(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-22
(45)【発行日】2026-01-06
(54)【発明の名称】信号現示を特定するシステム
(51)【国際特許分類】
B61L 25/06 20060101AFI20251223BHJP
B61L 5/18 20060101ALI20251223BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20251223BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20251223BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20251223BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20251223BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20251223BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20251223BHJP
【FI】
B61L25/06 Z
B61L5/18 Z
B61L23/00 Z
H04N7/18 J
H04N23/60 500
H04N23/63 310
G06T7/00 650Z
B61D37/00 G
(21)【出願番号】P 2021154166
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2024-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晟弥
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-215938(JP,A)
【文献】特開2008-70332(JP,A)
【文献】特開2019-84881(JP,A)
【文献】特開2007-241469(JP,A)
【文献】国際公開第2017/009934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
H04N 7/18,23/60,23/63
G06T 7/00
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
準備時に、既知
の位置から撮影した画像のうち信号機が写る領域を示す領域情報と、
当該画像内の信号機の画像又は当該
信号機の画像の特徴情報を示す画像情報とを
、当該画像の撮影位置に対応付けて記憶し、
運用時に、車両から撮影した画像におけ
る信号機が写る領域を
、当該画像の撮影位置に対応付けて記憶している前記領域情報に基づき特定し、
当該画像の撮影位置に対応付けて記憶している前記画像情報に基づき
、当該信号機が写る領域の画像が示す信号現示を特定
するシステム。
【請求項2】
運用時に、前記車両の停止を検知したときに前記画像の撮影を行う
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
運用時に、前記画像の撮影時における前記車両の姿勢に基づき前記領域の特定を行う
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
運用時に、前記車両の姿勢が停止時の姿勢と実質的に同じであるときに撮影した画像を用いて前記信号現示の特定を行う
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
運用時に、前記車両の揺れの大きさに応じて前記信号現示の特定に用いる画像の領域の大きさを変更する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
運用時に、前記車両に設置された測距計により測定した前記車両から前記信号機までの距離に基づき前記領域の特定を行う
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号現示を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
運転手は車両の走行中に停止を示す信号現示の信号機を発見すると、車両を停止させるための制動操作を行う。また、運転手は車両の停止中に信号現示が停止から進行を示すものに変化すると、車両を発車させるための加速操作を行う。
【0003】
車両の走行中に運転手が信号機を見逃したり、信号現示を見誤ったりすると、停止すべき車両が停止せずに他の車両と衝突する危険性が生じる。また、車両の停止中に運転手が信号現示の変化に気付かなければ、発車すべき車両が停止したままとなり、その車両や後続の車両の運行に遅延を生じる。
【0004】
上記の問題を解消するために、車両から前方を撮影した画像に写っている信号機を画像認識技術により認識する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、列車から前方を撮影した画像からレールの位置を特定し、特定したレールの位置から建植位置を特定し、建植位置から鉄道信号の写っている領域を特定し、特定した領域の画像から鉄道信号を認識する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法によれば、認識された鉄道信号の現示を運転手に通知することで、運転手による信号の見逃しや信号現示の見誤りを防止できる。
【0007】
しかしながら、鉄道信号と線路との位置関係は様々に変化する。従って、特許文献1に記載の方法による場合、鉄道信号の写っている領域として特定される領域はある程度の広がりを持ち、その領域の中から鉄道信号の画像を認識する必要があるため、例えば、画像内に自動車のテールランプ等が写り込んだ場合や、複数の鉄道信号が同じ画像に写り込んだ場合、画像の認識誤りが生じる場合がある。
【0008】
上記の事情に鑑み、本発明は、車両から撮影した画像に基づき、従来技術よりも高い精度で、車両の運転手に対し信号現示に応じた通知を行う手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、準備時に、既知の位置から撮影した画像のうち信号機が写る領域を示す領域情報と、当該画像内の信号機の画像又は当該信号機の画像の特徴情報を示す画像情報とを、当該画像の撮影位置に対応付けて記憶し、運用時に、車両から撮影した画像における信号機が写る領域を、当該画像の撮影位置に対応付けて記憶している前記領域情報に基づき特定し、当該画像の撮影位置に対応付けて記憶している前記画像情報に基づき、当該信号機が写る領域の画像が示す信号現示を特定するシステムを第1の態様として提案する。
【0010】
第1の態様に係るシステムによれば、車両から撮影された画像のうち信号機が写る領域が高い精度で特定されるため、運転手に対し正しい信号現示に応じた通知が行われる。
【0011】
上記の第1の態様に係るシステムにおいて、運用時に、前記車両の停止を検知したときに前記画像の撮影を行う、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様に係るシステムによれば、ぶれのない画像により信号現示の特定が行われるため、運転手に対し正しい信号現示に応じた通知が行われる。
【0013】
上記の第1又は第2の態様に係るシステムにおいて、運用時に、前記画像の撮影時における前記車両の姿勢に基づき前記領域の特定を行う、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様に係るシステムによれば、走行中の揺れにより車両が傾いた姿勢で画像の撮影が行われた場合であっても信号機が写っている領域が正しく特定されるため、運転手に対し正しい信号現示に応じた通知が行われる。
【0015】
上記の第1乃至第3のいずれかの態様に係るシステムにおいて、運用時に、前記車両の姿勢が停止時の姿勢と実質的に同じであるときに撮影した画像を用いて前記信号現示の特定を行う、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0016】
第4の態様に係るシステムによれば、車両が傾いていない姿勢で撮影された画像が信号現示の特定に用いられるので、運転手に対し正しい信号現示に応じた通知が行われる。
【0017】
上記の第1乃至第4のいずれかの態様に係るシステムにおいて、運用時に、前記車両の揺れの大きさに応じて前記信号現示の特定に用いる画像の領域の大きさを変更する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0018】
第5の態様に係るシステムによれば、走行中の揺れにより車両が傾いた姿勢で画像の撮影が行われた場合であっても、特定した領域から信号機の画像がはみ出ることがないため、運転手に対し正しい信号現示に応じた通知が行われる。
【0019】
上記の第1乃至第5のいずれかの態様に係るシステムにおいて、運用時に、前記車両に設置された測距計により測定した前記車両から前記信号機までの距離に基づき前記領域の特定を行う、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0020】
第6の態様に係るシステムによれば、撮影距離が高い精度で特定され、信号機が写る領域のサイズが正確に特定されるため、運転手に対し正しい信号現示に応じた通知が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る信号現示通知システムの構成を説明するための図。
【
図2】一実施形態に係るデータ処理装置の機能構成を示した図。
【
図3】一実施形態に係る運行スケジュールテーブルのデータ構成を示した図。
【
図4】一実施形態に係る信号機テーブルのデータ構成を示した図。
【
図5】一実施形態に係る信号機テーブルに格納されるデータを説明するための図。
【
図6】一実施形態に係る信号機テーブルに格納されるデータを説明するための図。
【
図7】一実施形態に係る信号機テーブルに格納されるデータを説明するための図。
【
図8】一実施形態に係るデータ処理装置が行う処理を説明するための図。
【
図9】一実施形態に係る表示装置及び発音装置が行う通知を例示した図。
【
図10】一実施形態に係る表示装置及び発音装置が行う通知を例示した図。
【
図11】一変形例に係るデータ処理装置が行う処理を説明するための図。
【
図12】一変形例に係るデータ処理装置が行う処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態]
以下に、本発明の一実施形態に係る信号現示通知システム1を説明する。
図1は信号現示通知システム1の構成を説明するための図である。信号現示通知システム1は、鉄道車両8の運転手に、鉄道車両8の前方の信号機9の信号現示に応じた通知を行うシステムである。
【0023】
信号現示通知システム1は、鉄道車両8の前方を撮影する撮影装置11と、鉄道車両8の走行速度を測定する車速計12と、撮影装置11が撮影する画像に基づき鉄道車両8の前方の信号機9の信号現示を特定するデータ処理装置13と、データ処理装置13により特定された信号現示に応じた文字等を表示する表示装置14と、データ処理装置13により特定された信号現示に応じた音又は音声を発音する発音装置15を備える。
【0024】
撮影装置11は可視光カメラであり、十分に短い時間間隔(例えば、1/30秒間隔)で継続的に撮影を繰り返し、撮影した画像を表す画像データを順次生成するビデオカメラである。撮影装置11は、生成する画像データを順次、データ処理装置13に出力する。
【0025】
車速計12は鉄道車両8の走行速度を測定する装置である。車速計12が鉄道車両8の走行速度を測定する方式は、例えば、鉄道車両8の車軸の回転を磁力等により検知し単位時間当たりの車軸の回転回数に車輪の周長を乗じた値を走行速度として算出する方式、レールにレーザ光を照射しその反射光を受光して照射した光とその反射光との位相差から走行速度を算出する方式、等のいずれであってもよい。
【0026】
データ処理装置13のハードウェアはコンピュータであり、各種データを記憶するメモリ、メモリに記憶されているプログラムに従い各種データ処理を行うプロセッサ、外部の装置(この場合、撮影装置11、車速計12、表示装置14及び発音装置15)との間でデータの入出力を行う入出力インタフェースを備える。
【0027】
表示装置14は、データ処理装置13から出力される画像データが表す画像を表示する。発音装置15は、データ処理装置13から出力される音データが表す音又は音声を発音する。
【0028】
図2は、データ処理装置13の機能構成を示した図である。データ処理装置13のハードウェアを構成するコンピュータのプロセッサが、本実施形態に係るプログラムに従いデータ処理を行うと、
図2に示す構成部を備える装置として機能する。以下にデータ処理装置13の機能構成を説明する。
【0029】
画像取得部131は、撮影装置11から画像データを取得する。画像取得部131が取得した画像データは、記憶部132に記憶される。
【0030】
記憶部132は、各種データを記憶する。記憶部132が記憶するデータには、本実施形態に係るプログラム、画像取得部131が撮影装置11から取得した画像データに加え、以下に説明する運行スケジュールテーブルと信号機テーブルが含まれる。
【0031】
図3は、運行スケジュールテーブルのデータ構成を示した図である。運行スケジュールテーブルは、鉄道車両8の運行スケジュールを示すデータを格納するテーブルである。運行スケジュールテーブルは、「時刻」欄、「発着」欄、「駅名」欄、「番線名」欄を備える。「時刻」欄は、鉄道車両8が駅から発車する時刻又は駅に到着する時刻を示すデータを格納する。「発着」欄は、「時刻」欄に格納されるデータが示す時刻が、鉄道車両8は駅から発車する時刻と、駅に到着する時刻のいずれであるかを示すデータを格納する。「駅名」欄は、鉄道車両8が発着する駅の名称を示すデータを格納する。「番線名」欄は、鉄道車両8が発着する駅における番線を識別するデータを格納する。
【0032】
図4は、信号機テーブルのデータ構成を示した図である。信号機テーブルは、運行スケジュールテーブル(
図3)に格納されるデータが示す運行スケジュールに従い運行する鉄道車両8の移動経路上に設置され、鉄道車両8に対し停止、進行等の指示を与える信号機に関するデータを格納するテーブルである。信号機テーブルは、「走行距離」欄、「領域」欄、「画像情報」欄、「現示情報」欄を備える。
【0033】
「走行距離」欄は、鉄道車両8の移動経路上の基準位置からの鉄道車両8の走行距離を示すデータを格納する。
【0034】
図5は、信号機テーブル(
図4)の「走行距離」欄に格納されるデータを説明するための図である。
図5は、鉄道車両8が、A駅の1番線から発車し、B駅の3番線に到着し、A駅からB駅に向かう移動経路上に、鉄道車両8に対し指示を与える信号機9(0)~9(4)が配置されている例を示している。
【0035】
図5にQ0~Q4で示される位置は、信号機9(0)~9(4)の位置(以下、信号機位置Q0~Q4という)である。
【0036】
図5にP0~P4で示される位置は、データ処理装置13が信号現示の特定のための処理を開始する位置(以下、信号現示特定開始位置P0~P4という)である。信号現示特定開始位置P0~P4の各々は、例えば、信号機位置Q0~Q4の各々より所定距離だけ手前の位置である。
【0037】
図5にS0で示される位置は、駅Aの停止位置に鉄道車両8が停止した場合の撮影装置11の位置(以下、停止位置S0という)である。停止位置S0は、信号現示特定開始位置P0と信号機位置Q0の間に位置している。また、
図5にS4で示される位置は、駅Bの停止位置に鉄道車両8が停止した場合の撮影装置11の位置(以下、停止位置S4という)である。停止位置S4は、信号現示特定開始位置P4と信号機位置Q4の間に位置している。
【0038】
図5の例において、基準位置は、例えば、信号現示特定開始位置P0である。信号機テーブル(
図4)の「走行距離」欄は、信号現示特定開始位置P0から信号機位置Q0までの区間、信号現示特定開始位置P1から信号機位置Q1までの区間、信号現示特定開始位置P2から信号機位置Q2までの区間、信号現示特定開始位置P3から信号機位置Q3までの区間、信号現示特定開始位置P4から信号機位置Q4までの区間に関し、例えば、所定の距離間隔(例えば、1m間隔)で、基準位置(信号現示特定開始位置P0)からの走行距離を示すデータを格納している。
【0039】
信号機テーブル(
図4)の「領域」欄は、「走行距離」欄のデータが示す走行距離だけ鉄道車両8が基準位置(信号現示特定開始位置P0)から走行したときに撮影装置11が撮影した画像において信号機9が写る領域を示すデータを格納する。
【0040】
図6は、例として、信号現示特定開始位置P1から撮影装置11が撮影した画像における信号機9(1)が写る領域Rを示した図である。「領域」欄に格納されるデータは、例えば、画像の左上頂点を原点(0,0)とし、右方向をX軸正方向、下方向をY軸正方向とする座標系における、信号機9が写る領域の左上頂点の座標と右下頂点の座標を示すデータである。なお、「領域」欄に格納されるデータの形式はこれに限られない。
【0041】
信号機テーブル(
図4)の「画像情報」欄は、「走行距離」欄のデータが示す走行距離だけ基準位置から走行した鉄道車両8の撮影装置11が撮影した画像に含まれる信号機9の画像、又は、信号機9の画像の特徴情報を示す画像情報を格納する。以下の説明において、「画像情報」欄には、信号機9の画像から抽出された特徴量(特徴情報の一例)を示すデータが格納されるものとする。
【0042】
「現示情報」欄は、「画像情報」欄のデータに基づき、「領域」欄のデータが示す領域に写っている信号機9の画像が示す信号現示を示すデータを格納する。
【0043】
図7は、「現示情報」欄に格納されるデータを説明するための図である。
図7(A)は、例として、信号機9(1)が四灯式(警戒現示型)の信号機である場合に、信号現示特定開始位置P1から撮影装置11が撮影する画像に写る信号機9(1)の画像を表した図である。
図7(B)は、上記の場合に、信号機テーブル(
図4)の信号現示特定開始位置P1に応じた走行距離に関するデータ行の「現示情報」欄に格納されるデータを例示した図である。
【0044】
四灯式(警戒現示型)の信号機9(1)は、
図7(A)においてC1~C4で示される4つの色灯(以下、色灯C1~C4という)を備える。色灯C1と色灯C4は黄色に点灯し、色灯C2は赤色に点灯し、色灯C3は緑色に点灯する。
【0045】
例えば、
図7(B)のテーブルの第1行のデータは、色灯C2のみが赤色に点灯している状態の信号機9は、鉄道車両8に対し「停止」を指示することを示している。
【0046】
信号機テーブル(
図4)の「領域」欄のデータは、例えば、事前準備として、鉄道車両8を走行させながら撮影装置11が撮影した画像から、データ処理装置が既知の画像認識技術により認識した信号機9が写っている領域を示すデータである。また、「画像情報」欄のデータは、そのように特定した領域に写っている画像から、データ処理装置が既知の特徴量抽出技術により抽出した特徴量を示すデータである。
【0047】
図2を参照し、データ処理装置13の機能構成の説明を続ける。車速取得部133は、車速計12から車速計12が測定した鉄道車両8の車速を示す車速データを取得する。
【0048】
距離算出部134は、鉄道車両8が基準位置を出発した後、車速取得部133が車速計12から取得する車速データが示す車速を時間軸方向に積分し、鉄道車両8が基準位置から走行した距離(走行距離)を算出する。
【0049】
領域特定部135は、距離算出部134が算出する走行距離が、信号機テーブル(
図4)の「走行距離」欄のデータが示す距離に達する毎に、そのデータに応じた「領域」欄のデータが示す領域を、その時点で画像取得部131が撮影装置11から取得した画像データが表す画像における信号機9の写っている領域として特定する。
【0050】
図8は、領域特定部135が行う処理を説明するための図である。
図8(A)は、鉄道車両8が信号現示特定開始位置P1に達したときに、信号機テーブルのデータ行のうち「走行距離」欄に信号現示特定開始位置P0から信号現示特定開始位置P1までの走行距離を示すデータを格納しているデータ行の「領域」欄のデータが示す領域Rを破線の矩形で示した図である。
図8(B)は、鉄道車両8が信号現示特定開始位置P1に達したときに撮影装置11が撮影した画像を示す。領域特定部135は、
図8(C)に示すように、
図8(B)の画像における領域Rを、信号機9の写っている領域として特定する。
【0051】
図2を参照し、データ処理装置13の機能構成の説明を続ける。信号現示特定部136は、領域特定部135が特定した領域に移っている画像から、信号機テーブル(
図4)の、その信号機9に応じた「画像情報」欄のデータを用いて、既知の画像認識技術により色灯の領域を認識し、認識した色灯のうち点灯している色灯を、認識した色灯の領域の色及び明るさにより特定する。続いて、信号現示特定部136は、そのように特定した点灯している色灯の組み合わせに応じた信号現示を、その信号機9に応じた「現示情報」欄のデータ(
図7参照)を用いて特定する。
【0052】
通知部137は、信号現示特定部136が特定した信号現示に応じた画像の表示を表示装置14に指示する。また、通知部137は、信号現示特定部136が特定した信号現示に応じた音又は音声の発音を発音装置15に指示する。
【0053】
図9は、通知部137の指示に従い、表示装置14が表示する画像と発音装置15が発する音声を例示した図である。鉄道車両8の運転手は、表示装置14が表示する画像を見て、鉄道車両8に対し信号機9の信号現示及び信号現示が示す指示の内容を容易に知ることができる。また、鉄道車両8の運転手は、発音装置15が発音する音声を聞いて、鉄道車両8に対し信号機9の信号現示及び信号現示が示す指示の内容を容易に知ることができる。従って、運転手が信号機9を見逃したり、信号機9の信号現示を見誤ったりする危険性が低減される。
【0054】
なお、信号機9の信号現示が停止を指示し、鉄道車両8がその指示に従い信号機9の手前で停止している状態において、鉄道車両8の走行距離は変化しないため、距離算出部134は同じ走行距離を算出し続ける。その間、領域特定部135、信号現示特定部136及び通知部137は上述した処理を十分に短い時間間隔で繰り返す。従って、信号機9の信号現示が、例えば停止から進行を指示するものに変化すると、表示装置14は、表示する画像を
図9に示す画像から
図10に示す画像に変更する。また、発音装置15は、発音する音声を
図9に示す音声から
図10に示す音声に変更する。従って、鉄道車両8の運転手は、進行現示が変化したことに容易に気付くことができる。
【0055】
[変形例]
上述した実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下にそれらの変形例を示す。なお、以下に示す変形例の2以上が適宜組み合わされてもよい。
【0056】
(1)上述した実施形態において、車両の種類は鉄道車両であるものとしたが、予め定められた移動経路に従い走行する車両であれば、車両の種類は鉄道車両に限られない。例えば、専用走行道又は専用走行レーンを走行するBRT(Bus Rapid Transit)のバスや、道路上空に張られた架線から電機を動力として取りながら走行するトロリーバス等に、信号現示通知システム1が適用されてもよい。
【0057】
(2)上述した実施形態において、信号機テーブル(
図4)の「画像情報」欄には、信号機の画像から抽出された特徴量を示すデータが格納されるものとしたが、信号機の複数の信号現示の各々に応じた画像を表す画像データが格納されてもよい。その場合、信号現示特定部136は、例えば、撮影装置11が撮影した画像のうち領域特定部135により特定された領域の画像と、「画像情報」欄に格納されている画像データが表す画像とのマッチングを行い、撮影装置11が撮影した画像に写っている信号機の信号現示を特定すればよい。
【0058】
また、機械学習モデルを示すデータが「画像情報」欄に格納されてもよい。この場合、様々な信号機の種類毎に、その信号機の複数の信号現示の各々に関し、信号機の画像(写真)を説明変数とし、その画像が示す信号現示の指示内容(例えば、「停止」、「進行」等)を目的変数とする多数の教師データを機械学習させることにより、機械学習モデルを構築する。信号現示特定部136は、そのように構築した機械学習モデルに対し、撮影装置11が撮影した画像のうち領域特定部135により特定された領域の画像を説明変数として入力し、機械学習モデルが目的変数として出力する信号現示の指示内容の判定結果(例えば、「停止:○○%、進行:○○%」等)に基づき、撮影装置11が撮影した画像に写っている信号機の信号現示の指示内容を特定すればよい。
【0059】
(3)上述した実施形態において、鉄道車両8の走行距離は車速計により測定された車速を時間軸方向に積分して算出するものとしたが、走行距離の特定方法はこれに限られない。例えば、信号現示通知システム1が鉄道車両8の車軸の回転数に車輪の周長を乗じて走行距離を測定する距離計を備え、距離計が測定する走行距離を用いて、鉄道車両8の位置を特定してもよい。
【0060】
(4)上述した実施形態において、鉄道車両8の走行距離を算出するための基準位置は信号現示特定開始位置P0であるものとしたが、他の基準位置が採用されてもよい。例えば、A駅からB駅に走行する場合、A駅の停止位置を基準位置としてもよい。
【0061】
(5)上述した実施形態において、鉄道車両8の走行距離を算出するための基準位置は2つの駅間を鉄道車両8が走行する間、変化しないものとした。これに代えて、例えば、線路内の既知位置に配置された地上子との間で情報を送受信する車上子が鉄道車両8に搭載されている場合に、車上子が地上子を検知したタイミングにおける鉄道車両8の位置(その地上子の位置)が基準位置として用いられてもよい。
【0062】
(6)上述した実施形態において、鉄道車両8の位置は基準位置からの走行距離によって特定されるものとした。鉄道車両8の位置の特定方法はこれに限られない。例えば、信号現示通知システム1が、鉄道車両8に搭載されたGNSS(Global Navigation Satellite System)ユニットを備え、GNSSユニットが測定する自装置の地球上の位置(緯度、経度)により鉄道車両8の位置を特定してもよい。
【0063】
また、信号現示通知システム1が、鉄道車両8に搭載された前方の物体までの距離を測定する測距計を備え、測距計が、領域特定部135により特定される領域の方向にある物体(信号機)までの距離を測定することにより、例えば走行距離に基づき特定される鉄道車両8の位置よりも正確な位置を特定してもよい。この場合、データ処理装置13の距離算出部134は、走行距離に基づき鉄道車両8の位置をおおまかに特定し、そのおおまかな位置に基づき領域特定部135により特定される領域にある信号機までの距離が測距計により測定される。続いて、距離算出部134は、信号機の位置から測距計により測定された距離だけ手前の位置に応じた走行距離を、鉄道車両8の正確な走行距離として算出し、領域特定部135がその正確な走行距離に応じた領域を特定する。信号現示特定部136は、そのように領域特定部135により特定された領域の画像を用いて、信号現示の特定を行えばよい。
【0064】
(7)上述した実施形態において、データ処理装置13が行うものとした処理の少なくとも一部が、鉄道車両8に搭載されていないデータ処理装置により行われてもよい。この場合、信号現示通知システム1は、データ処理装置13との間で無線通信を行うデータ処理装置23(図示略)を備え、データ処理装置23が処理に必要なデータをデータ処理装置13がデータ処理装置23に送信し、データ処理装置23が処理結果をデータ処理装置13に送信すればよい。
【0065】
例えば、データ処理装置23が記憶部132、領域特定部135、信号現示特定部136を備え、データ処理装置13が、画像取得部131が撮影装置11から取得した画像データと、距離算出部134が算出した走行距離を示す走行距離データをデータ処理装置23に送信し、データ処理装置23が特定した信号現示の指示内容(例えば、「停止」、「進行」等)を示すデータをデータ処理装置13に送信し、データ処理装置13がデータ処理装置23から受信したデータが示す信号現示の指示内容に応じた画像の表示及び音声の発音を表示装置14及び発音装置15に指示してもよい。
【0066】
(8)運行スケジュールテーブル(
図5)が、運行ダイヤの乱れに伴い適宜、更新されてもよい。この場合、データ処理装置13は、運行ダイヤを管理している上位のシステムとの間で無線通信を行う通信部を備え、上位のシステムから送信されてくるデータに従い、運行スケジュールテーブルを更新すればよい。
【0067】
(9)上述した実施形態において、信号機テーブル(
図4)に格納される「走行距離」欄、「領域」欄、「画像情報」欄等のデータの準備時に用いられる鉄道車両及び撮影装置と、運用時に用いられる鉄道車両及び撮影装置は同じものとして説明したが、撮影装置の設置位置が同じであれば、それらが異なっていてもよい。
【0068】
(10)上述した実施形態においては、信号現示通知システム1が運転手に対し特定した信号現示に応じた通知を行う方法として、画像の表示及び音声の発音が採用されている。運転手に対する通知の方法はこれに限られず、例えば、画像の表示のみ、又は、音声の発音のみが行われてもよい。また、音声の発音に代えて、もしくは加えて、信号現示に応じて異なるアラーム音が発音されてもよい。
【0069】
(11)上述した実施形態においては、鉄道車両8が走行中であるか停止中であるかにかかわらず、撮影装置11による画像の撮影と、撮影装置11が撮影した画像を用いた信号現示の特定及び特定された信号現示に応じた通知が行われるものとした。これに代えて、鉄道車両8の停止が検知されたときにのみ、撮影装置11による画像の撮影と、撮影装置11が撮影した画像を用いた信号現示の特定及び特定された信号現示に応じた通知が行われてもよい。
【0070】
この変形例においては、「停止」を指示する信号現示に従い運転手が鉄道車両8を停止位置に停止させると、車速取得部133が車速計12から取得する車速データが示す車速が0km/hとなる。それをトリガとして、撮影装置11が画像の撮影を開始し、データ処理装置13が撮影装置11により撮影される画像を用いた信号現示の特定及び特定した信号現示に応じた通知の指示を行い、その指示に従い表示装置14と発音装置15が運転手に対する通知を行う。
【0071】
この変形例においては、「停止」を指示する信号現示が「進行」を指示する信号現示に変化したときに、表示装置14及び発音装置15がその変化を運転手に通知する。従って、運転手が信号の変化に気付かずに鉄道車両8の発車が遅れる、という不都合が回避される。
【0072】
また、この変形例においては、鉄道車両8が停止しているときに撮影装置11により撮影が行われるので、撮影装置11が撮影する画像における信号機9が写る領域が鉄道車両8の揺れによりずれることがない。従って、鉄道車両8の揺れにより誤って特定された領域の画像に基づき、信号現示の特定が失敗したり、誤った信号現示が特定されたりする、という不都合が回避される。
【0073】
(12)鉄道車両8が走行中に撮影装置11が撮影する画像において信号機9が写る領域は、鉄道車両8の揺れにより変化する。従って、撮影装置11による画像の撮影時の鉄道車両8の姿勢を測定し、測定した鉄道車両8の姿勢に基づき、領域特定部135が信号機9の写る領域を特定してもよい。
【0074】
この変形例において、信号現示通知システム1は、鉄道車両8に搭載された姿勢測定装置を備える。姿勢測定装置は、例えば、3軸加速度センサ及び3軸ジャイロセンサであるが、信号機テーブル(
図4)の「領域」欄のデータが示す領域に影響を与える鉄道車両8の姿勢の変化方向に関しその変化量を測定できる限り、他の種類のセンサ(例えば、1軸ジャイロセンサ等)が採用されてもよい。
【0075】
図11は、この変形例において、領域特定部135が信号機9の写る領域を特定する方法を説明するための図である。
図11(A)に示すように、鉄道車両8が傾いている場合、撮影装置11の姿勢は、標準姿勢F0(鉄道車両8の姿勢が停止時の姿勢であるときの撮影装置11の姿勢)から傾いてずれた姿勢F1である。姿勢測定装置は、姿勢F1を測定する。
図11(B)は、「領域」欄のデータが示す領域Rを破線の矩形で示した図である。この場合、
図11(C)に示すように、領域特定部135は、姿勢測定装置が測定した姿勢F1に基づき、画像の縮尺等を考慮して、領域Rを回転及び移動する。その結果、
図11(D)に示すように、姿勢F1の撮影装置11が撮影した画像における信号機9が写っている領域が正しく特定される。
【0076】
なお、領域特定部135は、鉄道車両8の姿勢(すなわち、撮影装置11の姿勢)に応じて、領域Rを回転及び移動する代わりに、撮影装置11が撮影した画像を回転及び移動してもよい。
【0077】
(13)上述のように、鉄道車両8が走行中に撮影装置11が撮影する画像において信号機9が写る領域は、鉄道車両8の揺れにより変化する。そこで、信号現示通知システム1が、鉄道車両8の揺れの大きさに応じて、信号現示の特定に用いる画像の領域の大きさを変更してもよい。
【0078】
この変形例において、信号現示通知システム1は、鉄道車両8に搭載された揺れ測定装置を備える。揺れ測定装置は、例えば、3軸加速度センサ及び3軸ジャイロセンサであるが、鉄道車両8の揺れの大きさを測定できる限り、他の種類のセンサ(例えば、1軸ジャイロセンサ等)が採用されてもよい。
【0079】
図12は、この変形例において、領域特定部135が信号機9の写る領域を特定する方法を説明するための図である。
図12(A)は、鉄道車両8が角度θ1の揺れ幅で揺れている場合を示しており、
図12(B)は、その場合に画像に信号機9が写る可能性のある領域Rを破線の矩形で示している。また、
図12(C)は、鉄道車両8が角度θ2(θ2>θ1)の揺れ幅で揺れている場合を示しており、
図12(D)は、その場合に画像に信号機9が写る可能性のある領域Rを破線の矩形で示している。
【0080】
図12(B)及び
図12(D)から明らかな様に、鉄道車両8の揺れが大きい程、画像に信号機9が写る可能性のある領域は大きくなる。そこで、この変形例においては、領域特定部135は、揺れ測定装置が測定した揺れの大きさが大きい程、信号機テーブルの「領域」欄のデータが示す領域を大きい拡大率で拡大する。これにより、鉄道車両8が揺れても、領域特定部135が特定する領域から信号機9がはみ出てしまう、という不都合が回避される。
【0081】
(14)上述のように、鉄道車両8が走行中に撮影装置11が撮影する画像において信号機9が写る領域は、鉄道車両8の揺れにより変化する。そこで、撮影装置11が順次撮影する複数の画像のうち、鉄道車両8の姿勢が停止時の姿勢と実質的に同じであるときに撮影した画像を用いて、信号現示の特定が行われてもよい。
【0082】
この変形例において、信号現示通知システム1は、変形例(12)と同様に、鉄道車両8に搭載された姿勢測定装置を備える。姿勢測定装置は、例えば、3軸加速度センサ及び3軸ジャイロセンサである。
【0083】
領域特定部135は、撮影装置11が順次撮影する画像のうち、姿勢測定装置が測定した鉄道車両8の姿勢が、鉄道車両8の停止時の姿勢と実質的に同じである姿勢を示すときに撮影された画像を選択し、選択した画像のうち、信号機テーブルの「領域」欄のデータが示す領域を、信号機9が写っている領域として特定する。
【0084】
なお、ここで鉄道車両8の姿勢が停止時の姿勢と実質的に同じ、とは、姿勢測定装置が測定した姿勢と、鉄道車両8の停止時の姿勢との差異が、許容できる所定の誤差範囲内であることを意味する。
【符号の説明】
【0085】
1…信号現示通知システム、8…鉄道車両、9…信号機、11…撮影装置、12…車速計、13…データ処理装置、14…表示装置、15…発音装置、131…画像取得部、132…記憶部、133…車速取得部、134…距離算出部、135…領域特定部、136…信号現示特定部、137…通知部。