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7801426狭帯域化レーザ装置、及び電子デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-07
(45)【発行日】2026-01-16
(54)【発明の名称】狭帯域化レーザ装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20260108BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2024508881
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013452
(87)【国際公開番号】W WO2023181159
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2025-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】岸本 繁人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】庭野 素己
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0159297(US,A1)
【文献】特表2017-538963(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192704(WO,A1)
【文献】特表2013-511842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/141464(US,A1)
【文献】特開2001-307997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光共振器の光路に位置する光学素子及び回折光学素子と、
前記光学素子を動かすことで前記回折光学素子に入射する光の入射角を変更する波長アクチュエータと、
前記波長アクチュエータを駆動する波長ドライバと、
前記光共振器から出力されるパルスレーザ光の波長が周期的に変化するように前記波長ドライバに波長制御信号を出力するプロセッサと、
前記波長制御信号の経路に配置され、前記波長アクチュエータの駆動周波数と異なるノッチ周波数で作用するノッチフィルタと、
を備える、狭帯域化レーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチ周波数は、前記駆動周波数よりも高い周波数である、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチ周波数は、前記駆動周波数の1倍より大きい奇数倍である、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチ周波数は、前記波長アクチュエータの周期的な駆動によって振動する波長振り機構の振動系の共振周波数に合わせて設定される、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチフィルタは、直列に接続された第1及び第2の帯域除去フィルタを含む、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記第1及び第2の帯域除去フィルタは、同一のノッチ周波数で作用する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記第1及び第2の帯域除去フィルタは、同一のノッチゲイン深さで作用する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項8】
請求項1に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチフィルタは、前記プロセッサによってノッチパラメータを調整可能に構成された、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチパラメータは、前記ノッチ周波数とノッチゲイン深さとを含み、
前記プロセッサは、前記ノッチ周波数を調整した後で前記ノッチゲイン深さを調整する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項10】
請求項8に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記パルスレーザ光の光路に位置する波長モニタをさらに備え、
前記プロセッサは、前記波長モニタの出力に基づいて前記パルスレーザ光の計測波長を算出し、前記計測波長に基づいて前記ノッチパラメータを調整する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項11】
請求項10に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記計測波長と前記パルスレーザ光の目標波長との偏差を算出し、前記偏差に基づいて前記ノッチパラメータを調整する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記偏差と閾値とを比較し、前記偏差が前記閾値より大きいパルスが所定パルス数にわたって連続した場合に前記ノッチパラメータを調整する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項13】
請求項12に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチパラメータは、前記ノッチ周波数を含み、
前記プロセッサは、前記ノッチ周波数を増減させて前記偏差を算出し、前記偏差が0に近づくような前記ノッチ周波数を探索する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項14】
請求項12に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチパラメータは、ノッチゲイン深さをさらに含み、
前記プロセッサは、前記ノッチゲイン深さを増減させて前記偏差を算出し、前記偏差が0に近づくような前記ノッチゲイン深さを探索する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項15】
請求項10に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記パルスレーザ光の目標波長が異なる複数のパルスの前記計測波長の波長差を算出し、前記波長差に基づいて前記ノッチパラメータを調整する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項16】
請求項15に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記波長差を複数回算出して前記波長差の平均値を算出し、前記平均値が閾値より大きい場合に前記ノッチパラメータを調整する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項17】
請求項1に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記ノッチフィルタは、直列に接続された第1及び第2の帯域除去フィルタを含み、
前記第1及び第2の帯域除去フィルタは、前記プロセッサによってそれぞれノッチパラメータを調整可能に構成された、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項18】
請求項17に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記第1及び第2の帯域除去フィルタが同一のノッチ周波数で作用するように、前記ノッチパラメータを調整する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項19】
請求項18に記載の狭帯域化レーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記第1及び第2の帯域除去フィルタが同一のノッチゲイン深さで作用するように、前記ノッチパラメータを調整する、
狭帯域化レーザ装置。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
光共振器の光路に位置する光学素子及び回折光学素子と、
前記光学素子を動かすことで前記回折光学素子に入射する光の入射角を変更する波長アクチュエータと、
前記波長アクチュエータを駆動する波長ドライバと、
前記光共振器から出力されるパルスレーザ光の波長が周期的に変化するように前記波長ドライバに波長制御信号を出力するプロセッサと、
前記波長制御信号の経路に配置され、前記波長アクチュエータの駆動周波数と異なるノッチ周波数で作用するノッチフィルタと、
を備える狭帯域化レーザ装置によって前記パルスレーザ光を生成し、
前記パルスレーザ光を露光装置に出力し、
前記電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記パルスレーザ光を露光する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、狭帯域化レーザ装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置においては、半導体集積回路の微細化及び高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。例えば、露光用のガスレーザ装置としては、波長約248nmのレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長約193nmのレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
KrFエキシマレーザ装置及びArFエキシマレーザ装置の自然発振光のスペクトル線幅は、350~400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過させる材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を含む狭帯域化モジュール(Line Narrowing Module:LNM)が備えられる場合がある。スペクトル線幅が狭帯域化されるガスレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-276128号公報
【文献】特開2004-266624号公報
【文献】特開平05-104421号公報
【文献】米国特許第4963806号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点において、狭帯域化レーザ装置は、光共振器の光路に位置する光学素子及び回折光学素子と、光学素子を動かすことで回折光学素子に入射する光の入射角を変更する波長アクチュエータと、波長アクチュエータを駆動する波長ドライバと、光共振器から出力されるパルスレーザ光の波長が周期的に変化するように波長ドライバに波長制御信号を出力するプロセッサと、波長制御信号の経路に配置され、波長アクチュエータの駆動周波数と異なるノッチ周波数で作用するノッチフィルタと、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点において、電子デバイスの製造方法は、光共振器の光路に位置する光学素子及び回折光学素子と、光学素子を動かすことで回折光学素子に入射する光の入射角を変更する波長アクチュエータと、波長アクチュエータを駆動する波長ドライバと、光共振器から出力されるパルスレーザ光の波長が周期的に変化するように波長ドライバに波長制御信号を出力するプロセッサと、波長制御信号の経路に配置され、波長アクチュエータの駆動周波数と異なるノッチ周波数で作用するノッチフィルタと、を備える狭帯域化レーザ装置によってパルスレーザ光を生成し、パルスレーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にパルスレーザ光を露光することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例における露光システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、比較例における狭帯域化レーザ装置の構成を概略的に示す。
図3図3は、パルスレーザ光の目標波長を周期的に変化させる例を示すグラフである。
図4図4は、比較例における波長振り機構の振動系の周波数応答特性を示すグラフである。
図5図5は、比較例において回転ステージを駆動周波数1kHzで駆動したときの波長振り機構の振動系の振動周波数のスペクトルを示すグラフである。
図6図6は、比較例における目標波長と計測波長との関係を示すグラフである。
図7図7は、第1の実施形態における狭帯域化レーザ装置の構成を概略的に示す。
図8図8は、第1の実施形態に含まれる固定ノッチフィルタの一例を示す回路図である。
図9図9は、第1の実施形態における波長振り機構の振動系及び固定ノッチフィルタの周波数応答特性を示すグラフである。
図10図10は、第1の実施形態における目標波長と計測波長との関係の第1の例を示すグラフである。
図11図11は、第2の実施形態に含まれる固定ノッチフィルタの一例を示す回路図である。
図12図12は、第1の実施形態における固定ノッチフィルタの周波数応答特性を示すグラフである。
図13図13は、第1の実施形態における目標波長と計測波長との関係の第2の例を示すグラフである。
図14図14は、第2の実施形態における固定ノッチフィルタの周波数応答特性を示すグラフである。
図15図15は、第2の実施形態における目標波長と計測波長との関係の例を示すグラフである。
図16図16は、第3の実施形態における狭帯域化レーザ装置の構成を概略的に示す。
図17図17は、第3の実施形態に含まれる可変ノッチフィルタの一例を示す回路図である。
図18図18は、第3の実施形態に含まれる可変ノッチフィルタの一例を示す回路図である。
図19図19は、第3の実施形態における波長振り機構の振動系及び可変ノッチフィルタの周波数応答特性を示すグラフである。
図20図20は、第3の実施形態における目標波長と計測波長との関係の例を示すグラフである。
図21図21は、第3の実施形態におけるノッチパラメータ調整の第1の例を示すフローチャートである。
図22図22は、第3の実施形態におけるノッチ周波数の調整の例を示すフローチャートである。
図23図23は、第3の実施形態におけるノッチゲイン深さの調整の例を示すフローチャートである。
図24図24は、第3の実施形態におけるノッチパラメータ調整の第2の例を示すフローチャートである。
【実施形態】
【0008】
<内容>
1.比較例
1.1 露光システム
1.1.1 構成
1.1.2 動作
1.2 狭帯域化レーザ装置100
1.2.1 構成
1.2.2 動作
1.3 狭帯域化モジュール14
1.3.1 構成
1.3.2 動作
1.4 周期的な波長の変化
1.5 比較例の課題
2.固定ノッチフィルタ18aを含む狭帯域化レーザ装置100a
2.1 構成
2.2 動作
2.3 作用
3.複数段の帯域除去フィルタを含む固定ノッチフィルタ18b
3.1 構成
3.2 動作
3.3 作用
4.可変ノッチフィルタ18cを含む狭帯域化レーザ装置100c
4.1 構成
4.2 動作
4.2.1 計測波長λc1及びλc2と目標波長λt1及びλt2との偏差Dλ1及びDλ2に基づくノッチパラメータ調整
4.2.1.1 ノッチ周波数Fnの調整
4.2.1.2 ノッチゲイン深さGnの調整
4.2.2 計測波長λc1及びλc2の波長差に基づくノッチパラメータ調整
4.3 複数段の帯域除去フィルタを含む可変ノッチフィルタ
4.4 作用
5.その他
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
1.比較例
1.1 露光システム
図1は、比較例における露光システムの構成を概略的に示す。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
露光システムは、狭帯域化レーザ装置100と、露光装置200と、を含む。図1においては狭帯域化レーザ装置100が簡略化して示されている。
【0011】
狭帯域化レーザ装置100は、レーザ制御プロセッサ130を含む。レーザ制御プロセッサ130は、制御プログラムが記憶されたメモリ132と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)131と、を含む処理装置である。レーザ制御プロセッサ130は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。レーザ制御プロセッサ130は本開示におけるプロセッサに相当する。狭帯域化レーザ装置100は、パルスレーザ光を露光装置200に向けて出力するように構成されている。
【0012】
1.1.1 構成
図1に示されるように、露光装置200は、照明光学系201と、投影光学系202と、露光制御プロセッサ210と、を含む。
【0013】
照明光学系201は、狭帯域化レーザ装置100から入射したパルスレーザ光によって、レチクルステージRT上に配置された図示しないレチクルのレチクルパターンを照明する。
投影光学系202は、レチクルを透過したパルスレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピースに結像させる。ワークピースはレジスト膜が塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。
【0014】
露光制御プロセッサ210は、制御プログラムが記憶されたメモリ212と、制御プログラムを実行するCPU211と、を含む処理装置である。露光制御プロセッサ210は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。露光制御プロセッサ210は、露光装置200の制御を統括する。
【0015】
1.1.2 動作
露光制御プロセッサ210は、目標波長λt1及びλt2と電圧指令値HVとを含む各種パラメータと、トリガ信号と、をレーザ制御プロセッサ130に送信する。レーザ制御プロセッサ130は、これらのパラメータ及び信号に従って狭帯域化レーザ装置100を制御する。目標波長λt1及びλt2は波長の目標値である。目標波長λt2は目標波長λt1より大きい波長とする。
【0016】
露光制御プロセッサ210は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して互いに逆方向に平行移動させる。これにより、レチクルパターンを反映したパルスレーザ光でワークピースが露光される。
このような露光工程によって半導体ウエハにレチクルパターンが転写される。その後、複数の工程を経ることで電子デバイスを製造することができる。
【0017】
1.2 狭帯域化レーザ装置100
1.2.1 構成
図2は、比較例における狭帯域化レーザ装置100の構成を概略的に示す。図2においては露光装置200が簡略化して示され、また互いに垂直なV軸、H軸、及びZ軸が示されている。
【0018】
狭帯域化レーザ装置100は放電励起型レーザ装置であり、レーザ制御プロセッサ130の他に、レーザチャンバ10と、パルス電源13と、狭帯域化モジュール14と、出力結合ミラー15と、波長モニタ17と、を含む。狭帯域化モジュール14及び出力結合ミラー15は光共振器を構成する。
【0019】
レーザチャンバ10は、光共振器の光路に配置されている。レーザチャンバ10にはウインドウ10a及び10bが設けられている。
レーザチャンバ10は、放電電極11a及びこれと対をなす図示しない放電電極を内部に備えている。図示しない放電電極は、V軸の方向において放電電極11aと重なるように位置している。レーザチャンバ10には、例えばレアガスとしてアルゴンガス又はクリプトンガス、ハロゲンガスとしてフッ素ガス、バッファガスとしてネオンガス等を含むレーザガスが封入される。
【0020】
パルス電源13は、図示しない充電器、充電コンデンサ、及びスイッチを含む。充電器は充電コンデンサに供給するための電気エネルギーを保持しており、充電コンデンサに接続されている。充電コンデンサはスイッチを介して放電電極11aに接続される。
【0021】
狭帯域化モジュール14は、プリズム41~43と、グレーティング53と、ミラー63と、回転ステージ143及び163と、を含む。回転ステージ143は波長ドライバ12に接続され、回転ステージ163は波長ドライバ18に接続されている。グレーティング53は本開示における回折光学素子に相当する。ミラー63は本開示における光学素子に相当する。回転ステージ163は本開示における波長アクチュエータに相当する。狭帯域化モジュール14の詳細については後述する。
出力結合ミラー15は、部分反射ミラーで構成されている。
【0022】
出力結合ミラー15から出力されたパルスレーザ光の光路に、パルスレーザ光の一部を高い透過率で透過させ、他の一部を反射するビームスプリッタ16が配置されている。ビームスプリッタ16によって反射されたパルスレーザ光の光路に、波長モニタ17が配置されている。波長モニタ17は、図示しないエタロン分光器を含み、干渉縞の光強度分布を取得するように構成されている。この干渉縞の半径は波長の変化に依存する。
ビームスプリッタ16を透過したパルスレーザ光の光路に、シャッター19が配置されている。
【0023】
1.2.2 動作
レーザ制御プロセッサ130は、露光制御プロセッサ210から目標波長λt1及びλt2と、電圧指令値HVと、を含む各種パラメータを取得する。レーザ制御プロセッサ130は、目標波長λt1及びλt2に基づいて波長ドライバ12及び18に波長制御信号を出力することにより狭帯域化モジュール14を制御する。レーザ制御プロセッサ130は、電圧指令値HVをパルス電源13に含まれる充電器に設定する。
【0024】
レーザ制御プロセッサ130は、露光制御プロセッサ210からトリガ信号を受信する。レーザ制御プロセッサ130は、トリガ信号に基づく発振トリガ信号をパルス電源13に送信する。パルス電源13に含まれるスイッチは、レーザ制御プロセッサ130から発振トリガ信号を受信するとオン状態となる。パルス電源13は、スイッチがオン状態となると、充電器に充電された電気エネルギーからパルス状の高電圧を生成し、この高電圧を放電電極11aに印加する。
【0025】
放電電極11aに高電圧が印加されると、放電電極11a及び図示しない放電電極の間の放電空間に放電が起こる。この放電のエネルギーにより、レーザチャンバ10内のレーザガスが励起されて高エネルギー準位に移行する。励起されたレーザガスが、その後、低エネルギー準位に移行するとき、そのエネルギー準位差に応じた波長の光を放出する。
【0026】
レーザチャンバ10内で発生した光は、ウインドウ10a及び10bを介してレーザチャンバ10の外部に出射する。ウインドウ10aから出射した光は、狭帯域化モジュール14に入射する。狭帯域化モジュール14に入射した光のうちの所望波長付近の光が、狭帯域化モジュール14によって折り返されてレーザチャンバ10に戻される。
【0027】
出力結合ミラー15は、ウインドウ10bから出射した光のうちの一部を透過させてパルスレーザ光として出力し、他の一部を反射してレーザチャンバ10に戻す。
【0028】
このようにして、レーザチャンバ10から出射した光は、狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15との間で往復する。この光は、レーザチャンバ10内の放電空間を通過する度に増幅される。また、この光は、狭帯域化モジュール14によって折り返される度に狭帯域化され、狭帯域化モジュール14による選択波長の範囲の一部を中心波長とした急峻な波長分布を有する光となる。こうしてレーザ発振し狭帯域化された光が、出力結合ミラー15からパルスレーザ光として出力される。パルスレーザ光の波長とは、特に断らない限り中心波長をいうものとする。
【0029】
波長モニタ17は、パルスレーザ光によって生成される干渉縞の光強度分布をレーザ制御プロセッサ130に送信する。レーザ制御プロセッサ130は、干渉縞の光強度分布に基づいて計測波長を算出し、計測波長に基づいて波長ドライバ12及び18に波長制御信号を出力することにより狭帯域化モジュール14をフィードバック制御する。
【0030】
シャッター19は、露光装置200へ向けてパルスレーザ光を通過させる第1の状態と、露光装置200へのパルスレーザ光の通過を抑制する第2の状態とに切り替え可能に構成されている。第1の状態と第2の状態との切り替えはレーザ制御プロセッサ130によって制御される。
【0031】
シャッター19が第1の状態であるときにシャッター19を通過したパルスレーザ光は、露光装置200へ入射する。露光装置200に含まれる図示しないエネルギーモニタがパルスレーザ光のパルスエネルギーを計測する。計測されたパルスエネルギーと目標パルスエネルギーとに基づいて露光制御プロセッサ210が電圧指令値HVを算出し、レーザ制御プロセッサ130に送信する。パルスレーザ光のパルスエネルギーは電圧指令値HVに従って制御される。
【0032】
1.3 狭帯域化モジュール14
1.3.1 構成
プリズム41、42、及び43は、ウインドウ10aから出射した光ビームの光路にこの順で配置されている。プリズム41~43は、光ビームが入出射するプリズム41~43の表面がいずれもV軸に平行となるように配置され、それぞれ図示しないホルダによって支持されている。プリズム43は、回転ステージ143によってV軸に平行な軸周りに回転可能となっている。回転ステージ143の例としては、ステッピングモータを備えた可動範囲の大きい回転ステージが挙げられる。
【0033】
ミラー63は、プリズム41~43を透過した光ビームの光路に配置されている。ミラー63は、光ビームを反射する表面がV軸に平行となるように配置されており、回転ステージ163によってV軸に平行な軸周りに回転可能となっている。回転ステージ163の例としては、ピエゾ素子を備えた応答性の高い回転ステージが挙げられる。
【0034】
あるいは、プリズム42を回転ステージ143によって回転可能とし、プリズム43を回転ステージ163によって回転可能とし、ミラー63は回転させなくてもよい。この場合、プリズム43は本開示における光学素子に相当する。
【0035】
グレーティング53は、ミラー63によって反射された光ビームの光路に配置されている。グレーティング53の溝の方向は、V軸に平行である。グレーティング53は、図示しないホルダによって支持されている。
【0036】
1.3.2 動作
ウインドウ10aから出射した光ビームは、プリズム41~43の各々によって、V軸に垂直な面であるHZ面に平行な面内で進行方向を変えられ、HZ面に平行な面内でビーム幅を拡大させられる。
プリズム41~43を透過した光ビームは、ミラー63によって反射されてグレーティング53に入射する。
【0037】
グレーティング53に入射した光ビームは、グレーティング53の複数の溝によって反射されるとともに、光の波長に応じた方向に回折させられる。グレーティング53は、ミラー63からグレーティング53に入射する光ビームの入射角と、所望波長の回折光の回折角と、が一致するようにリトロー配置とされる。
【0038】
ミラー63は、グレーティング53から戻された光をプリズム43に向けて反射する。プリズム41~43は、ミラー63によって反射された光のビーム幅をHZ面に平行な面内で縮小させるとともに、その光を、ウインドウ10aを介してレーザチャンバ10の内部に戻す。
【0039】
波長ドライバ12及び18は、波長制御信号に基づく駆動信号を出力することにより、それぞれ回転ステージ143及び163を駆動する。回転ステージ143及び163の回転角度に応じて、グレーティング53に入射する光ビームの入射角が変化し、狭帯域化モジュール14によって選択される波長が変化する。回転ステージ143は主に粗調整に使用され、回転ステージ163は主に微調整に使用される。
【0040】
1.4 周期的な波長の変化
図3は、パルスレーザ光の目標波長を周期的に変化させる例を示すグラフである。図3において、横軸は時間を示し、縦軸は目標波長を示す。
狭帯域化レーザ装置100は、露光制御プロセッサ210からのトリガ信号に従い、ある期間にわたって一定以上の繰り返し周波数でレーザ発振を行う。一定以上の繰り返し周波数でレーザ発振を行い、パルスレーザ光を出力することを「バースト発振」という。
【0041】
露光制御プロセッサ210からのトリガ信号が休止すると、狭帯域化レーザ装置100はバースト発振を休止する。その後、露光制御プロセッサ210からのトリガ信号に従い、狭帯域化レーザ装置100は再度バースト発振を行う。
【0042】
バースト発振が行われる期間は、例えば、露光装置200において半導体ウエハの1つの露光エリアの露光を行う期間に相当する。バースト発振を休止する期間は、例えば、露光装置200において1つの露光エリアから他の露光エリアにレチクルパターンの結像位置を移動する期間や、半導体ウエハを交換する期間に相当する。休止期間において各種パラメータを調整するための調整発振が行われてもよい。
【0043】
レーザ制御プロセッサ130は、露光制御プロセッサ210から受信した目標波長λt1及びλt2に基づいて、ミラー63の姿勢が複数のパルスごとに周期的に変化するように波長ドライバ18に波長制御信号を出力することにより、回転ステージ163を制御する。これにより、パルスレーザ光の波長が複数のパルスごとに周期的に変化する。
【0044】
図3に示される例では、目標波長λt1及びλt2の間で、波長が4パルスごとに周期的に変化する。1番目及び4番目のパルスは目標波長λt1で生成され、2番目及び3番目のパルスは目標波長λt2で生成される。その後も同様に、目標波長λt1で2パルス生成され、目標波長λt2で2パルス生成されることが繰り返される。波長制御信号は矩形波として生成され、例えば、波長変化の周期は1ms、すなわち波長制御信号の周波数は1kHzである。この場合、波長ドライバ18から回転ステージ163に出力される駆動信号も、駆動周波数1kHzの矩形波となる。パルスレーザ光の繰り返し周波数は4kHzである。
【0045】
ここではパルスレーザ光の波長を2つの目標波長λt1及びλt2に周期的に変化させる場合について説明したが、3つ以上の目標波長が設定されてもよい。このようにして、狭帯域化レーザ装置100は2波長発振又は多波長発振を行うことができる。
【0046】
露光装置200における焦点距離は、パルスレーザ光の波長に依存する。目標波長の周期的な変化により、パルスレーザ光の光路軸の方向における結像位置が周期的に変化するので、実質的に焦点深度を大きくすることができる。例えば、膜厚の大きいレジスト膜を露光する場合でも、レジスト膜の厚み方向での結像性能を維持し得る。あるいは、現像されたレジスト膜の断面形状を示すレジストプロファイルを調整し得る。
【0047】
1.5 比較例の課題
しかしながら、目標波長を周期的に、高速で変化させると、回転ステージ163の動作が目標波長の変化に正確に追随できず、パルスレーザ光の波長を正確に制御できないことがある。
【0048】
図4は、比較例における波長振り機構の振動系の周波数応答特性を示すグラフである。図4の横軸は周波数を示し、縦軸はゲインを示す。本開示における波長振り機構の振動系とは、回転ステージ163等の波長アクチュエータの周期的な駆動によって振動する振動系であり、波長アクチュエータと、波長アクチュエータを保持する機械部品と、波長アクチュエータによって駆動されるミラー63等の光学素子と、波長アクチュエータと光学素子とを結合する部品と、光学素子に駆動力を伝達する機械的駆動部品と、を含む。波長振り機構の振動系は少なくとも1つの共振周波数Frを有する。波長振り機構の振動系は回転ステージ163の駆動周波数より高い共振周波数Frを有することが望ましい。図4に示される例では、共振周波数Frは3kHzである。
【0049】
図5は、比較例において回転ステージ163を駆動周波数1kHzで駆動したときの波長振り機構の振動系の振動周波数のスペクトルを示すグラフである。図5の横軸は周波数を示し、縦軸はパワースペクトル密度(PSD)を示す。
回転ステージ163に入力される駆動信号が駆動周波数1kHzの矩形波である場合、その駆動信号は、フーリエ級数展開によって駆動周波数の奇数倍の周波数成分の和として表される。このため、駆動信号に含まれる駆動周波数の奇数倍の周波数成分が、波長振り機構の振動系を振動させることがある。例えば、駆動周波数の奇数倍である3kHzが波長振り機構の振動系の共振周波数Fr(図4参照)と一致すると、この振動系は駆動周波数1kHzで振動するだけでなく、3kHzでも大きく振動することがある。
【0050】
図6は、比較例における目標波長と計測波長との関係を示すグラフである。図6の横軸はパルス番号を示し、縦軸は目標波長λt1及びλt2の平均を0としたときの波長の偏差を示す。パルスレーザ光の繰り返し周波数を4kHzとし、回転ステージ163に入力される駆動信号の駆動周波数を1kHzとし、目標波長λt1及びλt2の差を2pmとしたところ、計測波長が目標波長から大きく外れることがあった。
【0051】
2.固定ノッチフィルタ18aを含む狭帯域化レーザ装置100a
2.1 構成
図7は、第1の実施形態における狭帯域化レーザ装置100aの構成を概略的に示す。第1の実施形態において、レーザ制御プロセッサ130と波長ドライバ18との間の波長制御信号の経路に、固定ノッチフィルタ18aが配置されている。固定ノッチフィルタ18aは、本開示におけるノッチフィルタの一例である。ノッチフィルタは、波長制御信号に含まれる波長成分のうちの一部の周波数成分を減衰して通過させる電気回路である。
【0052】
図8は、第1の実施形態に含まれる固定ノッチフィルタ18aの一例を示す回路図である。固定ノッチフィルタ18aは、並列に接続されたローパスフィルタLPF及びハイパスフィルタHPFと、ローパスフィルタLPF及びハイパスフィルタHPFの出力側に接続されたオペアンプOA1と、オペアンプOA1の出力側に接続されたオペアンプOA2と、を含む。
【0053】
ローパスフィルタLPFは抵抗素子R1及びR2とコンデンサC3とを含む。ローパスフィルタLPFは入力信号INのうちの高周波成分を減衰し、低周波成分を通過させる。
ハイパスフィルタHPFはコンデンサC1及びC2と抵抗素子R3とを含む。ハイパスフィルタHPFは入力信号INのうちの低周波成分を減衰し、高周波成分を通過させる。
【0054】
抵抗素子R1、R2、及びR3の抵抗値をそれぞれR、R、及びRとし、その関係をR=R=2Rとする。コンデンサC1、C2、及びC3の静電容量値をそれぞれC、C、及びCとし、その関係をC=C=C/2とする。
【0055】
オペアンプOA1は、ローパスフィルタLPFを通過した低周波成分と、ハイパスフィルタHPFを通過した高周波成分と、を合成した信号を増幅して出力する。ローパスフィルタLPF及びハイパスフィルタHPFの両方で減衰された周波数はノッチ周波数Fn(図9参照)と呼ばれ、1/(2πC)で与えられる。固定ノッチフィルタ18aは、ノッチ周波数Fnの周波数成分を他の周波数成分よりも減衰して通過させる。
【0056】
オペアンプOA2は、オペアンプOA1の出力信号OUTの一部をローパスフィルタLPFのコンデンサC3とハイパスフィルタHPFの抵抗素子R3との間に正帰還する。オペアンプOA2による帰還率は分圧器を構成する抵抗素子R4及びR5の抵抗値の比率によって決まる。オペアンプOA2を配置することで、固定ノッチフィルタ18aによるノッチ周波数Fn以外の周波数成分のゲインを0に近づけ、図9を参照しながら後述する固定ノッチフィルタ18aの周波数応答特性を示す曲線のうちの、ノッチ周波数Fnの近傍の部分をより急峻にし得る。
【0057】
2.2 動作
図9は、第1の実施形態における波長振り機構の振動系及び固定ノッチフィルタ18aの周波数応答特性を示すグラフである。
波長振り機構の振動系の周波数応答特性は図4に示されるものと同様であり、例えば3kHzの共振周波数Frを有する。
【0058】
固定ノッチフィルタ18aは、ノッチ周波数Fnにおいて波長制御信号を大幅に減衰し、他の周波数領域では波長制御信号を大幅に減衰せずに通過させる。ノッチ周波数Fnは、回転ステージ163の駆動周波数と異なる周波数であり、好ましくは駆動周波数よりも高い周波数であり、より好ましくは駆動周波数の1倍よりも大きい奇数倍の周波数である。その結果、固定ノッチフィルタ18aを介して駆動された波長振り機構の振動系の周波数応答特性においては、ノッチ周波数Fnにおけるゲインが抑制される。
【0059】
ノッチ周波数Fnは、例えば、波長振り機構の振動系の共振周波数Frに合わせて、約3kHzに設定される。その場合、固定ノッチフィルタ18aを介して駆動された波長振り機構の振動系の周波数応答特性においては、3kHzの共振周波数Frにおける共振が抑制される。
【0060】
図10は、第1の実施形態における目標波長と計測波長との関係の第1の例を示すグラフである。第1の実施形態においては、バースト先頭において目標波長と計測波長とに若干のずれがあるものの、10パルス目のあたりからは計測波長が目標波長から大きく外れることなく、目標波長の変化に良く追随するようになっている。
【0061】
2.3 作用
(1)第1の実施形態によれば、狭帯域化レーザ装置100aは、ミラー63及びグレーティング53と、回転ステージ163と、波長ドライバ18と、レーザ制御プロセッサ130と、固定ノッチフィルタ18aと、を備える。ミラー63及びグレーティング53は、光共振器の光路に位置する。回転ステージ163は、ミラー63を動かすことで、グレーティング53に入射する光の入射角を変更する。波長ドライバ18は、回転ステージ163を駆動する。レーザ制御プロセッサ130は、光共振器から出力されるパルスレーザ光の波長が周期的に変化するように波長ドライバ18に波長制御信号を出力する。固定ノッチフィルタ18aは、波長制御信号の経路に配置され、回転ステージ163の駆動周波数と異なるノッチ周波数Fnで作用する。
これによれば、固定ノッチフィルタ18aを波長制御信号の経路に配置したので、波長制御信号のうちの駆動周波数と異なるノッチ周波数Fnの周波数成分を固定ノッチフィルタ18aで減衰し、駆動周波数による周期的な波長の変更を正確に行うことができる。
【0062】
(2)第1の実施形態によれば、ノッチ周波数Fnは、駆動周波数よりも高い周波数である。
これによれば、駆動周波数より高いノッチ周波数Fnの周波数成分を固定ノッチフィルタ18aで減衰し、駆動周波数による周期的な波長の変更を正確に行うことができる。
【0063】
(3)第1の実施形態によれば、ノッチ周波数Fnは、駆動周波数の1倍より大きい奇数倍である。
これによれば、駆動周波数の1倍より大きい奇数倍の周波数成分を固定ノッチフィルタ18aで減衰し、駆動周波数による周期的な波長の変更を正確に行うことができる。
【0064】
(4)第1の実施形態によれば、ノッチ周波数Fnは、回転ステージ163の周期的な駆動によって振動する波長振り機構の振動系の共振周波数Frに合わせて設定される。
これによれば、波長振り機構の振動系の共振周波数Frを固定ノッチフィルタ18aで減衰することで振動系の固有振動を抑制し、駆動周波数による周期的な波長の変更を正確に行うことができる。
その他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0065】
3.複数段の帯域除去フィルタを含む固定ノッチフィルタ18b
3.1 構成
図11は、第2の実施形態に含まれる固定ノッチフィルタ18bの一例を示す回路図である。固定ノッチフィルタ18bは、第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182を含む。第1の帯域除去フィルタ181の出力側に第2の帯域除去フィルタ182が直列に接続されている。第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182の各々の構成は、図8に示される固定ノッチフィルタ18aと同様である。第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182は互いに同じ特性を有し、例えばノッチ周波数Fnは、いずれも1/(2πC)である。後述のノッチゲイン深さGnも、第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182で同一である。固定ノッチフィルタ18bは、本開示におけるノッチフィルタの一例である。
【0066】
3.2 動作
図12は、第1の実施形態における固定ノッチフィルタ18aの周波数応答特性を示すグラフである。図12は、図9に示される固定ノッチフィルタ18aの周波数応答特性を縦軸の縮尺を変えて再掲したものに相当する。ノッチフィルタのゲインの最小値をノッチゲイン深さGnという。
【0067】
図13は、第1の実施形態における目標波長と計測波長との関係の第2の例を示すグラフである。目標波長λt1及びλt2の差が、図10に示される第1の例においては2pmであったのに対し、図13に示される第2の例においては約15pmとなっている。第1の例においては計測波長が目標波長に十分に追随していたが、第2の例においては目標波長λt1及びλt2の差が大きくなったため、計測波長が目標波長に十分に追随できない場合がある。
【0068】
図14は、第2の実施形態における固定ノッチフィルタ18bの周波数応答特性を示すグラフである。第2の実施形態においては、固定ノッチフィルタ18aと同様の第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182を直列に接続したことにより、ノッチゲイン深さGnが第1の実施形態より大きくなっている。
【0069】
図15は、第2の実施形態における目標波長と計測波長との関係の例を示すグラフである。目標波長λt1及びλt2の差は、図13と同様に約15pmとなっている。図13においては計測波長が目標波長に十分に追随できない場合があったが、図15においては計測波長が目標波長から大きく外れることなく、目標波長の変化に良く追随するようになっている。
【0070】
3.3 作用
(5)第2の実施形態によれば、固定ノッチフィルタ18bは、直列に接続された第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182を含む。
これによれば、第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182を含む複数段の帯域除去フィルタで固定ノッチフィルタ18bを構成することで、ノッチゲイン深さGnを大きくすることができる。
【0071】
(6)第2の実施形態によれば、第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182は、同一のノッチ周波数Fnで作用する。
これによれば、第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182のノッチ周波数Fnを同一とすることで、ノッチ周波数Fnでのノッチゲイン深さGnを大きくすることができる。ノッチ周波数Fnが同一であるとは、ノッチゲイン深さGnを大きくする作用を失わない程度の相違を許容する趣旨である。
【0072】
(7)第2の実施形態によれば、第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182は、同一のノッチゲイン深さGnで作用する。
これによれば、第1及び第2の帯域除去フィルタ181及び182を構成する半導体素子の特性を統一することで、回路の製造コストを低減し得る。ノッチゲイン深さGnが同一であるとは、回路の製造コストを低減する作用を失わない程度の相違を許容する趣旨であり、製造上の誤差の範囲は同一に含まれる。
その他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0073】
4.可変ノッチフィルタ18cを含む狭帯域化レーザ装置100c
4.1 構成
図16は、第3の実施形態における狭帯域化レーザ装置100cの構成を概略的に示す。第3の実施形態において、レーザ制御プロセッサ130と波長ドライバ18との間の波長制御信号の経路に、可変ノッチフィルタ18cが配置されている。可変ノッチフィルタ18cは、本開示におけるノッチフィルタの一例である。
【0074】
図17は、第3の実施形態に含まれる可変ノッチフィルタ18cの一例を示す回路図である。
可変ノッチフィルタ18cは、抵抗素子R1、R2、及びR3の代わりに、それぞれ可変抵抗器VR1、VR2、及びVR3を含む。可変抵抗器VR1、VR2、及びVR3にはそれぞれ制御回路Cc1、Cc2、及びCc3が接続されている。制御回路Cc1、Cc2、及びCc3は、レーザ制御プロセッサ130から出力される制御信号に基づいて、それぞれ可変抵抗器VR1、VR2、及びVR3の抵抗値R、R、及びRを変更する。例えば、R=R=2Rの関係を維持したまま抵抗値R、R、及びRを変更する。これにより、1/(2πC)で与えられるノッチ周波数Fnを変更することができる。
他の点については、可変ノッチフィルタ18cは固定ノッチフィルタ18aと同様である。
【0075】
図18は、第3の実施形態に含まれる可変ノッチフィルタ18dの一例を示す回路図である。可変ノッチフィルタ18dは、図17に示される可変ノッチフィルタ18cとは以下の点で異なるが、可変ノッチフィルタ18cの代わりに狭帯域化レーザ装置100cにおいて用いられてもよい。
可変ノッチフィルタ18dは、抵抗素子R4及びR5の代わりに、可変分圧器VDを含む。可変分圧器VDは制御回路Cc4に接続されている。制御回路Cc4は、レーザ制御プロセッサ130から出力される制御信号に基づいて、可変分圧器VDの分圧比を変更する。可変分圧器VDの分圧比を変更することにより、オペアンプOA2による帰還率を変更し、可変ノッチフィルタ18dのノッチゲイン深さGnを変更することができる。
【0076】
可変抵抗器VR1、VR2、及びVR3の抵抗値R、R、及びRを変更することにより可変ノッチフィルタ18dのノッチ周波数Fnを変更すると、可変ノッチフィルタ18dの位相特性が変化する場合がある。ノッチ周波数Fnを変更した場合に、さらに位相特性を調整するために、ノッチゲイン深さGnを調整してもよい。
一方、可変分圧器VDの分圧比を変更することによりノッチゲイン深さGnを変更しても、ノッチ周波数Fnは大きく変化しない。そこで、図21及び図24を参照しながら後述するように、ノッチ周波数Fnを適切な値に調整した後で、そのノッチ周波数Fnを維持したままノッチゲイン深さGnを調整してもよい。
他の点については、可変ノッチフィルタ18dは可変ノッチフィルタ18cと同様である。
【0077】
4.2 動作
図19は、第3の実施形態における波長振り機構の振動系及び可変ノッチフィルタ18cの周波数応答特性を示すグラフである。
光学素子や機械部品などの温度変化により、波長振り機構の振動系の周波数応答特性が変化することがある。例えば、波長振り機構の振動系の共振周波数Frが、図9においては3kHzであったのに対し、図19に示されるように約3.2kHzになることがある。このような場合に、ノッチ周波数Fnを3kHzとしたままでは、波長制御信号において共振周波数Frの成分を十分に減衰できないことがある。
【0078】
図20は、第3の実施形態における目標波長と計測波長との関係の例を示すグラフである。図10においては計測波長が目標波長に十分に追随していたが、図20においては波長振り機構の振動系の周波数応答特性が変化したことにより計測波長が目標波長に十分に追随できない場合がある。
そこで、可変ノッチフィルタ18cのノッチ周波数Fnを調整し、あるいは可変ノッチフィルタ18dのノッチ周波数Fn及びノッチゲイン深さGnを調整することで、計測波長が目標波長に十分に追随できるようにする。
【0079】
4.2.1 計測波長λc1及びλc2と目標波長λt1及びλt2との偏差Dλ1及びDλ2に基づくノッチパラメータ調整
図21は、第3の実施形態におけるノッチパラメータ調整の第1の例を示すフローチャートである。ノッチパラメータは、ノッチ周波数Fnとノッチゲイン深さGnとを含む。あるいは、ノッチ周波数Fnだけでもよい。図21において、ノッチパラメータを調整するかどうかは、計測波長λc1と目標波長λt1との偏差Dλ1及び計測波長λc2と目標波長λt2との偏差Dλ2がそれぞれ閾値Sλ1及びSλ2より大きい状態がNmaxパルスにわたって連続したか否かによって判断される。Nmaxは2以上の整数である。例えば、Nmaxは30以上60以下でもよい。
【0080】
S11において、レーザ制御プロセッサ130は、目標波長λt1及びλt2を取得する。目標波長λt1及びλt2は、露光制御プロセッサ210から受信したものでもよい。
【0081】
S12において、レーザ制御プロセッサ130は、閾値Sλ1及びSλ2を以下の式により算出する。
Sλ1=λt1×D1
Sλ2=λt2×D2
閾値Sλ1及びSλ2は、それぞれ、目標波長λt1及びλt2に0より大きい定数D1及びD2を乗算したものである。定数D1及びD2は例えば0.05である。
【0082】
S13において、レーザ制御プロセッサ130は、カウンタnの値を初期値1にセットする。
S14において、レーザ制御プロセッサ130は、波長モニタ17の出力に基づいて計測波長λc1又はλc2を算出し、目標波長λt1又はλt2との偏差Dλ1又はDλ2を以下の式により算出する。
Dλ1=|λt1-λc1|
Dλ2=|λt2-λc2|
目標波長λt1に従って狭帯域化モジュール14を制御したときは計測波長λc1が算出され、目標波長λt2に従って狭帯域化モジュール14を制御したときは計測波長λc2が算出される。
【0083】
S15において、レーザ制御プロセッサ130は、偏差Dλ1又はDλ2がそれぞれ閾値Sλ1又はSλ2より大きいか否かを判定する。偏差Dλ1が閾値Sλ1より大きく、あるいは、偏差Dλ2が閾値Sλ2より大きい場合(S15:YES)、レーザ制御プロセッサ130は、S16に処理を進める。偏差Dλ1が閾値Sλ1以下であり、あるいは、偏差Dλ2が閾値Sλ2以下である場合(S15:NO)、レーザ制御プロセッサ130は、S13に処理を戻す。
【0084】
S16において、レーザ制御プロセッサ130は、カウンタnの値がNmax以上であるか否かを判定する。カウンタnの値がNmax以上である場合(S16:YES)、レーザ制御プロセッサ130は、S20に処理を進める。カウンタnの値がNmax未満である場合(S16:NO)、レーザ制御プロセッサ130は、S17に処理を進める。
【0085】
S17において、レーザ制御プロセッサ130は、カウンタnの値に1を加算してnの値を更新する。S17の後、レーザ制御プロセッサ130は、S14に処理を戻して次のパルスの計測波長λc1又はλc2と目標波長λt1又はλt2との偏差Dλ1又はDλ2を算出する。
偏差Dλ1又はDλ2が閾値Sλ1又はSλ2より大きい場合に(S15:YES)、カウンタnの値がNmaxに達するまでS14及びS15の処理を繰り返すことで、偏差Dλ1及びDλ2がそれぞれ閾値Sλ1及びSλ2より大きい状態がNmaxパルスにわたって連続したか否かが判定される。
偏差Dλ1が閾値Sλ1以下であるか、あるいは、偏差Dλ2が閾値Sλ2以下である場合に(S15:NO)、S13に処理を戻すことで、偏差Dλ1及びDλ2がそれぞれ閾値Sλ1及びSλ2より大きい状態の連続が途切れたらカウンタnを1からカウントし直す。
【0086】
S20において、レーザ制御プロセッサ130は、図17又は図18に示される制御回路Cc1~Cc3に制御信号を出力することでノッチ周波数Fnの調整を行う。S20の詳細については図22を参照しながら後述する。
【0087】
S22において、レーザ制御プロセッサ130は、図18に示される制御回路Cc4に制御信号を出力することでノッチゲイン深さGnの調整を行う。S22の詳細については図23を参照しながら後述する。
S20及びS22を実行している期間内においては、レーザ制御プロセッサ130はシャッター19を第2の状態として露光装置200へのパルスレーザ光の通過を抑制してもよい。
S22の後、レーザ制御プロセッサ130は、S13に処理を戻す。
【0088】
4.2.1.1 ノッチ周波数Fnの調整
図22は、第3の実施形態におけるノッチ周波数Fnの調整の例を示すフローチャートである。図22に示される処理は、図21のS20のサブルーチンに相当する。計測波長λc1及びλc2と目標波長λt1及びλt2との偏差Dλ1及びDλ2がそれぞれ閾値Sλ1及びSλ2より大きい状態がNmaxパルスにわたって連続した場合(S16:YES)、以下の処理が行われる。
【0089】
S201において、レーザ制御プロセッサ130は、波長モニタ17の新たな出力に基づいて計測波長λc1及びλc2を算出し、目標波長λt1及びλt2との偏差Mを以下の式により算出する。
M=|λt1-λc1|+|λt2-λc2|
偏差Mは、ノッチ周波数Fnを変更して適切なノッチ周波数Fnを探索するための基準となる。
【0090】
S202において、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチ周波数Fnを以下の式により高くする。
Fn=Fn+dFnp
dFnpは、ノッチ周波数Fnを1回上げるときのノッチ周波数Fnの変動量を示す。例えば、dFnpは1Hz以上10Hz以下である。
【0091】
S203において、レーザ制御プロセッサ130は、波長モニタ17の新たな出力に基づいて計測波長λc1及びλc2を算出し、目標波長λt1及びλt2との偏差Mcを以下の式により算出する。
Mc=|λt1-λc1|+|λt2-λc2|
【0092】
S204において、レーザ制御プロセッサ130は、偏差Mcが基準となる偏差M以下であるか否かを判定する。偏差Mcが偏差M以下である場合(S204:YES)、レーザ制御プロセッサ130はS205に処理を進める。
【0093】
S205において、レーザ制御プロセッサ130は、以後の基準となる偏差MとしてS203で算出された偏差Mcの値を設定する。S205の後、レーザ制御プロセッサ130は、S202に処理を戻す。
このように、ノッチ周波数Fnを上げることで偏差Mcが小さくなったか、変わらない場合には(S204:YES)、さらにノッチ周波数Fnを上げることにより、偏差Mcが極小値となるまでノッチ周波数Fnを調整することができる。
ノッチ周波数Fnを上げることで偏差Mcが大きくなった場合には(S204:NO)、さらにノッチ周波数Fnを上げることはせず、S207に処理を進める。
【0094】
S207において、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチ周波数Fnを以下の式により低くする。
Fn=Fn-dFnn
dFnnは、ノッチ周波数Fnを1回下げるときのノッチ周波数Fnの変動量を示す。dFnnはdFnpと同じでもよい。
【0095】
S208からS210までの処理は、S203からS205までの処理と同様である。
ノッチ周波数Fnを下げることで偏差Mcが小さくなったか、変わらない場合には(S209:YES)、さらにノッチ周波数Fnを下げることにより、偏差Mcが極小値となるまでノッチ周波数Fnを調整することができる。
ノッチ周波数Fnを下げることで偏差Mcが大きくなった場合には(S209:NO)、さらにノッチ周波数Fnを下げることはせず、S211に処理を進める。
【0096】
S211において、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチ周波数Fnを以下の式により高くする。
Fn=Fn+dFnn
S211の処理を行うのは、S207でノッチ周波数Fnを下げることで偏差Mcが大きくなった場合であるので、S207の1回分の処理をキャンセルすることで、ノッチ周波数Fnを最適値に調整することができる。
【0097】
S211の後、レーザ制御プロセッサ130は本フローチャートの処理を終了し、図21に示される処理に戻る。
以上のようにして、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチ周波数Fnを増減させて偏差Mcを算出し、偏差Mcが0に近づくようなノッチ周波数Fnを探索する。
【0098】
4.2.1.2 ノッチゲイン深さGnの調整
図23は、第3の実施形態におけるノッチゲイン深さGnの調整の例を示すフローチャートである。図23に示される処理は、図21のS22のサブルーチンに相当する。ノッチ周波数Fnの調整(S20)の後で、以下の処理が行われる。
【0099】
図23においては、図22におけるS202、S207、及びS211の代わりに、S202d、S207d、及びS211dの処理が行われる点で図22における処理と異なる。
【0100】
S202dにおいて、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチゲイン深さGnを以下の式により大きくする。
Gn=Gn+dGnp
dGnpは、ノッチゲイン深さGnを1回大きくするときのノッチゲイン深さGnの変動量を示す。例えば、dGnpは1dB以上10dB以下である。
【0101】
S207dにおいて、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチゲイン深さGnを以下の式により小さくする。
Gn=Gn-dGnn
dGnnは、ノッチゲイン深さGnを1回小さくするときのノッチゲイン深さGnの変動量を示す。dGnnはdGnpと同じでもよい。
【0102】
S211dにおいて、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチゲイン深さGnを以下の式により大きくする。
Gn=Gn+dGnn
S207dの1回分の処理をキャンセルすることで、ノッチゲイン深さGnを最適値に調整することができる。
【0103】
以上のようにして、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチゲイン深さGnを増減させて偏差Mcを算出し、偏差Mcが0に近づくようなノッチゲイン深さGnを探索する。
他の点については、図23に示される処理は図22に示される処理と同様である。
【0104】
4.2.2 計測波長λc1及びλc2の波長差に基づくノッチパラメータ調整
図24は、第3の実施形態におけるノッチパラメータ調整の第2の例を示すフローチャートである。図24において、ノッチパラメータを調整するかどうかは、計測波長λc1及びλc2の波長差をNmax回算出し、その平均値Dλcが閾値SDより大きいか否かによって判断される。
【0105】
S11の処理は、図21を参照しながら説明したものと同様である。
S12cにおいて、レーザ制御プロセッサ130は、閾値SDを以下の式により算出する。
SD=(λt2-λt1)×D
閾値SDは、目標波長λt1及びλt2の差に1より大きい定数Dを乗算したものである。定数Dは例えば1.05である。
【0106】
S13cにおいて、レーザ制御プロセッサ130は、波長差の積算値Aλcを初期値0にセットし、カウンタnの値を初期値1にセットする。
S14cにおいて、レーザ制御プロセッサ130は、波長モニタ17の出力に基づいて目標波長が異なる2つのパルスの計測波長λc1及びλc2を算出し、計測波長λc1及びλc2の波長差の積算値Aλcを以下の式により算出する。
Aλc=Aλc+λc2-λc1
【0107】
S16において、レーザ制御プロセッサ130は、カウンタnの値がNmax以上であるか否かを判定する。カウンタnの値がNmax以上である場合(S16:YES)、レーザ制御プロセッサ130は、S18cに処理を進める。カウンタnの値がNmax未満である場合(S16:NO)、レーザ制御プロセッサ130は、S17に処理を進める。
【0108】
S17において、レーザ制御プロセッサ130は、カウンタnの値に1を加算してnの値を更新する。S17の後、レーザ制御プロセッサ130は、S14cに処理を戻し、目標波長が異なる次の2つのパルスの計測波長λc1及びλc2の波長差λc2-λc1を積算値Aλcに加算する。
【0109】
S18cにおいて、レーザ制御プロセッサ130は、Nmax回算出された波長差λc2-λc1を積算することによって得られた積算値Aλcを用いて、以下の式により波長差の平均値Dλcを算出する。
Dλc=Aλc/Nmax
【0110】
S19cにおいて、レーザ制御プロセッサ130は、波長差の平均値Dλcが閾値SDより大きいか否かを判定する。波長差の平均値Dλcが閾値SDより大きい場合(S19c:YES)、レーザ制御プロセッサ130は、S20に処理を進める。波長差の平均値Dλcが閾値SD以下である場合(S19c:NO)、レーザ制御プロセッサ130は、S13cに処理を戻す。
【0111】
S20及びS22の処理は、図21図23を参照しながら説明したものと同様である。
図24においては波長差の平均値Dλcが閾値SDより大きい場合にノッチパラメータを調整することとしているのに対し、図22及び図23においては波長差の平均値Dλcを考慮せずにノッチパラメータを調整している。ノッチパラメータを調整した後で、S13c~S19cの処理を再度行うことで、ノッチパラメータが適切に調整されているかどうかを確認することができる。
【0112】
あるいは、図22のS201、S203、及びS208、及び図23のS201d、S203d、及びS208dにおいて、計測波長λc1及びλc2と目標波長λt1及びλt2との偏差Dλ1及びDλ2を算出する代わりに、計測波長λc1及びλc2の波長差の平均値Dλcを算出してもよい。例えば、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチ周波数Fnを増減させて波長差の平均値Dλcを算出し、平均値Dλcが極小値に近づくようなノッチ周波数Fnを探索してもよい。また、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチゲイン深さGnを増減させて波長差の平均値Dλcを算出し、平均値Dλcが極小値に近づくようなノッチゲイン深さGnを探索してもよい。
【0113】
図24においては計測波長λc1及びλc2の波長差をNmax回算出するごとに平均値Dλcを算出する場合について説明したが、平均値Dλcの代わりに移動平均を算出してもよい。例えば、波長差を1回算出するごとに、直近のNmax回分の波長差の平均値を算出してもよい。
他の点については、図24に示される処理は図21に示される処理と同様である。
【0114】
第3の実施形態において、図21に示される計測波長λc1及びλc2と目標波長λt1及びλt2との偏差Dλ1及びDλ2に関する条件と、図24に示される計測波長λc1及びλc2の波長差の平均値Dλcに関する条件と、の両方が満たされた場合にノッチパラメータを調整することとしてもよい。
【0115】
4.3 複数段の帯域除去フィルタを含む可変ノッチフィルタ
第3の実施形態においては、可変ノッチフィルタ18c及び18dをそれぞれ1段の帯域除去フィルタで構成する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。可変ノッチフィルタ18c又は18dの代わりに、直列に接続された図示しない第1及び第2の帯域除去フィルタを含む可変ノッチフィルタが用いられてもよい。第1及び第2の帯域除去フィルタは、レーザ制御プロセッサ130によってそれぞれノッチパラメータを調整可能であってもよい。レーザ制御プロセッサ130は、第1及び第2の帯域除去フィルタが同一のノッチ周波数Fnで作用するように調整してもよい。レーザ制御プロセッサ130は、第1及び第2の帯域除去フィルタが同一のノッチゲイン深さGnで作用するように調整してもよい。
【0116】
4.4 作用
(8)第3の実施形態によれば、狭帯域化レーザ装置100cに含まれる可変ノッチフィルタ18c又は18dは、レーザ制御プロセッサ130によってノッチパラメータを調整可能に構成される。
これによれば、ノッチパラメータを変更可能とすることで、狭帯域化レーザ装置100cの特性変化に対応して、周期的な波長の変更を正確に行うことができる。
【0117】
(9)第3の実施形態によれば、ノッチパラメータは、ノッチ周波数Fnとノッチゲイン深さGnとを含み、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチ周波数Fnを調整した後でノッチゲイン深さGnを調整する。
ノッチ周波数Fnを変えると位相特性が変化することがあるが、ノッチゲイン深さGnを調整することで、位相特性を調整することができる。一方、ノッチゲイン深さGnを変えてもノッチ周波数Fnは大きく変化しないので、ノッチ周波数Fnを先に調整し、ノッチゲイン深さGnを後で調整することで、ノッチ周波数Fnとノッチゲイン深さGnとを適切に調整することができる。
【0118】
(10)第3の実施形態によれば、狭帯域化レーザ装置100cは、パルスレーザ光の光路に位置する波長モニタ17を備え、レーザ制御プロセッサ130は、波長モニタ17の出力に基づいてパルスレーザ光の計測波長λc1及びλc2を算出し、計測波長λc1及びλc2に基づいてノッチパラメータを調整する。
これによれば、狭帯域化レーザ装置100cの特性変化に起因する計測波長λc1及びλc2の変化に対応して、周期的な波長の変更を正確に行うことができる。
【0119】
(11)第3の実施形態によれば、レーザ制御プロセッサ130は、計測波長λc1及びλc2とパルスレーザ光の目標波長λt1及びλt2との偏差Dλ1及びDλ2を算出し、偏差Dλ1及びDλ2に基づいてノッチパラメータを調整する。
これによれば、狭帯域化レーザ装置100cの特性変化に起因する偏差Dλ1及びDλ2の変化に対応して、周期的な波長の変更を正確に行うことができる。
【0120】
(12)第3の実施形態によれば、レーザ制御プロセッサ130は、偏差Dλ1及びDλ2と閾値Sλ1及びSλ2とを比較し、偏差Dλ1及びDλ2がそれぞれ閾値Sλ1及びSλ2より大きいパルスがNmaxパルスにわたって連続した場合にノッチパラメータを調整する。
これによれば、偏差Dλ1及びDλ2が大きい場合にノッチパラメータを調整し、偏差Dλ1及びDλ2を小さくすることができる。
【0121】
(13)第3の実施形態によれば、ノッチパラメータは、ノッチ周波数Fnを含み、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチ周波数Fnを増減させて計測波長λc1及びλc2と目標波長λt1及びλt2との偏差Mcを算出し、偏差Mcが0に近づくようなノッチ周波数Fnを探索する。
これによれば、偏差Mcが0に近づくようなノッチ周波数Fnを探索することで、狭帯域化レーザ装置100cの特性変化に対応した適切なノッチ周波数Fnを見つけることができる。
【0122】
(14)第3の実施形態によれば、ノッチパラメータは、ノッチゲイン深さGnを含み、レーザ制御プロセッサ130は、ノッチゲイン深さGnを増減させて偏差Mcを算出し、偏差Mcが0に近づくようなノッチゲイン深さGnを探索する。
これによれば、偏差Mcが0に近づくようなノッチゲイン深さGnを探索することで、狭帯域化レーザ装置100cの特性変化に対応した適切なノッチゲイン深さGnを見つけることができる。
【0123】
(15)第3の実施形態によれば、レーザ制御プロセッサ130は、パルスレーザ光の目標波長が異なる複数のパルスの計測波長λc1及びλc2の波長差を算出し、波長差に基づいてノッチパラメータを調整する。
これによれば、狭帯域化レーザ装置100cの特性変化に起因する複数のパルスの計測波長λc1及びλc2の波長差の変化に対応して、周期的な波長の変更を正確に行うことができる。
【0124】
(16)第3の実施形態によれば、レーザ制御プロセッサ130は、計測波長λc1及びλc2の波長差を複数回算出して波長差の平均値Dλcを算出し、平均値Dλcが閾値SDより大きい場合にノッチパラメータを調整する。
これによれば、波長差の平均値Dλcが大きい場合にノッチパラメータを調整し、波長差の平均値Dλcを小さくすることができる。
【0125】
(17)第3の実施形態によれば、ノッチフィルタは、直列に接続された第1及び第2の帯域除去フィルタを含み、第1及び第2の帯域除去フィルタは、レーザ制御プロセッサ130によってそれぞれノッチパラメータを調整可能に構成される。
これによれば、第1及び第2の帯域除去フィルタを直列に接続し、それぞれノッチパラメータを調整可能とすることで、ノッチパラメータのダイナミックレンジを大きくすることができる。
【0126】
(18)第3の実施形態によれば、レーザ制御プロセッサ130は、第1及び第2の帯域除去フィルタが同一のノッチ周波数Fnで作用するように、ノッチパラメータを調整する。
これによれば、同一のノッチ周波数Fnで作用するようにノッチパラメータを調整することで、ノッチ周波数Fnでのノッチゲイン深さGnを大きくすることができる。
【0127】
(19)第3の実施形態によれば、レーザ制御プロセッサ130は、第1及び第2の帯域除去フィルタが同一のノッチゲイン深さGnで作用するように、ノッチパラメータを調整する。
これによれば、ノッチゲイン深さGnを同一とすることで、ノッチパラメータの調整を容易にすることができる。
その他の点については、第3の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0128】
5.その他
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0129】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図24