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7804195基板、選択的膜堆積方法、有機物の堆積膜及び有機物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-14
(45)【発行日】2026-01-22
(54)【発明の名称】基板、選択的膜堆積方法、有機物の堆積膜及び有機物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/312 20060101AFI20260115BHJP
【FI】
H01L21/312 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022578521
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003387
(87)【国際公開番号】W WO2022163825
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2024-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2021014552
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山本 純基
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敬寿
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 一基
(72)【発明者】
【氏名】近藤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】公文 創一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 達夫
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0017204(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0020580(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0198318(US,A1)
【文献】国際公開第2013/021149(WO,A2)
【文献】特開平09-237926(JP,A)
【文献】特表2004-520720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素を含む第一表面領域と、非金属無機材料を含む第二表面領域とが両方とも露出した構造を有する基板を、下記一般式(1)で表される有機物と溶媒からなる溶液に暴露して、前記第二表面領域よりも前記第一表面領域に前記有機物の膜を選択的に堆積させることを特徴とし、
前記溶媒は、エステル類、エーテル類、ケトン類、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ラクトン系溶媒、カーボネート系溶媒、アルコール系溶媒、多価アルコールの誘導体、窒素元素含有溶媒及びシリコーン溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記多価アルコールの誘導体は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート及び3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記溶液に前記基板を暴露することにより、前記第二表面領域よりも前記第一表面領域における水の接触角が10°以上大きい基板を得る、選択的膜堆積方法。
(X) (1)
(一般式(1)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のm個の水素原子がXに置換されている。Xは、-PO(R、-O-PO(R、-CO、-SR、又は、-SSRである。Rは、それぞれ、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。mは正の整数であり、前記炭化水素基の炭素数をrとした場合、m/rは0.01~0.25となる。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される有機物は、下記一般式(2)~(5)からなる群から選ばれる少なくとも1種で表される有機物を含む請求項1に記載の選択的膜堆積方法。
(PO(R (2)
(一般式(2)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のn個の水素原子が(PO(R)に置換されている。nは、1又は2である。Rは、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。複数のRは、それぞれ同じである場合もあるし、異なる場合もある。)
(O-PO(R (3)
(一般式(3)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のn個の水素原子が(O-PO(R)に置換されている。nは、1又は2である。Rは、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。複数のRは、それぞれ同じである場合もあるし、異なる場合もある。)
(CO (4)
(一般式(4)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のn個の水素原子が(CO)に置換されている。nは、1又は2である。Rは、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。複数のRは、それぞれ同じである場合もあるし、異なる場合もある。)
(SR10 (5)
(一般式(5)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のn個の水素原子が(SR10)に置換されている。nは、1又は2である。R10は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、-S-Rである。複数のR10は、それぞれ同じである場合もあるし、異なる場合もある。)
【請求項3】
前記一般式(2)~(5)において、R、R、R、及び、R10が水素原子である請求項2に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項4】
前記金属元素が金属又は金属酸化物として含まれ、
前記金属が、Cu、Co、Ru、Ni、Pt、Al、Ta、Ti及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属酸化物が、Cu、Co、Ru、Ni、Pt、Al、Ta、Ti及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物である、請求項1~のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項5】
前記非金属無機材料が、シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物及びシリコン酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項6】
前記溶液に含まれる、前記一般式(1)で表される有機物の濃度が、前記溶液の総量100質量%に対して0.01質量%以上20質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項7】
前記媒が、エタノール、又は、イソプロピルアルコールを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される有機物は、下記一般式(6)~(9)からなる群から選ばれる少なくとも1種で表される有機物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
11-PO (6)
(一般式(6)において、R11は炭素数6~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。)
12-O-PO (7)
(一般式(7)において、R12は炭素数6~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。)
13-COH (8)
(一般式(8)において、R13は炭素数6~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。)
14-SH (9)
(一般式(9)において、R14は炭素数6~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。)
【請求項9】
前記一般式(1)で表される有機物は、前記一般式(6)及び一般式(7)からなる群から選ばれる少なくとも1種で表される有機物を含む、請求項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項10】
前記一般式(1)で表される有機物は、前記一般式(8)で表される有機物を含む、請求項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項11】
前記一般式(1)で表される有機物は、前記一般式(9)で表される有機物を含む、請求項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項12】
前記R11、R12、R13、及び、R14が、一部または全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられている炭化水素基であることを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項13】
前記R11、R12、R13、及び、R14が、下記一般式(10)で表される1価の有機基であることを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
15-(CH- (10)
(式(10)において、R15は、水素原子、又は、ヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。nは2~20の整数であり、式(10)における炭素数の合計は6~100である。)
【請求項14】
前記R11、R12、R13、及び、R14が、下記一般式(11)で表される1価の有機基であることを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
16-O-Y-((CHO)-Z-(CH- (11)
(式(11)において、R16は、水素原子、メチル基、又は、フェニル基である。Y及びZは、それぞれ、任意の2価の基又は直接結合である。pは1~4の整数であり、qとrは正の整数である。式(11)における炭素数の合計は6~100である。繰り返し単位(CHO及びCHの存在順序は式中において任意である。)
【請求項15】
前記基板に対して、前記一般式(1)で表される有機物の膜を選択的に堆積させた後、前記基板を溶媒で洗浄する、請求項1~14のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項16】
前記溶液を2種類以上用意し、それぞれの溶液に順次前記基板を暴露させる、請求項1~15のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項17】
2番目以降に基板に暴露させる溶液に含まれる有機物は、前記Rの炭素数が、最初に暴露させる溶液に含まれる有機物における前記Rの炭素数より大きいか、又は、同じである、請求項16に記載の選択的膜堆積方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の選択的膜堆積方法において用いられる溶液であって、下記一般式(1)で表される有機物及び溶媒からなることを特徴とし、
前記溶媒は、エステル類、エーテル類、ケトン類、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ラクトン系溶媒、カーボネート系溶媒、アルコール系溶媒、多価アルコールの誘導体、窒素元素含有溶媒及びシリコーン溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記多価アルコールの誘導体は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート及び3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、溶液。
(X) (1)
(一般式(1)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のm個の水素原子がXに置換されている。Xは、-PO(R、-O-PO(R、-CO、-SR、又は、-SSRである。Rは、それぞれ、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。mは正の整数であり、前記炭化水素基の炭素数をrとした場合、m/rは0.01~0.25となる。)
【請求項19】
前記溶媒が、エタノール、又は、イソプロピルアルコールを含み、前記一般式(1)で表される有機物の濃度が、前記溶液の総量100質量%に対して0.01質量%以上20質量%以下である請求項18に記載の溶液。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか1項に記載された選択的膜堆積方法に用いる下記一般式(1)で表される有機物。
(X) (1)
(一般式(1)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のm個の水素原子がXに置換されている。Xは、-PO(R、-O-PO(R、-CO、-SR、又は、-SSRである。Rは、それぞれ、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。mは正の整数であり、前記炭化水素基の炭素数をrとした場合、m/rは0.01~0.25となる。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板、基板の金属元素を含む表面領域に選択的に膜を堆積させる選択的膜堆積方法、有機物の堆積膜及び有機物等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの構造は益々微細化しており、構造体の一部を選択的に除去することによりパターニングする従来のリソグラフィ法は、ステップ数の多さやコスト高といった問題がある。化学気相堆積(CVD)法や原子層堆積(ALD)法において基板上の所望の箇所に選択的に膜を形成できれば、微細構造の形成に最適なプロセスとなり、これらの問題は、解消すると考えられている。
【0003】
しかし、電極や配線に用いられる金属や、絶縁膜に用いられる無機誘電体などの材料の異なる複数種の表面領域を有する基板に対して、CVD法やALD法で膜を選択的に堆積させる場合に、堆積阻害用の膜を選択的に堆積させる必要があるが、従来の方法では選択性は充分に高くなかった。
【0004】
選択的な膜の形成方法については、膜を形成したくない領域に、膜の堆積を阻害する材料を堆積させる方法が知られている。例えば、特許文献1には、基板上に、TiN、AlNまたはSiN等の無機材料の薄膜のパターンを原子層堆積法(ALD)により形成する方法であって、基板上に、フッ素含有量が30原子%以上であり、少なくとも1つの第3級炭素もしくは第4級炭素を有し、かつ、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基およびイミド基を有しない含フッ素樹脂から構成される原子層堆積阻害材料を用いて、スクリーン印刷等で原子層堆積阻害層のパターンを形成すること、次いで、原子層堆積法により、原子層堆積阻害層が存在しない領域に、無機材料の層を形成すること、を含む方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、露出した金属表面及び露出したケイ素含有表面を有する基板の上に層を選択的に堆積させる方法において、(a)前記露出した金属表面の上に第1の自己組織化単分子膜を成長させることと、(b)前記露出したケイ素含有表面の上に、オルガノシラン系である第2の自己組織化単分子膜を成長させることと、(c)前記基板を加熱して、前記露出した金属表面の上から前記第1の自己組織化単分子膜を除去することと、
(d)低誘電率誘電体層又は金属層である層を、前記露出した金属表面の上に選択的に堆積させることと、(e)前記基板を加熱して、前記露出したケイ素含有表面の上から第2の自己組織化単分子膜を除去することと、を含む方法が開示されている。
【0006】
上記方法によれば、異なる材料からなる第1の表面と第2の表面を有する基板に対して、両者の表面状態の相違を利用して、第1の表面に第2の表面よりも選択的に膜を堆積させることができる。また、上記方法によれば、微細構造を形成するプロセスのステップ数を削減することができる。
【0007】
また、例えば、特許文献3には、金属性表面である第1の表面と、誘電体表面である第2の表面とを含む基板に、第1の気相前駆物質を接触させるステップと、第2の気相前駆物質を接触させるステップと、を含む堆積サイクルを行い、第2の表面よりも第1の表面上に選択的に有機薄膜を形成するプロセスが開示されている。特許文献3の実施例1では、酸化ケイ素表面と交互になったタングステン(W)フィーチャを有する200mmシリコンウェハを基板とし、1,6-ジアミノヘキサン(DAH)と、ピロメリト酸二無水物(PMDA)とを用いて、250~1000堆積サイクルを行い、ポリイミド膜を形成し、SiO表面上のポリイミド膜の厚さより、金属タングステン表面上のポリイミド膜の厚さの方が厚かった、ことが記載されている。
【0008】
特許文献4には、特許文献3に記載の有機膜の選択的堆積を利用して、金属製の第1表面の上にパッシベーション層を選択的に形成したのち、誘電体の第2表面の上にのみ層Xを形成する方法、さらにはこの方法を利用して、集積回路のメタライゼーション構造を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】再公表WO2016/147941号
【文献】特表2018-512504号公報
【文献】特開2017-216448号公報
【文献】特開2018-137435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、単一材料の基板上に、原子層堆積阻害材料を用いて、所定のパターンを形成しており、材料の異なる複数種の表面領域を有する基板に対して、所望の表面領域に選択的に原子層堆積阻害層を形成する方法は開示されていない。
【0011】
特許文献2で使用するオルガノシラン系自己組織化単分子膜は、ケイ素含有表面上へ選択的に堆積するが、金属又は金属酸化物に選択的に堆積することはない。
【0012】
特許文献3及び特許文献4に記載されている選択的に有機薄膜を形成する方法は、原料と温度を切り替えての堆積サイクルを複数回繰り返す必要があり、有機薄膜の形成には大変な手間が必要であった。
【0013】
本開示は、上記課題に鑑み、簡単な操作にて、基板上の非金属無機材料を含む表面領域に対してよりも、金属元素を含む表面領域に選択的に有機物の膜を堆積させることができる選択的膜堆積方法、上記方法により堆積した有機物の堆積膜及び該有機物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、後述する一般式(1)で表される有機物のうち少なくとも1種を用いることにより、基板上の非金属無機材料を含む表面領域に対してよりも金属元素を含む表面領域に選択的に上記有機物の膜を堆積させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
本開示の実施形態に係る選択的膜堆積方法は、金属元素を含む第一表面領域と、非金属無機材料を含む第二表面領域とが両方とも露出した構造を有する基板を、下記一般式(1)で表される有機物と溶媒とを含む溶液に暴露して、上記第二表面領域よりも上記第一表面領域に上記有機物の膜を選択的に堆積させることを特徴とする。
(X) (1)
(一般式(1)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のm個の水素原子がXに置換されている。Xは、-PO(R、-O-PO(R、-CO、-SR、又は、-SSRである。Rは、それぞれ、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。mは正の整数であり、該炭化水素基の炭素数をrとした場合、m/rは0.01~0.25となる。)
【0016】
上記選択的膜堆積方法によれば、一般式(1)で表される有機物を用いることにより、簡単な操作にて、基板上に露出した非金属無機材料を含む第二表面領域に対してよりも、基板上に露出した金属元素を含む第一表面領域に選択的に有機物の膜を堆積する方法を提供することができる。なお、本明細書において、有機物からなる膜を、有機物の膜または有機物の堆積膜ともいう。
【0017】
本開示の実施形態に係る基板は、金属元素を含む第一表面領域と、非金属無機材料を含む第二表面領域とを有する基板であって、上記第一表面領域が前述の一般式(1)で表される有機物の膜を有し、上記第二表面領域に上記有機物の膜を有しないか、上記第二表面領域上の上記有機物の膜の厚さtが、上記第一表面領域上の上記有機物の膜の厚さtよりも薄いことを特徴とする。
【0018】
上記基板によれば、非金属無機材料を含む第二表面領域に対してよりも、金属元素を含む第一表面領域に選択的に上記有機物の膜が堆積した基板を提供することができる。
【0019】
本開示の実施形態に係る有機物の堆積膜は、上記の選択的膜堆積方法により形成された有機物の堆積膜であって、基板上に堆積した前述の一般式(1)で表される有機物からなることを特徴とする。
【0020】
本開示の実施形態に係る有機物は、上記選択的膜堆積方法に用いる前述の一般式(1)で表される有機物であることを特徴とする。
【0021】
上記有機物を用いることにより、簡単な操作にて、基板上に露出した非金属無機材料を含む第二表面領域に対してよりも、基板上に露出した金属元素を含む第一表面領域に選択的に有機物の膜を堆積することができる。
【0022】
本開示の実施形態に係る溶液は、上記の選択的膜堆積方法において用いられる溶液であって、前述の一般式(1)で表される有機物及び溶媒を含むことを特徴とする。
【0023】
上記溶液を用いることにより、簡単な操作にて、基板上に露出した非金属無機材料を含む第二表面領域に対してよりも、基板上に露出した金属元素を含む第一表面領域に選択的に上記有機物の膜を堆積することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の実施形態に係る選択的膜堆積方法によれば、前述の一般式(1)で表される有機物を用いることにより、簡単な操作にて、基板上に露出した非金属無機材料を含む第二表面領域に対してよりも、基板上に露出した金属元素を含む第一表面領域に選択的に上記有機物の膜を堆積する方法を提供することができる。
【0025】
本開示の実施形態に係る基板によれば、基板上に露出した非金属無機材料を含む第二表面領域に対してよりも、基板上に露出した金属元素を含む第一表面領域に選択的に前述の一般式(1)で表される有機物の膜が堆積した基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本開示の実施形態の一例であり、これらの具体的内容に限定はされない。その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0027】
本開示の実施形態に係る選択的膜堆積方法は、金属元素を含む第一表面領域と、非金属無機材料を含む第二表面領域とが両方とも露出した構造を有する基板を、下記一般式(1)で表される有機物と溶媒とを含む溶液に暴露して、上記第二表面領域よりも上記第一表面領域に上記有機物の膜を選択的に堆積させることを特徴とする。
(X) (1)
(一般式(1)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、上記炭化水素基のm個の水素原子がXに置換されている。Xは、-PO(R、-O-PO(R、-CO、-SR、又は、-SSRである。Rは、それぞれ、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。mは正の整数であり、該炭化水素基の炭素数をrとした場合、m/rは0.01~0.25となる。)
【0028】
上記選択的膜堆積方法によれば、上記一般式(1)で表される有機物を用いることにより、簡単な操作にて、基板上に露出した非金属無機材料を含む第二表面領域に対してよりも、基板上に露出した金属元素を含む第一表面領域に選択的に有機物の膜を堆積させることができる。
【0029】
ここで、第二表面領域に対してよりも、第一表面領域に上記有機物の膜を選択的に堆積させるとは、第一表面領域に上記有機物の膜を堆積させ、第二表面領域には、上記有機物の膜を堆積させないか、第一表面領域上の有機物の膜の厚さが、第二表面領域上の有機物の膜の厚さよりも厚いことを意味する。
有機物の膜が堆積しているか否かは、主に基板の表面に純水を滴下し、水滴と基板表面とのなす角(接触角)を接触角計で測定することにより判断することができる。
【0030】
一般式(1)で表される有機物が水との親和性に乏しい場合、有機物の膜が堆積した基板表面における水との接触角が大きくなる。本開示の実施形態に係る選択的膜堆積方法では、第二表面領域よりも第一表面領域における水の接触角が大きいことが好ましい。具体的には、第二表面領域よりも第一表面領域における水の接触角が10°以上大きいことが好ましく、20°以上大きいことがより好ましく、30°以上大きいことがさらに好ましい。
これにより、水の接触角が大きい第一表面領域には、水の接触角が小さい第二表面領域に比べて、有機物の膜が選択的に堆積していると判断可能である。
本開示において、第一表面領域における水の接触角は80°以上であることが好ましく、90°以上であることがより好ましく、100°以上であることがさらに好ましい。一方、有機物が全く付着しないか、付着してもわずかである第二表面領域における水の接触角は20~70°程度であることが好ましい。
【0031】
基板上に有機物の堆積膜が形成されているか否かは、X線光電子分光法(XPS)による基板表面の元素組成を解析することによっても判断できる。有機物がリンや硫黄等の特徴的な原子を有している場合には、上記元素のピークを確認することができる。
【0032】
第一表面領域及び第二表面領域に対する上記有機物の堆積し易さは、各表面領域の材料により異なるが、第一表面領域上の有機物の膜の厚さtは、第二表面領域上の有機物の膜の厚さtよりも厚く、tをtで除したt/tの値が5以上であることが好ましい。さらに、t/tの値は、10以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。なお、膜の厚さに関しては、tが0.3nm以上であることが好ましく、0.6nm以上であることがより好ましい。また、tは0.3nm未満であることが好ましく、0nm、すなわち上記有機物が全く堆積しないことがより好ましい。t及びtは、原子間力顕微鏡(AFM)などにより測定することができる。
【0033】
上記金属元素としては、Cu、Co、Ru、Ni、Pt、Al、Ta、Ti及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を挙げることができる。上記金属元素は、金属として存在していても良いし、金属元素を含有する化合物として存在していても良い。金属元素を含有する化合物としては、金属元素と化学結合しているものであれば良く、例えば金属酸化物、金属窒化物、合金などがある。特に、金属や金属酸化物が好ましい。また、金属元素としては、Cu、Co、Ruが好ましい。
【0034】
非金属無機材料としては、シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物などのシリコン系材料と、ゲルマニウム、ゲルマニウム酸化物、ゲルマニウム窒化物、ゲルマニウム酸窒化物などのゲルマニウム系材料を挙げることができる。中でも、シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物及びシリコン酸窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。シリコンとしては、多結晶シリコンと単結晶シリコンの両方を含む。シリコン酸化物はSiO(xは1以上2以下)の化学式で表され、代表的にはSiOである。また、シリコン窒化物はSiN(xは0.3以上9以下)の化学式で表され、代表的にはSiである。シリコン酸窒化物はSiOxNy(xは3以上6以下、yは2以上4以下)で表され、例えばSiである。
【0035】
金属が露出した第一表面領域を得る方法としては、化学気相堆積(CVD)法、物理気相堆積(PVD)法、メッキ法などを用いて金属の膜を得る方法などを挙げることができる。例えば、上記の非金属無機材料の膜の上に、金属膜を形成し、フォトリソグラフィー法にて金属膜を所定のパターンに形成する方法や、非金属無機材料の膜に穴や溝を形成し、その溝に金属を埋め込み、場合によってはCMP(化学的機械的研磨)で研磨する方法により、金属を含む第一表面領域と、非金属無機材料を含む第二表面領域とが両方とも露出した構造の基板を得ることができる。
また、金属が露出した第一表面領域を得る方法としては、金属膜の表面の酸化膜を、気相エッチングや湿式エッチングで削除し、金属表面を露出する方法が挙げられる。上記酸化膜を機械的に削除してもよい。
【0036】
金属酸化物が露出した第一表面領域を得る方法としては、化学的気相堆積法、物理的気相堆積法などを用いて金属酸化物の膜を得る方法や、同様の方法で得られた金属の膜を大気中に暴露して自然酸化膜を形成する方法などを挙げることができる。例えば、上記の非金属無機材料の膜の上に、金属酸化物の膜を形成し、フォトリソグラフィー法にて金属酸化物の膜を所定のパターンに形成する方法や、非金属無機材料の膜に穴や溝を形成し、その溝に金属を埋め込み、金属上に自然酸化膜を形成する方法により、金属酸化物を含む第一表面領域と、非金属無機材料を含む第二表面領域とが両方とも露出した構造の基板を得ることができる。
【0037】
金属元素を含む第一表面領域は、一般式(1)で表される有機物が堆積可能である金属元素を含む化合物以外が含まれていてもよいが、金属元素を含む化合物のみを含み、金属元素を含む化合物のみが表面に露出していることが望ましい。
非金属無機材料を含む第二表面領域は、上記非金属無機材料の化合物が含まれていてもよく、非金属無機材料のみを含んでいてもよいが、非金属無機材料のみを含み、非金属無機材料のみが表面に露出していることが望ましい。
【0038】
本開示の実施形態において使用する基板としては、構造中に金属や金属酸化物膜を有する半導体デバイスの基板や、半導体デバイスのパターニング工程中で金属や金属酸化物が形成される基板等が挙げられ、特に、半導体素子の絶縁膜に所定のパターンを有する金属配線を形成した基板が好ましい。即ち、第一表面領域としては、表面自然酸化膜を有する金属配線や金属が露出した金属配線が該当し、第二表面領域としては、非金属無機材料からなる絶縁膜が該当する。しかし、本開示の実施の形態において使用する基板は、これらに限定されない。
【0039】
第二表面領域よりも第一表面領域に、一般式(1)で表される有機物の膜を選択的に堆積させる具体的な方法として、上記有機物と溶媒とを含む溶液に基板を暴露する方法を採用している。以下、上記方法について説明する。
【0040】
有機物としては、下記一般式(1)で表される有機物を用いる。
(X) (1)
(一般式(1)において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のm個の水素原子がXに置換されている。Xは、-PO(R、-O-PO(R、-CO、-SR、又は、-SSRである。Rは、それぞれ、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。mは正の整数であり、前記炭化水素基の炭素数をrとした場合、m/rは0.01~0.25となる。)
【0041】
上記一般式(1)で表される有機物の概念は、一般式(2)~(5)で表される有機物の概念を含むものであり、例えば、一般式(2)~(5)からなる群から選ばれる少なくとも1種で表される有機物を用いることができる。
【0042】
以下、一般式(2)~(5)で表される有機物について説明する。
[一般式(2)で表される有機物(一般式(6)で表される有機物を含む)]
一般式(2)[R(PO(R]において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のn個の水素原子が(PO(R)に置換されている。nは、1又は2であり、Rは、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。
は、水素原子であることが好ましい。Rが水素原子である場合、ホスホン酸となる。なお、複数のRは、それぞれ同じである場合もあるし、異なる場合もある。
【0043】
さらに、一般式(2)で表される有機物[R(PO(R]は、一般式(6)[R11-PO]で表される有機物であることが好ましい。上記一般式(6)において、R11は炭素数6~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【0044】
[一般式(3)で表される有機物(一般式(7)で表される有機物を含む)]
一般式(3)[R(O-PO(R]において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のn個の水素原子が(O-PO(R)に置換されている。nは、1又は2であり、Rは、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。
は、水素原子であることが好ましい。Rが水素原子である場合、リン酸エステルとなる。なお、複数のRは、それぞれ同じである場合もあるし、異なる場合もある。
【0045】
さらに、一般式(3)で表される有機物[R(O-PO(R]は、一般式(7)[R12-O-PO]で表される有機物であることが好ましい。上記一般式(7)において、R12は炭素数6~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【0046】
[一般式(4)で表される化合物(一般式(8)で表される化合物を含む)]
一般式(4)[R(CO]において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のn個の水素原子が(CO)に置換されている。nは、1又は2であり、Rは、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基である。
は、水素原子であることが好ましい。Rが水素原子である場合、カルボン酸となる。なお、複数のRは、それぞれ同じである場合もあるし、異なる場合もある。
【0047】
さらに、一般式(4)で表される有機物[R(CO]は、一般式(8)[R13-COH]で表される有機物であることが好ましい。上記一般式(8)において、R13は炭素数6~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【0048】
[一般式(5)で表される有機物(一般式(9)で表される有機物を含む)]
一般式(5)[R(SR10]において、Rは、炭素数4~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、前記炭化水素基のn個の水素原子が(SR10)に置換されている。nは、1又は2であり、R10は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は、-S-Rである。
10は、水素原子であることが好ましい。R10が水素原子である場合、チオールとなる。なお、複数のR10は、それぞれ同じである場合もあるし、異なる場合もある。
【0049】
さらに、一般式(5)で表される有機物[R(SR10]は、下記一般式(9)[R14-SH]で表される有機物であることが好ましい。上記一般式(9)において、R14は炭素数6~100のヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【0050】
、R、R、R、R11、R12、R13、及び、R14の炭化水素基に含まれてもよいヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0051】
また、R、R、R、R、R11、R12、R13、及び、R14は、分岐構造や環状構造を含んでいても良い。分岐構造は、第2級や第3級炭素原子を含み、該炭素原子において枝分かれ構造となっているものである。また、環状構造は、脂環系炭化水素やアリール基が挙げられ、脂環系炭化水素としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、カンホロイル基等が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-ヒドロキシフェニル基、1-ナフチル基、1-アントラセニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0052】
一般式(2)又は一般式(6)で表される有機物としては、例えば、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、n-プロピルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、n-ペンチルホスホン酸、n-ヘキシルホスホン酸、n-ヘプチルホスホン酸、n-オクチルホスホン酸、n-ノニルホスホン酸、n-デシルホスホン酸、n-ウンデシルホスホン酸、n-ドデシルホスホン酸、n-トリデシルホスホン酸、n-テトラデシルホスホン酸、n-ペンタデシルホスホン酸、n-ヘキサデシルホスホン酸、n-ヘプタデシルホスホン酸、n-オクタデシルホスホン酸、n-ノナデシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、(2-フェニルエチル)ホスホン酸、(3-フェニルプロピル)ホスホン酸、(4-フェニルブチル)ホスホン酸、(5-フェニルペンチル)ホスホン酸、(6-フェニルヘキシル)ホスホン酸、(7-フェニルヘキシル)ホスホン酸、(8-フェニルオクチル)ホスホン酸、(9-フェニルノニル)ホスホン酸、(10-フェニルデシル)ホスホン酸、(11-フェニルウンデシル)ホスホン酸、(12-フェニルドデシル)ホスホン酸、メチレンジホスホン酸、(4-アミノフェニル)ホスホン酸、(4-アミノベンジル)ホスホン酸 、ベンズヒドリルホスホン酸、(4-ブロモフェニル)ホスホン酸 、(2-クロロエチル)ホスホン酸、(3-クロロプロピル)ホスホン酸、(4-クロロブチル)ホスホン酸、5-クロロペンチル)ホスホン酸、(6-クロロヘキシル)ホスホン酸、(2-ブロモエチル)ホスホン酸、(3-ブロモプロピル)ホスホン酸、(4-ブロモブチル)ホスホン酸、(5-ブロモペンチル)ホスホン酸、(6-ブロモヘキシル)ホスホン酸、1,2-エチレンジホスホン酸、1,3-プロピレンジホスホン酸、1,4-ブタンジホスホン酸、1,5-ペンタンジホスホン酸、1,6-ヘキシレンジホスホン酸、アレンドロン酸、1,4フェニレンジホスホン酸、o-キシリレンジホスホン酸、m-キシリレンジホスホン酸、p-キシリレンジホスホン酸、(アミノメチル)ホスホン酸、(1-アミノエチル)ホスホン酸、2-(パーフロオロブチル)エチルホスホン酸、2-(パーフロオロヘキシル)エチルホスホン酸、2-(パーフロオロヘプチル)エチルホスホン酸等が挙げられる。
【0053】
一般式(3)又は一般式(7)で表される有機物としては、例えば、上記で例示したホスホン酸のホスホニル基(-POH基)を-OPOHに置換したものが挙げられる。例えば、リン酸-n-ヘキシル、リン酸-n-ヘプチル、リン酸-n-オクチル、リン酸-n-ノニル、リン酸-n-デシル、リン酸-n-ウンデシル、リン酸-n-ドデシル、リン酸-n-トリデシル、リン酸-n-テトラデシル、リン酸-n-ペンタデシル、リン酸-n-ヘキサデシル、リン酸-n-ヘプタデシル、リン酸-n-オクタデシル、リン酸-n-ノナデシル、リン酸フェニル、リン酸二水素ベンジル、2-フェニルエチルリン酸、3-フェニルプロピルリン酸、4-フェニルブチルリン酸、5-フェニルペンチルリン酸、6-フェニルヘキシルリン酸、7-フェニルヘプチルリン酸、8-フェニルオクチルリン酸、9-フェニルノニルリン酸、10-フェニルデシルリン酸、11-フェニルウンデシルリン酸、12-フェニルドデシルリン酸、リン酸ジエチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジペンチル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジヘプチル、リン酸ジオクチル、リン酸ジノニル、リン酸ジデシル、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジル、2-(パーフルオロブチル)エチルリン酸、2-(パーフルオロペンチル)エチルリン酸、2-(パーフルオロヘキシル)エチルリン酸、2-(パーフルオロヘプチル)エチルリン酸等が挙げられる。
【0054】
一般式(4)又は一般式(8)で表される有機物としては、例えば、上記で例示したホスホン酸のホスホニル基(-POH基)を-COHに置換したものが挙げられる。例えば、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸、n-ノナデカン酸、安息香酸、2-フェニルエタン酸、3-フェニルプロパン酸、4-フェニルブタン酸、5-フェニルペンタン酸、6-フェニルヘキサン酸、7-フェニルヘプタン酸、8-フェニルオクタン酸、9-フェニルノナン酸、10-フェニルデカン酸、11-フェニルウンデカン酸、12-フェニルドデカン酸、1,2-エタンジカルボン酸、1,3-プロパンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,5-ペンタンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、1,8-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,15-ペンタデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,17-ヘプタデカンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、ジエチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、ジブチルマロン酸、ジペンチルマロン酸、ジヘキシルマロン酸、o-フタル酸、m-フタル酸、p-フタル酸、2-(パーフルオロブチル)エタン酸、2-(パーフルオロペンチル)エタン酸、2-(パーフルオロヘキシル)エタン酸、2-(パーフルオロヘプチル)エタン酸、2-(パーフルオロヘキシル)プロパン酸、パーフルオロ-1,4-ブタン二酸、パーフルオロ-1,5-ペンタン二酸、パーフルオロ-1,6-ヘキサン二酸、パーフルオロ-1,7-ヘプタン二酸、パーフルオロ-1,8-オクタン二酸、4,4’-ビス安息香酸、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(安息香酸)等が挙げられる。
【0055】
一般式(5)又は一般式(9)で表される有機物としては、例えば、上記で例示したホスホン酸のホスホニル基(-POH基)を-SHに置換したものが挙げられる。例えば、例えば、n-ヘキサンチオール、n-ヘプタンチオール、n-オクタンチオール、n-ノナンチオール、n-デカンチオール、n-ウンデカンチオール、n-ドデカンチオール、n-トリデカンチオール、n-テトラデカンチオール、n-ペンタデカンチオール、n-ヘキサデカンチオール、n-ヘプタデカンチオール、n-オクタデカンチオール、n-ノナデカンチオール、シクロヘキサンチオール、チオフェノール、フェニルメタンチオール、2-フェニルエタンチオール、3-フェニルプロパンチオール、4-フェニルブタンチオール、5-フェニルペンタンチオール、6-フェニルヘキサンチオール、7-フェニルヘプタンチオール、8-フェニルオクタンチオール、9-フェニルノナンチオール、10-フェニルデシルチオール、11-フェニルウンデシルチオール、12-フェニルドデシルチオール、エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,7-ヘプタンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,11-ウンデカンジチオール、1,12-ドデカンジチオール、1,13-トリデカンジチオール、1,14-テトラデカンジチオール、1,15-ペンタデカンジチオール、1,16-ヘキサデカンジチオール、1,17-ヘプタデカンジチオール、1,18-オクタデカンジチオール、1,19-ノナデカンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、2-(パーフルオロブチル)エタンチオール、2-(パーフルオロペンチル)エタンチオール、2-(パーフルオロヘキシル)エタンチオール、2-(パーフルオロヘプチル)エタンチオール等が挙げられる。
【0056】
、R、R、R、R、R11、R12、R13、及び、R14が、一部または全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられていると、耐熱性を向上させることができるので好ましい。特に、複数のフッ素原子に置き換えられていることが好ましく、更にパーフルオロアルキル基を含むことが好ましい。
【0057】
また、有機物の堆積量を増加させることができるため、R11、R12、R13、及び、R14は、下記一般式(10)で表される1価の有機基であることが好ましい。
15-(CH- (10)
(式(10)において、R15は、水素原子、又は、ヘテロ原子やハロゲン原子を有していてもよい1価の炭化水素基である。nは2~20の整数であり、式(10)における炭素数の合計は6~100である。)
【0058】
また、やはり有機物の堆積量を増加させることができるため、R11、R12、R13、及び、R14は、下記一般式(11)で表される1価の有機基であることが好ましい。
16-O-Y-((CHO)-Z-(CH- (11)
(式(11)において、R16は、水素原子、メチル基、又は、フェニル基である。Y及びZは任意の2価の基又は直接結合である。pは1~4の整数であり、qとrは正の整数である。式(11)における炭素数の合計は6~100である。繰り返し単位(CHO及びCHの存在順序は式中において任意である。)
さらに、上記式(11)は、R16-O-((CHO)-(CH-であることが好ましく、式(11)における炭素数の合計は10~90が好ましく、20~80がより好ましい。
【0059】
また、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、及び、R14は、有機物の堆積量を増加させることができるため、分岐構造を含まない直鎖状炭化水素基であることが好ましい。直鎖状炭化水素基には、環状構造が含まれていても良く、環状構造としてはアリール基、特にフェニル基が好ましく、前記直鎖状炭化水素基の先端に存在することが好ましい。
【0060】
本開示の実施形態に係る選択的膜堆積方法では、基板を上述した一般式(1)で表される有機物と溶媒とを含む溶液に暴露して、上記第二表面領域よりも上記第一表面領域に上記有機物の膜を選択的に堆積させる。
上記溶液に基板を暴露するとは、基板の表面を溶液と接触させることをいう。
【0061】
具体的な選択的膜堆積方法の一例としては、一般式(1)で表される有機物と溶媒とを含む溶液に、第一表面領域と第二表面領域とを有する基板を浸漬することにより、上記溶液を上記基板の表面と接触させ、有機物の膜を、基板の第一表面領域に選択的に堆積させる方法が挙げられる。上記方法を浸漬法ということとする。
【0062】
溶液に基板を暴露する方法として、上記基板を上記溶液に浸漬する浸漬法以外に、基板に溶液を滴下した後に高速回転させるスピンコート法、溶液を基板に噴霧するスプレーコート法、基板に溶液を塗布する塗布法等を採用することができ、基板を溶液と接触させることが可能な方法であれば、これらの方法に限定されない。
【0063】
上記溶液に含まれる、上記一般式(1)で表される有機物の濃度は、上記溶液の総量100質量%に対して0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.05質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上8質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以上5質量%以下が特に好ましい。上記溶液に2種以上の該有機物を含む場合は、上記の濃度範囲は該有機物の合計の濃度を意味する。
【0064】
本開示の溶液に使用する溶媒としては、上記の有機物を溶解でき、且つ、被処理体の表面に対するダメージの少ないものであれば、特に限定されずに従来公知のものを使用できる。有機物を溶解でき、且つ、被処理体の表面に対するダメージの少ないという観点から、水を除く有機溶媒(非水溶媒)を含むことが好ましく、有機物の溶解性の観点から炭化水素系溶媒を除く有機溶媒(非水溶媒)を含むことが好ましい。
【0065】
上記の炭化水素系溶媒を除く非水溶媒は、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ラクトン系溶媒、カーボネート系溶媒、アルコール系溶媒、多価アルコールの誘導体、窒素元素含有溶媒、シリコーン溶媒、あるいは、それらの混合液が好適に使用される。
【0066】
上記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-ヘプチル、酢酸n-オクチル、ぎ酸n-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、n-オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル、アジピン酸ジメチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル等が挙げられる。
【0067】
上記エーテル類の例としては、ジ-n-プロピルエーテル、エチル-n-ブチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチル-n-アミルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、エチル-n-ヘキシルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、ジ-n-オクチルエーテル、並びにそれらの炭素数に対応するジイソプロピルエーテル、ジイソアミルエーテルなどの分岐状の炭化水素基を有するエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロヘキシルエーテル、エチルパーフルオロヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0068】
上記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0069】
上記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド等があり、上記スルホン系溶媒の例としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等が挙げられる。
【0070】
上記ラクトン系溶媒の例としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、γ-ノナノラクトン、γ-デカノラクトン、γ-ウンデカノラクトン、γ-ドデカノラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-ノナノラクトン、δ-デカノラクトン、δ-ウンデカノラクトン、δ-ドデカノラクトン、ε-ヘキサノラクトン等が挙げられる。
【0071】
上記カーボネート系溶媒の例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等があり、上記アルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0072】
上記多価アルコールの誘導体の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル等のOH基を有する多価アルコール誘導体、あるいは、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート等のOH基を持たない多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0073】
上記窒素元素含有溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
【0074】
シリコーン溶媒の例としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン等が挙げられる。
【0075】
また、上記有機溶媒は、有機物の溶解性の観点から、極性の有機溶媒が好ましく、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルコール系溶媒、及び多価アルコールの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、特にアルコール系溶媒が好ましく、エタノールやイソプロピルアルコール(IPA)を好適に使用することができる。
【0076】
なお、上記溶媒に水を含ませても良い。なお、この場合の水の濃度は、本開示の溶液100質量%に対して、40質量%以下が好ましく、特に20質量%以下、さらには10質量%以下が好ましい。
【0077】
また、本開示の溶液には、有機物の堆積膜の形成を促進させるために、ヘキサフルオロイソプロパノール、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸などの酸性化合物、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、アンモニア、イミダゾールなどの塩基性化合物等の触媒が添加されても良い。触媒の添加量は、有機物の総量100質量%に対して、0.01~50質量%が好ましい。
【0078】
上記浸漬法等における溶液の温度は、0~80℃が好ましく、上記溶液に基板を浸漬する時間は、10秒以上~48時間以下が好ましく、1分以上24時間以下が好ましい。上記溶液に基板を浸漬する際、攪拌羽根等により溶液を攪拌してもよい。
【0079】
また、有機物を含む溶液に基板を暴露させて有機物の膜を堆積させた後、溶媒で基板を洗浄する洗浄工程を行うことが好ましい。上記洗浄工程で使用できる溶媒としては、前述の有機溶媒を挙げることができる。洗浄の方法としては、0~80℃の上記溶媒に1~1000秒浸漬することが好ましい。有機物を含む溶液に基板を浸漬させた場合には、溶液から基板を引き上げ、溶媒で基板を洗浄することとなる。
【0080】
上記洗浄工程の後、窒素、アルゴン等の不活性ガスを基板に吹き付けることにより、基板を乾燥させることが好ましい。吹き付ける不活性ガスの温度は、0~80℃が好ましい。
【0081】
本開示の実施形態に係る選択的膜堆積方法では、上記第一表面領域と上記第二表面領域の両方が露出した構造を有する基板を、一般式(1)で表される有機物と溶媒とを含む溶液に暴露して、上記第二表面領域よりも上記第一表面領域に上記有機物の膜を選択的に堆積させるが、上記基板を上記溶液に暴露する際、上記基板を1種類の上記溶液に暴露させて上記第二表面領域よりも上記第一表面領域に上記有機物の膜を選択的に堆積させてもよく、上記溶液を2種類以上用意し、基板をそれぞれの溶液に、順次暴露させて上記第二表面領域よりも上記第一表面領域に上記有機物の膜を選択的に堆積させてもよい。
【0082】
この場合、基板を最初の溶液に暴露させた後、上記した溶媒による洗浄及び乾燥を行い、次に、基板を2番目の溶液に暴露させ、同様に上記した溶媒による洗浄及び乾燥を行うことが望ましい。溶液を3種類以上用意した場合にも、基板を溶液に暴露させた後、次の溶液に基板を暴露する前に、逐次、上記した溶媒による洗浄及び乾燥を行う工程を行うことが望ましい。ただし、場合によっては、上記した洗浄及び乾燥の工程を省いてもよい。
【0083】
また、2番目以降に基板に暴露させる溶液に含まれる有機物は、上記Rの炭素数が、最初に暴露させる溶液に含まれる有機物における上記Rの炭素数より小さくてもよいが、2番目以降に基板に暴露させる溶液に含まれる有機物の該炭素数を、最初に暴露させる溶液に含まれる有機物における該炭素数より大きいか、または、同じに設定することが望ましい。
2番目以降に基板に暴露させる溶液に含まれる有機物における上記Rの炭素数が、最初に暴露させる溶液に含まれる有機物における上記Rの炭素数より大きいか、又は同じであると、得られた基板の接触角がより高くなり、上記第一表面領域に上記有機物のより厚い膜を選択的に堆積させることができる。
【0084】
上記基板を上記溶液に暴露する場合、上記溶液を2種類以上用意し、基板をそれぞれの溶液に、順次暴露させることにより、基板に上記溶液を暴露する時間、すなわち、上記基板を上記溶液に浸漬する時間を短くしても、上記第二表面領域よりも上記第一表面領域に上記有機物の膜を選択的に堆積させることができる。
【0085】
[有機物の堆積膜の選択的堆積後の基板]
本開示の実施形態に係る基板は、金属元素を含む第一表面領域と、非金属無機材料を含む第二表面領域とを有する基板であって、上記第一表面領域が前述の一般式(1)で表される有機物の膜を有し、上記第二表面領域に上記有機物の膜を有しないか、上記第二表面領域上の上記有機物の膜の厚さtが、上記第一表面領域上の上記有機物の膜の厚さtよりも薄い。
上記第一表面領域の水の接触角が、上記第二表面領域の水の接触角よりも大きいことが好ましく、10°以上大きいことがより好ましい。
【0086】
上記有機物の膜(堆積膜)は、第一表面領域に物理的に吸着したものであってもよく、基板に含まれる成分と化学結合したものであってもよい。上述した有機物の分子中におけるリン原子、酸素原子又は硫黄原子を含む基は、基板に含まれる金属又は金属酸化物と相互作用して形成されると推測される。その場合、上記有機物の膜は、単分子膜の構造を有していると推測される。有機物を堆積させる前の基板表面は、基板に含まれる金属又は金属酸化物に由来して、親水性であることが多いが、有機物を堆積した後の基板表面は、有機物の膜に由来して、疎水性であることが多い。有機物として上述した有機物を用いる場合、リン原子、酸素原子又は硫黄原子が金属又は金属酸化物と相互作用し、アルキル基等の炭化水素基が有機物の膜の表面に露出すると推測され、有機物の膜の堆積により第一表面領域は疎水化すると推定される。
このため、有機物を堆積させた後の第一表面領域に純水を滴下し、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計で測定すると、第二表面領域に比べて第一表面領域の接触角が大きくなると推測される。
【実施例
【0087】
以下、本開示の実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
(溶液の調製)
溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)、有機物としてn-オクタデカン酸を用い、該有機物が1質量%となるように混合溶解させ、n-オクタデカン酸と溶媒とを含む溶液を調製した。
【0089】
(基板の準備)
膜厚100nmのコバルト膜を有するシリコン基板を30分間、UV/O照射(ランプ:EUV200WS、ランプとの距離:10mm、UV照射により空気中の酸素からオゾンを発生させる)して表面を酸化し、表面に酸化コバルト膜(CoOx)を有する基板を得た。
【0090】
膜厚100nmのコバルト膜を有するシリコン基板を濃度0.5質量%のHF水溶液に22℃で1分間浸漬させて、表面の自然酸化膜を除去して、表面にコバルト膜(Co)を有する基板を得た。
【0091】
膜厚100nmの銅膜を有するシリコン基板をUV/O照射(ランプ:EUV200WS、ランプとの距離:10mm、UV照射により空気中の酸素からオゾンを発生させる)で30分間洗浄し、表面に酸化銅膜(CuOx)を有する基板を得た。
【0092】
膜厚100nmの銅膜を有するシリコン基板を濃度0.5質量%のHF水溶液に22℃で1分間浸漬させて、表面の自然酸化膜を除去して、表面に銅膜(Cu)を有する基板を得た。
【0093】
膜厚100nmの酸化シリコン膜を有するシリコン基板を濃度0.5質量%のHF水溶液に22℃で1分間浸漬させて、表面を洗浄して、表面に酸化シリコン(SiOx)膜を有する基板を得た。
【0094】
膜厚30nmの窒化シリコン膜を有するシリコン基板を濃度0.5質量%のHF水溶液に22℃で1分間浸漬させて、表面の自然酸化膜を除去して、表面に窒化シリコン膜(SiN)を有する基板を得た。
【0095】
シリコン基板を濃度0.5質量%のHF水溶液に22℃で1分間浸漬させて、表面の自然酸化膜を除去して、表面がシリコンの基板(Si基板)を得た。
【0096】
(有機物を含む溶液による表面処理)
上記処理により準備した7個の基板を、それぞれ上記溶液に22℃で24時間浸漬させて、基板の表面処理を行い、それぞれの基板の表面に有機物を堆積させた。その後、IPAに60秒、2回浸漬させて、窒素ガスを60秒間吹き付けて基板を乾燥させた。
【0097】
(水の接触角の測定)
有機物を含む溶液による表面処理を行った実施例1に係る7個の基板表面上に純水約1μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学株式会社製:DM-301)で測定した。その結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
上記の方法にて接触角を測定した結果、表1に示すとおり、CuOx基板、Cu基板、CoOx基板、Co基板は、Si基板、SiN基板、SiOx基板よりも接触角が高くなり、有機物として、カルボン酸を用いることにより、金属又は金属酸化物の表面に、選択的に有機物の膜を堆積できることが判明した。
【0100】
[実施例2~20]
基板表面の物質の種類、有機物の種類、溶媒の種類、溶液濃度(有機物濃度)などを、表2に示したように変更した以外は、実施例1と同様に実施し、評価を行った。すなわち、上記実施例では、CoOx基板、Co基板及びSiOx基板を準備した。その結果を表2に示す。
[比較例1~2]
比較例1では、表2に示すように、上述のような有機物を含まないIPA溶液を用いた。比較例2では、溶媒として表2に示すようにPGMEAを、有機物としてトリメチルシリルジメチルアミンを用い、該有機物の濃度が表2に示した濃度となるように混合溶解させ、有機物と溶媒とを含む溶液を調製した。なお、トリメチルシリルジメチルアミンは、前述の一般式(1)で表される有機物に該当しない。
【0101】
(基板の準備及び溶液による表面処理)
比較例1~2では、実施例2~20と同様の基板を準備し、実施例2~20と同様に溶液による表面処理を施した。
【0102】
(水の接触角の測定)
比較例1~2に係る基板表面上に純水約1μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学株式会社製:DM-301)で測定した。その結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
表2に示す結果より明らかなように、実施例2~20ではCo基板又はCoOx基板は、SiOx基板よりも接触角が高くなり、有機物として、一般式(1)で表される有機物を用いることにより、金属又は金属酸化物の表面に、選択的に有機物の膜を堆積できることが判明した。
一方、有機物を用いない、あるいは他の有機物を用いた比較例1~2では、Co基板、CoOx基板の接触角は大きくならなかった。特に、比較例2では、SiOx基板は、CoOx基板とCo基板よりも接触角が高くなり、トリメチルシリルジメチルアミンがSiOx基板に選択的に堆積したと考えられる。
【0105】
(実施例で得られた基板に対するX線光電子分光法(XPS)による元素組成解析)
上記した実施例のなかで、下記の表3に示す番号の実施例で得られた基板に対し、X線光電子分光法(XPS)により基板表面の元素組成を解析した。その結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
表3に示す結果より明らかなように、表3に示した実施例で得られたCo基板、CoOx基板の表面には、使用した有機物に含まれる特徴的な元素、すなわちホスホン酸の場合には、P元素の強いピークを確認することができ、チオールの場合には、S元素の強いピークを確認することができた。一方、SiOx基板の表面には、P元素やS元素等のピークを観察することはできなかった。
従って、Co基板、CoOx基板上には、ホスホン酸又はチオールの膜が形成されていると推測される。
【0108】
[実施例21~27]
(耐熱性の評価)
表4に示す有機物を用い、実施例1と同様の方法で有機物の膜をCoOx膜の表面に形成した基板を石英管内に設置し、オイルポンプで1時間真空引きを行った後、石英管を加熱することによって基板を加熱した。
基板の温度が所定の温度に達した時点から1時間後に加熱を停止し、30分間冷却してから基板を取り出した。加熱後の基板を上記の「水の接触角の測定」に記載の方法で水の接触角を測定した。加熱温度は、100℃から50℃ずつ増加させ、加熱によって低下する接触角が10°以下である最高加熱温度を耐熱温度とした。なお、最高加熱温度(耐熱温度)が100℃の場合は、加熱前の基板の接触角と100℃に加熱した際の接触角の差は、10℃以下であったが、150℃に加熱することにより低下した接触角は、10℃を超えていたことを意味する。
【0109】
【表4】
【0110】
表4より明らかなように、実施例21~27で使用した有機物は、基板上に堆積した後、加熱されても分解や脱離等により基板上から消失しにくく、耐熱性に優れることが判明した。
これらのなかでも、実施例24で使用したn-オクタデシルホスホン酸、実施例25で使用した2-(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸が堆積した基板は、特に耐熱性に優れ、250℃か、それ以上に加熱しても、基板上に堆積した有機物は、分解して消失せず、基板上に残留しており、耐熱性が特に高いことが判明した。
【0111】
また、実施例22と23を比較すると、同じ炭素数のカルボン酸であっても、水素原子がフッ素原子で置換された2-(パーフルオロヘキシル)プロパン酸を用いる実施例23の方が、耐熱性が高かった。同様に、実施例24と25、実施例26と27を比較すると、ホスホン酸やチオールにおいても、水素原子をフッ素原子で置換することで耐熱性が高くなった。
【0112】
[実施例28]
(溶液の調製)
溶媒としてエタノール(EtOH)、有機物としてn-オクタデシルホスホン酸を用い、該有機物が1質量%となるように混合溶解させ、溶液Aを調製した。また、溶媒としてエタノール(EtOH)、有機物としてn-オクタデカンチオールを用い、該有機物が1質量%となるように混合溶解させ、溶液Bを調製した。
(有機物を含む溶液による表面処理)
上述の「基板の準備」に記載の方法で準備したCoOxを有する基板、Coを有する基板及びSiOxを有する基板を、それぞれ、溶液Aに22℃で0.5時間浸漬させ、その後、IPAに60秒、2回浸漬させた。さらに溶液Bに22℃で0.5時間浸漬させて、基板の表面処理を行い、それぞれの基板の表面に有機物を堆積させた。その後、IPAに60秒、2回浸漬させて、窒素ガスを60秒間吹き付けて基板を乾燥させた。
【0113】
[実施例29~31]
有機物の種類、溶液AとBの種類、溶液AとBの浸漬時間を、表5に示したように変更した以外は、実施例28と同様に実施し、評価を行った。
【0114】
(水の接触角の測定)
実施例28~31に係る基板の表面上に純水約1μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学株式会社製:DM-301)で測定した。その結果を、実施例3の結果とともに表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
表5に示す結果より明らかなように、実施例28~31ではCoを有する基板、CoOxを有する基板は、SiOxを有する基板よりも接触角が高くなり、有機物として、一般式(1)で表される有機物を含む溶液を2種類用いることにより、金属又は金属酸化物の表面に、選択的に有機物の膜を堆積できることが判明した。
【0117】
また、実施例3と実施例28~31を比較すると、有機物を含む溶液を2種類用いると、1時間という短時間の処理でCoを有する基板、CoOxを有する基板の接触角が、実施例3の場合とほぼ同等の高さとなった。また、実施例28と実施例31を比較すると、溶液Aに含まれる有機物の炭素数に比べて、溶液Bに含まれる有機物の炭素数が大きいものの方が、接触角が高くなった。
【0118】
[実施例32]
(溶液の調製)
溶媒としてエタノール(EtOH)、有機物として(10-フェニルデシル)ホスホン酸を用い、該有機物が1質量%となるように混合溶解させ、溶液を調製した。
(有機物を含む溶液による表面処理)
上述の「基板の準備」に記載の方法で準備したCoOxを有する基板、Coを有する基板及びSiOxを有する基板を、それぞれ上記溶液に22℃で1時間浸漬させ、基板の表面処理を行い、それぞれの基板の表面に有機物を堆積させた。その後、IPAに60秒、2回浸漬させて、窒素ガスを60秒間吹き付けて基板を乾燥させた。
【0119】
(水の接触角の測定)
実施例32に係る基板の表面上に純水約1μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学株式会社製:DM-301)で測定した。その結果を、実施例3の結果とともに表6に示す。
【0120】
[実施例33及び34]
有機物として下記式(12)のポリエチレングリコールメチルエーテルホスホン酸-15及び下記式(13)のポリエチレングリコールメチルエーテルホスホン酸-11をそれぞれ用いた以外は、実施例32と同様に実施し、評価を行った。その結果を表6に示す。
CH-O-(CHCHO)11-CHCH-PO (12)
CH-O-(CHCHO)15-CHCH-PO (13)
【0121】
【表6】
【0122】
表6に示す結果より明らかなように、実施例32~34ではCoを有する基板、CoOxを有する基板は、SiOxを有する基板よりも接触角が高くなり、有機物として、一般式(10)又は(11)で表される有機物を用いることにより、金属又は金属酸化物の表面に、選択的に有機物の膜を堆積できることが判明した。
【0123】
本願は、2021年2月1日に出願された日本国特許出願2021-014552号を基礎として、パリ条約ないし移行する国における法規に基づく優先権を主張するものである。該出願の内容は、その全体が本願中に参照として組み込まれている。