(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-07
(45)【発行日】2026-01-16
(54)【発明の名称】シリカ膜付きガラス基板
(51)【国際特許分類】
C03C 17/25 20060101AFI20260108BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20260108BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20260108BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20260108BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20260108BHJP
【FI】
C03C17/25 A
C03C17/36
B32B9/00 A
B32B9/04
B32B17/06
(21)【出願番号】P 2022536427
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026520
(87)【国際公開番号】W WO2022014650
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2024-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2020123193
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(73)【特許権者】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】516170945
【氏名又は名称】エージーシー ヴィドロ ド ブラジル リミターダ
【氏名又は名称原語表記】AGC Vidros do Brasil Ltda.
【住所又は居所原語表記】Estrada Municipal Doutor Jaime Eduardo Ribeiro Pereira, n 500, Jardim Vista Alegre, Guaratingueta, Sao Paulo, CEP 12523-671, Brasil
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】森 一倫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 創史
(72)【発明者】
【氏名】矢尾板 和也
(72)【発明者】
【氏名】細尾 昇平
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/186753(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0172775(US,A1)
【文献】特表2002-528590(JP,A)
【文献】特開2016-018068(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121404(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00- 23/00
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、前記ガラス基板上に配置されており、シリカ膜形成用組成物を用いて形成されたシリカ膜と、を有する、シリカ膜付きガラス基板であって、
前記シリカ膜形成用組成物が、加水分解性化合物、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種と、を含み、
前記加水分解性化合物が、テトラアルコキシシランと、式Iで表される化合物と、任意で用いられる加水分解性基を有するフルオロアルキルシランと、任意で用いられる加水分解性基を有するジルコニウム化合物と、のみを含み、
前記テトラアルコキシシランのSiO
2換算での含有量が、前記テトラアルコキシシランのSiO
2換算での含有量と、前記式Iで表される化合物のSiO
2換算での含有量と、前記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO
2換算、ZrO
2換算、またはSiO
2およびZrO
2換算での含有量との合計含有量に対して、2~35質量%であり、
前記式Iで表される化合物のSiO
2換算での含有量が、前記テトラアルコキシシランのSiO
2換算での含有量と、前記式Iで表される化合物のSiO
2換算での含有量と、前記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO
2換算、ZrO
2換算、またはSiO
2およびZrO
2換算での含有量との合計含有量に対して、15~88質量%であり、
前記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO
2換算、ZrO
2換算、またはSiO
2およびZrO
2換算での含有量が、前記テトラアルコキシシランのSiO
2換算での含有量と、前記式Iで表される化合物のSiO
2換算での含有量と、前記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO
2換算、ZrO
2換算、またはSiO
2およびZrO
2換算での含有量との合計含有量に対して、10~60質量%である、シリカ膜付きガラス基板:
R
3-p(L)
pSi-Q-Si(L)
pR
3-p 式I
前記式I中、
Rは、水素原子、または、
炭素数1~10の1価の炭化水素基であ
り、
Lは、加水分解性基であり、
Qは
、炭素数2~6の2価の炭化水素基であ
り、
pは、1~3の整数である。
【請求項2】
前記式Iで表される化合物のSiO
2換算での含有量が、前記テトラアルコキシシランのSiO
2換算での含有量と、前記式Iで表される化合物のSiO
2換算での含有量と、前記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO
2換算、ZrO
2換算、またはSiO
2およびZrO
2換算での含有量との合計含有量に対して、30~50質量%である、請求項1に記載のシリカ膜付きガラス基板。
【請求項3】
前記シリカ膜形成用組成物が、金属触媒をさらに含む、請求項1または2に記載のシリカ膜付きガラス基板。
【請求項4】
前記ガラス基板と前記シリカ膜との間に、熱線反射膜をさらに有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリカ膜付きガラス基板。
【請求項5】
前記熱線反射膜が、銀含有層と、前記銀含有層よりも前記シリカ膜側に配置される全ての層からなる上層と、を有し、
前記上層の厚さに対する前記シリカ膜の厚さの比が、0.5~30である、請求項4に記載のシリカ膜付きガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ膜付きガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板の保護や所望の機能を付与することを目的として、ガラス基板の表面に膜を形成する方法が知られている。
例えば、特許文献1では、テトラアルコキシシランおよびビス(トリメトキシシリル)アルカン等のシリカ前駆体と、シリカ粒子と、溶媒と、を含む塗布液を化学強化ガラス板の表面に塗布し、乾燥して、ガラス基板の表面に機能膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ガラス基板の表面に配置される膜について更なる性能向上が求められており、例えば、耐アルカリ性および耐摩耗性に優れた膜が求められている。
本発明者らが、特許文献1に記載の塗布液を用いて、ガラス基板上に膜を形成したところ、膜の耐摩耗性には優れるものの、耐アルカリ性については改善の余地があることを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、耐アルカリ性および耐摩耗性に優れたシリカ膜付きガラス基板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量、後述の式Iで表される化合物のSiO2換算での含有量、およびシリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量がそれぞれ所定範囲内にあるシリカ膜形成用組成物を用いれば、耐アルカリ性および耐摩耗性に優れたシリカ膜付きガラス基板が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1] ガラス基板と、上記ガラス基板上に配置されており、シリカ膜形成用組成物を用いて形成されたシリカ膜と、を有する、シリカ膜付きガラス基板であって、
上記シリカ膜形成用組成物が、加水分解性化合物、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種と、を含み、
上記加水分解性化合物が、テトラアルコキシシランと、式Iで表される化合物と、任意で用いられる加水分解性基を有するフルオロアルキルシランと、任意で用いられる加水分解性基を有するジルコニウム化合物と、のみを含み、
上記テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量が、上記テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、上記式Iで表される化合物のSiO2換算での含有量と、上記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、2~35質量%であり、
上記式Iで表される化合物のSiO2換算での含有量が、上記テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、上記式Iで表される化合物のSiO2換算での含有量と、上記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、15~88質量%であり、
上記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量が、上記テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、上記式Iで表される化合物のSiO2換算での含有量と、上記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、10~60質量%である、シリカ膜付きガラス基板:
R3-p(L)pSi-Q-Si(L)pR3-p 式I
上記式I中、
Rは、水素原子、または、炭素-炭素原子間に-O-、-S-、-C(O)-および-N(R1)-からなる群から選択される1つ以上の基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、R1は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
Lは、加水分解性基であり、
Qは、炭素-炭素原子間に-O-、-S-、-C(O)-および-N(R2)-からなる群から選択される1つ以上の基を有していてもよい、炭素数2~6の2価の炭化水素基であり、R2は、水素原子または1価の炭化水素基であり、
pは、1~3の整数である。
[2] 上記式Iで表される化合物のSiO2換算での含有量が、上記テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、上記式Iで表される化合物のSiO2換算での含有量と、上記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、30~50質量%である、[1]のシリカ膜付きガラス基板。
[3] 上記シリカ膜形成用組成物が、金属触媒をさらに含む、[1]または[2]のシリカ膜付きガラス基板。
[4] 上記ガラス基板と上記シリカ膜との間に、熱線反射膜をさらに有する、[1]~[3]のいずれかのシリカ膜付きガラス基板。
[5] 上記熱線反射膜が、銀含有層と、上記銀含有層よりも上記シリカ膜側に配置される全ての層からなる上層と、を有し、
上記上層の厚さに対する上記シリカ膜の厚さの比が、0.5~30である、[4]に記載のシリカ膜付きガラス基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐アルカリ性および耐摩耗性に優れたシリカ膜付きガラス基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のシリカ膜付きガラス基板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のシリカ膜付きガラス基板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のシリカ膜付きガラス基板の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
「SiO2換算での含有量」とは、化合物に含まれる全てのケイ素原子がSiO2に転化したときの質量を意味する。
例えば、テトラエトキシシランには1個のケイ素原子が含まれるので、100gのテトラエトキシシラン(分子量:208.33)のSiO2換算での含有量は、SiO2の1個分の分子量(60.8)に基づいて計算すると、29.2gである。
また、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンには2個のケイ素原子が含まれるので、100gの1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(分子量:326.5)のSiO2換算での含有量は、SiO2の2個分の分子量(60.8×2)に基づいて計算すると、37.3gである。
「ZrO2換算での含有量」とは、化合物に含まれる全てのジルコニウム原子がZrO2に転化したときの質量を意味する。
【0012】
[シリカ膜付きガラス基板]
本発明のシリカ膜付きガラス基板は、ガラス基板と、上記ガラス基板上に配置されており、シリカ膜形成用組成物を用いて形成されたシリカ膜と、を有する。
また、上記シリカ膜形成用組成物は、加水分解性化合物、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種と、を含む。
また、上記加水分解性化合物は、テトラアルコキシシランと、後述の式Iで表される化合物(以下、「化合物I」ともいう。)と、任意で用いられる加水分解性基を有するフルオロアルキルシランと、任意で用いられる加水分解性基を有するジルコニウム化合物と、のみを含む。
また、上記テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量、上記化合物IのSiO2換算での含有量、および、上記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量はそれぞれ、上記テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、上記化合物IのSiO2換算での含有量と、上記シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、2~35質量%、15~88質量%、10~60質量%である。
すなわち、上記テトラアルコキシシラン、上記化合物I、および、上記シリカ粒子および/またはジルコニア粒子のSiO2換算および/またはZrO2換算での含有量は、それぞれ、上記テトラアルコキシシランと、上記化合物Iと、上記シリカ粒子および/またはジルコニア粒子とのSiO2換算および/またはZrO2換算での合計含有量に対して、2~35質量%、15~88質量%、10~60質量%である。
本発明のシリカ膜付きガラス基板は、耐アルカリ性および耐摩耗性に優れる。この理由の詳細は明らかになっていないが、概ね以下の理由によるものと推測される。
【0013】
本発明におけるシリカ膜形成用組成物は、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量が所定範囲内にある。これにより、シリカ膜の硬度が向上して、耐摩耗性に優れたシリカ膜付きガラス基板が得られたと推測される。
また、本発明におけるシリカ膜形成用組成物は、特許文献1における組成物と比較して、化合物Iの含有量(SiO2換算)が多い。このように、シリカ膜形成用組成物中の化合物Iの含有量が多い場合、式Iの「Q」に由来する炭素-炭素原子の結合が多く含まれるシリカ膜が得られる。炭素-炭素原子の結合は、ケイ素-酸素原子の結合と比較して、アルカリの作用によって切れにくいので、シリカ膜の耐アルカリ性が向上したと推測される。
また、式Iの「Q」に由来する炭素-炭素原子の結合が、シリカ膜に形成される微細な穴を塞ぐ役割を果たすことで、イオンの侵入を抑制し、シリカ膜の耐アルカリ性が向上したと推測される。微細な穴は、残留溶媒の揮発や加水分解縮合反応により形成される。
また、本発明のシリカ膜付きガラス基板は、耐塩水性にも優れる。この理由の詳細は明らかになっていないが、上述の耐アルカリ性に優れる理由と同様であると推測される。
【0014】
図1は、本発明のシリカ膜付きガラス基板の一例を模式的に示す断面図である。シリカ膜付きガラス基板1Aは、ガラス基板10と、ガラス基板10の一方の表面に形成されたシリカ膜20と、を有する。
図1の例では、ガラス基板10の一方の表面の全体にシリカ膜20が形成されているが、これに限定されず、ガラス基板10の一部の領域のみにシリカ膜20が形成されていてもよい。
図1の例では、ガラス基板10の一方の面のみに、シリカ膜20が形成されているが、これに限定されず、ガラス基板10の両面にシリカ膜20が形成されていてもよい。
以下において、シリカ膜付きガラス基板1Aが有する各部材について説明する。
【0015】
〔ガラス基板〕
ガラス基板10としては、特に限定されず、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、リチウムガラス、ホウケイ酸塩ガラスが挙げられる。ガラス基板10は、化学強化ガラスであってもよい。
ガラス基板10は、フロート法等により成形された表面が平滑なガラス板であってもよく、表面に凹凸を有する型板ガラス板であってもよく、曲面形状を有するガラス板であってもよい。
ガラス基板10の厚さは、用途によって適宜選択され、特に限定されないが、0.5mm~20mmが好ましい。
【0016】
〔シリカ膜〕
シリカ膜20は、後述のシリカ膜形成用組成物を用いて形成され、加水分解性化合物、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種、および、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種が含まれる。
【0017】
シリカ膜20の厚さは、本発明の効果がより優れる点から、10nm~1000nmが好ましく、20nm~500nmがより好ましく、30nm~200nmが特に好ましい。
シリカ膜20の厚さは、後述の実施例欄に記載の方法によって測定される。
【0018】
シリカ膜20の用途の具体例としては、防眩膜、低反射膜、保護膜(例えば、傷防止膜、アルカリバリヤ膜、ガラスのヤケ防止膜、防汚膜)が挙げられる。
【0019】
<シリカ膜形成用組成物>
シリカ膜形成用組成物は、加水分解性化合物、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種(以下、単に[加水分解性化合物類」ともいう。)と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種と、を含む。
上記加水分解性化合物は、テトラアルコキシシランと、化合物Iと、任意で用いられる加水分解性基を有するフルオロアルキルシランと、任意で用いられる加水分解性基を有するジルコニウム化合物と、のみを含む。
【0020】
(加水分解性化合物類)
テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。
テトラアルコキシシランは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
化合物Iは、下記式Iで表される化合物である。
R3-p(L)pSi-Q-Si(L)pR3-p 式I
【0022】
式I中、Rは、水素原子または1価の炭化水素基である。
1価の炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。
1価の炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
1価の炭化水素基は、炭素-炭素原子間に-O-、-S-、-C(O)-および-N(R1)-からなる群から選択される1つ以上の基を有していてもよい。R1は、水素原子または1価の炭化水素基である。
式I中、Rが2個以上ある場合、2個以上のRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
式I中、Lは、加水分解性基である。
加水分解性基とは、水と接触することで分解・縮合反応を起こす反応基である。
加水分解性基の具体例としては、アルコキシ基、アシロキシ基、ケトオキシム基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、イソシアネート基、ハロゲン原子等が挙げられる。中でも、化合物Iの安定性と加水分解のしやすさとのバランスの点から、アルコキシ基、イソシアネート基、ハロゲン原子(特に、塩素原子)が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~3のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
式I中、2個以上のLは、同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
Qは、炭素数2~6の2価の炭化水素基である。
2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等が挙げられ、アルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。
2価の炭化水素基は、炭素-炭素原子間に-O-、-S-、-C(O)-および-N(R2)-からなる群から選択される1つ以上の基を有していてもよい。R2は、水素原子または1価の炭化水素基である。
【0025】
pは、1~3の整数であり、反応速度の点から、2または3が好ましく、3が特に好ましい。
【0026】
化合物Iは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
加水分解性基を有するフルオロアルキルシランは、加水分解性化合物として任意で用いられる成分である。加水分解性基を有するフルオロアルキルシランを用いると、シリカ膜付きガラス基板の耐摩耗性がより向上する。
【0028】
加水分解性基を有するフルオロアルキルシランは、本発明の効果がより優れる点から、式IIで表される化合物であるのが好ましい。
RF-Q10-Si(L10)p1R10
3-p1 式II
【0029】
式II中、RFは、フルオロアルキル基であり、パーフルオロアルキル基であるのが好ましい。フルオロアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。
フルオロアルキル基の炭素数は、1~8が好ましく、4~8が特に好ましい。
【0030】
式II中、Q10は、2価の連結基である。
2価の連結基の具体例としては、炭素-炭素原子間に-O-、-S-、-C(O)-および-N(R11)-からなる群から選択される1つ以上の基を有していてもよい2価の炭化水素基、-O-、-S-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)-N(R12)-、ならびに、これらの基を2つ以上組み合わせた基が挙げられる。R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子または1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基の定義は、上述の式IにおけるRと同じである。
2価の炭化水素基の好適態様は、上述の式IにおけるQと同じである。ただし、2価の炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、2~6が特に好ましい。
中でも、2価の連結基は、2価の炭化水素基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0031】
式II中、L10は、加水分解性基である。加水分解性基の定義は、上述の式IにおけるLと同じである。
式II中、L10が2個以上ある場合、2個以上のL10は、同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
式II中、R10は、水素原子または1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基の定義は、上述の式IにおけるRと同じである。
式II中、R10が2個以上ある場合、2個以上のR10は、同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
p1は、1~3の整数であり、反応速度の点から、2または3が好ましく、3が特に好ましい。
【0034】
加水分解性基を有するフルオロアルキルシランは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
加水分解性基を有するジルコニウム化合物は、加水分解性化合物として任意で用いられる成分である。加水分解性基を有するジルコニウム化合物を用いると、シリカ膜付きガラス基板の耐アルカリ性がより向上する。
加水分解性基を有するジルコニウム化合物の具体例としては、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシドやオクチル酸ジルコニウム化合物、ステアリン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
加水分解性基を有するジルコニウム化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
加水分解性化合物の加水分解物とは、加水分解性化合物中の加水分解性基が加水分解して得られる化合物を意図する。なお、上記加水分解物は、加水分解性基の全てが加水分解されているもの(完全加水分解物)であっても、加水分解性基の一部が加水分解されているもの(部分加水分解物)であってもよい。つまり、上記加水分解物は、完全加水分解物、部分加水分解物、または、これらの混合物であってもよい。
また、加水分解性化合物の加水分解縮合物とは、加水分解性化合物中の加水分解性基が加水分解し、得られた加水分解物を縮合して得られる化合物を意図する。なお、上記加水分解縮合物としては、すべての加水分解性基が加水分解され、かつ、加水分解物がすべて縮合されているもの(完全加水分解縮合物)であっても、一部の加水分解性基が加水分解され、一部の加水分解物が縮合しているもの(部分加水分解縮合物)であってもよい。つまり、上記加水分解縮合物は、完全加水分解縮合物、部分加水分解縮合物、または、これらの混合物であってもよい。また、加水分解縮合物は、加水分解性化合物類のうち2種以上の化合物の加水分解物が互いに縮合して得られた加水分解縮合物であってもよい。
【0037】
(シリカ粒子、ジルコニア粒子)
シリカ粒子は、シリカ(SiO2)、ジルコニア粒子はジルコニア(ZrO2)を含む粒子である。
シリカ粒子、ジルコニア粒子の形状の具体例としては、球状、楕円状、針状、板状、棒状、円すい状、円柱状、立方体状、長方体状、ダイヤモンド状、星状、不定形状が挙げられる。
シリカ粒子、ジルコニア粒子は、中実粒子、中空粒子、または、多孔質粒子であってもよい。「中実粒子」とは、内部に空洞を有しない粒子を意味する。「中空粒子」は、内部に空洞を有する粒子を意味する。「多孔質粒子」とは、表面に複数の孔を有する粒子を意味する。
シリカ粒子、ジルコニア粒子は、各粒子が独立した状態で存在していてもよく、各粒子が鎖状に連結していてもよく、各粒子が凝集していてもよい。
【0038】
シリカ粒子、ジルコニア粒子の平均凝集粒子径は、本発明の効果がより優れる点から、5nm~100nmが好ましく、5nm~50nmが特に好ましい。
シリカ粒子、ジルコニア粒子の平均凝集粒子径は、レーザ回折式の粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準の累積50%径(D50)を意味する。
【0039】
シリカ粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、日産化学工業社製のスノーテックスシリーズが挙げられる。
シリカ粒子は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ジルコニア粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、多木化学社製のバイラールシリーズが挙げられる。
ジルコニア粒子は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
シリカ粒子、ジルコニア粒子の使い分けについては特に規定されるものではないが、ジルコニア粒子を使用した場合、ジルコニア粒子の高い焼結性によって、シリカ膜付きガラス基板をより高温で熱処理した際に発生しやすくなるクラックの課題を解決できシリカ膜をより緻密化させることが可能であるため、シリカ膜付き基板において高い耐久性能が得られやすい。
【0040】
(金属触媒)
シリカ膜形成用組成物は、加水分解性化合物の加水分解および縮合を促進する点から、金属触媒を含むことが好ましい。
金属触媒の具体例としては、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトナート、アルミニウム-ジ-n-ブトキシド-モノエチルアセトアセテート、アルミニウム-ジ-イソプロポキシド-モノメチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート等のアルミニウムキレート化合物;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート化合物;銅アセチルアセトナート等の銅キレート化合物;セリウムアセチルアセトナート等のセリウムキレート化合物;クロムアセチルアセトナート等のクロムキレート化合物;コバルトアセチルアセトナート等のコバルトキレート化合物;スズアセチルアセトナート等のスズキレート化合物;鉄(III)アセチルアセトナート等の鉄キレート化合物;マンガンアセチルアセトナート等のマンガンキレート化合物;ニッケルアセチルアセトナート等のニッケルキレート化合物;亜鉛アセチルアセトナート等の亜鉛キレート化合物;ジルコニウムアセチルアセトナート等のジルコニウムキレート化合物;ジアルキル錫等の有機錫化合物;が挙げられる。
中でも、金属触媒は、加水分解性化合物の加水分解および縮合を促進する点から、アルミニウムキレート化合物が好ましく、アルミニウムアセチルアセトナートが特に好ましい。
金属触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
(液状媒体)
シリカ膜形成用組成物は、液状媒体を含むことが好ましい。液状媒体は、組成物中において、加水分解性化合物を溶解または分散させ、シリカ粒子、ジルコニア粒子を分散させる溶媒であるのが好ましい。
【0042】
液状媒体の具体例としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、エステル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物、含硫黄化合物等の有機溶媒、および、水が挙げられる。
【0043】
アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコールが挙げられる。
ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンが挙げられる。
セロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブが挙げられる。
エステル類の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチルが挙げられる。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
含窒素化合物の具体例としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンが挙げられる。
含硫黄化合物の具体例としては、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0044】
液状媒体は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
液状媒体は、加水分解性化合物の加水分解の点から、水のみを含むか、または、水と有機溶媒との混合溶媒であるのが好ましい。
水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。
【0045】
(他の成分)
シリカ膜形成用組成物は、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分の具体例としては、シリコーンオイル、界面活性剤、pH調整剤(例えば、酸、アルカリ等)、消泡剤が挙げられる。
【0046】
(含有量)
シリカ膜形成用組成物において、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量は、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、化合物IのSiO2換算での含有量と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、2~35質量%である。また、該含有量は、シリカ膜付きガラス基板の耐摩耗性により優れる点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましく、シリカ膜付きガラス基板の耐アルカリ性および耐塩水性により優れる点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0047】
シリカ膜形成用組成物において、化合物IのSiO2換算での含有量は、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、化合物IのSiO2換算での含有量と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、15~88質量%である。該含有量は、シリカ膜付きガラス基板の耐アルカリ性および耐塩水性により優れる点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましく、シリカ膜付きガラス基板の耐摩耗性により優れる点から、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0048】
シリカ膜形成用組成物において、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量は、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、化合物IのSiO2換算での含有量と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、10~60質量%である。該含有量は、シリカ膜付きガラス基板の耐摩耗性により優れる点から、30質量%以上が好ましく、32質量%以上が好ましく、35質量%以上が特に好ましく、シリカ膜付きガラス基板の耐アルカリ性および耐塩水性により優れる点から、50質量%以下が好ましく、48質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
【0049】
シリカ膜形成用組成物が加水分解性基を有するフルオロアルキルシランを含む場合、シリカ膜形成用組成物において、加水分解性基を有するフルオロアルキルシランのSiO2換算での含有量は、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、化合物IのSiO2換算での含有量と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量と、加水分解性基を有するフルオロアルキルシランのSiO2換算での含有量との合計含有量に対して、シリカ膜付きガラス基板の耐摩耗性により優れる点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が特に好ましく、シリカ膜付きガラス基板の耐アルカリ性および耐塩水性により優れる点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0050】
シリカ膜形成用組成物が加水分解性基を有するジルコニウム化合物を含む場合、シリカ膜形成用組成物において、加水分解性基を有するジルコニウム化合物のZrO2換算での含有量は、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、化合物IのSiO2換算での含有量と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量と、加水分解性基を有するジルコニウム化合物のZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、シリカ膜付きガラス基板の耐アルカリ性及び耐塩水性により優れる点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上が特に好ましく、シリカ膜付きガラス基板の耐摩耗性により優れる点から、6質量%以下が好ましく、4質量%以下が特に好ましい。
【0051】
シリカ膜形成用組成物が金属触媒を含む場合、金属触媒の含有量は、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、化合物IのSiO2換算での含有量と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量と、任意で用いられる加水分解性基を有するフルオロアルキルシランのSiO2換算での含有量と、の合計含有量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。
【0052】
シリカ膜形成用組成物が上述した他の成分を含む場合、他の成分の含有量は、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量と、化合物IのSiO2換算での含有量と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量と、任意で用いられる加水分解性基を有するフルオロアルキルシランのSiO2換算での含有量と、の合計含有量に対して、0.1~3質量%が好ましく、0.5~2質量%が特に好ましい。
【0053】
シリカ膜形成用組成物が液状媒体を含む場合、液状媒体の含有量は、シリカ膜形成用組成物の全質量に対して、86.0~99.5質量%が好ましく、88.5~99.0質量%が特に好ましい。
【0054】
(調製方法)
シリカ膜形成用組成物は、加水分解性化合物、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種および任意成分(例えば、金属触媒、液状媒体)を混合して製造できる。
【0055】
〔用途〕
シリカ膜付きガラス基板1Aの用途は、特に限定されないが、車両用透明部品(ヘッドライトカバー、サイドミラー、フロント透明基板、サイド透明基板、リア透明基板、インスツルメントパネル表面等。)、メータ、建築窓、ショーウインドウ、ディスプレイ(ノート型パソコン、モニタ、LCD、PDP、ELD、CRT、PDA等)、LCDカラーフィルタ、タッチパネル用基板、ピックアップレンズ、光学レンズ、眼鏡レンズ、カメラ部品、ビデオ部品、CCD用カバー基板、光ファイバ端面、プロジェクタ部品、複写機部品、太陽電池用透明基板(カバーガラス等。)、携帯電話窓、バックライトユニット部品(導光板、冷陰極管等。)、液晶輝度向上フィルム、有機EL発光素子部品、無機EL発光素子部品、蛍光体発光素子部品、光学フィルタ、光学部品の端面、照明ランプ、照明器具のカバー、増幅レーザ光源等が挙げられる。
【0056】
〔シリカ膜付きガラス基板の製造方法〕
シリカ膜付きガラス基板1Aの製造方法としては、ガラス基板10上に上述のシリカ膜形成用組成物を塗布し、必要に応じて乾燥して、ガラス基板10上にシリカ膜20を形成する方法が挙げられる。
【0057】
塗布方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、フローコート法、グラビアコート法、バーコート法、フレキソコート法、スリットコート法、ロールコート法等のウェットコート法が挙げられる。
【0058】
乾燥は、加熱により行ってもよく、加熱せずに自然乾燥や風乾により行ってもよい。
乾燥温度は、シリカ膜の硬度が優れる点から、50℃以上が好ましく、100℃以上が特に好ましい。
乾燥時間は、乾燥温度やガラス基板のサイズ等によって適宜設定すればよいが、5分以上が好ましく、10分以上が特に好ましい。
【0059】
〔他の態様〕
図1では、ガラス基板10とシリカ膜20とが接している例を示したが、これに限定されず、本発明のシリカ膜付きガラス基板は、
図2に示すように、ガラス基板10とシリカ膜20との間に、他の層を有していてもよい。
【0060】
図2は、本発明のシリカ膜付きガラス基板の一例を模式的に示す断面図である。本態様におけるシリカ膜付きガラス基板1Bは、ガラス基板10と、ガラス基板10の一方の表面に形成された熱線反射膜30Aと、熱線反射膜30Aにおけるガラス基板10とは反対側の表面に形成されたシリカ膜20と、を有する。
熱線反射膜30Aは、ガラス基板10側から順に、第1の誘電体層31、第1の銀含有層32および第2の誘電体層33を有する。
図2の例では、ガラス基板10の一方の表面の全体に熱線反射膜30Aが形成されているが、これに限定されず、ガラス基板10の一部の領域のみに熱線反射膜30Aが形成されていてもよい。
【0061】
以下において、シリカ膜付きガラス基板1Bが有する各部材について説明する。
シリカ膜付きガラス基板1Bは、熱線反射膜30Aを有する以外は上述のシリカ膜付きガラス基板1Aと同様であるので、シリカ膜付きガラス基板1Aで説明した部材については、その説明を省略する。
【0062】
<熱線反射膜>
本態様において、熱線反射膜30Aは、ガラス基板10とシリカ膜20との間に配置されている。熱線反射膜30Aは、シリカ膜付きガラス基板1Bの遮熱性を向上できる。
熱線反射膜30Aは、厚さ方向に沿って、第1の誘電体層31と、第1の銀含有層32と、第2の誘電体層33と、をこの順に有する。
熱線反射膜30Aの厚さは、シリカ膜付きガラス基板1Bの遮熱性と意匠性がより優れる点から、15nm~565nmが好ましく、25nm~460nmがより好ましく、30nm~390nmが特に好ましい。
熱線反射膜30Aの厚さは、熱線反射膜30Aを構成する各層の厚さを合計することで算出できる。また、熱線反射膜30Aを構成する各層の厚さは、後述する実施例欄に記載の方法によって求められる。
【0063】
(銀含有層)
第1の銀含有層32は銀を含む層であり、銀の作用によってシリカ膜付きガラス基板1Bの遮熱性をより向上できる。
ここで、第1の銀含有層32に含まれる銀は、外気に直接触れると腐食しやすいが、シリカ膜付きガラス基板1Bは、シリカ膜20を有するので、銀の腐食を抑制できる。これにより、シリカ膜付きガラス基板1Bは、優れた遮熱性能を維持できる。
【0064】
第1の銀含有層32には、銀以外の金属(以下、「他の金属」ともいう。)が含まれていてもよい。他の金属の具体例としては、パラジウム、金、クロム、コバルト、ニッケル、銅およびチタンからなる群から選択される少なくとも1種の金属が挙げられる。
他の金属は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0065】
第1の銀含有層32に含まれる銀の含有量は、100質量%であることが好ましい。
ただし、第1の銀含有層32が他の金属を含む場合、銀の含有量は、第1の銀含有層32の全質量に対して、遮熱性の点から、50質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。第1の銀含有層32が他の金属を含む場合、第1の銀含有層32に含まれる銀の含有量は、第1の銀含有層32の全質量に対して、99質量%以下が好ましく、97質量%以下が特に好ましい。他の金属の含有量は、第1の銀含有層32の全質量に対して、1~30質量%が好ましく、1~20質量%が特に好ましい。
【0066】
第1の銀含有層32の厚さは、遮熱性の点から、5nm~30nmが好ましく、7nm~25nmが特に好ましい。
【0067】
図2の例では、熱線反射膜が1層の銀含有層を有する場合を示したが、銀含有層の数はこれに限定されず、熱線反射膜は、銀含有層を2層以上有していてもよい。
熱線反射膜が銀含有層を複数有する場合には、銀含有層の厚さの合計は、シリカ膜付きガラス基板の遮熱性および意匠性の点から、10nm~60nmが好ましく、14nm~50nmが特に好ましい。
【0068】
(誘電体層)
第1の誘電体層31および第2の誘電体層33は、銀含有層を挟み込むように配置されていることが好ましい。これらの誘電体層は、反射率抑制または銀含有層の膜質向上という機能を備える。
各誘電体層を構成する材料としては、金属の酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む誘電体が挙げられる。上記金属の具体例としては、亜鉛、スズ、チタン、ケイ素、アルミニウム、クロム、ニッケル、ニオブ、および、それらの合金が挙げられる。
各誘電体層を構成する材料には、添加物質がドープされていてもよい。添加物質の具体例としては、スズ、アルミニウム、クロム、チタン、ケイ素、ホウ素、マグネシウム、ジルコニウム、およびガリウムの酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
中でも、各誘電体層を構成する材料は、窒化物および酸化物が好ましく、窒化ケイ素(SiN)および酸化亜鉛(ZnO)が特に好ましい。
【0069】
第1の誘電体層31および第2の誘電体層33の厚さはそれぞれ、光学特性調整の観点の点から、5nm~120nmが好ましく、10nm~100nmが特に好ましい。
【0070】
図2の例では、熱線反射膜が2層の誘電体層を有する場合を示したが、誘電体層の数はこれに限定されず、熱線反射膜は、誘電体層を3層以上有していてもよい。
熱線反射膜が誘電体層を複数有する場合には、誘電体層の厚さの合計は、光学特性調整の観点から、10nm~400nmが好ましく、20nm~350nmが特に好ましい。
【0071】
(他の層)
図2の例では、熱線反射膜が銀含有層および誘電体層を有する場合を示したが、熱線反射膜は、これら以外の層(以下、「他の層」ともいう。)を有していてもよい。
他の層の具体例としては、バリア層が挙げられる。バリア層は、銀含有層を安定化するため、または誘電体層を形成する際に銀含有層の酸化を抑制するために設けることができる。この場合、バリア層は、誘電体層と銀含有層との間に配置される。
バリア層を構成する材料の具体例としては、ニッケルクロム合金、チタン、亜鉛アルミニウム合金およびこれらの酸化物が挙げられ、中でも、ニッケルクロム合金が好ましい。
熱線反射膜は、バリア層を1層のみを有していてもよいし、バリア層を2層以上有していてもよい。
バリア層の厚さは、0.1nm~15nmが好ましく、0.5nm~10nmが特に好ましい。
【0072】
(変形例)
図2では、熱線反射膜が銀含有層を1層のみを有する態様を示したが、これに限定されず、熱線反射膜は銀含有層を2層以上有していてもよい。
熱線反射膜が銀含有層を2層以上有する場合の具体例としては、
図3に示す態様が挙げられる。
図3は、本発明のシリカ膜付きガラス基板の一例を模式的に示す断面図である。本態様におけるシリカ膜付きガラス基板1Cは、ガラス基板10と、ガラス基板10の一方の表面に形成された熱線反射膜30Bと、熱線反射膜30Bにおけるガラス基板10とは反対側の表面に形成されたシリカ膜20と、を有する。
熱線反射膜30Bは、ガラス基板10側から順に、第1の誘電体層31、第1の銀含有層32、第2の誘電体層33、第2の銀含有層34および第3の誘電体層35を有する。
図3の例では、ガラス基板10の一方の表面の全体に熱線反射膜30Bが形成されているが、これに限定されず、ガラス基板10の一部の領域のみに熱線反射膜30Bが形成されていてもよい。
【0073】
シリカ膜付きガラス基板1Cは、熱線反射膜30Aの代わりに熱線反射膜30Bを有する以外は上述のシリカ膜付きガラス基板1Bと同様であるので、シリカ膜付きガラス基板1Bで説明した部材については、その説明を省略する。
【0074】
熱線反射膜30Bにおける第2の銀含有層34は、形成される位置が異なる以外は、熱線反射膜30Aにおける第1の銀含有層32と同様である。
熱線反射膜30Bにおける第3の誘電体層35は、形成される位置が異なる以外は、熱線反射膜30Aにおける第1の誘電体層31および第2の誘電体層33と同様である。
【0075】
図3の例では、熱線反射膜が銀含有層および誘電体層を有する場合を示したが、
図2と同様にバリア層等の他の層を有していてもよい。
【0076】
(厚さの比)
熱線反射膜が、銀含有層と、上記銀含有層よりも上記シリカ膜側に配置される全ての層からなる上層と、を有する場合、上層の厚さに対するシリカ膜の厚さの比(シリカ膜の厚さ/上層の厚さ)は、0.5~30が好ましく、0.7~20がより好ましく、1~10が特に好ましい。厚さの比が30以下であれば、シリカ膜付きガラス基板の放射率を低減できるので、遮熱性能がより向上する。厚さの比が0.5以上であれば、耐アルカリ性および耐摩耗性により優れる。
ここで、上層とは、銀含有層よりもシリカ膜側に配置される層の総称であって、
図2の例では、第2の誘電体層33に相当する。また、
図3の例では、上層は、第3の誘電体層35に相当する。
銀含有層よりもシリカ膜側に配置される層が複数存在する場合には、複数の層の全体が上層である。したがって、上層の厚さとは、上層が1層のみからなる場合には、1層のみの厚さを意味し、上層が2層以上からなる場合には、各層の厚さの合計を意味する。
【0077】
(物性等)
シリカ膜付きガラス基板1Bおよびシリカ膜付きガラス基板1Cは、下記摩耗試験後に、傷が発生しない。
・摩耗試験方法
綿布をラビングテスター接触子(HEIDON製,TYPE30S,接触子面積:2cm×2cm=4cm2)に取り付け、接触子を19.6×10-2MPaの圧力にて、シリカ膜付きガラス基板におけるシリカ膜の表面を5,000回水平往復運動させる。綿布で摩擦した部分に透過光を照射して、目視で傷の有無を確認する。
【0078】
シリカ膜付きガラス基板1Bおよびシリカ膜付きガラス基板1Cは、下記アルカリ試験後に、JISK7136:2000に従って測定されるヘイズ値が0.4%以下であることが好ましく、ヘイズ値が0.3%以下であることがより好ましく、目視で白濁が認められないことが特に好ましい。
・アルカリ試験方法
23±2℃に調整した0.1N水酸化ナトリウム水溶液にシリカ膜付きガラス基板を6時間浸漬した後、純水にて洗浄し、エアブローにて乾燥する。乾燥後、試験箇所に光を照射し、目視にて白濁の発生度合いを確認する。さらに、JISK7136:2000に従ってヘイズ値を測定する。
【0079】
シリカ膜付きガラス基板1Bおよびシリカ膜付きガラス基板1Cの放射率は、シリカ膜付きガラス基板の遮熱性能が向上する点から、0.01~0.35が好ましく、0.01~0.25がより好ましく、0.01~0.15が特に好ましい。
放射率の測定方法は後述の実施例欄に記載の通りである。
【0080】
<シリカ膜付きガラス基板の製造方法>
シリカ膜付きガラス基板1Bの製造方法としては、ガラス基板10上に、熱線反射膜30Aを構成する各層をその順に成膜した後、熱線反射膜30A上に上述のシリカ膜形成用組成物を塗布し、必要に応じて乾燥して、ガラス基板10上に、熱線反射膜30Aおよびシリカ膜20をこの順に形成する方法が挙げられる。
熱線反射膜30Aを構成する各層の成膜方法は、特に限定されず、物理的蒸着法(例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法)、化学的蒸着法(例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法)、イオンビームスパッタリング法等が挙げられる。
シリカ膜付きガラス基板1Cの製造方法は、熱線反射膜30Bを構成する各層をその順に成膜する以外は、シリカ膜付きガラス基板1Bの製造方法と同様である。
【実施例】
【0081】
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。例1~例6、および例10は実施例であり、例7~例9は比較例である。ただし本発明はこれらの例に限定されない。
【0082】
[シリカ膜の厚さの測定]
後述の各例における条件で、ソーダライムガラス板の一方の面にシリカ膜を形成した。ソーダライムガラス板のシリカ膜を形成していない他方の面に、黒のビニールテープを貼り付けた状態で、分光光度計(日立ハイテクノロジー社製U-4100)により、波長300nm~780nmの範囲でシリカ膜の反射率を測定した。
得られた最も低い反射率(ボトム反射率:Rmin)と、膜付けされていないソーダライムガラス板の屈折率nsとから、下式(1)により屈折率nを算出し、次いで得られた屈折率nとボトム反射率(Rmin)における波長λ(nm)から、下式(2)によってシリカ膜の厚さdを算出した。
Rmin=(n-ns)2/(n+ns)2 ・・・(1)
n×d=λ/4 ・・・(2)
【0083】
[放射率の測定]
放射率計(京都電子工業社製,D and S AERD)を用いて、各例のシリカ膜付きガラス基板の放射率を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
[耐アルカリ性の評価試験]
各例のシリカ膜付きガラス基板を、23±2℃に調整した0.1N水酸化ナトリウム水溶液に6時間浸漬した後、純水にて洗浄し、エアブローにて乾燥した。
乾燥後、試験箇所に光を照射し、目視にて白濁の発生度合いを確認して、以下の基準によって耐アルカリ性を評価した。さらに、ヘイズガードi(BYK-Gardner社製)を用いて、ヘイズ値を測定した。結果を表1に示す。
AA:白濁が全く認められない。
A:一部白濁が認められる。
B:全面に白濁が認められる。
【0085】
[耐塩水性の評価試験]
各例のシリカ膜付きガラス基板を、50±2℃に調整した5%塩化ナトリウム水溶液に24時間浸漬した後、純水にて洗浄し、エアブローにて乾燥した。
乾燥後のシリカ膜付きガラス基板を目視して観察して、以下の基準によって耐塩水性を評価した。結果を表1に示す。
A:外観変化なし
B:外観変化あり(光点やムラが発生)
【0086】
[耐摩耗性の評価試験]
綿布をラビングテスター接触子(HEIDON製,TYPE30S,接触子面積:2cm×2cm=4cm2)に取り付け、接触子を19.6×10-2MPaの圧力にて、各例のシリカ膜付きガラス基板におけるシリカ膜の表面を水平往復運動させた。
5,000回の往復運動後、綿布で摩擦した部分に光を照射して、透過光によって傷の有無を確認し、以下の基準によって耐摩耗性を評価した。結果を表1に示す。
A:傷の発生なし
B:傷の発生あり
【0087】
〔シリカ膜形成用組成物Aの調製〕
変性エタノール(日本アルコール販売社製、商品名「ソルミックス AP-11」)73.67gを撹拌しながら、イオン交換水23.6gとアルミニウムアセチルアセトナート0.01gを加え、5分間攪拌した。
これに、テトラエトキシシラン0.17gと、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン0.81gと、シリカ粒子分散液(日産化学工業社製,商品名「スノーテックスOS」,SiO2換算量:20質量%)1.75gとを加え、室温で30分攪拌して、シリカ膜形成用組成物Aを作製した。
シリカ膜形成用組成物Aにおいて、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンおよびシリカ粒子のSiO2換算での含有量はそれぞれ、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンおよびシリカ粒子のSiO2換算での合計含有量に対して、7質量%、43質量%、50質量%であった。
【0088】
〔シリカ膜形成用組成物B~Fの調製〕
テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンおよびシリカ粒子のSiO2換算での合計含有量に対する、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンおよびシリカ粒子のSiO2換算での含有量がそれぞれ、表1に記載の値となるように、各成分の使用量を調節した以外は、シリカ膜形成用組成物Aの調製と同様にして、シリカ膜形成用組成物B~Fを得た。
〔シリカ膜形成用組成物Gの調製〕
変性エタノール(日本アルコール販売社製、商品名「ソルミックス AP-11」)73.67gを撹拌しながら、イオン交換水23.6gとアルミニウムアセチルアセトナート0.01gを加え、5分間攪拌した。
これに、テトラエトキシシラン0.84gと、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン0.28gと、ジルコニア粒子分散液(多木化学社製,商品名「バイラールZr-C20」,ZrO2換算量:20質量%)1.75gとを加え、室温で30分攪拌して、シリカ膜形成用組成物Gを作製した。
シリカ膜形成用組成物Gにおいて、テトラエトキシシランのSiO2換算での含有量、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンのSiO2換算での含有量、およびジルコニア粒子のZrO2換算での含有量はそれぞれ、テトラエトキシシランのSiO2換算での含有量と、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンのSiO2換算での含有量と、ジルコニア粒子のZrO2換算での含有量との合計含有量に対して、35質量%、15質量%、50質量%であった。
【0089】
[熱線反射膜付きガラス基板の作製]
ガラス基板としてソーダライムガラス板(AGC株式会社製(FL5))を用い、その一方の主面上に、インライン型スパッタリング装置を用いて、ソーダライムガラス板上にSiN層(30nm)、NiCr層(2nm)、Ag層(12nm)、NiCr層(2nm)、SiN層(88nm)、NiCr層(1nm)、Ag層(14nm)、NiCr層(1nm)、SiN層(39nm)の順になるように熱線反射膜を成膜して、熱線反射膜付きガラス基板を得た。なお、括弧内の数値は、層の厚さを示す。各層の厚さは、事前に設定した投入電力で成膜した場合の厚さに基づき、投入電力で比例換算することにより算出した。
具体的には、SiN層は、スパッタリングターゲットとしてシリコンを主成分とするターゲットを配置し、アルゴンと窒素を含む雰囲気下でACスパッタリングを行い成膜した。NiCr層はスパッタリングターゲットとしてニッケルクロム合金を主成分とするターゲットを配置し、アルゴン雰囲気下でDCスパッタリングを行い成膜した。Ag層はスパッタリングターゲットとして銀を主成分とするターゲットを配置し、アルゴン雰囲気下でDCスパッタリングを行い成膜した。なお、SiN層は誘電体層、NiCr層はバリア層、Ag層は銀含有層である。
【0090】
[例1]
上記熱線反射膜付きガラス基板(サイズ:100mm×100mm)を純水にて洗浄後、風乾した。
風乾後、上記シリカ膜形成用組成物Aを熱線反射膜付きガラスの熱線反射膜の表面に滴下し、スピンコート法(振切り回転数300rpm)にてシリカ膜形成用組成物Aの塗膜が形成された塗膜付きガラス基板を作製した。
炉内温度を130℃に調整した熱風炉内に塗膜付きガラス基板を投入し、10分間加熱して塗膜を硬化した後、室温下で冷却を行うことで、例1のシリカ膜付きガラス基板を得た。
【0091】
[例2~5および例7~10]
シリカ膜形成用組成物Aの代わりに、表1に記載のシリカ膜形成用組成物を用い、シリカ膜の厚さが表1の値になるように塗布条件を調節した以外は例1と同様にして、例2~5および例7~10のシリカ膜付きガラス基板を作製した。
【0092】
[例6]
熱線反射膜付きガラス基板の代わりにソーダライムガラス板を用いた以外は、例1と同様にして、例6のシリカ膜付きガラス基板を作製した。
【0093】
[評価結果]
例1~10のシリカ膜付きガラス基板を用いて、上述の各種評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1中、「SiO2換算での含有量(質量%)」とは、テトラエトキシシランのSiO2換算での含有量と、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンのSiO2換算での含有量と、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量との合計含有量に対する、テトラエトキシシランのSiO2換算での含有量、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンのSiO2換算での含有量、およびシリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量を意味する。
また、「シリカ膜の厚さ/上層の厚さ」とは、上層(熱線反射膜におけるNiCr層(1nm)およびSiN層(39nm))の厚さに対する、シリカ膜の厚さの比を意味する。
【0094】
【0095】
表1に示す通り、テトラアルコキシシランのSiO2換算での含有量、化合物IのSiO2換算での含有量、およびシリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群から選択される少なくとも1種のSiO2換算、ZrO2換算、またはSiO2およびZrO2換算での含有量がそれぞれ所定範囲内にあるシリカ膜形成用組成物を用いれば、耐アルカリ性、耐塩水性および耐摩耗性に優れたシリカ膜付きガラス基板が得られるのが確認された(例1~6、10)。
【0096】
本出願は、2020年7月17日出願の日本特許出願2020-123193に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0097】
1A,1B,1C シリカ膜付きガラス基板
10 ガラス基板
20 シリカ膜
30A,30B 熱線反射膜
31 第1の誘電体層
32 第1の銀含有層
33 第2の誘電体層
34 第2の銀含有層
35 第3の誘電体層