(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-05
(45)【発行日】2026-01-14
(54)【発明の名称】硬化性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 33/04 20060101AFI20260106BHJP
C08F 4/00 20060101ALI20260106BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20260106BHJP
C08L 43/04 20060101ALI20260106BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20260106BHJP
【FI】
C08L33/04
C08F4/00
C08F8/42
C08L43/04
C09K3/10 G
(21)【出願番号】P 2021180482
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2024-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2020185132
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 遼
(72)【発明者】
【氏名】井上 友喜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千登志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 淳
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/095492(WO,A1)
【文献】特開2019-156883(JP,A)
【文献】特開2011-074325(JP,A)
【文献】特開2021-095440(JP,A)
【文献】国際公開第2009/128504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08G
C08L
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(A)及び重合体(B)を配合する硬化性組成物の製造方法であって、
前記重合体(A)は、反応性シリル基を1分子当たり平均1.0個以上有し、数平均分子量が4000~35000であるポリオキシアルキレン重合体であり、
前記重合体(A)は、プロピレンオキシド単量体の重合により生成したポリオキシアルキレン鎖を主鎖骨格に有し、
前記重合体(B)は、反応性シリル基を1分子当たり平均0.5個以上有
する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体であり、
前記製造方法は、単量体(b1)及び単量体(b2)を含む単量体組成物を、ハロゲン化第四級アンモニウム塩の存在下で、リビングラジカル重合させ、かつ、シリル化剤を反応させ
ることにより、前記重合体(B)を得ることを含み、
前記単量体(b1)は、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、
前記単量体(b2)は、炭素数9~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、
前記単量体組成物中の前記単量体(b1)の含有量が、前記単量体(b1)及び前記単量体(b2)の合計100質量部に対して、10~90質量部であり、
前記リビングラジカル重合が、可逆的配位媒介重合である、硬化性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記
単量体組成物が、前記単量体(b2)を少なくとも2種以上含む、請求項1に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記シリル化剤を、前記単量体(b1)及び前記単量体(b2)の合計100質量部に対して、0.5~10.0質量部添加する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩が、ヨウ化第四級アンモニウム塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ヨウ化第四級アンモニウム塩が、下記式(1)で表される化合物である、請求項4に記載の硬化性組成物の製造方法。
R
4N
+I
- (1)
(式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基である。)
【請求項6】
前記ヨウ化第四級アンモニウム塩が、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、及びヨウ化テトラオクチルアンモニウムから選ばれる1種以上である、請求項4又は5に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項7】
前記リビングラジカル重合において、開始剤として有機ヨウ素化合物を用いる、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項8】
前記有機ヨウ素化合物が、1,4-ジヨードオクタフルオロブタン、ビス(2-ヨードイソ酪酸)エチレングリコール、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、1,4-ビス(1’-ヨードエチル)ベンゼン、及びビス(2-ヨード-2-フェニル酢酸)エチレングリコールから選ばれる1種以上である、請求項7に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項9】
前記重合体(B)は、反応性シリル基を1分子当たり平均1.0~6.0個有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項10】
前記重合体(B)の数平均分子量が、6000~300000である、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項11】
前記重合体(A)と前記重合体(B)の質量配合比が、10/90~90/10である、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項12】
前記硬化性組成物が、シーラント用組成物である、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋構造を形成し得る反応性シリル基を有する重合体を含む硬化性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体は、柔軟性や引張特性、塗装作業性等に優れた硬化物が得られることから、シーラントや接着剤、塗料等の用途の硬化性組成物に広く用いられている。反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体を含む硬化性組成物は、反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体の添加により、硬化物の耐候性を向上できることが知られている。
【0003】
反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体は、従来、反応性シリル基を有するラジカル重合開始剤や連鎖移動剤等を用いる方法で製造されていた。このような製造方法においては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体の炭素-炭素結合鎖の主鎖骨格の側鎖に反応性シリル基が不規則に導入されやすく、得られた重合体は、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体に比べて、引張特性の点で劣るものであった。
【0004】
近年、このような物性の改善のため、リビングラジカル重合法を用いて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体への反応性シリル基の導入を制御することが検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、N-コハク酸イミド等の窒素を中心元素とし、該中心元素に結合したハロゲン原子を含む化合物を触媒とした、可逆移動触媒重合(RTCP:Reversible chain Transfer Catalyzed Polymerization)方式のリビングラジカル重合法が記載されている。このRTCP方式のリビングラジカル重合法によれば、末端ハロゲンを有する重合体が得られ、該末端ハロゲンを変性させることにより、加水分解シリル基(反応性シリル基)を分子末端に有するビニル系重合体((メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体)が得られる旨記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、臭化銅-ペンタメチルジエチレントリアミン錯体等の遷移金属錯体を触媒とした、原子移動ラジカル重合(ATRP:Atom Transfer Radical Polymerization)方式のリビングラジカル重合が記載されている。このATRP方式のリビングラジカル重合でも、末端ハロゲンを有する重合体が得られ、該末端ハロゲンの変換反応により、架橋性シリル基(反応性シリル基)を分子末端に有するビニル系重合体((メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体)が得られる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-74325号公報
【文献】国際公開第2005/095492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、硬化性組成物は、前記用途における使用の際の作業性に優れていることも求められる。このような作業性の観点からは、混合状態が均一であることが望ましい。また、硬化性組成物から得られる硬化物は、優れた引張特性を発揮する上で、均質であることが望ましい。
このため、硬化性組成物中の反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体と反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体との相溶性が良好であることが求められる。
【0009】
特許文献1に記載されているようなRTCP方式のリビングラジカル重合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体の主鎖骨格に対して、反応性シリル基の導入位置を必ずしも十分に制御できるとは言えなかった。RTCP方式のリビングラジカル重合によって得られた反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体は、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体との相溶性に劣るものであった。
【0010】
一方、特許文献2に記載されているようなATRP方式のリビングラジカル重合は、RTCP方式の場合よりも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体の炭素-炭素結合鎖の主鎖骨格の末端に反応性シリル基を導入するという導入位置の制御性に優れている。しかしながら、ATRP方式のリビングラジカル重合によって得られた反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体も、理由は明らかではないが、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体との相溶性に劣るものであった。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体と、反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体との相溶性が良好であり、かつ、これらの重合体を含み、引張特性に優れた硬化物が得られる硬化性組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、可逆的配位媒介重合(RCMP:Reversible Coordination Mediated Polymerization)方式のリビングラジカル重合により得られた、所定の反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体が、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体との相溶性が良好であることを見出したことに基づくものである。
【0013】
本発明は、以下の手段を提供するものである。
[1]重合体(A)及び重合体(B)を配合する硬化性組成物の製造方法であって、前記重合体(A)は、反応性シリル基を1分子当たり平均1.0個以上有し、数平均分子量が4000~35000であるポリオキシアルキレン重合体であり、前記重合体(B)は、反応性シリル基を1分子当たり平均0.5個以上有し、単量体(b1)及び単量体(b2)を含む単量体組成物を、ハロゲン化第四級アンモニウム塩の存在下で、リビングラジカル重合させ、かつ、シリル化剤を反応させて得られた(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体であり、前記単量体(b1)は、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、前記単量体(b2)は、炭素数9~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、前記単量体組成物中の前記単量体(b1)の含有量が、前記単量体(b1)及び前記単量体(b2)の合計100質量部に対して、10~90質量部である、硬化性組成物の製造方法。
【0014】
[2]前記重合体(B)が、前記単量体(b2)を少なくとも2種以上含む、[1]の硬化性組成物の製造方法。
[3]前記シリル化剤を、前記単量体(b1)及び前記単量体(b2)の合計100質量部に対して、0.5~10.0質量部添加する、[1]又は[2]の硬化性組成物の製造方法。
[4]前記リビングラジカル重合が、可逆的配位媒介重合である、[1]~[3]のいずれかの硬化性組成物の製造方法。
[5]前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩が、ヨウ化第四級アンモニウム塩である、[1]~[4]のいずれかの硬化性組成物の製造方法。
[6]前記ヨウ化第四級アンモニウム塩が、下記式(1)で表される化合物である、[5]の硬化性組成物の製造方法。
R4N+I- (1)
(式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基である。)
[7]前記ヨウ化第四級アンモニウム塩が、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、及びヨウ化テトラオクチルアンモニウムから選ばれる1種以上である、[5]又は[6]の硬化性組成物の製造方法。
[8]前記リビングラジカル重合において、開始剤として有機ヨウ素化合物を用いる、[1]~[7]のいずれかの硬化性組成物の製造方法。
[9]前記有機ヨウ素化合物が、1,4-ジヨードオクタフルオロブタン、ビス(2-ヨードイソ酪酸)エチレングリコール、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、1,4-ビス(1’-ヨードエチル)ベンゼン、及びビス(2-ヨード-2-フェニル酢酸)エチレングリコールから選ばれる1種以上である、[8]の硬化性組成物の製造方法。
【0015】
[10]前記重合体(B)は、反応性シリル基を1分子当たり平均1.0~6.0個有する、[1]~[9]のいずれかの硬化性組成物の製造方法。
[11]前記重合体(B)の数平均分子量が、6000~300000である、[1]~[10]のいずれかの硬化性組成物の製造方法。
【0016】
[12]前記重合体(A)と前記重合体(B)の質量配合比が、10/90~90/10である、[1]~[11]のいずれかの硬化性組成物の製造方法。
[13]前記硬化性組成物が、シーラント用組成物である、[1]~[12]のいずれかの硬化性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の硬化性組成物の製造方法によれば、反応性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体と、反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体との相溶性が良好であり、これらを含む硬化性組成物を得ることができる。
前記硬化性組成物によれば、作業性が良好であり、引張特性に優れた硬化物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書における用語及び表記についての定義及び意義を以下に示す。
「ポリオキシアルキレン重合体」とは、アルキレンオキシド単量体の開環付加重合により生成したポリオキシアルキレン鎖を主鎖骨格に有する重合体を意味する。
「(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のビニル重合により生成した炭素-炭素結合鎖を主鎖骨格に有する重合体を意味する。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の一方又は両方を意味する。
「x~y」との数値範囲の表記は、x以上y以下であることを意味する。
【0019】
「反応性シリル基」とは、ケイ素原子に水酸基又は加水分解性基が結合しており、シロキサン結合による架橋構造を形成し得る基を意味する。シロキサン結合を形成する反応は、硬化触媒によって促進される。
本発明で言う「反応性シリル基」は、下記式(2)で表される基であることが好ましい。
-SiXaR1
3-a (2)
【0020】
式(2)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基又は加水分解性基である。前記加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基が挙げられる。これらのうち、加水分解性が穏やかで取り扱いやすい点で、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基が挙げられ、硬化性組成物が、シロキサン結合による架橋構造の速やかな形成によって硬化し、良好な物性を有する硬化物が得られやすいことから、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
【0021】
R1は、炭素数1~20の1価の有機基であり、加水分解性基を含まない。前記有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ベンジル基、α-クロロアルキル基及びトリオルガノシロキシ基のうちから選ばれる1種以上であることが好ましい。具体的には、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、α-クロロメチル基、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基及びトリフェニルシロキシ基等が挙げられる。これらのうち、反応性シリル基を有する重合体の硬化性と安定性のバランスの観点からは、メチル基又はエチル基が好ましい。また、硬化速度が大きい点からは、α-クロロメチル基が好ましい。入手容易性の点からは、メチル基が好ましい。
aは1~3の整数である。aが1の場合、2つのR1は互いに同一であっても異なっていてもよい。aが2又は3の場合、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。aは1又は2が好ましく、より好ましくは2である。
【0022】
反応性シリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、(α-クロロメチル)ジメトキシシリル基、(α-クロロメチル)ジエトキシシリル基等が挙げられる。これらのうち、反応性が高く、良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基が好ましく、ジメトキシメチルシリル基又はトリメトキシシリル基がより好ましい。
【0023】
「1分子当たりの反応性シリル基の平均個数」とは、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトル測定により求めた重合体中の反応性シリル基の濃度[モル/g]に、数平均分子量を掛けて算出した値である。
「数平均分子量」(以下、「Mn」と表記する。)及び「重量平均分子量」(以下、「Mw」と表記する。)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求められるポリスチレン換算分子量である。分子量分布は、Mnに対するMwの比率(Mw/Mn)である。具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定される。
「活性水素含有基」とは、水酸基、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ヒドラジド基及びメルカプト基から選ばれる1種以上の基を指す。これらの基に含まれる水素原子が、「活性水素」である。
「シリル化剤」とは、重合体に反応性シリル基を導入するために用いられる化合物を意味する。
【0024】
本発明の硬化性組成物の製造方法は、所定の重合体(A)及び重合体(B)を配合する硬化性組成物の製造方法である。
前記硬化性組成物には、重合体(A)及び重合体(B)以外の成分が含まれていてもよい。例えば、重合体(A)及び重合体(B)以外の重合体として、反応性シリル基を1分子当たり平均1.0個未満有するポリオキシアルキレン重合体が含まれていてもよい。また、前記硬化性組成物は、後述するように、これらの重合体以外の成分が配合されたものであってもよい。
【0025】
[重合体(A)]
重合体(A)は、反応性シリル基を1分子当たり平均1.0個以上有し、Mnが4000~35000であるポリオキシアルキレン重合体である。
前記硬化性組成物に配合される重合体(A)は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。また、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
重合体(A)は、1種以上のアルキレンオキシド単量体の重合により生成したポリオキシアルキレン鎖を主鎖骨格に有する。重合体(A)の主鎖骨格が、2種以上のアルキレンオキシド単量体の共重合により形成されている場合、前記共重合は、単量体の配列が特に限定されるものではなく、ランダム共重合であっても、交互共重合であっても、ブロック共重合であってもよい。
【0026】
重合体(A)の主鎖骨格としては、例えば、エチレンオキシド単量体の重合によるもの、プロピレンオキシド単量体の重合によるもの、ブチレンオキシド単量体の重合によるもの、テトラメチレンオキシド単量体の重合によるもの、エチレンオキシド単量体とプロピレンオキシド単量体の共重合によるもの、プロピレンオキシド単量体とブチレンオキシド単量体の共重合によるもの等が挙げられる。これらのうち、硬化性組成物の硬化物の引張特性等の物性に鑑みて、プロピレンオキシド単量体の重合によるものが好ましい。
【0027】
重合体(A)の主鎖骨格は、2~8個の末端を有していることが好ましく、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~4個、特に好ましくは2又は3個である。重合体(B)との相溶性や、硬化性組成物の硬化物の引張特性の観点から、2個であることが特に好ましい。重合体(A)は、末端が2個である場合は直鎖状であり、末端が3個以上である場合は分岐状である。
【0028】
重合体(A)は、反応性シリル基を1分子当たり平均1.0個以上有している。1分子当たりの反応性シリル基の平均個数は、重合体(B)との相溶性や、硬化性組成物の硬化物の引張特性等の観点から、1.0個超8.0個以下であることが好ましく、より好ましくは1.1~6.0個、さらに好ましくは1.2~4.0個である。
【0029】
重合体(A)は、反応性シリル基を末端1個当たり平均0.5個超有していることが好ましい。末端1個当たりの反応性シリル基の平均個数は、硬化性組成物の硬化物の引張特性等の観点から、0.5個超4.0個以下であることが好ましく、より好ましくは0.6~3.0個、さらに好ましくは0.7~2.0個である。
【0030】
重合体(A)のMnは、4000~35000であり、好ましくは5000~30000、より好ましくは10000~25000である。
Mnが4000未満の場合、重合体(A)の質量当たりの反応性シリル基の導入量が多くなりすぎ、硬化性組成物の硬化物の良好な引張特性が得られ難い。一方、Mnが35000超の場合、重合体(A)の粘度が高くなりやすく、重合体(B)との良好な相溶性が得られ難くなる。
重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、粘度を低く抑える観点から、1.8以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。
【0031】
<重合体(A)の製造方法>
重合体(A)は、前駆重合体であるポリオキシアルキレン重合体の主鎖骨格の末端に反応性シリル基を導入することにより製造することが好ましい。例えば、前駆重合体であるポリオキシアルキレン重合体の主鎖骨格の末端に不飽和結合を導入した後、該不飽和結合にシリル化剤を反応させることにより、前記末端に反応性シリル基を導入することができる。
【0032】
前駆重合体は、活性水素含有基を有する開始剤の活性水素に、触媒存在下で、アルキレンオキシド単量体を開環付加重合させたオキシアルキレン重合体である。活性水素含有基が水酸基であり、前駆重合体は主鎖骨格の末端に水酸基を有していることが好ましい。開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
開始剤の活性水素が2個以上である場合、通常、活性水素の数が、前駆重合体の主鎖骨格の末端の数と同じになる。
【0033】
開始剤は、水酸基を2~8個有している化合物であることが好ましく、水酸基の数は、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~4個、特に好ましくは2又は3個である。直鎖状の重合体(A)を得る場合、活性水素含有基を2個有する開始剤を用いることが好ましく、2個の活性水素含有基が水酸基であることがより好ましい。
水酸基を2個有する開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、低分子量のポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
水酸基を3個以上有する開始剤としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、低分子量のポリオキシプロピレントリオール等が挙げられる。
【0034】
前記触媒としては、公知の触媒を用いることができ、例えば、水酸化カリウム等のアルカリ触媒、有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体等の遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン化合物からなる触媒等が挙げられる。これらのうち、複合金属シアン化物錯体触媒が、前駆重合体の分子量分布を狭めて、硬化性組成物の粘度を低く抑えられるため好ましい。
複合金属シアン化物錯体としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、tert-ブタノールを配位子とする亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体が挙げられる。複合金属シアン化物錯体触媒を用いたポリオキシアルキレン重合体の製造方法も、公知の方法を採用できる。例えば、国際公開第2003/062301号、国際公開報第2004/067633号、特開2004-269776号公報、特開2005-15786号公報、国際公開第2013/065802号、特開2015-010162号公報等に開示されている触媒を用いた製造方法を採用できる。
【0035】
前駆重合体から重合体(A)を製造する方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、特公昭45-36319号公報、特開昭50-156599号公報、特開昭61-197631号公報、特開平3-72527号公報、特開平8-231707号公報、特開2015-105322号公報、特開2015-105323号公報、特開2015-105324号公報、特開2015-105293号公報、特開2016-216633号公報、特開2017-39782号公報、米国特許3632557号明細書、米国特許4960844号明細書、国際公開第2013/180203号、国際公開第2014/192842号、国際公開第2015/080067号、国際公開第2015/105122号、国際公開第2015/111577号、国際公開第2016/002907号等に開示されている方法が用いることができる。
【0036】
前駆重合体であるポリオキシアルキレン重合体の主鎖骨格の末端に不飽和結合を導入する方法としては、例えば、水酸基を末端に有する前駆重合体に、末端の水酸基に対して過剰当量のアルカリ金属アルコキシドを反応させた後、末端の水酸基に対して過剰当量の塩化アリル等の不飽和結合を有するハロゲン化不飽和炭化水素化合物を反応させる方法が好ましい。
また、水酸基を末端に有する前駆重合体に、末端の水酸基に対して過剰当量のアルカリ金属アルコキシドを反応させて、次いで不飽和結合を有するエポキシ化合物を反応させた後、該反応後の末端の水酸基に対して過剰当量の塩化アリル等の不飽和結合を有するハロゲン化不飽和炭化水素化合物を反応させる方法も好ましい。この場合は、前駆重合体を得るための開始剤の活性水素含有基である水酸基の数よりも、前駆重合体の主鎖骨格の末端に導入される不飽和結合の数を増やすことができ、反応性シリル基が導入される末端の数を増やすことができる。
【0037】
次いで、前駆重合体の主鎖骨格の末端に導入された不飽和結合に対するヒドロシリル化反応によりシリル化剤を反応させて、前記末端に反応性シリル基を導入することができる。
シリル化剤としては、例えば、ヒドロシラン化合物(例えば、前記式(2)で表される基が水素原子に結合している化合物)や、反応性シリル基、及び不飽和結合と反応して結合を形成し得る基(例えば、メルカプト基)を有する化合物等が挙げられる。具体的には、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリス(2-プロペニルオキシ)シラン、トリアセトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシエチルシラン、ジイソプロポキシメチルシラン、(α-クロロメチル)ジメトキシシラン、(α-クロロメチル)ジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シリル化剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、反応性が高く、良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシランが好ましく、ジメトキシメチルシラン又はトリメトキシシランがより好ましい。
【0038】
上記のようにして、重合体(A)の1分子当たりの反応性シリル基の平均個数が1個以上となるようにする。
重合体(A)のシリル化率は、50モル%超100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは60~97モル%、さらに好ましくは65~95モル%である。前記シリル化率は、重合体(A)が2種以上からなる場合は、各重合体のシリル化率の平均値とする。
例えば、重合体(A)が直鎖状であり、主鎖骨格の末端が2個である場合、シリル化率が50モル%以上であれば、重合体(A)の1分子当たりの反応性シリル基の平均個数が1個以上となる。
シリル化率は、前駆重合体の主鎖骨格の末端に導入された不飽和結合に反応させるシリル化剤の量を調整することにより制御できる。なお、シリル化率は、前駆重合体の主鎖骨格の末端の数に対するシリル化剤の仕込み当量で表す場合もある。
【0039】
硬化性組成物中の重合体(A)の含有割合は、硬化性組成物の硬化物の良好な引張特性の観点から、硬化性組成物100質量%に対して、1~80質量%であることが好ましく、より好ましくは3~75質量%、さらに好ましくは5~70質量%である。
【0040】
[重合体(B)]
重合体(B)は、反応性シリル基を1分子当たり平均0.5個以上有し、単量体(b1)及び単量体(b2)を含む単量体組成物を、ハロゲン化第四級アンモニウム塩の存在下で、リビングラジカル重合させ、かつ、シリル化剤を反応させて得られた(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体である。
前記硬化性組成物に配合される重合体(B)は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。また、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
重合体(B)は、1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のビニル重合により生成した炭素-炭素結合鎖を主鎖骨格に有する。重合体(B)の主鎖骨格は、2種以上の単量体の共重合により形成され、前記共重合は、単量体の配列が特に限定されるものではなく、ランダム共重合であっても、交互共重合であっても、ブロック共重合であってもよい。
【0041】
前記単量体組成物中の全単量体の合計100質量部に対して、単量体(b1)及び単量体(b2)の合計が、50質量部以上であることが好ましく、より好ましくは70質量部以上であり、100質量部でもよい。
単量体組成物に単量体(b1)及び(b2)以外の単量体が含まれる場合、該単量体としては、ビニル系重合体が好ましく、例えば、アクリロニトリル、スチレン、フッ素含有ビニル系単量体、ケイ素含有ビニル系単量体等が挙げられる。なお、ここで言うケイ素含有ビニル系単量体には、反応性シリル基含有ビニル系単量体は含まないものとする。
【0042】
単量体(b1)は、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。前記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。単量体(b1)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチルが挙げられる。単量体(b1)は、1種単独であっても、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
単量体(b2)は、炭素数9~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。前記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、単量体(b1)との共重合のしやすさや入手容易性等の観点からは、直鎖状であることが好ましい。単量体(b2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。単量体(b2)は、1種単独であっても、2種以上を併用してもよく、硬化物の良好な引張特性の観点から、少なくとも2種であることがより好ましい。単量体(b2)を2種以上併用する場合は、硬化性組成物の硬化物の良好な引張特性や入手容易性の観点から、炭素数9~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと炭素数16~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸ラウリルと(メタ)アクリル酸ステアリルを含むことがより好ましく、単量体(b2)が(メタ)アクリル酸ラウリルと(メタ)アクリル酸ステアリルであることがさらに好ましい。
【0044】
単量体組成物中の、単量体(b1)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有するアルキル基と、単量体(b2)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数の差は、重合体(B)の重合体(A)との良好な相溶性、及び、硬化性組成物の硬化物の良好な引張特性の観点から、2~16であることが好ましく、より好ましくは4~15、さらに好ましくは、6~14である。
【0045】
単量体組成物中の単量体(b1)の含有量は、単量体(b1)及び単量体(b2)の合計100質量部に対して、10~90質量部であり、好ましくは30~85質量部、より好ましくは50~80質量部である。
単量体(b1)が10質量部未満では、重合体(A)との良好な相溶性を有する重合体(B)が得られない。単量体(b1)が90質量部超の場合、重合体(B)の粘度が高くなりすぎ、この場合も、重合体(A)との良好な相溶性を有する重合体(B)が得られず、また、硬化性組成物の硬化物の良好な引張特性が得られ難い。
【0046】
重合体(B)は、反応性シリル基を1分子当たり平均0.5個以上有する。1分子当たりの反応性シリル基の平均個数は、重合体(A)との相溶性や、硬化性組成物の硬化物の引張特性等の観点から、1.0~6.0個であることが好ましく、より好ましくは1.1~5.0個である。
【0047】
重合体(B)のMnは、6000~300000であることが好ましく、より好ましくは8000~100000、さらに好ましくは10000~50000である。
Mnが6000以上であれば、硬化性組成物の硬化物の良好な引張特性が得られやすい。また、Mnが300000以下であれば、重合体(B)の粘度を低く抑えられ、重合体(A)との良好な相溶性が得られやすい。
重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、粘度を低く抑え、重合体(A)との良好な相溶性を得る観点から、4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0048】
<重合体(B)の製造方法>
重合体(B)は、単量体(b1)及び単量体(b2)を含む単量体組成物を、ハロゲン化第四級アンモニウム塩の存在下で、リビングラジカル重合させ、かつ、シリル化剤を反応させることにより得られる。すなわち、重合体(B)の主鎖骨格は、ハロゲン化第四級アンモニウム塩を触媒として用いるリビングラジカル重合により形成される。このようなリビングラジカル重合は、可逆的配位媒介重合(RCMP)方式であることが好ましい。
RCMP方式のリビングラジカル重合によれば、重合体の分子量の制御がしやすく、また、重合反応の進行過程において反応性シリル基の導入を任意に制御しやすく、さらに、重合体(A)との相溶性が良好な、反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体が得られる。
上記のようなリビングラジカル重合で製造された反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体は、ATRP方式やRTCP方式等で製造された場合と異なり、重合体(A)との相溶性に優れている。その理由は明らかではないが、重合体(B)を得るためのリビングラジカル重合の触媒として用いられるハロゲン化第四級アンモニウム塩が、両親媒性を有することに起因して、重合体(B)と重合体(A)との相溶性が向上するものと考えられる。
【0049】
前記リビングラジカル重合の触媒として用いられるハロゲン化第四級アンモニウム塩は、1種単独であっても、2種以上を併用してもよい。
ハロゲン化第四級アンモニウム塩としては、取り扱い容易性や触媒活性等の観点から、ヨウ化第四級アンモニウム塩、又は臭化第四級アンモニウム塩が好ましく、ヨウ化第四級アンモニウム塩がより好ましい。
【0050】
前記ヨウ化第四級アンモニウム塩は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
R4N+I- (1)
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基である。アルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。入手容易性等の観点からは、4個のRは、同一のアルキル基であることが好ましい。
前記ヨウ化第四級アンモニウム塩としては、具体的には、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラオクチルアンモニウム等が挙げられる。これらのうち、入手容易性や単量体との馴染みやすさ等の観点から、ヨウ化テトラブチルアンモニウムが好ましい。
【0051】
前記リビングラジカル重合における触媒であるハロゲン化第四級アンモニウム塩の添加量は、重合反応の進行の制御等の観点から、単量体組成物中の全単量体の合計100質量部に対して、0.1~15.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~10.0質量部、さらに好ましくは0.5~8.0質量部である。
【0052】
前記リビングラジカル重合においては、有機ヨウ素化合物を開始剤として用いることが好ましい。開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
開始剤のヨウ素原子の数が2個以上である場合、通常、ヨウ素原子の数が、重合体(B)の主鎖骨格の末端の数と同じになる。
【0053】
開始剤は、ヨウ素原子を1~8個有している化合物であることが好ましく、ヨウ素原子の数は、より好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~3個である。直鎖状の重合体(B)を得る場合、ヨウ素原子を1又は2個有する化合物を開始剤として用いることが好ましく、ヨウ素原子を2個有するジヨード化合物がより好ましい。
前記有機ヨウ素化合物としては、具体的には、2-ヨード-2-メチルプロピオニトリル、2-ヨード-2-メチルブチルニトリル、2-ヨードイソ酪酸エチル、1,4-ジヨードオクタフルオロブタン、ビス(2-ヨードイソ酪酸)エチレングリコール、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、1,4-ビス(1’-ヨードエチル)ベンゼン、及びビス(2-ヨード-2-フェニル酢酸)エチレングリコール等が挙げられる。これらのうち、入手容易性や重合反応の制御のしやすさ等の観点から、1,4-ジヨードオクタフルオロブタンが好ましい。
【0054】
前記リビングラジカル重合における開始剤の添加量は、重合反応の進行の制御等の観点から、単量体組成物中の全単量体の合計100質量部に対して、0.1~15.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~10.0質量部、さらに好ましくは0.5~8.0質量部である。
【0055】
リビングラジカル重合は、無溶媒でも、溶媒中で行われてもよい。溶媒を使用する場合、溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類等が挙げられる。これらのうち、環状エーテル類、芳香族炭化水素化合物、エステル類、ケトン類が好ましい。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
リビングラジカル重合における重合温度は、重合反応の効率等の観点から、好ましくは50~180℃、より好ましくは60~160℃であり、さらに好ましくは70~140℃である。
【0057】
単量体組成物をリビングラジカル重合させ、かつ、シリル化剤と反応させて、反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体を得る方法としては、例えば、以下の<1>及び<2>に示す方法が挙げられる。
<1>単量体(b1)及び単量体(b2)を含む単量体組成物をリビングラジカル重合させ、得られた(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体の主鎖骨格の末端のヨウ素原子を、例えば、反応性シリル基、及びアミノ基もしくはメルカプト基を有する化合物等のシリル化剤により反応性シリル基に変換する方法。
<2>単量体(b1)及び単量体(b2)を含む単量体組成物のリビングラジカル重合を開始し、シリル化剤として、反応性シリル基及びビニル基を有する化合物を重合途中で添加して、単量体(b1)及び単量体(b2)並びにシリル化剤を共重合させる方法。
【0058】
シリル化剤として用いられる化合物は、上記<1>と<2>の方法では異なるが、いずれの場合も、反応性シリル基を1分子当たり平均0.5個以上有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体が得られる量を使用する。シリル化剤の添加量は、後述の硬化性組成物の硬化物の伸びが良好となりやすい観点から、単量体(b1)及び単量体(b2)の合計100質量部に対して、0.5~10.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0~8.0質量部、さらに好ましくは1.5~7.0質量部、特に好ましくは2.0~6.0質量部である。
【0059】
<1>の方法によれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体の主鎖骨格の末端に、反応性シリル基を置換反応により効率的に導入できる。
<1>の方法におけるシリル化剤としては、例えば、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン又は3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0060】
<1>の方法において、シリル化剤による置換反応は、溶媒中で行われることが好ましい。使用する溶媒は、特に限定されるものではなく、上述したリビングラジカル重合で使用される溶媒と同様のものから選択できる。
前記置換反応の反応温度は、特に限定されるものではないが、通常、0~85℃が好ましく、より好ましくは15~80℃、さらに好ましくは25~75℃である。
【0061】
<2>の方法によれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体の主鎖骨格の末端に限定されることなく、任意の位置への反応性シリル基の導入の制御が可能である。
<2>の方法におけるシリル化剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン又は3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランンが好ましい。
【0062】
<2>の方法においては、単量体(b1)及び単量体(b2)を含む単量体組成物のリビングラジカル重合において、反応開始から終了までの間の任意のタイミングで、シリル化剤を添加することができ、添加後の反応温度は変更しなくてもよい。
【0063】
上記のようにして、シリル化剤を反応させた後、反応系に残存する未反応のシリル化剤を除去し、乾燥することにより、重合体(B)が得られる。
未反応のシリル化剤の除去は、溶媒抽出等の公知の方法により行うことができる。乾燥も、必要に応じて加熱や減圧等の条件下で、公知の方法により行うことができる。
【0064】
[硬化性組成物]
硬化性組成物は、重合体(A)及び重合体(B)を配合することにより得られる。
重合体(A)と重合体(B)は、相溶性が良好であり、両者を混合撹拌して1週間経過した後でも、重合体(A)と重合体(B)とが相分離を生じたり、白濁したりすることなく、均一な液状状態が保持される。
このため、前記硬化性組成物を使用する際の作業性が良好であり、均質で引張特性に優れた硬化物が得られる。
【0065】
硬化性組成物中の重合体(A)と重合体(B)の質量配合比は、硬化性組成物の硬化物において所望の引張特性が効果的に発揮されるようにする観点から、10/90~90/10であることが好ましく、より好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは30/70~70/30である。
【0066】
硬化性組成物の用途としては、シーラント(例えば、建築用弾性シーラント、複層ガラス用シーラント、ガラス端部の防錆・防水用封止材、太陽電池裏面封止材、建造物用密封材、船舶用密封材、自動車用密封材、道路用密封材)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材)、接着剤、塗料等が好適である。特に、硬化物の良好な引張特性が要求される用途に好適である。
したがって、本発明の硬化性組成物は、シーラントや接着剤、塗料等に用いられることが好ましく、特に、シーラント用組成物として好適である。
【0067】
本発明の硬化性組成物は、重合体(A)及び重合体(B)以外のその他の成分を含んでいてもよい。例えば、硬化性組成物がシーラント用組成物である場合、他の成分としては、充填剤、可塑剤、安定剤、揺変剤、脱水剤、接着性付与剤、酸素硬化性化合物、光硬化性化合物、硬化触媒等が挙げられる。
その他の成分は、具体的には、国際公開第2013/180203号、国際公開第2014/192842号、国際公開第2016/002907号、特開2014-88481号公報、特開2015-10162号公報、特開2015-105293号公報、特開2017-214541号公報等に記載されている公知のものから適宜選択して、任意に組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定されるものではない。
【0069】
まず、ポリオキシアルキレン系重合体及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を下記合成例により製造した。
下記合成例における各種物性の測定方法を以下に示す。
【0070】
[測定方法]
〔数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)〕
各種重合体のMn及びMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件で測定し(ポリスチレン換算)、分子量分布(Mw/Mn)は、これらの値から算出した。
<測定条件>
・使用機器:「HLC-8220GPC」、東ソー株式会社製
・データ処理装置:「SC-8020」、東ソー株式会社製
・使用カラム:下記の2種のカラムを直列で連結
「TSKgel(登録商標) SuperHZ4000」、東ソー株式会社製、2本
「TSKgel(登録商標) SuperHZ2500」、東ソー株式会社製、2本
・カラム温度:40℃
・検出器:示差屈折率(RI)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.35mL/分
・試料濃度:0.5質量%
・試料注入量:20μL
・検量線作成用標準サンプル:ポリスチレン;「EasiCal(登録商標) PS-2」、アジレント・テクノロジー株式会社製
【0071】
〔重合反応率〕
各種重合体の合成における反応途中の反応液を採取し、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを下記条件で測定した。得られたNMRチャートにおける、未反応の単量体由来のシグナルの積分値IM、及び、目的とする重合体由来のシグナルの積分値IPから、以下の式により、重合反応率を算出した。
重合反応率[%]=IP/(IM+IP)×100
<測定条件>
・使用機器:「JNM-ECZ400S FT-NMR」、日本電子株式会社製
・溶媒:重クロロホルム
・測定試料中の重合体濃度:1~10質量%
・積算回数:8回
【0072】
〔1分子当たりの反応性シリル基の平均個数〕
各種重合体について測定した1H-NMRスペクトルから求めた重合体中の反応性シリル基の濃度[モル/g]に、Mnを掛けて算出した。
なお、1H-NMRスペクトルは、積算回数を512回とし、それ以外の測定条件は、上記の〔重合反応率〕の項における測定条件と同じである。
【0073】
[ポリオキシアルキレン系重合体(重合体(A))の合成]
〔原料化合物〕
下記合成例1及び2で使用した原料化合物の詳細は、以下のとおりである。
<開始剤>
・PPG:プロピレングリコールにプロピレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリプロピレングリコール;水酸基当量(水酸基1個当たりの分子量)1000
<単量体>
・PO:プロピレンオキシド
<触媒>
・TBA-DMC触媒:tert-ブタノールを配位子とする亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体
<シリル化剤>
・DMMS:ジメトキシメチルシラン
【0074】
(合成例1)
開始剤としてPPG:64.1gを用い、PO:705.0gと、TBA-DMC触媒:0.03gの存在下、120℃で、反応系の圧力が低下しなくなるまで反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の末端に水酸基を1分子当たり2個有する前駆重合体(2)を得た(Mw:25900、Mn:24000、Mw/Mn:1.08)。
前駆重合体(2)に、該前駆重合体(2)の水酸基に対して1.05倍モル当量のナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加してアルコキシド化した後、加熱減圧してメタノールを留去した。そして、前駆重合体(2)の水酸基に対して過剰モル当量の塩化アリルを添加して反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の末端すべてにアリル基を有する前駆重合体(2)を得た。
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、前駆重合体(2)のアリル基に対して0.75倍モル当量(シリル化率75モル%)のDMMSを添加し、70℃で5時間反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の末端に反応性シリル基を有する重合体A1を得た。
【0075】
(合成例2)
合成例1において、POを449.0gに変更し、それ以外は合成例1と同様にして、前駆重合体(2)(Mw17100、Mn16000、Mw/Mn1.07)を得た後、ポリオキシプロピレン鎖の末端に反応性シリル基を有する重合体A2を得た(シリル化率75モル%)。
【0076】
表1に、上記合成例1及び2で得られた重合体A1及びA2のそれぞれのMw、Mn、Mw/Mn、及び1分子当たりの反応性シリル基の平均個数を示す。
【表1】
【0077】
[(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(重合体(B))の合成]
〔原料化合物〕
下記合成例3~16で使用した原料化合物の詳細は、以下のとおりである。
<単量体(b1)>
・BA:アクリル酸n-ブチル
・HA:アクリル酸n-ヘキシル
<単量体(b2)>
・LA:アクリル酸ラウリル
・LMA:メタクリル酸ラウリル
・StA:アクリル酸ステアリル
<シリル化剤>
・KBM-502:3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン;「KBM-502」、信越化学工業株式会社製
・KBM-5102:3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン;「KBM-5102」、信越化学工業株式会社製
・KBM-902:3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン;「KBM-902」、信越化学工業株式会社製
・DMMS:ジメトキシメチルシラン
・KBM-903:3-アミノプロピルトリエトキシシラン;「KBM-903」、信越化学工業株式会社製
<触媒>
・BNI:ヨウ化テトラブチルアンモニウム
・CuBr-PMDT:臭化銅-ペンタメチルジエチレントリアミン錯体
・NIS:N-ヨードコハク酸イミド
<開始剤>
・DIFB:1,4-ジヨードオクタフルオロブタン
・DBrADE:2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル
・DIX:1,4-ビス(ヨードメチル)ベンゼン
・BPO:過酸化ベンゾイル
【0078】
(合成例3)
撹拌機及び温度計を装着した300mLフラスコに、BA:65.37g(70.0質量部)、LA:28.01g(30.0質量部)、DIFB:1.90g(2.0質量部)、及びBNI:5.27g(5.6質量部)を仕込んだ。フラスコ内を窒素ガスでバブリングして十分に脱気し、撹拌しながら液温を125℃に保持して、重合反応を開始し、13時間反応させた(重合反応率90%)。
反応系を70℃まで冷却し、シリル化剤としてKBM-902:3.16g(3.4質量部)、溶媒としてトルエン:100gを添加し、液温を70℃に保持して5時間反応させた。
反応系を25℃まで冷却し、メタノールを添加して、未反応のシリル化剤を分液操作により除去した後、0.3kPa、80℃で5時間減圧乾燥し、重合体B1を得た。
【0079】
(合成例4)
合成例3と同様にして重合反応を開始し、8時間反応させた(重合反応率65%)。
さらに、シリル化剤としてKBM-5102:3.17g(3.4質量部)を添加して、5時間反応させた(シリル化剤以外の重合反応率90%)。
次いで、合成例3と同様にして、未反応のシリル化剤を除去した後、減圧乾燥し、重合体B2を得た。
【0080】
(合成例5)
合成例3と同様にして重合反応を開始し、8時間反応させた(重合反応率65%)。
さらに、シリル化剤としてKBM-502:3.17g(3.4質量部)を添加して、5時間反応させた(シリル化剤以外の重合反応率90%)。
次いで、合成例3と同様にして、未反応のシリル化剤を除去した後、減圧乾燥し、重合体B3を得た。
【0081】
(合成例6)
合成例3において、DIFBを3.17g(3.4質量部)に変更し、それ以外は合成例3と同様にして重合反応を開始し、8時間反応させた(重合反応率65%)。
さらに、シリル化剤としてKBM-5102:5.28g(5.7質量部)を添加して、5時間反応させた(シリル化剤以外の重合反応率90%)。
次いで、合成例3と同様にして、未反応のシリル化剤を除去した後、減圧乾燥し、重合体B4を得た。
【0082】
(合成例7及び8)
合成例4において、単量体の種類を表2に示すように変更し、それ以外は合成例4と同様にして重合反応を開始し、8時間反応させた(重合反応率はいずれも65%)。
さらに、合成例4と同様にして、シリル化剤を添加して5時間反応させ(シリル化剤以外の重合反応率はいずれも90%)、未反応のシリル化剤を除去した後、減圧乾燥し、重合体B5及びB6をそれぞれ得た。
【0083】
(合成例9及び10)
合成例6において、単量体の種類を表2に示すように変更し、それ以外は合成例6と同様にして重合反応を開始し、8時間反応させた(重合反応率はいずれも65%)。
さらに、シリル化剤としてKBM-5102:5.28g(5.7質量部)を添加して、5時間反応させ(シリル化剤以外の重合反応率はいずれも90%)、未反応のシリル化剤を除去した後、減圧乾燥し、重合体B7及びB8をそれぞれ得た。
【0084】
(合成例11及び12)
合成例5と同様にして重合反応を開始し、8時間反応させた(重合反応率65%)。
さらに、シリル化剤としてKBM-502の量を表2に示すように変更し、それ以外は合成例5と同様にして反応させ(シリル化剤以外の重合反応率はいずれも90%)、未反応のシリル化剤を除去した後、減圧乾燥し、重合体B9及びB10をそれぞれ得た。
【0085】
(合成例13)
合成例3において、単量体をBAのみ93.38g(100質量部)とし、それ以外は合成例3と同様にして重合反応を開始し、13時間反応させた(重合反応率90%)。
次いで、合成例3と同様にして、反応系を冷却し、シリル化剤及び溶媒を添加して反応させ、さらに、未反応のシリル化剤を除去した後、減圧乾燥し、重合体B11を得た。
【0086】
(合成例14)
ATRP方式のリビングラジカル重合により、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を製造し、該重合体の主鎖骨格の末端に反応性シリル基を導入した。
まず、撹拌機及び温度計を装着した1L反応器に、窒素ガス雰囲気下、BA:269.1g(70.0質量部)、LA:115.32g(30.0質量部)、CuBr:2.80g(0.78質量部)、アセトニトリル:34.5g、及びDBrADE:5.85g(1.5質量部)を仕込んだ。反応器内を窒素ガスでバブリングして十分に脱気し、撹拌しながら液温を70~80℃に保持して、30分間撹拌し、次いで、CuBrの配位子としてPMDTを添加し、重合反応を開始した。撹拌しながら液温を70~90℃に保持し、途中、PMDTを合計0.564gとなるように追加し、約3時間反応させた。
反応系を、0.3kPa、80℃で加熱撹拌して揮発分を除去した後、アクリロニトリル:139g、1,7-オクタジエン:35.8g、及びPMDT:1.13gを添加し、撹拌しながら、8時間反応させた。
反応系を、0.3kPa、80℃で加熱撹拌して揮発分を除去した後、トルエンを加えて重合体を溶解し、ろ過助剤として珪藻土、吸着剤として珪酸アルミニウム及びハイドロタルサイトを添加して、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6体積%)、液温100℃で加熱撹拌した。
撹拌した液をろ過し、ろ液を、0.3kPa、100℃で加熱撹拌して揮発分を除去した後、再度、吸着剤として珪酸アルミニウム及びハイドロタルサイト、さらに、熱劣化防止剤(「スミライザー(登録商標) GS」、住友化学株式会社製)を添加し、1.3kPa以下、175℃で加熱撹拌した。さらに、珪酸アルミニウム及びハイドロタルサイトを追加し、また、酸化防止剤(「Irganox(登録商標) 245」、BASFジャパン株式会社製)を添加し、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6体積%)、液温150℃で加熱撹拌した。
撹拌した液にトルエンを加えて重合体を溶解して、ろ過し、ろ液を、0.3kPa、100℃で加熱撹拌して揮発分を除去し、オクテニル基を有する前駆重合体を得た。
【0087】
この前駆重合体:300g、DMMS:4.39g(1.1質量部、オクテニル基に対して2.0モル当量)、オルトギ酸メチル:2.20g(オクテニル基に対して1.0モル当量)、及び、触媒としてビス(1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)白金錯体のキシレン溶液(濃度20質量%):0.028g(白金として3.34mg)を混合し、窒素ガス雰囲気下、100℃で加熱撹拌し、オクテニル基が消失するまで反応させた。
反応系を、0.3kPa、100℃で減圧乾燥し、重合体B12を得た。
【0088】
(合成例15)
合成例14において、BAを300g(78.0質量部)とし、また、LAをStA:84.4g(22.0質量部)に変更し、それ以外は合成例14と同様にして、ATRP方式のリビングラジカル重合により、重合体B13を得た。
【0089】
(合成例16)
RTCP方式のリビングラジカル重合により、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を製造し、該重合体の主鎖骨格の末端に反応性シリル基を導入した。
まず、撹拌機及び温度計を装着した1L反応器に、BA:46.0g(12.8質量部)、LMA:314.0g(87.2質量部)、DIX:3.7g(1.0質量部)、NIS:0.03g(0.008質量部)、BPO:1.2g(0.3質量部)、及びオルト酢酸メチル:154.0gを仕込んだ。反応器内を窒素ガスでバブリングして十分に脱気し、撹拌しながら液温を70℃に保持して、重合反応を開始し、3時間反応させた(重合反応率70%)。
さらに、シリル化剤としてKBM-903:5.5g(1.5質量部)を添加し、1時間反応させた(重合反応率75%)。
次いで、合成例3と同様にして、未反応のシリル化剤を除去した後、減圧乾燥し、重合体B14を得た。
【0090】
表2に、上記合成例3~16で得られた重合体B1~B14のそれぞれのMw、Mn、Mw/Mn、及び1分子当たりの反応性シリル基の平均個数を示す。
【0091】
【0092】
[硬化性組成物の製造(2)]
上記の合成例1~16で得られた重合体A1、A2及びB1~B14を用いて、表3の例1~26に示す配合で混合して、各硬化性組成物を製造した。
各硬化性組成物について、以下のようにして、相溶性の評価を行った。
【0093】
〔相溶性評価〕
20mLバイアル瓶に、撹拌混合した硬化性組成物:10gを入れて、室温(25±5℃)で静置し、1週間後、内容物の状態を目視観察して評価した。以下の評価基準に基づく評価結果を表3に示す。
<評価基準>
○:相溶性良好(内容物が透明で均一な液状である。)
×:相溶性不良(内容物が白濁又は相分離している。)
【0094】
【0095】
[硬化性組成物の製造(2)]
上記の合成例1~16で得られたポリオキシアルキレン重合体(A1又はA2)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B1~B14のいずれか)を用いて、両者の合計100質量部に、表4の配合1~9のいずれかの組成で添加剤を配合し、遊星式撹拌機で均一に混合することにより、各硬化性組成物を製造した。
【0096】
【0097】
〔添加剤〕
表4に示す各種添加剤の詳細は、以下のとおりである。
<充填剤>
・Viscolite EL-20:膠質炭酸カルシウム;「Viscolite(登録商標) EL-20」、白石工業株式会社製
・ホワイトンSB:重質炭酸カルシウム;「ホワイトン(登録商標) SB」、白石カルシウム株式会社製
・R-820:酸化チタン;「R-820」、石原産業株式会社製
・バルーン80GCA:有機バルーン;「マツモトマイクロスフェアー(登録商標) MFL-80GCA」、松本油脂製薬株式会社製
<可塑剤>
・エクセノール3020:ポリプロピレングリコール;「エクセノール(登録商標) 3020」、AGC株式会社製
・アルフオンUP-1110:アクリル系ポリマー;「アルフオン(登録商標) UP-1110」、東亞合成株式会社製
・重合体Q:下記合成例15で合成したもの
・DINP:フタル酸ジイソノニル;「ビニサイザー(登録商標) 90」、花王株式会社製
・N-12D:n-ドデカン、純度98.0質量%;「カクタスノルマルパラフィンN-12D」、JXTGエネルギー株式会社製
・サンソサイザーE-PS:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸-ジ-2-エチルヘキシル;「サンソサイザー(登録商標) E-PS」、新日本理化株式会社製
<安定剤>
・Irganox1135:酸化防止剤;「Irganox(登録商標) 1135」、BASFジャパン株式会社製
・Tinuvin326:紫外線吸収剤;「Tinuvin(登録商標) 326」、BASFジャパン株式会社製
・Tinuvin765:光安定剤;「Tinuvin(登録商標) 765」、BASFジャパン株式会社製
・アデカスタブLA-63P:光安定剤;「アデカスタブ(登録商標) LA-63P」、株式会社ADEKA製
<揺変剤>
・ディスパロン6500:「ディスパロン(登録商標) 6500」、楠本化成株式会社製
<脱水剤>
・KBM-1003:ビニルトリメトキシシラン;「KBM-1003」、信越化学社製
<接着性付与剤>
・KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;「KBM-403」、信越化学株式会社製
・KBM-603:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン;「KBM-603」、信越化学株式会社製
<アミン化合物>
・ラウリルアミン:試薬、純正化学株式会社製
・ファーミンCS:ココナッツアミン;「ファーミン(登録商標) CS」、花王株式会社製
・アデカハードナーEH-235R-2:ケチミン化合物;「アデカハードナー(登録商標) EH-235R-2」、株式会社ADEKA製
<酸素硬化性化合物>
・桐油:木村商事株式会社製
<光硬化性化合物>
・アロニックスM-309:トリメチロールプロパントリアクリレート;「アロニックス(登録商標) M-309」、東亜合成株式会社製
<硬化触媒>
・SCAT-32A:「SCAT-32A」、日東化成株式会社製
【0098】
可塑剤として用いた重合体Qの合成例を以下に示す。なお、合成例15の説明文中のPO、TBA-DMC触媒及びDMMSは、上述した合成例1において用いたものと同様である。
(合成例17)
n-ブタノールにPOを開環付加重合させて得られたポリオキシプロピレンモノオール(水酸基当量(水酸基1個当たりの分子量)2000)を開始剤として用いた。
開始剤:384gと、PO:594gを、TBA-DMC触媒:0.05gの存在下、120℃で、反応系の圧力が低下しなくなるまで反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の末端に水酸基を1分子当たり1個有する前駆重合体(1’)を得た(Mw8100、Mn6900、Mw/Mn1.10)。
前駆重合体(1’)に、該前駆重合体(1’)の水酸基に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加してアルコキシド化した後、加熱減圧してメタノールを留去した。そして、前駆重合体(1’)の水酸基に対して過剰モル当量の塩化アリルを添加して反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の末端にアリル基を1分子当たり1個有する前駆重合体(2’)を得た。
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、前駆重合体(2’)のアリル基に対して0.85倍モル当量(シリル化率85モル%)のDMMSを添加し、70℃で5時間反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の片末端に反応性シリル基を有する重合体Qを得た(1分子当たりの反応性シリル基の平均個数0.85個)。
【0099】
〔硬化物の引張特性評価〕
各硬化性組成物を充填試料として用い、JIS A 1439:2016の「5.3 引張特性試験」に依拠して、シーリング材(シーラント)の試験体を作製した。
引張特性試験における被着体は、陽極酸化皮膜を施したアルミニウム被着体をプライマー(「MP-2000」、セメダイン株式会社製)処理して使用した。
なお、試験体の養生方法は、温度23±2℃、湿度50±5%RHで7日間養生した後、温度50±2℃、湿度65±5%RHで7日間養生し、さらに、温度90±2℃、湿度65±5%RHで7日間養生することにより行った。
【0100】
各試験体について、テンシロン試験機にて、温度23±2℃、引張速度50mm/minで引張試験を行い、最大引張応力Tmax[N/mm2]、最大荷重時の伸びEmax[%]、及び、50%引張応力M50[N/mm2]を測定した。
Tmaxの値が大きいほど引張強度が高いことを示しており、Tmaxが0.40N/mm2以上であれば、引張強度が十分に高いと言える。
Emaxの値は、大きいほど伸びが良いことを示しており、Emaxが370%以上であれば、十分な伸びを有していると言え、400%以上の場合は良好、500%以上の場合は非常に良好であると言える。
M50の値が0.20N/mm2以下であれば、十分な柔軟性を有していると言える。一方で、M50の値が小さすぎる場合は、硬化不十分であることに起因するタック(ベタツキ)が生じていることを示していることから、M50は0.070N/mm2以上であることが好ましく、より好ましくは0.080N/mm2以上、さらに好ましくは0.090N/mm2以上である。
なお、引張試験後の各試験体は、いずれも、凝集破壊であることが確認された。
各硬化性組成物についての引張特性試験の評価結果のうちの代表例を表5に示す。
【0101】
【0102】
表5の例27~33のポリオキシアルキレン重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体の配合において、添加剤を表4の配合2~9に変更して、各硬化性組成物を製造した場合も、添加物の配合2~9のそれぞれの場合の例34に対応する各硬化性組成物((メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体がB11である場合)と比較して、いずれも、良好な伸び及び引張強度を示し、十分な柔軟性を有していることが認められた。