(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-23
(45)【発行日】2026-01-07
(54)【発明の名称】自動分析装置の温調システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20251224BHJP
【FI】
G01N35/00 B
(21)【出願番号】P 2023511474
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022015916
(87)【国際公開番号】W WO2022210861
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2021059833
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 義弘
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026522(JP,A)
【文献】特開2020-041875(JP,A)
【文献】特開2017-026469(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047545(WO,A1)
【文献】特開2010-139332(JP,A)
【文献】特開2008-070355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を処理して測定することにより所定の分析項目に関して測定情報を得る自動分析装置の温調システムであって、
測定に必要な液体を所望の温度に調節するための温度調節部と、
前記温度調節部で液温を調節された前記測定に必要な液体に測定対象物が添加された測定対象物を含んだ液体の所定の分析項目に関する測定情報を得るための測定部と、
前記温度調節部と前記測定部とを接続する接続流路と、
前記温度調節部の前記測定に必要な液体及び前記測定部の前記測定対象物を含んだ液体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部からの検出温度を受け、前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度と、前記温度調節部における前記測定に必要な液体の温度とに基づき、前記温度調節部から前記接続流路を通じて前記測定部に至るまでの前記測定に必要な液体及び前記測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変化分を算出し、前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるように、前記目標温度と前記温度変化分に基づいて前記温度調節部の温度を制御する液温制御を行なう制御部と、
を有することを特徴とする自動分析装置の温調システム。
【請求項2】
前記液温制御において、前記制御部は、前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度と
、前記測定に必要な液体が前記温度調節部を通過する過去の時点における温度又はこれを含む期間の温度との間の温度差を、前記測定に必要な液体及び前記測定対象物を含んだ液体の流通に伴う前記温度変化分と見なして前記温度調節部の温度を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置の温調システム。
【請求項3】
前記液温制御において、前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度が所定の周期で変動する場合、
前記制御部は、前記所定の周期にわたって変動する前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度の1周期の期間の平均値と、該1周期の期間を含めた又は含めない過去の所定の期間にわたって変動する前記温度調節部における前記測定に必要な液体の温度の平均値との間の差を、前記
所定の周期にわたる前記測定に必要な液体及び前記測定対象物を含んだ液体の流通に伴う前記温度変化と見なして前記温度調節部の温度を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置の温調システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記測定に必要な液体及び前記測定対象物を含んだ液体の流通に伴う前記温度変化を所定時間ごとに更新し、その更新結果に基づき、前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるように前記温度調節部の設定温度を定めることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動分析装置の温調システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度調節部を介して前記測定に必要な液体を前記測定部に供給するポンプの停止後には、前記自動分析装置の機内温度に基づいて前記温度調節部の温度を所定温度になるように制御する機温制御を行なうことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の自動分析装置の温調システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記液温制御時には、前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるように前記温度調節部の設定温度を所定時間ごとに更新するとともに、前記ポンプの停止後には、その停止直前の前記設定温度を前記機温制御時の前記温度調節部の設定温度の初期値として定めることを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置の温調システム。
【請求項7】
前記ポンプの駆動後、前記測定部による前記測定対象物を含んだ液体の測定前に、前記測定対象物を含んだ液体に代えて、前記温度調節部から前記測定部に所定期間ダミー液を流し、その後前記液温制御を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の自動分析装置の温調システム。
【請求項8】
前記ダミー液に
より調整する前記所定の期間が、前記自動分析装置内の温度と、前記ポンプの停止時から前記ポンプの駆動再開までの時間とに関連付けられることを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置の温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などのサンプル(検体)を種々の試薬と反応させてその反応過程を測定することにより様々な検査項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置の温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固分析装置や、免疫測定法を用いた分析装置など、血液や尿などの生体サンプルを種々の試薬と反応させてその反応過程や反応結果を測定することにより様々な検査項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置は、従来から様々な形態のものが知られている。例えば、測定対象となるサンプルである検体を検体容器から反応容器に分注し、その分注した検体に検査項目に応じた試薬を分注混合させて各種の測定及び分析を行なうものがある(特許文献1等)。例えば、臨床検査用の自動分析装置では、試料と試薬とを一定量分注して反応させた後、一定時間後の反応液の発光量や吸光度を測定し、測定結果(測光結果)に基づき測定対象物質の濃度や活性値等の検査値を求めている。
【0003】
このような自動分析装置においては、試料(検体)や試薬(校正液を含む)等が流路を介して測定部まで移動する際に外気温によりその温度が変化することにより、測定部における測定対象物の温度にばらつきが生じて測定値に影響を与えることが知られている。そのため、これらの悪影響を抑えて正確な測定値を得るために、測定対象物や流路の温度制御方法が従来から検討されてきた。
【0004】
そのような温度制御方法の一例として、特許文献2に、試料や試薬(校正液を含む)等の液状の測定対象物が、温度調整ブロック(温調ブロック)で加熱された後、各種電極及び加熱器を有する測定部である電極ブロックに送られて測定される電解質分析装置が開示されている。この電解質分解装置では、外気温度に応じて電極ブロック及び温調ブロックに設置された加熱器の出力を制御して、各ブロックの温度が適正温度になるように調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-135497号公報
【文献】特開2007-93252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のように外気温度に応じて電極ブロック及び温調ブロックを温度制御する場合、温調ブロックから測定部である電極ブロックまでの流路の断熱性に機台間差があると、外気温の影響が機台間差に生じるため機台ごとに温度調整のための出力制御値を調整しなければ、測定部の温度を精度良く制御することが難しい。とりわけ、温調ブロックと電極ブロックとが離れており、温調ブロックで加温又は冷却された測定対象物の温度が測定部である電極ブロックに至るまでの間に低下(冷却)又は上昇してしまうような距離を有する場合には、外気温度に基づいて測定対象物を電極流路で所望の温度に設定することが更に難しくなる。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、分析装置において温度調整部と測定部が離れている場合に、測定対象物を含んだ液体の温度が測定部で目標温度となるように精度良く制御できる自動分析装置の温調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、検体を処理して測定することにより所定の分析項目に関して測定情報を得る自動分析装置の温調システムであって、測定に必要な液体を所望の温度に調節するための温度調節部と、前記温度調節部で液温を調節された前記測定に必要な液体に測定対象物が添加された測定対象物を含んだ液体の所定の分析項目に関する測定情報を得るための測定部と、前記温度調節部と前記測定部とを接続する接続流路と、前記温度調節部の前記測定に必要な液体及び前記測定部の前記測定対象物を含んだ液体の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部からの検出温度を受け、前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度と、前記温度調節部における前記測定に必要な液体の温度とに基づき、前記温度調節部から前記接続流路を通じて前記測定部に至るまでの前記測定に必要な液体及び前記測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変化分を算出し、前記測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度を目標温度となるように、前記目標温度と前記温度変化分に基づいて前記温度調節部の温度を制御する液温制御を行なう制御部とを有することを特徴とする。
【0009】
上記構成の自動分析装置によれば、外気温度に応じて温度調節部の温度を制御するのではなく、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度及び、温度調節部における測定に必要な液体の温度を実測してその温度に基づいて、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるように温度調節部の温度を制御する液温制御を行なっている。そのため、装置の断熱性に機台間差がある場合であっても、機台ごとに調整を行なうことなく、測定対象物を含んだ液体の温度を測定部で目標温度に精度良く制御できる。
【0010】
しかも、そのような液温制御において、上記構成では、温度調節部から接続流路を通じて測定部に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変化を考慮に入れて温度調節部の温度を制御している。そのため、温度調節部で調節された測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の温度が測定部に至るまでの間に変化してしまうような距離で温度調節部と測定部とが空間的に離間されている場合であっても、測定対象物を含んだ液体を測定部で所望の温度に精度良く設定することができるようになる。
【0011】
なお、上記構成において、「測定に必要な液体」とは、検体を除く、試薬その他の測定に使用される各種液体を指す。また「測定対象物を含んだ液体」とは、例えば、試料(検体)と試薬(校正液)等との混合物(反応物)など、検体を所定の分析項目に関して測定するために必要な状態で測定部に供給される液体を指す。さらに、「測定対象物」とは、測定部で測定されるべき物質のことであり、検体それ自体又は検体に含まれる物質を指す。また、上記構成において、「温度検出部」は、温度調節部における測定に必要な液体又は測定部における測定対象物を含んだ液体の温度をそれぞれ個別に同時に又は時間をずらして検出するものであり、温度調節部及び測定部にそれぞれ対応付けて個別に設けられてもよい。また、上記構成では、特に、測定に必要な液体(検体を含まない)と測定対象物を含んだ液体(検体を含む)とが混合されて(あるいは、測定に必要な液体とこの液体に添加される測定対象物とが混合されて)測定部へ流れていくことを想定しているが、勿論、このような形態のみに限定されない。また、温度調節部で温調される対象は、基本的には、測定に必要な液体(検体を含まない)であるが、これに限定されない。また、温度調節部での温度の調節(温調)には、加温はもとより、冷却や保温(一定)なども含む。
【0012】
また、上記構成の液温制御において、制御部は、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度と、該温度を測定した前記測定対象物を含んだ液体に含まれる前記測定に必要な液体が前記温度調節部を通過する過去の時点における温度又はこれを含む期間の温度との間の温度差を、測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う前記温度変化分と見なして温度調節部の温度を制御することが好ましい。このようにすれば、実質的に、温度調節部における測定に必要な液体及び測定部における測定対象物を含んだ液体の同じ時点での温度に関し、温度調節部における測定に必要な液体の温度の値が、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度の過去値(前段階調整温度)となり得る。すなわち、温度調節部における測定に必要な液体の温度の値を測定部における測定対象物を含んだ液体を適切な目標温度にするための過去値に近づけることができる。
【0013】
そのため、温度調節部から接続流路を通じて測定部に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通(移動)に伴う温度変化を精度良く検出して、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるようにする温度調節部の設定温度を精度良く定めることが可能となる。ここで「温度調整部の設定温度」は、測定部における測定対象物を含んだ液体の目標温度+温度調節部から接続流路を通じて測定部に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変化分となるように設定される。すなわち、測定部を流れる測定対象物を含んだ液体の温度と、温度調節部を流れる測定に必要な液体がその後測定部まで移動する際に変化する温度のずれを補正するよう設定される。
【0014】
また、上記構成では、液温制御において、測定部における前記測定対象物を含んだ液体の温度が所定の周期で変動する場合、制御部は、前記所定の周期にわたって変動する測定部における測定対象物を含んだ液体の温度の1周期の期間の平均値と、該1周期の期間を含めた又は含めない過去の所定の期間にわたって変動する温度調節部における測定に必要な液体の温度の平均値との間の差を、前記所定の1周期にわたる測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う前記温度変化と見なして温度調節部の温度を制御することが好ましい。なお、温度調整部における液体の温度の平均値を算出する過去の所定の期間として、測定部における液体の温度の平均値を算出した所定の1周期の期間を含む場合、過去の所定の期間は、所定の1周期に連続する期間であっても良い。
【0015】
このように、温度調節部における測定に必要な液体の変動温度の平均値(移動平均)を求めるための算定期間が測定部における測定対象物を含んだ液体の変動温度の平均値(移動平均)を求めるための算定期間よりも過去の期間を含むようにする。これにより、測定時点における温度調節部における測定に必要な液体及び測定部における測定対象物を含んだ液体中の測定に必要な液体が、温度調節部を通過するときの過去の温度を含めること、又は過去の温度に近づけることが可能となる。
【0016】
すなわち温度調節部における測定に必要な液体の温度の値を測定部における測定対象物を含んだ液体の温度の過去値に近づけることができる。そのため、温度調節部から接続流路を通じて測定部に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変化を精度良く検出して、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるようにする温度調節部の設定温度を精度良く定めることが可能となる。
【0017】
言い換えると、温度調節部における測定に必要な液体及び測定部における測定対象物を含んだ液体の同じ時点において、測定部を流れる測定対象物を含んだ液体の温度と、温度調節部を流れる測定に必要な液体がその後に測定部でとり得る温度との間のずれを補正することができるようになる。ここで、「温度調節部の設定温度」とは測定部における測定対象物を含んだ液体の目標温度+温度調節部から接続流路を通じて測定部に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変化分のことである。
【0018】
更に、測定に必要な液体と、測定対象物を含んだ液体との混合による温度変化についても考慮しながら補正することができる。なお、温度調節部における測定に必要な液体の変動温度の平均値(移動平均)を算定する期間としての「前記1周期を含めた又は含めない過去の所定の期間にわたる」期間は、例えば、前記所定の1周期を含めて(例えばこの1周期に連続する)2周期~4周期遡った期間であることが好ましい。しかしながら、前記所定の1周期を含まない過去の1周期以上にわたる期間を、温度調節部における測定に必要な液体の変動温度の平均値(移動平均)を算定する期間として採用しても構わない。
【0019】
また、上記構成において、制御部は、測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変化を所定時間ごとに更新し、その更新結果に基づき、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるようにする温度調節部の設定温度を定めることが好ましい。これによれば、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるようにする温度調節部の設定温度が逐次更新されることとなるため、測定対象物を含んだ液体の温度を測定部で目標温度に精度良く制御できるようになる。
【0020】
また、上記構成において、制御部は、前記温度調節部を介して測定に必要な液体を測定部に供給するポンプの停止後には、自動分析装置内部の温度(機内温度)に基づいて温度調節部の温度を所定温度になるように制御する機温制御を行なうことが好ましい。ポンプが停止して測定部に測定対象物を含んだ液体が供給されず、測定部で測定対象物を含んだ液体の温度を検出することができない(液温制御を続行することができない)場合でも、液温制御に代えて、機温制御を行なうようにすれば、温調制御を完全に停止する場合と比べて、ポンプの駆動再開後に測定部における測定対象物を含んだ液体の温度を可能な限り早く目標温度に到達させることができるので有益である。また、装置の稼働中に液温制御と機温制御とを組み合わせることにより、装置全体の測定(分析)効率を高めて、装置の作動コストを低減することも可能になる。
【0021】
また、上記構成において制御部は、液温制御時には、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるようにする温度調節部の設定温度を所定時間ごとに更新するとともに、ポンプの停止後には、その停止直前の前記設定温度を機温制御時の温度調節部の設定温度の初期値として定めることが好ましい。これによれば、機温制御後に再び液温制御を開始する際に、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度を可能な限り早く目標温度に到達させることができる。なお、機温制御においては、温度調節部の設定温度の初期値取得時からの装置内温度変化量により温度調節部の設定温度を修正することが好ましい。
【0022】
また、上記構成では、ポンプの駆動後、液温制御時における測定部での測定対象物を含んだ液体の測定前に、測定部における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間を短縮させるためのダミー液が、測定対象物を含んだ液体に代えて、ポンプにより温度調節部を通じて測定部に導入されることが好ましい。
【0023】
例えば、ポンプ駆動直後、空冷された測定対象物を含んだ液体が測定部に送り込まれることから、その低い温度が測定部における測定対象物を含んだ液体の温度として液温制御では検出され、したがって、温度調節部の設定温度が高くなる。そのため、測定部における測定対処物を含んだ液体の温度が急上昇してしまい、測定部における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間が長くなってしまう。しかしながら、本構成のように、液温制御時における測定部での測定対象物を含んだ液体の測定前に、測定対象物を含んだ液体に代えてダミー液を、ポンプを駆動して温度調節部を通じて測定部に導入した後に液温制御を開始すれば、測定部における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間を短くでき、測定(分析)効率を向上させることができる。
【0024】
なお、上記構成において、「ダミー液」とは、測定部における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間を短縮させる(測定部における測定対象物を含んだ液体を目標温度に回復させる)作用を成す液体であり、例えば前記測定に必要な液体をダミー液としてもよい。
【0025】
また、上記構成では、ダミー液の導入期間が、自動分析装置内の温度と、ポンプの停止時からポンプの駆動再開までの時間(ポンプの停止継続時間)とに関連付けられることが好ましい。このような関連付けにより、測定部における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間を短縮するのに必要なダミー液の使用量を適正に設定でき、無駄にダミー液が使用されてしまうといった事態を回避できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、温度調整部と測定部が離れている分析装置において、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるように精度良く制御することが可能となる。また、装置の断熱性に機台間差がある場合でも、機台ごとの調整をすることなく、測定対象物を含んだ液体の温度を測定部で目標温度に精度良く制御できる自動分析装置の温調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動分析装置の温調システムの概略図である。
【
図2】装置内温度を変動させた場合の液温制御の精度を示すグラフ図であり、(a)は装置内温度を次第に低下させた場合のグラフ、(b)は装置内温度を次第に上昇させた場合のグラフをそれぞれ示す。
【
図3】遅延時間を考慮した温度調節部における測定に必要な液体の温度検出値の移動平均値幅(温度調節部における測定に必要な液体の変動温度の移動平均値を算定する期間)を様々に変えたグラフ図であり、(a)は移動平均値幅が1サイクル(測定部における測定対象物を含んだ液体の温度の変動の所定の1周期分の期間)の場合(移動平均値幅が測定部における測定対象物を含んだ液体の温度の変動の周期と等しい場合)、(b)は移動平均値幅が2サイクル(測定部における測定対象物を含んだ液体の温度の変動の所定の1周期からこの周期を含めて2周期遡った期間;以下同じ)の場合、(c)は移動平均値幅が3サイクルの場合、(d)は移動平均値幅が4サイクルの場合、(e)は移動平均値幅が5サイクルの場合、(f)は移動平均値幅が5サイクルの場合をそれぞれ示す。
【
図4】ダミー液を使用しなかった場合における装置内温度、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度、温度調節部設定温度のそれぞれの測定結果を示すグラフ図であって、ポンプ駆動と同時に液温制御を行なうとともに、ポンプ停止と同時に機温制御を行なった場合のグラフ図である。
【
図5】ダミー液を使用した温調システムの温調サイクルの一例を示す図である。
【
図6】測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が所定の周期で変動する場合における変動周期を1サイクルとした際の、ポンプの停止時からポンプの駆動再開までの時間(ポンプの停止継続時間)である空きサイクル数に対する、測定部における測定対象物を含んだ液体が目標温度に回復するために必要なダミー液の必要回数(サイクル数)を、装置内温度ごとに示した実験データの表図である。
【
図7】
図6の実験結果を、ダミー液の必要回数に対する最大許容空きサイクル数を装置内温度ごとに示すデータとして書き換えた表図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
以下の説明においては、所定の検査項目に関して測定情報を得るための分析装置、例えば、血液や尿などの人から採取した検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬容器内の試薬を反応容器に供給する試薬供給部とを備えており、試薬供給部から試薬を反応容器に供給して試薬と検体とを混合して反応させて、反応させた混合液を測定する自動分析装置を用いて説明する。このような自動分析装置は、
図1に本発明の一実施形態として示すような温調システム1を含んでいる。なお、以下の実施形態では、後述する温度調節部の温度調節(温調)機能として、加温する場合を挙げて説明するが、本発明の範囲を限定するものではなく、冷却して温度調節する場合も含む。
【0029】
図1に示されるように、本実施形態に係る温調システム1は、測定に必要な液体をヒータ24により所望の温度に加温するための温度調節部としての加温部50と、加温部50で加温された測定に必要な液体に測定対象物を注入して、「測定対象物を含んだ液体」とするための導入ノズル99を備えている。前記測定対象物を含んだ液体から所定の分析項目に関する測定情報を得る測定部60は、ヒータ45によって一定の温度に保たれるようになっている。加温部50と測定部60とは接続流路(試料導入機構)40により接続されている(詳細は後述する)。本実施形態に係る温調システム1は、加温部50において測定に必要な液体の温度を検出する第1の温度センサ(温度検出部)30と、測定部60において測定対象物を含んだ液体の温度を検出する第2の温度センサ(温度検出部)46と、自動分析装置の装置内温度(機内温度)を検出する第3の温度センサ42とを有しており、各温度センサ30,42,46からの温度検出値を受けて加温部50のヒータ24の動作を制御する制御部10を備えている。なお、測定部60のヒータ45の動作は、測定部60内の別の温度センサにて制御される。
【0030】
本実施形態では、加温部50は、測定に必要な液体が通過する蛇管35を備える温度調整部(温調ブロック)として構成され、蛇管35をヒータ24により加熱することによって蛇管35内の測定に必要な液体を加温するようになっている。また、この加温部50の蛇管35には個別の供給流路26,27を介して各種の測定に必要な液体を供給するための液体供給部20,22が接続されている。
【0031】
測定部60は、測定対象物を含んだ液体が供給される電極48を有し、接続流路40から供給される測定対象物を含んだ液体が流通する電極流路47を有する。測定部60は、金属ボックスの周囲を断熱材で保護して構成される。
【0032】
また、加温部50と導入ノズル99との間には、4方弁33を伴う結合トラフ34が介挿されている。この場合、4方弁33には、外気に連通するエア取り込み管(図示せず)のほか、蛇管35を経由して対応する液体供給部20,22に連通する連通管31,32が接続されている。導入ノズル99は測定対象物の設置箇所に移動して測定対象物を吸引するとき以外は、結合トラフ34に接合されており、結合トラフ34と接続流路40との間に流路を形成している。測定対象物を吸引した導入ノズル99が結合トラフ34に接合した後に、「測定に必要な液体」が導入ノズル99内を移動することにより測定対象物と混合されて「測定対象物を含んだ液体」となる。
【0033】
また、測定部60から延びる電極流路47の下流側には、液体供給部20,22から測定に必要な液体を、加温部50を介して測定部60に供給するべく駆動するポンプ(例えばペリスタポンプ)49が介挿されており、その下流側端部には、測定済みの測定対象物を含んだ液体等を廃液として回収するタンク70が設けられている。
【0034】
このような構成を成す本実施形態に係る温調システム1では、加温部50と測定部60とが空間的に離間されている。そのため、外気温が低い場合には、測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の温度が加温部50から測定部60へと流通する間に低下(冷却)する。
図1の矢印は、測定対象物を含んだ液体の流通経路(移動方向)を示している。
【0035】
本実施形態に係る温調システム1の制御部10は、温度センサ30,46による測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度と、加温部50における測定に必要な液体の温度とに基づいて、加温部50の温度を制御する。すなわち、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるように、加温部50の温度を制御する(
図1の例ではヒータ24の駆動を制御する)液温制御を行なう。
【0036】
具体的には、制御部10は、測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体が接続流路40を通じて加温部50から測定部60に移動するまでの間に生じる温度変化分(
図1では温度低下分)を補正するように、加温部50のヒータ24を制御する。例えば、制御部10は、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるようにするため、加温部50の設定温度が以下に示すAとBの合計値(A+B)となるように加温部50のヒータ24を制御する。
A:測定部60における測定対象物を含んだ液体の目標温度
B:加温部50から接続流路40を通じて測定部60に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変動分(低下又は上昇:例えば、測定時点における測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度と、該測定対象物中の測定に必要な液体が過去に温度調整部を通過したときの温度との差から、この温度変動分を算出する。移動により低下する場合を正、上昇する場合を負とする)
【0037】
制御部10は、上記制御を行うために、測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う前記温度の低下を所定時間(例えば2秒)ごとに更新し、その更新結果に基づいて、加温部50の前記設定温度を定める(更新する)。上記演算式の温度変動分Bは、例えば以下のようにして算出することができる。2秒ごとに測定する測定部60における測定対象物を含む液体の温度Cと比較する加温部50における測定に必要な液体の温度は、測定に必要な液体が加温部50から測定部60まで移動する時間に相当する時間だけ前の時間の加温部50の測定に必要な液体の温度D(過去の温度)を使用して算出する。
すなわち、測定部60の温度C(現在値)と加温部50の温度D(過去値)の差分(C-D)を温度変動分B(低下分又は上昇分)とする。これにより、液温制御に伴う温度の変動を抑制し安定化することが可能となる。なお、制御に使用する測定温度は、2秒ごとに取得する測定値の複数回分の移動平均を用いることが望ましい。
【0038】
本発明では、前述した特許文献2に開示されるような単に外気温度に基づいて加温部50の温度を制御するのではなく、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度と、その上流の加温部50における測定に必要な液体の過去の温度に基づいて、加温部50の温度制御を行なっている。これにより、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度を目標温度に精度良く正確に制御することができる。このような本発明の優れた精度の液温制御を実証する実験データを
図2(経過時間(分)に対する実温度(℃)の関係を示すグラフ)に示す。
【0039】
この
図2は、温調システム1の内部である装置内の温度(装置内温度(機温)を変動させた場合の本発明の実施形態にかかる液温制御時の各部の温度を示す図(グラフ)である。
図2においては機温=室温Pとしている。
図2(a)は装置内温度(恒温槽温度;室温Pに相当する)を32℃から17℃まで10分ごとに約4℃ずつ低下させた場合の温度制御を示すグラフであり、
図2(b)は装置内温度(室温P)を15℃から30℃まで10分ごとに約4℃ずつ上昇させた場合の温度制御を示すグラフである。図中、室温P、設置液温Q、電極反応部液の温度R、蛇管設定温度Tがそれぞれ実線で示され、蛇管35の外面の温度Sが破線で示されている。
【0040】
なおこのグラフにおいて、設置液温Qとは蛇管35により加温する前の測定に必要な液体の温度であり、電極反応部液の温度Rとは測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度であり、蛇管35の外面の温度Sとは加温部50における測定に必要な液体の温度に対応する蛇管35の外面の温度であり、蛇管設定温度Tとは制御部10の制御目標とする加温部50の設定温度である。
【0041】
この
図2から、本発明によると、例えば外気温変動や装置稼働後の装置内の機器や素子の放熱等に起因して装置内温度(室温P)が変動しても、目標温度で測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度Rを精度良く制御できることがわかる。具体的には、経過時間30分の時点でポンプ49を駆動(ON)させて、経過時間35分の時点で分析を開始(アッセイ開始)し、測定部60における測定対象物を含んだ液体の目標温度を33℃とした場合、
図2の(a)に示されるように、室温Pの低下に伴って前述した演算式(A+B)に基づいて加温部50の設定温度Tを上昇させることにより、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度Rが33℃近傍(振れ幅32.9℃~33.6℃)に保持されている。
【0042】
また、
図2の(b)に示されるように、室温Pの上昇に伴って前述した演算式に基づいて加温部50の設定温度Tを低下させることにより、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度Rが33℃近傍(3振れ幅3.0℃~33.4℃)に保持されている。なお図示してはいないが、機台差のある他の基台に変えても同様の結果が得られた。
【0043】
また、
図2から分かるように、この液温制御では、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度Rが所定の周期(ここでは36秒)で変動するようになっている。そのため、制御部10は、この変動の所定の1周期(36秒)にわたって変動する測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度の平均値(36秒間毎の移動平均)と、この1周期とこの周期に繋がる連続する過去の所定の期間とにわたって変動する加温部50における測定に必要な液体の温度の平均値(移動平均)との間の差を前記所定の1周期にわたる測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通(加温部50から測定部60への流通)に伴う温度低下と見なして加温部50の温度を制御する。
【0044】
このように、本発明では、加温部50における測定に必要な液体の変動温度の平均値(移動平均)を求めるための算定期間として、測定部60における測定対象物を含んだ液体の変動温度の平均値(移動平均)を求めるための算定期間よりも過去の期間を用いている。すなわち、ある時点における加温部50における測定に必要な液体の温度の値が、将来の測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度の過去値となる。本発明では、この過去値(加温部50における測定に必要な液体の温度の値)を将来の温度変化分を勘案して事前に制御することにより、その後測定部60まで移動したときの測定対象物を含んだ液体の将来の測定部60における液体の温度を適正に制御している。
【0045】
このようにして、加温部50から接続流路40を通じて測定部60に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度低下を精度良く検出して、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるようにする加温部50の設定温度に制御する。すなわち、測定部60における測定対象物を含んだ液体の目標温度+加温部50から接続流路40を通じて測定部60に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度低下を精度良く定めることが可能となる。
【0046】
言い換えると、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度と、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度に影響を与える加温部50を流れる測定に必要な液体の温度には時間的なずれがあるため、そのずれを補正することにより、精度の高い液温制御を可能にしている。
【0047】
また、この場合、加温部50における測定に必要な液体の変動温度の平均値(移動平均)を算定する期間としての「所定の1周期とこの周期に連続する過去の所定の期間とにわたる」期間は、例えば、前記所定の1周期を含めて2周期~4周期遡った期間であることが好ましい。このことを実証する実験データが
図3に示されている。
図3の(a)~(f)はそれぞれ、室温Pが一定の場合の
図2に対応する図(グラフ)であって、加温部50が設定温度に達してから測定部60における測定対象物を含んだ液体が目標温度に達するまでの遅延時間を考慮して加温部50における測定に必要な液体の温度(温度検出値)の移動平均値幅(加温部50における測定に必要な液体の変動温度の移動平均値を算定する期間)を様々に変えたグラフである。
【0048】
具体的には、
図3の(a)は移動平均値幅が1サイクル(測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度の変動の所定の1周期分の期間;36秒)の場合(移動平均値幅が測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度の変動の周期と等しい場合)、
図3の(b)は移動平均値幅が2サイクル(測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度の変動の所定の1周期からこの周期を含めて2周期遡った期間;以下同じ)の場合、
図3の(c)は移動平均値幅が3サイクルの場合、
図3の(d)は移動平均値幅が4サイクルの場合、
図3の(e)は移動平均値幅が5サイクルの場合、
図3の(f)は移動平均値幅が6サイクルの場合をそれぞれ示している。
【0049】
これらの図から分かるように、移動平均値幅が1サイクル、5サイクル、及び、6サイクルである
図3の(a)、(e)、(f)では、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度Rに大きな揺らぎがあるが、移動平均値幅が2~4サイクルである
図3の(b)、(c)、(d)では、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度Rに揺らぎが殆どなく、ほぼ33℃近傍を常に維持しているのが分かる。つまり、移動平均値幅は、小さすぎず、また、大きすぎないことが好ましい。
【0050】
また、制御部10は、ポンプ49の停止後には、自動分析装置内の温度(機内温度)に基づいて加温部50の温度を所定の一定の温度になるように制御する機温制御(ポンプ49が停止しているときの機内温度による制御を「機温制御」と称する)を行なうことが望ましい。ポンプ49の停止後は測定部60に測定対象物を含んだ液体が供給されないため液温制御を続行することができない。そのためポンプ49の停止後においては、液温制御に代えて、機内温度に応じて加温部50の温度を予め定められた温度又は所定の計算式に基づいて制御する機温制御を行なう。
【0051】
これにより、温度調節の制御を完全に停止する場合と比べて、ポンプ49の駆動再開後に測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度を可能な限り早く目標温度に到達させることができ有益である。また、装置の稼働中に液温制御と機温制御とを組み合わせることにより、装置全体の測定(分析)効率を高めて、装置の作動コストを低減するように構成してもよい。
【0052】
また、外気温が低い場合において、電源投入後、または外気温が低い環境下において比較的長い時間ポンプ49が停止した後ポンプ49の駆動を再開した直後は、空冷されて温度が低い状態の測定対象物を含んだ液体が測定部60に送り込まれる。測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度として低い温度が検出されると、液温制御では、加温部50の設定温度を高く設定するよう制御する。そのため、ポンプ駆動開始直後は測定部60における測定対処物を含んだ液体の温度が急上昇してしまい、測定部60における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間が長くなってしまう。
図4は、このような状態を示す実験データである。
【0053】
この
図4は、装置内温度(庫内温度;機温)P、電極反応部液の温度R(測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度)の移動平均幅36秒間での移動平均値R1、蛇管設定温度(加温部50の設定温度)Tのそれぞれの経時的な測定結果を示すグラフである。ポンプ49の駆動と同時に液温制御を行なうとともに、ポンプ49の停止と同時に機温制御を行なった場合(30分ごとにポンプの駆動及び停止を繰り返す場合)を示している。
【0054】
なお、図の一番上に、電極反応部液の温度(測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度)Rの測定データ(例えば2秒ごとの測定値)を示している。この電極反応部液の温度Rに基づいて、電極反応部液の温度Rの移動平均処理R1が算出される。図の最上段に示す電極反応部液の温度Rの温度の単位はグラフの右側の縦軸であり、その他の温度T、R1,A,Pの温度の基準単位はすべて左側縦軸である。また、電極反応部液の温度の移動平均値R1と蛇管設定温度Tの温度変化を分かり易く示すために、
図4の上下方向の中央付近にいずれも共通の左側縦軸の温度を基準として、電極反応部液の温度の移動平均値R1を破線により、蛇管設定温度Tを実線によりそれぞれ示されている。
【0055】
この
図4から分かるように、装置内温度(庫内温度)Pが低く、ポンプ49の駆動直後に測定部60に送り込まれる測定対象物を含んだ液体の温度が低ければ低いほど、図中に矢印で示されるA部のように、ポンプ49の駆動直後は、加温部50の設定温度Tが高くなるように制御することになる。そのため、その後測定部60到達する測定対処物を含んだ液体の温度Rが急上昇してしまい、結果として、測定部60における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間が長くなってしまう。
【0056】
そのため、本実施形態では、液温制御時における測定部60での測定対象物を含んだ液体の測定直前にポンプ49を駆動して、測定対象物を含んだ液体に代えてダミー液を加温部50から測定部60に導入し、その後に液温制御を開始するようにしている。これにより、測定部60における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間を短くでき、測定(分析)効率を向上させることができる。
【0057】
ここで、「ダミー液」とは、測定対象物を含んでいない加温部で加温された液体であり、測定に必要な液体であることが望ましい。しかしこれに限らず、測定部60における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間を短縮させることができる液体、すなわち測定部60における測定対象物を含んだ液体を目標温度に回復させることができる液体であれば、「ダミー液」として使用することが可能である。
【0058】
また、本実施形態において、ダミー液の導入期間は、自動分析装置内の温度と、ポンプ49の停止時からポンプ49の駆動再開までの時間(ポンプ49の停止継続時間)とに関連付けて決定することができる。このような関連付けにより、測定部60における測定対象物を含んだ液体が目標温度に安定するまでの時間を短縮するのに必要なダミー液の使用量を適正に設定でき、無駄にダミー液が使用されてしまうといった事態を回避できる。ダミー液の導入期間に関する実験データを
図6及び
図7に示す。
【0059】
図6は、ポンプ49の停止時からポンプ49の駆動再開までの時間(ポンプ49の停止継続時間である空きサイクル数)と、測定の再開時に測定部60において測定対象物を含んだ液体の温度を目標温度に回復するために必要なダミー液を流す時間(必要サイクル数)を、装置内温度(機内温度)ごとに示した実験データを示す図(表)である。
【0060】
なお、
図6及び以下で説明する
図7及び
図5において単位として使用しているサイクル数は、測定部60における測定対象物を含んだ液体が変動する所定の周期の変動周期を1サイクルとしており、
図6の例では36秒を「1サイクル」とする場合を示している。
ここでダミー液導入時のポンプ49の実際の停止継続時間は、ポンプ49の前記駆動再開直前にポンプ49の駆動により測定部60にダミー液が導入されるので、空きサイクル数からダミー液の必要回数(サイクル数)を減じたものとすることが好ましい。
また、
図6及び
図7においては、ダミー液による加温部50の温度制御を機温制御により行った実験結果を示している。
【0061】
この
図6によれば、例えば、ポンプ49の停止継続時間である空きサイクル数が5回(5サイクル)である場合、装置内温度が24.0℃以上では、ダミー液を1回(1サイクル)分の期間にわたって導入すれば測定部60における測定対象物を含んだ液体を目標温度に回復させることができることがわかる。これに対し、装置内温度が24.0℃を下回ると、ダミー液を2回(2サイクル)分の期間にわたって導入しなければ測定部60における測定対象物を含んだ液体を目標温度に回復させることができなくなる。
【0062】
或いは、別の観点からこの表図を見ると、装置内温度が20.5~22.5℃では、空きサイクル数が5回~7回であれば、測定部60における測定対象物を含んだ液体を目標温度に回復させるために必要なダミー液の導入期間が2回(2サイクル)で済む。或いは、装置内温度が30.0~31.5℃では、空きサイクル数が16回~51回であれば、測定部60における測定対象物を含んだ液体を目標温度に回復させるために必要なダミー液の導入期間は2回(2サイクル)で済む。
【0063】
一方、
図7は、
図6の実験結果を、ダミー液の必要回数に対する空きサイクル数の最大許容値を装置内温度ごとに示すデータとして書き換えた図(表)である。この
図7を見ると、装置内温度が20.5~22.5℃では、前述したように、空きサイクル数が5回~7回であれば、測定部60における測定対象物を含んだ液体を目標温度に回復させるために必要なダミー液の導入期間が2回(2サイクル)で済む。装置内温度20.5℃でダミー液の必要回数が2の場合、最大許容空きサイクル数が7になっている。
【0064】
同様に、装置内温度が30.0~31.5℃では、前述したように、空きサイクル数が16回~51回であれば、測定部60における測定対象物を含んだ液体を目標温度に回復させるために必要なダミー液の導入期間が2回(2サイクル)で済むことから、ダミー液の必要回数が2の場合、最大許容空きサイクル数が51になっている。
【0065】
図5は、
図6、
図7の場合と異なり、ダミー液を使用した機温制御と液温制御とを組み合わせた温度制御を行う温調システム1の温調サイクルの一例を示している。なお、装置電源投入時は、測定種データがないので電源投入時の装置内温度(機内温度)のみに基づいて加温部50の設定温度初期値を取得することが望ましい。ここで、この設定温度初期値は、例えば、-a×装置内温度+bとして算出されてもよい。a,bの値は装置設計時に、ポンプ49を駆動した状態で測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度が所望値となる加温部50の温度データを装置内温度に応じて取得し、それに基づいて適切な値を予め決定することが好ましい。
例えば、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度が33.0℃となる加温部50の温度が、装置内温度16.1℃のとき36.8℃、装置内温度29.6℃のとき33.2℃との実験データを得たときa及びbの値は、
a = -(36.8 - 33.2) ÷ (16.1 - 29.6) = 0.267
b = 36.8 + a × 16.8 = 36.8 + 0.267 × 16.1 = 41.1
で算出される。装置内温度を3つ以上変えたときのデータを用いる場合は、各データ値より回帰式を算出してa及びbを決定するが、回帰式に一次回帰式以外を採用する場合は、適切な関数に置き換える。
【0066】
前述したように、ポンプ49の停止後は、自動分析装置内の温度に基づいて加温部50の温度を所定温度になるように制御する機温制御を行うことができる。この機温制御においては、装置電源投入時に装置内温度より加温部50の設定温度初期値を取得した以降は、初期値取得時からの装置内温度(機内温度)の変化量に応じて、加温部50の設定温度を修正することができる。例えば、電源投入により機内温度が一定程度上昇することを前提として、機内制御時の設定温度=初期値取得時の加温部設定温度-a×(現在の装置内温度-初期値取得時の装置内温度)とするとしても良い。また、前述したように、制御部10は、液温制御時には、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるようにする加温部50の設定温度を所定時間ごとに更新するが、ポンプ49の停止後には、その停止直前の前記設定温度を機温制御時の加温部50の設定温度の初期値として定めることが望ましい。
【0067】
このような機温制御が行なわれるポンプ停止状態からポンプ49が駆動されると、
図5に示されるように、ダミー液の測定部60への導入区間(ポンプ駆動後、空冷の影響が少なくなるまでの区間)を経て、気温制御(機温制御)から液温制御へと切り替えられ、測定部60で測定対象物を含んだ液体の測定が開始される。本実施形態では、ダミー液の測定部導入区間ではダミー液が加温部50を通じて測定部60へ導入され、一方、液温制御区間では、ダミー液に代えて測定対象物を含んだ液体が測定部60へ導入される。
【0068】
その後、ポンプ49が停止されると、再び機温制御に切り替わる。その後再びポンプ49が駆動されると、先と同様に、ダミー液の測定部60への導入区間を経て機温制御から液温制御へと切り替えられ、測定部60で測定対象物を含んだ液体の測定が開始される。その後、ポンプ49が停止されると、再び機温制御に切り替わる。なお、液温制御へと切り替えられた後も一定期間ダミー液の測定部への導入を継続することで、測定部60における測定対象物を含んだ液体の目標温度到達精度をさらに高めることも可能である。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の自動分析装置1によれば、外気温度に応じて加温部50の温度を制御するのではなく、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度と、加温部50における測定に必要な液体の温度とに基づき、測定部60における測定対象物を含んだ液体の温度が目標温度となるように加温部50の温度を制御する液温制御を行なうようになっている。そのため、装置の断熱性に機台間差がある場合であっても、各機台ごとに調整を行なうことなく、測定対象物を含んだ液体の温度を測定部60で目標温度に精度良く制御できる。
【0070】
しかも、そのような液温制御において、本実施形態では、加温部50から接続流路40を通じて測定部60に至るまでの測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度低下を考慮に入れているため、加温部50で加温された測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の温度が測定部60に至るまでの間に低下(冷却)されてしまうような距離で加温部50と測定部60とが空間的に離間されている場合(本実施形態の場合に相当)であっても、測定対象物を含んだ液体を測定部60で所望の温度に精度良く設定することができるようになる。
【0071】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、加温部や測定部等の構成は前述した構成に限定されない。また、温調システム1の温調サイクルの流れ(切り替えタイミング)も前述した
図5に示されるものに限定されない。また、
図5におけるダミー液の測定部導入区間の選定条件も様々に設定できる。
【0072】
また、前述した実施形態においては、制御部は、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度が所定の周期で変動する場合に、この変動の所定の1周期にわたって変動する測定部における測定対象物を含んだ液体の温度の平均値(移動平均)と、前記1周期とこの周期に連続する過去の所定の期間とにわたって変動する加温部における測定に必要な液体の温度の平均値(移動平均)との間の差を前記所定の1周期にわたる測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度低下と見なしている。しかし、加温部における前記移動平均の算定期間は、前記1周期を含めた又は含めない過去の所定の期間であってもよい。液温制御において、制御部は、測定部における測定対象物を含んだ液体の温度と、過去の時点の加温部(温度調節部)における測定に必要な液体の温度との間の差を測定に必要な液体及び測定対象物を含んだ液体の流通に伴う温度変化と見なして温度調節部の温度を制御すればよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、調整部50及び測定部の温度の移動平均及びダミーサイクル等の各種の例として、「所定の1周期(1サイクル)」を1単位とする例を示したが、これに限定されることなく、移動平均の周期、ダミーサイクル等の単位は自由に定めることができる。さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 温調システム
10 制御部
40 接続流路
50 加温部(温度調節部)
60 測定部
30,46 温度センサ(温度検出部)
49 ポンプ
99 導入ノズル