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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-19
(45)【発行日】2026-01-27
(54)【発明の名称】ボールペンチップ
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/08 20060101AFI20260120BHJP
【FI】
B43K1/08 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022049220
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2022151850
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2021051084
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 直樹
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1794057(KR,B1)
【文献】特開2007-176170(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109203763(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0070094(US,A1)
【文献】特開2010-069617(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055821(WO,A1)
【文献】特開2001-328388(JP,A)
【文献】特開平08-228830(JP,A)
【文献】特開2020-090007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールホルダーのインキ流通孔の中腹に、筆記ボールの後方移動規制をなす内方突出部を形成し、当該内方突出部の先端側に筆記ボールを配置すると共に、内方突出部の後方に、中孔を介して筆記ボールを支承する、直径が筆記ボールの直径の70%以上で、表面の算術平均高さ(Sa)が2(nm)以上20(nm)以下である中間ボールを配置したボールペンチップ。
【請求項2】
前記中間ボールの後方に、中間ボールを介して前記筆記ボールを前方付勢するコイルスプリングを備えると共に、前記コイルスプリングと中間ボールとの当接部の内径が、中間ボールの直径の70%以上95%以下である請求項1に記載のボールペンチップ。
【請求項3】
筆記時、筆記ボールが座面となる内方突出部に着座した状態において、中間ボールが、筆記ボールに当接し、且つ、後孔内壁に接触する位置における前記中間ボールの中心と筆記ボールの中心とを結んだ線とボールホルダーの軸線とがなす角が1度以上、10度以下である請求項1または請求項2に記載のボールペンチップ。
【請求項4】
前記筆記ボールの回転により受ける回転力が小さい段階でも前記中間ボールが回転することを特徴とする請求項1に記載のボールペンチップ。
【請求項5】
前記中間ボールを付勢する前記コイルスプリングの押圧荷重は、5gf以上30gf以下とする請求項2に記載のボールペンチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記ボールと、この筆記ボールを先端開口部より一部突出した状態で回転自在に抱持するボールホルダーと、筆記ボール後方を支承する中間ボールとを備えるボールペンチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、運筆に力をあまり要しない、軽く滑らかな筆記感のボールペンが好まれる傾向にあることから、インキの粘度を低く設定したり、界面活性剤を添加するなどして、結果的に浸透性が高いインキとなることにより、ボールホルダー先端開口部の前端縁部と筆記ボールとの微細な隙間からのインキの滲み出しや洩れを抑制するために、筆記ボールの後方に配置したコイルスプリングなどの弾撥部材によって、筆記ボールを前方付勢して、先端開口部の前端縁部の内面に筆記ボールを押し付けた構造のボールペンチップが知られている。
また、筆記ボールの中心部を前方に付勢して、ボールホルダー先端開口部の前端縁部と筆記ボールとの確実なシール性を得るために、筆記ボールとコイルスプリングとの間に中間ボールを介在させ、中間ボールの前面と筆記ボールの後面とを当接させると共に、筆記時に筆記ボールの後方移動を規制する内方突出部を配置したボールペン(特許文献1)や、筆記時に筆記ボールと回避体(中間ボールに相当)の後方移動を規制する内方突出部を配置した塗布具(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-221787号公報
【文献】特開平8-228830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されているボールペンは、筆記時に筆記ボールの後方移動を規制する内方突出部を配置すると共に、中間ボールがインキ流通孔の中心部内に配置され、インキ流通孔の中心部の内径より小さく設定される。尚且つ、インキ流通孔の中心部の内径は、相対的にボール受け座の広さと反比例する関係となるため、内径をあまり大きくするとボール受け座の面積が不足してボール沈みが発生しやすくなり、結果的に中間ボールは筆記ボールより相当に小さい外径を有するものとなる。よって、筆記ボールの回転により発生する筆記ボールと中間ボールとの間に働く摩擦では中間ボールに大きな回転トルクが得られず、中間ボールとそれを前方付勢しているコイルスプリングとの摩擦抵抗を超える力を得難く、スリップしてすべり摩擦が生じ、特に書き始めのような低筆記速度域で重たい筆記感になりやすい。
【0005】
また、筆記ボールと中間ボールとがスリップ状態のまま長距離筆記を続けた場合、筆記ボールと中間ボールとの当接部で摩耗が起こり、接触面積が増大して、更に潤滑作用をもたらすインキが当接部へ入り込みにくくなることで、筆記ボールの回転に対する抵抗が大きくなり、筆記感が重くなることが懸念される。
【0006】
前記特許文献2に開示されている塗布具は、筆記時に筆記ボールと回避体(中間ボールに相当)の後方移動を規制する内方突出部を配置すると共に、筆記ボールと同じ直径の回避体(中間ボールに相当)が配置されている。筆記時、紙面との接触により筆記ボールが積極的に回転するが、回避体(中間ボール)はボール受け座に筆圧を受けながら当接しているため、殆ど回転しない。このため、筆記ボールの回転により発生する筆記ボールと中間ボールとの間に働く摩擦では中間ボールに大きな回転トルクが得られず、スリップしてすべり摩擦が生じ、特に書き始めのような低筆記速度域で重たい筆記感になりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ボールホルダーのインキ流通孔の中腹に、筆記ボールの後方移動規制をなす内方突出部を形成し、当該内方突出部の先端側に筆記ボールを配置すると共に、内方突出部の後方に、中孔を介して筆記ボールを支承する、直径が筆記ボールの直径の70%以上で、表面の算術平均高さ(Sa)が2(nm)以上20(nm)以下である中間ボールを配置したボールペンチップを第1の要旨とし、
前記中間ボールの後方に、中間ボールを介して前記筆記ボールを前方付勢するコイルスプリングを備えると共に、前記コイルスプリングと中間ボールとの当接部の内径が、中間ボールの直径の70%以上95%以下であることを第2の要旨とし、
筆記時、筆記ボールが座面となる内方突出部に着座した状態において、中間ボールが、筆記ボールに当接し、且つ、後孔内壁に接触する位置における前記中間ボールの中心と筆記ボールの中心とを結んだ線とボールホルダーの軸線とがなす角が1度以上、10度以下であることを第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のボールペンチップでは、筆記ボール後方を支承する中間ボールの直径が筆記ボールの直径の70%以上と十分に大きく、中間ボールに大きな回転トルクが発揮できると共に、中間ボールを内方突出部の後方の後孔内に配置することで、筆記時の筆記ボールからの筆圧を内方突出部が受けるため、中間ボールの回転を阻害する内方突出部との接触を避けることができ、筆記に伴う筆記ボールの回転により受ける回転力がより小さい段階でも容易に中間ボールが回転することができるため、筆記ボールと中間ボールとの接触は摩擦係数が小さい転がり摩擦が起こりやすくなる。特に手帳やノートなどへの筆記具による文字の筆記の場合、例えば漢字であれば一筆が数(mm)の短い線が、アルファベットの筆記体であっても数十(mm)の連続した線が筆記されるものであり、いずれにしても文章を筆記する上では、書き始めが何回も繰り返されることとなり、書き始めの軽い筆記感が継続的に得られるという格別な効果を奏するものである。
また、筆記ボールと中間ボールとの接触による耐磨耗性を考慮すると中間ボールの表面の算術平均高さ(Sa)が2(nm)以上20(nm)以下とすることで、中間ボールが回転しやすく、長距離筆記を続けた際には筆記ボールの回転により発生する筆記ボールと中間ボールとの間に働く摩擦による筆記ボールおよび中間ボールの摩耗が少なく、長期にわたって滑らかな筆記感が得られるという格別な効果を奏するものである。
【0009】
更に、前記中間ボールの後方に、中間ボールを介して前記筆記ボールを前方付勢し筆記しない際に筆記ボールをボールホルダーの内縁に密接させるコイルスプリングを備えると共に、コイルスプリングの中間ボールとの当接部の内径が中間ボールの直径の70%以上95%以下とすることで、中間ボールがコイルスプリングの内周部からズレることや中間ボールがコイルスプリングの内周部に埋没することを防止し、中間ボールの回転を阻害する状態が極力抑制されたものとすることができる。
【0010】
更に、筆記時、前記筆記ボールが座面となる内方突出部に着座した状態において、前記中間ボールが、筆記ボールに当接し、且つ、後孔内壁に接触する位置における前記中間ボールの中心と筆記ボールの中心とを結んだ線とボールホルダーの軸線とがなす角が1度以上、10度以下とすることで、中間ボールと後孔壁面との接触面積を小さくし、後孔内での中間ボールの振動を抑え、滑らかな筆記感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のボールペンチップの縦断面図。
図2図1のI部拡大図。
図3】本発明の変形例1。
図4】本発明の変形例2。
図5】コイルスプリングと中間ボールとの当接部の内径を計算するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
筆記ボールを抱持するボールホルダーは、貫通孔であるインキ流通孔を有し、インキ流通孔の先端にカシメ加工などにより筆記ボールの直径よりも小径に形成されて、筆記ボールが抜けてしまうことを防止しつつ筆記ボールの一部が突出する先端開口部を有し、また、インキ流通孔の中腹には、筆記時に筆記ボールの後方移動を規制する内方突出部を形成し、先端開口部と内方突出部との間の空間を筆記ボール抱持部としている。また、内方突出部には、インキを筆記ボール側に供給するための中孔と放射状溝が形成され、中孔の後方には中孔の内径よりも大きい内径を有する後孔が形成されている。後孔を形成する際、切削工具の消耗を抑えるため、ボールホルダー後端から段階的に刃径を小さくして削孔して掘り進め、結果的に先端側に向かって階段状に次第に小径となる後孔を形成する。尚、切削工具の刃先の角度は120°前後となっている。つまり、内方突出部の後孔側の壁面は、切削工具の刃先の角度を受けた120°前後のすり鉢状のテーパ部として形成され、後孔の最小径部に連設する。
【0013】
このようなボールホルダーの材質としては、ステンレス鋼や、洋白、真鍮などの銅合金や、ポリオキシメチレン樹脂などの耐摩耗性の高い合成樹脂が使用できる。筆記時の耐磨耗性やインキの耐食性を考慮するとステンレス鋼が好ましく、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430が好ましく用いられる。また、良好な加工性を有しつつボールホルダー先端部の打痕や摩耗などの変形等を抑制する為にビッカース硬さ(HV)を150以上、300以下とすることが好ましい。また、自然環境への配慮から、切削性の向上を目的として添加される鉛を、同程度の加工性を付与できるビスマスに置き換えて用いることが好ましい。
【0014】
筆記ボールは、ボールペンチップの先端に一部突出した状態で回転自在に配置されており、紙面等の被筆記面に押し付けられることにより後方に移動して、ボールホルダーとの間に形成される隙間よりインキを流出又は筆記ボールの回転に伴い外に搬送して被筆記面に転写するものである。
【0015】
筆記ボールの大きさは、一般的なボールペンで使用されている直径0.18(mm)以上2.0(mm)以下が使用可能であるが、0.3(mm)~1.0(mm)の範囲がより好ましい。
【0016】
ボールホルダーの後孔内には、中孔を通じて筆記ボールと接触可能な中間ボールと、該中間ボールを前方に付勢するコイルスプリングとが配置されて、中間ボールはコイルスプリングの付勢力を受けて筆記ボールを前方に付勢していると共に、コイルスプリングの前端部で回転可能に抱持されている。
【0017】
中間ボールの大きさは、筆記ボールの直径の70%以上と大きいものとすることで、筆記ボールの回転により発生する筆記ボールと中間ボールとの間に働く摩擦によって、中間ボールに大きな回転トルクが得られると共に、中間ボールを前方付勢するコイルスプリングの押圧荷重を調整することで、中間ボールが回転することに対して、中間ボールとコイルスプリングとの接触による摩擦抵抗を超える力が得られ、筆記時の筆記ボールの回転に対して中間ボールが回転しやすく、軽い筆記感が得られる。中間ボールの直径が筆記ボールの直径の80%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましい。中間ボールの直径の上限は特に限定されないが、筆記ボールの直径に対して、あまりに大きな中間ボールを使用すると、中間ボールを配置する内方突出部の後方の後孔とボールホルダーの肉厚が薄くなり、筆記圧や落下に対するチップ強度が低下する恐れがある。また、ボールホルダーの肉厚を確保するために、ボールホルダーの外径寸法を大きくすると、筆記ボールの直径に対して大きなボールペンチップとなり、文字書きの際のペン先視認性が悪化する不具合が生じる恐れがあるため、中間ボールの直径は、筆記ボールの直径に対して125%以下とすることが好ましい。
【0018】
中間ボールを内方突出部の後方の後孔内に配置し、中間ボールの中心部が内方突出部の後方の後孔内に位置することで、筆記ボールよりも大きい直径の中間ボールを使用して、筆記ボールと筆記ボール抱持部との隙間と、中間ボールと後孔との隙間を独立して設定できるので、インキの粘度に合わせて中間ボールと後孔との隙間から筆記ボール抱持部へインキを供給する量を調整することができる。
更には、中間ボールは、筆圧を受けると筆記ボールに押されて後退し、中間ボールと内方突出部とがさらに離隔し、両者は非接触状態となるので、中間ボールが大きいことによる中間ボールに大きな回転トルクが得られることが阻害されず、容易に中間ボールが回転することができ、筆記ボールと中間ボールとの接触による摩擦は摩擦係数が小さい転がり摩擦となり、筆記に伴う筆記ボールの回転により受ける回転力がより小さい段階でも筆記感触が軽いものとなる。
【0019】
筆記時、筆記ボールが座面となる内方突出部に着座した状態において、中間ボールが、筆記ボールに当接し、且つ、後孔内壁に接触する位置における前記中間ボールの中心と筆記ボールの中心とを結んだ線とボールホルダーの軸線とがなす角が1度以上、10度以下とすることで、中間ボールと後孔壁面との接触面積を小さくし、後孔内での中間ボールの振動を抑え、滑らかな筆記感が得られる。
なす角を1度以上とすることで、中間ボールが後孔壁面に周状に接触することを防ぎ、中間ボールと後孔壁面との接触面積を小さくすることで中間ボールの回転を阻害しない。また、なす角を10度以下とすることで、中間ボールの後孔内での径方向の可動範囲を小さくし、筆記した際に、中間ボールに転がり摩擦と同時に働くすべり摩擦によって、中間ボールが筆記ボールの回転方向にすべり、バネの押圧力によって中間ボールが後孔壁面へ押し付けられることを繰り返すことで発生する振動を抑え、滑らかな筆記感が得られる。
一方、なす角が10度を超えると、中間ボールの後孔内での径方向の可動範囲が必要以上に大きくなり、筆記した際のすべり摩擦による、中間ボールの振動が大きく、滑らかな筆記感が得られにくくなる。
【0020】
中間ボールが、筆記ボールに当接し、且つ、後孔内壁に接触する位置は、後孔の軸線と平行な内壁部の場合と、中孔に連接された内方突出部の後側すり鉢テーパ状壁面部分とがあり得る。
内方突出部の後側すり鉢テーパ状壁面のテーパ角度や形状によって、その位置を調整することができる。
【0021】
筆記ボールおよび中間ボールの表面の算術平均高さ(Sa)は、紙面と筆記ボールとの筆記感や、筆記ボールと中間ボールとの接触、筆記ボールとボールホルダーとの接触、中間ボールとコイルスプリング前端部との接触による摩擦係数の増加や耐摩耗性を考慮すると、2(nm)以上20(nm)以下が好ましい。ボールの表面の算術平均高さが2(nm)未満だと、ボール表面の凹凸がほとんどなく潤滑剤として働くインキが十分載らないため接触による摩擦抵抗が大きく、ボールの表面の算術平均高さが20(nm)を超えると、ボール表面の凹凸が大きすぎるため接触による摩擦抵抗が大きい。尚、算術平均高さ(Sa)は、国際規格ISO 25178に準拠したものであり、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を面に拡張したパラメーターに相当し、任意の範囲の表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表すパラメーターである。
【0022】
筆記ボールおよび中間ボールの材質としては、炭化タングステンを主成分とした超硬合金や、ステンレス、アルミ、スチール等の金属や、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化クロム、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスや、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂といった樹脂材料や、ガラスなどが使用できるが、筆記ボールに関しては、インキに対する濡れ性や耐食性、中間ボールとの摺動性や耐磨耗性を考慮すると超硬合金やセラミックスが好ましい。中間ボールに関しては、筆記ボールと同一の材質、もしくは異なる材質の何れを用いても構わないが、炭化タングステンを主成分とした超硬合金同士など、高硬度材質の組み合わせを用いる方が好ましい。また、凝着摩耗を抑制するという観点から、筆記ボールと同一の材質ではなく、筆記ボールの炭化タングステンを主成分とした超硬合金に対して中間ボールを炭化ケイ素や炭化クロムなど、相互溶解性が低い材質の組み合わせを用いる方がより好ましい。
【0023】
中間ボールを前方付勢するコイルスプリングの押圧荷重は、小さ過ぎると筆記ボールとボールホルダーの先端開口部との押圧による密閉性が不安定になり、インキの滲み出しや洩れに繋がる虞があり、強過ぎると筆記ボールと中間ボールの当接荷重が大きくなり、中間ボールの摩耗を促進したり、筆記する際の筆記感が重くなってしまうことから、5(gf)以上30(gf)以下とすることが好ましい。
【0024】
コイルスプリングの前端部の巻回と中間ボールとを当接させ、その当接部の内径が、中間ボールの直径の70%以上95%以下とすることで、中間ボールがコイルスプリングの内周部に埋没することを極力抑制することができ、中間ボールの安定した回転を阻害しないものとすることができる。尚、コイルスプリングの前端部と中間ボールとの当接部の内径は、コイルスプリングの巻回の内径や線材の径(太さ)を適宜選択することで調整が可能である。
【0025】
コイルスプリングの形状は、全長に渡り同じ外径の直管状の形状であることが製造コストの面から望ましいが、中間ボールの大きさに合わせて端部の巻き径を縮径させ小径とした形状にしても良く、小径の巻回部分と大径の巻回部分とが連なった段付きの形状としたり、あるいは端部に向かって次第に外径を小さくした傾斜状の外形のものとしても良い。更に、コイルスプリングの前端と後端の形状を同形状とすることで、コイルスプリングをボールホルダー内に挿入する際に挿入方向を決める必要がない為、製造工程の簡略化が可能であり、製造コスト等の面から有効である。
コイルスプリングの端部を隣り合った巻き部が密接した密着コイル部とすることで、単独の巻回がずれ難く円筒形のような挙動となるため、コイルスプリングと中間ボールとのの座りの安定度が増し、中間ボールに掛かる押圧力が分散されずに安定させることができる。その密接した巻き数は2巻き以上が好ましく、コイルスプリングの両端を平面状に研削するとより好ましい。
コイルスプリングの材質としては、SUS304などのステンレス鋼線の他、硬鋼線やピアノ線材、ポリカーボネートやポリエーテルエーテルケトン等の樹脂も使用でき、腐食やインキへの溶出を防止するために、表面にニッケルメッキなどの表面被覆処理を施したものも使用できる。中間ボールの回転への潤滑性の観点から、表面にニッケルメッキを施したコイルスプリングが好ましい。
【0026】
コイルスプリングは、ボールホルダーの後孔に内接円径がコイルスプリングの外径より小さい部分を作ることで固定することができ、例えば、後孔の内壁面の同周上に等間隔に凸部を形成することによってボールホルダーの内部から抜け止めすることができる。この凸部は、ブローチ加工によってボールホルダーの後孔の内壁面を抉った切削片や、ボールホルダーの側壁部をポンチ加工等によって凹ませて内壁面に凸部を生じさせる方法でも形成できる。または、ボールペンチップの後端に接続した別部材を使用するなど、コイルスプリングの抜け止め方法や形状は適宜選択できる。
【0027】
本発明のボールペンチップは、インキを収容したインキタンクに直接、または中継部材を介して接続することで筆記具としての形態が整えられ、これをボールペンリフィルとして外装体内に設置されるものとすることもできる。外装体に設置されるものとしたとき、外装体の先端より突出したボールペンチップ部分を被覆するキャップを備えるものとしたり、ノック操作により、外装体の前端からボールペンリフィルを出没させる、所謂、ノック式ボールペンとしても良く、外装体内に複数リフィルを収容し、スライド操作により、外装体の前端からボールペンリフィルを出没させる、所謂、多色ボールペンとしても良い。
【0028】
筆跡を形成するものとして使用するインキは、水を主媒体とした水性インキ、アルコールなどの有機溶剤を主媒体とした油性インキ、剪断減粘性を有する水性または油性ゲルインキのいずれも使用可能であり、これに着色成分である顔料および/または染料、凍結防止などのための高沸点有機溶剤、被筆記面への定着性を付与する樹脂成分、表面張力や粘弾性、潤滑性などを調整する界面活性剤や多糖類、防錆・防黴剤などが配合されている。また、酸化チタンなどの白色隠蔽成分を配合した修正液組成物でもよい。
【実施例
【0029】
以下、図面に基づいて一例を説明する。
図1は、本発明のボールペンチップの一例を示す縦断面図であり、図2は、図1のI部拡大図である。
【0030】
ボールペンチップ1は、ボールホルダー2と、筆記部材としての筆記ボール3と、中間ボール4と、コイルスプリング5とを備えている。
【0031】
ボールホルダー2には、インキ流通孔として先端側より先端開口部6、筆記ボール抱持部7、中孔8、後孔9からなる貫通孔が形成され、筆記ボール3を先端開口部6より一部突出した状態でボールホルダー2内にて回転自在に抱持している。先端開口部6は、先端側より先端を小径にカシメ加工されている。この先端開口部6の内縁は、カシメ加工を行う際に筆記ボール3に押し当てる事で筆記ボール3の曲面を転写しつつ鏡面化し、被筆記時には前方付勢された筆記ボール3が周状に密接することでインキの漏れ出しや空気の流入を防止している。
【0032】
筆記ボール抱持部7と後孔9との間には内方突出部10が形成され、筆記ボール3の後方移動を規制している。内方突出部10には切削により、等間隔に複数本配置した放射状溝11が形成されている。この放射状溝11は、筆記ボール抱持部7へのインキ供給を確実なものとする為に後孔9へ貫通させているが、インキの逆流を防止するなどの目的で後孔9に貫通させずに中孔8の途中で留めてもよい。また、図3に示すように、放射状溝11を後孔9へ貫通させた際に、放射状溝11と後孔9との境界部分にバリや切片が残る場合には、後孔9をドリルで追加工(追加工部9b)して除去することができる。
内方突出部10には、凹状のボール受け座部12が形成されており、筆記時における筆記ボール3の位置を安定させ、不要な振動等の少ない円滑な回転に寄与する。ボール受け座部12に筆記ボール3を押し付けることにより形成すると、筆記ボール3とボール受け座部12とが略面状に接触するような形状となり、筆記ボール3の不要な振動等の少ない円滑な回転に寄与するものである。前述の放射状溝11は、このボール受け座部12より外側に開口部を有するものとし、筆記ボール抱持部7へのインキ供給を確保しているものである。尚、本実施例では、放射状溝11は周状に等間隔に5箇所形成しているが、その大きさや数は特に限定されるものではない。
【0033】
内方突出部10の後側である後孔9に中間ボール4が、筆記ボール3と当接するようにして回転可能に配置されている。尚、筆記時、筆記ボール3が座面となる内方突出部10に着座した状態において、中間ボール4が、筆記ボール3に当接し、且つ、後孔9内壁に接触する位置は、後孔9の深さや直径、内方突出部10の後側すり鉢テーパ状壁面10aのテーパ角度を調整することによって、図2に示すように後孔9の軸線と平行な内壁部9aに中間ボール4が接触するように設計したり、図4に示すように中孔に連接された内方突出部の後側すり鉢テーパ状壁面10aに中間ボール4が接触するように設計することが可能である。
更に、中間ボール4の後方には、コイルスプリング5が中間ボール4との当接部13にて接触して配置されている。コイルスプリング5は、ボールホルダー2の後方から挿入され、全長を圧縮するように押し込まれて抜け止めされており、その圧縮されたことによる復元力によって中間ボール4を前方に付勢し、この中間ボール4を介して筆記ボール3を前方に付勢している。コイルスプリング5の後端部は、ブローチ加工によって形成されたボールホルダー2の後孔9の内壁面の同周上に等間隔に4箇所設けられた凸部14によってボールホルダー2の内部から抜け止めされている。
【0034】
ボールホルダー2の材質は、ビッカース硬度(HV)が240のステンレス(下村特殊精工(株)製、商品名:SF20T)を使用し、インキに対する濡れ性や耐食性、中間ボールとの摺動性や耐磨耗性を考慮すると共に、製造コストなど鑑みて、筆記ボール3の材質は、タングステンカーバイドを主成分として結合相にコバルトや、クロム等を使用した超硬合金((株)ツバキナカシマ製、商品名:PB11、表面の算術平均高さSa(ISO 25178):3(nm))を使用した。更に、中間ボール4の材質は、タングステンカーバイドを主成分として結合相にコバルトや、クロム等を使用した超硬合金((株)Heraeus製、商品名:H3)を使用した。
尚、筆記ボール3と中間ボール4の表面の算術平均高さ(Sa)は、走査型プローブ顕微鏡(AFM5100N;(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて、任意の20(μm)×20(μm)の範囲を3か所測定し、平均値から算出した。
【0035】
コイルスプリング5の材質は、ニッケルメッキを施したSUS304のステンレス鋼線を使用し、大径の大径コイル部5aと前後端に小径の小径コイル部5bを形成しており、小径コイル部5bの端部を密着コイル部5cとしてある。また、コイルスプリング5の前後端は、共に小径コイル部5bと密着コイル部5cを形成している。
【0036】
コイルスプリング5は、押圧荷重が20(gf)になるように凸部12の位置を変更しコイルスプリング5の撓み量によって調整した。尚、押圧荷重は、ボールペンチップ1を作製した後に、デジタルフォースゲージ(ZTA-5N;(株)イマダ製)を用いて、ボールペンチップ1の筆記ボール3が前方に押圧されボールホルダー2の先端開口部6に周接した状態から、筆記ボール3を軸心方向に0.025(mm)後方に移動させた状態の時の荷重を測定した。
【0037】
各部の寸法を変化させて実施例1~22、比較例1~16のボールペンチップを作製した。各部の寸法は表1、表2に示す。
尚、コイルスプリング5と中間ボール4との当接部13の内径Dは、図5に示すように、中間ボール4の直径をMとし、コイルスプリング5の鋼線の直径をS、コイルスプリング5の密着コイル部5cの端部の内径をIとした場合、以下の式(1)より算出できる。
D=M(S+I)/(M+S) ・・・(1)
また、筆記ボール3が座面となる内方突出部10に着座した状態において、中間ボール4が、筆記ボール3に当接し、且つ、後孔9の内壁に接触する位置における前記中間ボール4の中心4aと筆記ボール3の中心3aとを結んだ線とボールホルダー2の軸線とがなす角θは、筆記ボール3の直径Wと、中間ボール4の直径Mおよび後孔9の寸法形状の項目を入力したものを作図し、中間ボール4が後孔9の軸線と平行な内壁部9a、もしくは中孔8に連接された内方突出部10の後側すり鉢テーパ状壁面10aと接触する角度を計測した。
【0038】
上記で作製した実施例1~実施例22、および比較例1~比較例16のボールペンチップ1を市販されているゲルインキボールペン(ぺんてる(株)製、製品符号BL17-A)のボールペンチップとして取り付け、インキタンク内には下記に示す試験用インキを充填し、ペン先の方向に遠心力が働くようにペン先を外側に向けて配置して、遠心分離機(国産遠心器(株)製、卓上遠心機H-103N)で遠心処理を施し、リフィル内の不要な空気を除去し、試験用ボールペンサンプルを作製し、下記の試験を行った。結果は、表1に記載した。
【0039】
(試験用インキ)
ウォーターブラック#256L(黒色染料の14%水溶液、オリエント化学工業(株)
製) 35.0重量部
ウォーターイエロー#1(C.I.アシッドイエロー23、オリエント化学工業(株)
製) 1.2重量部
エチレングリコール 6.0重量部
グリセリン 8.0重量部
チオジグリコール 8.0重量部
サルコシネートOHV(N-オレオイルサルコシン、日光ケミカルズ(株)製)
3.0重量部
ベンゾトリアゾール 0.5重量部
プロクセルGXL(1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンの20%ジプロピレングリコール溶液、アビシア(株)製) 0.2重量部
ハイドロキノンスルホン酸カリウム 0.3重量部
BC-5.5(ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB11.5、日光ケミカルズ(株)
製) 1.0重量部
AKP-20(微粒子アルミナ、平均粒子径0.5μm、住友化学工業(株)製)
0.1重量部
水酸化ナトリウム 0.3重量部
ケルザンAR(キサンタンガム、三晶(株)製) 0.4重量部
イオン交換水 36.0重量部
上記成分のうち、ケルザンARの全量を水5重量部に攪拌しながら加え1時間攪拌してケルザンAR水溶液を得た。次いで残りの成分を混合し1時間攪拌して均一に溶解した後ケルザンAR水溶液を加えて、更に2時間攪拌して黒色の試験用インキを得た。
試験用インキの粘度は、ELD型粘度計((株)トキメック製)にて、ST型ローターを用いて、温度25(℃)、剪断速度100(s-1)の条件にて測定し、200(mPa・s)であった。
試験用インキのpH値は、コンパクトpHメーターB-212((株)堀場製作所製)を用いて測定し、8.7であった。
【0040】
(試験1:初期低速度筆記抵抗値試験)
静・動摩擦測定機(Tribo-masterType TL201Sa;(株)トリニティーラボ製)を用い、試験用ボールペンリフィルの先端をJIS S 6039に規定される被筆記用紙に当て、ボールペンチップを被筆記用紙に押しつける力を100(gf)、被筆記用紙との筆記角度を70°とし、被筆記用紙の移動速度を0.5(cm/sec)の条件で、1.25(cm)移動させることによって筆記し、その際に被筆記用紙の移動によってボールペンリフィル本体が筆記の移動方向に掛かる荷重の大きさをロードセルにて感知し、それを筆記抵抗値として測定した。筆記抵抗値の測定は2.5秒間行い、その間に500個の測定データを得て、その内、書き始めを想定した筆記速度が0である測定開始直後から1.0秒までの間で得られた最初の200個のデータから被筆記用紙の移動方向の筆記抵抗値の平均値を算出した。
尚、試験用ボールペンサンプルは各水準で5本ずつ準備し、算出結果は5本の平均値を記載した。
【0041】
(試験2:長距離筆記後低速度筆記抵抗値試験)
試験1で使用したボールペンサンプルを、筆記試験機により、筆記角度70°、筆記荷重100(gf)(0.98(N))、筆記速度7(cm/sec)の条件で500(m)のらせん筆記した後に、試験1と同様の方法で筆記抵抗値を測定し、初期との差を算出した。
【0042】
【表1】
【表2】
【0043】
実施例1~実施例22のボールペンチップによる筆記では、中間ボール4の直径が筆記ボール3の直径に対して70%以上と大きく、筆記ボール3の回転により受ける回転力が小さい書き始めの段階でも比較例と比べて初期の筆記抵抗値が低い結果が得られた。これは筆記ボール3の回転により発生する筆記ボール3と中間ボール4との間に働く摩擦によって中間ボール4に大きな回転トルクが得られると共に、中間ボール4の表面の算術平均高さ(Sa)が2(nm)以上20(nm)以下とすることで、コイルスプリング5と中間ボール4との当接部13の摩擦が小さく、中間ボール4の回転が阻害されないため、中間ボール4の回転が容易となっているためと推察される。
また、実施例1~実施例22のボールペンチップによる筆記では、比較例と比べて初期と長距離筆記後の筆記抵抗値の差も小さい結果が得られ、長期にわたって滑らかな筆記感が得られるという格別な効果を示した。特に、実施例8~実施例16、実施例18、実施例19、実施例21、実施例22は初期の筆記抵抗値および初期と長距離筆記後の筆記抵抗値の差がより優れている結果が得られた。これは、コイルスプリング5の前端部と中間ボール4との当接部13の内径が中間ボール4の直径の70%以上95%以下とすることで、中間ボール4がコイルスプリング5の内周部からズレることや中間ボール4がコイルスプリング5の内周部に埋没することを防止し、中間ボール4の回転を阻害する状態が極力抑制されたものと推察される。また、筆記時、筆記ボール3が座面となる内方突出部10に着座した状態において、中間ボール4が、筆記ボール3に当接し、且つ、後孔9の内壁に接触する位置における前記中間ボール4の中心4aと筆記ボール3の中心3aとを結んだ線とボールホルダー2の軸線とがなす角θが1度以上とすることで、中間ボール4の曲率と後孔9の曲率の差を大きくして中間ボール4と後孔9の壁面との接触面積を小さくして中間ボール4の回転を阻害せず、更には、なす角θが10度以下とすることで中間ボール4の後孔9内での径方向の可動範囲を制限して中間ボール4の振動を抑えられたものと推察される。
【0044】
比較例1、比較例13は、中間ボール4の表面の算術平均高さ(Sa)は2(nm)以上20(nm)以下の範囲内であるものの、中間ボール4の直径が筆記ボール3の直径に対して70%未満と小さいものであり、実施例と比べて初期の筆記抵抗値が高くなった。また、長距離筆記後の筆記抵抗値が上昇したものは、中間ボール4が容易に回転できないことで筆記ボール3と中間ボール4の間にはすべり摩擦が起こりやすくなり中間ボール4の摩耗が進行した結果であると推察される。
【0045】
比較例2、比較例14は、中間ボール4の直径は筆記ボール3の直径に対して70%以上と大きいが、中間ボール4の表面の算術平均高さ(Sa)が20(nm)よりも大きいものであり、実施例と比べて初期の筆記抵抗値が高く、初期と長距離筆記後の筆記抵抗値の差が大きくなる結果となった。これは、中間ボール4が回転しにくくなっているため、筆記ボール3と中間ボール4の間にはすべり摩擦が起こりやすくなり中間ボール4の摩耗が進行して、長距離筆記後の筆記抵抗値が上昇したものと推察される。
【0046】
比較例3~比較例12、比較例15、比較例16は、中間ボール4の直径が筆記ボール3の直径に対して70%未満と小さく、また、中間ボール4の表面の算術平均高さ(Sa)が20(nm)よりも大きいものであり、初期の筆記抵抗値が高く、初期と長距離筆記後の筆記抵抗値の差が大きくなる結果となった。これは、中間ボール4が回転しにくく、また、コイルスプリング5と中間ボール4との摩擦抵抗が中間ボール4の回転を阻害するためと推察される。
【0047】
比較例6、比較例10、比較例15は、コイルスプリング5の前端部と中間ボール4との当接部13の内径が中間ボール4の直径の70%未満のため、初期の筆記抵抗値が大きく、初期と長距離筆記後の筆記抵抗値の差が大きくなる結果となった。これは、当接部13からズレることで、中間ボール4の回転を阻害する状態となり、中間ボール4が回転しにくく、筆記時の筆記ボール3の回転に対して中間ボール4がスリップしてすべり摩擦が生じたものと推察される。
【0048】
比較例7、比較例11、比較例12、比較例16は、コイルスプリング5の前端部と中間ボール4との当接部13の内径が中間ボール4の直径の95%より大きいため、初期の筆記抵抗値が大きく、初期と長距離筆記後の筆記抵抗値の差が大きくなる結果となった。これは、中間ボール4が回転しにくく、また、中間ボール4の摩耗が進行したためと推察される。
【0049】
比較例8、比較例10、比較例12、比較例14は、筆記時、筆記ボール3が座面となる内方突出部10に着座した状態において、中間ボール4が、筆記ボール3に当接し、且つ、後孔9の内壁に接触する位置における前記中間ボール4の中心4aと筆記ボール3の中心3aとを結んだ線とボールホルダー2の軸線とがなす角θが1度未満のため、初期の筆記抵抗値が大きくなり、初期と長距離筆記後の筆記抵抗値の差が大きくなる結果となった。これは、中間ボール4の曲率と後孔9の曲率の差が小さく、中間ボール4と後孔9の壁面が周状に接触して接触面積が大きくなることで中間ボール4の回転を阻害する状態となり、中間ボール4が回転しにくく、筆記時の筆記ボール3の回転に対して中間ボール4がスリップしてすべり摩擦が生じたものと推察される。
【0050】
比較例9、比較例11、比較例15は、筆記時、筆記ボール3が座面となる内方突出部10に着座した状態において、中間ボール4が、筆記ボール3に当接し、且つ、後孔9の内壁に接触する位置における前記中間ボール4の中心4aと筆記ボール3の中心3aとを結んだ線とボールホルダー2の軸線とがなす角θが10度より大きいため、初期の筆記抵抗値が大きくなり、初期と長距離筆記後の筆記抵抗値の差が大きくなる結果となった。これは、中間ボール4の後孔9内での径方向の可動範囲が必要以上に大きくなり、筆記した際のすべり摩擦による、中間ボール4の振動が大きくなるためと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本実施例のボールペンチップは、文字や図画を書く筆記用途の他に、ペン先を上向きに使用するアイシャドウやアイライナーなどの化粧料用塗布具として用いる事も可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 ボールペンチップ
2 ボールホルダー
3 筆記ボール
3a 筆記ボールの中心
4 中間ボール
4a 中間ボールの中心
5 コイルスプリング
5a 大径コイル部
5b 小径コイル部
5c 密着コイル部
6 先端開口部
7 筆記ボール抱持部
8 中孔
9 後孔
9a 後孔の軸線と平行な内壁部
9b 追加工部
10 内方突出部
10a 中孔に連接された内方突出部の後側すり鉢テーパ状壁面
11 放射状溝
12 ボール受け座部
13 当接部
14 凸部
D コイルスプリングと中間ボールとの当接部の内径
I コイルスプリングの密着コイル部の端部の内径
M 中間ボールの直径
S コイルスプリングの鋼線の直径
W 筆記ボールの直径
θ 中間ボールの中心と筆記ボールの中心とを結んだ線とボールホルダーの軸線とがなす角
図1
図2
図3
図4
図5