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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-16
(45)【発行日】2026-01-26
(54)【発明の名称】光演算装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 3/00 20060101AFI20260119BHJP
   G06E 3/00 20060101ALI20260119BHJP
【FI】
G02F3/00
G06E3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024536893
(86)(22)【出願日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2023024750
(87)【国際公開番号】W WO2024024414
(87)【国際公開日】2024-02-01
【審査請求日】2024-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2022118933
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 瞬
(72)【発明者】
【氏名】日下 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柏木 正浩
(72)【発明者】
【氏名】大竹 守
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-532899(JP,A)
【文献】特開平08-075925(JP,A)
【文献】特開2000-162658(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113296370(CN,A)
【文献】特開2006-243667(JP,A)
【文献】特開昭63-074041(JP,A)
【文献】特開平10-228042(JP,A)
【文献】国際公開第2021/205213(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/133592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
G06E 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調量が独立に設定された、又は、位相変調量が独立に設定可能な複数のセルを有する光変調素子を含む光演算部と、前記光演算部から出力された信号光を検出し、検出結果を表す電気信号を生成する光センサと、を備えており、
前記光変調素子は、(1)前記複数のセルの各々により位相変調された透過光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子を透過したノイズ光を出射する透過型光変調素子、又は、(2)前記複数のセルの各々により位相変調された反射光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子に反射されたノイズ光を出射する反射型光変調素子であり、
前記光変調素子において、前記複数のセルの各々の位相変調量は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが異なるように設定されており、
前記電気信号に対する前記ノイズ光の影響は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが一致する場合よりも小さく、
ミラーを更に備え、
前記光演算部は、前記光変調素子として第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子を含み、
前記第2の反射型光変調素子は、(1)その入出射面が、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸と交わるように、且つ、(2)その入出射面と前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸との交点と、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記ノイズ光、又は、前記第1の反射型光変調素子から出射された前記ノイズ光の光軸とが交わらないように配置されており、
前記ミラーの反射面は、前記第1の反射型光変調素子及び前記第2の反射型光変調素子の入出射面と非平行である、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項2】
位相変調量が独立に設定された、又は、位相変調量が独立に設定可能な複数のセルを有する光変調素子を含む光演算部と、前記光演算部から出力された信号光を検出し、検出結果を表す電気信号を生成する光センサと、を備えており、
前記光変調素子は、(1)前記複数のセルの各々により位相変調された透過光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子を透過したノイズ光を出射する透過型光変調素子、又は、(2)前記複数のセルの各々により位相変調された反射光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子に反射されたノイズ光を出射する反射型光変調素子であり、
前記光変調素子において、前記複数のセルの各々の位相変調量は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが異なるように設定されており、
前記電気信号に対する前記ノイズ光の影響は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが一致する場合よりも小さく、
ミラーを更に備え、
前記光演算部は、前記光変調素子として第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子を含み、
前記第2の反射型光変調素子は、(1)その入出射面が、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸と交わるように、且つ、(2)その入出射面に、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記ノイズ光、又は、前記第1の反射型光変調素子から出射された前記ノイズ光の少なくとも一部が入射しないように配置されており、
前記ミラーの反射面は、前記第1の反射型光変調素子及び前記第2の反射型光変調素子の入出射面と非平行である、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項3】
位相変調量が独立に設定された、又は、位相変調量が独立に設定可能な複数のセルを有する光変調素子を含む光演算部と、前記光演算部から出力された信号光を検出し、検出結果を表す電気信号を生成する光センサと、を備えており、
前記光変調素子は、(1)前記複数のセルの各々により位相変調された透過光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子を透過したノイズ光を出射する透過型光変調素子、又は、(2)前記複数のセルの各々により位相変調された反射光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子に反射されたノイズ光を出射する反射型光変調素子であり、
前記光変調素子において、前記複数のセルの各々の位相変調量は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが異なるように設定されており、
前記電気信号に対する前記ノイズ光の影響は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが一致する場合よりも小さく、
ミラーを更に備え、
前記光演算部は、前記光変調素子として第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子を含み、
前記第2の反射型光変調素子は、(1)その入出射面が、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸と交わるように、且つ、(2)その入出射面と前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸との交点と、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記ノイズ光、又は、前記第1の反射型光変調素子から出射された前記ノイズ光の光軸とが交わらないように配置されており、
前記光演算部は、前記第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子として機能する領域が設定された単一の光変調素子により構成されている、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項4】
位相変調量が独立に設定された、又は、位相変調量が独立に設定可能な複数のセルを有する光変調素子を含む光演算部と、前記光演算部から出力された信号光を検出し、検出結果を表す電気信号を生成する光センサと、を備えており、
前記光変調素子は、(1)前記複数のセルの各々により位相変調された透過光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子を透過したノイズ光を出射する透過型光変調素子、又は、(2)前記複数のセルの各々により位相変調された反射光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子に反射されたノイズ光を出射する反射型光変調素子であり、
前記光変調素子において、前記複数のセルの各々の位相変調量は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが異なるように設定されており、
前記電気信号に対する前記ノイズ光の影響は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが一致する場合よりも小さく、
ミラーを更に備え、
前記光演算部は、前記光変調素子として第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子を含み、
前記第2の反射型光変調素子は、(1)その入出射面が、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸と交わるように、且つ、(2)その入出射面に、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記ノイズ光、又は、前記第1の反射型光変調素子から出射された前記ノイズ光の少なくとも一部が入射しないように配置されており、
前記光演算部は、前記第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子として機能する領域が設定された単一の光変調素子により構成されている、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項5】
位相変調量が独立に設定された、又は、位相変調量が独立に設定可能な複数のセルを有する光変調素子が複数含まれる光演算部と、前記光演算部から出力された信号光を検出し、検出結果を表す電気信号を生成する光センサと、を備えており、
前記複数の前記光変調素子は、(1)前記複数のセルの各々により位相変調された透過光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子を透過したノイズ光を出射する透過型光変調素子、又は、(2)前記複数のセルの各々により位相変調された反射光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子に反射されたノイズ光を出射する反射型光変調素子であり、
前記光変調素子において、前記複数のセルの各々の位相変調量は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが異なるように設定されており、
前記電気信号に対する前記ノイズ光の影響は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが一致する場合よりも小さく、
前記光演算部は、信号光を透過する構造体であって、前記光変調素子として機能する光回折層が内部に形成された構造体であり、
前記複数の前記光変調素子は、一体化されている、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項6】
前記光センサは、複数の光電変換ユニットを有するイメージセンサであり、
前記イメージセンサは、前記信号光が検出限界以上の強度で入射する光電変換ユニットに前記ノイズ光が前記検出限界以上の強度で入射しないように配置されている、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光演算装置。
【請求項7】
前記光センサは、(1)その入射面が、前記光演算部から出射された前記信号光の光軸と交わり、且つ、(2)その入射面と前記光演算部から出射された前記信号光の光軸との交点と、前記光演算部から出射された前記ノイズ光の光軸とが交わらないように配置されている、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光演算装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
位相変調量が独立に設定された、又は、位相変調量が独立に設定可能な複数のセルを有する光変調素子を用いて光演算を行う光演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセルを有し、各セルを透過した信号光を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を光学的に実行するように設計された光変調素子が知られている。このような光変調素子を用いた光学的な演算には、プロセッサを用いた電気的な演算と比べて高速且つ低消費電力であるという利点がある。また、信号光に対して複数の光変調素子を順に作用させることによって、単一の光変調素子では実現困難な高度な光演算を容易に実現することができる。
【0003】
特許文献1には、入力層、中間層、及び出力層を有する光ニューラルネットワークが開示されている。上述した光変調素子は、例えば、このような光ニューラルネットワークの中間層として利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7847225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、演算前の信号光を光変調素子に入射させると、演算結果を表す信号光の他に各種ノイズ光が光変調素子から出射される。光変調素子が透過型光変調素子である場合、演算結果を表す信号光は、光変調素子を構成する各セルにより位相変調された透過光が干渉することにより生じる。ノイズ光のうち、演算前の信号光が各セルにて位相変調されることなく光変調素子を透過(正透過)することにより生じるノイズ光は、信号光と同一の方向に出射される。また、光変調素子が反射型光変調素子である場合、演算結果を表す信号光は、前記複数のセルの各々により位相変調された反射光が干渉することにより生じる。ノイズ光のうち、演算前の信号光が各セルにて位相変調されることなく光変調素子に反射(正反射)されることにより生じるノイズ光は、信号光の同一の方向に出射される。
【0006】
各光変調素子から出射されるノイズ光のうち、信号光と同一の方向に出射されるノイズ光は、信号光と共にイメージセンサに入射する。したがって、イメージセンサにて生成される電気信号は、このようなノイズ光の影響を受ける。そして、このようなノイズ光の影響が大きい場合、イメージセンサにて生成される電気信号から、光演算の結果を正しく読み取ることが困難になる。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光センサにて生成される電気信号に対するノイズ光の影響を低減した光演算装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1に係る光演算装置は、位相変調量が独立に設定された、又は、位相変調量が独立に設定可能な複数のセルを有する光変調素子を含む光演算部と、前記光演算部から出力された信号光を検出し、検出結果を表す電気信号を生成する光センサと、を備えており、前記光変調素子は、(1)前記複数のセルの各々により位相変調された透過光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子を透過したノイズ光を出射する透過型光変調素子、又は、(2)前記複数のセルの各々により位相変調された反射光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子に反射されたノイズ光を出射する反射型光変調素子であり、前記光変調素子において、前記複数のセルの各々の位相変調量は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが異なるように設定されており、前記電気信号に対する前記ノイズ光の影響は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが一致する場合よりも小さい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、イメージセンサにて生成される電気信号に対するノイズ光の影響を低減した光演算装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光演算装置の構成を示す側面図である。
図2図1に示す光演算装置の一変形例を示す側面図である。
図3図1に示す光演算装置が備える光変調素子の第1の構成例を示す平面図及び断面図である。
図4図1に示す光演算装置が備える光変調素子の第2の構成例を示す断面図である。
図5図1に示す光演算装置が備える光変調素子の第3の構成例を示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る光演算装置の構成を示す側面図である。
図7図6に示す光演算装置の第1の変形例を示す側面図である。
図8図6に示す光演算装置の第2の変形例を示す上面図、側面図、及び平面図である。
図9図6に示す光演算装置が備える光変調素子の第1の構成例を示す平面図及び断面図である。
図10図6に示す光演算装置が備える光変調素子の第2の構成例を示す断面図である。
図11図6に示す光演算装置が備える光変調素子の第3の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
(光演算装置の構成)
本発明の第1の実施形態に係る光演算装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、光演算装置1の構成を示す側面図である。
【0012】
光演算装置1は、図1に示すように、光演算部11と、イメージセンサ12と、を備えている。
【0013】
光演算部11は、少なくとも1つの光変調素子11a1~11an(nは1以上の任意の自然数)の集合である。本実施形態においては、多段の光演算を実現するべく、光演算部11として、3つの光変調素子11a1~11a3の集合を用いている。なお、光変調素子11a1~11anは、一体化されていてもよい。例えば、乾燥ゲルなど、信号光を透過する構造体に中に形成されたn個の光回折層を、光変調素子11a1~11anとして用いてもよい。
【0014】
各光変調素子11ai(iは1以上n以下の各自然数)は、位相変調量が互いに独立に設定された複数のセルにより構成されている。各光変調素子11aiは、透過型光変調素子であり、各セルにより位相変調された透過光を相互に干渉させることによって、光演算を行う。ここで、光演算を行うとは、信号光の2次元強度分布を、演算前の情報を表す2次元強度分布から、演算後の情報を表す2次元強度分布へと、変換することを指す。透過型光変調素子の構成例については、参照する図面を代えて後述する。
【0015】
光変調素子11aiは、上述した信号光の他に、各セルにより位相変調されることなく光変調素子11aiを透過したノイズ光を出射する。例えば、光変調素子11aiを構成するセルの間にギャップがある場合、このギャップを通過した光がノイズ光となる。光変調素子11aiから出射されるノイズ光の光軸は、光変調素子11aiに入射する信号光の光軸と光変調素子11aiの入射面の法線とが張る平面内に位置する。光変調素子11aiから出射されるノイズ光の出射角は、光変調素子11aiに信号光が入射する入射角と同一になる。すなわち、ノイズ光の光軸は、信号光が光変調素子11aiを正透過した場合の透過光の光軸と一致する。
【0016】
このようなノイズ光を信号光から分離するために、光変調素子11aiを構成する各セルの位相変調量は、信号光が光変調素子11aiから出射する方向とノイズ光が光変調素子11aiから出射する方向とが異なるように設定されている。透過型光変調素子では、ノイズ光の出射角が入射光の入射角と同一になる。したがって、各セルの位相変調量は、信号光の出射角が入射光の入射角と同一にならないように設定される。
【0017】
本実施形態においては、信号光SL0が第1の光変調素子11a1の入射面に垂直入射する。第1の光変調素子11a1は、ノイズ光NL1を出射面から垂直出射し、信号光SL1を斜め出射する。第2の光変調素子11a2は、(1)その入射面が第1の光変調素子11a1の出射面と平行になり、(2)その入射面が第1の光変調素子11a1から出射された信号光SL1と交わり、(3)その入射面が第1の光変調素子11a1から出射されたノイズ光NL1の光軸と交わらないように配置されている。なお、条件(3)を課す代わりに、第1の光変調素子11a1から出射されたノイズ光NL1の光軸が、第2の光変調素子11a2の入射面と第1の光変調素子11a1から出射された信号光SL1との交点と交わらないという条件を課してもよい。或いは、第2の光変調素子11a2の入射面に、第1の光変調素子11a1から出射されたノイズ光NL1の少なくとも一部が入射しない、という条件を課してもよい。
【0018】
また、本実施形態において、第2の光変調素子11a2は、ノイズ光NL2を斜め出射し、信号光SL2を垂直出射する。第3の光変調素子11a3は、(1)その入射面が第2の光変調素子11a2の出射面と平行になり、(2)その入射面が第2の光変調素子11a2ら出射された信号光SL2と交わり、(3)その入射面が第2の光変調素子11a2から出射されたノイズ光NL2の光軸と交わらないように配置されている。なお、条件(3)を課す代わりに、第2の光変調素子11a2から出射されたノイズ光NL2の光軸が、第3の光変調素子11a3の入射面と第2の光変調素子11a2から出射された信号光SL2との交点と交わらないという条件を課してもよい。或いは、第3の光変調素子11a3の入射面に、第2の光変調素子11a2から出射されたノイズ光NL2の少なくとも一部が入射しない、という条件を課してもよい。第3の光変調素子11a3は、ノイズ光NL3を垂直出射し、信号光SL3を斜め出射する。なお、本実施形態において、信号光SL0~SL3及びノイズ光NL1~NL3の光軸は、同一平面内に位置する。
【0019】
イメージセンサ12は、光演算部11から出力された信号光SL3を検出し、検出結果を表す電気信号を生成するための手段である光センサの一例である。イメージセンサ12は、光演算部11から出射された信号光SL3の強度分布を表す電気信号を生成するべく、複数の光電変換ユニットにより構成されている。イメージセンサ12は、(1)その入射面が第3の光変調素子11a3の出射面と平行になり、(2)その入射面が光演算部11から出射された信号光SL3の光軸と交わり、(3)その入射面が光演算部11から出射されたノイズ光NL1~NL3の光軸と交わらないように配置されている。なお、条件(3)を課す代わりに、光演算部11から出射されたノイズ光NL1~NL3の光軸が、イメージセンサ12の入射面と光演算部11から出射された信号光SL3の光軸との交点と交わらないという条件を課してもよい。
【0020】
光変調素子11a1~11a3及びイメージセンサ12を以上のように配置することにより、イメージセンサ12により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響は、信号光SLiとノイズ光NLiとが各光変調素子11aiから同一の方向に出射される従来の光演算装置よりも小さくなる。イメージセンサ12の入射面(の任意の点)がノイズ光NL1~NL3の光軸と交わらないという条件を課す代わりに、イメージセンサ12の入射面において信号光SL1~SL3の光軸と交わる点とノイズ光NL1~NL3の光軸と交わる点とが相違するという条件を課してもよい。この場合でも、イメージセンサ12の入射面の中心がノイズ光NL1~NL3の光軸と交わる従来構成と比べてイメージセンサ12に入射するノイズ光NL1~NL3の強度を低下させることができる。これにより、イメージセンサ12により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響を抑えることができる。イメージセンサ12の入射面にノイズ光NL1~NL3の少なくとも一部が入射しないという条件を課しても同様のことが言える。
【0021】
なお、本実施形態においては、イメージセンサ12を構成する全ての光電変換ユニットについて、検出限界以上の強度でノイズ光NL1~NL3が入射しないようにする配置を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、イメージセンサ12を構成する光電変換ユニットのうち、検出限界以上の強度で信号光SL3が入射する光電変換ユニットについて、検出限界以上の強度でノイズ光NL1~NL3が入射しないようにする配置を採用してもよい。この場合でも、イメージセンサ12により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響を、従来の光演算装置よりも小さくすることができる。
【0022】
また、本実施形態においては、入力データにより2次元強度変調された信号光SL0を光演算部11に入力する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、搬送光を光演算部11に入力し、光変調素子11a1によって入力データにより2次元変調された信号光SL1を生成する構成を採用してもよい。また、光演算装置1は、信号光SL0を生成するディスプレイ又は搬送光を生成する光源を更に備えていてもよい。
【0023】
なお、各光変調素子11aiの各セルの位相変調量の設定は、例えば、機械学習を用いて実現することができる。この機械学習において用いられるモデルとしては、例えば、光変調素子11a1に入射する信号光SL0の2次元強度分布を入力とし、イメージセンサ12に入射する信号光SL3の2次元強度分布を出力とするモデルであって、各光変調素子11aiの各セルにおける位相変調量をパラメータとして含むモデルを用いることができる。ここで、光変調素子11a1に入射する信号光SL0の2次元強度分布とは、例えば、光変調素子11a1を構成する各セルに入射する信号光SL0の強度の集合のことを指す。また、イメージセンサ12に入射する信号光SL3の2次元強度分布とは、例えば、イメージセンサ12を構成する各光電変換ユニットに入射する信号光SL3の強度の集合のことを指す。
【0024】
また、各セルの位相変調量が可変な光変調素子11aiを光演算部11が含んでいる場合、光演算装置1は、その光変調素子11aiの各セルの位相変調量を設定する制御部を備えていてもよい。これにより、光演算装置1にて実行する光演算の内容を変更することが可能になる。
【0025】
なお、乾燥ゲル中に形成されたn個の光回折層を光変調素子11a1~11anとして用いる場合、脱水収縮を行うことにより相似形を保ったまま収縮するゲル、例えば、Implosion Fabrication法において用いられるゲルを用いることが好ましい。これにより、n個の光回折層を形成した膨潤ゲルを乾燥させることによって、n個の光回折層が精度良く配置された光演算部11を容易に製造することができる。
【0026】
(光演算装置の変形例)
光演算装置1の一変形例について、図2を参照して説明する。図2は、本変形例に係る光演算装置1(以下、光演算装置1Aと記載する)の構成を示す側面図である。
【0027】
光演算装置1Aは、光演算装置1と同様、光演算部11と、イメージセンサ12と、を備えている。光演算装置1Aと光演算装置1との相違点は、光変調素子11a1~11a3及びイメージセンサ12の位置である。
【0028】
本変形例においては、信号光SL0が第1の光変調素子11a1の入射面に斜め入射する。第1の光変調素子11a1は、ノイズ光NL1及び信号光SL1を異なる方向に斜め出射する。第2の光変調素子11a2は、(1)その入射面が第1の光変調素子11a1の出射面と平行になり、(2)その入射面が第1の光変調素子11a1から出射された信号光SL1と交わり、(3)その入射面が第1の光変調素子11a1から出射されたノイズ光NL1の光軸と交わらないように配置されている。第2の光変調素子11a2は、ノイズ光NL2及び信号光SL2を異なる方向に斜め出射する。第3の光変調素子11a3は、(1)その入射面が第2の光変調素子11a2の出射面と平行になり、(2)その入射面が第2の光変調素子11a2ら出射された信号光SL2と交わり、(3)その入射面が第2の光変調素子11a2から出射されたノイズ光NL2の光軸と交わらないように配置されている。第3の光変調素子11a3は、ノイズ光NL3及び信号光SL3を異なる方向に斜め出射する。イメージセンサ12は、(1)その入射面が第3の光変調素子11a3の出射面と平行になり、(2)その入射面が光演算部11から出射された信号光SL3の光軸と交わり、(3)その入射面が光演算部11から出射されたノイズ光NL1~NL3の光軸と交わらないように配置されている。なお、信号光SL0~SL3及びノイズ光NL1~NL3の光軸は、同一平面内に位置する。
【0029】
光変調素子11a1~11a3及びイメージセンサ12を以上のように配置することにより、イメージセンサ12により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響は、信号光SLiとノイズ光NLiとが各光変調素子11aiから同一の方向に出射される従来の光演算装置よりも小さくなる。
【0030】
(透過型光変調素子の構成例)
光演算装置1が備える光変調素子11aiの構成例について、図3を参照して説明する。図3の(a)は、本具体例に係る光変調素子11aiの平面図である。図3の(b)は、本具体例に係る光変調素子11aiを構成するセルCの断面図である。
【0031】
光変調素子11aiは、図3の(a)に示すように、位相変調量が互いに独立に設定された複数のセルCにより構成されている。光変調素子11aiに信号光SLi-1が入射すると、位相変調されながら各セルCを透過した信号光SLi-1が相互に干渉することによって、演算結果を表す信号光SLiが形成される。
【0032】
光変調素子11aiを構成するセルCは、マイクロセルである。ここで、「マイクロセル」とは、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、「セルサイズ」とは、セルの面積の平方根のことを指す。例えば、マイクロセルの平面視形状が正方形である場合、マイクロセルのセルサイズとは、マイクロセルの一辺の長さである。マイクロセルのセルサイズの下限は、例えば、1nmである。
【0033】
図3の(a)に例示した光変調素子11aiは、マトリックス状に配置された200×200個のセルCにより構成されている。各セルCの平面視形状は、500nm×500nmの正方形であり、光変調素子11aiの平面視形状は、100μm×100μmの正方形である。この場合、セルCの間のギャップ、又は、セルCの周辺部を、セルCにより位相変調されることなく透過した信号光SLi-1がノイズ光となる。
【0034】
光変調素子11aiを構成する各セルCは、例えば図3の(b)に示すように、偏光板C11と、偏光板C12と、第1電極C13と、磁化自由層C14と、絶縁層C15と、磁化固定層C16と、第2電極C17と、により構成することができる。
【0035】
偏光板C11及び偏光板C12は、互いに対向するように配置されている。第1電極C13、磁化自由層C14、絶縁層C15、磁化固定層C16、及び第2電極C17は、この順に積層され、偏光板C11と偏光板C12との間に挟みこまれている。ここで、第1電極C13、磁化自由層C14、絶縁層C15、磁化固定層C16、及び第2電極C17の積層方向は、偏光板C11及び偏光板C12の積層方向と直交する。このため、磁化自由層C14の第1の側面が偏光板C11の一方の主面と面接触し、第1の側面に対向する磁化自由層C14の第2の側面が偏光板C12の一方の主面と面接触する。信号光SLi-1は、(1)偏光板C11を介して磁化自由層C14の内部に入射し、(2)磁化自由層C14を透過し、(3)偏光板C12を介して磁化自由層C14の外部に出射する。
【0036】
磁化自由層C14は、例えば、導電性及び透光性を有する軟磁性材料(例えば、CoFeB)により構成される。また、磁化固定層C16は、例えば、導電性を有する硬磁性材料(例えば、パーマロイ)により構成される。また、偏光板C11及び偏光板C12としては、偏光方向Pが磁化固定層C16の磁化方向Mと平行な偏光成分を選択的に透過する偏光板が選択される。図3の(b)においては、磁化方向M及び偏光方向Pが、偏光板C11の主面及び磁化固定層C16の主面の両方と平行になる場合を例示している。
【0037】
第1電極C13と第2電極C17との間に電位差を与えると、トンネル効果によりスピン流(スピン偏極した電子の流れ)が絶縁層C15を介して磁化固定層C16から磁化自由層C14に注入され、磁化自由層C14に磁化が生じる。ここで、磁化自由層C14に生じる磁化は、磁化固定層C16の磁化方向Mと平行な磁化、すなわち、偏光板C11を介して磁化自由層C14に入射する信号光SLi-1の偏光方向Pと平行な磁化である。このため、信号光SLi-1の位相は、磁化自由層C14を伝搬する過程で横カー効果により遅延する。
【0038】
ここで、セルCにおける信号光SLi-1の位相変調量は、磁化自由層C14に生じる磁化の大きさに応じて決まる。また、磁化自由層C14に生じる磁化の大きさは、磁化自由層C14に注入されるスピン流の大きさに応じて決まる。また、磁化自由層C14に注入されるスピン流の大きさは、第1電極C13と第2電極C17との間に与える電位差に応じて決まる。したがって、第1電極C13と第2電極C17との間に与える電位差を制御することによって、セルCの位相変調量を所望の値に設定することができる。
【0039】
なお、本構成例においては、STT(Spin Transfer Torque)方式のMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)と同様の構成を有するセルCについて説明したが、これに限定されない。例えば、SOT(Spin Orbit Torque)方式のMRAMと同様の構成を有するセルCを用いてもよい。なお、このようなセルCは、例えば、図3の(b)に示した構造から、絶縁層C15、磁化固定層C16、及び第2電極C17を取り去ることにより実現することができる。この場合、例えば、第1電極C13に重金属を含め、第1電極C13にパルス電圧又はパルス電流を与えることにより、磁化自由層C14に効率よくスピン流を注入することができる。
【0040】
また、セルCは、LCD(Liquid Crystal Display)のセルと同様に構成されていてもよい。この場合、セルCは、例えば図4に示すように、第1ガラス基板C21a、第1透明電極C22a、液晶層C23、第2透明電極C22b、及び第2ガラス基板C21bにより構成される。第1ガラス基板C21a、第1透明電極C22a、液晶層C23、第2透明電極C22b、及び第2ガラス基板C21bは、信号光SLi-1の入射側からこの順に積層されている。
【0041】
信号光SLi-1は、(1)第1ガラス基板C21a及び第1透明電極C22aを透過し、(2)液晶層C23を透過し、(3)第2透明電極C22b及び第2ガラス基板C21bを透過する。液晶層C23は、ガラス基板C21の主面と平行な方向に配向した液晶分子により構成されており、第1透明電極C22aと第2透明電極C22bとの間の電位差に応じた屈折率を有する。このため、信号光SLi-1は、液晶層C23を透過する際に、位相変調を受ける。セルCの位相変調量は、第1透明電極C22aと第2透明電極C22bとの間に与える電位差を制御することによって、所望の値に設定することができる。
【0042】
なお、光変調素子11aiは、厚みが互いに独立に設定された複数のセルCにより構成することもできる。図5は、厚みが互いに独立に設定された複数のセルCにより構成された光変調素子11aiの一部を拡大して示す斜視図である。
【0043】
図5に示す光変調素子11aiは、透明基板C31と、透明基板C31の上面に形成された複数のピラーと、により構成されている。各ピラーは、各辺の長さがセルサイズと等しい正方形の底面を有する四角柱状の構造体であり、セルCとして機能する。この場合、各セルCを構成するピラーの間(ピラーが形成されていない各セルの周辺部)を、セルCにより位相変調されることなく透過した信号光SLi-1がノイズ光となる。
【0044】
信号光SLiは、(1)ピラーの上面から入射し、(2)ピラーを透過し、(3)透明基板C31を透過し、(4)透明基板C31の下面から出射する。各セルCを透過する信号光SLiの位相変調量は、そのセルCを構成するピラーの高さに応じて決まる。すなわち、高さの高いピラーにより構成されるセルCを透過する信号光SLiの位相変調量は大きくなり、高さの低いピラーにより構成されるセルCを透過する信号光SLiの位相変調量は小さくなる。なお、各セルCの位相変調量は、固定である。
【0045】
[第2の実施形態]
(光演算装置の構成)
本発明の第2の実施形態に係る光演算装置2の構成について、図6を参照して説明する。図6は、光演算装置2の構成を示す側面図である。
【0046】
光演算装置2は、図6に示すように、光演算部21と、イメージセンサ22と、ミラー23と、を備えている。
【0047】
光演算部21は、少なくとも1つの光変調素子21a1~21an(nは1以上の任意の自然数)の集合である。本実施形態においては、多段の光演算を実現するべく、光演算部21として、3つの光変調素子21a1~21a3の集合を用いている。なお、光変調素子21a1~21anは、一体化されていてもよい。例えば、乾燥ゲルなど、信号光を透過する構造体に中に形成されたn個の光回折層を、光変調素子21a1~21anとして用いてもよい。或いは、光変調素子21a1~21anは、単一の基板に埋め込まれていてもよいし、単一の光変調素子のn個の領域を、光変調素子21a1~21anとして用いてもよい。
【0048】
各光変調素子21ai(iは1以上n以下の各自然数)は、位相変調量が互いに独立に設定可能な複数のセルにより構成されている。各光変調素子21aiは、反射型光変調素子であり、各セルにより位相変調された反射光を相互に干渉させることによって、光演算を行う。ここで、光演算を行うとは、信号光の2次元強度分布を、演算前の情報を表す2次元強度分布から、演算後の情報を表す2次元強度分布へと、変換することを指す。反射型光変調素子の構成例については、参照する図面を代えて後述する。
【0049】
光変調素子21aiは、上述した信号光の他に、各セルにより位相変調されることなく光変調素子21aiに反射されたノイズ光を出射する。例えば、光変調素子21aiを構成するセルの内部に入射することなく、光変調素子21aiの表面にて反射された光がノイズ光となる。光変調素子21aiから出射されるノイズ光の光軸は、光変調素子21aiに入射する信号光の光軸と光変調素子21aiの入射面の法線とが張る平面内に位置し、光変調素子21aiから出射されるノイズ光の出射角は、光変調素子21aiに信号光が入射する入射角と同一になる。すなわち、ノイズ光の光軸は、信号光が光変調素子21aiにより正反射された場合の反射光の光軸と一致する。
【0050】
このようなノイズ光を信号光から分離するために、光変調素子21aiを構成する各セルの位相変調量は、信号光が光変調素子21aiから出射する方向とノイズ光が光変調素子21aiから出射する方向とが異なるように設定されている。反射型光変調素子では、例えば、ノイズ光の出射角が入射光の入射角と同一になる。したがって、各セルの位相変調量は、信号光の出射角が入射光の入射角と同一にならないように設定される。
【0051】
ミラー23は、光変調素子21a1~21a3から出射される信号光SL1~SL3を反射するための手段であり、その反射面が光変調素子21a1~21a3の入出射面と対向するように配置される。
【0052】
本実施形態においては、信号光SL0が第1の光変調素子21a1に斜め入射する。第1の光変調素子21a1は、ノイズ光NL1及び信号光SL1を異なる方向に斜め出射する。第1の光変調素子21a1から出射されたノイズ光NL1及び信号光SL1は、それぞれ、ミラー23により反射される。第2の光変調素子21a2は、(1)その入出射面が第1の光変調素子21a1の入出射面と同一平面上に位置し、(2)その入出射面がミラー23により反射された信号光SL1と交わり、(3)その入出射面がミラー23により反射されたノイズ光NL1の光軸と交わらないように配置されている。なお、条件(3)を課す代わりに、第1の光変調素子21a1から出射されたノイズ光NL1の光軸が、第2の光変調素子21a2の入出射面と第1の光変調素子21a1から出射された信号光SL1との交点と交わらないという条件を課してもよい。或いは、第2の光変調素子21a2の入出射面に、第1の光変調素子21a1から出射されたノイズ光NL1の少なくとも一部が入射しない、という条件を課してもよい。
【0053】
また、本実施形態において、第2の光変調素子21a2は、ノイズ光NL2及び信号光SL2を異なる方向に斜め出射する。第2の光変調素子21a2から出射されたノイズ光NL2及び信号光SL2は、それぞれ、ミラー23により反射される。第3の光変調素子21a3は、(1)その入出射面が第2の光変調素子21a2の入出射面と同一平面上に位置し、(2)その入出射面がミラー23により反射された信号光SL2と交わり、(3)その入出射面がミラー23により反射されたノイズ光NL2の光軸と交わらないように配置されている。なお、条件(3)を課す代わりに、第2の光変調素子21a2から出射されたノイズ光NL2の光軸が、第3の光変調素子21a3の入出射面と第2の光変調素子21a2から出射された信号光SL2との交点と交わらないという条件を課してもよい。或いは、第3の光変調素子21a3の入射面に、第2の光変調素子21a2から出射されたノイズ光NL2の少なくとも一部が入射しない、という条件を課してもよい。第3の光変調素子21a3は、ノイズ光NL3及び信号光SL3を異なる方向に斜め出射する。なお、信号光SL0~SL3及びノイズ光NL1~NL3の光軸は、同一平面内に位置する。
【0054】
イメージセンサ22は、光演算部21から出力された信号光SL3を検出し、検出結果を表す電気信号を生成するための手段である光センサの一例である。イメージセンサ22は、光演算部21から出射された信号光SL3の強度分布を表す電気信号を生成するべく、複数の光電変換ユニットにより構成されている。イメージセンサ22は、(1)その入射面がミラー23の反射面と同一平面上に位置し、(2)その入射面が光演算部21から出射された信号光SL3の光軸と交わり、(3)その入射面が光演算部21から出射されたノイズ光NL1~NL3の光軸と交わらないように配置されている。
【0055】
光変調素子21a1~21a3、イメージセンサ22、及びミラー23を以上のように配置することにより、イメージセンサ22を構成する全ての光電変換ユニットについて、その光電変換ユニットの検出限界以上の強度でその光電変換ユニットにノイズ光NL1~NL3が入射する事態を回避することができる。したがって、イメージセンサ22により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響は、信号光SLiとノイズ光NLiとが各光変調素子21aiから同一の方向に出射される従来の光演算装置よりも小さくなる。イメージセンサ22の入射面(の任意の点)がノイズ光NL1~NL3の光軸と交わらないという条件を課す代わりに、イメージセンサ22の入射面において信号光SL1~SL3の光軸と交わるとノイズ光NL1~NL3の光軸と交わる点とが相違するという条件(より弱い条件)を課してもよい。この場合でも、イメージセンサ22の入射面の中心がノイズ光NL1~NL3の光軸と交わる従来構成と比べてイメージセンサ22に入射するノイズ光NL1~NL3の強度を低下させることができる。これにより、イメージセンサ22により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響を抑えることができる。イメージセンサ22の入射面にノイズ光NL1~NL3の少なくとも一部が入射しないという条件を課しても同様のことが言える。
【0056】
なお、本実施形態においては、イメージセンサ22を構成する全ての光電変換ユニットについて、検出限界以上の強度でノイズ光NL1~NL3が入射しないようにする配置を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、イメージセンサ22を構成する光電変換ユニットのうち、検出限界以上の強度で信号光SL3が入射する光電変換ユニットについて、検出限界以上の強度でノイズ光NL1~NL3が入射しないようにする配置を採用してもよい。この場合でも、イメージセンサ22により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響を、従来の光演算装置よりも小さくすることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、入力データにより2次元強度変調された信号光SL0を光演算部21に入力する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、搬送光を光演算部21に入力し、光変調素子21a1によって入力データにより2次元変調された信号光SL1を生成する構成を採用してもよい。また、光演算装置2は、信号光SL0を生成するディスプレイ又は搬送光を生成する光源を更に備えていてもよい。
【0058】
なお、各光変調素子21aiの各セルの位相変調量の設定は、例えば、機械学習を用いて実現することができる。この機械学習において用いられるモデルとしては、例えば、光変調素子21a1に入射する信号光SL0の2次元強度分布を入力とし、イメージセンサ22に入射する信号光SL3の2次元強度分布を出力とするモデルであって、各光変調素子21aiの各セルにおける位相変調量をパラメータとして含むモデルを用いることができる。ここで、光変調素子21a1に入射する信号光SL0の2次元強度分布とは、例えば、光変調素子21a1を構成する各セルに入射する信号光SL0の強度の集合のことを指す。また、イメージセンサ22に入射する信号光SL3の2次元強度分布とは、例えば、イメージセンサ22を構成する各光電変換ユニットに入射する信号光SL3の強度の集合のことを指す。
【0059】
また、各セルの位相変調量が可変な光変調素子21aiを光演算部21が含んでいる場合、光演算装置2は、その光変調素子21aiの各セルの位相変調量を設定する制御部を備えていてもよい。これにより、光演算装置1にて実行する光演算の内容を変更することが可能になる。
【0060】
また、上述したように、単一の光変調素子のn個の領域を、光変調素子21a1~21anとして用いてもよい。すなわち、単一の光変調素子に、n個の演算領域A1,A2,…,ANが設定し、演算領域A1は、入射光を変調及び反射することによって光演算を行い、演算領域A1以外の各演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)は、演算領域Ai-1にて変調及び反射された後、ミラー23にて反射された信号光を変調及び反射することによって光演算を行うようにしてもよい。
【0061】
なお、乾燥ゲル中に形成されたn個の光回折層を光変調素子21a1~21anとして用いる場合、脱水収縮を行うことにより相似形を保ったまま収縮するゲル、例えば、Implosion Fabrication法において用いられるゲルを用いることが好ましい。これにより、n個の光回折層を形成した膨潤ゲルを乾燥させることによって、n個の光回折層が精度良く配置された光演算部21を容易に製造することができる。
【0062】
(光演算装置の変形例1)
光演算装置2の第1の変形例について、図7を参照して説明する。図7は、本変形例に係る光演算装置2(以下、光演算装置2Aと記載する)の構成を示す側面図である。
【0063】
光演算装置2Aは、光演算装置2と同様、光演算部21と、イメージセンサ22と、ミラー23と、を備えている。光演算装置2Aと光演算装置2との相違点は、光変調素子21a1~21a3の位置、イメージセンサ22の位置及び向き、並びに、ミラー23の向きである。
【0064】
光演算装置2において、ミラー23は、その反射面が光変調素子21a1~21a3の入出射面と平行になるように配置されている。これに対して、光演算装置2Aにおいて、ミラー23は、その反射面が光変調素子21a1~21a3の入出射面と非平行になるように配置されている。また、光演算装置2において、イメージセンサ22は、その入射面が光変調素子21a1~21a3の入出射面と平行になるように配置されている。これに対して、光演算装置2Aにおいて、イメージセンサ22は、その入射面が光変調素子21a1~21a3の入出射面と非平行になるように配置されている。なお、イメージセンサ22の入射面がミラー23の反射面と同一平面上に位置する点は、光演算装置2及び光演算装置2Aにおいて共通である。
【0065】
本変形例においても、信号光SL0が第1の光変調素子21a1に斜め入射する。第1の光変調素子21a1は、ノイズ光NL1及び信号光SL1を異なる方向に斜め出射する。第1の光変調素子21a1から出射されたノイズ光NL1及び信号光SL1は、それぞれ、ミラー23により反射される。第2の光変調素子21a2は、(1)その入出射面が第1の光変調素子21a1の入出射面と同一平面上に位置し、(2)その入出射面がミラー23により反射された信号光SL1と交わり、(3)その入出射面がミラー23により反射されたノイズ光NL1の光軸と交わらないように配置されている。第2の光変調素子21a2は、ノイズ光NL2及び信号光SL2を異なる方向に斜め出射する。第2の光変調素子21a2から出射されたノイズ光NL2及び信号光SL2は、それぞれ、ミラー23により反射される。第3の光変調素子21a3は、(1)その入出射面が第2の光変調素子21a2の入出射面と同一平面上に位置し、(2)その入出射面がミラー23により反射された信号光SL2と交わり、(3)その入出射面がミラー23により反射されたノイズ光NL2の光軸と交わらないように配置されている。第3の光変調素子21a3は、ノイズ光NL3及び信号光SL3を異なる方向に斜め出射する。イメージセンサ22は、(1)その入射面がミラー23の反射面と同一平面上に位置し、(2)その入射面が光演算部21から出射された信号光SL3の光軸と交わり、(3)その入射面が光演算部21から出射されたノイズ光NL1~NL3の光軸と交わらないように配置されている。なお、信号光SL0~SL3及びノイズ光NL1~NL3の光軸は、同一平面内に位置する。
【0066】
光変調素子21a1~21a3、イメージセンサ22、及びミラー23を以上のように配置することにより、イメージセンサ22を構成する全ての光電変換ユニットについて、その光電変換ユニットの検出限界以上の強度でその光電変換ユニットにノイズ光NL1~NL3が入射する事態を回避することができる。したがって、イメージセンサ22により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響は、信号光SLiとノイズ光NLiとが各光変調素子21aiから同一の方向に出射される従来の光演算装置よりも小さくなる。しかも、本変形例においては、光変調素子21a1~21a3への信号光SL0~SL2の入射角、及び、光変調素子21a1~21a3からの信号光SL1~SL3の出射角を、それぞれ共通にすることができる。したがって、光変調素子21a1~21a3の設計及び製造が容易になる。
【0067】
(光演算装置の変形例2)
光演算装置2の第2の変形例について、図8を参照して説明する。図8において、(a)は、本変形例に係る光演算装置2(以下、光演算装置2Bと記載する)の上面図であり、(b)は、その光演算装置2Bの側面図であり、(c)は、その光演算装置2Bの正面図である。なお、図8の(a)においては、ミラー23の図示を省略している。
【0068】
光演算装置2Bは、光演算装置2と同様、光演算部21と、イメージセンサ22と、ミラー23と、を備えている。光演算装置2と光演算装置2との第1の相違点は、光変調素子21a1~21a3の位置、イメージセンサ22の位置及び向き、並びに、ミラー23の位置及び向きである。光演算装置2と光演算装置2との第2の相違点は、各光変調素子21aiからの信号光SLiの出射方向である。
【0069】
光演算装置2において、ミラー23は、その反射面が光変調素子21a1~21a3の入出射面と平行になるように配置されている。これに対して、光演算装置2Bにおいて、ミラー23は、その反射面が光変調素子21a1~21a3の入出射面と非平行になるように配置されている。また、光演算装置2において、イメージセンサ22は、その入射面がミラー23の反射面と同一平面上に位置するように配置されているのに対して、光演算装置2Bにおいて、イメージセンサ22は、その入射面が光変調素子21a1~21a3の入出射面と同一平面上に位置するように配置されている。
【0070】
また、光演算装置2においては、各光変調素子21aiから出射される信号光SLiの光軸が、その光変調素子21aiに入射する信号光SLi-1の光軸及びその光変調素子21aiから出射するノイズ光NLiの光軸を含む平面内に配置されている。これに対して、光演算装置2においては、各光変調素子21aiから出射される信号光SLiの光軸が、その光変調素子21aiに入射する信号光SLi-1の光軸及びその光変調素子21aiから出射するノイズ光NLiの光軸を含む平面外に配置されている。
【0071】
本変形例においても、信号光SL0が第1の光変調素子21a1に斜め入射する。第1の光変調素子21a1は、ノイズ光NL1及び信号光SL1を異なる方向に斜め出射する。第1の光変調素子21a1から出射されたノイズ光NL1及び信号光SL1は、それぞれ、ミラー23により反射される。第2の光変調素子21a2は、(1)その入出射面が第1の光変調素子21a1の入出射面と同一平面上に位置し、(2)その入出射面がミラー23により反射された信号光SL1と交わり、(3)その入出射面がミラー23により反射されたノイズ光NL1の光軸と交わらないように配置されている。第2の光変調素子21a2は、ノイズ光NL2及び信号光SL2を異なる方向に斜め出射する。第2の光変調素子21a2から出射されたノイズ光NL2及び信号光SL2は、それぞれ、ミラー23により反射される。第3の光変調素子21a3は、(1)その入出射面が第2の光変調素子21a2の入出射面と同一平面上に位置し、(2)その入出射面がミラー23により反射された信号光SL2と交わり、(3)その入出射面がミラー23により反射されたノイズ光NL2の光軸と交わらないように配置されている。第3の光変調素子21a3は、ノイズ光NL3及び信号光SL3を異なる方向に斜め出射する。第3の光変調素子21a3から出射されたノイズ光NL3及び信号光SL3は、それぞれ、ミラー23により反射される。イメージセンサ22は、(1)その入射面がミラー23の反射面と同一平面上に位置し、(2)その入射面がミラー23により反射された信号光SL3の光軸と交わり、(3)その入射面がミラー23により反射されたノイズ光NL1~NL3の光軸と交わらないように配置されている。
【0072】
光変調素子21a1~21a3、イメージセンサ22、及びミラー23を以上のように配置することにより、イメージセンサ22を構成する全ての光電変換ユニットについて、その光電変換ユニットの検出限界以上の強度でその光電変換ユニットにノイズ光NL1~NL3が入射する事態を回避することができる。したがって、イメージセンサ22により生成される電気信号に対するノイズ光NL1~NL3の影響は、信号光SLiとノイズ光NLiとが各光変調素子21aiから同一の方向に出射される従来の光演算装置よりも小さくなる。しかも、本変形例においては、光変調素子21a1~21a3への信号光SL0~SL2の入射角、及び、光変調素子21a1~21a3からの信号光SL1~SL3の出射角を、それぞれ共通にすることができる。したがって、光変調素子21a1~21a3の設計及び製造が容易になる。
【0073】
(反射型光変調素子の構成例)
光演算装置1が備える反射型の光変調素子21aiの構成例について、図9を参照して説明する。図9の(a)は、本具体例に係る光変調素子21aiの平面図である。図9の(b)は、本具体例に係る光変調素子21aiを構成するセルCの断面図である。
【0074】
光変調素子21aiは、図9の(a)に示すように、位相変調量が互いに独立に設定された複数のセルCにより構成されている。光変調素子21aiに信号光SLi-1が入射すると、位相変調されながら各セルCで反射された信号光SLi-1が相互に干渉することによって、演算結果を表す信号光SLiが形成される。
【0075】
光変調素子21aiを構成するセルCは、マイクロセルである。ここで、「マイクロセル」とは、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、「セルサイズ」とは、セルの面積の平方根のことを指す。例えば、マイクロセルの平面視形状が正方形である場合、マイクロセルのセルサイズとは、マイクロセルの一辺の長さである。マイクロセルのセルサイズの下限は、例えば、1nmである。
【0076】
図9の(a)に例示した光変調素子21aiは、マトリックス状に配置された200×200個のセルCにより構成されている。各セルCの平面視形状は、500nm×500nmの正方形であり、光変調素子21aiの平面視形状は、100μm×100μmの正方形である。
【0077】
光変調素子21aiを構成する各セルCは、例えば図9の(b)に示すように、偏光板C11と、反射板C18と、第1電極C13と、磁化自由層C14と、絶縁層C15と、磁化固定層C16と、第2電極C17と、により構成することができる。この場合、偏光板C11の表面にて反射された信号光SLi-1がノイズ光となる。
【0078】
偏光板C11及び反射板C18は、互いに対向するように配置されている。第1電極C13、磁化自由層C14、絶縁層C15、磁化固定層C16、及び第2電極C17は、この順に積層され、偏光板C11と反射板C18との間に挟みこまれている。ここで、第1電極C13、磁化自由層C14、絶縁層C15、磁化固定層C16、及び第2電極C17の積層方向は、偏光板C11及び反射板C18の積層方向と直交する。このため、磁化自由層C14の第1の側面が偏光板C11の一方の主面と面接触し、第1の側面に対向する磁化自由層C14の第2の側面が反射板C18の一方の主面と面接触する。信号光SLi-1は、(1)偏光板C11を介して磁化自由層C14の内部に入射し、(2)反射板C18により反射され、(3)偏光板C11を介して磁化自由層C14の外部に出射する。
【0079】
磁化自由層C14は、例えば、導電性及び透光性を有する軟磁性材料(例えば、CoFeB)により構成される。また、磁化固定層C16は、例えば、導電性を有する硬磁性材料(例えば、パーマロイ)により構成される。また、偏光板C11としては、偏光方向Pが磁化固定層C16の磁化方向Mと平行な偏光成分を選択的に透過する偏光板が選択される。図9の(b)においては、磁化方向M及び偏光方向Pが、偏光板C11の主面及び磁化固定層C16の主面の両方と平行になる場合を例示している。
【0080】
第1電極C13と第2電極C17との間に電位差を与えると、トンネル効果によりスピン流(スピン偏極した電子の流れ)が絶縁層C15を介して磁化固定層C16から磁化自由層C14に注入され、磁化自由層C14に磁化が生じる。ここで、磁化自由層C14に生じる磁化は、磁化固定層C16の磁化方向Mと平行な磁化、すなわち、偏光板C11を介して磁化自由層C14に入射する信号光SLi-1の偏光方向Pと平行な磁化である。このため、信号光SLi-1の位相は、磁化自由層C14を伝搬する過程で横カー効果により遅延する。
【0081】
ここで、セルCにおける信号光SLi-1の位相変調量は、磁化自由層C14に生じる磁化の大きさに応じて決まる。また、磁化自由層C14に生じる磁化の大きさは、磁化自由層C14に注入されるスピン流の大きさに応じて決まる。また、磁化自由層C14に注入されるスピン流の大きさは、第1電極C13と第2電極C17との間に与える電位差に応じて決まる。したがって、第1電極C13と第2電極C17との間に与える電位差を制御することによって、セルCの位相変調を所望の値に設定することができる。
【0082】
なお、本構成例においては、STT(Spin Transfer Torque)方式のMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)と同様の構成を有するセルCについて説明したが、これに限定されない。例えば、SOT(Spin Orbit Torque)方式のMRAMと同様の構成を有するセルCを用いてもよい。なお、このようなセルCは、例えば、図9の(b)に示した構造から、絶縁層C15、磁化固定層C16、及び第2電極C17を取り去ることにより実現することができる。この場合、例えば、第1電極C13に重金属を含め、第1電極C13にパルス電圧又はパルス電流を与えることにより、磁化自由層C14に効率よくスピン流を注入することができる。
【0083】
また、セルCは、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)のセルと同様に構成されていてもよい。この場合、セルCは、例えば図10に示すように、ガラス基板C21、透明電極C22、液晶層C23、及び反射電極C24により構成される。ガラス基板C21、透明電極C22、液晶層C23、及び反射電極C24は、信号光SLi-1の入射側からこの順に積層されている。
【0084】
信号光SLi-1は、(1)ガラス基板C21及び透明電極C22を透過し、(2)液晶層C23を透過し、(3)反射電極C24により反射され、(4)液晶層C23を透過し、(5)透明電極C22及びガラス基板C21を透過する。液晶層C23は、ガラス基板C21の主面と平行な方向に配向した液晶分子により構成されており、透明電極C22と反射電極C24との間の電位差に応じた屈折率を有する。このため、信号光SLi-1は、液晶層C23を透過する際に、位相変調を受ける。セルCの位相変調量は、透明電極C22と反射電極C24との間に与える電位差を制御することによって、所望の値に設定することができる。
【0085】
なお、反射型の光変調素子21aiは、厚みが互いに独立に設定された複数のセルCにより構成することもできる。図11は、厚みが互いに独立に設定された複数のセルCにより構成された光変調素子21aiの一部を拡大して示す斜視図である。
【0086】
図11に示す光変調素子21aiは、反射板C32と、反射板C32の上面に形成された複数のピラーと、により構成されている。各ピラーは、各辺の長さがセルサイズと等しい正方形の底面を有する四角柱状の構造体であり、セルCとして機能する。この場合、ピラーが形成されている領域においては、ピラーの上面にて反射された信号光SLi-1がノイズ光となる。また、ピラーが形成されていない領域においては、反射板32の上面にて反射された信号光SLi-1がノイズ光となる。
【0087】
信号光SLi-1は、(1)ピラーの上面から入射し、(2)ピラーを透過し、(3)反射板C32にて反射され、(4)ピラーを透過し、(5)ピラーの上面から出射する。各セルCにて反射される信号光SLi-1の位相変調量は、そのセルCを構成するピラーの高さに応じて決まる。すなわち、高さの高いピラーにより構成されるセルCにて反射される信号光SLi-1の位相変調量は大きくなり、高さの低いピラーにより構成されるセルCにて反射される信号光の位相変調量は小さくなる。なお、各セルCの位相変調量は、固定である。
【0088】
[まとめ]
本発明の態様1に係る光演算装置は、位相変調量が独立に設定された、又は、位相変調量が独立に設定可能な複数のセルを有する光変調素子を含む光演算部と、前記光演算部から出力された信号光を検出し、検出結果を表す電気信号を生成する光センサと、を備えており、前記光変調素子は、(1)前記複数のセルの各々により位相変調された透過光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子を透過したノイズ光を出射する透過型光変調素子、又は、(2)前記複数のセルの各々により位相変調された反射光が干渉することにより生じる信号光、及び、前記複数のセルにより位相変調されることなく該光変調素子に反射されたノイズ光を出射する反射型光変調素子であり、前記光変調素子において、前記複数のセルの各々の位相変調量は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが異なるように設定されており、前記電気信号に対する前記ノイズ光の影響は、前記信号光が前記光変調素子から出射する方向と前記ノイズ光が前記光変調素子から出射する方向とが一致する場合よりも小さい、ことを特徴とする。
【0089】
上記の構成によれば、光センサにより生成される電気信号に対するノイズ光の影響を低減することができる。
【0090】
本発明の態様2に係る光演算装置においては、態様1の構成に加えて、前記光センサは、複数の光電変換ユニットを有するイメージセンサであり、前記イメージセンサは、前記信号光が検出限界以上の強度で入射する光電変換ユニットに前記ノイズ光が前記検出限界以上の強度で入射しないように配置されている、という構成が採用されている。
【0091】
上記の構成によれば、イメージセンサにより生成される電気信号に対するノイズ光の影響を更に低減することができる。
【0092】
本発明の態様3に係る光演算装置においては、態様2の構成に加えて、前記イメージセンサは、全ての光電変換ユニットに前記ノイズ光が前記検出限界以上の強度で入射しないように配置されている、という構成が採用されている。或いは、本発明の態様3に係る光演算装置においては、態様1の構成に加えて、前記光センサは、(1)その入射面が、前記光演算部から出射された前記信号光の光軸と交わり、且つ、(2)その入射面と前記光演算部から出射された前記信号光の光軸との交点と、前記光演算部から出射された前記ノイズ光の光軸とが交わらないように配置されている、という構成が採用されている。
【0093】
上記の構成によれば、イメージセンサにより生成される電気信号に対するノイズ光の影響をより一層低減することができる。
【0094】
本発明の態様4に係る光演算装置においては、態様1~3の何れかの構成に加えて、前記光演算部は、前記光変調素子として第1の透過型光変調素子及び第2の透過型光変調素子を少なくとも含み、前記第2の透過型光変調素子は、(1)その入射面が、前記第1の透過型光変調素子から出射された前記信号光の光軸と交わり、且つ、(2)その入射面と前記第1の透過型光変調素子から出射された前記信号光の光軸との交点と、前記第1の透過型光変調素子から出射された前記ノイズ光の光軸とが交わらないように配置されている、という構成が採用されている。また、本発明の態様5に係る光演算装置においては、態様1~3の何れかの構成に加えて、前記光演算部は、前記光変調素子として第1の透過型光変調素子及び第2の透過型光変調素子を含み、前記第2の透過型光変調素子は、(1)その入射面が、前記第1の透過型光変調素子から出射された前記信号光の光軸と交わり、且つ、(2)その入射面に、前記第1の透過型光変調素子から出射された前記ノイズ光の少なくとも一部が入射しないように配置されている、という構成が採用されている。
【0095】
上記の構成によれば、光変調素子が透過型光変調素子である場合に、光センサにより生成される電気信号に対するノイズ光の影響を効果的に低減することができる。
【0096】
本発明の態様6に係る光演算装置においては、態様1~3の何れかの構成に加えて、ミラーを更に備え、前記光演算部は、前記光変調素子として第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子を少なくとも含み、前記第2の反射型光変調素子は、(1)その入出射面が、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸と交わるように、且つ、(2)その入出射面と前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸との交点と、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記ノイズ光、又は、前記第1の反射型光変調素子から出射された前記ノイズ光の光軸とが交わらないように配置されている、という構成が採用されている。また、本発明の態様7に係る光演算装置においては、態様1~3の何れかの構成に加えて、ミラーを更に備え、前記光演算部は、前記光変調素子として第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子を含み、前記第2の反射型光変調素子は、(1)その入出射面が、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記信号光の光軸と交わるように、且つ、(2)その入出射面に、前記第1の反射型光変調素子から出射され、前記ミラーにより反射された前記ノイズ光、又は、前記第1の反射型光変調素子から出射された前記ノイズ光の少なくとも一部が入射しないように配置されている、という構成が採用されている。
【0097】
上記の構成によれば、光変調素子が反射型光変調素子である場合に、光センサにより生成される電気信号に対するノイズ光の影響を効果的に低減することができる。
【0098】
本発明の態様8に係る光演算装置においては、態様6又は7の構成に加えて、前記ミラーの反射面は、前記第1の反射型光変調素子及び前記第2の反射型光変調素子の入出射面と非平行である、という構成が採用されている。
【0099】
上記の構成によれば、第1の反射型光変調素子への信号光の入射角と第2の反射型光変調素子への信号光の入射角とを共通にすることができ、第1の反射型光変調素子からの信号光の出射角と第2の反射型光変調素子からの信号光の出射角とを共通にすることができる。したがって、光演算装置の設計及び製造が容易になる。
【0100】
本発明の態様9に係る光演算装置においては、態様6又は7の構成に加えて、前記光演算部は、前記第1の反射型光変調素子及び第2の反射型光変調素子として機能する領域が設定された単一の光変調素子により構成されている、という構成が採用されている。
【0101】
上記の構成によれば、光変調素子を個別に動かして光変調素子の位置関係を適正化する必要がないので、精度の高い光演算部を容易に製造することができる。
【0102】
本発明の態様10に係る光演算装置においては、態様1~9の何れかの構成に加えて、前記光演算部は、信号光を透過する構造体であって、前記光変調素子として機能する光回折層が内部に形成された構造体である、という構成が採用されている。
【0103】
上記の構成によれば、光変調素子を個別に動かして光変調素子の位置関係を適正化する必要がないので、精度の高い光演算部を容易に製造することができる。
【0104】
[付記事項]
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。上述した実施形態に含まれる各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1,2 光演算装置
11,21 光演算部
11a1~11a3 光変調素子(透過型光変調素子)
21a1~21a3 光変調素子(反射型光変調素子)
12,22 イメージセンサ
図1
図2
図3
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図5
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図11