(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-13
(45)【発行日】2026-01-21
(54)【発明の名称】車両用シートバック
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20260114BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20260114BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20260114BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/42
A47C7/40
(21)【出願番号】P 2022024135
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2024-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 規敏
(72)【発明者】
【氏名】澤井 亮
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】富田 俊彦
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022493(WO,A1)
【文献】特開2015-009605(JP,A)
【文献】特開2013-189142(JP,A)
【文献】特開2011-206372(JP,A)
【文献】特開2002-209664(JP,A)
【文献】特開平11-034707(JP,A)
【文献】国際公開第2012/086364(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008003183(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/00-7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の背を支えるパッドと、
前記パッドの後方に位置しかつ、前記乗員の背からの荷重を、前記パッドを介して受ける受圧部材と、を備え、
前記パッドは、弾性変形する発泡部材と、前記発泡部材の後面に貼り付けられかつ、前記発泡部材を補強する補強部材と、を有し、
前記受圧部材は、シートバックの幅方向の中央部に位置する基部と、前記基部の両側それぞれから、前記幅方向の外方へ延びる複数の側片とを有し、
前記パッドは、前記シートバックの面に直交する方向から見て一部の前記側片と重なる位置に、前記補強部材の補強を低下させる補強低下部を有している、車両用シートバック。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートバックにおいて、
前記補強低下部は、前記幅方向について、前記シートバックの中心線を挟んだ両側のそれぞれに位置している、車両用シートバック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用シートバックにおいて、
前記複数の側片は、前記基部の両側それぞれにおいて
、上下方向に間隔を空けて並んでおり、
前記補強低下部は、前記基部の両側それぞれにおいて、特定側片と重なり、
前記特定側片は、前記特定側片の隣の側片よりも剛性が高い、車両用シートバック。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用シートバックにおいて、
前記補強低下部は、前記乗員の胸郭の後方に位置している、車両用シートバック。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用シートバックにおいて、
前記側片は、前記基部から幅方向の外方の前方へ延びる、車両用シートバック。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用シートバックにおいて、
前記補強部材は、不織布であり、
前記補強低下部は、前記不織布に形成された切り欠き、又は、切れ目である、車両用シートバック。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用シートバックにおいて、
前記パッドと前記受圧部材との間に位置する、シートベンチレーション用のエアバッグをさらに備えている、車両用シートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、車両用シートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用シートバックが記載されている。シートバックは、シートバックフレームとクッションパッドと受圧部材とを備えている。受圧部材は、樹脂製のプレートである。受圧部材は、クッションパッドの後方に位置し、シートバックフレームにワイヤを介して取り付けられている。ワイヤは、インサート成形によって受圧部材と一体に成形されている。受圧部材は、乗員の背からの荷重を受ける。また、車両が後面衝突したときに乗員の背からの衝撃荷重が受圧部材に入力されると、受圧部材は、乗員の背によって押されて乗員と共に後方に移動する。受圧部材の変位により、衝突時に乗員の頸部に作用する衝撃荷重が軽減される。
【0003】
特許文献2にも、プレート状の受圧部材を備えた車両用シートバックが記載されている。受圧部材は、アクチュエータによって揺動できる。旋回センサによって車両の旋回が検出されると、アクチュエータは、その旋回方向に応じて受圧部材を揺動させる。揺動した受圧部材は、運転者の姿勢を旋回方向に対して内側へと傾かせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-182273号公報
【文献】特開2013-49356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の旋回時には、シートに着座した乗員の姿勢が変化しようとする。車両用シートには、乗員の姿勢の変化を抑制することが求められる。一方で、車両用シートが乗員の姿勢を強固に保持してしまうと、車両の直進時に乗り心地を悪化させてしまう。また、乗員の姿勢の強固な保持は、旋回時の乗員の姿勢の変化に対するシートバックからの反力を強くするため、乗員に違和感を与えてしまう。
【0006】
残念ながら特許文献1に記載された従来の車両用シートは、この問題を解消できない。また、特許文献2に記載された従来の車両用シートは、アクチュエータ及びセンサといった電気デバイスを必要とするため、非常に複雑である。
【0007】
ここに開示する技術は、乗り心地を悪化させずに、旋回時の乗員の姿勢の変化を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する技術は、車両用シートバックに係る。車両用シートバックは、
乗員の背を支えるパッドと、
前記パッドの後方に位置しかつ、前記乗員の背からの荷重を、前記パッドを介して受ける受圧部材と、を備え、
前記パッドは、弾性変形する発泡部材と、前記発泡部材の後面に貼り付けられかつ、前記発泡部材を補強する補強部材と、を有し、
前記受圧部材は、シートバックの幅方向の中央部に位置する基部と、前記基部の両側それぞれから、前記幅方向の外方へ延びる複数の側片とを有し、
前記パッドは、前記シートバックの面に直交する方向から見て一部の前記側片と重なる位置に、前記補強部材の補強を低下させる補強低下部を有している。
【0009】
この構成によると、受圧部材の基部は、幅方向の中央部に位置して、乗員の背の中央部を支持する。受圧部材の側片は、基部の両側それぞれに位置して、乗員の背の両側それぞれを支持する。
【0010】
車両の直進時、受圧部材は、乗員の背の全体からの荷重を、パッドを介して受ける。パッドは、発泡部材と補強部材とを有している。乗員の背からの荷重は、補強部材によって補強された発泡部材が圧縮変形をしつつ、受圧部材の、主に基部によって受け止められる。パッド及び受圧部材は、広い面の全体で乗員の背からの荷重を受ける。このため、車両の直進時、シートバックは、乗り心地を悪化させずに、乗員の背をしっかりと支持できる。
【0011】
車両の旋回時、乗員の姿勢は、胸郭が脊柱を中心に回転する方向、及び/又は、胸郭が左右に傾く方向へ、変化しようとする。こうした乗員の姿勢の変化に伴い、乗員の背の側部から局所的に、シートバックに荷重が入力される。
【0012】
ここで、乗員には、運転席に着座してステアリングホイールを握るドライバー、及び、助手席に着座するパッセンジャーの両方が含まれる。車両の旋回時におけるドライバーの姿勢変化と、車両の旋回時におけるパッセンジャーの姿勢変化とは、一致しない場合がある。
【0013】
パッドは補強低下部を有している。補強低下部は、一部の側片と重なる位置に位置している。乗員の背の側部からの局所的な荷重は、パッドにおける補強低下部の位置に入力される。
【0014】
補強低下部は、補強部材の補強を低下させる。局所荷重の入力初期時に、発泡部材は、補強低下部の箇所において大きく圧縮変形する。局所荷重の入力初期時に、乗員に強い反力が作用することが抑制される。
【0015】
発泡部材の圧縮変形後、乗員の背の側部からの局所荷重は、受圧部材の、主に側片によって受け止められる。そうして、受圧部材からパッドを通じて乗員の背の側部に反力が作用する。これにより、乗員の姿勢の変化が抑制される。
【0016】
前記構成のシートバックは、車両の旋回時に、乗員に対する強い反力を抑制しつつ、乗員の背をしっかりと支持して姿勢の変化を抑制できる。
【0017】
一方、補強低下部は、パッドにおける特定の箇所に、部分的に設けられている。車両の直進時のような、乗員の背の全体からシートバックに荷重が入力される場合、補強低下部は、実質的に機能しない。前記構成のシートバックは、車両の直進時の乗り心地を悪化させない。
【0018】
よって、前記構成のシートバックは、直進時及び旋回時における乗り心地を悪化させずに、旋回時の乗員の姿勢の変化を抑制できる。
【0019】
前記補強低下部は、前記幅方向について、前記シートバックの中心線を挟んだ両側のそれぞれに位置している、としてもよい。
【0020】
補強低下部は、乗員の背の右側及び左側のそれぞれに位置している。シートバックは、右旋回時及び左旋回時のそれぞれにおいて、乗員の姿勢の変化を抑制できる。
【0021】
前記複数の側片は、前記基部の両側それぞれにおいて、上下方向に間隔を空けて並んでおり、
前記補強低下部は、前記基部の両側それぞれにおいて、特定側片と重なり、
前記特定側片は、前記特定側片の隣の側片よりも剛性が高い、としてもよい。
【0022】
高剛性の特定側片は、乗員の背の側部に対して十分な反力を与えることができる。その結果、シートバックは、車両の旋回時に、乗員の姿勢の変化を抑制できる。
【0023】
前記補強低下部は、前記乗員の胸郭の後方に位置している、としてもよい。
【0024】
車両の旋回時に、胸郭は脊柱を中心に回転する方向、及び/又は、胸郭が左右に傾く方向へ、変位しようとする。補強低下部が、乗員の胸郭の後方に位置していることにより、受圧部材の側片は、変位しようとする胸郭に対して反力を与えることができる。シートバックは、車両の旋回時に乗員の姿勢の変化を、効果的に抑制できる。
【0025】
前記側片は、前記基部から幅方向の外方の前方へ延びる、としてもよい。
【0026】
基部から斜め前方へと延びる側片は、乗員の背の側部から乗員の体側にかけての部位に反力を与えることができる。シートバックは、胸郭が回転する方向、及び/又は、胸郭が左右に傾く方向へ乗員の姿勢が変化することを、効果的に抑制できる。
【0027】
前記補強部材は、不織布であり、
前記補強低下部は、前記不織布に形成された切り欠き、又は、切れ目である、としてもよい。
【0028】
発泡部材の後面に貼り付けられた不織布が発泡部材の圧縮量をコントロールすることによって、シートバックは、乗員の背を適切に支えて乗り心地を向上できる。不織布に形成された切り欠き、又は、切れ目は、発泡部材の後面を拘束しないため、乗員の背からの荷重が入力された際の反力を低減させる。その結果、シートバックは、車両旋回時の局所的な荷重入力に対し、初期は乗員の背に対する反力を低減し、その後、受圧部材の、主に側片によって、乗員の背の側部に十分な反力を与えて、乗員の姿勢の変化を抑制できる。
【0029】
車両用シートバックは、前記パッドと前記受圧部材との間に位置する、シートベンチレーション用のエアバッグをさらに備えている、としてもよい。
【0030】
エアバッグは、補強低下部の箇所を含めてパッドと受圧部材との、直接的な接触を防止する。発泡部材の摩耗及び/又は損傷が抑制できる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、車両用シートバックは、乗り心地を悪化させずに、旋回時の乗員の姿勢の変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】
図2は、前から見たシートバックの内部を示している。
【
図3】
図3は、横から見たシートバックの内部を示している。
【
図4】
図4は、後から見たシートバックの内部を示している。
【
図6】
図6の左図は、横から見た受圧部材を示し、右図は、後から見た受圧部材を示している。
【
図9】
図9は、パッドの後面の変形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、車両用シートバックの実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明するシートバックは例示である。
【0034】
(シートバックの全体構造)
車両用シート1は、前席として車室内に設置される。尚、以下の説明において、車両用シート1の前後、左右、上下のそれぞれは、当該車両用シート1が車室内に設置されている状態における、車両の前後、左右、上下と一致させる。左右方向は、車両用シートの幅方向に相当する。
【0035】
図1に示すように、車両用シート1は、シートバック11と、シートクッション12と、ヘッドレスト13とを備えている。シートバック11は、乗員9の背を支える(
図3も参照)。シートクッション12は、乗員9の臀部を支える。ヘッドレスト13は、乗員9の頭を支える。
【0036】
シートバック11は、
図2~
図4及び
図6に示すように、フレーム2と、パッド3と、表皮30と、受圧部材4と、を有している。
【0037】
フレーム2は、左右のサイドフレーム21と、アッパーフレーム22と、ロアフレーム23とを有している。アッパーフレーム22は、左右のサイドフレーム21の上端部同士を左右方向に連結する。ロアフレーム23は、左右のサイドフレーム21の下端部同士を左右方向に連結する。フレーム2は、前から見たときに、略矩形状の枠である。
【0038】
パッド3は、フレーム2の前側に位置している。パッド3は、
図6の左図に示すように、発泡部材31と、発泡部材31の後面に貼り付けられた補強部材32と、から構成されている。発泡部材31は、例えばウレタンフォームからなるクッション部材である。補強部材32は、例えば不織布からなる。補強部材32は、発泡部材31の後面を補強する。補強部材32によって補強された発泡部材31は、乗員9の背からの荷重を受けて弾性変形すると共に、乗員9の背に適度な反力を付与する。
【0039】
表皮30は、略袋状であり、シートバック11の全体を覆う。後述するように、車両用シート1は、シートベンチレーション5を備えている。表皮30は、通気性を有する素材、例えばファブリック、又は、多数の小孔を有する天然皮革若しくは合成皮革からなる。
【0040】
受圧部材4は、フレーム2の内部であって、パッド3の後方に位置している。受圧部材4は、乗員9の背からの荷重を、パッド3を介して受ける。受圧部材4の詳細は、後述する。
【0041】
パッド3と受圧部材4との間には、
図6の左図に示すように、シートベンチレーション5のエアバッグ51が位置している。エアバッグ51は、パッド3の後面が受圧部材4に直接、接触することを防止する。エアバッグ51は、パッド3の摩耗及び/又は損傷を抑制する。
【0042】
シートベンチレーション5は、シートバック11の表面からシートバック11内へ、空調装置によって調和された車室内の空気を吸い込む。シートベンチレーション5は、エアバッグ51と、ファン52とを有している。
【0043】
図6の左図又は
図8に示すように、発泡部材31は、複数の貫通孔311を有している。各貫通孔311は、発泡部材31の前面から後面まで貫通している。表皮30は、前述したように、通気性を有する素材からなる。
【0044】
ファン52は、
図2~
図4に示すように、フレーム2の内部であって、受圧部材4の上方に位置している。ファン52は、その前面に吸込口521を有している。ファン52は、その左右の側面それぞれに、吐出口522を有している。二つの吐出口522は、シートバック11の内部に開口している。
【0045】
吸込口521はエアバッグ51の後面に接続されている。図には詳細に示していないが、エアバッグ51の前面には、発泡部材31の各貫通孔311につながる開口が形成されている。
【0046】
ファン52が作動すると、表皮30及び貫通孔311を通じて車室内の空気がエアバッグ51に吸い込まれる。エアバッグ51は、各貫通孔311を通じて吸い込んだ空気を集合させるマニホールドとしての機能を有する。ファン52は、吸込口521からエアバッグ51内の空気を吸い込みかつ、吐出口522から吐き出す。
【0047】
(受圧部材の構造)
受圧部材4は、本体6と、剛性部材7と、を有している。
【0048】
本体6は、基部69と、複数の側片60とを有している。本体6は、前後方向の厚みが薄いプレート状であって、例えば合成樹脂製である。
【0049】
基部69は、シートバック11の幅方向の中央部に位置している。基部69は、前から見て略矩形状であって、上下及び左右方向に広がる。基部69には、軽量化のための孔が、複数形成されている。
【0050】
基部69の上端は、乗員9の胸郭91の下部に相当する位置に、位置している(
図5も参照)。また、基部69の下端は、乗員9の腰部に相当する位置に、位置している。基部69は、乗員9の胸郭91の下部に相当する位置から腰部に相当する位置までの間において、乗員9の背の左右方向の中央部を支える。尚、胸郭91は、人体の鎖骨、胸骨、肋骨及び胸椎を含む。
【0051】
側片60は、基部69における左右の両側縁から、幅方向の外方の前方へ延びている。より詳細に、側片60は、前から見た場合に、基部69の側縁から、幅方向の外方へ延びている(
図5又は
図6の右図参照)と共に、横から見た場合に、基部69よりも前方へ延びている(
図6の左図参照)。側片60は、基部69に対し前方へ傾いている。
【0052】
複数の側片60は、上下方向に間隔を空けて並んでいる。本体6は、上から順に、第1側片61、第2側片62、第3側片63、第4側片64、第5側片65、第6側片66、及び、第7側片67を有している。尚、第1側片61~第7側片67の各側片は、左右で同じ形状を有している。
【0053】
第1側片61は、基部69の上端部に位置している。第1側片61は、左右方向の長さが最も短い。第1側片61は、隣の第2側片62よりも剛性が高い。尚、第1側片61には、軽量化及び/又は剛性調整のための第1孔611が形成されている。
【0054】
第2側片62は、第1側片61の下に位置している。第2側片62~第7側片67の長さは、ほぼ同じである。第2側片62には、軽量化及び/又は剛性調整のための第2孔621が、2つ形成されている。
【0055】
第3側片63は、第2側片62の下に位置している。第3側片63には、軽量化及び/又は剛性調整のための第3孔631が形成されている。
【0056】
第4側片64は、第3側片63の下に位置している。第4側片64には、剛性向上のための第1凹部641が形成されている。第1凹部614は、第4側片64の前から後へ凹む(
図6の左図参照)。第4側片64の後面には凸部が形成される。
【0057】
第5側片65は、第4側片64の下に位置している。第5側片65にも、第4側片64と同様に、剛性向上のための第2凹部651が形成されている。
【0058】
第6側片66は、第5側片65の下に位置している。第6側片66にも、第4側片64と同様に、剛性向上のための第3凹部661が形成されている。第7側片67は、第6側片66の下に位置している。第7側片67にも、第4側片64と同様に、剛性向上のための第4凹部671が形成されている。そして、第6側片66の先端と、第7側片67の先端とは、上下方向に、互いに接続されている。
【0059】
剛性部材7は、本体6の後側に位置している。剛性部材7は、本体6の後面に固定される。より詳細に、本体6の上端部には、基部69から上方に膨出する固定部68が形成されている。固定部68は、第1側片61よりも上に位置している。本体6は、2つの固定部68を有している。2つの固定部68は、本体6の左右方向の中央側において、左右方向に間隔を空けて位置している。剛性部材7は、2つの固定部68の後面それぞれに固定されている。
【0060】
剛性部材7は、例えば合成樹脂製である。剛性部材7は、前後方向について、プレート状の本体6よりも厚みが分厚い(
図7も参照)。また、剛性部材7の両側部にはそれぞれ、金属棒71が埋め込まれている。金属棒71は、剛性部材7の中央部から左右両側の外方に向かって、水平に延びている。剛性部材7は、本体6よりも、前後方向の荷重入力に対する剛性が高い。尚、剛性部材7の中央部には、金属棒が埋め込まれていない。剛性部材7の中央部は相対的に低剛性であり、両側部は相対的に高剛性である。
【0061】
剛性部材7は、本体6の上端部付近において、左右方向に延びている。剛性部材7は、前から見たときに、本体6の固定部68及び第1側片61と重なる。剛性部材7は、本体6に対して、相対的に低剛性である中央部において固定されている。剛性部材7は、第1側片61の先端よりも左右の外方まで延びている。
【0062】
フレーム2は、受圧部材4を支持している。連結部材8は、フレーム2と受圧部材4とを連結する。
【0063】
連結部材8は、上側連結部材81と、下側連結部材82とを含む。上側連結部材81は、剛性部材7とフレーム2とを連結する。下側連結部材82は、本体6の下端とフレーム2とを連結する。
【0064】
上側連結部材81は、右側の第1上側連結部材811と左側の第2上側連結部材812とを含む。第1上側連結部材811と第2上側連結部材812とは、シートバック11の中心線に対して左右対称の形状を有している。以下においては、第1上側連結部材811の構造について詳細に説明し、第2上側連結部材812の構造の説明は、適宜省略する。
【0065】
第1上側連結部材811は、剛性部材7とアッパーフレーム22の右部とを連結する。第1上側連結部材811と剛性部材7との接続位置は、剛性部材7の中央部における右側の部位である。より詳細に、第1上側連結部材811と剛性部材7との接続位置は、剛性部材7と本体6との固定位置よりも、左右方向の外側である(
図5又は
図6の右図参照)。尚、
図7に示すように、第1上側連結部材811は、剛性部材7に埋め込まれた金属棒71に対して、左右方向に重なる位置に位置している。
【0066】
第1上側連結部材811は、剛性部材7との接続位置から真上に延びた後、第1屈曲部813において、右の斜め上方へと屈曲している。そして、第1上側連結部材811は、第2屈曲部814において真上へと屈曲した後、アッパーフレーム22の右部へ至る。第2上側連結部材812も同様に、剛性部材7との接続位置から真上に延びた後、第1屈曲部815において、左の斜め上方へと屈曲すると共に、第2屈曲部816において真上へと屈曲した後、アッパーフレーム22の左部へ至る。
【0067】
第1上側連結部材811及び第2上側連結部材812は、金属製の小径の棒状部材である。剛性部材7と第1上側連結部材811及び第2上側連結部材812とは、例えばインサート成形によって一体に形成されている。
【0068】
下側連結部材82は、右側の第1下側連結部材821と左側の第2下側連結部材822とを含む。第1下側連結部材821と左側の第2下側連結部材822とは、シートバック11の中心線に対して左右対称の形状を有している。以下においては、第1下側連結部材821の構造について詳細に説明し、第2下側連結部材822の構造の説明は、適宜省略する。
【0069】
第1下側連結部材821は、基部69の下端部とロアフレーム23の右部とを連結する。第1下側連結部材821と基部69との接続位置は、基部69の右側部である。
【0070】
第1下側連結部材821は、基部69の右側部から右の外方へ突出した後、U字状に湾曲している。そして、第1下側連結部材821は、
図2に示すように、ロアフレーム23の右部に設けられた第1取付部231に取り付けられている。第2下側連結部材822も同様に、基部69の左側部から左の外方へ突出した後、U字状に湾曲し、ロアフレーム23の左部に設けられた第2取付部232に取り付けられている。
【0071】
第1下側連結部材821及び第2下側連結部材822も、金属製の小径の棒状部材である。基部69と第1下側連結部材821及び第2下側連結部材822とは、例えばインサート成形によって一体に形成されている。
【0072】
受圧部材4は、一対の上側連結部材81及び一対の下側連結部材82によってフレーム2に固定されている。受圧部材4は、例えば車両の後面衝突時に乗員9の背からの衝撃荷重を受けた際に、一対の上側連結部材81及び一対の下側連結部材82の弾性変形により、後方へ変位することができる。受圧部材4の変位は、衝突時に乗員9の頸部に作用する衝撃荷重を軽減する。
【0073】
尚、上側連結部材81は、上述したように、第1上側連結部材811と第2上側連結部材812との一対の連結部材を含む代わりに、第1上側連結部材811及び第2上側連結部材812の下端同士を互いに連結することによって、一つの部材であってもよい。同様に、下側連結部材82は、第1下側連結部材821と第2下側連結部材822との一対の連結部材を含む代わりに、左右の第1下側連結部材821及び第2下側連結部材822を互いに連結することによって、一つの部材であってもよい。
【0074】
基部69の後側には、
図4又は
図6の右図に示すように、中間連結部材83が位置している。中間連結部材83は、剛性部材7と基部69の下端部とを連結している。中間連結部材83は右側の第1中間連結部材831と左側の第2中間連結部材832とを含む。第1中間連結部材831と第2中間連結部材832とは、シートバック11の中心線に対して左右対称の形状を有している。以下においては、第1中間連結部材831の構造について詳細に説明し、第2中間連結部材832の構造の説明は、適宜省略する。
【0075】
第1中間連結部材831の上端は、剛性部材7に固定されている。第1中間連結部材831の左右方向に対する固定位置は、第1上側連結部材811の固定位置と同じである。第1中間連結部材831は、剛性部材7から真下に延びた後、右の斜め下方へ折れ曲がる。そして、第1中間連結部材831は、再び真下を向くように折れ曲がって、基部69の下端に設けられた第3取付部691に至る。第3取付部691と第1取付部231との左右方向の位置は、ほぼ同じ位置である。また、第2中間連結部材832は、剛性部材7から真下に延びた後、左の斜め下方へ折れ曲がり、再び真下を向くように折れ曲がって、基部69の下端に設けられた第4取付部692に至る。第4取付部692と第2取付部232との左右方向の位置は、ほぼ同じ位置である。
【0076】
中間連結部材83は、基部69と剛性部材7とを含む受圧部材4の剛性を高めると共に、ランバーサポート40を支持する。
【0077】
ランバーサポート40は、受圧部材4の後側に位置しかつ、受圧部材4を介して乗員9の腰部を支持する。ランバーサポート40は、後ろから見て略V字状である。ランバーサポート40の右側部及び左側部のそれぞれが、第1中間連結部材831及び第2中間連結部材832に係合している。ランバーサポート40は、第1中間連結部材831及び第2中間連結部材832に沿って、上下方向に位置を変えることができる。ランバーサポート40は、乗員9の体格に応じて位置を変えることにより、乗員9の腰部を適切に支持できる。ランバーサポート40は、
図6に示すように、上限ULから下限LLまでの間を昇降する。上限ULは、ランバーサポート40と剛性部材7とが干渉する位置である。下限LLは、第1中間連結部材831及び第2中間連結部材832が折れ曲がる位置である。上方に膨出した固定部68は、上限ULをより上方位置に位置づける。固定部68は、ランバーサポート40の昇降範囲を拡大させる。
【0078】
ランバーサポート40の下方には、電気モータを含むギヤボックス41が位置している。電気モータは、ランバーサポート40を昇降させるための駆動源である。ギヤボックス41は、ウォームギヤ42を有している。ウォームギヤ42は、ギヤボックス41から真上に延びている。ウォームギヤ42の上端は、ランバーサポート40の下端中央部に固定されている。電気モータが回転すると、ウォームギヤ42と共にランバーサポート40が昇降する。乗員は、スイッチ操作によってランバーサポート40を昇降できる。
【0079】
(乗員の背の支持と乗員への違和感の軽減とを両立させるシートバック構造)
前述したように、受圧部材4は、連結部材8を介してフレーム2に取り付けられている。受圧部材4は、乗員9の背からの荷重を受け止めて、乗員9の背を支える。
【0080】
受圧部材4は、本体6と、剛性部材7と、を有している。剛性部材7は、乗員9の胸郭91に対応する位置において本体6の後側に固定されている。剛性部材7はまた、シートバック11の幅方向に延びかつ、幅方向に位置が異なる複数箇所が、連結部材8によって、フレーム2に連結されている。本体6は、剛性部材7を介してフレーム2に連結されるから、受圧部材4は、乗員9の背をしっかりと支えることができる。例えば車両の後突時において、受圧部材4は、衝撃荷重を受けた乗員9の背を支えることができる。尚、前述したように、後突時に受圧部材4は、連結部材8の弾性変形により、後方へ移動できる。
【0081】
一方で、車両の通常走行時には、乗員9の背からの荷重は、相対的に低剛性である受圧部材4の本体6によって受け止められる。乗員9の背に対する反力が強くなりすぎることが抑制されて、乗員9への違和感が軽減される。
【0082】
よって、前記の車両用シートバック11は、乗員9の背の確実な支持と、乗員9への違和感の軽減とが両立できる。
【0083】
また、基部69と側片60とを有する本体6において、本体6の中央部、つまり基部69は相対的に剛性が高く、両側部、つまり側片60は相対的に剛性が低い。剛性部材7と連結部材8との接続箇所は、基部69の位置に対応する中央側でありかつ、剛性部材7は、剛性部材7と連結部材8との接続箇所よりも中央側において基部69に固定されている。これにより受圧部材4は、車両の通常走行時には、乗員9の背の中央側をしっかりと支持することができる。
【0084】
また、剛性部材7が幅方向に長く伸びているため、本体6を通じて入力される乗員9からの荷重を分散させることができる。このことによっても、受圧部材4は、乗員9の背をしっかりと支えることができる。
【0085】
剛性部材7の両側部は、金属棒71の埋め込みによって、相対的に剛性が高く、中央部は相対的に低剛性である。乗員9の背からの荷重は、相対的に低剛性の剛性部材7の中央部へ入力される。剛性部材7の剛性が長手方向に異なることによって、剛性部材7は、荷重入力時に中央部と両側部とが互いに逆方向に変位する。つまり、中央部が後へ変位すると、両側部は前へ変位し、中央部が前へ変位すると、両側部は後へ変位することによって、剛性部材7は荷重を受け止めることができる。受圧部材4は、乗員9の背をしっかりと支えることができる。
【0086】
また、基部69の固定部68が、側片60の位置よりも上方に位置しているため、本体6の上端部分に固定される剛性部材7は、受圧部材4を強固に支持できる。
【0087】
(乗り心地を悪化させずに、旋回時の乗員の姿勢の変化を抑制するシートバック構造)
図8に示すように、パッド3は、補強低下部321を有している。補強低下部321は、発泡部材31の後面に貼り付けられた補強部材32の補強を低下させる。
図8の補強低下部321は、補強部材32に形成された切り欠きである。
【0088】
補強低下部321は、
図2に示すように、シートバック11の面に直交する方向から見て、左右両側の第1側片61それぞれと重なる位置に、位置している。この位置は、
図5に示すように、乗員9の胸郭91の下部に対応する位置である。二つの補強低下部321は、シートバック11の中心線に対して対称に位置している。
【0089】
補強低下部321は、図例において、後面視で略1/4円形状を有している。尚、補強低下部321の形状は、図例に限定されない。補強低下部321は、後面視で多角形状であってもよいし、円又は楕円形状であってもよい。
【0090】
前述したように、受圧部材4の本体6の基部69は、シートバック11の幅方向の中央部に位置して、乗員9の背の中央部を支持する。各側片61~67は、基部69の両側それぞれに位置して、乗員9の背の両側それぞれを支持する。
【0091】
車両の直進時、受圧部材4は、乗員9の背の全体からの荷重を、パッド3を介して受ける。パッド3は、前述したように、発泡部材31と補強部材32とを有している。乗員9の背からの荷重は、補強部材32によって補強された発泡部材31が圧縮変形をしつつ、受圧部材4の、主に基部69によって受け止められる。パッド3及び受圧部材4は、広い面の全体で乗員9の背からの荷重を受ける。このため、車両の直進時、シートバック11は、乗員の背に強い反力を与えないで乗り心地を悪化させずに、乗員9の背をしっかりと支持できる。
【0092】
車両の旋回時、乗員9、つまり、ドライバー又はパッセンジャーの姿勢は、胸郭91が脊柱を中心に回転する方向、及び/又は、胸郭91が左右に傾く方向へ、変化しようとする。この乗員9の姿勢の変化に伴い、乗員9の背の側部から局所的に、シートバック11に荷重が入力される。
【0093】
乗員9の背の側部からの局所的な荷重は、胸郭91に対応する補強低下部321の位置において、パッド3に入力される。局所荷重の入力初期時に、補強低下部321の箇所において発泡部材3はが大きく圧縮変形する。これにより、局所荷重の入力初期時に、乗員9に強い反力が作用することが抑制される。
【0094】
発泡部材31の圧縮変形後、乗員9の背の側部からの局所荷重は、受圧部材4の、主に第1側片61によって荷重が受け止められる。そうして、受圧部材4からパッド3を通じて乗員9の背の側部に反力が作用する。これにより、乗員9の姿勢の変化が抑制される。
【0095】
このため、このシートバック11は、車両の旋回時に、乗員9に対する強い反力を抑制しつつ、乗員9の背をしっかりと支持して姿勢の変化を抑制できる。
【0096】
一方、補強低下部321は、パッド3における特定の箇所に、部分的に設けられている。車両の直進時のような、乗員9の背の全体からシートバック11に荷重が入力される場合、補強低下部321は実質的に機能しない。シートバック11は、車両の直進時の乗り心地を悪化させない。
【0097】
よって、シートバック11は、直進時及び旋回時における乗り心地を悪化させずに、旋回時の乗員9の姿勢の変化を抑制できる。
【0098】
また、補強低下部321は、幅方向について、シートバック11の中心線を挟んだ両側のそれぞれに位置している。つまり、補強低下部321は、乗員9の背の右側及び左側のそれぞれに位置している。右旋回時及び左旋回時のそれぞれにおいて、シートバック11は、乗員9の姿勢の変化を抑制できる。
【0099】
また、補強低下部321と位置が重なる第1側片61は、第2側片62よりも剛性が高い。高剛性の第1側片61は、乗員9の背の側部に対して十分な反力を与えることができる。その結果、車両の旋回時に、乗員9の姿勢の変化を抑制できる。
【0100】
また、補強低下部321が、乗員9の胸郭91の後方に位置していることにより、受圧部材4の第1側片61は、車両の旋回時に変位しようとする胸郭91に対して反力を与えることができる。シートバック11は、乗員9の姿勢の変化を、効果的に抑制できる。
【0101】
各側片61~67が、基部69から幅方向の外方の前方へ延びているため、第1側片61は、乗員9の背の側部から乗員9の体側にかけての部位に反力を与えることができる。シートバック11は、胸郭91が回転する方向、及び/又は、胸郭91が左右に傾く方向への、乗員9の姿勢の変化を、効果的に抑制できる。
【0102】
また、補強部材32としての不織布が発泡部材31の圧縮量をコントロールすることによって、車両用シートバック11は、乗員9の背を適切に支えて乗り心地を向上させる。不織布に形成された補強低下部321としての切り欠きは、発泡部材31の後面を拘束しないため、乗員9の背からの局所荷重が入力された際の反力を低減させる。その結果、補強低下部321は、前述の通り、車両旋回時の局所的な荷重入力に対して、初期は乗員9の背に対する反力を低減し、その後、受圧部材4の、主に第1側片61は、乗員9の背に対して十分な反力を与えることができ、乗員9の姿勢の変化を抑制できる。
【0103】
尚、補強低下部321は、切り欠きに限らず、例えば
図9に例示するような、補強部材32に形成された切れ目でもよい。尚、
図9の切れ目は、横に倒したU字状であるが、切れ目は、例えばL字状でもよい。切れ目も切り欠きと同様に、補強部材32による発泡部材31の後面の拘束を解除する。従って、前述の通り、車両旋回時の局所的な荷重入力に対して、初期は乗員9の背に対する反力を低減し、その後、受圧部材4の、主に側片60によって、乗員9の背に対して十分な反力を与えることができ、乗員9の姿勢の変化を抑制できる。
【符号の説明】
【0104】
1 車両用シートバック
2 フレーム(シートバックフレーム)
3 パッド
31 発泡部材
32 補強部材
321 補強低下部
4 受圧部材
51 エアバッグ
6 本体
60 側片
61 第1側片(特定側片)
68 固定部
69 基部
7 剛性部材
8 連結部材
9 乗員
91 胸郭