(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-19
(45)【発行日】2026-01-05
(54)【発明の名称】金属化フィルムとその製造方法及びフィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20251222BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20251222BHJP
【FI】
H01G4/32 511A
H01G4/32 511D
H01G4/32 551
C23C14/04 A
(21)【出願番号】P 2025510479
(86)(22)【出願日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2024010098
(87)【国際公開番号】W WO2024203408
(87)【国際公開日】2024-10-03
【審査請求日】2025-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2023054323
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】永尾 雄基
(72)【発明者】
【氏名】小林 真一
(72)【発明者】
【氏名】野間 裕介
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-279425(JP,A)
【文献】特開昭55-79867(JP,A)
【文献】国際公開第87/03419(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
C23C 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10%蒸発温度が237℃以上、90%蒸発温度が337℃以下の炭化水素系オイルをマスキングオイル又はアフターオイルとして用いた金属化フィルム。
【請求項2】
前記炭化水素系オイルの誘電体フィルムに対する接触角が17.9~22.8°である、請求項1記載の金属化フィルム。
【請求項3】
前記炭化水素系オイルのポリプロピレンフィルムに対する接触角が17.9~22.8°である、請求項1記載の金属化フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記炭化水素系オイルを蒸発させて付着させる工程を含む、請求項1記載の金属化フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属化フィルムとその製造方法、及びその金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸着部と非蒸着部とからなる蒸着パターンを備えた金属化フィルムを製造するにあたっては、誘電体フィルムの表面のうち、非蒸着部となる部分を予めマスキングしておき、その後、金属を蒸着させることで、誘電体フィルムの表面に所望の蒸着パターンを形成している。
【0003】
マスキングの方法としては、オイルをマスキング材として使用するオイルマスク工法が挙げられる。マスキングオイルが付着している部分には金属が蒸着しないため、マスキングオイルの塗布(付着)形状に応じた蒸着パターンが誘電体フィルムの表面に形成されることになる。
【0004】
ところで、特許文献1、2では、マスキングオイルとしてフッ素オイル(パーフルオロポリエーテル等)を用いている。フッ素オイルはフィルムへの濡れ性が良いため、マスキングすべき部分にオイルが十分に付着しないことで生じる不良(ヌケ:本来、金属を蒸着させない部分に金属が蒸着してしまう不具合)を抑制することができる。また、熱安定性が高く、加熱時に分解等の変質が起きにくいため蒸発が安定しており、金属蒸着時にオイルが意図しない部分にまで蒸発・飛散してしまい、本来金属を蒸着すべき部分までマスキングすることで生じる不良(ムラ:本来、金属を蒸着すべき部分に金属が蒸着していない又は蒸着量が極端に少ない不具合)が生じ難い。
【0005】
ただその一方で、フッ素オイルは、誘電体フィルムと冷却用ローラとの密着性を向上させるために金属蒸着時に照射される電子線によって分解されてフッ素イオンを生成し、蒸着金属の劣化を促進させるため、コンデンサとしての信頼性を低下させる要因となる。また、フッ素オイルは環境への負荷が懸念されるフッ化炭素からなるため、使用を控えたい物質の一つである。
【0006】
マスキングオイルとして、炭化水素系オイルを用いることもあるが、蒸発が不安定なために誘電体フィルムへの付着量がばらつきやすく、ムラやヌケの発生頻度が高いという欠点がある。
【0007】
また、蒸着金属は吸湿によって劣化する。そこで、蒸着面にアフターオイルとしてシリコーンオイルを塗布し、保護膜を形成することがある。
【0008】
ただ、シリコーンオイルは水蒸気を透過し易いという特性を持つため、蒸着金属の吸湿を十分に抑制することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭63-7363号公報
【文献】国際公開第2017/068758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、金属化フィルムの改良を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
金属化フィルムは、10%蒸発温度が237℃以上、90%蒸発温度が337℃以下の炭化水素系オイルをマスキングオイル又はアフターオイルとして用いたことを特徴としている。
【0012】
また、上記金属化フィルムにおいては、前記炭化水素系オイルの誘電体フィルムに対する接触角が17.9~22.8°であることが好ましい。又は、前記炭化水素系オイルのポリプロピレンフィルムに対する接触角が17.9~22.8°であることが好ましい。
【0013】
本発明のフィルムコンデンサは、上記いずれかの金属化フィルムを用いていることを特徴としている。
【0014】
本発明の金属化フィルムの製造方法は、炭化水素系オイルを蒸発させて付着させる工程を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
10%蒸発温度が237℃以上、90%蒸発温度が337℃以下の炭化水素系オイルをマスキングオイルとして用いた場合、蒸着金属の劣化への影響や環境負荷が小さい。加えて、ムラやヌケの発生が抑制された金属化フィルムが得られる。
【0016】
10%蒸発温度が237℃以上、90%蒸発温度が337℃以下の炭化水素系オイルをアフターオイルとして用いた場合、蒸着金属の吸湿を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサの蒸着パターンを示す図である。
【
図3】アフターオイルを塗布した金属化フィルムの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサについて説明する。フィルムコンデンサは、
図1及び
図2に示す金属化フィルム1を用いている。金属化フィルム1は、誘電体フィルム2の表面に、蒸着部3と非蒸着部4とからなる蒸着パターンを備えている。蒸着部3とは、アルミニウムや亜鉛等の金属を蒸着させた部分を指す。非蒸着部4とは、金属が蒸着していない部分を指す。非蒸着部4は、例えば蒸着部を区画するためのマージン部である。マージン部によって区画された蒸着部3は例えば分割電極5となる。分割電極同士はヒューズ部6によって互いに接続されている。
図1は金属化フィルム1の一部を切り出したものであって、実際にはフィルム送り方向に連続している。
【0019】
誘電体フィルムは、合成樹脂フィルムである。例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリフッ化ビニリデン、シクロオレフィンポリマーのいずれからなるフィルムである。特にポリプロピレンフィルムが好ましく、二軸延伸ポリプロピレンフィルムがより好ましい。また、表面にコロナ処理が施されていることが好ましい。フィルムの厚みは特に限られないが例えば2.5μmである。
【0020】
ところで、非蒸着部はオイルマスク工法によって形成されている。オイルマスク工法で用いるマスキングオイルは、少なくとも以下の条件1を満たす炭化水素系オイルである。また、マスキングオイルは、条件1、2の双方を満たす炭化水素系オイルであることがより好ましい。さらにマスキングオイルは、条件1、2の双方を満たす炭化水素系オイルのうち、パラフィンオイルであることがより一層好ましい。
【0021】
[条件1]10%蒸発温度が237℃以上、90%蒸発温度が337℃以下
【0022】
10%蒸発温度が237℃より低いと、マスキングオイルが蒸発し易くなり、ムラが発生し易くなる。また、90%蒸発温度が337℃より高いと、ヌケが発生し易くなる。
【0023】
蒸発温度は、JIS K0129(2005)に基づいて熱重量測定法によって測定した数値である。具体的には、熱重量-示差熱同時測定装置(DTG-60H:株式会社 島津製作所製)のアルミ容器(蓋無し)に、試料であるマスキングオイルを入れた上で、室温から600℃まで毎分10℃の速度で温度を上昇させ、質量が10%減じたときの温度と90%減じたときの温度を測定した。
【0024】
[条件2]誘電体フィルムに対する接触角が17.9~22.8°
【0025】
「接触角」は、ポリプロピレンフィルムに対する接触角であることが好ましく、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに対する接触角であることがより好ましく、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に対する接触角であることがより一層好ましい。
【0026】
接触角が17.9°より小さいと、マスキングオイルが意図した範囲を超えて広がり易く、ムラが発生し易くなる。接触角が22.8°より大きいと、マスキングオイルを誘電体フィルムへ付着させ難くなり、ヌケが発生し易くなる。
【0027】
接触角は、JIS R3257(1999)に基づいて静滴法によって測定した数値である。具体的には、気温25℃、湿度50%の下、マイクロシリンジで試料上に液を3±0.5μL滴下後静置し、1.5±0.1秒後に液滴を撮影する。液滴の半径rと高さhを求め下式に代入して接触角θを求める。
【数1】
【0028】
上記金属化フィルムは、以下のようにして製造される。まず、例えばフレキソ印刷法によって誘電体フィルムの表面にマスキングオイルを付着させる。具体的には、非蒸着部と略同形状の凸部を有する凸版を用意し、その凸版にマスキングオイルを付着させる。例えば、まずオイルタンクに収容されているマスキングオイルをヒータ等の熱源を用いて加熱し、蒸発させる。次に、蒸発させたマスキングオイルをロールに塗布する(付着させる:蒸着工程)。そして、そのロールを凸版に押し当てる。その後、凸版を誘電体フィルムの表面に押し当て、マスキングオイルを転写する(付着させる)。この際、凸版の凸部に付着しているマスキングオイルは転写され、マスキングオイル層7が誘電体フィルム上に形成される(
図2参照)。一方で、凸版の凹部に付着しているマスキングオイルは転写されない。そのため、転写されたマスキングオイル層7の形状は、凸版の凸部と略同形状となる。なお、マスキングオイルを付着させる方法としては、フレキソ印刷法の他、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、吹き付け(スプレー)法、ダイコート法等を採用してもよい。
【0029】
次に、誘電体フィルムのマスキングオイルが転写されている面に金属を蒸着させる。例えば真空蒸着法によって蒸着する。具体的には、誘電体フィルムを真空蒸着機内に入れ、コロナ放電処理を施した面に、膜抵抗値が所定の値となるように金属を蒸着する。金属の加熱は例えば抵抗加熱方式である。マスキングオイルが付着していない部分には金属が蒸着して蒸着部が形成される。一方で、マスキングオイルが付着している部分には金属が蒸着せず非蒸着部が形成される。要は、凸版の凹部形状に応じた蒸着パターンが形成される。
【0030】
上記構成の金属化フィルムを巻回し、軸方向両端部に例えば金属を溶射してなるメタリコン電極を形成することで本発明のフィルムコンデンサが製造される。なお、巻回に代えて積層してもよい。
【0031】
次に、互いに異なるマスキングオイルを用いて製造した金属化フィルムを比較検査した結果について説明する。
【0032】
[実施例1]
マスキングオイルとして、10%蒸発温度が237℃、90%蒸発温度が317℃、接触角が17.9°の炭化水素系オイル(パラフィンオイル)を使用した金属化フィルム。
【0033】
[実施例2]
マスキングオイルとして、10%蒸発温度が265℃、90%蒸発温度が337℃、接触角が22.8°の炭化水素系オイル(パラフィンオイル)を使用した金属化フィルム。
【0034】
[比較例1]
マスキングオイルとして、10%蒸発温度が215℃、90%蒸発温度が295℃、接触角が14.3°の炭化水素系オイル(パラフィンオイル)を使用した金属化フィルム。
【0035】
[比較例2]
マスキングオイルとして、10%蒸発温度が253℃、90%蒸発温度が358℃、接触角が27.4°の炭化水素系オイル(パラフィンオイル)を使用した金属化フィルム。
【0036】
各実施例、各比較例のいずれもマスキングオイルが異なる他は同じ条件で金属化フィルムを製造した。すなわち、誘電体フィルムとして長さ8000m、厚さ2.5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用い、表面をコロナ処理した上で、コロナ処理面にフレキソ印刷法によりマスキングオイルを付着させ、その後、アルミニウムを蒸着させて、所定の蒸着パターンを形成した。蒸着パターンは
図1に示すように、格子状にマージン部(非蒸着部4)を設けており、隣接する分割電極5同士がヒューズ部6によって互いに接続されている。
【0037】
検査項目のひとつとして、ムラ(本来、金属を蒸着すべき部分に金属が蒸着していない又は蒸着量が極端に少ない不具合)とヌケ(本来、金属を蒸着させない部分に金属が蒸着してしまう不具合)の発生の有無を確認した。なお、ムラに関しては、初動1500mの位置においてマイクロスコープで20倍に拡大し、目視にてムラの有無を確認した。ヌケに関しては、初動、中盤、終盤から抜き取り(各N=30)を行い、マイクロスコープで40倍に拡大してヌケの有無を限界見本と見比べて確認した。
【0038】
また、別の検査項目として、フィルム送り方向と直交する方向に延びるマージン部の幅寸法A、フィルム送り方向と平行な方向に延びるマージン部の幅寸法B、フィルム送り方向と平行な方向に延びるマージン部間に設けられたヒューズ部の幅寸法Cを測定した。寸法精度に関しては、初動、中盤、終盤から抜き取り(各N=30)を行い、マイクロスコープで40倍に拡大して寸法を測定し、各寸法の平均値及び標準偏差σが表1の基準値内であるか否かを確認した。なお、基準値とは、マスキングオイルとして、10%蒸発温度が235℃以上、90%蒸発温度が335℃、接触角が17.9~22.8°のフッ素オイルを使用した(他の条件は各実施例及び各比較例と同じ)場合に得られる寸法精度である。
【0039】
【0040】
表2は検査結果を示す。表の通り、実施例1と実施例2では、ムラ、ヌケ、寸法精度の全てが基準と同等であることが分かる。一方、比較例1においてはムラが、比較例2においてはヌケと寸法精度が基準を下回っている。
【0041】
【表2】
〇:基準(フッ素オイル使用)と同等
×:基準を下回る
【0042】
このように、炭化水素系オイルであっても、蒸発温度と誘電体フィルムへの接触角を特定することで、フッ素オイルを用いた場合と遜色のない結果が得られることが分かる。なお、フッ素オイルは、誘電体フィルムと冷却用ローラとの密着性を向上させるために金属蒸着時に照射される電子線によって分解されてフッ素イオンを生成し、蒸着金属の劣化を促進させるといった問題や、価格が高いといった問題がある。一方で、炭化水素系オイルであればそのような問題が生じ難く、安価で信頼性の高いフィルムコンデンサを製造することができる。
【0043】
なお、出願人は、フッ素オイルをマスキングオイルとして用いたフィルムコンデンサと、実施例1や実施例2の金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサとで寿命(105℃の環境下で電圧600VDCを印加したときの静電容量の減少率)が略変わらないことを別途、確認している。
【0044】
次に、炭化水素系オイルをアフターオイルとして使用した金属化フィルムについて説明する。アフターオイルとは、金属化フィルムの蒸着面(蒸着部3が形成されている面)に塗布される油である。塗布されたアフターオイルは、蒸着金属(蒸着部3)上に保護膜8を形成する(
図3参照)。保護膜8は、例えば、オイルタンクに充填されたアフターオイルをヒータ等の熱源で加熱、蒸発させて、その蒸発したアフターオイルを蒸着面に付着させることで形成される。すなわち、アフターオイルの塗布は、マスキングオイルの塗布と同じように蒸着によって行われる。ただし、アフターオイルは直接塗布されるのに対し、マスキングオイルはロールや凸版等の介在物を介して間接的に塗布される点で相違している。なお、
図3では、マスキングオイル層7とアフターオイル層8との間に境界を描いているが、互いに混ざり合って境界があいまいになっていてもよい。
【0045】
アフターオイルとして使用される炭化水素系オイルは、以下の条件1を満たしている。
【0046】
[条件1]10%蒸発温度が237℃以上、90%蒸発温度が337℃以下
【0047】
10%蒸発温度が237℃より低いと、アフターオイルが蒸発し易くなり、保護膜が安定して形成されない。また、90%蒸発温度が337℃より高いと、ヒータ等の熱源を用いてアフターオイルを蒸発温度まで加熱した際に、熱源に近い位置と離れた位置とで温度差が大きくなり易い。その結果、蒸発するオイル量が不安定となって、保護膜が安定して形成されない。
【0048】
蒸発温度は、JIS K0129(2005)に基づいて熱重量測定法によって測定した数値である。具体的には、熱重量-示差熱同時測定装置(DTG-60H:株式会社 島津製作所製)のアルミ容器(蓋無し)に、試料であるマスキングオイルを入れた上で、室温から600℃まで毎分10℃の速度で温度を上昇させ、質量が10%減じたときの温度と90%減じたときの温度を測定した。
【0049】
アフターオイルは、炭化水素系オイルのうち、パラフィンオイルであることが好ましい。また、上記のマスキングオイルと同一のものを使用してもよい。すなわち、条件1と条件2を満たす炭化水素系オイル(パラフィンオイル)をマスキングオイル及びアフターオイルとして用いてもよい。
【0050】
アフターオイルを蒸着面に塗布する方法は、上記蒸発法の他、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、吹き付け(スプレー)法、ダイコート法等でもよい。
【0051】
次に、互いに異なるアフターオイルを用いて製造した金属化フィルムを比較検査した結果について説明する。
【0052】
[実施例11]
アフターオイルとして、10%蒸発温度が237℃、90%蒸発温度が317℃の炭化水素系オイル(パラフィンオイル)を使用した金属化フィルム。
【0053】
[実施例12]
アフターオイルとして、10%蒸発温度が265℃、90%蒸発温度が337℃の炭化水素系オイル(パラフィンオイル)を使用した金属化フィルム。
【0054】
[比較例11]
アフターオイルとして、10%蒸発温度が215℃、90%蒸発温度が295℃の炭化水素系オイル(パラフィンオイル)を使用した金属化フィルム。
【0055】
[比較例12]
アフターオイルとして、10%蒸発温度が253℃、90%蒸発温度が358℃の炭化水素系オイル(パラフィンオイル)を使用した金属化フィルム。
【0056】
各実施例、各比較例のいずれもアフターオイルが異なる他は同じ条件で金属化フィルムを製造した。すなわち、誘電体フィルムとして長さ8000m、厚さ2.5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用い、表面をコロナ処理した上で、コロナ処理面にフレキソ印刷法によりマスキングオイルを付着させ、その後、アルミニウムを蒸着させて、所定の蒸着パターンを形成した。蒸着パターンは
図1に示すように、格子状にマージン部(非蒸着部4)を設けており、隣接する分割電極5同士がヒューズ部6によって互いに接続されている。アフターオイルは、オイルタンクに充填されたアフターオイルをヒータで加熱、蒸発させることで蒸着面全面に直接塗布した。
【0057】
検査として、安定した保護膜が形成されたかを検査した。具体的には、まず、上記実施例11、12、比較例11、12の各金属化フィルムをそれぞれ巻回し、軸方向両端部に例えば金属を溶射してなるメタリコン電極を形成することで、静電容量193μFのフィルムコンデンサを製造する。次に、各フィルムコンデンサを115℃の環境下に置いた上で、電圧600VDCを2000時間印加した。2000時間経過後に、各フィルムコンデンサを巻きほどいて、各フィルムコンデンサから10mの金属化フィルムをそれぞれ取り出し、それぞれの金属化フィルムのフィルム厚さ方向における蒸着部3の光透過量を測定した。光透過量は、発光器と受光器(株式会社 キーエンス社製 ファイバセンサ FS-V21、FU-77V)を用いて測定した。
【0058】
【0059】
表3は、測定された光透過量の最大値と最小値を示している。蒸着金属(蒸着部3)が水分によって劣化すると無色化し、光透過量が大きくなる。従って、光透過量の最大値と最小値との差が大きいほど、保護膜の形成にムラが生じていることを示すが、表3に示すように、実施例11と実施例12は、比較例11や比較例12と比較して、光透過量の最大値と最小値との差が小さく、保護膜が略一定の厚みで形成されている、換言すれば安定した保護膜が形成されていることが分かる。
【0060】
炭化水素系オイルは、水蒸気透過性が極めて低い。そのため、安定した保護膜が形成されている場合、蒸着部3と水蒸気との接触を防ぎ、蒸着部3の劣化を抑制することができる。
【0061】
図4は、耐湿負荷試験の結果を示したグラフである。試験方法は、フィルムコンデンサを85℃、湿度85%の環境下に置いた上で、電圧450VDCを印加し、所定時間経過後のコンデンサ容量の変化を調べる。なお、図中の「実施例11」とは、実施例11の金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサを示し、「比較例13」とは、アフターオイルとして、10%蒸発温度が193℃、90%蒸発温度が264℃のシリコーンオイルを用いた他は実施例11と同じ金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサを示し、「比較例14」とは、アフターオイルを塗布していない他は実施例11と同じ金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサを示している。
【0062】
図に示すように、実施例11の約3500時間経過後のコンデンサ容量は0.7%程度の減少に留まっているのに対し、比較例13では3.1%程度減少している。従って、シリコーンオイルをアフターオイルとして用いた場合に比べて高い耐湿性が得られていることが分かる。
【符号の説明】
【0063】
1 金属化フィルム
2 誘電体フィルム
3 蒸着部
4 非蒸着部
5 分割電極
6 ヒューズ部
7 マスキングオイル層
8 アフターオイル層(保護膜)
A マージン部の幅寸法
B マージン部の幅寸法
C ヒューズ部の幅寸法