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  • -樹脂組成物及び成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-08
(45)【発行日】2026-01-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/10 20060101AFI20260109BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20260109BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20260109BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20260109BHJP
【FI】
C08L71/10
C08L79/08 B
C08K7/02
C08L81/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021068309
(22)【出願日】2021-04-14
(65)【公開番号】P2022163402
(43)【公開日】2022-10-26
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山西 啓介
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-129347(JP,A)
【文献】特表2010-525126(JP,A)
【文献】特表2018-526517(JP,A)
【文献】特表2020-506980(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109504030(CN,A)
【文献】特開昭62-054758(JP,A)
【文献】特開平02-001759(JP,A)
【文献】特開昭62-273255(JP,A)
【文献】国際公開第2007/035402(WO,A1)
【文献】国際公開第93/021272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有し、
前記ポリエーテルイミドの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、1質量%以上5質量%以下であり、
前記芳香族ポリスルホンは、下記式(S-11)で表される繰り返し単位を有する、樹脂組成物。
【化1】
[式中、Rs 及びRs は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアルコキシ基である。ns1及びns2は、それぞれ独立に、0~4の整数である。]
【請求項2】
前記ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、25質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度と、前記芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度との溶融粘度比(芳香族ポリスルホンの溶融粘度/ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度)が、1.5以上6以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記繊維状充填剤の含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有する樹脂組成物を用いて成形体を作製し、前記成形体の断面に、N-メチルピロリドンを接触させることにより生じる開孔の円相当径の平均径が、0.22μm以下となる特性を有し、
前記ポリエーテルイミドの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、1質量%以上5質量%以下であり、
前記芳香族ポリスルホンは、下記式(S-11)で表される繰り返し単位を有する、樹脂組成物。
【化2】
[式中、Rs 及びRs は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアルコキシ基である。ns1及びns2は、それぞれ独立に、0~4の整数である。]
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて作製された成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料は、その成形加工の容易さと軽量性から、様々な分野で利用されている。その中でも、近年、金属やセラミックスを代替し得る高性能高分子材料(エンジニアリング材料)が、電気、電子、機械、光学機器、自動車、航空機、及び医療分野等の様々な分野で利用されている。
高性能高分子材料として、具体的には、ポリエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンが挙げられる。
【0003】
ポリエーテルケトンは、芳香族ポリスルホンよりも高価であるが、優れた耐熱性、機械的強度、耐薬品性、及び摺動性を有する。
芳香族ポリスルホンは、優れた耐熱性、電気的特性、及び耐熱水性を有し、ポリエーテルケトンには劣るものの、良好な機械的強度を有する。
従来、様々な用途に応じて、ポリエーテルケトン単体、芳香族ポリスルホン単体、又はポリエーテルケトンと芳香族ポリスルホンとの混合物が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、[1]ポリエーテルケトン20~95重量%および芳香族ポリスルホン80~5重量%からなり、該ポリエーテルケトンの400℃における溶融粘度yが100≦y≦70x+1000(x:ポリエーテルケトンのポリエーテルケトンおよび芳香族ポリスルホンの合計に対する重量%、y:単位poise)を満たす樹脂組成物100重量部および[2]平均繊維長または平均直径が5μm以上の充填材10~200重量部からなる樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-129347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高分子材料の用途によっては、より機械的強度が高い成形体が求められている。
しかしながら、特許文献1に記載されたポリエーテルエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンの混合系の樹脂組成物では、特定の充填材を含有していても、要求レベルに対して機械的強度が十分でない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ポリエーテルエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンの混合系において、良好な機械的強度の成形体を作製することのできる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ポリエーテルエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンの混合系の樹脂組成物について検討を行った。
繊維状充填剤を含有する樹脂組成物において、ポリエーテルエーテルケトンを用いて作製した成形体の機械的強度と、芳香族ポリスルホンを用いて作製した成形体の機械的強度とを比較すると、ポリエーテルエーテルケトンを用いて作製した成形体の方が、機械的強度が高かった。そこで、芳香族ポリスルホンを用いて作製した成形体の機械的強度を高めることを目的に、ポリエーテルエーテルケトンを併用したところ、芳香族ポリスルホンを用いて作製した成形体と同程度の機械的強度に過ぎず、機械的強度の向上が図れなかった。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリスルホンと同様に非晶性であり、かつ、結晶性のポリエーテルエーテルケトンとの相溶性を示すポリエーテルイミドを含有させると、ポリエーテルエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンの混合系においても、ポリエーテルエーテルケトンを用いて作製した成形体と同等以上の機械的強度の成形体を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有する、樹脂組成物。
[2]前記ポリエーテルイミドの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、40質量%未満である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、25質量%以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度と、前記芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度との溶融粘度比(芳香族ポリスルホンの溶融粘度/ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度)が、1.5以上6以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5]前記繊維状充填剤の含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0010】
[6]ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有する樹脂組成物を用いて成形体を作製し、前記成形体の断面に、N-メチルピロリドンを接触させることにより生じる開孔の円相当径の平均径が、0.22μm以下となる特性を有する、樹脂組成物。
[7][1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて作製された成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリエーテルエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンの混合系において、良好な機械的強度の成形体を作製することのできる樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例の樹脂組成物を用いて作製された成形体の断面のSEM画像である。
図2】比較例の樹脂組成物を用いて作製された成形体の断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有する。
【0014】
<ポリエーテルエーテルケトン>
本実施形態の樹脂組成物における芳香族ポリエーテルエーテルケトンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とカルボニル基(-CO-)とエーテル結合(-O-)とを含む繰り返し単位を有する樹脂である。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエーテルエーテルケトンは、下記式(K-1)で表される構造を含む繰り返し単位を有することが好ましい。
【0016】
【化1】
[式中、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。]
【0017】
上記式(K-1)中、Ar、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば限定されず、単環式でも多環式でもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環であってもよい。
該芳香族炭化水素基における芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、その中でも、ベンゼン環が好ましい。すなわち、Ar、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基は、フェニレン基が好ましい。
【0018】
該フェニレン基は、p-フェニレン基であってもよいし、m-フェニレン基であってもよいし、o-フェニレン基であってもよいが、p-フェニレン基であることが好ましい。
【0019】
上記式(K-1)中、Ar、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
該アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。
該アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、2-ブテニル基などの直鎖状アルケニル基;1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などの分岐鎖状アルケニル基等が挙げられる。
該アリール基としては、炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が好適に挙げられる。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
該アルコキシ基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が好適に挙げられる。
【0020】
上記式(K-1)中、Ar、Ar及びArにおける置換基を有してもよい芳香族炭化水素基として、具体的には、以下に示す基であってもよい。*は結合手を示す。
【0021】
【化2】
【0022】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエーテルエーテルケトンは、上記の中でも、下記式(K-11)又は(K-12)で表されるいずれかの繰り返し単位を有することが好ましい。
【0023】
【化3】
[式中、Rk~Rkは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアルコキシ基である。nk1~nk3は、それぞれ独立に、0~4の整数である。]
【0024】
【化4】
[式中、Rk~Rkは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアルコキシ基である。nk4~nk7は、それぞれ独立に、0~4の整数である。]
【0025】
上記式(K-11)中、Rk~Rkにおけるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基としては、それぞれ上述したAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基と同じものが挙げられる。
上記式(K-11)中、nk1~nk3は、それぞれ独立に、0~4の整数であり、nk1~nk3は、それぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、nk1~nk3は、いずれも0であることがより好ましい。
【0026】
上記式(K-12)中、Rk~Rkにおけるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基としては、それぞれ上述したAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基と同じものが挙げられる。
上記式(K-12)中、nk4~nk7は、それぞれ独立に、0~4の整数であり、nk4~nk7は、それぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、nk4~nk7は、いずれも0であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエーテルエーテルケトンは、上記の中でも、上記式(K-11)で表される繰り返し単位を有することがより好ましい。
【0028】
[ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度]
ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度は、10Pa・s以上であることが好ましく、30Pa・s以上であることがより好ましく、50Pa・s以上であることがさらに好ましい。
一方で、ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度は、800Pa・s以下であることが好ましく、500Pa・s以下であることがより好ましく、200Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0029】
ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度が上記の好ましい下限値以上であると、該ポリエーテルエーテルケトン自体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
また、ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度が上記の好ましい上限値以下であると、該ポリエーテルエーテルケトン及び他の樹脂(芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド等)がそれぞれ良好に混合されるため、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
【0030】
例えば、ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度は、10Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましく、30Pa・s以上500Pa・s以下であることがより好ましく、50Pa・s以上200Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0031】
・溶融粘度の測定方法
本明細書において、溶融粘度は、定試験力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(島津製作所社製;商品名「CFT-500EX」)を用いて測定し、測定対象となる樹脂を断面積1cmのシリンダーに充填し、400℃で5分間放置後、4.9MPa(50kgf/cm)の押出圧力を加え、直径1mm、長さ10mmのノズルから押し出すことにより測定した見かけ溶融粘度を意味する。
【0032】
[ポリエーテルエーテルケトンの重量平均分子量(Mw)]
ポリエーテルエーテルケトンの重量平均分子量(Mw)は、5000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、7000以上であることがさらに好ましい。
一方で、ポリエーテルエーテルケトンの重量平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることがさらに好ましい。
【0033】
ポリエーテルエーテルケトンの重量平均分子量が上記の好ましい値以上であると、該ポリエーテルエーテルケトン自体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
ポリエーテルエーテルケトンの重量平均分子量が上記の好ましい値以下であると、該ポリエーテルエーテルケトン及び他の樹脂がそれぞれより良好に混合され、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
【0034】
例えば、ポリエーテルエーテルケトンの重量平均分子量は、5000~50000であることが好ましく、6000~40000であることがより好ましく、7000~30000であることがさらに好ましい。
【0035】
・重量平均分子量の測定方法
本明細書において、重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により求めることができ、標準ポリスチレンの分子量を測定して得られた検量線に基づいて、標準ポリスチレン換算で求めた値を意味する。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物において、ポリエーテルエーテルケトンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
ポリエーテルエーテルケトンの含有量が上記の好ましい下限値以上であると、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
また、ポリエーテルエーテルケトンの含有量が上記の好ましい上限値以下であると、コストをより抑えることができる。
【0038】
例えば、ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
<芳香族ポリスルホン>
本実施形態の樹脂組成物における芳香族ポリスルホンは、典型的には、2価の芳香族基とスルホニル基(-SO-)とエーテル結合とを含む繰り返し単位を有する樹脂である。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物における芳香族ポリスルホンは、下記式(S-1)で表される構造を含む繰り返し単位を有することが好ましい。
【0041】
【化5】
[式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。]
【0042】
上記式(S-1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、上述した式(K-1)中のAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0043】
上記式(S-1)中、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基は、上記の中でも、フェニレン基であることが好ましい。
該フェニレン基は、p-フェニレン基であってもよいし、m-フェニレン基であってもよいし、o-フェニレン基であってもよいが、p-フェニレン基であることが好ましい。
【0044】
上記式(S-1)中、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられ、上述した式(K-1)中のAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有してもよい置換基とそれぞれ同様のものが挙げられる。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物における芳香族ポリスルホンは、上記の中でも、下記式(S-11)又は(S-12)で表されるいずれかの繰り返し単位を有することが好ましい。
【0046】
【化6】
[式中、Rs及びRsは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアルコキシ基である。ns1及びns2は、それぞれ独立に、0~4の整数である。]
【0047】
【化7】
[式中、Rs~Rsは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアルコキシ基である。ns3~ns6は、それぞれ独立に、0~4の整数である。]
【0048】
上記式(S-11)中、Rs及びRsにおけるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基としては、それぞれ上述した式(K-1)中のAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基と同じものが挙げられる。
上記式(S-11)中、ns1及びns2は、それぞれ独立に、0~4の整数であり、ns1及びns2は、それぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、ns1及びns2は、いずれも0であることがより好ましい。
【0049】
上記式(S-12)中、Rs~Rsにおけるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基としては、それぞれ上述した式(K-1)中のAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基と同じものが挙げられる。
上記式(S-12)中、ns3~ns6は、それぞれ独立に、0~4の整数であり、ns3~ns6は、それぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、ns3~ns6は、いずれも0であることがより好ましい。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物における芳香族ポリスルホンは、上記の中でも、上記式(S-11)で表される繰り返し単位を有することがより好ましい。
【0051】
[芳香族ポリスルホンの溶融粘度]
芳香族ポリスルホンの溶融粘度は、150Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることがより好ましく、300Pa・s以上であることがさらに好ましい。
一方で、芳香族ポリスルホンの溶融粘度は、700Pa・s以下であることが好ましく、600Pa・s以下であることがより好ましく、550Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0052】
芳香族ポリスルホンの溶融粘度が上記の好ましい下限値以上であると、該芳香族ポリスルホン自体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
また、芳香族ポリスルホンの溶融粘度が上記の好ましい上限値以下であると、芳香族ポリスルホンの分散性が向上し、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
【0053】
例えば、芳香族ポリスルホンの溶融粘度は、150Pa・s以上700Pa・s以下であることが好ましく、200Pa・s以上600Pa・s以下であることがより好ましく、300Pa・s以上550Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0054】
[芳香族ポリスルホンの重量平均絶対分子量(Mw)]
芳香族ポリスルホンの重量平均絶対分子量(Mw)は、25000以上であることが好ましく、32000以上であることがより好ましく、36000以上であることがさらに好ましい。
一方で、芳香族ポリスルホンの重量平均絶対分子量(Mw)は、55000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、45000以下であることがさらに好ましい。
【0055】
芳香族ポリスルホンの重量平均絶対分子量(Mw)が上記の好ましい下限値以上であると、該芳香族ポリスルホン自体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
芳香族ポリスルホンの重量平均絶対分子量(Mw)が上記の好ましい上限値以下であると、芳香族ポリスルホンの分散性が向上し、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
【0056】
例えば、芳香族ポリスルホンの重量平均絶対分子量(Mw)は、25000以上55000以下であることが好ましく、32000以上50000以下であることがより好ましく、36000以上45000以下であることがさらに好ましい。
【0057】
本明細書において、重量平均絶対分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により以下の測定条件で測定することができる。
[測定条件]
試料:10mM臭化リチウム含有N,N-ジメチルホルムアミド溶液20mLに対し、芳香族ポリスルホン0.040gを配合
試料注入量:100μL
カラム(固定相):東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR-H」(7.8mmφ×300mm)を2本直列に連結
GPC装置:HLC-8420(東ソー製)
カラム温度:40℃
溶離液(移動相):10mM臭化リチウム含有N,N-ジメチルホルムアミド
溶離液流量:0.8mL/分
検出器:示差屈折率計(RI)+光散乱光度計(LS)
分子量算出法:光散乱光度計(LS)の測定結果から絶対分子量を算出
【0058】
本実施形態の樹脂組成物において、芳香族ポリスルホンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族ポリスルホンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、13質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、芳香族ポリスルホンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
芳香族ポリスルホンの含有量が上記の好ましい下限値以上であると、相対的に上述したポリエーテルエーテルケトンの含有量を減らせるため、コストをより抑えることができる。
また、芳香族ポリスルホンの含有量が上記の好ましい上限値以下であると、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
【0060】
例えば、芳香族ポリスルホンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、1質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、13質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
<ポリエーテルイミド>
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエーテルイミドは、典型的には、芳香族基とイミド結合とエーテル結合とを含む繰り返し単位を有する樹脂である。
【0062】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエーテルイミドは、下記式(I-1)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0063】
【化8】
[式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Xは、ビスフェノールから誘導される基である。]
【0064】
上記式(I-1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、上述した式(K-1)中のAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基から水素原子を1つ以上除いた基と同様のものが挙げられる。
【0065】
上記式(I-1)中、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基は、上記の中でも、ベンゼン環から水素原子を3つ以上除いた基であることが好ましい。
【0066】
上記式(I-1)中、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられ、上述した式(K-1)中のAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有してもよい置換基とそれぞれ同様のものが挙げられる。
【0067】
上記式(I-1)中、Xにおけるビスフェノールから誘導される基として、具体的には、ビスフェノールの2つのヒドロキシ基のうち、1つのヒドロキシ基の水素原子と、もう1つのヒドロキシ基の水素原子とを除いた2価の基である。具体的には、ビスフェノールA:(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールAF:2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルからそれぞれ誘導される基が挙げられ、その中でも、ビスフェノールAから誘導される基、すなわちビスフェノールAの2つのヒドロキシ基のうち、1つのヒドロキシ基の水素原子と、もう1つのヒドロキシ基の水素原子とを除いた2価の基が好適である。
【0068】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリエーテルイミドは、上記の中でも、下記式(I-11)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0069】
【化9】
[式中、Ri~Riは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアルコキシ基である。ni1及びni4は、それぞれ独立に、0~3の整数である。ni2及びni3は、それぞれ独立に、0~4の整数である。]
【0070】
上記式(I-11)中、Ri~Riにおけるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基としては、それぞれ上述した式(K-1)中のAr、Ar及びArにおける芳香族炭化水素基が有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基と同じものが挙げられる。
上記式(I-11)中、ni1~ni4は、それぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、ni1~ni4は、いずれも0であることがより好ましい。
【0071】
[ポリエーテルイミドの溶融粘度]
ポリエーテルイミドの溶融粘度は、40Pa・s以上であることが好ましく、60Pa・s以上であることがより好ましく、80Pa・s以上であることがさらに好ましい。
一方で、ポリエーテルイミドの溶融粘度は、800Pa・s以下であることが好ましく、600Pa・s以下であることがより好ましく、500Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0072】
ポリエーテルイミドの溶融粘度が上記の好ましい下限値以上であると、該ポリエーテルイミド自体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
また、ポリエーテルイミドの溶融粘度が上記の好ましい上限値以下であると、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の耐熱性がより向上する。
【0073】
例えば、ポリエーテルイミドの溶融粘度は、40Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましく、60Pa・s以上600Pa・s以下であることがより好ましく、80Pa・s以上500Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0074】
[ポリエーテルイミドの重量平均分子量(Mw)]
ポリエーテルイミドの重量平均分子量(Mw)は、20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがさらに好ましい。
一方で、ポリエーテルイミドの重量平均分子量は、120000以下であることが好ましく、110000以下であることがより好ましく、100000以下であることがさらに好ましい。
【0075】
ポリエーテルイミドの重量平均分子量が上記の好ましい下限値以上であると、該ポリエーテルイミド自体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
ポリエーテルイミドの重量平均分子量が上記の好ましい上限値以下であると、該ポリエーテルイミド及び他の樹脂がより良好に混合され、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
【0076】
例えば、ポリエーテルイミドの重量平均分子量は、20000~120000であることが好ましく、30000~110000であることがより好ましく、40000~100000であることがさらに好ましい。
【0077】
本実施形態の樹脂組成物において、ポリエーテルイミドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエーテルイミドの含有量は、樹脂組成物全量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、ポリエーテルイミドの含有量は、樹脂組成物全量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。
【0078】
ポリエーテルイミドの含有量が上記の好ましい下限値以上であると、上述したポリエーテルエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンをより良好に混合することができ、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
また、ポリエーテルイミドの含有量が上記の好ましい上限値以下であると、耐熱性がより向上する。
【0079】
例えば、ポリエーテルイミドの含有量は、樹脂組成物全量に対して、0.5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上12質量%以下であることがさらに好ましい。
【0080】
<繊維状充填剤>
本実施形態の樹脂組成物における繊維状充填剤は、繊維状の無機充填材であってもよいし、繊維状の有機充填材であってもよい。
【0081】
繊維状の無機充填材としては、ガラス繊維;PAN系、ピッチ系、レーヨン系、フェノール系、リグニン系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;鉄、金、銅、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属繊維;炭化ケイ素繊維;ボロン繊維などが挙げられる。また、繊維状の無機充填材としては、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
【0082】
繊維状の有機充填材としては、ポリエステル繊維、パラ又はメタアラミド繊維、PBO繊維等が挙げられる。
【0083】
本実施形態における繊維状フィラーとしては、上記の中でも、より機械的強度を向上させることができる観点から、炭素繊維であることが好ましい。
【0084】
・炭素繊維
本実施形態における炭素繊維は、化学組成の90%以上が炭素である繊維状物質が好ましい。
炭素繊維の原料としてはポリアクリロニトリル、ピッチ、再生セルロースなどを用いることが好ましい。これらの原料を用いて紡糸された繊維前駆体を1000~2000℃で処理したものが使用できる。また、2000℃以上3000℃以下で黒鉛化したものは高強度、高弾性を示すため好ましく用いることができる。より高強度、高弾性の繊維を得るためには、ポリアクリロニトリルを原料とすることが好ましい。
【0085】
本実施形態における炭素繊維は、数平均繊維長が30μm以上300μm以下であることが好ましく、50μm以上250μm以下であることがより好ましく、70μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
【0086】
本実施形態における炭素繊維は、数平均繊維径が2μm以上10μm以下であることが好ましく、4μm以上10μm以下であることがより好ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに好ましい。
【0087】
本実施形態における炭素繊維の数平均繊維径および数平均繊維長は、次に示す測定方法で求めた値を意味する。
【0088】
[測定方法]
まず、本実施形態に係る樹脂組成物を500℃で4時間加熱し、樹脂成分を除去する。
その残渣約1gをコニカルビーカーに採取し、アセトン150mLを加え十分に分散させる。その後、約5mLを分取し、スライドガラス上に全面に滴下し自然乾燥を行う。このとき、炭素繊維約1000本以上がスライドガラス上に採取されるように操作を行う。
次に、上記スライドガラスを投影機にセットし、100倍に拡大表示し、拡大投影された繊維長さを直尺にて測定記録する。数平均の繊維径および繊維長を次式により算出する。
数平均繊維径(または数平均繊維長)
=〔(x1+x2+・・・・+xn)/n〕×1/100
(式中、xは各個の繊維径(または繊維長)の測定値、nは各個の番号であり、例えば、400である。)
【0089】
本実施形態の樹脂組成物において、繊維状充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
繊維状充填剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、繊維状充填剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0090】
繊維状充填剤の含有量が上記の好ましい下限値以上であると、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
また、繊維状充填剤の含有量が上記の好ましい上限値以下であると、成形性がより向上する。
【0091】
例えば、繊維状充填剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、15質量%以上55質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0092】
繊維状充填剤の含有量は、上述したポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。
一方で、繊維状充填剤の含有量は、上述したポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましい。
【0093】
繊維状充填剤の含有量が上記の好ましい下限値以上であると、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
また、繊維状充填剤の含有量が上記の好ましい上限値以下であると、成形性がより向上する。
【0094】
例えば、繊維状充填剤の含有量は、上述したポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下であることが好ましく、20質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上70質量部以下であることがさらに好ましい。
【0095】
≪任意成分≫
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミド以外のその他の樹脂、計量安定剤、離型剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤等を含んでいてもよい。
【0096】
≪その他の樹脂≫
その他の樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;塩化ビニル、塩化ビニリデン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等のポリスチレン系樹脂;ポリアミド6(ナイロン6)、ポリアミド66(ナイロン66)、ポリアミド11(ナイロン11)、ポリアミド12(ナイロン12)、ポリアミド46(ナイロン46)、ポリアミド610(ナイロン610)、ポリテトラメチレンテテフタルアミド(ナイロン4T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;直鎖型ポリフェニレンスルフィド、架橋型ポリフェニレンスルフィド、半架橋型ポリフェニレンスルフィドなどのポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルケトン等のポリエーテルケトン;ポリカーボネート;ポリフェニレンエーテル;熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂などが挙げられる。
【0097】
本実施形態の樹脂組成物が含有する樹脂全体におけるポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%、すなわち、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミド以外の樹脂は含有しないことが特に好ましい。
【0098】
本実施形態の樹脂組成物において、ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量(100質量%)に対して、25質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0099】
本実施形態の樹脂組成物において、芳香族ポリスルホンの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、芳香族ポリスルホンの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0100】
本実施形態の樹脂組成物において、ポリエーテルイミドの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、ポリエーテルイミドの含有量は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量に対して、40質量%未満であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0101】
例えば、本実施形態の樹脂組成物において、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの合計含有量100質量%に対して、ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、25質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましく、
芳香族ポリスルホンの含有量は、10質量%以上55質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましく、
ポリエーテルイミドの含有量は、1質量%以上40質量%未満であることが好ましく、2質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0102】
本実施形態の樹脂組成物において、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの各含有量が、上記の好ましい範囲内であれば、本発明の効果がより得られやすくなる。
【0103】
本実施形態の樹脂組成物において、ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度と、芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度との溶融粘度比(芳香族ポリスルホンの溶融粘度/ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度)は、1.1超10以下であることが好ましく、1.3以上8以下であることがより好ましく、1.5以上6以下であることがさらに好ましい。
【0104】
本実施形態の樹脂組成物において、該溶融粘度比が上記の好ましい範囲内であると、各樹脂がより良好に混合され、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性がより向上する。
【0105】
本実施形態の樹脂組成物は、該樹脂組成物を用いて成形体を作製し、前記成形体の断面に、N-メチルピロリドンを接触させることにより生じる開孔の円相当径の平均径が、0.22μm以下となる特性を有することが好ましい。
開孔の円相当径の平均径の測定方法や開孔の詳細は後述する。
【0106】
以上説明した通り、本実施形態の樹脂組成物は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有する。
従来のポリエーテルエーテルケトンと、芳香族ポリスルホンと、繊維状充填剤とを含有する樹脂組成物を用いて作製された成形体は、ポリエーテルエーテルケトンと繊維状充填剤とを含有する樹脂組成物を用いて作製された成形体、及び、芳香族ポリスルホンと、繊維状充填剤とを含有する樹脂組成物を用いて作製された成形体よりも、機械的強度が劣っていた。これは、結晶性であるポリエーテルエーテルケトンと非晶性である芳香族ポリスルホンとの相溶性が低いため、上手く混合されず、ポリエーテルエーテルケトンと芳香族ポリスルホンとの界面から破断が進行し、機械的強度が低下したと推測される。
一方で、本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ポリスルホンと同様に非晶性であり、かつ、結晶性のポリエーテルエーテルケトンとの相溶性を示すポリエーテルイミドを含有するため、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドがそれぞれ良好に混合される。そのため、ポリエーテルエーテルケトンと芳香族ポリスルホンとの界面からの破断が抑制される。加えてこれらの樹脂が良好に混合されることにより、繊維状充填剤の分散性も向上する。
したがって、本実施形態の樹脂組成物によれば、ポリエーテルエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンの混合系において、良好な機械的強度の成形体を作製することができる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、各樹脂及び繊維状充填剤の分散性が良好であるため、耐衝撃性にも優れる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂として少なくともポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドを含有するため、樹脂としてポリエーテルエーテルケトンのみを用いた樹脂組成物よりも安価である。
【0107】
また、本実施形態の樹脂組成物は、以下の側面を有する。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有し、該樹脂組成物を用いて以下の条件で成形体を作製し、前記成形体の断面に、N-メチルピロリドンを接触させることにより生じる開孔の円相当径の平均径が、0.22μm以下となる特性を有するものである。
【0108】
より具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を、2軸押出機(池貝社製、PCM-30)を用いて、シリンダー温度370℃で造粒し、ペレット得て、前記ペレットを150℃で5時間真空乾燥し、PNX40-5A(日精樹脂工業社製)に供し、シリンダー温度:390℃の成形条件により射出成形することでASTM4号ダンベル試験片を得て、前記ASTM4号ダンベル試験片の断面に、N-メチルピロリドンを接触させることにより生じる開孔の円相当径の平均径が、0.22μm以下となる特性を有するものである。
【0109】
該ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤としては、上述したポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤とそれぞれ同様のものが挙げられる。
【0110】
成形体の断面に、N-メチルピロリドンを接触させることにより生じる開孔とは、N-メチルピロリドンにより芳香族ポリスルホンが溶解除去されたことにより生じるものである。
したがって、開孔の円相当径の平均径が小さいほど、樹脂組成物中の芳香族ポリスルホンの分散性が良好であることを意味する。
【0111】
[開孔の円相当径の平均径の測定方法]
開孔の円相当径の平均径の測定方法は、例えば、以下の手順で測定することができる。
まず、本実施形態の樹脂組成物を、2軸押出機(池貝社製、PCM-30)を用いて、シリンダー温度370℃で造粒し、ペレット得て、前記ペレットを150℃で5時間真空乾燥し、PNX40-5A(日精樹脂工業社製)に供し、シリンダー温度:390℃の成形条件により射出成形することでASTM4号ダンベル試験片を得る。
次いで、ASTM4号ダンベル試験片の中心を短手方向に切削することで、断面を切り出し、切り出した断面の断面積(cm)あたり、20mLのN-メチルピロリドンに8時間浸漬させることで、成形体の切削断面から芳香族ポリスルホンを溶解除去する。
次いで、断面の真上から走査電子顕微鏡(日立社製;商品名「S-2300」)を用いて加速電圧20kVで表面観察(反射電子像)を行い、撮影倍率1000倍、画素数1888×1536ピクセルのSEM画像を得る。
次いで、得られたSEM画像をコンピュータに取り込み、WaveMetricsが発行する画像解析のソフトIgor Proを用いて、シェーディング補正後二値化し、オープニング処理によりノイズ除去を行う。
次いで、上記処理後のSEM画像から検出された全ての開孔の各々の面積から、開孔部を完全な円と仮定した場合の各々の半径を算出する。算出された各々の半径の平均値を開孔の円相当径の平均径とする。
【0112】
図1は、上記[開孔の円相当径の平均径の測定方法]に用いられる本実施形態の樹脂組成物を用いて作製した成形体の断面のSEM画像である。
図1中、連続相1は、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリエーテルイミドである。開孔部3は、N-メチルピロリドンにより芳香族ポリスルホンが溶解除去されたことにより生じた開孔である。繊維状充填剤2は、炭素繊維である。
開孔部3の円相当径の平均径を上記の方法で測定することにより、開孔の円相当径の平均径を算出することができる。
【0113】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有し、上記開孔の円相当径の平均径が、0.22μm以下となる特性を有する。該平均径は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドのそれぞれの構造、含有割合、溶融粘度、分子量等を適宜調整することにより、0.22μm以下とすることができる。
【0114】
本実施形態の樹脂組成物は、該平均径0.22μm以下であるため、芳香族ポリスルホンの分散性が高く、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドが良好に混合され、かつ、繊維状充填剤の分散性も高まるため、ポリエーテルエーテルケトン及び芳香族ポリスルホンの混合系において、該樹脂組成物を用いて作製された成形体の機械的強度及び耐熱性の両立が図れる。
【0115】
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、以下の側面を有する。
「1」ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有し、
前記ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上50質量%以下であり、
前記芳香族ポリスルホンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは13質量%以上50質量%以下であり、
前記ポリエーテルイミドの含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは0.5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上12質量%以下であり、
前記繊維状充填剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは15質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上45質量%以下である、樹脂組成物。
【0116】
「2」前記ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度は、好ましくは10Pa・s以上800Pa・s以下であり、より好ましくは30Pa・s以上500Pa・s以下であり、さらに好ましくは50Pa・s以上200Pa・s以下であり、
前記芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度は、好ましくは150Pa・s以上600Pa・s以下であり、より好ましくは200Pa・s以上550Pa・s以下であり、さらに好ましくは300Pa・s以上500Pa・s以下であり、
前記ポリエーテルイミドの400℃における溶融粘度は、好ましくは40Pa・s以上800Pa・s以下であり、より好ましくは60Pa・s以上600Pa・s以下であり、さらに好ましくは80Pa・s以上500Pa・s以下である、「1」に記載の樹脂組成物。
【0117】
「3」前記ポリエーテルエーテルケトンの重量平均分子量は、好ましくは5000~55000であり、より好ましくは6000~40000であり、さらに好ましくは7000~30000であり、
前記芳香族ポリスルホンの重量平均絶対分子量は、好ましくは25000~60000であり、より好ましくは25000~50000であり、さらに好ましくは28000~40000であり、
前記ポリエーテルイミドの重量平均分子量は、好ましくは20000~120000であり、より好ましくは30000~110000であり、さらに好ましくは40000~100000である、「1」又は「2」に記載の樹脂組成物。
【0118】
「4」前記ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度と、前記芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度との溶融粘度比(芳香族ポリスルホンの溶融粘度/ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度)は、好ましくは1.1超10以下であり、より好ましくは1.3以上8以下であり、さらに好ましくは1.5以上6以下である、「1」~「3」のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0119】
「5」前記ポリエーテルエーテルケトン、前記芳香族ポリスルホン、及び前記ポリエーテルイミドの合計含有量100質量%に対して、前記ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、好ましくは25質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上60質量%以下であり、
前記芳香族ポリスルホンの含有量は、好ましくは10質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上45質量%以下であり、
前記ポリエーテルイミドの含有量は、好ましくは1質量%以上40質量%未満であり、より好ましくは2質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上15質量%以下である、「1」~「4」のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0120】
「6」「1」~「5」のいずれか1つに記載の樹脂組成物を用いて成形体を作製し、前記成形体の断面に、N-メチルピロリドンを接触させることにより生じる開孔の円相当径の平均径が、0.22μm以下となる特性を有する、樹脂組成物。
【0121】
「7」ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を含有する樹脂組成物を用いて成形体を作製し、前記成形体の断面に、N-メチルピロリドンを接触させることにより生じる開孔の円相当径の平均径が、0.22μm以下となる特性を有し、
前記ポリエーテルエーテルケトンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上50質量%以下であり、
前記芳香族ポリスルホンの含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは13質量%以上50質量%以下であり、
前記ポリエーテルイミドの含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは0.5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上12質量%以下であり、
前記繊維状充填剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは15質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上45質量%以下である、樹脂組成物。
【0122】
「8」前記ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度は、好ましくは10Pa・s以上800Pa・s以下であり、より好ましくは30Pa・s以上500Pa・s以下であり、さらに好ましくは50Pa・s以上200Pa・s以下であり、
前記芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度は、好ましくは150Pa・s以上600Pa・s以下であり、より好ましくは200Pa・s以上550Pa・s以下であり、さらに好ましくは300Pa・s以上500Pa・s以下であり、
前記ポリエーテルイミドの400℃における溶融粘度は、好ましくは40Pa・s以上800Pa・s以下であり、より好ましくは60Pa・s以上600Pa・s以下であり、さらに好ましくは80Pa・s以上500Pa・s以下である、「7」に記載の樹脂組成物。
【0123】
「9」前記ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度と、前記芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度との溶融粘度比(芳香族ポリスルホンの溶融粘度/ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度)は、好ましくは1.1超10以下であり、より好ましくは1.3以上8以下であり、さらに好ましくは1.5以上6以下である、「7」又は「8」に記載の樹脂組成物。
【0124】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、上述したポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤と、必要に応じてその他成分とを混合することにより製造することができる。
また、上述したポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤と、必要に応じてその他成分とを2軸押出機で脱気しながら溶融混錬し、得られた混合物を、円形ノズル(吐出口)を経由してストランド状に吐出させ、次いで、ストランドカッターにてカットして、ペレット状の樹脂組成物を製造することができる。
【0125】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法において、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤の好ましい配合割合は、上述した得られる樹脂組成物の各成分の好ましい含有量と同じである。
また、本実施形態の樹脂組成物の製造方法において、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの好ましい溶融粘度・重量平均分子量・重量平均絶対分子量は、上述した得られる樹脂組成物の各成分の好ましい溶融粘度・重量平均分子量・重量平均絶対分子量と同じである。
また、本実施形態の樹脂組成物の製造方法において、ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度と、前記芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度との溶融粘度比(芳香族ポリスルホンの溶融粘度/ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度)は、1.1超10以下であることが好ましく、1.3以上8以下であることがより好ましく、1.5以上6以下であることがさらに好ましい。
【0126】
(成形体)
本実施形態の成形体は、上述した樹脂組成物を用いて作製された成形体である。
本実施形態の成形体は、樹脂組成物を用いて、公知の成形方法により得ることができる。本実施形態の樹脂組成物の成形方法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法およびプレス成形が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
【0127】
例えば、上述した樹脂組成物を成形材料とし、射出成形法により成形する場合、公知の射出成形機を用いて、樹脂組成物を溶融させ、溶融した樹脂組成物を、金型内に射出することにより成形する。
ここで、樹脂組成物を射出成形機に投入する際に、各成分を別々に射出成形機に投入してもよいし、予め一部又は全部の成分を混合し、混合物として射出成形機に投入してもよい。
公知の射出成形機としては、例えば、株式会社ソディック製のTR450EH3、日精樹脂工業社製の油圧式横型成形機PS40E5ASE型などが挙げられる。
【0128】
射出成形の温度条件は、樹脂組成物の種類に応じて適宜決定され、射出成形機のシリンダー温度を、用いる樹脂組成物の流動開始温度より10~80℃高い温度に設定することが好ましい。
【0129】
金型の温度は、樹脂組成物の冷却速度と生産性の点から、室温(25℃)から180℃の範囲に設定することが好ましい。
その他射出条件として、スクリュー回転数、背圧、射出速度、保圧、保圧時間などを適宜調節すればよい。
【0130】
本実施形態の成形体は、一般に樹脂組成物が適用し得るあらゆる用途に適用可能である。
本実施形態の成形体は、例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、回路基板、半導体パッケージ、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品;ICトレー、ウエハーキャリヤー、等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー等照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー、等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品;分離爪、ヒータホルダー、等の複写機、印刷機関連部品;インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース、等の機械部品;自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器、等の調理用器具;床材、壁材などの断熱、防音用材料、梁、柱などの支持材料、屋根材等の建築資材、または土木建築用材料;航空機、宇宙機、宇宙機器用部品;原子炉等の放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品が挙げられる。
【0131】
以上説明した本実施形態の成形体は、上述した樹脂組成物が用いられているため、良好な機械的強度を有する。
本実施形態の成形体は、機械的強度及び耐熱性が高いため特に自動車部品として有用である。
【実施例
【0132】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
[ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの準備]
ポリエーテルエーテルケトンとして、表1に示す溶融粘度(Pa・s)であり、下記式(K-a)で表される繰返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンを3種類(以下に示すPEEK1、PEEK2及びPEEK3)準備した。
PEEK1:キータスパイア KT-890P(Solvay社製)
PEEK2:VICTREX PEEK 150P(ビクトレックス社製)
PEEK3:VICTREX PEEK 450P(ビクトレックス社製)
【0134】
芳香族ポリスルホンとして、表1に示す重量平均絶対分子量及び溶融粘度(Pa・s)であり、下記式(S-a)で表される繰返し単位を有する芳香族ポリスルホンを3種類(PES1、PES2及びPES3)準備した。
【0135】
ポリエーテルイミドとして、表1に示す溶融粘度(Pa・s)であり、下記式(I-a)で表される繰返し単位を有するポリエーテルイミドを3種類(以下に示すPEI1、PEI2及びPEI3)準備した。
PEI1:ウルテム 1000(SABIC社製)
PEI2:ウルテム 1010(SABIC社製)
PEI3:ウルテム 1040A(SABIC社製)
【0136】
【化10】
【0137】
[重量平均絶対分子量の測定]
表1に示す芳香族ポリスルホンの重量平均絶対分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により測定した。
[測定条件]
試料:10mM臭化リチウム含有N,N-ジメチルホルムアミド溶液20mLに対し、芳香族ポリスルホン0.040gを配合
試料注入量:100μL
カラム(固定相):東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR-H」(7.8mmφ×300mm)を2本直列に連結
GPC装置:HLC-8420(東ソー製)
カラム温度:40℃
溶離液(移動相):10mM臭化リチウム含有N,N-ジメチルホルムアミド
溶離液流量:0.8mL/分
検出器:示差屈折率計(RI)+光散乱光度計(LS)
分子量算出法:光散乱光度計(LS)の測定結果から絶対分子量を算出
【0138】
[溶融粘度の測定]
表1に示す各樹脂の溶融粘度は、定試験力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(島津製作所社製;商品名「CFT-500EX」)を用いて測定し、各樹脂を断面積1cmのシリンダーに充填し、400℃で5分間放置後、4.9MPa(50kgf/cm)の押出圧力を加え、直径1mm、長さ10mmのノズルから押し出すことにより測定した。
【0139】
【表1】
【0140】
[樹脂組成物の製造例]
(実施例1~12、比較例1、2)
下記表2に示す配合比にて、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、及び繊維状充填剤を、2軸押出機(池貝社製、PCM-30)を用いて、シリンダー温度370℃で造粒し、各例の樹脂組成物(ペレット)を得た。
また、ポリエーテルエーテルケトンの400℃における溶融粘度と、芳香族ポリスルホンの400℃における溶融粘度との溶融粘度比(PES/PEEK粘度比)も表2に併記した。
【0141】
【表2】
【0142】
表2中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は含有量(質量部)である。
PEEK1~PEEK3:上述したポリエーテルエーテルケトンPEEK1~PEEK3
PES1~PES3:上述した芳香族ポリスルホンPES1~PES3
PEI1~PEI3:上述したポリエーテルイミドPEI1~PEI3
CF1:炭素繊維(三菱ケミカル社製、商品名「TR03MLA5G」、数平均繊維径7μm、数平均繊維長6mm)
【0143】
[成形体の製造例]
上述した各例の樹脂組成物を用いて、成形体を製造した。
具体的には、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名「NEX50IV-5EG」)を用いて、シリンダー温度390℃、金型温度160℃、射出速度50mm/秒の条件で、ASTM4号ダンベル試験片および、幅12.7mm、長さ127mm、厚さ6.4mmの棒状成形体をそれぞれ製造した。
【0144】
[引張強度(MPa)の測定]
各例の樹脂組成物を用いて作製したASTM4号ダンベル試験片の引張強度(最大点強度)を、ASTM D638に準拠し、試験速度10mm/minにて測定した。その結果を「引張強度(MPa)」として表3に示した。
【0145】
[荷重たわみ温度(℃)の測定]
各例の樹脂組成物を用いて作製した棒状成形体の荷重たわみ温度(DTUL)を、ASTM D648に準拠し、荷重1.82MPa、昇温速度2℃/分にて測定した。その結果を「DTUL(℃)」として表3に示した。
【0146】
[円相当径(μm)の測定]
各例の樹脂組成物を用いて作製した成形体の断面について、開孔の円相当径の平均径を以下の手順で測定した。
まず、各例のASTM4号ダンベル試験片の中心を短手方向に切削することで、断面を切り出し、切り出した断面の断面積(cm)あたり、20mLのN-メチルピロリドンに8時間浸漬させることで、成形体の切削断面から芳香族ポリスルホンを溶解除去した。
次いで、断面の真上から走査電子顕微鏡(日立社製;商品名「S-2300」)を用いて加速電圧20kVで表面観察(反射電子像)を行い、撮影倍率1000倍、画素数1888×1536ピクセルのSEM画像を得た。
次いで、得られたSEM画像をコンピュータに取り込み、WaveMetricsが発行する画像解析のソフトIgor Proを用いて、シェーディング補正後二値化し、オープニング処理によりノイズ除去を行った。
次いで、上記処理後のSEM画像から検出された全ての開孔の各々の面積から、開孔部を完全な円と仮定した場合の各々の半径を算出した。算出された各々の半径の平均値を開孔の円相当径の平均径として表3に示した。
【0147】
図1は、実施例1の樹脂組成物を用いて作製した成形体の断面のSEM画像である。
図1中、連続相1は、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリエーテルイミドである。開孔部3は、N-メチルピロリドンにより芳香族ポリスルホンが溶解除去されたことにより生じた開孔である。繊維状充填剤2は、炭素繊維である。
図2は、比較例1の樹脂組成物を用いて作製した成形体の断面のSEM画像である。
図2中、連続相4は、ポリエーテルエーテルケトンである。開孔部5は、N-メチルピロリドンにより芳香族ポリスルホンが溶解除去されたことにより生じた開孔である。繊維状充填剤6は、炭素繊維である。
【0148】
【表3】
【0149】
・ポリエーテルイミドの有無
表3に示す通り、実施例の樹脂組成物を用いて作製した成形体は、比較例の樹脂組成物を用いて作製した成形体に比べて、引張強度が高いことが確認できた。
【0150】
・PES/PEEK粘度比の比較
実施例の中でも、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリスルホン、及びポリエーテルイミドの含有割合は同一であり、PES/PEEK粘度比が異なる実施例3、7~10の樹脂組成物を用いて作製した成形体を対比すると、PES/PEEK粘度比が0.5である実施例10、及び、1.1である実施例9の樹脂組成物を用いて作製した成形体に比べて、PES/PEEK粘度比が1.7~4.5である実施例3、7、8の樹脂組成物を用いて作製した成形体の方が、引張強度及びDTUL(耐熱性)がいずれも高いことが確認できた。
【0151】
・円相当径(μm)の比較
また、円相当径(μm)が0.26~0.47μmである実施例9~12の樹脂組成物を用いて作製した成形体に比べて、円相当径(μm)が0.22μm以下である実施例1~8の樹脂組成物を用いて作製した成形体の方が、引張強度及びDTUL(耐熱性)の両立が図れていた。
【符号の説明】
【0152】
1、4・・・連続相
3、5・・・開孔部
2、6・・・繊維状充填剤
図1
図2