(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-22
(45)【発行日】2026-01-06
(54)【発明の名称】光コネクタ用ブーツ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20251223BHJP
【FI】
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2024530283
(86)(22)【出願日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2023002781
(87)【国際公開番号】W WO2024004243
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2022103566
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】西口 慧祐
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-077736(JP,A)
【文献】特開昭58-060712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0175555(US,A1)
【文献】特開平05-297246(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239567(WO,A1)
【文献】米国特許第05781681(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コネクタの端部から延出する光ファイバを保護する光コネクタ用ブーツであって、
前記光ファイバが挿通される中心孔が形成されたブーツ本体と、
前記ブーツ本体の後端から延出し、前記中心孔と連通する筒形状のストレート部と、を備え、
前記ブーツ本体は、前記ブーツ本体の外周面に開口して前記中心孔に向けて延びるスリットを有し、
前記ストレート部の長さをL、前記ストレート部の断面係数をZ、前記ストレート部の縦弾性係数をEとしたとき、L[mm]/(Z[mm
3]×E[MPa])≧1.25[/mm
2MPa]が成立する、
光コネクタ用ブーツ。
【請求項2】
前記ブーツ本体の外周面は、第1テーパ部と、前記第1テーパ部の後端および前記ストレート部の前端に接続される第2テーパ部と、を有し、
前記第1テーパ部および前記第2テーパ部は、後方に向かうにしたがって外径が小さくなるように傾斜している、
請求項1に記載の光コネクタ用ブーツ。
【請求項3】
前記ブーツ本体と前記ストレート部とは、同一の素材によって一体的に形成されている、
請求項1または2に記載の光コネクタ用ブーツ。
【請求項4】
前記スリットは、前記ブーツ本体の全周に延びている、
請求項1
または2に記載の光コネクタ用ブーツ。
【請求項5】
前記ブーツ本体は、
前記スリットを含む2つのスリットと、
前記2つのスリットと前記中心孔との間に位置する2つの薄肉部と、を有し、
前記2つのスリットは、前記中心孔の長手方向において間隔を空けて配され、
前記2つの薄肉部のうち、後方に位置する薄肉部の径方向における厚みは、前方に位置する薄肉部の径方向における厚み以下である、請求項1
または2に記載の光コネクタ用ブーツ。
【請求項6】
前記ブーツ本体は、前記スリットを含む複数のスリットを有し、
前記複数のスリットは、前記中心孔の長手方向において間隔を空けて配され、
前記複数のスリットのうち最も後方に位置するスリットは、前記中心孔に連通している、
請求項1
または2に記載の光コネクタ用ブーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ用ブーツに関する。
本願は、2022年6月28日に、日本に出願された特願2022-103566号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光コネクタの品質を担保するため、従来から、テルコーディア規格に沿った試験(以下、テルコーディア試験という)が行われている。テルコーディア試験では、光コネクタから延出する光ファイバが複数の方向に曲げられる。そして、各方向において、光ファイバを曲げた際に生じる伝送損失(曲げ損失)が測定され、当該曲げ損失が基準を満たすか否か判定される。より具体的には、各方向において、光ファイバには低荷重および高荷重の2種類の引張荷重が加えられ、2種類の引張荷重の各々について曲げ損失が評価される。
【0003】
光ファイバコネクタの後端には、一般的に、曲げ損失を低減するためのブーツが取り付けられる。例えば、特許文献1には、径方向に延びる複数のスリットを、ブーツの長手方向に間隔を空けて配置する構成が開示されている。この構成によれば、光ファイバが曲がった際にスリットの壁面同士が当接するため、光ファイバの曲がりおよび当該曲がりによる曲げ損失を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テルコーディア試験を行う際、ブーツは荷重の大きさに応じて弾性的に屈曲する。つまり荷重が小さい場合、ブーツの屈曲も小さくなる。従来のブーツにおいては、荷重がある程度小さい場合、当該荷重によって光ファイバは径方向に曲がろうとする一方でブーツが十分に屈曲せず、光ファイバの曲がりよりもブーツの屈曲が小さくなる場合がある。この場合、ブーツの後端(自由端)において光ファイバに急激な曲げが生じ、曲げ損失が増大しやすい。このような現象により、テルコーディア試験において、高荷重における基準を満たしても、低荷重における基準を満たせない場合があった。
【0006】
ここで、上記の問題を解決するため、ブーツの長さを調整して、ブーツをより屈曲させやすくする方法も考えられる。しかしながら、当該方法を用いた場合、ブーツの長さが長くなってしまい、光コネクタの小型化が阻害されてしまう。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、低荷重試験における光ファイバの曲げ損失の抑制と、長さの低減と、を両立できる光コネクタ用ブーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の態様1は、光コネクタの端部から延出する光ファイバを保護する光コネクタ用ブーツであって、前記光ファイバが挿通される中心孔が形成されたブーツ本体と、前記ブーツ本体の後端から延出し、前記中心孔と連通する筒形状のストレート部と、を備え、前記ブーツ本体は、前記ブーツ本体の外周面に開口して前記中心孔に向けて延びるスリットを有し、前記ストレート部の長さをL、前記ストレート部の断面係数をZ、前記ストレート部の縦弾性係数をEとしたとき、L[mm]/(Z[mm3]×E[MPa])≧1.25[/mm2MPa]が成立する、光コネクタ用ブーツである。
【0009】
また、本発明の態様2は、態様1の光コネクタ用ブーツにおいて、前記ブーツ本体の外周面は、第1テーパ部と、前記第1テーパ部の後端および前記ストレート部の前端に接続される第2テーパ部と、を有し、前記第1テーパ部および前記第2テーパ部は、後方に向かうにしたがって外径が小さくなるように傾斜している、光コネクタ用ブーツである。
【0010】
また、本発明の態様3は、態様1又は態様2の光コネクタ用ブーツにおいて、前記ブーツ本体と前記ストレート部とは、同一の素材によって一体的に形成されている、光コネクタ用ブーツである。
【0011】
また、本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの光コネクタ用ブーツにおいて、前記スリットは、前記ブーツ本体の全周に延びている、光コネクタ用ブーツである。
【0012】
また、本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの光コネクタ用ブーツにおいて、前記ブーツ本体は、前記スリットを含む2つのスリットと、前記2つのスリットと前記中心孔との間に位置する2つの薄肉部と、を有し、前記2つのスリットは、前記中心孔の長手方向において間隔を空けて配され、前記2つの薄肉部のうち、後方に位置する薄肉部の径方向における厚みは、前方に位置する薄肉部の径方向における厚み以下である、光コネクタ用ブーツである。
【0013】
また、本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの光コネクタ用ブーツにおいて、前記ブーツ本体は、前記スリットを含む複数のスリットを有し、前記複数のスリットは、前記中心孔の長手方向において間隔を空けて配され、前記複数のスリットのうち最も後方に位置するスリットは、前記中心孔に連通している、光コネクタ用ブーツである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、低荷重試験における光ファイバの曲げ損失の抑制と、長さの低減と、を両立可能な光コネクタ用ブーツを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すII-II線に沿う断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る光コネクタ用ブーツを示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5A】
図3に示すVA-VA線に沿う断面図である。
【
図5B】
図3に示すVB-VB線に沿う断面図である。
【
図5C】
図3に示すVC-VC線に沿う断面図である。
【
図5D】
図3に示すVD-VD線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る光コネクタ用ブーツ10および光コネクタ用ブーツ10を用いた光コネクタ1について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る光コネクタ1は、光コネクタ用ブーツ10と、ハウジング60と、ケース70と、を備える。
図2に示すように、ハウジング60は、フェルール20と、保持部材30と、スプリングプッシュ40と、付勢部材50と、を収容している。以下、光コネクタ用ブーツ10を単に「ブーツ10」と称する場合がある。なお、光コネクタ1のうちブーツ10以外の構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。光コネクタ1は、光ファイバFを保持している。光ファイバFは、光コネクタ1の端部から延出している。
図2に示すように、ブーツ10は、ブーツ本体11およびストレート部12を有する。ブーツ本体11およびストレート部12は筒形状である。ブーツ本体11は中心孔13を有し、ストレート部12は連通孔17を有する。連通孔17は中心孔13に連通している。中心孔13および連通孔17には、光ファイバFが挿通される。
【0018】
(方向定義)
ここで、本実施形態では、ブーツ10の中心孔13の中心軸線Oと平行な方向をX方向、軸方向X、または長手方向Xと称する。長手方向Xに沿って、光コネクタ1から光ファイバFが延出する向きを、-Xの向きまたは後方と称する。連通孔17は後方に向けて開口している。-Xの向きとは反対の向きを、+Xの向きまたは前方と称する。長手方向Xに垂直な断面を、横断面と称する。長手方向Xから見て、中心孔13の中心軸線Oに直交する方向を、径方向と称する。径方向に沿って、中心軸線Oに接近する向きを、径方向内側と称し、中心軸線Oから離反する向きを、径方向外側と称する。長手方向Xから見て、中心軸線Oまわりに周回する方向を、周方向と称する。以下、長手方向Xにおける寸法を、単に「長さ」と称する場合がある。
【0019】
図2に示すように、フェルール20は、ファイバ孔21が開口した接続端面20aを有する。本実施形態に係る光ファイバFは、ファイバ孔21に挿通されてファイバ孔21内に固定される内蔵ファイバF1と、内蔵ファイバF1の後端に接続された接続ファイバF2と、を含む。内蔵ファイバF1と接続ファイバF2とは、例えば融着によって接続されている。内蔵ファイバF1は、内蔵ファイバF1の先端が接続端面20aに位置した状態で、ファイバ孔21内に固定されている。
【0020】
保持部材30には、前方に開口する保持孔31と、保持孔31に開口して後方に延びる貫通孔32と、が形成されている。保持孔31にフェルール20の後端部が挿入されることにより、保持部材30は、フェルール20を保持している。貫通孔32には、光ファイバF(内蔵ファイバF1)が挿通される。保持部材30は、後方に向く被付勢面30aを有する。本実施形態に係る保持部材30の後端部には、保持部材30の外周面から径方向外側に向けて突出する複数の突起33が形成されている。
【0021】
スプリングプッシュ40は、保持部材30の後方に配置される。スプリングプッシュ40には、スプリングプッシュ40を長手方向Xに貫通する貫通孔41が形成されている。貫通孔41には、光ファイバF(接続ファイバF2)が挿通される。スプリングプッシュ40は、前方を向く付勢面40aを有する。スプリングプッシュ40の後端部には、スプリングプッシュ40の外周面から径方向外側に向けて突出する複数の固定突起42が形成されている。詳細な図示は省略するが、複数の固定突起42は、周方向に間隔を空けて配されている。
【0022】
ハウジング60は、筒状の部材であり、フェルール20と、保持部材30と、スプリングプッシュ40と、を収容している。また、ケース70は、筒状の部材であり、ハウジング60を収容している。詳細な図示は省略するが、スプリングプッシュ40は、ハウジング60内に固定されている。
【0023】
付勢部材50は、保持部材30の被付勢面30aとスプリングプッシュ40の付勢面40aとの間に挟まれている。付勢部材50は、被付勢面30aと付勢面40aとの間で圧縮されることで、保持部材30を介して、フェルール20を前方に向けて付勢する。付勢部材50としては、例えばコイルばねを用いることができる。また、本実施形態に係るハウジング60の前端部には、ハウジング60の内周面から径方向内側に向けて突出する規制突起61が形成されている。規制突起61は、保持部材30の前面に当接し、保持部材30およびフェルール20がハウジング60から前方に脱落するのを防止している。
【0024】
本実施形態において、内蔵ファイバF1と接続ファイバF2とが接続された接続点Pは、熱収縮スリーブ80によって保護されている。熱収縮スリーブ80は、加熱によって収縮可能な、筒状の部材である。熱収縮スリーブ80は、内部に内蔵ファイバF1と接続ファイバF2とが接続された接続点Pが位置するように熱収縮されている。また、本実施形態に係る熱収縮スリーブ80は、保持部材30の突起33を締め付けるように熱収縮されており、これによって保持部材30の後端部に固定されている。
図2の例に示すように、熱収縮スリーブ80の内部には、接続点Pに添えるように配置された抗張力体81が収容されていてもよい。この構成によれば、より確実に接続点Pを保護することができる。
【0025】
ブーツ10は、光コネクタ1から後方に延出する光ファイバF(接続ファイバF2)を保護する役割を有する。より具体的に、ブーツ10は、光ファイバFに対して径方向に向けた引張荷重が加わった際に、光ファイバFの曲がりに追従して弾性変形するように構成されている(
図6も参照)。ブーツ10は、光ファイバFの曲がりを弾性的に受け止め、光ファイバFの曲がりを緩やかにする役割を有する。言い換えれば、ブーツ10は、光ファイバFの曲率を低減する役割を有する。
【0026】
図2、
図3、および
図4に示すように、ストレート部12は、ブーツ本体11の後端から後方に延出している。ブーツ本体11およびストレート部12は、弾性変形可能に構成されている。詳細は後述するが、ブーツ本体11は、光ファイバFに高荷重が加わった際に当該荷重を弾性的に受け止め、光ファイバFの曲がりを抑制する役割を果たす。ストレート部12は、光ファイバFに低荷重が加わった際に当該荷重を弾性的に受け止め、光ファイバFの曲がりを抑制する役割を果たす。
【0027】
本実施形態において、ブーツ本体11とストレート部12とは同一の素材によって一体的に形成されている。ブーツ本体11およびストレート部12を形成する素材としては、例えばエラストマー樹脂等を採用することができる。エラストマー樹脂の例としては、TPE(ThermoPlastic Elastomer、熱可塑性エラストマー)、TPS(Thermoplastic Styrenic Elastomer、スチレン系熱可塑性エラストマー)、TPV(Thermoplastic vulcanizates、動的架橋型熱可塑性エラストマー)等が挙げられる。
【0028】
図5A~
図5Dに示すように、横断面視において、中心孔13および連通孔17は略円形状を有する。なお、本明細書において文言「略円形状」には、製造誤差や弾性変形を無視すれば円形状とみなせる場合も含まれる。中心孔13は、径方向におけるブーツ本体11の中心に位置する。連通孔17は、径方向におけるストレート部12の中心に位置する。
図4に示すように、本実施形態に係る連通孔17の直径は、長手方向XにおいてΦ4で略一定である。言い換えれば、本実施形態に係るストレート部12の内径は、長手方向XにおいてΦ4で略一定である。なお、本明細書において文言「略一定」には、製造誤差や弾性変形を無視すれば一定とみなせる場合も含まれる。ストレート部12の内径Φ4は、例えば1.6mm程度である。
【0029】
図2に示すように、ブーツ本体11には、前方に向けて開口する挿入孔15が形成されている。挿入孔15は中心孔13に連通している。挿入孔15には、スプリングプッシュ40の後端部が挿入される。
図3に示すように、ブーツ本体11には、挿入孔15に開口してブーツ本体11の外周面まで径方向外側に延びる複数の固定孔15aが形成されている。本実施形態において、固定孔15aの数は、前述した固定突起42の数と同一である。複数の固定孔15aは、周方向において間隔を空けて配されている。
図2に示すように、本実施形態に係るブーツ本体11は、複数の固定突起42が複数の固定孔15aに対して一つずつ挿入されることにより、スプリングプッシュ40の後端部に取り付けられている。
【0030】
図4に示すように、本実施形態に係るブーツ本体11の外周面は、非テーパ部11cと、非テーパ部11cの後端に接続される第1テーパ部11aと、第1テーパ部11aの後端およびストレート部12の前端に接続される第2テーパ部11bと、を有する。
図5A~
図5Cに示すように、非テーパ部11c、第1テーパ部11a、および第2テーパ部11bの各々は、横断面視において略円形状を有する。また、
図5Dに示すように、ストレート部12の外周面は、横断面視において略円形状を有する。
【0031】
図4に示すように、非テーパ部11cの外径は、長手方向Xにおいて略一定である。第1テーパ部11aおよび第2テーパ部11bは、後方に向かうにしたがって外径(直径)が小さくなるように傾斜している。また、長手方向Xに対する第2テーパ部11bの傾きは、長手方向Xに対する第1テーパ部11aの傾きよりも大きい。また、ストレート部12の外径は長手方向Xにおいて略一定である。非テーパ部11c(第1テーパ部11aの前端)の外径Φ1は、例えば6.2mm程度である。第1テーパ部11aの後端(第2テーパ部11bの前端)の外径Φ2は、例えば4.06mm程度である。ストレート部12(第2テーパ部11bの後端)の外径Φ3は、例えば1.6mm程度である。また、第1テーパ部11aの長さ(長手方向Xにおける寸法)L1は、例えば11.3mm程度である。第2テーパ部11bの長さL2は、例えば0.8mm程度である。ストレート部12の長さLは、例えば2.5mm程度である。
【0032】
図3および
図4に示すように、ブーツ本体11には、ブーツ本体11の外周面に開口し、中心孔13に向けて径方向内側に延びる複数(図示の例において6つ)のスリット14が形成されている。複数のスリット14は、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。以下、6つのスリット14を、前方から後方に向かう順に、各々、第1スリット14A、第2スリット14B、第3スリット14C、第4スリット14D、第5スリット14E、および第6スリット14Fと称する。本実施形態において、第1スリット14Aは非テーパ部11cに開口している。第2スリット14B、第3スリット14C、第4スリット14D、および第5スリット14Eは、第1テーパ部11aに開口している。第6スリット14Fは、第1テーパ部11aと第2テーパ部11bとの境界に開口している。
図3に示すように、各スリット14A~14Fは、ブーツ本体11の全周に延びている。言い換えれば、各スリット14A~14Fは、ブーツ本体11の外周面に、環状に開口している。
【0033】
ブーツ本体11にスリット14A~14Fが形成されていることにより、ブーツ本体11は、前述した機能、すなわち、光ファイバFに高荷重が加わった際に当該荷重を弾性的に受け止めるとの機能を発揮することができる。具体的には、光ファイバFに対して高荷重が加わり、ブーツ本体11が一定以上屈曲すると、
図6に示すように、各スリット14A~14Fにおいて、スリット14A~14Fの壁面同士が長手方向Xにおいて当接する。スリット14A~14Fの壁面同士が当接することにより、ブーツ本体11およびブーツ本体11に挿通されている光ファイバFの曲げが抑制される。また、各スリット14A~14Fがブーツ本体11の全周に延びていることにより、ブーツ本体11の曲がりやすさの周方向依存性(曲げ方向性)を低減することができる。
【0034】
また、
図4に示すように、スリット14A~14Fが形成されていることにより、ブーツ本体11のうちスリット14A~14Fが形成された部位の肉厚(ブーツ本体11の外周面と中心孔13との径方向における距離)は、スリット14A~14Fが形成されていない部位の肉厚よりも、小さくなっている。以下、ブーツ本体11のうち径方向において複数のスリット14A~14Fと中心孔13との間に位置する複数の部位の各々を、薄肉部16と称する。特に、径方向において第1スリット14Aと中心孔13との間に位置する部位を第1薄肉部16Aと称し、第2スリット14Bと中心孔13との間に位置する部位を第2薄肉部16Bと称する。同様に、第3スリット14C~第6スリット14Fと中心孔13との間に位置する部位を、各々、第3薄肉部16C~第6薄肉部16Fと称する(
図5Cも参照)。
【0035】
図5Aは
図3に示すVA-VA線に沿う断面図であり、長手方向において第1スリット14Aが形成された領域の断面図である。
図5Aに示すように、第1スリット14Aは中心孔13に連通していない。また、第1薄肉部16Aは、横断面視において略円環状の形状を有する。詳細な図示は省略するが、第2スリット14B~第4スリット14Dの各々は、第1スリット14Aと同様に、中心孔13に連通していない。第2薄肉部16B~第4薄肉部16Dの各々は、第1薄肉部16Aと同様に、横断面視において略円環状の形状を有する。なお、本明細書において文言「略円環状」には、製造誤差や弾性変形を無視すれば円環状とみなせる場合も含まれる。
【0036】
図5Bは
図3に示すVB-VB線に沿う断面図であり、長手方向において第5スリット14Eが形成された領域の断面図である。
図5Bに示すように、第5スリット14Eは、スリット14A~14Dと異なり、周方向における一部において中心孔13に連通している。これにより、第5薄肉部16Eは横断面視において環状の形状を有していない。具体的に、本実施形態に係る第5薄肉部16Eは、周方向において互いに離隔した2つの部分16EA、16EBを含んでいる。言い換えれば、第5薄肉部16Eは、周方向における一部において肉抜きされた円環状の形状を有する。
図5Cは
図3に示すVC-VC線に沿う断面図であり、長手方向において第6スリット14Fが形成された領域の断面図である。
図5Cに示すように、第6スリット14Fは、第5スリット14Eと同様に、周方向における一部において中心孔13に連通している。これにより、第6薄肉部16Fは横断面視において環状の形状を有さず、第6薄肉部16Fは周方向において互いに離隔した2つの部分16FA、16FBを含んでいる。言い換えれば、第6薄肉部16Fは周方向における一部において肉抜きされた円環状の形状を有する。
【0037】
上記のように、ブーツ本体11の後端部に位置するスリット14E、14Fが中心孔13に連通する構成を採用することで、ブーツ本体11の後端部の剛性を低減させることができる。これにより、ブーツ本体11の後側部分がブーツ本体11の前側部分に比してより径方向に屈曲しやすくなり、荷重印加時における光ファイバFの曲率を低減しやすくなる。なお、
図5Bおよび
図5Cに示すように、本実施形態において、第5薄肉部16EA、16EBの位置と第6薄肉部16FA、16FBの位置とは、周方向において90°ずれている。これにより、薄肉部16E、16Fが周方向における一部において肉抜きされていることに起因するブーツ本体11の曲げ方向性の増大を抑制することができる。
【0038】
また、
図4に示すように、本実施形態に係る薄肉部16A~16Fは、後方に位置する薄肉部16ほど漸次径方向における厚みが小さくなるように設計されている。薄肉部16の径方向における厚みを、以下、「薄肉部16の厚み」とも呼ぶ。言い換えれば、長手方向Xにおいて隣接する2つの薄肉部16の各々について、2つの薄肉部16のうち後方に位置する薄肉部16の厚みは、前方に位置する薄肉部16の厚み以下である。本実施形態においては、第1薄肉部16A~第6薄肉部16Fの外径を各々ΦA~ΦF(
図5Cも参照)とするとき、ΦA≧ΦB≧ΦC≧ΦD≧ΦE≧ΦFが成立する。第1薄肉部16Aの外径ΦAは、例えば4.8mm程度である。第2薄肉部16Bの外径ΦBは、例えば2.6mm程度である。第3薄肉部16Cの外径ΦCは、例えば2.2mm程度である。第4薄肉部16Dの外径ΦDは、例えば2.2mm程度である。第5薄肉部16Eの外径ΦEは、例えば1.6mm程度である。第6薄肉部16Fの外径ΦF(
図5C参照)は、例えば1.6mm程度である。
【0039】
後方に位置する薄肉部16ほど漸次厚みが小さくなる構成を採用することにより、ブーツ本体11において、前方から後方に向かうにしたがって漸次剛性が下がるような剛性分布を実現することができる。これにより、荷重印加時における光ファイバFの曲率をより効果的に抑制することができる。
【0040】
ところで、光ファイバFに加えられる引張荷重が小さい場合、ブーツ本体11の屈曲も小さくなる。仮にブーツ10がブーツ本体11しか有していないとすると、引張荷重がある程度小さい場合、当該荷重によって光ファイバFは径方向に曲がろうとする一方でブーツ本体11が十分に屈曲せず、光ファイバFの曲がりよりもブーツ本体11の屈曲が小さくなる場合がある。この場合、ブーツ本体11の後端(自由端)において光ファイバFに急激な曲げが生じ、曲げ損失が増大しやすい。
【0041】
そこで、本実施形態に係るブーツ本体11は、ブーツ本体11の後端に接続されたストレート部12を有している。ストレート部12は、光ファイバFに低荷重が加えられた場合において、ブーツ本体11の後端における光ファイバFを弾性的に受け止め、光ファイバFの曲率の増大を抑制する役割を果たす。
【0042】
本願発明者らが鋭意検討した結果、ストレート部12の長さL、ストレート部12の断面係数Z、およびストレート部12の縦弾性係数(ヤング率)Eを調節することで、低荷重印加時における光ファイバFの曲げ損失を抑制できることが判った。長さLの値を大きくすることで、光ファイバFとストレート部12との接触面積を大きくし、低荷重印加時においても光ファイバFの曲げを抑制しやすくなると考えられる。また、断面係数Zおよび縦弾性係数Eの値を小さくすることで、ストレート部12が屈曲しやすなり、光ファイバFの曲がりに追従するようにストレート部12を屈曲させることができると考えられる。
【実施例】
【0043】
以下、具体的な実施例を用いて、ストレート部12の長さL、断面係数Z、縦弾性係数Eに関して成立することが好ましい条件について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0044】
(実施例1)
ストレート部12の長さLと、ストレート部12の肉厚と、が各々異なる複数のブーツ10を用意した。複数のブーツ10の間で、ストレート部12の縦弾性係数Eは7.2MPaで共通であり、ストレート部12の内径Φ4は0.9mmで共通であった。なお、「ストレート部12の肉厚」とは、連通孔17とストレート部12の外周面との間の径方向における距離(
図4参照)であり、(Φ3-Φ4)/2で表される。
【0045】
各ブーツ10を用いて光コネクタ1を組み立て、各光コネクタ1についてテルコーディア試験を行った。
図6に示すように、テルコーディア試験においては、光ファイバFに対して長手方向Xに垂直な方向(すなわち、径方向)に荷重を印加した。より具体的に、長手方向Xに垂直な8方向の各々に高荷重(0.7kg)および低荷重(0.25kg)の2種類の荷重を印加し、2種類の荷重の各々について曲げ損失を評価した。また、各光コネクタ1について、光ファイバFに1gの荷重を印加した際に、ストレート部12の後端(自由端)の位置が径方向においてどれだけ変位するかシミュレーションを行った。また、各光コネクタ1(ストレート部12)について、次の式aで定義されるパラメータAの値を算出した。
a:A[/mm
2MPa]=L[mm]/(Z[mm
3]×E[MPa])
L:ストレート部12の長さ
Z:ストレート部12の断面係数
E:ストレート部12の縦弾性係数
表1は、上記試験の結果と、シミュレーションの結果と、パラメータAの算出値と、をまとめた表である。
【0046】
【0047】
表1においては、ストレート部12の長さLと肉厚との計36個の組合せの各々について、上段にパラメータAの算出値を、中段にストレート部12の変位のシミュレーション値を、下段に低荷重試験における曲げ損失の評価結果を、各々示している。「低荷重試験における曲げ損失の評価結果」は、8方向における曲げ損失の最大値が0.50dB以下であった場合を「良」とし、曲げ損失の最大値が0.50dBを超えた場合を「不良」とした。なお、高荷重試験における曲げ損失の評価結果は全てのブーツ10について「良」であったため、表示を省略している。また、本実施形態に係るストレート部12は略円筒状の形状を有するため、断面係数Zは以下の式bで算出した。表2は、断面係数Zの算出値をまとめた表である。なお、上述の通り、複数のブーツ10では内径Φ4が0.9mmで共通しているため、Φ3の大きさを変更することで肉厚を変更している。
b:Z=(π/32)×(Φ34-Φ44)/Φ3
【0048】
【0049】
表1に示すように、パラメータAの値が大きいほど、1g荷重印加時においてストレート部12が大きく変位している。つまり、パラメータAとストレート部12の変位とには正の相関が認められる。これは、パラメータAの値を大きくすることで、例えば1g等の極めて低い荷重が光ファイバFに印加された際においても、ストレート部12を、光ファイバFの曲がりに追従するように屈曲させることができるということを裏付けている。
【0050】
また、表1に示すように、パラメータAの値が1.25以上のブーツ10においては、低荷重試験における曲げ損失の評価が「良」となっている。一方、パラメータAの値が1.25未満のブーツ10においては、低荷重試験における曲げ損失の評価が「不良」となっている。このように、パラメータAの値を1.25以上とすることにより、低荷重試験における光ファイバFの曲げ損失を抑制することができる。
【0051】
(実施例2)
上記実施例(実施例1)と同様に、ストレート部12の長さLおよび肉厚が各々異なり、内径Φ4が0.9mmで共通する複数のブーツ10を用意した。本実施例においては、上記実施例(実施例1)と異なり、複数のブーツ10の間でストレート部12の縦弾性係数Eは3.9MPaで共通であった。表3は、本実施例に係るブーツ10について、低荷重試験の結果と、シミュレーションの結果と、パラメータAの算出値と、をまとめた表である。
【0052】
【0053】
本実施例においても、パラメータAの値が大きいほど、1g荷重印加時においてストレート部12が大きく変位している。また、パラメータAの値が1.25以上のブーツ10においては、低荷重試験における曲げ損失の評価が「良」となっている。一方、パラメータAの値が1.25未満のブーツ10においては、低荷重試験における曲げ損失の評価が「不良」となっている。つまり、実施例1とはストレート部12の縦弾性係数Eが異なる本実施例においても、パラメータAの値を1.25以上とすることにより、低荷重試験における光ファイバFの曲げ損失を抑制することができる。
【0054】
以上を踏まえて、本実施形態では、光コネクタ1の端部から延出する光ファイバFを保護する光コネクタ用ブーツ10であって、光ファイバFが挿通される中心孔13が形成されたブーツ本体11と、ブーツ本体11の後端から延出し、中心孔13と連通する筒形状のストレート部12と、を備え、ブーツ本体11は、ブーツ本体11の外周面に開口して中心孔13に向けて延びるスリット14を有し、ストレート部12の長さをL、ストレート部12の断面係数をZ、ストレート部12の縦弾性係数をEとしたとき、L[mm]/(Z[mm3]×E[MPa])≧1.25[/mm2MPa]が成立する、光コネクタ用ブーツ10を提案する。
【0055】
この構成によれば、低荷重試験における光ファイバFの曲げ損失を抑制することができる。また、L/ZE≧1.25を実現するにあたっては、ストレート部12の長さLを増大させる方法以外に、ストレート部12の断面係数Zまたは縦弾性係数Eを低減する方法も採用できる。つまり、ストレート部12の断面係数Zおよび縦弾性係数Eを調整することで、ストレート部12の長さLの値を過大としなくとも、光ファイバFの曲げ損失を抑制することができる。これにより、光ファイバFの曲げ損失の抑制と、ブーツ10の長さの低減と、を両立することができる。
【0056】
また、ブーツ10の外周面は、第1テーパ部11aと、第1テーパ部11aの後端およびストレート部12の前端に接続される第2テーパ部11bと、を有し、第1テーパ部11aよび第2テーパ部11bは、後方に向かうにしたがって外径が小さくなるように傾斜していてもよい。この構成によれば、ブーツ本体11において、前方から後方に向かうにしたがって漸次断面係数が小さくなるような断面係数分布を実現することができる。これにより、荷重印加時における光ファイバFの曲率を効果的に低減することができる。さらに、第2テーパ部11bが設けられていることで、ブーツ本体11とストレート部12との接続部で不連続な曲げが生じることを抑制できる。
【0057】
また、ブーツ本体11とストレート部12とは、同一の素材によって一体的に形成されていてもよい。この構成によれば、ブーツ本体11およびストレート部12を有するブーツ10の製造を容易に行うことができる。
【0058】
また、スリット14は、ブーツ本体11の全周に延びていてもよい。この構成によれば、ブーツ本体11(ブーツ10)の曲げ方向性を低減することができる。
【0059】
また、ブーツ本体11は、複数のスリット14A~14Fと、複数のスリット14A~14Fと中心孔13との間に位置する複数の薄肉部16A~16Fと、を有し、複数のスリット14A~14Fは長手方向Xにおいて間隔を空けて配され、長手方向Xにおいて隣接する2つの薄肉部16の各々について、2つの薄肉部16のうち後方に位置する薄肉部16の厚みは、前方に位置する薄肉部16の厚み以下であってもよい。この構成によれば、ブーツ本体11において、前方から後方に向かうにしたがって漸次剛性が小さくなるような剛性分布を実現することができる。これにより、荷重印加時における光ファイバFの曲率をより効果的に低減することができる。
【0060】
また、複数のスリット14A~14Fのうち最も後方に位置するスリット14Fは、中心孔13に連通していてもよい。この構成によれば、ブーツ本体11の後端部の剛性を低減させることができる。これにより、ブーツ本体11の後側部分がブーツ本体11の前側部分に比してより径方向に屈曲しやすくなり、荷重印加時における光ファイバFの曲率をより低減しやすくなる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
例えば、ブーツ本体11とストレート部12とは別の素材によって形成されていてもよい。
【0063】
また、ブーツ本体11が有するスリット14の数および位置は適宜変更可能である。また、中心孔13に連通するスリット14の数および位置は適宜変更可能である。中心孔13に連通するスリット14が存在しなくてもよい。例えば、上述の実施形態において、第5スリット14Eの第5薄肉部16Eおよび第6スリット14Fの第6薄肉部16Fは、横断面視において略円環状の形状を有していてもよい。
【0064】
また、長手方向Xにおいて隣接する2つの薄肉部16の組であって、「後方に位置する薄肉部16の厚みが前方に位置する薄肉部16の厚み以下」との関係を満たすものは、少なくとも1組あればよい。あるいは、このような2つの薄肉部16の組が存在しなくてもよい。
【0065】
あるいは、ブーツ本体11にスリット14および薄肉部16が形成されていなくてもよい。
【0066】
また、ブーツ本体11の外周面は第1テーパ部11aまたは第2テーパ部11bを有していなくてもよい。
【0067】
また、前記実施形態における各種の寸法L、L1、L2、Φ1~Φ3、ΦA~ΦFは全て一例であり、適宜変更可能である。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…光コネクタ 10…ブーツ(光コネクタ用ブーツ) 11…ブーツ本体 11a…第1テーパ部 11b…第2テーパ部 12…ストレート部 13…中心孔 14…スリット 16…薄肉部 X…長手方向