(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-23
(45)【発行日】2026-01-07
(54)【発明の名称】肉様食品
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20251224BHJP
A23L 11/00 20250101ALI20251224BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20251224BHJP
【FI】
A23J3/00 503
A23L11/00 Z
A23L13/00 Z
(21)【出願番号】P 2021173272
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2024-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】白木 孝憲
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-063207(JP,A)
【文献】特開昭49-012061(JP,A)
【文献】特開昭52-072853(JP,A)
【文献】米国特許第04169161(US,A)
【文献】国際公開第2021/100766(WO,A1)
【文献】米国特許第04166138(US,A)
【文献】米国特許第04197324(US,A)
【文献】特開昭55-127973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 3/00- 3/34
A23L 11/00- 11/70
A23L 13/00- 13/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全重量に対して
40~60重量%の水と
、全重量に対して固形分換算で10重量%未満の油分と
、全重量に対して固形分換算で10~50重量%の炭水化物とを含む第1の組織状大豆蛋白素材からなる低脂質性蛋白シートと、全重量に対して
40~60重量の水と
、全重量に対して固形分換算で
10~15.4重量%の油分と
、全重量に対して固形分換算で10~50重量%の炭水化物とを含む第2の組織状大豆蛋白素材からなる高脂質性蛋白シートとが積層されてなることを特徴とする肉様食品。
【請求項2】
前記低脂質性蛋白シートと前記高脂質性蛋白シートとが接着剤を介して積層されている、請求項1に記載の肉様食品。
【請求項3】
前記低脂質性蛋白シートの少なくとも一方の主面には複数の溝が形成されている、請求項1または2に記載の肉様食品。
【請求項4】
前記高脂質性蛋白シートの少なくとも一方の主面には複数の溝が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の肉様食品。
【請求項5】
前記低脂質性蛋白シートと前記高脂質性蛋白シートとが積層された積層蛋白シートが巻回されてなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の肉様食品。
【請求項6】
前記低脂質性蛋白シートと前記高脂質性蛋白シートとが積層された積層蛋白シートが九十九折りされてなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の肉様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、畜肉原料を取り巻く社会情勢は厳しくなる現状があり、畜肉の代替原料あるいは、増量剤として大豆蛋白質等の植物性蛋白が使用される傾向が強まっている。
【0003】
植物性蛋白の中でも、脱脂大豆や粉末状大豆蛋白素材を原料として組織化した組織状大豆蛋白は多様な用途に用いられており、ハンバーグやミートボール等の畜肉加工食品には挽肉の増量剤として組織状大豆蛋白が用いられている。
一方、組織状大豆蛋白を用いた畜肉様食品の食感の特徴として、咀嚼時のほぐれが天然の畜肉に比べて劣るという点が挙げられる。特に肉繊維のほぐれ感を充分に再現できないという問題があり、このような組織状大豆蛋白の食感改良について様々な研究がなされてきた。
また、天然の畜肉加工食品中には、脂身が含まれており、咀嚼時に脂身から溶けた油分が口の中に広がるのであるが、このような脂身を再現するため、組織状大豆蛋白を用いた畜肉様食品にも油脂を含ませるべく、種々の研究がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、組織化微粉植物タン白材料および水を混合して、約35~50%の総固形含量を有するスラリーを形成し、スラリーを約100℃以上の温度に急速加熱して、タン白を急速組織化し、遠心力による正圧下で約100℃以上の温度の加熱スラリーを加工管に導入し、そこで組織化タン白が急速凝固して加工管内に相互に結合した組織化タン白の明白な平行層を有する連続タン白塊を形成し、層は管を通るスラリー流の方向に一般に直角に延び、組織化凝固タン白を、組織化層が充分に凝固して加工管から排出時その積層構造を保有するしっかりした製品を形成するまで加工管内に保留し、積層組織化タン白塊を加工管から排出させ、そして組織化タン白塊を所望寸法の片に切断し、片は相互に結合した組織化植物タン白の複数の明白な層を有することを特徴とする、積層肉様外観およびテクスチャーを有する組織化植物タン白製品の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、油脂を含む大豆蛋白含有原料を押出機を用いて組織化する方法において、組織化品のpHが7.0~8.0となるよう原料中にアルカリ性物質を添加することを特徴とする含脂組織状膨化食品素材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-327411号公報
【文献】特開2003-18964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、特許文献1、特許文献2に開示されるような組織状植物蛋白質を用いた畜肉様食品について、その食感が、天然の畜肉が持つ多様性(不均一感、ほぐれ感)がなく、人工物の食感を感じてしまうことを知見した。
本発明の目的は、咀嚼時に天然の畜肉が持つ多様な食感を再現した畜肉様食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天然の畜肉が持つ外観と多様な食感と味覚を忠実に再現できる肉様食品である。上記目的を達成するための本発明は、以下の通りである。
【0009】
すなわち、本発明の肉様食品は、全重量に対して40重量%以上の水と全重量に対して固形分換算で10重量%未満の油分とを含む第1の組織状大豆蛋白素材からなる低脂質性蛋白シートと、全重量に対して40重量%以上の水と全重量に対して固形分換算で10重量%以上の油分とを含む第2の組織状大豆蛋白素材からなる高脂質性蛋白シートとが積層されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の肉様食品は、全重量に対して40重量%以上の水と全重量に対して固形分換算で10重量%未満の油分とを含む第1の組織状大豆蛋白素材からなる低脂質性蛋白シートと、全重量に対して40重量%以上の水と全重量に対して固形分換算で10重量%以上の油分とを含む第2の組織状大豆蛋白素材からなる高脂質性蛋白シートとが積層されている。このため、本発明の肉様食品は、天然の畜肉のような脂身の層が視認され、天然の畜肉の外観を再現できる。また、本発明の肉様食品の咀嚼時に高脂質性蛋白シートから油分が溶け出して、あたかも脂身を咀嚼したかのような、食感と味覚を体感することができる。
【0011】
本発明における低脂質性蛋白シートを構成する第1の組織状大豆蛋白素材および高脂質性蛋白シートを構成する第2の組織状大豆蛋白素材は、それぞれ第1の組織状大豆蛋白素材または第2の組織状大豆蛋白素材の全重量に対して40重量%以上の水を含み、天然の畜肉のような弾力を再現できる。また、高脂質性蛋白シートで使用される第2の組織状大豆蛋白素材は、固形分換算で10重量%以上の油分を含むため、ぱさつきが少ない食感を実現できる。また、低脂質性蛋白シートで使用される第1の組織状大豆蛋白素材は、固形分換算で10重量%未満の油分を含むため、赤身肉の食感を実現できる。
【0012】
本発明においては、低脂質性蛋白シートと、高脂質性蛋白シートとを接着剤を介して積層、接着してもよい。接着剤としては、蛋白質同士を結合させる酵素、例えばトランスグルタミナーゼやカゼインナトリウム等を使用することが望ましい。
【0013】
本発明において使用される低脂質性蛋白シートは、シート状であるため、表面および裏面に主面を持つ。上記低脂質性蛋白シートの少なくとも一方の主面には、複数の溝が形成されていることが望ましい。本発明の肉様食品が咀嚼時にほろほろと崩れて、天然の畜肉の筋繊維が咀嚼時に不均一に解れる食感を再現できるからである。
本発明において使用される高脂質性蛋白シートは、シート状であるため、表面および裏面に主面を持つ。上記高脂質性蛋白シートの少なくとも一方の主面には、複数の溝が形成されていることが望ましい。本発明の肉様食品が咀嚼時にほろほろと崩れて、天然の畜肉の筋繊維が咀嚼時に不均一に解れる食感を再現できるからである。
低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートの主面に対して、例えば円環状の刃(角刃、包丁刃等)が複数並列に設けられたローラー等を押し付けることで、主面に複数の溝を形成することができる。
【0014】
本発明の肉様食品においては、上記低脂質性蛋白シートと、上記高脂質性蛋白シートとが積層された積層蛋白シートを巻回してロール状に積層してもよい。この場合、低脂質性蛋白シートと高脂質性蛋白シートとの間だけでなく、上記積層蛋白シートの主面にも接着剤を付与した後、積層蛋白シートを巻回してロール状に積層してもよい。
【0015】
本発明の肉様食品は、上記低脂質性蛋白シートと上記高脂質性蛋白シートとが積層された積層蛋白シートが九十九折りされてなるものであってもよい。
【0016】
本発明の肉様食品は、調味材が付与されたり、調理されたりして提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明にかかる肉様食品の実施形態を説明するための模式断面図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる肉様食品の別の実施形態を説明するための模式断面図である。
【
図3】
図3は、本発明にかかる肉様食品の別の実施形態を説明するための模式断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例1にかかる低脂質性蛋白シートを示す写真である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例1にかかる高脂質性蛋白シートを示す写真である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例1にかかる積層した肉様食品を示す写真である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例2にかかる巻回した肉様食品を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の肉様食品は、全重量に対して40重量%以上の水と全重量に対して固形分換算で10重量%未満の油分とを含む第1の組織状大豆蛋白素材からなる低脂質性蛋白シートと、全重量に対して40重量%以上の水と全重量に対して固形分換算で10重量%以上の油分とを含む第2の組織状大豆蛋白素材からなる高脂質性蛋白シートとが積層されてなることを特徴とする。
図1は、本発明にかかる肉様食品の実施形態を説明するための模式断面図である。肉様食品1は、全重量に対して40重量%以上の水と全重量に対して固形分換算で10重量%未満の油分とを含む第1の組織状大豆蛋白素材からなる低脂質性蛋白シート10と、全重量に対して40重量%以上の水と全重量に対して固形分換算で10重量%以上の油分とを含む第2の組織状大豆蛋白素材からなる高脂質性蛋白シート20が、接着剤30を介して接着されてなる。低脂質性蛋白シート10と高脂質性蛋白シート20は、水分を含んで弾力性があり、かつ高脂質性蛋白シート20が天然の畜肉脂身の外観を再現でき、さらに咀嚼時に高脂質性蛋白シートから油分が溶け出して、あたかも脂身を咀嚼したかのような、食感と味覚を再現できる。
押し出し成形により作製された低脂質性蛋白シート10と高脂質性蛋白シート20の表面には、低脂質性蛋白シート10、高脂質性蛋白シート20の押し出し方向に対して平行に複数の溝40が設けられ、咀嚼時に溝40を起点として、天然の畜肉の筋繊維が崩れるように、肉様食品1がほろほろと解れる食感を実現できる。
【0019】
図2は、本発明にかかる別の実施形態である肉様食品を説明するための模式断面図である。肉様食品2は、低脂質性蛋白シート10と高脂質性蛋白シート20とが、接着剤30を介して接着し、積層された積層蛋白シートが巻回され、さらに積層蛋白シートの表面と裏面が接する部分が接着剤30を介して接着されて積層ロール形状となっている。押し出し成形により作製された低脂質性蛋白シート10と高脂質性蛋白シート20の表面には、低脂質性蛋白シート10、高脂質性蛋白シート20の押し出し方向に対して平行に複数の溝40が設けられている。低脂質性蛋白シート10と高脂質性蛋白シート20の巻回方向(シートを巻回することで形成される積層ロール体の中心が巻回により移動する方向)は、シートの押し出し方向に対して平行でもよく、垂直方向でもよいが、垂直方向の方が望ましい。咀嚼時に積層シートが崩れやすいからである。
低脂質性蛋白シート10と高脂質性蛋白シート20が巻回された積層ロールは、高油脂性蛋白シートの側面からの露出面積が単純な積層構造に比べて少ないので、調理した場合に煮崩れしにくく、レトルト食品に適している。
【0020】
図3は、本発明にかかるさらに別の実施形態である肉様食品を説明するための模式断面図である。肉様食品3は、表面に押し出し方向に対して平行に複数の溝40が形成された低脂質性蛋白シート10と、表面に押し出し方向に対して平行に複数の溝40が形成された高脂質性蛋白シート20とを、接着剤30を介して接着した積層蛋白シートを、積層蛋白シートの押し出し方向に沿って九十九折りにして、接着剤30を介して接着したものである。
本発明の肉様食品は、低脂質性蛋白シートと高脂質性蛋白シートを、1枚ずつ交互に積層して接着した構造のみならず、接着剤を介して接着された複数枚の低脂質性蛋白シートと、接着剤を介して接着された複数枚の高脂質性蛋白シートとを、接着剤を介して積層して接着した構造であってもよい。本発明の肉様食品を構成する低脂質性蛋白シートと高脂質性蛋白シートを積層する枚数や順序は、特に制限されない。
【0021】
本発明における低脂質性蛋白シートを構成する第1の組織状大豆蛋白素材と、高脂質性蛋白シートを構成する第2の組織状大豆蛋白素材はそれぞれ、その全重量に対して40重量%以上の水を含む。この水は、第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材の原料として配合する水、および、大豆蛋白原料、炭水化物源等の原料に含まれる水の合計重量である。水の含有量が上記範囲であると、第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材の食感を天然の畜肉に近づけることができる。上記第1の組織状大豆蛋白素材に含まれる水の含有量の上限、および、上記第2の組織状大豆蛋白素材に含まれる水の含有量の上限は、例えば、65重量%である。上記水の含有量は、好ましくは40~60重量%である。
【0022】
原料として配合する水は特に限定されず、純水、ミネラルウォーター、水道水、蒸留水、イオン交換水、井戸水等を用いることができる。
【0023】
本発明の高脂質性蛋白シートを構成する第2の組織状大豆蛋白素材は、全重量に対して固形分換算で10重量%以上の油分を含む。第2の組織状大豆蛋白素材が上記範囲で油分を含むと、天然の畜肉のような弾力と、ぱさつきが少ない食感を実現できる。油分は、第2の組織状大豆蛋白素材の原料である大豆蛋白原料、炭水化物源等に含まれる油分、および、第2の組織状大豆蛋白素材の原料として任意で配合する油分の合計重量である。第2の組織状大豆蛋白素材に含まれる油分の含有量の上限は、例えば、60重量%である。
本発明の低脂質性蛋白シートを構成する第1の組織状大豆蛋白素材は、全重量に対して固形分換算で10重量%未満の油分を含む。第1の組織状大豆蛋白素材が赤身肉の食感を実現でき、また、肉様食品の強度を保つことができるからである。このような第1の組織状大豆蛋白素材は、脱脂大豆や分離大豆蛋白のような油分の少ない原料を用いることで製造できる。第1の組織状大豆蛋白素材に含まれる油分の下限は、好ましくは0.5重量%以上である。第1の組織状大豆蛋白素材は、もちろん、油分を含まなくてもよい。
【0024】
第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材の原料である蛋白原料、炭水化物源等以外に任意で油分を添加する場合、その種類は特に限定されず、食品に一般的に使用することができる油脂等を用いることができる。
【0025】
本発明における低脂質性蛋白シートを構成する第1の組織状大豆蛋白素材と、高脂質性蛋白シートを構成する第2の組織状大豆蛋白素材はそれぞれ、その全重量に対して固形分換算で10重量%以上の炭水化物を含むことが好ましい。炭水化物の含有量が上記範囲であると、繊維状大豆蛋白同士の結着状態を制御しやすいからである。この炭水化物は、第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材の原料である大豆蛋白原料に含まれる炭水化物、並びに、上記大豆蛋白原料以外の原料に含まれる炭水化物の合計重量である。上記第1の組織状大豆蛋白素材に含まれる炭水化物の含有量の上限、および、第2の組織状大豆蛋白素材に含まれる炭水化物の含有量の上限は、それぞれ、例えば、50重量%である。
上記第1の組織状大豆蛋白素材中と、第2の組織状大豆蛋白素材中には、上記炭水化物が固形分換算でそれぞれ1~50重量%含まれていてもよい。
【0026】
組織状大豆蛋白素材は、炭水化物源としてデンプンを含むことが好ましく、上記デンプンはコーンスターチであることが好ましい。コーンスターチは、繊維状大豆蛋白の結着性に優れるからである。
【0027】
本発明における低脂質性蛋白シートを構成する第1の組織状大豆蛋白素材は、カルシウムを含んでいてもよい。第1の組織状大豆蛋白素材がカルシウムを含む場合、第1の組織状大豆蛋白素材中には、カルシウムが、固形分換算で第1の組織状大豆蛋白素材100gあたり300mg~1500mg含まれることが好ましい。第1の組織状大豆蛋白素材中のカルシウムの量が上記の範囲であると、大豆蛋白を繊維化させやすいからである。
【0028】
本発明における高脂質性蛋白シートを構成する第2の組織状大豆蛋白素材は、カルシウムを含んでいてもよい。第2の組織状大豆蛋白素材中には、カルシウムが、固形分換算で第2の組織状大豆蛋白素材100gあたり300mg~1500mg含まれることが好ましい。第2の組織状大豆蛋白素材中のカルシウムの量が上記の範囲であると、大豆蛋白を繊維化させやすいからである。
なお、上記カルシウムの含有量は、第1の組織状大豆蛋白素材または第2の組織状大豆蛋白素材の乾燥重量(固形分換算)100gあたりに含まれる量(mg)を意味する。
【0029】
カルシウムが含まれる形態は、カルシウム塩が好ましく、わずかでも解離してカルシウムイオンとなる化合物であれば特に制限されるものではない。カルシウム塩としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。カルシウムを添加する方法としては、カルシウム塩を原料に添加することが好ましいが、エクストルーダーで加熱加圧しながら押し出し成形した炭水化物を含む大豆蛋白をこれらのカルシウム塩水溶液中に含侵させることで付与してもよい。カルシウム塩に加えて、マグネシウム塩も同様に使用可能である。
【0030】
第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材は、それぞれ繊維状大豆蛋白により構成されていてもよい。繊維状大豆蛋白は、例えば繊維径が0.01~1000μmであるものが好ましい。より好ましくは10~100μmである。
【0031】
本発明における低脂質性蛋白シートと高脂質性蛋白シートを構成する第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材は、偏平のシート状であることが好ましく、その厚さは0.5~5.0mmであることが望ましい。
【0032】
本発明の肉様食品における接着剤の含有量は、特に限定されないが、例えば肉様食品100重量部に対して0.01~10重量部である。
【0033】
低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートの主面に形成される溝は、低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートの主面全体に形成されていてもよいし、主面の一部に形成されていてもよい。溝の断面形状は特に限定されず、例えば矩形状、半円状、V字状等が挙げられる。溝の方向は特に限定されないが、低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートが押し出し成形により作製される場合、押し出し方向と平行であることが好ましい。溝の方向が押し出し方向と平行であると、肉様食品を構成する大豆蛋白の繊維が壊れにくく、咀嚼時に解れる食感を再現することができる。
低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートの主面に形成される溝の数は、特に限定されず、2以上であればよい。
また、低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートの主面に形成される複数の溝における、隣接する溝同士の間隔は、模倣する肉の部位により任意に調整することができる。肉の部位によって肉を構成する筋繊維の太さが異なるため、隣接する溝同士の間隔を調整することで様々な肉の繊維感を再現できる。例えば筋肉部位では、隣接する溝同士の間隔は2~3mm、サーロインの部位では、隣接する溝同士の間隔は0.5mm以上、2mm未満に調整することが望ましい。
【0034】
次に、本発明の肉様食品の作製方法の一例について説明する。
本発明における肉様食品は、低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートを構成する第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材それぞれに対応する大豆蛋白原料を含む原料混合物を個別に準備する工程(大豆蛋白混合物準備工程)、押し出し成形してシート状の第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材(低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シート)を作製する押し出し工程(組織状大豆蛋白作製工程)、第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材を環状刃が複数並列に設けられたローラーで挟持して、押し出し方向に対して垂直方向に圧迫して低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートの主面(表面および/または裏面)に溝を設ける工程(溝形成工程)、低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートを、接着剤を介して積層する工程(積層工程)を経て作製される。
【0035】
(大豆蛋白混合物準備工程)
低脂質性蛋白シートの原料として脱脂大豆や分離大豆蛋白のような低油分の大豆蛋白原料を用意してこれに加水して準備する。高脂質性蛋白シートの原料として全脂大豆蛋白や分離大豆蛋白などの大豆蛋白原料を用意し、混練することにより第1の組織状大豆蛋白素材および第2の組織状大豆蛋白素材の原料混合物を準備する。必要に応じてさらに炭水化物(コーンスターチ)を加えて加水し、また、カルシウム塩等を加えてもよい。原料中の炭水化物の含有量は、固形分換算で、組織状大豆蛋白素材に対して1重量%以上であってもよく、1~50重量%であってもよく、10重量%以上であることが好ましい。炭水化物の含有量が上記の範囲であると、繊維状大豆蛋白の結着状態を制御しやすいからである。
全脂大豆蛋白中には、固形分換算で20~30重量%の油分を含んでおり、全脂大豆蛋白量を調整することで、油分の調整を行うことができる。一方、脱脂大豆や分離大豆蛋白中には、固形分換算で1~10重量%の油分しか含んでいない。油分は、肉様食品の作製工程中に除去してもよい。
【0036】
(組織状大豆蛋白作製工程および溝形成工程)
準備したそれぞれの組織状大豆蛋白素材の原料混合物をエクストルーダー(押し出し成形機)に投入し、その後、加圧加熱処理し熱可塑性となった原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出す。この際、原料組成を固形分換算で大豆蛋白30~90重量%のように調整したり、加圧加熱条件をスクリュー回転数150~550rpm、加熱温度25~180℃のように調整できる。
本発明では、組織状大豆蛋白素材が押し出される口金のスリットの大きさとして、厚さ1~5mm、幅10mm以上とすることが好ましい。押し出された組織状大豆蛋白シートは、溝形成用の環状刃が表面に複数設けられたローラーで押し出し方向に対して垂直方向(上下方向)にプレスされてもよい。プレスにより環状刃が組織状大豆蛋白シートの主面に嵌入して押し出し方向に対して平行に溝が形成される。このようして、主面に溝が形成された低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートが得られる。
(積層工程)
低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートに対して、接着剤であるトランスグルタミナーゼの粉末やトランスグルタミナーゼの水溶液を接着面に付与して、接着剤付与面が対面するように両者を積層して接着し肉様食品とする。
さらに必要に応じて低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートを接着剤を介して積層した積層蛋白シートの主面にさらに接着剤を付与して、接着剤を付与した面が内側になるように積層蛋白シートを巻回、接着してロール体からなる肉様食品を製造してもよい。また、低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートを接着剤を介して積層した積層蛋白シートを九十九折りにして肉様食品を製造してもよい。この場合、必要に応じて積層蛋白シートの表面同士が接する面および裏面同士が接する面に接着剤を付与してもよい。肉様食品は、調理や食事に適した大きさに加工することができる。
【0037】
以上の工程を経て、本発明の肉様食品を製造することができる。
【0038】
本発明の肉様食品に対して、糖類、調味料類、人参、ごぼう、ごま、タマネギ等の野菜類や、ワカメ、ひじき等の海藻類、挽肉等の肉類等が付与されてもよい。
【0039】
本発明の肉様食品は、所定形状に切断、加工して、調味材を付与し、加熱調理して使用することができる。加熱調理は、焼成加熱、蒸し加熱、ボイル加熱、フライ加熱、電磁波加熱等を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0040】
以上により得られた製品は、レトルト食品の畜肉様食品の形態として提供することができる。
【実施例】
【0041】
実施例1
(1)低脂質性蛋白シートの作製
脱脂大豆(商品名:ソーヤフラワーA、日清オイリオ製)85重量部、分離大豆蛋白(商品名:SUPRO PM、Dupont製)15重量部を混合して原料混合粉とし、二軸エクストルーダーに供給して加圧加熱処理を行った。原料混合粉100重量部(表1参照)に対し、100重量部の水を供給しながら二軸エクストルーダーから冷却ダイを経由して、低脂質性蛋白シートを押し出した。なお、二軸エクストルーダーでの加圧加熱処理は、スクリュー回転数500rpm、出口側134℃、圧力3.5МPa、冷却水温度60℃、ダイスリット幅60mm×厚さ1.0mmで行った。低脂質性蛋白シートは、溝形成用の環状刃(1mm角刃)が表面に複数設けられた二軸型ローラー(1mm角刃、ローラークリアランス0.1mm)で押し出し方向に対して垂直方向(上下方向)にプレスして、表面および裏面に複数の溝を設けた(
図4)。
図4は、本発明の実施例1にかかる低脂質性蛋白シートを示す写真である。また、表2に低脂質性蛋白シートの原料組成を示す。なお、表2において組成(重量%)が100重量%とならない場合があるが、残余は酸化カルシウム等の灰分である。
【0042】
(2)高脂質性蛋白シートの作製
固形分換算で約26重量%の油分を含む全脂大豆蛋白50重量部(商品名:ソーヤフラワーNSA 日清オイリオ製)、分離大豆蛋白(商品名:SUPRO PM、Dupont製)22重量部、コーンスターチ(商品名:コーンスターチ、加藤化学製)24重量部、硫酸カルシウム(商品名:硫酸カルシウム二水和物、富士フィルム和光純薬製)4重量部を加え混合して原料混合粉とし、二軸エクストルーダーに供給して加圧加熱処理を行った。原料混合粉100重量部(表1参照)に対し、80重量部の水を供給しながら二軸エクストルーダーから冷却ダイを経由して、高脂質性蛋白シートを押し出した。なお、二軸エクストルーダーでの加圧加熱処理は、スクリュー回転数500rpm、出口側133℃、圧力3.1МPa、冷却水温度60℃、ダイスリット幅60mm×厚さ1.0mmで行った。高脂質性蛋白シートは、溝形成用の環状刃(1mm角刃)が表面に複数設けられた二軸型ローラー(1mm角刃、ローラークリアランス0.1mm)で押し出し方向に対して垂直方向(上下方向)にプレスして、表面に溝を設けた(
図5)。
図5は、本発明の実施例1にかかる高脂質性蛋白シートを示す写真である。また、表2に高脂質性蛋白シートの原料組成を示す。
【0043】
(3)積層工程
上記で得られた低脂質性蛋白シート2枚、高脂質性蛋白シート3枚をそれぞれ交互に重ね合わせ、積層および接着を行った。
各シートの接着にはトランスグルタミナーゼ製剤(味の素製アクティバTG-B)を使用し、これを4倍量の水に溶解させたトランスグルタミナーゼ水溶液を各シート表面に塗布した。塗布後、それぞれのシートを重ね合わせ、冷蔵庫にて5kgの荷重をかけながら2時間保持し、5層の積層体からなる肉様食品とした(
図6)。
図6は、本発明の実施例1にかかる積層した肉様食品を示す写真である。
【0044】
実施例2
実施例1と同様に、表面側および裏面側に複数の溝を設けた低脂質性蛋白シートおよび高脂質性蛋白シートを製造し、それぞれ1枚ずつトランスグルタミナーゼ水溶液を介して積層、接着して積層シートを得た。
この積層シートの高脂質性蛋白シート側表面にトランスグルタミナーゼ水溶液に塗布して、これを高脂質性蛋白シート側が内側になるように巻回し、冷蔵庫にて5kgの荷重をかけながら2時間保持し、ロール状の積層体からなる肉様食品とした(
図7)。
図7は、本発明の実施例2にかかる巻回した肉様食品を示す写真である。
【0045】
【0046】
【0047】
(肉様食品の調理)
実施例1、2にかかる肉様食品を下記組成の調味液に5時間浸漬して味つけして、180℃で加熱して焼成サンプルとした。
【0048】
(調味液の組成)
還元水あめ 40重量部
上白糖 20重量部
並塩 5重量部
コショウ 0.5重量部
グルタミン酸ソーダ 5重量部
醤油 10重量部
ガーリックパウダー 2重量部
固形油脂 20重量部
水 120重量部
カラメル色素 2重量部
【0049】
実施例1、2の焼成サンプルを食したところ、外観は天然の畜肉に近く、また、咀嚼時にほろほろと繊維組織がほぐれ、また油分が口内で溶け出して天然の畜肉を充分に再現できていた。
【符号の説明】
【0050】
1、2、3 肉様食品
10 低脂質性蛋白シート
20 高脂質性蛋白シート
30 接着剤
40 溝