(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-13
(45)【発行日】2026-01-21
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20260114BHJP
C08L 23/26 20250101ALI20260114BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20260114BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20260114BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20260114BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
C08K5/13
C08K5/17
C08K5/49
(21)【出願番号】P 2022543962
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2021030077
(87)【国際公開番号】W WO2022039170
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2020137667
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 英之
(72)【発明者】
【氏名】福井 康治
(72)【発明者】
【氏名】堀池 勇馬
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/116773(WO,A1)
【文献】特開2019-023486(JP,A)
【文献】特開2020-158643(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117072(WO,A1)
【文献】特開2019-196449(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド樹脂(A)52~88質量%、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)5~25質量%、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)20質量%以下、並びに一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)の合計0.05~3.0質量%を含むポリアミド樹脂組成物であって、
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)について、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2,160gで測定したMFRが1.0g/10分を超えて5.0g/10分未満であり、
ポリアミド樹脂組成物が二次酸化防止剤(E)を一次酸化防止剤(D)より多く含
み、
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)の官能基が、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基及びエポキシ基からなる群より選択され、
一次酸化防止剤(D)がフェノール系化合物及びアミン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、二次酸化防止剤(E)がリン系化合物である、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)について、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2,160gで測定したMFRが1.0g/10分を超えて3.0g/10分以下である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)について、JIS K 6920に準拠して、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が2.2~2.8である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド樹脂(A)60~88質量%を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)6~22質量%を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)5~20質量%を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
ポリアミド樹脂組成物100質量%中の一次酸化防止剤(D)の含有率は、0.02質量%以上1.5質量%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
ポリアミド樹脂組成物100質量%中の二次酸化防止剤(E)の含有率は、0.03質量%以上2.98質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
ISO 178に準拠して得られた曲げ弾性率(23℃50%RH)が1,000~2,000MPa、かつ、曲げ強さ(23℃50%RH)が50~80MPaである、請求項1~
8のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
ISO 179-1/1eAに準拠して得られたシャルピー衝撃強さ(ノッチあり、23℃50%RH)が20kJ/m
2以上である、請求項1~
9のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
ISO 179-1/1eAに準拠して得られたシャルピー衝撃強さ(ノッチあり、23℃50%RH)が45kJ/m
2以上である、請求項1~1
0のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項12】
高圧ガスと接触する成形品用である、請求項1~1
1のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、ガスバリア性に優れた樹脂として知られており、各種用途としてガスバリア性を有するポリアミド樹脂組成物が求められている。
【0003】
そのようなポリアミド樹脂組成物として、ポリアミド樹脂、変性ポリオレフィン樹脂及び未変性ポリオレフィン樹脂を所定の割合で含有し、所定の物性を有するポリアミド樹脂組成物が提案されており、バリア性、耐衝撃性に優れたブロー成形品を生産性よく得ることができることが示されている(例えば、特許文献1を参照)。また、相対粘度ηrが2.60未満の脂肪族ポリアミド樹脂、密度が0.895g/cm3以下の変性ポリオレフィン、及びMFR値が3.0~30g/10minの未変性ポリオレフィンを所定の割合で含むポリアミド樹脂組成物が提案されており、低温耐衝撃性と表面性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供できることが示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-88661号公報
【文献】国際公開第2019/54109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載されたポリアミド樹脂組成物の成形品は、優れたガスバリア性及び一定の耐衝撃性を示すものの、さらに優れた耐衝撃性を有する成形品が求められている。特に、高圧ガスと接触する成形品の用途では、高圧ガスに耐え得る、優れた機械的強度及び耐衝撃性を有する成形品が求められている。
【0006】
本発明は、成形品とした場合に優れた機械的強度及び耐衝撃性を有する、ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[14]に関する。
[1]ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド樹脂(A)52~88質量%、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)5~25質量%、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)20質量%以下、並びに一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)の合計0.05~3.0質量%を含むポリアミド樹脂組成物であって、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)について、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2,160gで測定したMFRが1.0g/10分を超えて5.0g/10分未満であり、ポリアミド樹脂組成物が二次酸化防止剤(E)を一次酸化防止剤(D)より多く含む、ポリアミド樹脂組成物。
[2]官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)について、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2,160gで測定したMFRが1.0g/10分を超えて3.0g/10分以下である、[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]脂肪族ポリアミド樹脂(A)について、JIS K 6920に準拠して、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が2.2~2.8である、[1]又は[2]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド樹脂(A)60~88質量%を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[5]ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)6~22質量%を含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[6]ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)5~20質量%を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[7]ポリアミド樹脂組成物100質量%中の一次酸化防止剤(D)の含有率は、0.02質量%以上1.5質量%未満である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[8]ポリアミド樹脂組成物100質量%中の二次酸化防止剤(E)の含有率は、0.03質量%以上2.98質量%以下である、[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[9]一次酸化防止剤(D)が、フェノール系化合物及びアミン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[10]二次酸化防止剤(E)が、リン系化合物及び硫黄系化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[9]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[11]ISO 178に準拠して得られた曲げ弾性率(23℃50%RH)が1,000~2,000MPa、かつ、曲げ強さ(23℃50%RH)が50~80MPaである、[1]~[10]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[12]ISO 179-1/1eAに準拠して得られたシャルピー衝撃強さ(ノッチあり、23℃50%RH)が20kJ/m2以上である、[1]~[11]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[13]ISO 179-1/1eAに準拠して得られたシャルピー衝撃強さ(ノッチあり、23℃50%RH)が45kJ/m2以上である、[1]~[12]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
[14]高圧ガスと接触する成形品用である、[1]~[13]のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形品とした場合に優れた機械的強度及び耐衝撃性を有する、ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、ポリアミド樹脂について規定される相対粘度は、JIS K 6920に準拠して、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定された値を意味する。
【0010】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド樹脂(A)52~88質量%、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)5~25質量%、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)20質量%以下、並びに一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)の合計0.05~3.0質量%を含み;官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)について、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2,160gで測定したMFRが1.0g/10分を超えて5.0g/10分未満であり;ポリアミド樹脂組成物が二次酸化防止剤(E)を一次酸化防止剤(D)より多く含む。本発明により、成形品とした場合に優れた機械的強度及び耐衝撃性を有する、ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【0011】
<脂肪族ポリアミド樹脂(A)>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び/又は脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を含む。
【0012】
(脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1))
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種単独であるポリアミド樹脂を意味する。脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、1種類のラクタム及び当該ラクタムの加水分解物であるアミノカルボン酸の少なくとも一方からなるものであってもよく、1種類の脂肪族ジアミンと1種類の脂肪族ジカルボン酸との組合せからなるものであってもよい。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組合せである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0013】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)としては、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸からなる脂肪族ホモポリアミド樹脂、ラクタム又はアミノカルボン酸からなる脂肪族ホモポリアミド樹脂等を挙げることができる。
【0014】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)を構成するモノマー成分としては、炭素数2~20、好ましくは炭素数4~12の脂肪族ジアミンと、炭素数2~20、好ましくは炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸の組合せ、炭素数4~12のラクタム又はアミノカルボン酸等を挙げることができる。
【0015】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等が挙げられる。
【0016】
脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せとして、テトラメチレンジアミンとセバシン酸の組み合わせ、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸の組合せ等が挙げられ、これらの組合せの等モル塩が好ましく用いられる。
【0017】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。ラクタムは、生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム又はドデカンラクタムであることが好ましい。また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。アミノカルボン酸は、生産性の観点から、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸又は12-アミノドデカン酸が好ましい。
【0018】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)として具体的には、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンデカミド(ポリアミド410)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリアミド122等が挙げられる。
【0019】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、生産性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド410、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、ポリアミド6及び/又はポリアミド66であることが特に好ましい。
【0020】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0021】
(脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2))
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、2種以上の組合せであるポリアミド樹脂を意味する。脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上の共重合体である。ここで、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せは、1種類の脂肪族ジアミンと1種類の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種類のモノマー成分とみなす。
【0022】
脂肪族ジアミンとしては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0023】
脂肪族ジカルボン酸としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0024】
ラクタムとしては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。また、アミノカルボン酸としては脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0025】
これらの脂肪族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、ラクタム及びアミノカルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)として具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)等が挙げられる。生産性の観点から、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)及びカプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0027】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0028】
(脂肪族ポリアミド樹脂(A)の物性及び含有量)
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、JIS K 6920に準拠して、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が1.5~5.0であると、ポリアミド樹脂組成物の機械的特性及び成形性の観点から好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、より好ましくは2.0~4.5、より好ましくは2.1~3.9、より好ましくは2.1~3.3、さらに好ましくは2.2~2.8、特に好ましくは2.3~2.6である。
【0029】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、相対粘度が異なる2種以上のポリアミド樹脂を含む場合、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度としてもよい。
【0030】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ中和滴定で求められる末端アミノ基濃度として、30μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上110μmol/g以下の範囲がより好ましく、30μmol/g以上70μmol/g以下の範囲が特に好ましい。前記範囲であると、ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好である。
【0031】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、末端アミノ基濃度の異なる2種以上のポリアミド樹脂を含む場合、脂肪族ポリアミド樹脂(A)における末端アミノ基濃度は、上記中和摘定で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とその混合比が判明している場合、それぞれの末端アミノ基濃度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度としてもよい。
【0032】
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド樹脂(A)を52~88質量%含む。脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量が前記範囲であると、機械的特性及び成形性に優れたポリアミド樹脂組成物とすることができる。脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、60~88質量%であることが好ましく、65~88質量%であることがより好ましく、70~88質量%であることがさらに好ましく、70~80質量%であることが特に好ましい。
【0033】
(ポリアミド樹脂の製造)
ポリアミド樹脂の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合、固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧等の操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0034】
<官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)>
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)は、ポリアミド樹脂組成物に機械的強度及び耐衝撃性を付与する成分である。官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)は、ASTM D-790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基をその分子中に含むため、ポリアミド樹脂のアミノ基と官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂の官能基との反応により、ポリアミド樹脂組成物を成形品とした際の耐衝撃性が向上する。本発明者らは、ポリアミド樹脂組成物に官能基含有オレフィン単独重合体を配合した場合、該組成物から得られる成形品のシャルピー衝撃強さが不十分であることを見出した。そして、鋭意検討した結果、官能基含有オレフィン単独重合体の代わりに、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)を配合することにより、ポリアミド樹脂組成物を成形品とした際のシャルピー衝撃強さが大きく向上することを見出した。
【0035】
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)の官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。脂肪族ポリアミド樹脂(A)のアミノ基とこれらの官能基との少なくとも一部が反応すると考えられる。
【0036】
共重合ポリオレフィン樹脂に、これらの官能基を導入する方法としては、(i)共重合ポリオレフィン樹脂の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により、共重合ポリオレフィン樹脂の分子鎖又は分子末端に官能基を導入する方法、(iii)前記官能基とグラフト化が可能な官能基とを有する化合物(グラフト化合物)を共重合ポリオレフィン樹脂にグラフトさせる方法等が挙げられる。これらの導入方法は、単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0037】
これらの官能基を有する共重合可能な単量体、前記グラフト化合物等の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの中で、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び/又は無水シトラコン酸が好ましい。
【0038】
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)における官能基の含有量は、官能基のモル数(μmol)/(B)の質量(g)として、25μmol/g超過150μmol/g未満であることが好ましく、35μmol/g以上125μmol未満がより好ましく、40μmol/g以上110μmol/g以下が特に好ましい。官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)の官能基の含有量は、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基を有する場合には、トルエン及びエタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定される。
【0039】
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)としては、前記の官能基を含有する(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等を挙げることができる。これらの共重合体において、エチレン及び/又はプロピレン単位の含有量は、10モル%以上90モル%以下であることが好ましく、20モル%以上80モル%以下であることがより好ましい。
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)は、それぞれ1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)としては、前記官能基を含有するエチレン/α-オレフィン系共重合体が好ましい。
【0040】
(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとを共重合した重合体及び/又はプロピレンと炭素数4以上のα-オレフィンとを共重合した重合体である。
炭素数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、 4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中でも、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体としては、エチレン/1-ブテン共重合体が特に好ましい。
【0041】
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0042】
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体とを共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これらα,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0043】
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、カルボキシル基及び/又はカルボン酸エステル基を有するため、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)である。(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体が、さらに上述の官能基を含む化合物によりカルボキシル基及びカルボン酸エステル基以外の官能基が導入されていた場合であっても、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)であるとする。
【0044】
成形品とした場合の機械的強度及び耐衝撃性の観点から、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸又は無水シトラコン酸が導入されたエチレン/α-オレフィン系共重合体がより好ましく、無水マレイン酸が導入されたエチレン/α-オレフィン系共重合体がさらに好ましく、無水マレイン酸が導入されたエチレン/1-ブテン共重合体が特に好ましい。
【0045】
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)は、ポリアミド樹脂組成物の機能及び特性を損なわない範囲において、官能基非含有共重合ポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
【0046】
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)は、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2,160gで測定したMFRが、1.0g/10分を超えて5.0g/10分未満である。官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)のMFRを上記範囲とすることにより、成形品としたときに、剛直性と柔軟性のバランスが良好であり、耐衝撃性に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)の前記方法で測定したMFRは、好ましくは1.0超~3.0g/10分、特に好ましくは1.0超~2.5g/10分である。
【0047】
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)を5~25質量%含む。官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)の含有量が前記範囲であると、耐衝撃性に優れたポリアミド樹脂組成物とすることができる。官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、5~24質量%であることが好ましく、6~22質量%であることがより好ましく、6~12質量%であることが特に好ましい。
【0048】
<官能基非含有オレフィン単独重合体(C)>
ポリアミド樹脂組成物は、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)を含有することができる。官能基非含有オレフィン単独重合体(C)を含有させることにより、ポリアミド樹脂組成物の流動性及び成形性を向上させることができる。なお、単独重合体とは、1種類の単量体の重合により得られる重合体のことである。
【0049】
官能基非含有オレフィン単独重合体(C)におけるオレフィンとしては、エチレン及び炭素数3以上のα-オレフィン等を例示することができる。炭素数3以上のα-オレフィンとしては、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)で例示したものを挙げることができる。これらの中でも、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)としては、エチレン単独重合体及びプロピレン単独重合体が好ましく、エチレン単独重合体がより好ましい。エチレン単独重合体としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。官能基非含有オレフィン単独重合体(C)は、要求される性能、使用される用途や成形方法に応じて、適宜、選択することができる。
【0050】
官能基非含有オレフィン単独重合体(C)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0051】
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)を20質量%以下含み、好ましくは5~20質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。官能基非含有オレフィン単独重合体(C)の含有量が前記範囲であると、流動性や成形性に優れたポリアミド樹脂組成物とすることができる。
【0052】
<一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)>
ポリアミド樹脂組成物は、一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)の合計0.05~3.0質量%を含む。一般的に、樹脂(R)が酸素、熱、光等に晒されると、フリーラジカルを生成し、これはさらに酸素と反応してパーオキシラジカル(ROO・)を生成する。このパーオキシラジカルは、活性が非常に高く、他の有機物から水素を引き抜きハイドロパーオキサイドとなり、新たなフリーラジカルを生成し、連鎖反応(自動酸化)することにより、樹脂の劣化を促進する。本発明においては、このような樹脂の劣化を防止するために一次酸化防止剤と二次酸化防止剤とを併用し、またその量比を特定した。一次酸化防止剤(D)とは、酸素、熱、光等の作用により発生したフリーラジカルを捕捉し、自動酸化の防止作用を有する化合物を指し、二次酸化防止剤(E)とは、ハイドロパーオキサイドを無害な化合物に分解する作用を有する化合物を指す。
一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)は、それぞれ1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0053】
一次酸化防止剤(D)は、パーオキシラジカル捕捉の観点から、フェノール系化合物及びアミン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であると好ましく、フェノール系化合物であるとより好ましく、水酸基のオルト位にt-ブチル基等の嵩高い置換基を有するヒドロキシフェニル基を少なくとも1つ有する化合物であるとさらに好ましく、前記ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物であると特に好ましい。
【0054】
フェノール系化合物として具体的には、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)(Irganox(登録商標)1098、BASFジャパン株式会社製;SONGNOX(登録商標)1098、ソンウォン・インダストリアル株式会社製)、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート](Irganox(登録商標)1010;BASFジャパン株式会社製)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート](Irganox(登録商標)245;BASFジャパン株式会社製)、3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザー(登録商標)GA-80;住友化学株式会社製)を挙げることができる。
【0055】
アミン系化合物として具体的には、N-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、アルドール-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミンとアセトンとの反応物、p-イソプロポキシジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンとの反応生成物、ジフェニルアミンとジイソブチレンとの反応生成物、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-ドデシル-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンを挙げることができる。
【0056】
二次酸化防止剤(E)は、パーオキサイドの分解やパーオキシラジカルを安定化させる観点で、リン系化合物及び硫黄系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であると好ましく、リン系化合物であるとより好ましく、トリアリールオキシホスフィン系化合物であるとさらに好ましく、ベンゼン環に結合した酸素原子のオルト位にt-ブチル基等の嵩高い置換基を有するトリフェニルオキシホスフィン系化合物であると特に好ましい。
【0057】
リン系化合物として具体的には、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos168(登録商標)、BASFジャパン株式会社製;SONGNOX(登録商標)1680、ソンウォン・インダストリアル株式会社製)、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエルスリトールジホスファイト(アデカスタブ(登録商標)PEP-36;株式会社ADEKA製)、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-4,4-ビフィニルジホスフィンを主成分とするビフィニル、三塩化リン及び2,4-ジ-tert-ブチルフェノールの反応生成物(Hostanox(登録商標)P-EPQ P;クラリアントジャパン株式会社製)を挙げることができる。
【0058】
硫黄系化合物として具体的には、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート(Irganox(登録商標)PS802;BASFジャパン株式会社製)、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(スミライザー(登録商標)TP-D;住友化学株式会社製)、ジドデシル(3,3’-チオジプロピオネート)(Irganox(登録商標)PS800;BASFジャパン株式会社製)等のチオエーテル系化合物を挙げることができる。
【0059】
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)の合計0.05~3.0質量%を含む。一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)の合計含有量が前記範囲であると、酸化劣化が防止され、機械的強度に優れた成形品を与えるポリアミド樹脂組成物とすることができる。一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)の合計含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、0.10~2.5質量%であることが好ましく、0.15~2.0質量%であることがより好ましく、0.20~1.5質量%であることが特に好ましい。
【0060】
ポリアミド樹脂組成物は、二次酸化防止剤(E)を一次酸化防止剤(D)より多く含む。二次酸化防止剤(E)を一次酸化防止剤(D)より多く含有させることにより、一次酸化防止剤(D)が生成させたハイドロパーオキサイドを十分に安定化させることができ、ひいてはポリアミド樹脂組成物から得られる成形品の着色及び酸化劣化による機械的強度の低下を抑制することができる。一次酸化防止剤(D)と二次酸化防止剤(E)の含有比率は、ポリアミド樹脂組成物の着色抑制と酸化防止効果とのバランスの観点から、一次酸化防止剤(D)に対して、二次酸化防止剤(E)が1倍質量超5倍質量以下であることが好ましく、1.2倍質量超4倍質量以下であることがより好ましく、1.5倍質量超3倍質量以下であることが特に好ましい。
【0061】
一次酸化防止剤(D)の含有率は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、0.02質量%以上1.5質量%未満であることが好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましく、0.10質量%以上0.50質量%以下であることが特に好ましい。
二次酸化防止剤(E)の含有率は、ポリアミド樹脂組成物100質量中に、0.03質量%以上2.98質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以上1.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
<他の成分>
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含むことができる。他の成分としては、脂肪族ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂、例えば、脂環族又は芳香族の基を主鎖又は側鎖に有するポリアミド樹脂、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)及び官能基非含有オレフィン単独重合体(C)以外の樹脂、可塑剤、一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)以外の酸化防止剤、例えば無機系酸化防止剤、有機繊維、無機繊維等の強化剤、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等の機能性付与剤等が挙げられる。なお、他の成分は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)、一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)ではない。
【0063】
ポリアミド樹脂組成物は、成形品の用途に応じて他の成分として結晶核剤を含んでいてもよい。結晶核剤には無機核剤と有機核剤がある。無機核剤の例としては、タルク、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、水酸化アルミニウム、ドロマイト、カオリン、シリカ、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等が挙げられる。これらの中でも、高圧ガスタンクの材料として使用する場合には、ポリアミド樹脂組成物の結晶化度を向上させ、ガス透過性を抑制する観点から、タルクが好ましい。
有機核剤の例としては、脂肪族ポリアミド樹脂(A)より融点の高い熱可塑性樹脂、脂肪酸金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー等が挙げられる。
【0064】
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。
脂肪族ポリアミド樹脂(A)と、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)と、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)と、一次酸化防止剤(D)と、二次酸化防止剤(E)と、任意の他の成分とを混合して使用する際には、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロール等通常公知の溶融混練機が用いられる。例えば、二軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法等、いずれの方法を用いてもよい。
【0065】
[ポリアミド樹脂組成物の物性]
ポリアミド樹脂組成物は、ISO 178に準拠して得られた曲げ弾性率(23℃50%RH)が1,000~2,000MPa、かつ、曲げ強さ(23℃50%RH)が50~80MPaであると好ましい。曲げ弾性率及び曲げ強さが上記範囲であると、成形品とした場合に剛直性と柔軟性のバランスが良好となり、成形品の内外からの圧力に対する耐性が得られるため、ポリアミド樹脂組成物は、特に高圧ガスと接触する成形品の用途に好適に使用することができる。曲げ弾性率が1,000MPa未満又は曲げ強さが50MPa未満であると、成形品の破壊が起こりやすくなる傾向がある。曲げ弾性率が2,000MPa超又は曲げ強さが80MPa超であると、成形品の更なる加工が困難となりやすく、また、成形品の柔軟性に劣り、却って耐衝撃性に劣りやすくなる傾向がある。曲げ弾性率は、1,200~2,000MPaであることがより好ましく、1,400~2,000MPaであることがさらに好ましく、1,400~1,900MPaであることがさらに好ましく、1,400~1,700MPaであることがさらに好ましく、1,400~1,600MPaであることが特に好ましい。曲げ強さは、50~79MPaであることがより好ましく、55~78MPaであることがさらに好ましく、60~75MPaであることが特に好ましい。
【0066】
ポリアミド樹脂組成物は、ISO 179-1/1eAに準拠して得られたシャルピー衝撃強さ(ノッチあり、23℃50%RH)が20kJ/m2以上であると好ましい。シャルピー衝撃強さが上記範囲であると、成形品とした場合に耐衝撃性が良好となり、高圧ガスと接触する成形品の用途に好適に使用することができる。シャルピー衝撃強さは、45kJ/m2以上であることがより好ましく、60kJ/m2以上であることがさらに好ましく、80kJ/m2以上であることが特に好ましい。シャルピー衝撃強さの上限は、特に限定されないが、通常150kJ/m2以下である。
【0067】
[ポリアミド樹脂組成物の用途]
ポリアミド樹脂組成物は、特に制限されず、公知の方法を利用する成形品の製造に用いることができる。具体的には、ポリアミド樹脂組成物は、プレス成形、ブロー成形、押出成形、射出成形、回転成形等による成形品の製造に用いることができ、特に、射出成形による成形品の製造に好適に用いることができる。
【0068】
ポリアミド樹脂組成物は、成形品とした場合に、剛直性と柔軟性のバランスが良好であり、ガスバリア性及び耐衝撃性に優れるため、高圧ガス、具体的には常用の温度で圧力が1Mpa以上となる圧縮ガスと接触する成形品、例えば、高圧ガスに接するタンク、チューブ、ホース、フィルム等に好適に用いられる。前記ガスの種類としては、特に制限されず、水素、窒素、酸素、ヘリウム、メタン、ブタン、プロパン、天然ガス等が挙げられ、極性の小さいガスが好ましく、水素、窒素、メタンが特に好ましい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0070】
[使用材料]
1.脂肪族ポリアミド樹脂(A)
ポリアミド6(宇部興産株式会社製、JIS K 6920に準拠して、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定された相対粘度=2.64)
ポリアミド6(宇部興産株式会社製、JIS K 6920に準拠して、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定された相対粘度=2.47)
【0071】
2.官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B):1.0g/10分 < MFR(230℃、荷重2,160g) < 5.0g/10分
無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)MH5020、MFR(230℃、荷重2,160g):1.2g/10分)
無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)MH5020C、MFR(230℃、荷重2,160g):1.2g/10分)
【0072】
2’.官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)以外の官能基含有ポリオレフィン樹脂(B’)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、ZP 648、MFR(230℃、荷重2,160g):55g/10分)
無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)MA8510、MFR(230℃、荷重2,160g):5.0g/10分)
【0073】
3.官能基非含有オレフィン単独重合体(C)
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、エボリュー(登録商標)SP0540)
【0074】
3’.官能基非含有共重合ポリオレフィン樹脂(C’)
エチレン-プロピレン共重合体(住友化学株式会社製、エスプレン(登録商標)SP0 V0132)
エチレン-1-ブテン共重合体(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)TX610)
【0075】
4.一次酸化防止剤(D)
フェノール系化合物:N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)(Irganox(登録商標)1098;BASFジャパン株式会社製)
フェノール系化合物:N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)(SONGNOX(登録商標)1098;ソンウォン・インダストリアル株式会社製)
【0076】
5.二次酸化防止剤(E)
リン系化合物:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(SONGNOX(登録商標)1680;ソンウォン・インダストリアル株式会社製)
リン系化合物:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168;BASFジャパン株式会社製)
【0077】
実施例1~8及び比較例1~5
表1に記載した各成分を、下記溶融混錬条件で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物のペレットを作製した。なお、表1中の組成の単位は質量%であり、ポリアミド樹脂組成物全体を100質量%とする。
<溶融混錬条件>
ZSK32mc二軸押出機(Coperion社製)を使用
シリンダー径:32mm
L/D:48
スクリュー回転数:250rpm
【0078】
[評価方法]
1.MFR(230℃、荷重2,160g)
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)及びそれ以外の官能基含有ポリオレフィン樹脂(B’)について、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2,160gの条件でMFRを測定した。
【0079】
2.曲げ弾性率及び曲げ強さ
実施例1~8及び比較例1~5のペレットをそれぞれ用い、下記射出成形条件で、厚さ4mmのISO Type-B試験片を作製した。
<射出成形条件>
シリンダー温度:250℃
金型温度:80℃
金型内平均射出速度:200mm/sec
冷却時間:20秒
【0080】
このようにして得た試験片を用い、ISO 178に準拠して、23℃50%RH条件下で、曲げ弾性率及び曲げ強さを測定した。測定装置は、全自動プラスチック曲げ試験機 AG-Xplus型(株式会社島津製作所製)を用いた。曲げ弾性率が1,000~2,000MPa、かつ、曲げ強さが50~80MPaである場合、成形体は剛直性と柔軟性のバランスが良好であると判断した。
【0081】
3.シャルピー衝撃強さ
実施例1~8及び比較例1~5のペレットをそれぞれ用い、下記射出成形条件で、厚さ4mmのISO Type-B試験片を作製した。
<射出成形条件>
シリンダー温度:250℃
金型温度:80℃
金型内平均射出速度:200mm/sec
冷却時間:20秒
【0082】
このようにして得た試験片を用い、ISO 179-1/1eAに準拠して、23℃50%RH条件下で、シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)を測定した。測定装置は、141-PC型(株式会社安田精機製作所製)を用いた。シャルピー衝撃強さが20kJ/m2以上である場合、成形体の耐衝撃性は良好であり、45kJ/m2以上である場合、成形体の耐衝撃性が特に優れていると判断した。
【0083】
【0084】
表1から、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド樹脂(A)52~88質量%、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)5~25質量%、官能基非含有オレフィン単独重合体(C)20質量%以下、並びに一次酸化防止剤(D)及び二次酸化防止剤(E)の合計0.05~3.0質量%を含み、官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)のMFRが1.0g/10分を超えて5.0g/10分未満であり、二次酸化防止剤(E)を一次酸化防止剤(D)より多く含む、実施例1~8のポリアミド樹脂組成物は、成形品の曲げ弾性率及び曲げ強さがそれぞれ1,000~2,000MPa及び50~80MPaであり、剛直性と柔軟性のバランスが良好であり、また、良好な耐衝撃性を有しているため、高圧ガスと接触する成形品として好適に使用できる。実施例のポリアミド樹脂組成物は、一次酸化防止剤(D)と二次酸化防止剤(E)を併用しているため、酸化劣化による機械的強度の低下を防止できる。
【0085】
官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂(B)の代わりにMFRが5.0g/10分以上である無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を配合した比較例1~4のポリアミド樹脂組成物は、成形品の曲げ弾性率及び曲げ強さがそれぞれ2,000MPa及び80MPaを超えており、柔軟性に劣り、またシャルピー衝撃強さが20kJ/m2を大きく下回っており、耐衝撃性に劣る。MFRが5.0g/10分である官能基含有共重合ポリオレフィン樹脂を配合した比較例5のポリアミド樹脂組成物は、成形品の曲げ強さが80MPaを超えており、柔軟性に劣り、高圧ガスと接触する成形品として不適であった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形等による各種成形品の製造に用いることができ、高圧ガスと接触する成形品用に好ましく用いることができる。