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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-14
(45)【発行日】2026-01-22
(54)【発明の名称】医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20260115BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20260115BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20260115BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20260115BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20260115BHJP
【FI】
A61K31/551
A61P27/02
A61P27/06
A61K47/18
A61K9/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2025203659
(22)【出願日】2025-11-26
(62)【分割の表示】P 2024160088の分割
【原出願日】2024-09-17
【審査請求日】2025-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2024117165
(32)【優先日】2024-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕明
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-155218(JP,A)
【文献】特開2017-178939(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047720(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、エデト酸、その塩及びそれらの溶媒和物から選ばれる1種以上とを含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物が、ポリエチレン製容器に収容されてなる、高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤。
【請求項2】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~13mg/Lである、請求項1記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤。
【請求項3】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~12mg/Lである、請求項1記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤。
【請求項4】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~11mg/Lである、請求項1記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤。
【請求項5】
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5mg/L以上である水性組成物に、エデト酸、その塩及びそれらの溶媒和物から選ばれる1種以上を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポリエチレン製容器に収容する工程を含む、高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤の凍結の抑制方法。
【請求項6】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~13mg/Lである、請求項5記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤の凍結の抑制方法。
【請求項7】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~12mg/Lである、請求項5記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤の凍結の抑制方法。
【請求項8】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~11mg/Lである、請求項5記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤の凍結の抑制方法。
【請求項9】
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5mg/L以上である水性組成物に、エデト酸、その塩及びそれらの溶媒和物から選ばれる1種以上を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポリエチレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の凍結が抑制された高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤の製造方法。
【請求項10】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~13mg/Lである、請求項9記載の水性組成物の凍結が抑制された高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤の製造方法。
【請求項11】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~12mg/Lである、請求項9記載の水性組成物の凍結が抑制された高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤の製造方法。
【請求項12】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~11mg/Lである、請求項9記載の水性組成物の凍結が抑制された高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療用医薬製剤の製造方法。
【請求項13】
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、エデト酸、その塩及びそれらの溶媒和物から選ばれる1種以上とを含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物が、ポリエチレン製容器に収容されてなる、高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療剤。
【請求項14】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~13mg/Lである、請求項13記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療剤。
【請求項15】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~12mg/Lである、請求項13記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療剤。
【請求項16】
水性組成物の溶存酸素量が8.5~11mg/Lである、請求項13記載の高眼圧症若しくは緑内障の予防又は治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の構造式:
【0003】
【化1】
【0004】
で表されるリパスジル(化学名:4-フルオロ-5-[[(2S)-2-メチル-1,4
-ジアゼパン-1-イル]スルホニル]イソキノリン)は、Rhoキナーゼ阻害作用等の
薬理作用(例えば、特許文献1)を有し、眼疾患の予防や治療に有用であることが知られ
ている。具体的には例えば、高眼圧症や緑内障等の予防又は治療(例えば、特許文献2)
、あるいは加齢黄斑変性等の眼底疾患の予防又は治療(例えば、特許文献3)に有用であ
ることが報告されている。そして、リパスジル塩酸塩水和物を有効成分として含有する高
眼圧症・緑内障の予防・治療剤として、「グラナテック」(登録商標)及び「グラアルフ
ァ」(登録商標)が、日本を含め数ヵ国で開発・上市されている(非特許文献1及び2)

そのため、リパスジルを、例えば眼科用剤等として安定的に製剤化する技術を確立する
ことは、極めて有用である。
【0005】
なお、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物をポリエ
チレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂製容器に収容することにより、高温
で長期間の保存後の変色を抑制できることが報告されている(特許文献4)。
また、グラナテック及びグラアルファは、いずれもリパスジル塩酸塩水和物を含有する
水性組成物がポリプロピレン製の点眼剤用容器本体に収容された医薬品である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4212149号公報
【文献】国際公開第2006/068208号パンフレット
【文献】特許第5557408号公報
【文献】特許第6244038号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】医薬品インタビューフォーム「グラナテック(登録商標)点眼液0.4%」興和株式会社、2023年9月
【文献】医薬品インタビューフォーム「グラアルファ(登録商標)配合点眼液」興和株式会社、2024年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
眼科用剤等は、通常、水を含有する組成物(水性組成物)である。そこで、本発明者は
、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物(以下、「リパ
スジル含有水性組成物」と称することがある。)の保存安定性を検討した。
しかるに、リパスジル含有水性組成物をポリオレフィン系樹脂製容器に収容した場合に
ついて検討したところ、室温(1~30℃)で保存した場合には全く問題が生じない一方
、-5℃もの低温条件下で保存した場合において、しかもリパスジル含有水性組成物中の
溶存酸素量が8.5mg/L以上のとき、当該水性組成物が経時的に凍結し得るという問
題が生じることが判明した。
【0009】
かかる問題に対しては、例えば、リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を低く調整す
ることにより解決し得る。この点、リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を低く調整す
るには、例えば窒素パージ等により溶存酸素を不活性ガスで置換する、あるいは、真空脱
気する等の方法が考えられる。しかし、これらの方法を実施するには多大な労力やコスト
が必要となる。
そこで、本発明は、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されており、溶存酸素量が8.
5mg/L以上であるリパスジル含有水性組成物の、低温保存時の凍結を抑制する技術を
提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するためさらに鋭意検討したところ、溶存酸素量が8.5
mg/L以上であるリパスジル含有水性組成物に、さらにエデト酸及びその塩並びにそれ
らの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上に代表される低級脂肪族カルボン酸類を含
有せしめ、かつ、当該水性組成物を、ポリオレフィン系樹脂製容器の中でもポリエチレン
製容器に収容せしめた場合に特異的に、低温保存時の凍結が抑制されることを見出し、本
発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、低級脂肪族
カルボン酸類とを含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物が、ポリエチ
レン製容器に収容されてなる、医薬製剤を提供するものである。
また、本発明は、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素
量が8.5mg/L以上である水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工
程、及び、水性組成物をポリエチレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の凍結の
抑制方法を提供するものである。
さらに、本発明は、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸
素量が8.5mg/L以上である水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる
工程、及び、水性組成物をポリエチレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の凍結
が抑制された医薬製剤の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されており、溶存酸素量が8.5
mg/L以上であるリパスジル含有水性組成物の、低温保存時の凍結を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「w/v%」は質量対容積百分率を意味し、具体的には、100m
Lの組成物当りに含まれる各成分の質量(g)を意味する。
【0014】
<リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物>
本発明において、リパスジル(化学名:4-フルオロ-5-[[(2S)-2-メチル
-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル]イソキノリン)は塩であってもよい。リ
パスジルの塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されず、具体的には例えば
、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石
酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸
塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンス
ルホン酸塩、カンファ―スルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
さらに、リパスジル又はその塩は、水和物やアルコール和物等の溶媒和物であってもよ
く、水和物であるのが好ましい。
【0015】
本発明において、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、リパスジ
ル若しくはその塩酸塩又はそれらの水和物がさらに好ましく、以下の構造式:
【0016】
【化2】
【0017】
で表されるリパスジル塩酸塩水和物(リパスジル1塩酸塩2水和物)が特に好ましい。
【0018】
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は公知であり、公知の方法により製造
できる。具体的には例えば、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公
開第1999/020620号パンフレット、国際公開第2006/057397号パン
フレット記載の方法等により製造することが出来る。
【0019】
水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は特に限定さ
れず、適用疾患や患者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定すればよいが、優
れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、リパスジルのフリー体に換算
して0.01w/v%以上、好ましくは0.02w/v%以上、さらに好ましくは0.0
4w/v%以上含有してよく、また、10w/v%以下、好ましくは8w/v%以下、特
に好ましくは6w/v%以下で含有してよい。中でも、優れた薬理作用を得る観点から、
水性組成物全容量に対して、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を、フリー
体に換算して0.05~5w/v%含有するのが好ましく、0.1~3w/v%含有する
のがより好ましく、0.1~2w/v%含有するのがさらに好ましく、0.3~0.5w
/v%含有するのが特に好ましい。
【0020】
<低級脂肪族カルボン酸類>
本発明において「低級脂肪族カルボン酸類」とは、1個以上の炭素原子が窒素原子で置
き換えられていてもよい、低級脂肪族カルボン酸及びその塩(例えば、ナトリウム塩、カ
リウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;
アンモニウム塩等)並びにそれらの溶媒和物(水和物等)よりなる群から選ばれる1種以
上を意味する。
ここで、低級脂肪族カルボン酸類における炭素数は、15個程度以下であれば特に限定
されないが、リパスジル含有水性組成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、2~12個
が好ましく、4~12個がより好ましく、6~12個が特に好ましい。なお、斯かる炭素
原子のうち、カルボキシル基を構成する炭素原子以外の炭素原子については、その一部は
窒素原子に置き換えられていてもよいが、リパスジル含有水性組成物の低温保存時の凍結
抑制の観点から斯かる窒素原子の置換数は1~2個であるのが好ましい。さらに、炭素鎖
は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても不飽和であっても
よい。
【0021】
また、低級脂肪族カルボン酸類におけるカルボキシル基の数は限定されないが、リパス
ジル含有水性組成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、1~4個が好ましい。さらに、
低級脂肪族カルボン酸類は、リパスジル含有水性組成物の低温保存時の凍結抑制の観点か
ら、カルボキシル基以外の親水性の置換基をさらに1~3個程度有してもよい。斯かる親
水性の置換基としては、具体的には例えば、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
低級脂肪族カルボン酸類は公知の化合物であり、公知の方法により製造しても良いし、
市販のものを使用してもよい。なお、低級脂肪族カルボン酸類としては、他の成分と塩や
錯体を形成したものを用いてもよく、斯かる塩や錯体を形成した成分を含有する水性組成
物も、「低級脂肪族カルボン酸類を含有する水性組成物」に包含される。
【0022】
このような低級脂肪族カルボン酸類としては、具体的には例えば、アジピン酸;アスパ
ラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸マグネシウムなどのアス
パラギン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;イプシ
ロン-アミノカプロン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種
以上;エデト酸、エデト酸カルシウムナトリウム水和物、エデト酸ナトリウム水和物、エ
デト酸四ナトリウム水和物、無水エデト酸二ナトリウムなどのエデト酸及びその塩並びに
それらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;クエン酸、クエン酸カルシウム、ク
エン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナト
リウム、無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウムなどのクエン酸及びその塩並びにそれら
の溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク
酸二ナトリウム六水和物などのコハク酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群か
ら選ばれる1種以上;酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナ
トリウム水和物、氷酢酸、無水酢酸ナトリウム等の酢酸及びその塩並びにそれらの溶媒和
物よりなる群から選ばれる1種以上;酒石酸、D-酒石酸、酒石酸水素カリウム、DL-
酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウムなどの酒石酸及びその塩並びにそれらの溶
媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等のソルビン
酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;乳酸、乳酸ナト
リウム液、乳酸カルシウム水和物、乳酸アルミニウムなどの乳酸及びその塩並びにそれら
の溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウムな
どのプロピオン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;
フマル酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;マレイン
酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;マロン酸及びそ
の塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上;リンゴ酸、DL-リンゴ
酸、DL-リンゴ酸ナトリウムなどのリンゴ酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりな
る群から選ばれる1種以上等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上を組み合わ
せて用いることができる。
これらの低級脂肪族カルボン酸類はいずれも公知であり、公知の方法により製造しても
よく、市販品を使用してもよい。
【0023】
低級脂肪族カルボン酸類としては、リパスジル含有水性組成物の低温保存時の凍結抑制
の観点から、イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸、クエン酸、酢酸、ソルビン酸及
びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましく、イプ
シロン-アミノカプロン酸、エデト酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群
から選ばれる1種以上がより好ましく、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物より
なる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。低級脂肪族カルボン酸類としてエデト酸及
びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いることにより、
他の低級脂肪族カルボン酸類と比較してもリパスジル含有水性組成物の低温保存時の凍結
が顕著に抑制される。
【0024】
水性組成物中の低級脂肪族カルボン酸類の含有量は特に限定されないが、リパスジル含
有水性組成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.001
w/v以上、好ましくは0.01w/v%以上、より好ましくは0.05w/v%以上、
特に好ましくは0.1w/v%以上含有してよく、また、5w/v%以下、好ましくは3
.5w/v%以下、特に好ましくは1w/v%含有してよい。
中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、イプシロン-アミノカプロン酸及びその塩並
びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパス
ジル含有水性組成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.
003~3w/v%含有するのが好ましく、0.07~1w/v%含有するのがより好ま
しく、0.2~0.5w/v%含有するのが特に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶
媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジル含有水性組
成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.0003~0.
3w/v%含有するのが好ましく、0.007~0.2w/v%含有するのがより好まし
く、0.02~0.1w/v%含有するのが特に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、クエン酸及びその塩並びにそれらの溶
媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジル含有水性組
成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.006~2w/
v%含有するのが好ましく、0.04~0.4w/v%含有するのがより好ましく、0.
07~0.2w/v%含有するのが特に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、酢酸及びその塩並びにそれらの溶媒和
物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジル含有水性組成物
の低温保存時の凍結抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.003~2w/v%
含有するのが好ましく、0.03~0.3w/v%含有するのがより好ましく、0.07
~0.2w/v%含有するのが特に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として、ソルビン酸及びその塩並びにそれらの
溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジル含有水性
組成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、水性組成物全容量に対して0.02~0.8
w/v%含有するのが好ましく、0.09~0.4w/v%含有するのがより好ましく、
0.07~0.2w/v%含有するのが特に好ましい。
【0025】
また、水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と低級脂肪族カ
ルボン酸類の含有質量比率は特に限定されないが、リパスジル含有水性組成物の低温保存
時の凍結抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、低級脂肪族
カルボン酸類を0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは
0.3質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以
上含有してよく、また、8質量部以下、好ましくは4質量部以下、特に好ましくは3質量
部以下含有してよい。
中でも、低級脂肪族カルボン酸類としてイプシロン-アミノカプロン酸及びその塩並び
にそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジ
ル含有水性組成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して
1質量部に対し、イプシロン-アミノカプロン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物より
なる群から選ばれる1種以上を0.05~2.5質量部含有するのが好ましく、0.2~
2質量部含有するのがより好ましく、0.5~1.5質量部含有するのが特に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類としてエデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒
和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジル含有水性組成
物の低温保存時の凍結抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し
、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0.0
03~2質量部含有するのが好ましく、0.01~1質量部含有するのがより好ましく、
0.02~0.5質量部含有するのが特に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類としてクエン酸及びその塩並びにそれらの溶媒
和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジル含有水性組成
物の低温保存時の凍結抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し
、クエン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0.0
03~5質量部含有するのが好ましく、0.03~2質量部含有するのがより好ましく、
0.07~7質量部含有するのが特に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類として酢酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物
よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジル含有水性組成物の
低温保存時の凍結抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、酢
酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0.003~2
質量部含有するのが好ましく、0.03~1質量部含有するのがより好ましく、0.02
~0.8質量部含有するのが特に好ましい。
また、中でも、低級脂肪族カルボン酸類としてソルビン酸及びその塩並びにそれらの溶
媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を用いる場合においては、リパスジル含有水性組
成物の低温保存時の凍結抑制の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対
し、ソルビン酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を0
.04~3質量部含有するのが好ましく、0.03~1.5質量部含有するのがより好ま
しく、0.3~0.7質量部含有するのが特に好ましい。
【0026】
<溶存酸素量>
本発明において、リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量は8.5mg/L以上である
必要がある。後記試験例に示されるとおり、リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量が8
.5mg/L以上である場合に低温保存時の経時的な凍結が生じ得るところ、リパスジル
含有水性組成物にさらに低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめ、かつ、当該水性組成物を
ポリエチレン製容器に収容せしめることにより、かかる低温保存時の経時的な凍結を抑制
し得る。
そのため、本発明の課題解決手段によれば、例えば窒素パージ等により溶存酸素を不活
性ガスで置換したり、あるいは真空脱気するなどして溶存酸素量の低減及び維持のために
多大な労力やコストをかけることは必要なく、安価にかつ容易に、低温保存時の経時的な
凍結が抑制された、保存安定性の良好なリパスジル含有水性組成物が容器に収容された医
薬製剤を得ることができる。
【0027】
本発明において、リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量は、8.5mg/L以上(よ
り好適には8.5~13mg/L、さらに好適には8.5~12mg/L、さらにより好
適には8.5~11mg/L、さらにより好適には8.5~10mg/L、特に好適には
8.5~9.5mg/L)である必要があるが、8.7mg/L以上(より好適には8.
7~13mg/L、さらに好適には8.7~12mg/L、さらにより好適には8.7~
11mg/L、さらにより好適には8.7~10mg/L、特に好適には8.7~9.5
mg/L)であるのが好ましく、9mg/L以上(より好適には9~13mg/L、さら
に好適には9~12mg/L、さらにより好適には9~11mg/L、さらにより好適に
は9~10mg/L、特に好適には9~9.5mg/L)であるのが特に好ましい。
【0028】
本発明において、溶存酸素量は、隔膜電極法、なかでもポーラログラフ法(隔膜ポーラ
ログラフ法)により測定した値を意味する。斯かる方法による溶存酸素量の測定に用いる
溶存酸素計としては、例えば、ポータブル防水溶存酸素計 型番AS720(アズワン株
式会社製)などが挙げられる。
本発明において、溶存酸素量は、医薬製剤が定められた保存条件(貯法)にて継続的に
保存される際の値を測定する。すなわち、例えば、貯法として「室温保存」と定められた
医薬製剤については、第十八改正日本薬局方に定められた「室温」の意義(1~30℃)
に従い、1~30℃の範囲の任意の温度で保存された医薬製剤にかかるリパスジル含有水
性組成物の溶存酸素量を測定すればよい。通常予定される保存条件下において、溶存酸素
量が9mg/L以上であれば、流通・保存時の何らかのアクシデント等により低温環境に
晒された際にも、有利に凍結が抑制され得る。
【0029】
リパスジル含有水性組成物の溶存酸素量を8.5mg/L以上とするには特別の工程等
は必要無く、例えば、水性組成物の混合時において空気を巻き込むように攪拌回転数や攪
拌羽根を調整する等、リパスジル含有水性組成物について通常想定される製造工程におけ
る簡易の工夫により、当業者であれば適宜溶存酸素量を8.5mg/L以上にできる。そ
のため、本発明によれば、溶存酸素量を能動的・強制的に低値に調整・維持するより格段
に労力やコストが少なくて済む。なお、労力・コスト上の過度の負担とならない範囲で、
酸素ガスを吹き込む等の手段を採用してもよい。
なお、本明細書において「溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物」は溶存酸素
量を8.5mg/L以上に意図的に「調整」した水性組成物のみに限定されず、水性組成
物の製造後に溶存酸素量が自然に当該範囲に変動した場合も含まれる。かかる解釈指針は
、溶存酸素量が他の数値範囲である場合においても同様に適用される。
【0030】
<水性組成物>
本発明において「水性組成物」とは、少なくとも水を含有する組成物を意味し、その性
状としては、液状(溶液又は懸濁液)、半固形状(軟膏)が挙げられる。なお、組成物中
の水としては例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水等を用いることができる。
水性組成物に含まれる水の含有量は特に限定されないが、5w/v%以上が好ましく、
20w/v%以上がより好ましく、50w/v%以上がさらに好ましく、90w/v%以
上がさらにより好ましく、90~99.8w/v%が特に好ましい。
【0031】
水性組成物は、例えば、第十八改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従っ
て、種々の剤形とすることができる。剤形としては、後述する容器に収容可能なものであ
る限り特に限定されないが、例えば、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点
鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、経口液剤、シロ
ップ剤等が挙げられる。剤形としては、リパスジルの有する薬理作用を有利に利用する観
点から、眼疾患用剤、具体的には点眼剤、眼軟膏剤が好ましく、点眼剤が特に好ましい。
【0032】
水性組成物には、上記した以外に、医薬品や医薬部外品等で利用される添加物を含んで
いてよい。このような添加物としては、例えば、無機塩類、等張化剤、キレート剤、安定
化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、清
涼化剤、分散剤、保存剤、油性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤等が挙げられる。
こうした添加物としては、具体的には例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウ
ム、アルギン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、ウイキョウ油、エタノール、
エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム
、塩化マグネシウム、塩酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、カルボキシビニル
ポリマー、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、d-カンフル、dl-カンフル
、キシリトール、グリセリン、グルコン酸、クレアチニン、クロルヘキシジン、クロロブ
タノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、ゲラニオール、コンドロイチン硫酸ナトリウム
、酸化チタン、ジェランガム、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カリウム、臭化べンゾ
ドデシニウム、水酸化ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル45、精製ラノリン、D-
ソルビトール、ソルビトール液、タウリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物
、チオ硫酸ナトリウム水和物、チメロサール、チロキサポール、トロメタモール、濃グリ
セリン、濃縮混合トコフェロール、白色ワセリン、ハッカ水、ハッカ油、濃ベンザルコニ
ウム塩化物液50、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ
安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒアルロン酸ナトリウム、人血清アルブ
ミン、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェニルエチルアルコール、ブドウ糖、プロピレングリコ
ール、ベルガモット油、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物液、ベンジル
アルコール、ベンゼトニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物液、ホウ砂、ホウ酸、ポビド
ン、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングルコール(70)、ポリスチ
レンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60
、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、d-ボルネオール、マクロゴール4000、
マクロゴール6000、D-マンニトール、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二
水素ナトリウム、メタンスルホン酸、l-メントール、モノエタノールアミン、モノステ
アリン酸ポリエチレングリコール、ユーカリ油、ヨウ化カリウム、硫酸、硫酸オキシキノ
リン、流動パラフィン、リュウノウ、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水
素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、ワセリン等が
例示される。
【0033】
添加物としては、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩
化マグネシウム、グリセリン、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム
水和物、濃グリセリン、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリソルベート80、ポリオキシエ
チレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール
(部分けん化物)、マクロゴール4000、マクロゴール6000、無水リン酸一水素ナ
トリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸、リン酸水素ナ
トリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリ
ウム一水和物、ヒアルロン酸ナトリウム、ブドウ糖、l-メントール等が好ましい。
【0034】
水性組成物は、さらに、上記した以外に、適用疾患等に応じて、リパスジル以外の他の
薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、例えば、ブナゾシン塩酸塩
などのブナゾシン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα1受容体遮断薬;ブリモ
ニジン酒石酸塩などのブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アプラクロニ
ジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα2受容体作動薬;カルテオロール塩酸
塩などのカルテオロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ニプラジロール若しくは
その塩又はそれらの溶媒和物、チモロールマレイン酸塩などのチモロール若しくはその塩
又はそれらの溶媒和物、ベタキソロール塩酸塩などのベタキソロール若しくはその塩又は
それらの溶媒和物、レボブノロール塩酸塩などのレボブノロール若しくはその塩又はそれ
らの溶媒和物、ベフノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メチプラノロール若
しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むβ遮断薬;ネタルスジルメシル酸塩などのネタ
ルスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むRhoキナーゼ阻害薬;ドルゾラミ
ド塩酸塩などのドルゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ブリンゾラミド若し
くはその塩又はそれらの溶媒和物、アセタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物
、ジクロルフェナミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メタゾラミド若しくはその
塩又はそれらの溶媒和物を含む炭酸脱水酵素阻害剤;イソプロピルウノプロストン若しく
はその塩又はそれらの溶媒和物、タフルプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、
トラボプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ビマトプロスト若しくはその塩又
はそれらの溶媒和物、ラタノプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、クロプロス
テノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フルプロステノール若しくはその塩又は
それらの溶媒和物を含むプロスタグランジンF2α誘導体;ジピべフリン塩酸塩などのジ
ピべフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エピネフリン、エピネフリンホウ酸塩
、エピネフリン塩酸塩などのエピネフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む交
感神経作動薬;ジスチグミン臭化物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ピロカルピン
、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩などのピロカルピン若しくはその塩又はそれ
らの溶媒和物、カルバコール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む副交感神経作動
薬;ロメリジン塩酸塩などのロメリジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むカル
シウム拮抗薬;デメカリウム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エコチオフェート若
しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フィゾスチグミン若しくはその塩又はそれらの溶媒
和物を含むコリンエステラーゼ阻害剤;オミデネパグイソプロピルなどのオミデネパグ若
しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むEP2受容体作動薬などが挙げられ、これらの
1種又は2種以上を配合できる。
他の薬効成分としては、ブリモニジン、ラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミ
ド、ブリンゾラミド、チモロール及びオミデネパグイソプロピル並びにそれらの塩よりな
る群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0035】
水性組成物のpHは特に限定されないが、4~9が好ましく、4.5~8がより好まし
く、5~7が特に好ましい。また、生理食塩水に対する浸透圧比は特に限定されないが、
0.6~3が好ましく、0.6~2が特に好ましい。
【0036】
<容器>
本発明において「容器」とは、前記水性組成物を直接的に収容する包装体を意味する。
容器は、第十八改正日本薬局方 通則に定義される「密閉容器」、「気密容器」、「密封
容器」のいずれをも包含する概念である。
【0037】
当該容器の形態は、前記水性組成物を収容可能であることを限度として特に限定されず
、剤形、医薬製剤の用途等に応じて適宜選択、設定すればよい。このような容器の形態と
しては、具体的には例えば、注射剤用容器、吸入剤用容器、スプレー剤用容器、ボトル状
容器、チューブ状容器、点眼剤用容器、点鼻剤用容器、点耳剤用容器、バッグ容器等が挙
げられる。
【0038】
本発明において「ポリエチレン製容器」とは、容器のうち少なくとも水性組成物と接す
る部分が「ポリエチレン製」である容器を意味する。従って、例えば、水性組成物と接す
る内層にポリエチレンの層を設け、その外側に他の材質の樹脂等を積層等させてなる容器
も、「ポリエチレン製容器」に該当する。ここで、ポリエチレンは特に限定されず、例え
ば低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密
度ポリエチレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
なお、本明細書において「ポリエチレン製」とは、その材質の少なくとも一部にポリエ
チレンを含んでいることを意味し、例えば、ポリエチレンと、ポリエチレン以外の他の樹
脂との2種以上の樹脂の混合体(ポリマーアロイ)も「ポリエチレン製」に含まれる。
【0039】
ポリエチレン製容器には、さらに紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線の透過を妨
げる物質を練り込むのが好ましい。これにより、リパスジルの光に対する安定性が改善さ
れる。こうした物質としては、具体的には例えば、紫外線散乱剤としては、酸化チタン;
酸化亜鉛等が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、2-(2H-ベンゾトリアゾー
ル-2-イル)-p-クレゾール(例えば、Tinuvin P:BASF社)、2-(
2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチ
ル)フェノール(例えば、Tinuvin 234:BASF社)、2-(3,5-ジ-
t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin3
20:BASF社)、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4
-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 326:B
ASF社)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベ
ンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin327:BASF社)、2-(2H-ベンゾ
トリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(例えば、Ti
nuvin PA328:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)
-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin
329:BASF社)、2,2’-メチルレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-
2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tin
uvin 360:BASF社)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-
イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレ
ングリコール300の反応生成物(例えば、Tinuvin 213:BASF社)、2
-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(例
えば、Tinuvin 571:BASF社)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-
ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3’
’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニ
ル]ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチ
ルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等のベンゾトリ
アゾール系紫外線吸収剤;2,2-ビス{[2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイ
ルオキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(2-シアノ-3,3-ジフェニル
アクリレート)(例えば、Uvinul 3030 FF:BASF社)、2-シアノ-
3,3-ジフェニルアクリル酸エチル(例えば、Uvinul 3035:BASF社)
、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルへキシル(例えば、Uvinu
l 3039:BASF社)等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-(4,6-ジ
フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノ
ール(例えば、Tinuvin 1577 ED:BASF社)等のトリアジン系紫外線
吸収剤;オクタベンゾン(例えば、Chimassorb 81:BASF社)、2,2
’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(例えば、Uvinul 30
49:BASF社)、2,2’-4,4’-テトラヒドロベンゾフェノン(例えば、Uv
inul 3050:BASF社)、オキシベンゾン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノ
ンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシ
ジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリ
ウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノ
ン系紫外線吸収剤;ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ
皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイ
ソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ケイ皮
酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチ
ル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチル
アミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミ
ノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコー
ル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サ
リチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;グアイアズレ
ン;ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル;
2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,
5-トリアジン;パラヒドロキシアニソール;4-tert-ブチル-4’-メトキシジ
ベンゾイルメタン;フェニルベンズイミダゾールスルホン酸;2-(4-ジエチルアミノ
-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0040】
なお、紫外線の透過を妨げる物質を容器に練り込む場合、その配合割合は、当該物質の
種類等によって異なるが、例えば、容器中に、0.001~50質量%、好ましくは0.
002~25質量%、特に好ましくは0.01~10質量%程度とすればよい。
【0041】
容器は、その内部が肉眼で視認可能(観察可能)であるのが好ましい。内部が視認可能
であれば、医薬製剤の製造工程において異物混入の有無等の検査が可能となる、医薬製剤
の使用者が内容物(水性組成物)の残量を確認できる等のメリットが生ずる。ここで、視
認可能性は、少なくとも容器表面の一部において確保されていればよい(例えば、点眼剤
用容器の側面がシュリンクフィルム等により見通せなくなっていても、底面が視認可能で
あれば視認可能と言える。)。容器表面の一部において内部が視認可能であれば、これに
より、容器内の水性組成物が確認可能となる。
【0042】
容器への水性組成物の収容手段は特に限定されず、容器の形態等に従って常法により充
填等すればよい。
【0043】
<医薬製剤>
本発明において「医薬製剤」の適用疾患は特に限定されず、リパスジルの有する薬理作
用等に応じて適宜選択すればよい。
具体的には例えば、リパスジルの有するRhoキナーゼ阻害作用や眼圧低下作用に基づ
き、高眼圧症や緑内障の予防又は治療剤として利用できる。ここで、緑内障としては、よ
り詳細には例えば、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、急性
閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、plateau iris syndrome、
混合型緑内障、ステロイド緑内障、水晶体の嚢性緑内障、色素緑内障、アミロイド緑内障
、血管新生緑内障、悪性緑内障などが挙げられる。
【0044】
また、日本国特許第5557408号公報に開示されるように、眼底疾患(主として網
膜及び/又は脈絡膜に発現する病変。具体的には例えば、高血圧と動脈硬化による眼底変
化、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症(central retinal ve
in occlusion)や網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal v
ein occlusion)等の網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖
尿病黄斑症、イールズ病(Eales disease)、コーツ病(Coats di
sease)等の網膜血管先天異常、ヒッペル病(von Hippel diseas
e)、脈なし病(pulseless disease)、黄斑疾患(中心性網脈絡膜症
(central serous chorioretinopathy)、嚢胞様黄斑
浮腫(cystoid macular edema)、加齢黄斑変性(age-rel
ated macular degeneration)、黄斑円孔(macular
hole)、近視性黄斑萎縮(myopic macular degeneratio
n)、網膜硝子体界面黄斑変性症、薬物毒性黄斑変性症、遺伝性黄斑変性等)、(裂孔原
性、牽引性、滲出性等の)網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症等が挙げられる。)
の予防又は治療剤、より好適には糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫又は加齢黄斑変性の予防
又は治療剤として利用できる。
さらに、日本国特許第5657252号公報に開示されるように、角膜内皮障害の予防
及び/又は治療剤としても利用できる。
【0045】
<その他の文言の意義>
本発明において「低温保存」とは、医薬製剤が、その製造後、流通時や保管時において
偶発的に遭遇し得る室温(1~30℃)より低い温度での保存を意味し、具体的には例え
ば、-5℃での保存が想定される。
本発明において「凍結」は、必ずしもリパスジル含有水性組成物全体が凍結する場合に
限定されず、一部分が凍結する場合も含む概念である。
本発明において凍結について「抑制」とは、本明細書に開示の技術的手段を講じること
によって、当該手段を講じない場合と比較して相対的に長期間「凍結」が抑制されること
、あるいは本明細書に開示の技術的手段を講じることによって、当該手段を講じない場合
と比較して同時期における「凍結」の程度が抑制されること(凍結が生じる範囲・広がり
が小さいこと)を意味し、必ずしも、リパスジル含有水性組成物が絶対的に凍結しないこ
とを意味するものではない。
例えば、評価対象が低級脂肪族カルボン酸類としてエデト酸を含有するものである場合
、当該エデト酸を含有しないほかは成分・溶存酸素量等が同等の比較対象を準備のうえ、
同一の低温保存条件で保存した場合に、評価対象の方が比較対象よりも相対的に長期間「
凍結」が抑制されること、あるいは、同時点において「凍結」の程度が抑制されることを
意味する。
【0046】
<凍結の抑制方法、医薬製剤の製造方法>
また、本発明は、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素
量が8.5mg/L以上である水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工
程、及び、水性組成物をポリエチレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の低温保
存時の凍結の抑制方法にも関する。
さらに、本発明は、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸
素量が8.5mg/L以上である水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる
工程、及び、水性組成物をポリエチレン製容器に収容する工程を含む、低温保存時の凍結
の抑制された医薬製剤の製造方法にも関する。
以上の方法において、リパスジルを水性組成物に含有せしめる工程、低級脂肪族カルボ
ン酸類を水性組成物に含有せしめる工程と、水性組成物をポリエチレン製容器に収容する
工程の先後は問わない。また、水性組成物の溶存酸素量が8.5mg/L以上となるタイ
ミングも特に問題とならず、任意のタイミングで水性組成物の溶存酸素量が8.5mg/
L以上となれば、本明細書に開示の「凍結の抑制方法」あるいは「医薬製剤の製造方法」
に該当し得ることとなる。
その他の各種文言の意義、各成分の配合量等は全て上記した「医薬製剤」について説明
したのと同様である。
【0047】
本発明は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の実施形態を開
示する。
[1A]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、低級脂肪族カルボン酸類と
を含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上(好適には、8.7mg/L以上、特に好
適には9mg/L以上)の水性組成物が、ポリエチレン製容器に収容されてなる、医薬製
剤。
[2A]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、低級脂肪族カルボン酸類と
を含有する、溶存酸素量が8.5~13mg/L(好適には、8.7~13mg/L、特
に好適には9~13mg/L)の水性組成物が、ポリエチレン製容器に収容されてなる、
医薬製剤。
[3A]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、低級脂肪族カルボン酸類と
を含有する、溶存酸素量が8.5~12mg/L(好適には、8.7~12mg/L、特
に好適には9~12mg/L)の水性組成物が、ポリエチレン製容器に収容されてなる、
医薬製剤。
[4A]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、低級脂肪族カルボン酸類と
を含有する、溶存酸素量が8.5~11mg/L(好適には、8.7~11mg/L、特
に好適には9~11mg/L)の水性組成物が、ポリエチレン製容器に収容されてなる、
医薬製剤。
[5A]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、低級脂肪族カルボン酸類と
を含有する、溶存酸素量が8.5~10mg/L(好適には、8.7~10mg/L、特
に好適には9~10mg/L)の水性組成物が、ポリエチレン製容器に収容されてなる、
医薬製剤。
[6A]低級脂肪族カルボン酸類が、イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸、クエン
酸、酢酸、ソルビン酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1
種以上である、[1A]~[5A]のいずれか記載の医薬製剤。
[7A]低級脂肪族カルボン酸類が、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりな
る群から選ばれる1種以上である、[1A]~[5A]のいずれか記載の医薬製剤。
[8A]低温保存(好適には、-5℃での保存、特に好適には-5℃で2週間の保存)後
において水性組成物の凍結が抑制されるものである、[1A]~[7A]のいずれか記載
の医薬製剤。
【0048】
[1B]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
mg/L以上(好適には、約8.7mg/L以上、特に好適には9mg/L以上)である
水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポリエ
チレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の低温保存時の凍結の抑制方法。
[2B]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
~13mg/L(好適には、8.7~13mg/L、特に好適には9~13mg/L)で
ある水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポ
リエチレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の低温保存時の凍結の抑制方法。
[3B]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
~12mg/L(好適には、8.7~12mg/L、特に好適には9~12mg/L)で
ある水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポ
リエチレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の低温保存時の凍結の抑制方法。
[4B]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
~11mg/L(好適には、8.7~11mg/L、特に好適には9~11mg/L)で
ある水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポ
リエチレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の低温保存時の凍結の抑制方法。
[5B]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
~10mg/L(好適には、8.7~10mg/L、特に好適には9~10mg/L)で
ある水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポ
リエチレン製容器に収容する工程を含む、水性組成物の低温保存時の凍結の抑制方法。
[6B]低級脂肪族カルボン酸類が、イプシロン-アミノカプロン酸、エデト酸、クエン
酸、酢酸、ソルビン酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1
種以上である、[1B]~[5B]のいずれか記載の方法。
[7B]低級脂肪族カルボン酸類が、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりな
る群から選ばれる1種以上である、[1B]~[6B]のいずれか記載の方法。
【0049】
[1C]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
mg/L以上(好適には、8.7mg/L以上、特に好適には9mg/L以上)である水
性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポリエチ
レン製容器に収容する工程を含む、低温保存時の凍結の抑制された医薬製剤の製造方法。
[2C]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
~13mg/L(好適には、8.7~13mg/L、特に好適には9~13mg/L)で
ある水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポ
リエチレン製容器に収容する工程を含む、低温保存時の凍結の抑制された医薬製剤の製造
方法。
[3C]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
~12mg/L(好適には、8.7~12mg/L、特に好適には9~12mg/L)で
ある水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポ
リエチレン製容器に収容する工程を含む、低温保存時の凍結の抑制された医薬製剤の製造
方法。
[4C]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
~11mg/L(好適には、8.7~11mg/L、特に好適には9~11mg/L)で
ある水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポ
リエチレン製容器に収容する工程を含む、低温保存時の凍結の抑制された医薬製剤の製造
方法。
[5C]リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、溶存酸素量が8.5
~10mg/L(好適には、8.7~10mg/L、特に好適には9~10mg/L)で
ある水性組成物に、低級脂肪族カルボン酸類を含有せしめる工程、及び、水性組成物をポ
リエチレン製容器に収容する工程を含む、低温保存時の凍結の抑制された医薬製剤の製造
方法。
【実施例
【0050】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるもの
ではない。
なお、以下の試験例において、リパスジル1塩酸塩2水和物は、例えば国際公開第20
06/057397号パンフレット記載の方法により製造することが出来る。
【0051】
[試験例1]保存試験 その1
表1に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表1のとおりに調整した。
溶存酸素量を調整した水性組成物をポリエチレン(PE)製、ポリプロピレン(PP)
製又はガラス製の点眼剤用容器に入れて医薬製剤を製した。
なお、溶存酸素量の測定は、25℃の雰囲気温度条件下で溶存酸素計(ポータブル防水
溶存酸素計 型番AS720:アズワン株式会社製)を用いて行った。
【0052】
得られた各医薬製剤を-5℃で2週間保存し、保存後の容器内の水性組成物の凍結の有
無を目視で評価した。凍結が生じなかった場合を〇と、凍結が生じた場合を×と評価し、
さらに、凍結が生じた場合については、その外観についてコメントを付した。
結果を表1に示す。なお、溶存酸素量は、小数点以下2桁目を四捨五入して表示した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1記載の結果の通り、溶存酸素量が8.5mg/L以上、具体的には9mg/Lであ
るリパスジル含有水性組成物をポリオレフィン系樹脂製容器に収容した場合(例1、例2
)には、-5℃にて2週間保存後に水性組成物全体の凍結が確認された。一方、溶存酸素
量が8.5mg/L未満(3又は6mg/L)であるリパスジル含有水性組成物をポリオ
レフィン系樹脂製容器に収容した場合(例3~例6)はいずれも同様の保存後に凍結は一
切確認されなかった。このことから、かかる凍結はリパスジル含有水性組成物中の溶存酸
素量に依存し、溶存酸素量が8.5mg/L以上の場合に生じる現象であることが明らか
となった。
また、リパスジルを含有しない溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物をポリオ
レフィン系樹脂製容器に収容した場合(例7、例8)、溶存酸素量が8.5mg/L以上
であるリパスジル含有水性組成物をガラス製容器に収容した場合(例9)にも、低温保存
後に凍結は一切認められなかった。このことから、かかる凍結は、水性組成物がリパスジ
ルを含有すること、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されることに起因することが明ら
かとなった。
【0055】
以上から、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されたリパスジル含有水性組成物の溶存
酸素量が8.5mg/L以上の高値であるとき、特異的に低温保存時における凍結という
現象が生じることが判明した。
【0056】
[試験例2]保存試験 その2
表2に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表2のとおりに調整した。
溶存酸素量を調整した水性組成物をポリエチレン(PE)製又はポリプロピレン(PP
)製の点眼剤用容器に入れて医薬製剤を製した。
なお、溶存酸素量の測定は、25℃の雰囲気温度条件下で溶存酸素計(ポータブル防水
溶存酸素計 型番AS720:アズワン株式会社製)を用いて行った。
【0057】
得られた各医薬製剤を-5℃で2週間保存し、保存後の容器内の水性組成物の凍結の有
無を試験例1と同様の方法により評価した。
結果を表2に示す。なお、溶存酸素量は、小数点以下2桁目を四捨五入して表示した。
【0058】
【表2】
【0059】
表2記載の結果の通り、溶存酸素量が8.5mg/L以上、具体的には9mg/Lであ
るリパスジル含有水性組成物がポリエチレン製容器に収容された比較例1の医薬製剤、及
び溶存酸素量が8.5mg/L以上であるリパスジル含有水性組成物がさらにエデト酸ナ
トリウム水和物を含有し、かつ、当該水性組成物がポリプロピレン製容器に収容された比
較例2の医薬製剤においては、いずれも-5℃にて2週間保存後に水性組成物全体の凍結
が確認された。一方、溶存酸素量が8.5mg/L以上であるリパスジル含有水性組成物
がさらにエデト酸ナトリウム水和物を含有し、かつ、当該水性組成物をポリエチレン製容
器に収容した実施例1の医薬製剤においては、同様の保存後に凍結は一切確認されなかっ
た。
以上から、溶存酸素量が8.5mg/L以上であるリパスジル含有水性組成物に、エデ
ト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上に代表される低
級脂肪族カルボン酸類を含有せしめ、かつ、当該水性組成物を、ポリオレフィン系樹脂製
容器の中でもポリエチレン製容器に収容せしめた場合に特異的に、要件を満たさない場合
と比較して相対的に低温保存時の凍結を抑制できることが明らかとなった。
【0060】
なお、低級脂肪族カルボン酸類として、エデト酸及びその塩並びにそれらの溶媒和物よ
りなる群から選ばれる1種以上の代わりに、イプシロン-アミノカプロン酸、クエン酸、
酢酸、ソルビン酸及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以
上を用いた場合も、類似の低温保存時の凍結の抑制作用が確認され得る。
【0061】
[試験例3]保存試験 その3
表3に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表3のとおりに調整した。
溶存酸素量を調整した水性組成物をポリエチレン(PE)製の点眼剤用容器に入れて医
薬製剤を製した。
なお、溶存酸素量の測定は、25℃の雰囲気温度条件下で溶存酸素計(ポータブル防水
溶存酸素計 型番AS720:アズワン株式会社製)を用いて行った。
【0062】
得られた各医薬製剤を-5℃で2週間保存し、保存後の容器内の水性組成物の凍結の有
無を試験例1と同様の方法により評価した。
結果を表3に示す。なお、溶存酸素量は、小数点以下2桁目を四捨五入して表示した。
【0063】
【表3】
【0064】
表3記載の結果の通り、溶存酸素量がそれぞれ11.0mg/Lあるいは13.0mg
/Lであるリパスジル含有水性組成物に、エデト酸ナトリウム水和物を含有せしめ、かつ
、当該水性組成物をポリエチレン製容器に収容せしめた実施例2、3の医薬製剤において
も、実施例1の医薬製剤と同様、-5℃にて2週間保存後に凍結は一切確認されなかった
【0065】
[製造例1~5]
表4に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表3のとおりに調整し、これをポリエチレン製の点眼剤用容器に収
容して製造例1~5の医薬製剤を得た。
【0066】
【表4】
【0067】
[製造例6~10]
表5に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表4のとおりに調整し、これをポリエチレン製の点眼剤用容器に収
容して製造例6~10の医薬製剤を得た。
【0068】
【表5】
【0069】
[製造例11~15]
表6に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表5のとおりに調整し、これをポリエチレン製の点眼剤用容器に収
容して製造例11~15の医薬製剤を得た。
【0070】
【表6】
【0071】
[製造例16~20]
表7に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表6のとおりに調整し、これをポリエチレン製の点眼剤用容器に収
容して製造例16~20の医薬製剤を得た。
【0072】
【表7】
【0073】
[製造例21~25]
表8に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表7のとおりに調整し、これをポリエチレン製の点眼剤用容器に収
容して製造例21~25の医薬製剤を得た。
【0074】
【表8】
【0075】
[製造例26~30]
表9に示す成分及び分量を100mL中に含有する水性組成物を常法により調製した後
、溶存酸素量を測定しモニタリングしつつ窒素ガス、酸素ガスあるいは空気を吹き込むこ
とにより溶存酸素量を表8のとおりに調整し、これをポリエチレン製の点眼剤用容器に収
容して製造例26~30の医薬製剤を得た。
【0076】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、保存安定性に優れた医薬製剤を提供でき、医薬品産業等において好適
に利用できる。
【要約】
【課題】ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されており、溶存酸素量が8.5mg/L以
上であるリパスジル含有水性組成物の、低温保存時の凍結を抑制する技術を提供すること

【解決手段】リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、低級脂肪族カルボン酸
類とを含有する、溶存酸素量が8.5mg/L以上の水性組成物が、ポリエチレン製容器
に収容されてなる、医薬製剤。
【選択図】なし