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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-26
(45)【発行日】2026-01-13
(54)【発明の名称】撥水構造体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20260105BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20260105BHJP
【FI】
C08J5/00 CFD
C08J5/00 CEP
B29C59/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021146370
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039277
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-046032(JP,A)
【文献】特開平09-155972(JP,A)
【文献】国際公開第2004/048064(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0097361(US,A1)
【文献】特開2020-033700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B29C 53/00-53/84、57/00-59/18
B32B 1/00-43/00
E04F 15/00-15/22
B27N 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS B 0601:2001に準拠する方法により、表面の表面粗さを測定した場合に、表面の算術平均傾斜RΔaが、18度以上である撥水構造体であって、
前記撥水構造体の表面に、樹脂からなる樹脂層を備え、
前記樹脂が、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、及び酢酸セルロースからなる群から選択される少なくとも1つであ
前記算術平均傾斜RΔaが、粗さ曲線に基づいて、下記数式(F1)から算出され、
前記粗さ曲線を測定した測定長さが、700μmである、
撥水構造体。
【数1】
(前記数式(F1)において、ΔXは、各測定区間の間隔であり、前記ΔXは、0.5μmであり、ΔYiは、各測定区間での高さ差であり、nは、100以上の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の撥水構造体において、
前記樹脂の軟化点が、40℃以上200℃以下である、
撥水構造体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の撥水構造体において、
前記樹脂が、下記条件1及び下記条件2のうちの少なくとも1つの条件を満たす樹脂である、
撥水構造体。
条件1:前記樹脂層をSUS304#600の転写成型を用いて転写することで形成した撥水構造体について、JIS R 3257:1999の6.静滴法に準拠する方法により、表面の水の接触角を測定した場合に、水の接触角が、100度以下である。
条件2:前記樹脂層の表面の算術平均傾斜RΔaを0.1度以上1度以下の範囲とした撥水構造体について、JIS R 3257:1999の6.静滴法に準拠する方法により、表面の水の接触角を測定した場合に、水の接触角が、100度以下である。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の撥水構造体において、
表面の算術平均高さRaが、0.1μm以上30μm以下である、
撥水構造体。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の撥水構造体において、
撥水構造体が、シート状である、
撥水構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、撥水性を製品表面に発現させるためには、表面にフッ素樹脂、シリコーン樹脂、又は糖脂肪酸エステル等の撥水性成分を付与する成分添加的な手法が用いられている。例えば、特許文献1には、糖脂肪酸エステル結合セルロース系材料を含む組成物が記載されている。この組成物では、糖脂肪酸エステルが、結合セルロース系材料の表面に、90度以上の水接触角を示す濃度で存在する。
しかしながら、このような成分添加的な手法を用いる場合には、人体及び環境への影響を考慮しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-500222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、撥水性成分を用いずに、十分な撥水性を有する撥水構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、JIS B 0601:2001に準拠する方法により、表面の表面粗さを測定した場合に、表面の算術平均傾斜RΔaが、10度以上である、撥水構造体が提供される。
【0006】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、前記算術平均傾斜RΔaが、粗さ曲線に基づいて、下記数式(F1)から算出され、前記粗さ曲線を測定した測定長さが、700μmであることが好ましい。
【0007】
【数1】
【0008】
前記数式(F1)において、ΔXは、各測定区間の間隔であり、ΔYiは、各測定区間での高さ差であり、nは、100以上の整数である。
【0009】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、前記撥水構造体の表面に、樹脂からなる樹脂層を備えることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、前記樹脂が、加水分解性基を有する樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、前記樹脂が、生分解性を有する樹脂であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、前記樹脂が、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、及び酢酸セルロースからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、前記樹脂が、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、前記熱可塑性樹脂の軟化点が、40℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、前記樹脂が、下記条件1及び下記条件2のうちの少なくとも1つの条件を満たす樹脂であることが好ましい。
条件1:前記樹脂層をSUS304#600の転写成型を用いて転写することで形成した撥水構造体について、JIS R 3257:1999の6.静滴法に準拠する方法により、表面の水の接触角を測定した場合に、水の接触角が、100度以下である。
条件2:前記樹脂層の表面の算術平均傾斜RΔaを0.1度以上1度以下の範囲とした撥水構造体について、JIS R 3257:1999の6.静滴法に準拠する方法により、表面の水の接触角を測定した場合に、水の接触角が、100度以下である。
【0016】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、表面の算術平均高さRaが、0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る撥水構造体において、撥水構造体が、シート状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、撥水性成分を用いずに、十分な撥水性を有する撥水構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】表面粗さを測定する際における粗さ曲線の一例を示すグラフである。
図2】本発明の実施形態に係る撥水構造体の一例を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る撥水構造体の一例を製造するための製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
【0021】
(撥水構造体)
本実施形態に係る撥水構造体は、JIS B 0601:2001に準拠する方法により、表面の表面粗さを測定した場合に、表面の算術平均傾斜RΔaが、10度以上であることが必要である。
算術平均傾斜RΔaが10度未満であると、十分な撥水性が得られない。また、撥水性の観点から、算術平均傾斜RΔaは、12度以上であることが好ましく、15度以上であることがより好ましく、18度以上であることが特に好ましい。算術平均傾斜RΔaの上限値は、特に限定されないが、例えば、50度以下であってもよく、40度以下であってもよく、30度以下であってもよい。
【0022】
本実施形態に係る撥水構造体において、算術平均傾斜RΔaが、粗さ曲線に基づいて、下記数式(F1)から算出され、この粗さ曲線を測定した測定長さが、700μmであることが好ましい。
【0023】
【数2】
【0024】
数式(F1)において、ΔXは、各測定区間の間隔であり、ΔYiは、各測定区間での高さ差である。nは、100以上の整数である。また、nは、200以上の整数であることが好ましく、300以上の整数であることがより好ましい。一方、nの上限値は、3000以下の整数であることが好ましく、2000以下の整数であることがより好ましい。
【0025】
ここで、図1を参照しながら、算術平均傾斜RΔaの測定方法を説明する。
図1のグラフにおいて、粗さ曲線を測定した測定長さは、700μmである。そして、横軸を測定長さにして、縦軸に高さをプロットしたのが、粗さ曲線である。数式(F1)におけるΔXは、各測定区間の間隔であるが、この間隔は、nの数値により決まる。例えば、nが1400のときには、ΔXは0.5μmとなる。そして、各測定区間での高さ差であるΔYiを測定していき、数式(F1)より、算術平均傾斜RΔaを算出できる。
【0026】
本実施形態に係る撥水構造体において、表面の算術平均高さRaが、0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。
算術平均高さRaが前記範囲内であれば、撥水性を更に向上できる。同様の観点から、算術平均高さRaは、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。算術平均高さRaの上限値は、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
【0027】
本実施形態に係る撥水構造体において、JIS R 3257:1999の6.静滴法に準拠する方法により、表面の水の接触角を測定した場合に、水の接触角が、90度以上であることが好ましい。
水の接触角が90度以上であれば、撥水構造体が撥水性を有しているといえる。また、撥水性の観点からは、水の接触角は、95度以上であることがより好ましく、100度以上であることがさらに好ましく、110度以上であることが特に好ましい。
【0028】
(撥水シート)
本実施形態に係る撥水構造体は、シート状であることが好ましい。具体的には、撥水構造体は、樹脂シートであることが好ましい。また、撥水構造体は、基材シートと、基材シートに積層された樹脂層とを備えることが好ましい。なお、本実施形態に係る撥水構造体の構成が、かかる構成に限定されるわけではないが、本実施形態では、以下、図2に示すような、基材シート2と、樹脂層3とを備える撥水構造体(例えば、撥水シート1)を例に挙げて説明する。
【0029】
撥水シート1は、基材シート2と、樹脂層3とを備えている。樹脂層3は、基材シート2上に積層されている。そして、樹脂層3の表面の表面粗さを測定した場合には、表面の算術平均傾斜RΔaが、10度以上となっている。
【0030】
基材シート2としては、樹脂層3を担持できる紙又はフィルム状の基材であれば、特に制限はない。基材シート2としては、紙基材、基布、及び樹脂フィルム等が挙げられる。
紙基材としては、薄葉紙、クラフト紙、リンター紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、及びグラシン紙等が挙げられる。
樹脂フィルムの樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、及びポリプロピレン等)、ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-ビニルアルコール共重合体等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等)、及びその他の合成樹脂等(ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、酢酸セルロース、セロハン、及びポリカーボネート等)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び熱成型性を考慮すると、紙基材が好ましい。さらに、耐熱性及び寸法安定性が優れるという観点から、クラフト紙、中質紙、上質紙、及び含浸紙等がより好ましい。また、生分解性の観点からは、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、及び酢酸セルロースからなる群から選択される少なくとも1つを含む樹脂フィルムであることが好ましい。
【0031】
基材シート2の厚さ及び大きさには、特に制限はなく、撥水シート1の用途、基材シート2の種類等に応じて、所定の厚さ、大きさのものを適宜使用できる。
例えば、基材シート2が紙基材の場合には、その米坪量は、30g/m以上であることが好ましく、80g/m以上であることがより好ましい。米坪量の上限値は、200g/m以下であることが好ましく、140g/m以下であることがより好ましい。
また、基材シート2が合成樹脂のフィルムの場合には、その厚さは、5μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。厚さの上限値は、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0032】
樹脂層3は、撥水シート1の表面に設けられている、樹脂からなる層である。
樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、プラスチックの環境問題への対応という観点から、樹脂は、加水分解性基を有する樹脂であることが好ましく、生分解性を有する樹脂であることがより好ましい。なお、加水分解性基としては、エステル結合を有する基等が挙げられる。
通常、加水分解性基を有する樹脂、又は、生分解性を有する樹脂からなる層は、親水性となる傾向がある。しかし、本実施形態によれば、このような層の表面に特殊な表面構造が施されている。そのため、上記の樹脂を使用しているにも拘わらず、十分な撥水性を有する樹脂層3とできる。
【0033】
加水分解性基を有する樹脂、又は、生分解性を有する樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、酢酸セルロース(CA)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、およびポリヒドロキシアルカン酸(PHA)等が挙げられる。これらの中でも、生分解性の観点から、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、又は酢酸セルロースが好ましい。
【0034】
熱可塑性樹脂は、非晶性樹脂であってもよく、結晶性樹脂であってもよい。また、熱可塑性樹脂の軟化点は、シートの生産性の観点から、40℃以上200℃以下であることが好ましい。同様の観点から、熱可塑性樹脂の軟化点は、60℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、140℃以上であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂の軟化点の上限は、180℃以下であることがより好ましい。
非晶性樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及びポリカーボネート等が挙げられる。
【0035】
結晶性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン6(ポリアミド)、ナイロン66(ポリアミド)、ポリアセタール、ポリフェニレンスルファイド、及びポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
結晶性樹脂を使用する場合、シートの生産性の観点から、結晶性樹脂の融点は、100℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0036】
本実施形態における樹脂は、下記条件1及び下記条件2のうちの少なくとも1つの条件を満たす樹脂であることが好ましい。
これらの条件を満たす樹脂からなる層を形成した場合、通常、十分な撥水性を有さない表面となる傾向がある。しかし、本実施形態によれば、このような層の表面に特殊な表面構造が施されている。そのため、上記の樹脂を使用しているにも拘わらず、十分な撥水性を有する樹脂層3とできる。
条件1:樹脂層をSUS304#600の転写成型を用いて転写することで形成した撥水構造体について、JIS R 3257:1999の6.静滴法に準拠する方法により、表面の水の接触角を測定した場合に、水の接触角が、100度以下である。
条件2:樹脂層の表面の算術平均傾斜RΔaを0.1度以上1度以下の範囲とした撥水構造体について、JIS R 3257:1999の6.静滴法に準拠する方法により、表面の水の接触角を測定した場合に、水の接触角が、100度以下である。
【0037】
樹脂層3の厚さや大きさ等には、特に制限はなく、撥水シート1の用途、樹脂層3の種類等に応じて、所定の厚さ、大きさのものを適宜使用できる。
樹脂層3の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。樹脂層3の厚さの上限値は、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0038】
(撥水構造体の製造方法)
次に、本実施形態に係る撥水構造体について、撥水シート1の製造方法を例に挙げて、説明する。
撥水シート1は、図3に示す撥水シート製造装置10を用いて製造できる。また、撥水シート1は、以下説明する積層工程及びエンボス工程を施すことにより製造できる。
撥水シート製造装置10は、押出機11と、エンボス柄加工部12とを備えている。
押出機11は、樹脂を押出して基材シート2上に樹脂を塗布するものであり、Tダイを備えている。樹脂は、このTダイから基材シート2上に押出されるとともに、ラミネートされる。
【0039】
エンボス柄加工部12は、樹脂層3のエンボス加工を行う部分であり、エンボスロール12a及びプレッシャーロール12bを備えている。エンボスロール12aは、金属製ロールであって、その外表面にはエンボス柄に対応した凹凸形状が形成されている。また、エンボスロール12aの内部には、冷却水が通水されている。そして、エンボスロール12aは、基材シート2上にラミネートされた樹脂層3を冷却し、固化させるための冷却ロールとしての役割も担う。プレッシャーロール12bはゴム製ロールであって、その外表面は略平滑である。
【0040】
積層工程においては、撥水シート製造装置10に供給された基材シート2に対して、溶融した樹脂を押出機11のダイから押し出してラミネートし、樹脂層3が形成される。
押出機11の加熱温度等の条件は、樹脂層3を構成する樹脂の融点及びメルトフローレート等に応じて適宜設定する。
【0041】
エンボス工程においては、積層工程により形成された、基材シート2上の樹脂層3に対して、凹凸形状が形成される。
エンボス柄加工部12を構成するエンボスロール12aとプレッシャーロール12bとが水平対向して配置されている。そして、樹脂層3が形成された基材シート2は、略下方向に送られるとともに、エンボスロール12aとプレッシャーロール12bとの間で挟み込まれる。エンボスロール12aと当接した樹脂層3には、エンボスロール12aの表面に予め形成されている凹凸形状が転写される。それとともに、樹脂層3は冷却される。この転写及び冷却によって、樹脂層3の表面に凹凸形状が形成される。
【0042】
ここで、エンボス加工時のプレス圧及び加熱温度等の条件は、樹脂の材質又はエンボスロール12aの表面の凹凸形状に応じて適宜設定できる。
エンボス加工時の加熱温度は、140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。加熱温度の上限値は、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。
エンボス加工時のプレス圧は、0.05MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることがより好ましい。プレス圧の上限値は、3MPa以下であることが好ましく、1MPa以下であることがより好ましい。
エンボス加工時の加熱時間は、10秒間以上であることが好ましく、30秒間以上であることがより好ましい。加熱時間の上限値は、5分間以下であることが好ましく、3分間以下であることがより好ましい。
エンボス加工後の冷却時間は、20秒間以上であることが好ましく、2分間以上であることがより好ましい。冷却時間の上限値は、15分間以下であることが好ましく、8分間以下であることがより好ましい。また、ここでの冷却温度は、例えば20℃以上30℃以下である。
【0043】
本実施形態においては、エンボスロール12aの表面の凹凸形状を、調整することが必要である。エンボスロール12aの表面の凹凸形状に応じて、樹脂層3の表面の凹凸形状が変化するからである。
エンボスロール12aの表面には、エンボス材が設けられている。そして、(i)エンボス材の種類を変更したり、(ii)エンボス材に対して、各種の表面処理を施したりすることで、エンボスロール12aの表面を調整できる。
エンボス材の材質としては、鉄、及びステンレス(SUS)等が挙げられる。
表面処理としては、ブラスト処理、バフ研磨処理、エッチング処理、レーザー彫刻、レジスト加工及びミル彫刻等が挙げられる。
また、ブラスト処理で用いるビーズは、特に制限されないが、表面の凹凸形状の観点から、選択することが好ましい。ビーズの材質としては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、鉄、シリコンカーバイド(SiC)、ボロンカーバイド(BC)、及び、これらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、アルミナ又はジルコニアが好ましく、アルミナがより好ましい。ビーズの形状としては、角形、円柱形、及び球形等が挙げられる。これらの中でも、角形が好ましい。
本実施形態においては、エンボスロール12aの表面の凹凸形状を調整することで、表面の算術平均傾斜RΔaが、10度以上である表面を有する樹脂層3を形成できる。
【0044】
以上のようにして、撥水シート1が製造される。この撥水シート1は、巻き取り機(図示せず)によってロール状に巻き取られる。巻き取られた撥水シート1は、適宜、用途に応じたサイズに裁断されて使用される。
【0045】
(実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
本実施形態においては、表面の算術平均傾斜RΔaが、10度以上である表面を有する樹脂層3を備える撥水シート1が得られる。そして、この撥水シート1における樹脂層3は、撥水性成分を用いずに、十分な撥水性を有する。
【0046】
(実施形態の変形)
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態では、撥水構造体の一例として、撥水シート1を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、撥水構造体は、シート状でなくてもよく、積層体でなくてもよい。また、撥水構造体は、撥水構造表面とは異なる面に粘着剤層を備えるものであってもよく、例えば、その粘着剤層により、被着体に貼付することで、その被着体を撥水構造体とすることもできる。
【0047】
前述の実施形態における撥水シートの製造方法においては、撥水シート製造装置10を用いて、エンボス加工を行ったが、これに限定されない。例えば、所望の凹凸を有するエンボス板と樹脂シートを重ね、熱プレス機を用いて加熱しながら加圧することで、エンボス加工を行ってもよい。
【実施例
【0048】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、実施例及び比較例で用いた樹脂を以下に示す。
(樹脂-1)
銘柄:三菱ケミカル株式会社製の「FORZEAS ZM9B02」
樹脂の種類:ポリブチレンサクシネート(PBS)
生分解性:有
軟化点:119℃
融点:113℃
ガラス転移温度(Tg):-33℃
(樹脂-2)
銘柄:株式会社ダイセル製の「L-20」
樹脂の種類:酢酸セルロース(CA)
生分解性:有
軟化点:180℃
融点:230℃
ガラス転移温度(Tg):160℃
(樹脂-3)
銘柄:ユニチカ株式会社製の「テラマック TE-2000C」
樹脂の種類:ポリ乳酸(PLA)
生分解性:有
軟化点:58℃
融点:170℃
ガラス転移温度(Tg):57℃
(樹脂-4)
銘柄:サンアロマー株式会社製の「サンアロマーPHA03A」
樹脂の種類:ポリプロピレン(PP)
生分解性:無
軟化点:169℃
融点:162℃
ガラス転移温度(Tg):-20℃
【0049】
[実施例1]
まず、樹脂-1からなる厚さ100μmの樹脂フィルムを準備した。
次いで、台紙と、工程剥離紙(リンテック株式会社製の「ESRL-5」)と、樹脂フィルムと、下記のエンボス材(寸法:100mm×100mm、厚さ:3mm)とを順次重ね、熱プレス機を用いて、加熱温度190℃、プレス圧4.0kgf/cm(約0.4MPa)、加熱温度1分間、及び23℃で冷却時間5分間の条件で、加熱圧着及び冷却を行った。これにより、樹脂が溶融し、固着して、工程剥離紙上に樹脂シートが形成された。そして、エンボス材及び台紙を取り外し、さらに樹脂シートから工程剥離紙を剥離して、樹脂シート(撥水シート)を得た。
なお、実施例1で用いた樹脂およびブラスト材を表1に記載した。
(エンボス材)
板の銘柄:SUS304#600
表面処理:ブラスト処理
ブラスト材の銘柄:株式会社不二製作所製の「FZG」
ブラスト材の形状:角形
ブラスト材の番手:#30
ブラスト材の粒径:60~130μm
【0050】
[実施例2~7]
樹脂およびブラスト材として、下記表1に記載のものを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シート(撥水シート)を得た。
なお、実施例2等で用いたブラスト材の銘柄は、株式会社不二製作所製の「WA」である。
【0051】
[比較例1~5]
樹脂およびブラスト材として、下記表1に記載のものを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。
なお、比較例1等では、エンボス材にブラスト処理を行わず、「SUS304#600」をそのままエンボス材として使用した。また、比較例2で用いたブラスト材の銘柄は、株式会社不二製作所製の「FGB」である。
【0052】
[表面粗さの解析]
実施例及び比較例で得られた樹脂シートについて、JIS B 0601:2001に準拠する方法で、表面粗さの解析を行った。具体的には、株式会社キーエンス製の「カラー3Dレーザ顕微鏡(型番:VK-9700)」を用いて、下記の条件にて、表面粗さの解析を行い、粗さ曲線を測定した。
対物レンズ倍率:20倍
粗さ曲線スムージング:高さスムージング±4
測定長さ:700μm
測定回数:3回
得られた粗さ曲線に基づいて、前記数式(F1)から、算術平均傾斜RΔaを算出した。なお、各測定区間の間隔ΔXは、0.5μmに設定した。また、測定は3回行い、その平均値を算術平均傾斜RΔaの値とした。得られた結果を表1に示す。
【0053】
[水の接触角]
水の接触角の測定は、JIS R3257:1999の6.静滴法に準じて測定した。ただし、サンプルを基板ガラスに代えて実施例及び比較例で得られた樹脂シートをサンプルとし、当該サンプルの凹凸が形成された樹脂表面における接触角を測定した。なお、測定装置としては、協和界面科学社製の「DMo-701」を用いた。得られた結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す結果から、樹脂シートの表面の算術平均傾斜RΔaが10度以上である場合(実施例1~7)には、樹脂シートの表面の算術平均傾斜RΔaが10度未満である場合(比較例1~4)と比較して、水の接触角が大きくなることが分かった。
【符号の説明】
【0056】
1…撥水シート、2…基材シート、3…樹脂層、10…撥水シート製造装置、11…押出機、12…エンボス柄加工部、12a…エンボスロール、12b…プレッシャーロール。
図1
図2
図3