(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-05
(45)【発行日】2026-01-14
(54)【発明の名称】DHA,EPAを含有する、可塑性油脂組成物及びその製造法
(51)【国際特許分類】
A23D 7/005 20060101AFI20260106BHJP
A23D 7/01 20060101ALI20260106BHJP
【FI】
A23D7/005
A23D7/01
(21)【出願番号】P 2021067764
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2020085594
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236768
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 革
(72)【発明者】
【氏名】中野 幹生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真晴
(72)【発明者】
【氏名】熨斗 洋星
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150559(WO,A1)
【文献】特開2017-225381(JP,A)
【文献】特開2015-116188(JP,A)
【文献】特開平02-203741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/05
A23B 20/00-20/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程による、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する、異風味発生が抑制された
マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングのいずれかの可塑性油脂組成物の製造法。
1 ポリフェノールを含有する水相Aを調製する工程。
2 1の水相AをDHA及び/又はEPAを含有する油相Aに、粒子径300nm以下に微分散し、油中水型組成物Aとする工程。
3 可塑性油脂組成物へ、油中水型組成物Aを混合し、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する可塑性油脂組成物とする工程。ただし該混合は、可塑性油脂組成物に対して油中水型組成物Aを添加したうえで、該可塑性油脂組成物と、該油中水型組成物Aの、それぞれの乳化状態を破壊しない程度に混合を行う。
【請求項2】
以下の工程による、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する
マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングのいずれかの可塑性油脂組成物において、異風味の発生を抑制する方法。
1 ポリフェノールを含有する水相Aを調製する工程。
2 1の水相をDHA及び/又はEPAを含有する油相Aに、粒子径300nm以下に微分散し、油中水型組成物Aとする工程。
3 可塑性油脂組成物へ、油中水型組成物Aを混合し、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する可塑性油脂組成物とする工程。ただし該混合は、可塑性油脂組成物に対して油中水型組成物Aを添加したうえで、該可塑性油脂組成物と、該油中水型組成物Aの、それぞれの乳化状態を破壊しない程度に混合を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DHA,EPAを含有する、可塑性油脂組成物及び、その製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DHAやEPAを含有する可塑性油脂組成物に関する出願としては、特許文献1が存在する。ここでは、「高度不飽和脂肪酸を比較的高濃度で含有する油脂に対し、水溶性抗酸化剤と糖質を特定量含有する水相を混合することにより、経時的な風味の劣化が抑制された、長期保存安定性に優れた可塑性油脂組成物が得られる。」旨記載されている。
非特許文献1には、マーガリン等の製造方法の一態様として、冷却かき取り混捏装置通過後の、一部原材料の混合について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「マーガリン・ショートニング・ラード」中澤君敏著P32 株式会社光琳 昭和54年7月25日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、DHAやEPAを含有する可塑性油脂組成物において、その異風味の発生を強く抑制すること、及び、異風味が強く抑制された可塑性油脂組成物の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、課題の解決に向け鋭意検討を行った。
特許文献1の方法により、一定程度、DHAやEPAに由来する異風味を抑制することは可能であった。しかし、より強く、異風味の発生を抑制することが必要と思われた。
非特許文献1は可塑性油脂組成物の製造方法等を網羅的に記載した書籍であり、DHAやEPAを含有する可塑性油脂組成物や、その異風味の抑制方法についての開示はなかった。
【0007】
本発明者が更に検討を行ったところ、DHAやEPAを含有する可塑性油脂組成物において、ポリフェノールを含有する水相を、DHAやEPAを含有する油相に粒子径300nm以下に微分散した油中水型組成物を可塑性油脂組成物と混合することで、DHAやEPAに由来する異風味の発生を強力に抑制できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)ポリフェノールを含有する水相Aが、油相中に粒子径300nm以下の微分散状態で存在し、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する、異風味発生が抑制された可塑性油脂組成物、
(2)以下の工程による、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する、異風味発生が抑制された可塑性油脂組成物の製造法、
1 ポリフェノールを含有する水相Aを調製する工程、
2 1の水相AをDHA及び/又はEPAを含有する油相Aに、粒子径300nm以下に微分散し、油中水型組成物Aとする工程、
3 可塑性油脂組成物へ、油中水型組成物Aを混合し、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する可塑性油脂組成物とする工程、
(3)以下の工程による、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する可塑性油脂組成物において、異風味の発生を抑制する方法、
1 ポリフェノールを含有するA水相を調製する工程、
2 1の水相をDHA及び/又はEPAを含有する油相Aに、粒子径300nm以下に微分散し、油中水型組成物Aとする工程、
3 可塑性油脂組成物へ、油中水型組成物Aを混合し、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する可塑性油脂組成物とする工程、
に関するものである。
なお、上記(2)の3において、最初に現れる「可塑性油脂組成物」は別途準備するものであり、それは別途一般的な方法で調製されたものでも、また市販品を購入した物でもかまわない。要は、既に「可塑性油脂組成物」となったものへ、油中水型組成物Aを混合することが要点である。これは、上記(3)の3についても同様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、DHAやEPAを含有する可塑性油脂組成物において、その異風味の発生を強く抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、DHAとはドコサヘキサエン酸の略であり、またEPAとはエイコサペンタエン酸の略である。
本発明において、たとえばDHAを含有する油脂とは、DHAを、トリグリセリドの構成脂肪酸の1以上として含む油脂を意味する。
なお、DHAやEPAをPUFA(polyunsaturated fatty acids)と称することがあり、DHAやEPAを含む油脂を単にPUFA油と称することがある。
【0011】
本発明はDHA及び/又はEPAを含有する可塑性油脂組成物に関するものである。該可塑性油脂組成物におけるDHAとEPAの合計量は0.5~5質量%であることが必要であり、より望ましくは0.8~4質量%であり、更に望ましくは1.2~3質量%である。DHAとEPAの合計量が適当である事で、DHAやEPAに由来する異風味が抑制された可塑性油脂組成物を得る事ができる。
【0012】
本発明においてポリフェノールとは、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)を持つ植物成分の総称であり、水溶性の抗酸化剤として用いられるものである。具体的には、茶ポリフェノール、リンゴポリフェノール、ぶどうポリフェノールを挙げる事ができ、より望ましくは茶ポリフェノールである。なお、本発明においては、茶ポリフェノールを多く含む成分として「茶抽出物」、「茶カテキン」を、ブドウポリフェノールを多く含む成分として「ブドウ種子抽出物」を、リンゴポリフェノールを多く含む成分として「リンゴ抽出物」を使用する場合もあるが、それぞれ同義と解釈する。
【0013】
本発明においてポリフェノールは、水に溶解され、水相を形成する。この水相を本発明では便宜的に水相Aと称する。水相Aにおけるポリフェノールの量は、3~70質量%であることが望ましい。この量は、より望ましくは10~50質量%であり、さらに望ましくは18~30質量%である。水相A中のポリフェノールの濃度が適当であれば、DHAやEPAの酸化に由来する異風味が抑制された、DHAやEPAを含有する可塑性油脂組成物を得る事ができる。
【0014】
水相Aにはポリフェノールの他にも、本発明の効果を妨げない範囲で、各種の水溶性固形分を溶解することができる。具体的には、糖質や蛋白質を挙げる事ができ、望ましくは糖質である。ポリフェノール以外の水溶性固形分を溶解することで、その後の微分散が容易となり、DHAやEPAを含有する可塑性油脂組成物における異風味発生を、より強く抑制することができる。
水相Aにおける水溶性固形分の量は、ポリフェノールの量と併せて、3~70質量%であることが望ましく、より望ましくは20~65質量%であり、更に望ましくは30~60質量%である。水相Aにおける水溶性固形分の量が適当であることで、その後の微分散が容易となり、DHAやEPAを含有する油中水型乳化油脂組成物における異風味発生を、より強く抑制することができる。
【0015】
水相Aは、DHA及び/又はEPAを含有する油相中に、粒子径300nm以下に微分散される。なお、製造段階において、DHA及び/又はEPAを含有する油相を、本発明では便宜的に油相Aと称する。
油相Aには、DHA及び/又はEPAを含有する油脂以外にも、本発明の効果を妨げない範囲内で、他の油脂や各種の成分を溶解することができる。具体的には、油溶性乳化剤や油溶性の抗酸化剤を挙げることができる。特に、油溶性乳化剤は、水相Aとの間で安定的な油中水型組成物を形成する上で、添加することが望ましい。なお、油相Aに水相Aが分散してできる油中水型組成物を、本発明では便宜的に油中水型組成物Aと称する。
本発明ではレシチンの他、HLB7以下の乳化剤を油溶性乳化剤と定義している。油溶性乳化剤の具体例としては、ポリグリセリンエステル、シュガーエステル、ソルビタンエステル、モノグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1以上が望ましく、より望ましくはポリグリセリンエステル、シュガーエステル、蒸留モノグリセリドが好ましく、特にポリグリセリンエステルが好ましく、そのうちポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが最も好ましい。なお、ポリグリセリン縮合リシノレートはPGPRと略称されることがある。油溶性乳化剤を用いることで、DHAやEPAを含有する可塑性油脂組成物における異風味発生を、より強く抑制することができる。
【0016】
油中水型組成物Aにおける水相Aの粒子径は、以下の方法で測定する。
装置名:ゼータサイザーナノS、製造元:マルバーン測定する油脂組成物10μl をヘキサン2mlに希釈し、測定した。
(サンプル調製後1日目の段階での測定で、300nmを超える場合(すなわち、沈殿が生じていた場合)を不合格とした)
温度: 20.0℃
平衡時間: 240秒
セル:ガラスセル
測定角度: 173°
ポジショニング法:最適ポジション選択
自動減衰の選択:有
【0017】
なお、本発明においては、最終的な可塑性油脂組成物においても、水相Aは粒子径300nm以下で存在する必要がある。そのため、本発明に係る可塑性油脂組成物の製造法においては、油中水型組成物Aを、それ以外の原材料により調製された可塑性油脂組成物と最終的に混合するような製造法とする必要がある。
なお、製造法については、以下に更に詳しく説明する。
【0018】
本発明に係る可塑性油脂組成物は油中水型に乳化した可塑性油脂組成物であり、具体例としては、マーガリンやファットスプレッド、ショートニングを挙げる事ができる。なお、本発明に係る可塑性油脂組成物は、油中水型組成物Aを含有していることから、厳密には、全て油中水型の可塑性油脂組成物ともいえる。しかし、本発明に係る可塑性油脂組成物における水相Aの量は微量である。たとえば一般的には水相を有さないとされるショートニングは、JASの規定で水分は0.5%以下とされているが、水相Aに由来する水の量は、これよりもはるかに少ないものである。そのため、本発明においては、最終的に得られる可塑性油脂組成物の分類を判断する場合において、水相Aに由来する水分を考慮していない。
【0019】
次に、本発明に係る可塑性油脂組成物の製造法を、例をもって説明する。
本発明においては、水にポリフェノールを溶解して水相Aを調製する。水相Aにはポリフェノールの他、適宜他の水溶性固形分を溶解することができることは、これまで述べたとおりである。
本発明においては、DHA及び/又はEPAを含有する油相Aを調製する。油相Aには、DHA及び/又はEPAを含有する油脂の他、適宜他の油脂や油溶性成分を溶解することができることは、これまで述べたとおりである。ここで、他の油溶性成分としては油溶性乳化剤を使用することが望ましい。なお、油相Aの原材料がDHA及び/又はEPAを含有する油脂以外にない場合は、当該DHA及び/又はEPAを含有する油脂が油相Aと同義となる。
【0020】
本発明においては、油相Aへ水相Aを微分散し、油中水型組成物Aを調製する。油中水型組成物Aの調製には、一般的に使用される乳化機を使用することができる。具体的には、高圧ホモゲナイザーや超音波乳化機、また、湿式ジェットミルとも言われる2液衝突型の乳化装置を用いることができる。適当な乳化装置を使用することで、水相Aの粒子径が300nm以下の油中水型組成物Aを得ることができる。なお、高圧ホモゲナイザーを使用する場合の一般的な乳化条件は、30~40MPa、10~30パスである。
【0021】
本発明においては、得られた油中水型組成物Aを、別途準備した、油中水型の可塑性油脂組成物に混合することで、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する可塑性油脂組成物とする点に特徴が有る。
通常、「DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する可塑性油脂組成物」を得ようとする場合は、全ての原材料を対象に、水及び水に溶解する成分から水相を調製し、また、油脂及び油脂に溶解する成分から油相を調製し、これらを混合して可塑性油脂組成物製造装置に供することが効率的である。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、このような製造法では、DHAやEPAの酸化に由来する異臭の発生を十分に抑制できないことが明らかとなった。
【0022】
上記の様な現象が起こる明確な理由は不明であるが、本発明においては、製造段階における、DHAやEPAを含有する油相Aと、水溶性抗酸化剤を含有する水相Aの乳化状態が重要であり、可塑性油脂組成物製造装置を通過することで、これが破壊されてしまうことにより、酸化安定性が劣る結果につながっているとも考えられる。しかし、水溶性抗酸化剤として、ポリフェノールを使用せず、アスコルビン酸を使用した場合には、本発明に係る製造法を採用したとしても、異臭の発生を十分に抑制することができないことから、使用する抗酸化剤の種類も関連した作用が生じている可能性も有るが、現段階では明らかではない。
【0023】
上記の「別途準備した可塑性油脂組成物」とは、市販されているマーガリンやファットスプレッド等の可塑性油脂組成物を購入してもよいし、自ら調製することも可能である。市販の可塑性油脂組成物を購入し、これを用いる場合には、DHAとEPAの合計量が所定量となるように、該可塑性油脂組成物に油中水型組成物Aを添加し、これを混合すればよい。なお、ここで言う混合は、該可塑性油脂組成物と、該油中水型組成物Aの、それぞれの乳化状態を破壊しない程度であって、食した際に、可塑性油脂組成物として違和感を感じられない程度の攪拌である。より具体的には、簡易的には該可塑性油脂組成物と、該油中水型組成物Aを「へら」を用いて手で混ぜたりするものである。ミキサー等の攪拌機を使用することも可能では有るが、全体の温度が融点を超えて、乳化状態が破壊されるような攪拌は避ける必要がある。また、可塑性油脂組成物製造装置のうち、かき取り式熱交換機を通過させるような攪拌も避けるべきである。特に掻き取り式熱交換機は強力な乳化力を有するものであり、油中水型組成物Aを、冷却を伴う掻き取り式熱交換機を通過させると、その乳化が破壊されてしまうことは、当然のごとくに理解される。
以下では、自ら可塑性油脂組成物を調製する例として、マーガリンを例に説明を続ける。なお、マーガリンとファットスプレッドは、油脂の含有量による分類であり、同様の性状を有し、製造法も同様である。
【0024】
マーガリンの製造においては、水に溶解する原材料を混合し水相を調製する。言うまでもなく、この水相は上記水相Aとは別の水相である。この水相を、わかりやすくするために水相Bと称する。また、油脂及び油脂に溶解する原材料を混合し、油相を調製する。この油相を、わかりやすくするために油相Bと称する。
次に、油相Bを攪拌しているところへ水相Bを添加し、そのまま攪拌を続けることで、略乳化物Bとする。そして、略乳化物Bを、掻き取り式熱交換機へ供する。掻き取り式熱交換機としては、コンビネーター、パーフェクターを挙げることができる。
【0025】
可塑性油脂組成物の製造においては、掻き取り式熱交換機通過後、冷却機能のないピンマシンを通過させる場合もある。しかしながら本発明においては、掻き取り式熱交換機通過後であれば、ピンマシンの通過の前後に関わりなく、油中水型組成物Aを添加することができる。
本発明の製造法における、油中水型組成物Aを混合する可塑性油脂組成物とは、より詳細に言うと、冷却を伴う掻き取り式熱交換機通過後の状態を指すものである。
【0026】
なお、油中水型組成物Aを添加後には、均一にするために攪拌が必要であり、ピンマシン通過前に油中水型組成物Aを添加することにより、攪拌の手間が1回で済むことになり、好ましい。
本発明では、油中水型の可塑性油脂組成物へ、油中水型組成物Aを混合する事になる。いずれも乳化型は油中水型であるため、連続相である油相はある程度、一体化することが想定される。しかしながら、油中水型組成物A中の水相Aは、可塑性油脂組成物へ混合された後も、当初の平均粒子径を保っていると推定され、それが、本発明に係る効果につながっていると考えられる。
以下、実施例により、より詳細に発明の実施態様を説明する。
【実施例】
【0027】
検討1 油中水型組成物Aの調製
表1-1の配合に従い、組成物を調製した。調製法は「〇油中水型組成物Aサンプルの調製法」に従った。
【0028】
表1-1
・茶ポリフェノールにはファーマフーズ製「おいしいカテキンPF-TP80」を使用した。本品は茶ポリフェノールを主要成分とするものであった。
・ブドウポリフェノールにはサンブライト製「GRAPE SEED EXTRACT」を使用した。本品は、ブドウ由来のポリフェノールを主要成分とするものであった。
・リンゴポリフェノールにはアサヒフードアンドヘルス製「アップルフェノンSH」を使用した。本品は、リンゴポリフェノールを主要成分とするものであった。
・乳化剤には、阪本薬品工業製ポリグリセリン縮合リシノレート「SYグリスターCRS-75」を使用した。
・大豆油には不二製油製「大豆白絞油」を使用した。
・TBHQには、Food Safe TECHNOLOGY製「Amalfi Extend-OX TBHQ」を使用した。
・PUFA油には、DHAとEPAが合計で49.8質量%の油脂を使用した。
・水相が存在する配合において、油中水型乳化物における水相の粒子径は全て300nm以下であった。
【0029】
〇油中水型組成物Aサンプルの調製法
1 配合に従い、水相、油相に分類される原材料をそれぞれ混合、溶解し、水相及び油相を調製した。
2 油相を攪拌しているところへ水相を混合し、略乳化物とした。
3 高圧ホモゲナイザーで、30~40MPa、10~30パス処理し、油中水型組成物Aとした。
なお、配合に水相が存在しないサンプルは、上記手順の水相部分の記述を無視した。
【0030】
検討2 可塑性油脂組成物サンプルの調製と評価
表2-1に従い、市販ファットスプレッドに油中水型組成物Aサンプルを混合し、可塑性油脂組成物サンプルを調製した。調製法は、「○可塑性油脂組成物サンプルの調製法」に従った。
得られた可塑性油脂組成物サンプルを、「〇可塑性油脂組成物サンプルの評価法」に従い、評価した。結果を表2-2に示した。
【0031】
〇可塑性油脂組成物サンプルの評価法
調製後2日間冷蔵保管した各サンプルを20℃で保管し、経時的に官能評価を行った。官能評価はパネラー3名の合議により、以下の基準で行った。
5点 異臭なし。
4点 ごくわずかな異臭が感じられるが許容範囲であるもの。
3点 わずかではあるが、許容範囲を超える異臭が感じられるもの。
2点 明確な異臭が感じられるもの。
1点 強い異臭が感じられるもの。
240日目で4点以上を合格と判断した。
【0032】
表2-1 可塑性油脂組成物の配合
・市販ファットスプレッドには、雪印株式会社製「ネオソフト」を使用した。
【0033】
○可塑性油脂組成物サンプルの調製法
1 配合に従い、市販ファットスプレッドに、各油中水型組成物Aサンプルを添加した。
2 スプーンを用い、緩やかに攪拌し均一化した。
3 80ml容のプラスチック容器にいれ、蓋をして保管テストに供した。
【0034】
【0035】
考察
・比較例2-1は、日本では認可されていない、強力な抗酸化剤であるTBHQを使用した。60日目までは風味良好であったが、240日目では明確な異臭が感じられ、不合格であった。
・比較例2-2は、抗酸化剤として一般的に使用されるビタミンCを使用したものであるが、7日目でも明確な異臭が感じられ、不合格であった。
・実施例2-1,2-2,2-3はそれぞれ抗酸化剤としてポリフェノールを使用したものであるが、いずれも240日目で風味良好であり、合格であった。
・比較例2-3は抗酸化剤を使用しないものであるが、240日目で明確な異臭が感じられ、不合格であった。
【0036】
なお、全ての原材料を対象に、水及び水に溶解するもので水相を、また、油脂及び油脂に溶解するもので油相を調製し、これらを混合後、掻き取り式熱交換機(コンビネーター)を通過させ、可塑性油脂組成物を調製した場合、DHAやEPAの酸化に由来する異風味を抑制する効果は弱く、上記官能評価において不合格であった。なお、コンビネーターにより調製された可塑性油脂組成物における水相の粒子径は、約1μm(=1000nm)であるため、上記の水相の粒子径は少なくとも300nmを超えるものと考えられた。
【0037】
以上より、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する、異風味発生が抑制された可塑性油脂組成物を調製する際には、ポリフェノールを含有する水相AがDHA及び/又はEPAを含有する油相Aに、粒子径300nm以下に微分散した油中水型組成物Aを調製し、該油中水型組成物Aを可塑性油脂組成物と混合する製造法が必要である事が確認された。
【0038】
検討3 油中水型組成物Aサンプルの調製2
表3-1の配合に従い、組成物を調製した。調製法は「〇油中水型組成物Aサンプルの調製法2」に従った。
【0039】
表3-1
・カテキン製剤には、太陽化学製の茶抽出物である「サンフェノン90S」を使用した。
・乳化剤には、阪本薬品工業製ポリグリセリン縮合リシノレート「SYグリスターCRS-75」を使用した。
・PUFA油には、DHAとEPAが合計で49.8質量%の油脂を使用した。
・D+1の平均粒子径は、検討3-1に係る組成物が72nm、検討3-2に係る組成物が133nmであった。いずれも沈殿の発生はなかった。
【0040】
〇油中水型組成物Aサンプルの調製法2
1 配合に従い、水相、油相に分類される原材料をそれぞれ混合、溶解し、水相及び油相を調製した。
2 油相を攪拌しているところへ水相を混合し、略乳化物とした。
3 高圧ホモゲナイザーで、30~40MPa、10~30パス処理し、油中水型組成物Aとした。
【0041】
検討4 可塑性油脂組成物サンプルの調製と評価
表4-1の配合に従い、可塑性油脂組成物サンプルを調製した。調製法は、「○可塑性油脂組成物サンプルの調製法2」に従った。
得られた可塑性油脂組成物サンプルは、「〇可塑性油脂組成物サンプルの評価法2」に従い、評価した。結果を表4-2に記載した。
【0042】
表4-1 可塑性油脂組成物の配合
・エステル交換油には、融点46℃のエステル交換油、及び融点33℃のエステル交換油の混合物を使用した。融点は日本油化学会制定「基準油脂分析試験法(1996年版)の融点(上昇融点)の測定法に従った。
・乳化剤には理研ビタミン製のグリセリン脂肪酸エステルである「エマルジーP-100」を使用した。
・配合は、原材料合計を100質量%とし、添加物をそこへ上乗せ添加する形で表記した。
【0043】
○可塑性油脂組成物サンプルの調製法2
●「先添:比較例4-1,4-2の調製法」
1.配合に従い、水へ精製塩、脱脂粉乳を添加、溶解し水相(水相B)とした。
2.配合に従い、60℃で融解したエステル交換油へ菜種油を混合し、更に、各油中水型組成物Aサンプル、PUFA油及び添加物を添加し油相(油相B)とした。
3.2の油相Bを攪拌しているところへ1の水相Bを添加し、更に攪拌して略油中水型乳化物とした。
4.3の略油中水型乳化物を掻き取り式熱交換機(コンビネーター)へ供し、油中水型乳化物とした。
なお、コンビネーターは冷却塔を2本有し、40℃プラスマイナス5℃の略油中水型乳化物を、冷却塔1本目出口で10℃プラスマイナス3℃、冷却塔2本目出口で10℃プラスマイナス3℃となるように冷却し、可塑性油脂組成物サンプルとした。
5.80ml容プラスチック容器に30g入れ、冷蔵で2日間保管した。
●「後添:実施例4-1、比較例4-3、4-4,4-5の調製法」
1.配合に従い、水へ精製塩、脱脂粉乳を添加、溶解し水相(水相B)とした。
2.60℃で融解したエステル交換油へ菜種油を混合し、更に添加物を添加して油相(油相B)とした。
3.2の油相Bを攪拌しているところへ1の水相Bを添加し、更に攪拌して略油中水型乳化物とした。
4.3の略油中水型乳化物を掻き取り式熱交換機(コンビネーター)へ供し、可塑性油脂組成物とした。(コンビネーターの条件は、「比較例4-1,4-2の調製法」と同様とした。
5.4の可塑性油脂組成物へ「油中水型組成物Aサンプル」ないし「PUFA油」を添加し、手でかき混ぜて均一化し、可塑性油脂組成物サンプルとした。比較例4-4では何も添加せず、かき混ぜる操作のみ行った。
6.80ml容プラスチック容器に30g入れ、冷蔵で2日間保管した。
【0044】
〇可塑性油脂組成物サンプルの評価法2
調製後2日間冷蔵保管した各サンプルを10℃で保管し、経時的に官能評価を行った。
官能評価は、日頃から油中水型可塑性油脂組成物の開発に従事するパネラー3名の合議により、以下の基準にて行った。
5点 異臭なし。
4点 ごくわずかな異臭が感じられるが許容範囲であるもの。
3点 わずかではあるが、許容範囲を超える異臭が感じられるもの。
2点 明確な異臭が感じられるもの。
1点 強い異臭が感じられるもの。
63日目の評価で4点以上を合格と判断した。
【0045】
【0046】
考察
・実施例4-1は抗酸化剤としてポリフェノールを使用し、かつ、PUFA油を含む組成物を、可塑性油脂組成物へ後添加したものであるが、高度不飽和脂肪酸に由来する異風味の発生を抑制することができた。
・比較例4-1は、63日目で3点であり、抗酸化剤としてアスコルビン酸を使用する比較例4-2,4-3に比べれば、異風味を抑制できていた。
即ち、抗酸化剤としてポリフェノールを使用することには、一定の効果が認められた。なお、製造方法から、水相Aの粒子径は300nmを超えることが推定された。
・比較例4-3は抗酸化剤としてアスコルビン酸を使用し、PUFA油を含む組成物を、可塑性油脂組成物へ後添加したものであるが、高度不飽和脂肪酸に由来する異風味の発生を抑制することはできなかった。即ち、PUFA油を含む組成物を、可塑性油脂組成物へ後添加するだけでは、高度不飽和脂肪酸に由来する異風味の発生を抑制することはできなかった。
【0047】
検討5 油中水型組成物Aサンプルの調製3
表5-1の配合に従い、油中水型組成物Aを調製した。調製法は「〇油中水型組成物Aサンプルの調製法2」に従った。
【0048】
表5-1
・カテキン製剤には、太陽化学製の茶抽出物である「サンフェノン90S」を使用した。
・乳化剤には、阪本薬品工業製ポリグリセリン縮合リシノレート「SYグリスターCRS-75」を使用した。
・PUFA油には、DHAとEPAが合計で50質量%の油脂を使用した。
【0049】
検討6 可塑性油脂組成物サンプルの調製と評価
表6-1の配合に従い、可塑性油脂組成物サンプルを調製した。調製法は、「○可塑性油脂組成物サンプルの調製法3」に従った。
得られた可塑性油脂組成物サンプルは、「〇可塑性油脂組成物サンプルの評価法3」に従い、評価した。結果を表6-2に記載した。
【0050】
表6-1
・市販スプレッドには、雪印メグミルク社製ネオソフト「おいしさしっかりハーフ」を使用した。
・PUFA油には、DHAとEPAを合計42質量%含有する油脂を使用した。
・PUFA油+TBHQには、DHAとEPAを合計42質量%含有する油脂にTBHQを200ppm添加した油脂を使用した。
【0051】
○可塑性油脂組成物サンプルの調製法3
1.冷蔵庫に保管した市販スプレッドを20℃環境下、15分間放置した。
2.配合に従い、各油中水型組成物AないしPUFA油、PUFA油+TBHQを添加し、均一になるまで手で混合した。
2.80ml容プラスチック容器に30g充填し、冷蔵庫で2日間固化した。
3.20℃で保管し、経時的に官能評価を行った。
【0052】
〇可塑性油脂組成物サンプルの評価法3
調製後2日間冷蔵保管した各サンプルを20℃で保管し、160日目に官能評価を行った。
官能評価は、日頃から油中水型可塑性油脂組成物の開発に従事するパネラー3名の合議により、以下の基準にて行った。
5点 異臭なし。
4点 ごくわずかな異臭が感じられるが許容範囲であるもの。
3点 わずかではあるが、許容範囲を超える異臭が感じられるもの。
2点 明確な異臭が感じられるもの。
1点 強い異臭が感じられるもの。
160日目で4点以上を合格と判断した。
【0053】
【0054】
考察
・結果において示されたように、ポリフェノールを含有する水相Aが、油相中に粒子径300nm以下の微分散状態で存在した場合、DHAとEPAを合計で0.5~5質量%含有する可塑性油脂組成物の風味の改善が見られた。