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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-14
(45)【発行日】2026-01-22
(54)【発明の名称】車両の姿勢制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1755 20060101AFI20260115BHJP
【FI】
B60T8/1755 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2025508217
(86)(22)【出願日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2024005018
(87)【国際公開番号】W WO2024195365
(87)【国際公開日】2024-09-26
【審査請求日】2025-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2023045385
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹木 隆広
(72)【発明者】
【氏名】葉 威徳
【審査官】石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-201358(JP,A)
【文献】特開2010-83329(JP,A)
【文献】特開2007-030581(JP,A)
【文献】特開平8-192730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/1755
B60T 8/00
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチダイブ及びアンチリフトのジオメトリを有するサスペンション装置によって前後左右の車輪が懸架された車両に備えられ、
前記前後左右の車輪に夫々備えられた制動装置と、
前記前後左右の制動装置を作動制御し、前記前後左右の車輪に独立して制動力を付加可能な制動制御部と、
前記前後左右の車輪の回転速度を夫々検出する速度検出部と、
前記車両の前後方向加速度を検出する前後加速度検出部と、
を備え、
前記制動制御部は、
各前記車輪の回転速度と前記車両の前後方向加速度とに基づいて、前記車両のピッチ状態を判定するピッチ判定部と、
前記ピッチ状態に基づいて、前記前後左右の各制動装置により制動力を付加させる姿勢制御部と、を備え、
前記ピッチ判定部は、各前記車輪の回転加速度及び前記車両の前後方向加速度に基づいて、前記ピッチ状態を判定する複数種類の判定条件を備え、前記判定条件を満たす毎に設定される付加モーメントを加算して、前記車両の総合的な付加モーメントを演算し、
前記判定条件を満たす毎に設定される付加モーメントは、
前記車輪が凸路面に乗りあげたときに発生する第1周期目のピッチモーメントを抑制する第1付加ピッチモーメントと、
前記車輪が凸路面を乗り越えた後に続く第2周期目のピッチモーメントを抑制する第2付加ピッチモーメントと、を有する
ことを特徴とする車両の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記第1付加ピッチモーメントは、
前記車両の前輪が凸路面に乗りあげた際の前記車両のピッチ状態に基づく車両前方に向けた第1前輪付加ピッチモーメントと、
前記車両の後輪が凸路面を乗り越えた際の前記車両のピッチ状態に基づく車両後方に向けた第1後輪付加ピッチモーメントと、を有し、
前記第2付加ピッチモーメントは、
前記車両の前輪が凸路面に乗りあげた後の前記車両のピッチ状態に基づく車両前方に向けた第2前輪付加ピッチモーメントと、
前記車両の後輪が凸路面を乗り越えた後の前記車両のピッチ状態に基づく車両後方に向けた第2後輪付加ピッチモーメントと、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記姿勢制御部は、車両走行中に前記ピッチ判定部により前記車両の所定以上の前記ピッチ状態を判定した場合に、前記ピッチ状態に基づく前記制動装置の制動力の付加を所定時間維持する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記姿勢制御部は、前記車両の運転者による所定以上の制動操作時には、前記ピッチ状態に基づく制動力の付加を抑制する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記車両は、前記制動装置の制動力を制御して前記車両の走行安全性を向上する制動制御部を備え、
前記姿勢制御部は、前記制動制御部による前記制動装置の制動力の制御を実行しているときには、前記ピッチ状態に基づく制動力の付加を抑制する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記制動制御部は、
各前記車輪の回転速度と前記車両の前後方向加速度とに基づいて、前記車両のロール状態を判定するロール判定部を備え、
前記姿勢制御部は、前記ピッチ状態及び前記ロール状態に基づいて、前記前後左右の各制動装置により制動力を付加させ、
前記ロール判定部は、各前記車輪の回転加速度及び前記車両の前後方向加速度に基づいて、前記ロール状態を判定する複数種類の判定条件を備え、前記判定条件を満たす毎に設定される付加モーメントを前記車両の総合的な付加モーメントに加算する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の姿勢制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置を利用した車両の姿勢制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
凹凸路を走行する際に車両の姿勢を安定させて乗員の快適性を向上させる技術として、四輪アクティブサスペンション装置を使用する方法が知られている。四輪アクティブサスペンション装置により各車輪のサスペンション装置の反力を制御して、車両の姿勢を制御する。しかしながら、四輪アクティブサスペンション装置は比較的高価であるといった問題点がある。そこで、四輪アクティブサスペンション装置を有しない車両において、サスペンション装置におけるアンチダイブ力及びアンチリフト力を利用して、四輪の制動力(ブレーキ力)の制御による姿勢制御装置が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、車両の旋回走行時において車両の目標ヨーレートと実ヨーレートとの偏差が所定値を越え、かつ当該偏差の時間変化率が所定値を越えている場合に、旋回内側の車輪に制動力を付加することで、車両の旋回挙動を向上させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-50024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、四輪の制動力の制御により、車両のヨーレートを制御するものであるが、車両の前後方向の挙動であるピッチについても安価に制御可能な装置が要求されている。なお、車両の姿勢制御を行う際には、車両の姿勢を検出することが必要である。しかしながら、四輪アクティブサスペンション装置を有しない車両では、サスペンション装置にストロークセンサを有しない場合が多く、車両の姿勢を検出することが困難であった。
【0006】
また、ピッチを抑制すべく制動制御を行ったとしても、制御遅れ等によりピッチを急速に収束させることは困難であった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サスペンション装置にストロークセンサを有しない車両において、ピッチを急速に抑制させる車両の姿勢制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両の姿勢制御装置は、アンチダイブ及びアンチリフトのジオメトリを有するサスペンション装置によって前後左右の車輪が懸架された車両に備えられ、前記前後左右の車輪に夫々備えられた制動装置と、前記前後左右の制動装置を作動制御し、前記前後左右の車輪に独立して制動力を付加可能な制動制御部と、前記前後左右の車輪の回転速度を夫々検出する速度検出部と、前記車両の前後方向加速度を検出する前後加速度検出部と、を備え、前記制動制御部は、各前記車輪の回転速度と前記車両の前後方向加速度とに基づいて、前記車両のピッチ状態を判定するピッチ判定部と、前記ピッチ状態に基づいて、前記前後左右の各制動装置により制動力を付加させる姿勢制御部と、を備え、前記ピッチ判定部は、各前記車輪の回転加速度及び前記車両の前後方向加速度に基づいて、前記ピッチ状態を判定する複数種類の判定条件を備え、前記判定条件を満たす毎に設定される付加ピッチモーメントを加算して、前記車両の総合的な付加モーメントを演算し、前記判定条件を満たす毎に設定される付加ピッチモーメントは、前記車輪が凸路面に乗りあげたときに発生する第1周期目のピッチモーメントを抑制する第1付加ピッチモーメントと、前記車輪が凸路面を乗り越えた後に続く第2周期目のピッチモーメントを抑制する第2付加ピッチモーメントと、を有することを特徴とする。
【0008】
これにより、各車輪の回転速度と車両の前後方向加速度とに基づいて、車両のピッチ状態を判定し、ピッチを打ち消すように、前後左右の各制動装置により制動力を付加させる。したがって、速度検出部と前後加速度検出部といった比較的安価な検出部による検出情報に基づいて、ピッチを低減させることができる。
特に、車輪が凸路面に乗りあげたときに付加する第1付加ピッチモーメントを演算するとともに、車輪が凸路面を乗り越えた後に付加する第2付加ピッチモーメントを演算するので、車輪が凸路面に乗りあげたときに第1付加ピッチモーメントを付加してピッチが十分に抑制されない場合に、更に第2付加ピッチモーメントを付加することでピッチを更に抑制させることができる。
【0009】
好ましくは、前記第1付加ピッチモーメントは、前記車両の前輪が凸路面に乗りあげた際の前記車両のピッチ状態に基づく車両前方に向けた第1前輪付加ピッチモーメントと、前記車両の後輪が凸路面を乗り越えた際の前記車両のピッチ状態に基づく車両後方に向けた第1後輪付加ピッチモーメントと、を有し、前記第2付加ピッチモーメントは、前記車両の前輪が凸路面に乗りあげた後の前記車両のピッチ状態に基づく車両前方に向けた第2前輪付加ピッチモーメントと、前記車両の後輪が凸路面を乗り越えた後のピッチ状態に基づく車両後方に向けた第2後輪付加ピッチモーメントと、を有するとよい。
【0010】
これにより、車両の前輪が凸路面に乗りあげた際と乗りあげた後、及び後輪が凸路面に乗りあげたときと乗りあげた後の夫々について付加ピッチモーメントを演算して制動力を付加することで、車両の全ての車輪について凸路面を通過した際でのピッチを急速に抑制させることができる。
好ましくは、前記姿勢制御部は、車両走行中に前記ピッチ判定部により前記車両の所定以上の前記ピッチ状態を判定した場合に、前記ピッチ状態に基づく前記制動装置の制動力の付加を所定時間維持するとよい。
【0011】
これにより、車両の所定以上のピッチ状態を判定した場合に、ピッチ状態に基づく制動装置の制動力の付加を所定時間維持することで、制動力の付加の過剰な変動を抑えることができる。
好ましくは、前記姿勢制御部は、前記車両の運転者による所定以上の制動操作時には、前記ピッチ状態に基づく制動力の付加を抑制するとよい。
【0012】
これにより、運転者の急な制動操作に対して、姿勢制御部による制動を抑制して、運転者が要求する制動を優先することができる。
好ましくは、前記車両は、前記制動装置の制動力を制御して前記車両の走行安全性を向上する制動制御部を備え、前記姿勢制御部は、前記制動制御部による前記制動装置の制動力の制御を実行しているときには、前記ピッチ状態に基づく制動力の付加を抑制するとよい。
【0013】
これにより、制動制御部による制動制御時には、姿勢制御部による制動を抑制して、制動制御部による例えば車両の走行安定性の向上や衝突の回避といったような車両の走行安全性を向上させる制御を優先して実行させることができる。
好ましくは、前記制動制御部は、各前記車輪の回転速度と前記車両の前後方向加速度とに基づいて、前記車両のロール状態を判定するロール判定部を備え、前記姿勢制御部は、前記ピッチ状態及び前記ロール状態に基づいて、前記前後左右の各制動装置により制動力を付加させ、前記ロール判定部は、各前記車輪の回転加速度及び前記車両の前後方向加速度に基づいて、前記ロール状態を判定する複数種類の判定条件を備え、前記判定条件を満たす毎に設定される付加ロールモーメントを前記車両の総合的な付加モーメントに加算するとよい。
【0014】
これにより、各車輪の回転速度と車両の前後方向加速度とに基づいて、車両のロール状態をも判定し、ピッチ状態とともに当該ロール状態を打ち消すように、前後左右の各制動装置により制動力を付加させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両の姿勢制御装置は、車輪回転速度や車両前後方向加速度を検出する比較的安価な検出部による検出情報を使用して、車両のピッチを低減させることができる。更に、車輪が凸路面に乗りあげたときに第1付加ピッチモーメントを付加してピッチが十分に抑制されない場合に、車輪が凸路面に乗りあげた後に第2付加ピッチモーメントを付加することでピッチを更に抑制させることができる。したがって、車輪が凸路面に乗りあげた後に残るピッチを急速に収束させることができ、車両の乗り心地を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の車両の姿勢制御装置の概略構成図である。
図2】車両のサスペンション装置におけるアンチダイブ力、アンチリフト力の説明図である。
図3】前輪が乗り上げた場合に発生するピッチモーメント及びそれに対する付加モーメントのイメージ図である。
図4】後輪が乗り上げた場合に発生するピッチモーメント及びそれに対する付加モーメントのイメージ図である。
図5】右輪が乗り上げた場合に発生するロールモーメント及びそれに対する付加モーメントのイメージ図である。
図6】左輪が乗り上げた場合に発生するロールモーメント及びそれに対する付加モーメントのイメージ図である。
図7】前輪が乗り上げた場合での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図8】後輪が乗り上げた場合での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図9】右側の1輪が乗り上げた場合での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図10】右側の2輪が乗り上げた場合での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図11】右側の2輪及び左側の1輪が乗り上げた場合での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図12】左側の1輪が乗り上げた場合での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図13】左側の2輪が乗り上げた場合での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図14】左側の2輪及び右側の1輪が乗り上げた場合での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図15】前輪が乗り上げた後に残るピッチモーメント及びそれに対する付加モーメントのイメージ図である。
図16】後輪が乗り上げた後に残るピッチモーメント及びそれに対する付加モーメントのイメージ図である。
図17】前輪が乗り上げた後での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図18】後輪が乗り上げた後での付加モーメントの演算方法を示すフローチャートである。
図19】前輪が乗り上げた場合でのピッチ角の推移例と各制御タイミングを示すタイムチャートである。
図20】ピッチ・ロール制御の実行判定の制御要領を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は、発明の一実施形態の車両の姿勢制御装置10の概略構成図である。
本発明の一実施形態の姿勢制御装置10は、車体の前後左右に車輪3a~3d(走行輪)を有する4輪車両(以下、車両1という)に搭載されている。車両1の各車輪3a~3dと車体との間には、アンチダイブ及びアンチリフトのジオメトリを有し、車体に対して車輪3a~3dを夫々懸架するサスペンション装置11が備えられている。
【0018】
車両1の各車輪3a~3dには、夫々ブレーキ装置30a~30d(制動装置)が備えられている。
ブレーキ装置30a~30dは、ブレーキコントロールユニット31(制動制御部)によって制御され、車輪3a~3d毎に任意の異なるブレーキ力(制動力)を付加することが可能になっている。
【0019】
なお、各車輪3a~3dは、例えば電気モータやエンジンによって駆動される。例えば前輪3a、3bと後輪3c、3dを夫々電気モータによって駆動可能であるとともにエンジンによって前輪3a、3bを駆動可能なプラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車、電気モータのみで車輪3a~3dを駆動する電気自動車、エンジンのみで車輪3a~3dを駆動するエンジン車等の各種の走行駆動源、また4輪駆動あるいは2輪駆動といったように各種の駆動形態の車両に対して本発明は適用可能である。
【0020】
車両1には、車体の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ35(前後加速度検出部)が備えられるとともに、各車輪3a~3dの回転速度を検出する車輪速度センサ33a~33d(速度検出部)が夫々備えられている。
姿勢制御装置10は、前後加速度センサ35と、各車輪3a~3dの車輪速度センサ33a~33dと、ブレーキコントロールユニット31によって構成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、前後加速度センサ35及び車輪速度センサ33a~33dの検出値がブレーキコントロールユニット31に入力するように構成されているが、例えば車両全体を制御するメインコントロールユニット20を介して入力するような構成でもよい。
ブレーキコントロールユニット31は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。ブレーキコントロールユニット31には、図示しないブレーキペダルセンサからブレーキペダルの操作量を入力し、当該ブレーキペダルの操作量等に基づいて、ブレーキ装置30a~30dによる制動力(ブレーキ力)が制御される。
【0022】
また、ブレーキコントロールユニット31には、前後加速度センサ35及び車輪速度センサ33a~33dから検出情報が入力される。姿勢制御装置10は、前後加速度センサ35と各車輪3a~3dの車輪速度センサ33a~33dの検出情報に基づいて、車両1の姿勢、詳しくは車両1のピッチ及びロール状態を推定するピッチ・ロール判定部40(ピッチ判定部、ロール判定部)と、推定したピッチやロールを低減させるように各車輪3a~3dに付加するブレーキ力を演算する付加制動力演算部41(姿勢制御部)と、を備えている。姿勢制御装置10は、前後加速度センサ35と車輪速度センサ33a~33dの検出情報に基づいて、車両のピッチ及びロールを推定し、当該ピッチやロールを低減させるように各車輪3a~3dに付加するブレーキ力を設定するピッチ・ロール制御を実行する。
【0023】
図2は、アンチダイブ力、アンチリフト力の説明図である。
始めに、車両1のサスペンション装置におけるアンチダイブ力及びアンチリフト力と、ピッチモーメント及びロールモーメントとの関係について説明する。
図2に示すように、車両1の前輪3a、3bの接地点と車体の重心Aとの車両前後方向の距離をa、車両1の後輪3c、3dの接地点と重心Aとの車両前後方向の距離をb、重心Aの地面からの高さをhCG、車両全体のブレーキ力をF、ブレーキ力の前輪3a、3b側の比をλ、アンチリフト角をβf、アンチダイブ角をβrとすると、車両1の減速によって発生するピッチモーメントと、サスペンション装置11のアンチダイブ力、アンチリフト力によって発生するピッチモーメントと、の合計値であるピッチモーメントMyは、以下の(式1)で求められる。
【0024】
My=F×hCG-(λF×|tan(βf)×a+(1-λ)F×|tan(βr)|×b)
・・・(式1)
また、フロントトラック(左右前輪3a、3b間の距離)をtf、リヤトラック(左右後輪3c、3d間の距離)をtr、左前輪3aの制動力(ブレーキ力)をFbfl、右前輪3bの制動力をFbfr、左後輪3cの制動力をFbrl、右後輪3dの制動力をFbrrとすると、サスペンション装置11のアンチダイブ力、アンチリフト力によって発生するロールモーメントMxは、以下の(式2)によって求められる。
【0025】
Mx=tf/2(Fbfl-Fbfr)×tan(βf)+tr/2(-Fbrl-Fbrr)×tan(βr)
・・・(式2)
図3~6は、本実施形態の姿勢制御装置10における付加モーメントのイメージ図である。図3は前輪3a、3bが乗り上げた場合、図4は後輪3c、3dが乗り上げた場合に発生するピッチモーメント及びそれに対する付加モーメントのイメージ図である。
【0026】
図3の実線の矢印に示すように、車両1の前輪3a、3bが凸路面を乗り上げた際に発生するピッチモーメントは、車両1の重心回りを後方側に回転するようなモーメントである。これに対し、姿勢制御装置10は、このピッチモーメントを打ち消すように、破線の矢印に示す車両前方側に回転する付加ピッチモーメントMy1を付加する。
図4の実線の矢印に示すように、車両1の後輪3c、3dが凸路面を乗り上げた際に発生するピッチモーメントは、車両1の重心回りを前方側に回転するようなモーメントである。これに対し、姿勢制御装置10は、このピッチモーメントを打ち消すように、破線の矢印に示す車両後方側に回転する付加ピッチモーメントMy2を付加する。
【0027】
なお、付加ピッチモーメントMy1、My2は本発明の第1付加ピッチモーメントに該当する。更に、付加ピッチモーメントMy1は本発明の第1前輪付加ピッチモーメントに該当し、付加ピッチモーメントMy2は本発明の第1後輪付加ピッチモーメントに該当する。
また、図5の実線の矢印に示すように、車両1の右側の車輪3b、3dが凸路面を乗り上げた際に発生するロールモーメントは、車両1の重心回りを車幅方向左側に回転するようなモーメントである。図5に示すように、(a)一輪(例えば右前輪3b)のみ凸路面に乗り上げている場合、(b)2輪(右前輪3b及び右後輪3d)が凸路面に乗り上げている場合、(c)3輪(右前輪3b、右後輪3d及び例えば左前輪3a)が凸路面に乗り上げている場合が考えられる。
【0028】
したがって、図5(a)~(c)の場合において、図5の破線で示すように、ロールモーメントを打ち消すような付加ロールモーメントMx1、Mx2、Mx3を付加すればよい。図5における(a)の場合には付加ロールモーメントMx1,(b)の場合には付加ロールモーメントMx2,(c)の場合には付加ロールモーメントMx3である。
また、図6の実線の矢印に示すように、車両1の左側の車輪3a、3cが凸路面を乗り上げた際に発生するロールモーメントは、車両1の重心回りを車幅方向右側に回転するようなモーメントである。図6に示すように、(a)一輪(例えば左前輪3a)のみ凸路面に乗り上げている場合、(b)2輪(左前輪3a及び左後輪3c)が凸路面に乗り上げている場合、(c)3輪(左前輪3a、左後輪3c及び例えば右前輪3b)が凸路面に乗り上げている場合が考えられる。
【0029】
したがって、(a)~(c)の場合において、図6の破線で示すように、ロールモーメントを打ち消すような付加ロールモーメントMx4、Mx5、Mx6を付加すればよい。図6における(a)の場合には付加ロールモーメントMx4,(b)の場合には付加ロールモーメントMx5,(c)の場合には付加ロールモーメントMx6とする。
なお、図5、6の(b)、(c)において、×印が凸路面に乗り上げていることを示す。図5、6の(b)、(c)では、モーメントを示す矢印が上面図に記載しているが、実際には(a)と同様な縦方向のロールモーメントである。
【0030】
ブレーキコントロールユニット31において実行する、車両1の姿勢を判定する方法について説明する。
ブレーキコントロールユニット31のピッチ・ロール判定部40は、車両1の前後加速度と各車輪3a~3dの車輪回転速度とに基づいて、上記の各ピッチ・ロールに関する姿勢を判定する。
【0031】
図3に示すような車両1の前輪3a、3bが凸路面を乗り上げた姿勢は、以下のテーブル1の条件が満たされた場合である。
テーブル1の条件は、左右前輪3a、3bの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(FRwa>Xwa1、FLwa>Xwa2)、左右後輪3c、3dの車輪回転加速度が所定の閾値未満(|wsaRL|<Xwa3、|wsaRR|<Xwa4)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa1)といった5個の条件の全てを満たした場合である。
【0032】
図4に示すような車両1の後輪3c、3dが凸路面を乗り上げた姿勢は、以下のテーブル2の条件が満たされた場合である。
テーブル2の条件は、左右後輪3c、3dの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(RLwa>Xwa5、RRwa>Xwa6)、左右前輪3a、3bの車輪回転加速度が所定の閾値未満(|wsaFL|<Xwa7、|wsaFR|<Xwa8)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa2)といった5個の条件の全てを満たした場合である。
【0033】
図5(a)に示すような車両1の右側の1つの車輪が凸路面を乗り上げた姿勢は、以下のテーブル3の条件が満たされた場合である。
テーブル3の条件は、右前輪3bの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(FRwa>Xwa9)、他の車輪3a、3c、3dの車輪回転加速度が所定の閾値未満(|wsaFL|<Xwa10、|wsaRL|<Xwa11、|wsaRL|<Xwa12)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa3)といった5個の条件の全てを満たした場合である。または、右後輪3dの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(RRwa>Xwa13)、他の車輪3a、3b、3cの車輪回転加速度が所定の閾値未満(|wsaFR|<Xwa14、|wsaFL|<Xwa15、|wsaRL|<Xwa16)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa4)といった5個の条件の全てを満たした場合についても、テーブル3の条件である。
【0034】
図5(b)に示すような車両1の右側の2つの車輪3b、3dが凸路面を乗り上げた姿勢は、以下のテーブル4の条件が満たされた場合である。
テーブル4の条件は、右側の2つの車輪3b、3dの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(FRwa>Xwa17、RRwa>Xwa18)、左側の2つの車輪3a、3cの回転加速度が所定の閾値未満(|wsaFL|<Xwa19、|wsaRL|<Xwa20)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa5)といった5個の条件の全てを満たした場合である。
【0035】
図5(c)示すような車両1の右側の2つの車輪及び左側の1つの車輪が凸路面を乗り上げた姿勢は、以下のテーブル5の条件が満たされた場合である。
テーブル5の条件は、左右前輪3a、3bの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(FLwa>Xwa21、FRwa>Xwa22)、右後輪3dの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(RRwa>Xwa23)、左後輪3cの回転加速度が所定の閾値未満(|wsaRL|<Xwa24)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa6)のといった5個の条件全てを満たした場合である。
【0036】
図6(a)に示すような車両1の左側の1つの車輪が凸路面を乗り上げた姿勢は、以下のテーブル6の条件が満たされた場合である。
テーブル6の条件は、左前輪3aの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(FLwa>Xwa25)、他の車輪3b、3c、3dの回転加速度が所定の閾値未満(|wsaFR|<Xwa26、|wsaRL|<Xwa27、|wsaRR|<Xwa28)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa7)といった5個の条件の全てを満たした場合である。または、左後輪3cの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(RLwa>Xwa29)、他の車輪3a、3b、3dの回転加速度が所定の閾値未満(|wsaFR|<Xwa30、|wsaFL|<Xwa31、|wsaRR|<Xwa32)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa8)といった5個の条件の全てを満たした場合についても、テーブル6の条件である。
【0037】
図6(b)に示すような車両1の左側の2つの車輪3a、3cが凸路面を乗り上げた姿勢は、以下のテーブル7の条件が満たされた場合である。
テーブル7の条件は、左側の車輪3a、3cの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(FLwa>Xwa33、RLwa>Xwa34)、右側の2つの車輪3b、3dの回転加速度が所定の閾値未満(|wsaFR|<Xwa35、|wsaRR|<Xwa36)、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa9)といった5個の条件の全てを満たした場合である。
【0038】
図6(c)に示すような車両1の左側の2つの車輪3a、3c及び右側の1つの車輪が凸路面を乗り上げた姿勢は、以下のテーブル8の条件が満たされた場合である。
テーブル8の条件は、前輪3a、3bの回転加速度が所定の閾値を超えた場合(FRwa>Xwa37、FLwa>Xwa38)、左後輪3cの加速度が所定の閾値を超えた場合(RLwa>Xwa39)、右後輪3dの回転加速度が所定の閾値未満(|wsaRR|<Xwa40、車両前後の加速度が所定の閾値を超えた場合(La<Xaa10)といった5個の条件の全てを満たした場合である。
【0039】
なお閾値Xwa1~Xwa40、Xaa1~Xaa10は、夫々適宜設定した値である。
図7~14は、付加ピッチモーメントMy1,My2、及び付加ロールモーメントMx1~Mx6の演算方法を示すフローチャートである。
図7は前輪3a、3bが乗り上げた場合での付加ピッチモーメントMy1、図8は後輪3c、3dが乗り上げた場合での付加ピッチモーメントMy2、図9は右側の1輪が乗り上げた場合での付加ロールモーメントMx1、図10は右側の2輪が乗り上げた場合での付加ロールモーメントMx2、図11は右側の2輪及び左側の1輪が乗り上げた場合での付加ロールモーメントMx3、図12は左側の1輪が乗り上げた場合での付加ロールモーメントMx4、図13は左側の2輪が乗り上げた場合での付加ロールモーメントMx5、図14は左側の2輪及び右側の1輪が乗り上げた場合での付加ロールモーメントMx6の演算方法を示す。
【0040】
図7に示すように、始めにステップS10では、上記のテーブル1の条件が満たされているか否かを判別する。テーブル1の条件が満たされている場合には、ステップS20に進む。テーブル1の条件が満たされていない場合には、ステップS60に進む。
ステップS20では、ブレーキタイマXT1をカウントアップする。そして、ステップS30に進む。
【0041】
ステップS30では、ブレーキタイマXT1が適宜設定された制動時間閾値XTime1未満であるか否かを判別する。ブレーキタイマXT1が制動時間閾値XTime1未満である場合にはステップS40に進む。ブレーキタイマXT1が制動時間閾値XTime1以上である場合にはステップS50に進む。
ステップS40では、付加ピッチモーメントMy1を適宜設定されたxxMy1に設定する。そして、本ルーチンをリターンする。
【0042】
ステップS50では、付加ピッチモーメントMy1を0に設定するとともに、ブレーキタイマXT1を0にリセットする。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS60では、ブレーキタイマXT1が0でないか否かを判別する。ブレーキタイマXT1が0でない場合には、ステップS70に進む。ブレーキタイマXT1が0である場合には、ステップS80に進む。
【0043】
ステップS70では、ブレーキタイマXT1をカウントアップする。そして、ステップS90に進む。
ステップS80では、付加ピッチモーメントMy1を0に設定する。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS90では、ブレーキタイマXT1が制動時間閾値XTime1未満であるか否かを判別する。ブレーキタイマXT1が制動時間閾値XTime1未満である場合にはステップS100に進む。ブレーキタイマXT1が制動時間閾値XTime1以上である場合にはステップS110に進む。
【0044】
ステップS100では、付加ピッチモーメントMy1をxxMy1に設定する。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS110では、付加ピッチモーメントMy1を0に設定するとともに、ブレーキタイマXT1を0にリセットする。そして、本ルーチンをリターンする。
以上のように制御することで、テーブル1の条件が満たされている場合には、ブレーキタイマXT1が制動時間閾値XTime1に到達するまで、付加ピッチモーメントMy1がxxMy1に設定される。
【0045】
図8に示すように、付加ピッチモーメントMy2についても、付加ピッチモーメントMy1と同様に設定される。
即ち、テーブル2の条件が満たされている場合には、ブレーキタイマXT2が制動時間閾値XTime2に到達するまで、付加ピッチモーメントMy2がxxMy2に設定される。
図9に示すように付加ロールモーメントMx1についても、付加ピッチモーメントMy1と同様に設定される。
【0046】
即ち、テーブル3の条件が満たされている場合には、ブレーキタイマXT3が制動時間閾値XTime3に到達するまで、付加ロールモーメントMx1がxxMx1に設定される。
付加ロールモーメントMx2については図10に示すように、付加ロールモーメントMx3については図11に示すように、付加ロールモーメントMx4については図12に示すように、付加ロールモーメントMx5については図13に示すように、付加ロールモーメントMx6については図14に示すように、いずれも付加ロールモーメントMx1と同様に設定される。
【0047】
本実施形態の姿勢制御装置10は、上記のピッチ・ロール制御に加えて、車両1の前輪3a、3bあるいは後輪3c、3dが凸路面を乗り越えた後に残るピッチを収束させるピッチ収束制御を実行する。
図15、16は、本実施形態の姿勢制御装置10におけるピッチ収束制御においての付加モーメントのイメージ図である。図15は前輪3a、3bが凸路面を乗り越えた直後、図16は後輪3c、3dが凸路面を乗り越えた直後におけるピッチモーメント及びそれに対する付加モーメントのイメージ図である。
【0048】
上記のピッチ・ロール制御により、車両1の前輪3a、3bが凸路面を乗り超えたとき、あるいは後輪3c、3dが凸路面を乗り超えたときに、ピッチモーメントを打ち消す制御を行ったとしても、制御遅れ等によりピッチ方向の振動が残留する可能性がある。
姿勢制御装置10は、図15の実線の矢印に示すような前輪3a、3bが凸路面を乗り超えた後に残る車両1の重心回りを後方側に回転するピッチモーメントを打ち消すように、破線の矢印に示す車両前方側に回転する付加ピッチモーメントMy3を付加する。
【0049】
また、姿勢制御装置10は、図16の実線の矢印に示すような後輪3c、3dが凸路面を乗り超えた後に残る車両1の重心回りを前方側に回転するピッチモーメントを打ち消すように、破線の矢印に示す車両後方側に回転する付加ピッチモーメントMy4を付加する。
なお、付加ピッチモーメントMy3、My4は本発明の第2付加ピッチモーメントに該当する。更に、付加ピッチモーメントMy3は本発明の第2前輪付加ピッチモーメントに該当し、付加ピッチモーメントMy4は本発明の第2後輪付加ピッチモーメントに該当する。
【0050】
図17は付加ピッチモーメントMy3、図18は付加ピッチモーメントMy4の演算方法を示すフローチャートである。これらのフローチャートは、短い制御周期(例えば数msec程度)で夫々繰り返し実行される。図19は、前輪3a、3bが乗り上げた場合でのピッチ角の推移例と各制御タイミング(判定フラグ)を示すタイムチャートである。
図17に示すように、始めにステップS1710では、上記のテーブル1の条件が満たされているか否かを判別する。テーブル1の条件が満たされている場合には、ステップS1720に進む。テーブル1の条件が満たされていない場合には、ステップS1800に進む。
【0051】
ステップS1720では、車速に基づいて、ピッチ収束制御用の制動開始時間閾値XTimeMy3と制動時間閾値XTime9を設定する。
図19に示すように、車輪(前輪3a、3b)が凸路面に乗り上げると車両1のピッチ角速度が0から周期的に+、-を繰り替えしながら減少していく。
制動開始時間閾値XTimeMy3は、前輪3a、3bが凸路面に乗り上げた際の、テーブル1の条件成立(ピッチ角速度=0)から、ピッチ角速度が+、0、-を経て再び0になるまでの、最初の1周期分の時間である。
【0052】
制動時間閾値XTime9は、ピッチ角速度の第2周期目の+になる時間である。
制動開始時間閾値XTimeMy3は、あらかじめ記憶されたテーブル9より車速に基づいて出力される。制動時間閾値XTime9は、あらかじめ記憶されたテーブル10より車速に基づいて出力される。なお、テーブル9、10は、数段階に区分した車速に対応して、制動開始時間閾値XTimeMy3、制動時間閾値XTime9が記憶されている。そして、ステップS1730に進む。
【0053】
ステップS1730では、ブレーキ開始タイマXTMy3をカウントアップする。そして、ステップS1740に進む。
ステップS1740では、ブレーキ開始タイマXTMy3がステップS1720で設定された制動開始時間閾値XTimeMy3を超えているか否かを判別する。ブレーキ開始タイマXTMy3が制動開始時間閾値XTimeMy3を超えている場合にはステップS1750に進む。ブレーキ開始タイマXTMy3が制動開始時間閾値XTimeMy3以下である場合にはステップS1790に進む。
【0054】
ステップS1750では、ブレーキタイマXT9をカウントアップする。そして、ステップS1760に進む。
ステップS1760では、ブレーキタイマXT9がステップS1720で設定された制動時間閾値XTime9未満であるか否かを判別する。ブレーキタイマXT9が制動時間閾値XTime9未満である場合にはステップS1770に進む。ブレーキタイマXT9が制動時間閾値XTime9以上である場合にはステップS1780に進む。
【0055】
ステップS1770では、付加ピッチモーメントMy3を適宜設定されたxxMy3に設定する。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS1780では、付加ピッチモーメントMy3を0に設定するとともに、ブレーキタイマXT9及びブレーキ開始タイマXTMy3を0にリセットする。そして、本ルーチンをリターンする。
【0056】
ステップS1790では、付加ピッチモーメントMy3を0に設定する。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS1800では、ブレーキタイマXT3が0でないか否かを判別する。ブレーキタイマXT3が0でない場合には、ステップS1810に進む。ブレーキタイマXT3が0である場合には、ステップS1880に進む。
【0057】
ステップS1810では、ブレーキ開始タイマXTMy3をカウントアップする。そして、ステップS1820に進む。
ステップS1820では、ブレーキ開始タイマXTMy3がステップS1720で設定された制動開始時間閾値XTimeMy3を超えているか否かを判別する。ブレーキ開始タイマXTMy3が制動開始時間閾値XTimeMy3を超えている場合にはステップS1830に進む。ブレーキ開始タイマXTMy3が制動開始時間閾値XTimeMy3以下である場合にはステップS1870に進む。
【0058】
ステップS1830では、ブレーキタイマXT9をカウントアップする。そして、ステップS1840に進む。
ステップS1840では、ブレーキタイマXT9がステップS1720で設定された制動時間閾値XTime9未満であるか否かを判別する。ブレーキタイマXT9が制動時間閾値XTime9未満である場合にはステップS1850に進む。ブレーキタイマXT9が制動時間閾値XTime9以上である場合にはステップS1860に進む。
【0059】
ステップS1850では、付加ピッチモーメントMy3を適宜設定されたxxMy3に設定する。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS1860では、付加ピッチモーメントMy3を0に設定するとともに、ブレーキタイマXT9及びブレーキ開始タイマXTMy3を0にリセットする。そして、本ルーチンをリターンする。
【0060】
ステップS1870では、付加ピッチモーメントMy3を0に設定する。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS1880では、付加ピッチモーメントMy3を0に設定する。そして、本ルーチンをリターンする。
以上のように制御することで、テーブル1の条件が満たされている場合には、ブレーキ開始タイマXTMy3が制動開始時間閾値XTimeMy3に到達してから、ブレーキタイマXT9が制動時間閾値XTime9に到達するまで、付加ピッチモーメントMy3がxxMy3に設定される(図19のMy3=xxMy3設定期間)。
【0061】
図18に示すように、付加ピッチモーメントMy4についても、付加ピッチモーメントMy3と同様に設定される。
即ち、テーブル2の条件が満たされている場合には、ブレーキ開始タイマXTMy4が制動開始時間閾値XTimeMy4に到達してから、ブレーキタイマXT10が制動時間閾値XTime10に到達するまで、付加ピッチモーメントMy4がxxMy4に設定される。
【0062】
車両1の最終的に付加するピッチモーメントMyとロールモーメントMxを、以下の(式3)、(式4)によって演算する。
My=My1+My2+My3+My4・・・(式3)
Mx=Mx1+Mx2+Mx3+Mx4+Mx5+Mx6・・・(式4)
次に、付加モーメント値から各車輪の付加制動力Fbfl、Fbfr、Fbrl、Fbrrを演算する。付加モーメントに関する計算式は、上述の(式1)、(式2)を変形して、以下の(式5)、(式6)になる。
【0063】
【数1】
【0064】
【数2】
【0065】
また、合計付加制動力X Total Force(=XX Force)は、以下の(式7)より求められる。付加制動力の左右差であるX Dif Forceは、以下の(式8)より求められる。
【0066】
【数3】
【0067】
【数4】
【0068】
なお、X Dif Force=XX Dif×メインコントロールユニット20から入力した要求ヨーモーメント、XX Difは、適宜設定された当該要求ヨーモーメントのゲインである。
ピッチモーメントMy、ロールモーメントMx、合計付加制動力X Total Force及び付加制動力の左右差X Dif Forceについて、マトリクス化すると、以下の(式9)となる。
【0069】
【数5】
【0070】
図20は、上記のピッチ・ロール制御の実行判定の制御要領を示すフローチャートである。図20に示す制御は、システム始動時に実行開始され、車両1の走行時に繰り返し行われる。
始めに、ステップS2000では、ブレーキコントロールユニット31あるいは各ブレーキ装置30a~30dが異常(故障)状態であるか否かを判別する。これらのユニットが異常であるか否かについては、公知の自己診断機能によって判定すればよい。ブレーキコントロールユニット31あるいは各ブレーキ装置30a~30dが異常である場合には、ステップS2040に進む。ブレーキコントロールユニット31及び各ブレーキ装置30a~30dが正常である場合には、ステップS2010に進む。
【0071】
ステップS2010では、ドライバのブレーキ操作量(操作力)が適宜設定された所定の閾値X Cmd Forceを超えているか否かを判別する。ブレーキ操作量が閾値X Cmd Forceを超えている場合には、ステップS2040に進む。ブレーキ操作量が閾値X Cmd Force以下の場合には、ステップS2020に進む。
ステップS2020では、車両1の他の走行制御装置(走行安全装置)、例えばエレクトリック・スタビリティ・コントロールシステム(ESC)、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)、衝突被害軽減ブレーキシステム(AEB)が作動状態(制御中)であるか否かを判別する。他の走行制御装置が作動状態である場合には、ステップS2040に進む。他の走行制御装置が作動状態でない場合(待機状態)では、ステップS2030に進む。
【0072】
ステップS2030では、上記の姿勢制御装置10によるピッチ・ロール制御をオンにする。そして、本ルーチンをリターンする。
ステップS2040では、上記の姿勢制御装置10によるピッチ・ロール制御をオフにする。そして、本ルーチンをリターンする。
以上のように、本発明の実施形態においては、車両1の4輪のブレーキ装置30a~30dの制動力を制御して、車両1のピッチ及びロールを低減させる姿勢制御(ピッチ・ロール制御)が可能になる。
【0073】
現状の車両1のピッチ及びロールについては、各車輪3a~3dの回転加速度と、車両1の前後方向加速度とに基づいて推定される。これにより、4個の車輪速度センサ33a~33d及び前後加速度センサ35といった比較的安価な検出器による検出情報に基づいて、車両1のピッチ及びロールを推定することができる。
ピッチ・ロール判定部40は、各車輪3a~3dの回転加速度及び車両1の前後方向加速度に基づいて車両1のピッチ・ロール状態を判定する判定条件を有するテーブル1~8を備え、各テーブル1~8の条件が満たされるか否かを判定する。
【0074】
付加制動力演算部41は、各テーブル1~8のいずれかの条件が満たされた場合に、テーブル毎に対応する付加モーメントMy1、My2、My3,My4、Mx1~Mx6を設定し、これらの付加モーメントを加算して、車両1の総合的な付加モーメントを演算する。
これにより、車両1のピッチ及びロール状態を容易に判定し、付加モーメントを容易に演算することができる。
【0075】
テーブル1~8毎に設定する付加モーメントMy1、My2、My3,My4、Mx1~Mx6については、詳しくは、以下のとおりである。
・テーブル1は車両後方に向けたピッチモーメントが発生する判定条件を有し、車両前方に向けた付加ピッチモーメントMy1、My3を設定する。
・テーブル2は車両前方に向けたピッチモーメントが発生する判定条件を有し、車両後方に向けた付加ピッチモーメントMy2、My4を設定する。
・テーブル3は車両1の右側の1輪が凸路面に乗り上げている状態でのロールモーメントが発生する判定条件を有し、車両右側に向けた付加ロールモーメントMx1を設定する。
・テーブル4は車両右側の2輪が凸路面に乗り上げている状態でのロールモーメントが発生する判定条件を有し、車両右側に向けた付加ロールモーメントMx2を設定する。
・テーブル5は車両右側の2輪及び左側の1輪が凸路面に乗り上げている状態でのロールモーメントが発生する判定条件を有し、車両右側に向けた付加ロールモーメントMx3を設定する。
・テーブル6は車両左側の1輪が凸路面に乗り上げている状態でのロールモーメントが発生する判定条件を有し、車両左側に向けた付加ロールモーメントMx4を設定する。
・テーブル7は車両左側の2輪が凸路面に乗り上げている状態でのロールモーメントが発生する判定条件を有し、車両左側に向けた付加ロールモーメントMx5を設定する。
・テーブル8は車両左側の2輪及び右側の1輪が凸路面に乗り上げている状態でのロールモーメントが発生する判定条件を有し、車両左側に向けた付加ロールモーメントMx6を設定する。
【0076】
これにより、各車輪3a~3dの回転加速度及び車両1の前後方向加速度に基づいて車両1のピッチ・ロール状態を容易にかつ正確に判定することができる。
また、車輪3a~3dの回転加速度及び車両1の前後方向加速度に基づく各テーブル1~8の判定は、車両1の姿勢変化に迅速に対応するために比較的短い周期で行われる。しかしながら、図7~14のフローチャートの左側の部分に図示したように、各テーブル1~8の判定条件を満たしてブレーキタイマがカウントアップして0でなくなった場合には、ブレーキタイマがカウントアップを完了するまでは、途中で当該テーブル1~8の判定条件が満たされないことが判定されても、当該テーブル1~8に対応する付加モーメントが設定し続けられる。
【0077】
これにより、各テーブル1~8の判定条件を満たした場合の応答性は良好にしつつ、一旦判定条件を満たした場合にはブレーキタイマがカウントアップを完了するまでの所定時間は付加モーメントが設定されて制動力の付加が維持されるので、付加する制動力の過剰な変動(切り換え)を抑制することができる。
本実施形態では、車両1の前輪3aまたは前輪3bが凸路面に乗り上げたときに発生する第1周期目のピッチモーメントを打ち消すための車両前方側への付加ピッチモーメントMy1、車両1の後輪3cまたは後輪3dが凸路面に乗り上げた際に発生する第1周期目のピッチモーメントを打ち消すための車両後方側への付加ピッチモーメントMy2を演算するとともに、前輪3aまたは前輪3bが乗り上げた後に残る第2周期目のピッチモーメントを打ち消すための車両前方側への付加ピッチモーメントMy3、後輪3cまたは後輪3dが乗り上げた後に残る第2周期目のピッチモーメントを打ち消すための車両後方側への付加ピッチモーメントMy4を演算する。したがって、車輪3a~3dが凸路面に乗りあげたときに付加ピッチモーメントMy1,My2を付加するように制動してピッチが十分に抑制されない場合に、付加ピッチモーメントMy3、My4を付加するように制動することで車両1のピッチを更に抑制させることができる。これにより、車輪3a~3dが凸路面に乗りあげた後に残るピッチを急速に収束させることができ、車両1の乗り心地を良好にすることができる。
【0078】
また、ブレーキコントロールユニット31あるいは各ブレーキ装置30a~30dが異常である場合、ドライバのブレーキ操作量が閾値X Cmd Forceを超えている場合、ESC、ABS、AEBといった本姿勢制御装置10以外の他の走行制御装置(走行安全装置)が作動中である場合、のいずれかの場合には、姿勢制御装置10によるピッチ・ロール制御は実行されない。
【0079】
特に、ブレーキ操作力が所定以上である場合にピッチ・ロール制御を実行しないので、運転者が急なブレーキ操作した場合には、本実施形態のピッチ・ロール制御を抑制して、ブレーキ操作による制動を優先することができる。
また、姿勢制御装置以外の他の走行制御装置が作動中(ブレーキ制御中等)である場合には、本実施形態のピッチ・ロール制御を抑制して、他の走行制御装置を優先し、当該他の走行制御装置による走行安全機能を適切に確保することができる。
【0080】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ブレーキ操作量が閾値X Cmd Forceを超えている場合や他の走行制御装置が作動中である場合に、本実施形態のピッチ・ロール制御を実行しないが、本実施形態のピッチ・ロール制御によって制動力を小さく抑えて付加してもよい。
また、上記実施形態では、各ブレーキ装置30a~30dの制御により、ピッチ制御とロール制御の両方を行うピッチ・ロール制御、即ちピッチモーメントMyの付加とロールモーメントMxの付加の両方を行っているが、ピッチモーメントMyの付加をするピッチ制御のみ行ってもよい。
【0081】
本発明は、前後左右の4輪を独立して制動可能な車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 車両
3a~3d 車輪
10 姿勢制御装置
11 サスペンション装置
30a~30d ブレーキ装置(制動装置)
31 ブレーキコントロールユニット(制動制御部)
33a~33d 車輪速度センサ(速度検出部)
35 前後加速度センサ(前後加速度検出部)
40 ピッチ・ロール判定部(ピッチ判定部、ロール判定部)
41 付加制動力演算部(姿勢制御部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20