のモル比([Li]/[G])は、0.1以上、0.5未満であり、具体的には、0.1超、0.2以上または0.3以上であり、0.4以下または0.5未満である。前記モル比([Li]/[G])が0.1以下であれば、リチウム塩の含有量が減少し、高分子固体電解質のイオン伝導度が低下することがあり、0.5以上であれば、架橋結合性官能基を含む高分子の含有量が減少し、前記(a)、(b)及び(c)結合が十分に形成されず、これにより結晶性が高くなり、イオン伝導度が低下することがある。前記架橋結合性官能基がヒドロキシル基(OH-)であれば、前記[G]は、[OH]または[O]と表記することができる。
【0032】
前記高分子溶液の製造時に使用される溶媒は、極性溶媒であり、例えば水であってもよい。つまり、前記高分子溶液は、高分子水溶液であってもよい。
【0033】
前記架橋結合性官能基を含む高分子溶液の濃度は、前記高分子固体電解質形成用溶液を基材フィルムに塗布する際に、塗布工程が円滑に進行できる程度を考慮して適切に調整することができる。例えば、前記架橋結合性官能基を含む高分子溶液の総重量に対して、架橋結合性官能基を含む高分子は、5重量%ないし20重量%含まれることがあり、具体的には、5重量%以上、7重量%以上または9重量%以上であり、13重量%以下、17重量%以下または20重量%以下である。前記架橋結合性官能基を含む高分子が5重量%未満で含まれると、濃度が過度に希薄になり、基材フィルム上に塗布する際に流れ落ちることがあり、20重量%を超えて含まれると、高分子溶液内に所望の濃度のリチウム塩を溶解させることが難しく、均一な薄膜状に塗布することが困難になることがある。
【0034】
前記(2)段階は、アンワインダー(unwinder)を用いて基材フィルムを巻き出し、搬送経路に供給する段階である。
【0035】
前記アンワインダーは、ロール(roll)状に巻かれた基材フィルムを所定の搬送経路に巻き出して供給するもので、それ自体の駆動によって基材フィルムを巻き出して供給することができ、最終的に高分子固体電解質層を含む基材フィルムを巻き取るリワインダー(rewinder)の駆動力によって基材フィルムを巻き出して供給することができる。
【0036】
したがって、本発明の高分子固体電解質の製造方法は、ロールツーロール(roll-to-roll)工程である。
【0037】
前記基材フィルムは、前記高分子固体電解質形成用溶液が塗布される支持体として機能できるものであれば特に限定されない。例えば、前記基材フィルムは、ステンレス鋼(SS、Stainless Steel)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルムである。
【0038】
前記(3)段階は、前記基材フィルム上に前記高分子固体電解質形成用溶液を塗布して塗布膜を形成する段階である。
【0039】
本発明における塗布方法は、前記高分子固体電解質形成用溶液を前記基材フィルム上に膜状に塗布できる方法であれば特に限定されない。例えば、前記塗布方法は、バーコーティング(bar coating)、ロールコーティング(roll coating)、スピンコーティング(spin coating)、スリットコーティング(slit coating)、ダイコーティング(die coating)、ブレードコーティング(blade coating)、コンマコーティング(comma coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップコーティング(lip coating)、スプレーコーティング(spray coating)またはソリューションキャスティング(solution casting)である。
【0040】
本発明の一実施形態として、ソリューションキャスティング法を用いることができる。より具体的には、前記(1)段階で製造した高分子固体電解質形成用溶液をミキサー(mixer)に入れた後、前記ミキサーを基材フィルム上に位置させて、搬送経路で供給される基材フィルム上に高分子固体電解質形成用溶液を連続的にキャストして塗布膜を形成することができる。
【0041】
前記(4)段階は、前記塗布膜が形成された基材フィルムを冷凍区間へ搬送して塗布膜を冷凍する段階であり、前記(4)段階で高分子固体電解質を製造することができる。本発明の高分子固体電解質は、架橋結合構造および前記架橋結合性官能基を含むアモルファス高分子鎖(amorphous polymer chain)を含み、前記架橋結合構造および前記架橋結合性官能基を含むアモルファス高分子鎖は、前記塗布膜を凍結させることにより形成されるものである。本発明の高分子固体電解質は、前記架橋結合構造内に形成された内部空間に前記アモルファス高分子鎖とリチウム塩を含み、前記リチウム塩は解離した状態で含まれる。
【0042】
前記架橋結合構造は、前記高分子に含まれる架橋結合性官能基の一部が局所的な微細結晶(localized crystallites)を形成し、前記局所的な微細結晶が架橋可能な接点(cross-linkable junction point)として作用して架橋結合することによって形成されるものである。このとき、前記微細結晶とは、高分子鎖のフォールディング(folding)による結晶構造とは異なり、糸が絡まって結び目が作られたような形状を意味する。
【0043】
また、前記架橋結合構造は、(a)架橋結合性官能基間の架橋結合、(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合、及び(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合を含み、前記架橋結合性官能基によって前記(a)、(b)及び(c)の結合が誘導されて架橋結合構造が形成されたものである。
【0044】
本発明において、前記(a)架橋結合性官能基間の架橋結合は、架橋結合性官能基の水素結合を含み、例えば、前記水素結合は、OH-間の水素結合である。
【0045】
もし、前記架橋結合構造が前記(a)架橋結合性官能基間の架橋結合のみで構成されている場合、前記高分子固体電解質の結晶性が発生し、イオン伝導度が低下する可能性がある。
【0046】
しかしながら、前記架橋結合構造は、前記(a)架橋結合性官能基間の架橋結合だけでなく、前記(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合及び(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合を共に含むので、前記高分子固体電解質の結晶性の発生を防止することができる。
【0047】
本発明において、前記(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合は、水素結合を含むことができ、例えば、前記水素結合は、OH-とH+の間の水素結合である。このとき、H+は水溶媒に由来するものであってもよい。
【0048】
前記(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合とは、冷凍及び後述する(5)段階の解凍工程で残留した一部の溶媒と架橋結合性官能基との間の水素結合を意味するものである。
【0049】
また、前記(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合は、前記(a)架橋結合性官能基間の架橋結合を妨害し、前記架橋結合構造が前記(a)架橋結合性官能基間の架橋結合のみで構成されないようにするため、高分子固体電解質の結晶性が増加するのを防ぐことができる。前記溶媒は、水を含むものであってもよい。
【0050】
本発明において、前記(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合は、ルイス酸-塩基相互作用(Lewis acid-base interaction)による結合を含むことができ、例えば、前記結合は、OH-とLi+の結合である。
【0051】
前記(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合は、前記(a)架橋結合性官能基間の架橋結合及び(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合を妨害し、前記架橋結合構造が前記(a)架橋結合性官能基間の架橋結合のみで構成されないようにするため、高分子固体電解質の結晶性の発生を防止し、同時にアモルファス高分子鎖の形成を促進させることができる。前記アモルファス高分子鎖が形成されるほど、前記高分子鎖の移動度が向上するため、前記リチウムイオンのホッピング(hopping)効果が増大し、高分子固体電解質のイオン伝導度が改善されることがある。
【0052】
本発明において、前記アモルファス高分子は、架橋結合性官能基によって形成されたものであり、高分子鎖の規則的なフォールディング(folding)による結晶を形成せず、挙動が自由な状態で存在する高分子鎖を意味するものとする。すなわち、前記アモルファス高分子鎖は、前記(a)、(b)及び(c)のような結合を形成しない架橋結合性官能基を含む高分子を含むものである。
【0053】
前記架橋結合構造により、前記高分子固体電解質が容易に切れたり破壊されたりすることがなく、リチウムイオンを安定的に含有する電解質支持体の役割を果たすことができる。
【0054】
また、前記アモルファス高分子鎖により、前記高分子固体電解質が弾性を示し、容易に壊れる性質である脆性(brittleness)を最小化することができ、高分子鎖は、移動度(polymer chain mobility)が優れており、電解質内部でリチウムイオンの移動度が向上するため、イオン伝導度が改善された高分子固体電解質を提供することができる。
【0055】
また、前記(4)段階で、前記塗布膜を形成するために使用された架橋結合性官能基を含む高分子水溶液に含まれる高分子と水が相分離(phase separation)することがある。前記相分離は、前記架橋結合性官能基と水分子間の水素結合に比べて、前記水分子間の水素結合の強度がより強いために誘導される。前記水分子間の水素結合によって凝集された水分子は、前記(4)段階の凍結によって氷相(ice phase)として存在する。その結果、前記水分子との相互作用を通じて水素結合を形成する架橋結合性官能基の数は著しく減少する。
【0056】
つまり、前記塗布膜を凍結させる段階では、高分子水溶液に含まれる高分子と水が最初に相分離されなければならず、前記相分離は水分子間の水素結合によって誘導される。結局、前記凍結させる段階の主なターゲットは、相分離を誘導する水分子である。または、相分離がある程度誘導された後に凍結させる段階のターゲットは、水分子と高分子である。
【0057】
前記相分離により、前記塗布膜の内部は、(i)高分子が少ない相(Polymer-poor phase)と(ii)高分子が豊富な相(Polymer-rich phase)に分けられる。
【0058】
前記(i)高分子が少ない相(polymer-poor phase)は、水分子間の水素結合によって凝集した水分子を含む部分で、氷相(ice phase)で存在し、これを自由水(free water)の状態とも言える。
【0059】
前記(ii)高分子が豊富な相(Polymer-rich phase)は、水と相分離された高分子を含む部分である。前記相分離された高分子は、水分子との相互作用から自由になった架橋結合性官能基を含む高分子であり、相分離後、自由な状態になり、規則的なフォールディング(folding)による結晶を形成せず、比較的挙動が自由なアモルファス状態で存在することになり、これをアモルファス高分子鎖という。
【0060】
また、前記相分離された高分子に含まれる架橋結合性官能基の一部は、局所的な微細結晶が架橋可能な接点(cross-linkable junction point)として作用し、前記(a)、(b)及び(c)結合を含む架橋結合構造を形成する。
【0061】
前記(4)段階の塗布膜の凍結は、前記塗布膜を凍結させることができる程度の条件を適切に選択して行うことができる。例えば、前記冷凍温度は、-30℃ないし-10℃の温度で行うことができ、具体的には、前記冷凍温度は、-30℃以上、-25℃以上または-23℃以上であり、-18℃以下、-15℃以下または-10℃以下である。前記冷凍温度が-30℃未満であれば、塗布膜にクラック(crack)が発生する可能性があり、-10℃超であれば、高分子と水の間の相分離が十分に行われず、アモルファス高分子鎖(amorphous polymer chain)領域の形成が難しい場合がある。また、前記冷凍は、20時間ないし30時間の範囲内で十分に冷凍される時間を考慮して実施することができる。
【0062】
前記冷凍区間は、基材フィルム上に塗布膜が形成され、前記塗布膜が形成された基材フィルムがリワインダーに搬送される区間に位置し、複数の単数で構成される。
【0063】
従来は、高温乾燥工程を通じて高分子固体電解質を製造していた。しかし、高温乾燥工程の場合、結晶性高分子または半結晶性高分子の高い結晶性により高分子鎖の移動度が阻害され、高分子固体電解質内部でリチウムイオンが移動するのに制約があり、低いイオン伝導度を示した。
【0064】
したがって、本発明では、高温乾燥工程の代わりに可塑剤(plasticizer)を使用しないだけでなく、冷凍工程を実施することにより、高分子に含まれる架橋結合性官能基による(a)架橋結合性官能基間の架橋結合、(b)架橋結合性官能基と溶媒の架橋結合、および(c)架橋結合性官能基とリチウム塩の結合を誘導することにより、高分子の結晶化を防止することができ、その結果、イオン伝導度が向上した高分子固体電解質を製造することができる。
【0065】
前記(5)段階は、前記冷凍された塗布膜が形成された基材フィルムを解凍区間へ搬送して冷凍された塗布膜を解凍し、高分子固体電解質層を製造する段階である。
【0066】
前記(5)段階で前記(i)高分子が少ない相(Polymer-poor phase)に含まれる氷は、溶けて蒸発し、これにより自由体積(free volume)が増加した高分子固体電解質を製造することができる。
【0067】
前記解凍は、凍結された塗布膜を高分子固体電解質に適用できる程度に解凍できる条件を適切に選択して行うことができる。例えば、前記解凍温度は、15℃ないし35℃であり、または常温(25℃)である。前記解凍温度が15℃未満であれば、解凍(氷の融解、ice melting)後の水分乾燥効率が低下することがあり、35℃を超えると塗布膜が収縮してシワや反りが発生することがある。
【0068】
前述したように、前記塗布膜を凍結させる(4)段階及び凍結された塗布膜を解凍する(5)段階により、前記(a)、(b)及び(c)の結合が誘導され、架橋結合構造が形成され、アモルファス高分子鎖が形成される。
【0069】
したがって、前記(4)段階及び(5)段階を繰り返し行うことができ、繰り返し行う回数によって架橋結合構造の形成度を調節することができる。前記(4)段階および(5)段階を1サイクル(cycle)とするとき、前記塗布膜を凍結させる(4)段階および凍結された塗布膜を解凍させる(5)段階は、1サイクル以上、2サイクル以上、3サイクル以上または5サイクル以上行うことができる。前記サイクルの上限値は、特に限定されないが、10サイクル以下、13サイクル以下または15サイクル以下であってもよい。前記範囲内で前記サイクルが増加するほど架橋結合構造が多く形成され、これにより高分子固体電解質のモジュラス(modulus)と強度が増加する。
【0070】
前記(5)段階で解凍が完了すると、塗布膜を高分子固体電解質として適用することができる。
【0071】
前記解凍区間は、冷凍された塗布膜が形成された基材フィルムがリワインダーに搬送される区間内に位置し、複数のステージで構成される。
【0072】
前記(5)段階の後、(6)段階の前に、高分子固体電解質層を液体電解質に浸漬した後、乾燥させる段階をさらに含むことができる。
【0073】
前記段階をさらに含むことで、液体電解質により高分子固体電解質のイオン伝導度をさらに向上させることができる。前記液体電解質もまた、架橋結合構造の内部空間に含まれる。
【0074】
前記液体電解質は、当業界で通常使用される液体電解質であればよく、前記液体電解質の組成は、リチウム二次電池に使用できるものであれば特に限定されない。例えば、前記液体電解質は、リチウム塩及び非水溶媒を含むことができる。前記リチウム塩は、前述したようなリチウム塩のいずれか1つである。また、前記非水溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)、ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホランからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0075】
また、前記液体電解質は、前記高分子固体電解質全体の重量を基準として1重量%ないし5重量%含有される。前記液体電解質の含有量が1重量%以下であれば、イオン伝導度の向上効果が微々たる場合があり、5重量%を超えると安定性が低下する場合がある。
【0076】
前記(6)段階は、リワインダー(rewinder)を用いて、前記高分子固体電解質層を含む基材フィルムを巻き取り回収する段階である。
【0077】
前記リワインダーは、前記高分子固体電解質を含む基材フィルムをロール状に巻いて回収することができ、それ自身の駆動により高分子固体電解質層を含む基材フィルムを巻き取ることができる。
【0078】
前記回収された高分子固体電解質層を含む基材フィルムは、それ自体で使用可能であるか、基材フィルムから高分子固体電解質層を分離する段階を追加的に実施して高分子固体電解質層をフリースタンディングフィルム(free-standing film)の形で使用することができる。
【0079】
前記フリースタンディングフィルムとは、常温及び常圧で別途の支持体なしで、すなわち基材フィルムなしで、それ自体でフィルム形態を維持できるフィルムを意味する。
【0080】
本発明の高分子固体電解質は、弾性を示し脆性を最小限に抑えることができ、リチウムイオンを安定的に含有する支持体としての特性を有するため、高分子固体電解質として適切な形態である。
【0081】
本発明の高分子固体電解質の製造方法は、ロールツーロール工程であり、連続的に製造することができ、大量生産が可能である。
【0082】
本発明において、前記高分子固体電解質のイオン伝導度は、10-4S/cm以上である。
【0083】
前記高分子固体電解質は、前記のような架橋結合構造を含む構造的特性により結晶性が低くなり、イオン伝導度が向上する。これにより、固体電解質であるにもかかわらず、従来の液体電解質に比べて同等水準以上のイオン伝導度を示し、全固体電池の性能を向上させることができる。
【0084】
全固体電池
また、本発明は、前記高分子固体電解質を含む全固体電池に関し、前記全固体電池は、負極、正極及び前記負極と正極との間に介在する高分子固体電解質を含み、前記固体電解質は、前記製造方法で製造されたものであり、前述の特徴を有するものである。
【0085】
具体的には、前記高分子固体電解質は、冷凍及び解凍工程を経ることで物理的架橋結合が形成され、結晶性が低下し、これによりイオン伝導度が向上するため、全固体電池の電解質として適している。
【0086】
本発明において、前記全固体電池に含まれる正極は、正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極集電体の一面に形成されることがある。
【0087】
前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー及び導電材料を含む。
【0088】
また、前記正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することが可能な物質であれば特に限定されず、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、Li[NixCoyMnzMv]O2(前記式において、MはAl、GaおよびInからなる群から選択されるいずれか1種またはこれら2種以上の元素であり、0.3≦x<1.0、0≦y、z≦0.5、0≦v≦0.1、x+y+z+v=1である)、Li(LiaMb-a-b’M’b’)O2-cAc(前記式において、0≦a≦0.2、0.6≦b≦1、0≦b’≦0.2、0≦c≦0.2であり、Mは、MnとNi、Co、Fe、Cr、V、Cu、ZnおよびTiからなる群から選択される1種以上を含み、M’は、Al、MgおよびBからなる群から選択される1種以上であり、Aは、P、F、SおよびNからなる群から選択される1種以上である)などの層状化合物、あるいは1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物、化学式Li1+yMn2-yO4(ここで、yは0-0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物、リチウム銅酸化物(Li2CuO2)、LiV3O8、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物、化学式LiNi1-yMyO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Fe、Mg、BまたはGaであり、yは0.01-0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物、化学式LiMn2-yMyO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、yは0.01-0.1である)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物、化学式のLiの一部がアルカリ金属イオンで置換されたLiMn2O4、ジスルフィド化合物、Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
また、前記正極活物質は、前記正極活物質層全体の重量を基準として40重量%ないし80重量%を含有される。具体的には、前記正極活物質の含有量は、40重量%以上または50重量%以上であり、70重量%以下または80重量%以下である。前記正極活物質の含有量が40重量%未満であれば、湿式正極活物質層と乾式正極活物質層の接続性が不足する可能性があり、80重量%を超えると物質伝達抵抗が大きくなる可能性がある。
【0090】
また、前記バインダーは、正極活物質と導電材料などの結合及び集電体への結合を補助する成分として、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル化スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリブタジエン、酸化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、リチウムポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン及びポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、前記バインダーは、スチレン-ブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸リチウムおよびポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0091】
また、前記バインダーは、前記正極活物質層全体の重量を基準として1重量%ないし30重量%含有され、具体的には、前記バインダーの含有量は、1重量%以上または3重量%以上、15重量%以下または30重量%以下である。前記バインダーの含有量が1重量%未満であれば、正極活物質と正極集電体との接着力が低下する可能性があり、30重量%を超えると接着力は向上するが、それだけ正極活物質の含有量が減少し、電池の容量が低下する可能性がある。
【0092】
また、前記導電材料は、全固体電池の内部環境での副反応を防止し、当該電池に化学的変化を引き起こさず、かつ優れた電気伝導性を有するものであれば特に限定されず、代表的には、グラファイトまたは導電性カーボンを用いることができ、例えば、天然黒鉛、人工黒鉛などの黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック、結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維、フッ化炭素、アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの金属粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性酸化物、およびポリフェニレン誘導体などの導電性高分子を単独で、または2種以上を混合して使用することができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0093】
前記導電材料は、通常、前記正極活物質層全体の重量を基準として0.5重量%ないし30重量%含まれ、具体的に前記導電材料の含有量は、0.5重量%以上または1重量%以上であり、20重量%以下または30重量%以下である。前記導電材料の含有量が0.5重量%未満で少なすぎると、電気伝導性の向上効果が期待しにくいか、電池の電気化学的特性が低下する可能性があり、30重量%を超えて多すぎると、相対的に正極活物質の量が少なくなり、容量及びエネルギー密度が低下する可能性がある。正極に導電材料を含有させる方法は大きく制限されず、正極活物質へのコーティングなど、当分野に公知の通常の方法を使用することができる。
【0094】
また、前記正極集電体は、前記正極活物質層を支持し、外部導線と正極活物質層の間で電子を伝達する役割を果たすものである。
【0095】
前記正極集電体は、全固体電池に化学的変化を引き起こさず、高い電子伝導性を有するものであれば特に限定されない。例えば、前記正極集電体として、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用できる。
【0096】
前記正極集電体は、正極活物質層との結合力を強化させるために、正極集電体の表面に微細な凹凸構造を有することができ、または3次元の多孔質構造を採用することができる。これにより、前記正極集電体は、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布など様々な形態を含むことがある。
【0097】
前記正極は、通常の方法に従って製造することができ、具体的には、正極活物質と導電材料及びバインダーを有機溶媒中で混合して製造した正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布及び乾燥し、選択的に電極密度の向上のために集電体に圧縮成形して製造することができる。この時、前記有機溶媒としては、正極活物質、バインダー及び導電材料を均一に分散させることができ、容易に蒸発するものを使用することが好ましい。具体的には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0098】
本発明において、前記全固体電池に含まれる前記負極は、負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極集電体の一面に形成されたものであってもよい。
【0099】
前記負極活物質は、リチウムイオン(Li+)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含む。
【0100】
前記リチウムイオン(Li+)を可逆的に挿入または脱挿入することができる物質は、例えば結晶性炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物である。前記リチウムイオン(Li+)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタン酸塩またはシリコンである。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金である。
【0101】
好ましくは、前記負極活物質は、リチウム金属であり、具体的には、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態である。
【0102】
前記負極活物質は、前記負極活物質層全体の重量を基準として40重量%ないし80重量%含有されることができる。具体的に、前記負極活物質の含有量は、40重量%以上または50重量%以上であり、70重量%以下または80重量%以下である。前記負極活物質の含有量が40重量%未満であれば、湿式負極活物質層と乾式負極活物質層の接続性が不足する可能性があり、80重量%を超えると物質伝達抵抗が大きくなる可能性がある。
【0103】
また、前記バインダーは、前記正極活物質層で前述した通りである。
【0104】
また、前記導電材料は、前記正極活物質層で前述した通りである。
【0105】
また、前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、前記負極集電体としては、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用できる。また、前記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布など様々な形態が使用できる。
【0106】
前記負極の製造方法は特に限定されず、負極集電体上に当業界で通常使用される層または膜の形成方法を利用して負極活物質層を形成して製造することができる。例えば、圧着、コーティング、蒸着などの方法を用いることができる。また、前記負極集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初期充電によって金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0107】
また、本発明は、前記全固体電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。
【0108】
このとき、前記デバイスの具体例としては、電動モーターにより動力を受けて動くパワーツール(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気自動車、電動自転車(E-bike)、電動スクーター(E-scooter)を含む電動二輪車、電動ゴルフカート(electric golf cart)、電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0109】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を示すが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明のカテゴリー及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0110】
下記の実施例及び比較例では、下記表1に記載したような架橋結合性官能基を含む高分子、前記架橋結合性官能基とリチウムイオンのモル比及び冷凍・解凍工程の適用の有無により、高分子固体電解質を製造した。
【0111】
【0112】
実施例1
PVA(Mw:89,000g/mol、加水分解度(degree of hydrolysis):>99%)を水に混合し、10wt%PVA水溶液を調製した。前記PVA水溶液にLiTFSIを添加した後、攪拌して、架橋結合性官能基を有する高分子であるPVAとリチウム塩であるLiTFSIを含む溶液を製造した。この時、前記PVAの架橋結合性官能基に含まれる「OH」とリチウム塩に含まれる「Li」のモル比([Li]/[OH])は、0.4となるようにした。
【0113】
前記溶液をミキサーに入れた後、アンワインダーによって搬送経路に供給される基材フィルムであるSS箔(SS foil)上にソリューションキャスティング法で塗布し、その後、これを冷凍区間へ搬送して-20℃で24時間冷凍し、これを解凍区間へ搬送して25℃で解凍して基材フィルム上に高分子固体電解質層を製造した。前記製造された高分子固体電解質層を含む基材フィルムをリワインダーを使用して巻き取り、回収した。その後、前記基材フィルムを剥離し、フリースタンディングフィルム状の高分子固体電解質を得た。
【0114】
実施例2
重量平均分子量(Mw)が85,000g/molのPVAを使用した以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0115】
実施例3
重量平均分子量(Mw)が100,000g/molのPVAを用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0116】
実施例4
PVAの架橋結合性官能基である「OH」とリチウム塩の「Li」のモル比([Li]/[OH])が0.1となるようにした以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0117】
実施例5
PVAの架橋結合性官能基である「OH」とリチウム塩の「Li」のモル比([Li]/[OH])が0.2となるようにした以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0118】
実施例6
PVAの架橋結合性官能基である「OH」とリチウム塩の「Li」のモル比([Li]/[OH]]が0.3となるようにした以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0119】
比較例1
架橋結合性官能基を有する高分子であるPVAとリチウム塩であるLiTFSIを含む溶液を基材であるSS箔(SS foil)上に塗布した後、80℃で乾燥させた以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0120】
比較例2
PVAの代わりに架橋結合性官能基を持たない高分子であるPEOを用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0121】
比較例3
架橋結合性官能基を有する高分子であるPVAとリチウム塩であるLiTFSIを含む溶液を基材であるSS箔上に塗布した後、常温(25℃)で乾燥させた以外は、比較例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0122】
比較例4
PVAの代わりにポリアクリル酸(Poly(acrylic acid)、PAA)35%水溶液(Mw:100,000g/mol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0123】
比較例5
重量平均分子量(Mw)が50,000g/molであるPVAを用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0124】
比較例6
重量平均分子量(Mw)が146,000g/molであるPVAを用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0125】
比較例7
PVAの架橋結合性官能基に含まれる「OH」とリチウム塩の「Li」のモル比([Li]/[OH])が0.5となるようにした以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0126】
比較例8
PVAの架橋結合性官能基に含まれる「OH」とリチウム塩の「Li」のモル比([Li]/[OH]]が0.52となるようにした以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0127】
実験例1
実施例及び比較例で製造されたフィルム状の高分子固体電解質のイオン伝導度を測定するために、1.7671cm2サイズの円形に前記高分子固体電解質を打抜き加工し、2枚のステンレス鋼(stainless steel、SS)の間に前記打抜き加工された高分子固体電解質を配置してコインセルを製造した。
【0128】
電気化学インピーダンススペクトロメーター(electrochemical impedance spectrometer、EIS、VM3、Bio Logic Science Instrument)を用いて、25℃で、アンプリチュード(amplitude)10mV、スキャン範囲500KHzないし20MHzの条件で抵抗を測定した後、下記式1を用いて、前記高分子固体電解質のイオン伝導度を計算した。
【0129】
【0130】
前記式1において、σiは高分子固体電解質のイオン伝導度(S/cm)、Rは前記電気化学インピーダンススペクトロメーターで測定した高分子固体電解質の抵抗(Ω)、Lは高分子固体電解質の厚さ(μm)、Aは高分子固体電解質の面積(cm2)を意味する。
【0131】
前記式1を用いて計算された高分子固体電解質のイオン伝導度、フリースタンディングフィルム(freestanding film)形成可否及び高分子固体電解質の外観を観察した結果を下記表2に記載した。このとき、前記フリースタンディングフィルム形成可否(形成:○、未成形:X)及び高分子固体電解質の外観は肉眼で観察した。
【0132】
【0133】
前記表2に示すように、前記架橋結合性官能基を含む高分子として、適正範囲の分子量、および前記架橋結合性官能基とリチウム塩のリチウムのモル比([Li]/[OH])を有するPVAを使用して、凍結および解凍工程を適用することにより、フリースタンディングフィルム形態の高分子固体電解質を製造できることが確認できた(実施例1、実施例2、実施例3、実施例5および実施例6)。
【0134】
比較例4は、架橋結合性官能基を含む高分子としてPAAを用いた場合であり、塗布膜形成後の凍結工程時に凍結し、解凍工程時に再び液状になるため、フリースタンディングフィルム状の高分子固体電解質を製造することができなかった。
【0135】
また、比較例5は、PVAの分子量が低いので液状で製造され、フリースタンディングフィルム状の高分子固体電解質が得られなかった。
【0136】
また、比較例6は、PVAの分子量が高いので塗布膜を形成するための溶液が得られず、電解質製造工程を行うことができなかった。
【0137】
また、実施例4は、架橋結合性官能基とリチウムのモル比([Li]/[OH])が小さいので脆性を有するフィルム(brittle film)が製造され、前記脆性を有するフィルムは、フリースタンディングフィルムに比べてイオン伝導度が著しく低いことを確認した。
【0138】
また、比較例7は、架橋結合性官能基とリチウムのモル比([Li]/[OH])が大きいのでフィルムではなく粘性の高いゲル(gel)が製造された。前記ゲルは、イオン伝導度は高かったが、フィルムではなくゲル形態であり、高分子固体電解質として適用するには不適合であることを確認した。ゲル形態は、基材から剥がすことができないほど機械的強度が弱い固体状態または粘度の高い液状状態を意味するものであり、高分子固体電解質としては適用が難しい。
【0139】
また、比較例8は、架橋結合性官能基とリチウムのモル比([Li]/[OH])が実施例1に比べても大きく、フィルムではなく粘性の高いゲル(gel)が製造された。前記ゲルはイオン伝導度は高かったが、フィルムではなくゲル形態であるため、高分子固体電解質として適用するには不適合であることを確認した。
【0140】
比較例1は、80℃の高温乾燥工程を利用して製造された電解質で、粘性の高いゲル状の電解質が製造された。基材上に均一な塗布膜を形成することができず、塗布膜形成時、気泡、凝集及び反り現象などが現れた。
【0141】
比較例2は、架橋結合性官能基を持たないPEOを使用して製造された電解質で、フィルム状ではなく液状であった。
【0142】
比較例3は、常温乾燥工程を利用して製造された高分子固体電解質で、冷凍及び解凍工程によって形成される物理的な架橋結合の不在により、高分子固体電解質の機械的強度が低く、イオン伝導度も低いことが分かった。
【0143】
図2は、架橋結合性官能基とリチウム塩のモル比([Li]/[OH])による電解質のイオン伝導度の傾向を示したグラフである。
【0144】
図2を参照すると、冷凍及び解凍工程で製造された電解質でリチウムと架橋結合性官能基のモル比([Li]/[OH]、n
Li/n
PVA)が増加するほど、高分子固体電解質のイオン伝導度が増加する傾向が分かる。比較例3は、常温乾燥工程で製造されたもので、イオン伝導度が著しく低いことが分かる。
【0145】
図3は、架橋結合性官能基とリチウムのモル比([Li]/[OH])による電解質形態を示す写真である。
【0146】
図3を参照すると、架橋結合性官能基とリチウムのモル比([Li]/[OH])が0.1である実施例4は脆性のフィルム形態であり、前記モル比が0.5である比較例7は粘度の高いゲル形態であり、前記モル比が0.1超、0.5未満の実施例1、実施例5及び実施例6はフィルム形態の高分子固体電解質が製造されたことが分かる。
【0147】
実施例7
冷凍及び解凍工程を2サイクル行った以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0148】
実施例8
冷凍及び解凍工程を3サイクル行った以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0149】
実施例9
凍結及び解凍工程を5サイクル行った以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0150】
実施例10
凍結及び解凍工程を10サイクル行った以外は、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0151】
比較例9
PVA(Mw:89,000g/mol;加水分解度(hydrolysis degree):>99%)を水に混合して10wt%PVA水溶液を製造した後、SS箔(SS foil)上に塗布した後、高温乾燥(90℃、3時間)乾燥させてPVAフィルムを製造した。
【0152】
比較例10
架橋剤としてホウ酸(boronic acid)を添加した以外は、比較例9と同様の方法でPVAフィルムを製造した。
【0153】
実験例2
高分子固体電解質内部の架橋結合構造の形成有無及び形成程度を比較する実験を行った。
【0154】
架橋結合構造の形成有無及び形成程度のみを比較するものであるため、架橋結合構造を含まない比較例9のPVAフィルムと、架橋剤により化学的架橋結合構造が形成された比較例10を比較対象とした。
【0155】
(1)膨潤(swelling)程度の確認
実験対象サンプルを常温(25℃)で12時間水に浸漬した後、サンプルの膨潤度を確認し、膨潤度を以下の基準で判断した。
【0156】
<膨潤度の判断基準>
◎:全体積の80%以上膨潤している。
【0157】
○:全体積の50%以上膨潤している。
【0158】
△:全体積の20%以上膨潤している。
【0159】
X:全体積の10%未満膨潤している。
【0160】
(2)モジュラス
モジュラスは、ユニバーサルテスティングマシン(Universal testing machine、UTM)で測定した。
【0161】
【0162】
前記表3を参照すると、実施例1及び実施例7ないし実施例10は、冷凍及び解凍工程によって製造された高分子固体電解質として一定レベル以上のモジュラスを示し、冷凍及び解凍工程のサイクルが増加するにつれて膨潤度も減少した。一般的に、高分子の膨潤度及び機械的物性は、架橋度の影響を大きく受ける。架橋点の形成は、高分子鎖の内部抵抗力を増加させる役割を果たし、膨潤抵抗性及び機械的強度の上昇を引き起こす。特に、冷凍・解凍工程に基づく物理的な架橋結合の形成は、冷凍・解凍工程の繰り返し回数に影響を受ける。前記サイクルが増加するほどモジュラスが増加し、膨潤度が減少する結果から、前記サイクルの回数が増加するほど架橋結合構造も増加することが分かる。実施例1は、膨潤度が全体積の50%以上であることが示されたが、常温で12時間経過して測定した結果であり、全固体電池用高分子固体電解質に要求される物性として適している。
【0163】
比較例9のPVAフィルムは、全体積の80%以上膨潤していることが分かり、このことから高分子内部に架橋結合構造が含まれていないことが分かる。
【0164】
比較例10のPVAフィルムは、架橋剤であるホウ酸の添加により化学的架橋結合構造が形成されたものであり、架橋結合構造が形成されていない比較例9に比べ、モジュラスは低下していることがわかった。
【0165】
比較例10のPVAフィルムは、化学的架橋結合構造が形成され、結晶性が減少し、高分子の柔軟性(flexibility)が増加することにより、比較例9に比べてモジュラスが減少したものである。
【0166】
一方、実施例1及び実施例7ないし実施例10は、前記比較例9及び比較例10の製造方法とは異なり、冷凍及び解凍工程を利用して形成した物理的架橋結合に基づくハイドロゲル形態のPVAフィルムに該当する。これは、架橋結合が増加するほどモジュラスが増加する傾向を示す。実施例1及び実施例7ないし実施例10では、冷凍及び解凍工程のサイクルが増加するほど架橋結合構造も増加し、モジュラスも増加する傾向を示した。冷凍及び解凍工程を経ながらPVAに含まれる架橋結合性官能基の一部が局所的な微細結晶(localized crysralline)を形成し、前記局所的な微細結晶が架橋可能な接点(cross-linkable junction point)として作用してモジュラスが増加するのである。
【0167】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれらによって限定されず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって、本発明の技術思想と以下に記載される特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは当然である。