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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-19
(45)【発行日】2026-01-27
(54)【発明の名称】被覆切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20260120BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20260120BHJP
   B23B 27/20 20060101ALN20260120BHJP
【FI】
B23B27/14 A
C23C14/06 L
B23B27/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2025110494
(22)【出願日】2025-06-30
【審査請求日】2025-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】川勾 秀汰朗
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-100320(JP,A)
【文献】特開2006-181654(JP,A)
【文献】特開2015-193071(JP,A)
【文献】特開2017-080883(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23B 27/20
B23B 51/00
B23C 5/16 - 5/24
B23P 15/28
C23C 14/00 - 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の上に形成された被覆層とを含む被覆切削工具であって、
前記被覆層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Y、Al、Si及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N及びOからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる立方晶の結晶構造を有する化合物を含む化合物層を有し、
前記化合物層の平均厚さが、0.5μm以上5.0μm以下であり、
前記化合物層の前記立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、0°以上90°以下の範囲における最大強度をIaとしたとき、前記Iaを示す角度αが5°以上25°以下であり、
前記化合物層の前記立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、40°以上90°以下の範囲における最大強度をIbとしたとき、前記Ibを示す角度αが40°以上60°未満であり、
前記化合物層の前記Iaに対する前記Ibの比(Ib/Ia)が、0.5以上1.0未満であり、
前記化合物層が、下記式(1)で表される組成を有し、
(Al Ti 1-a-b )X ・・・(1)
前記Mが、Cr、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Y、Si及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、
前記Xが、C、N及びOからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、
前記aの値が、0.73以上0.90以下であり、
前記bの値が、0.08以上0.27以下である、被覆切削工具。
【請求項2】
前記化合物層の前記Ibを示す前記角度αと前記Iaを示す前記角度αとの差(α-α)が、20°以上40°以下である、請求項1に記載の被覆切削工具。
【請求項3】
前記1-a-bの値が、0.00以上0.12以下である、請求項1又は2に記載の被覆切削工具。
【請求項4】
前記被覆層の全体の平均厚さが、0.5μm以上5.0μm以下である、請求項1又は2に記載の被覆切削工具。
【請求項5】
前記基材が、超硬合金、サーメット、セラミックス又は立方晶窒化硼素焼結体である、請求項1又は2に記載の被覆切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、切削加工の高能率化に対する需要の高まりに伴い、従来よりも工具寿命の長い切削工具が求められている。このため、工具材料の要求特性として、切削工具の寿命に関係する耐摩耗性の向上及び耐欠損性の向上が一段と重要になっている。そこで、これらの特性を向上させるため、超硬合金、サーメット、又は立方晶窒化硼素(cBN)等からなる基材と、その表面を被覆する被覆層とを含む被覆切削工具が広く用いられている。
【0003】
被覆切削工具の例として、特許文献1には、基体と、該基体の上に位置する被覆層とを備える被覆工具が記載されている。特許文献1には、具体的には、被覆工具の該被覆層は、周期表4、5、6族元素、Al、Si、B、Y及びMnのうちの少なくとも1種の元素と、C、N及びOのうちの少なくとも1種の元素とを含む立方晶の結晶を含有することが記載されている。更に特許文献1には、被覆工具の前記被覆層は、前記立方晶の結晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、15°~30°の間に位置する第1ピークと、60°~75°の間に位置する第2ピークと、前記第1ピークと前記第2ピークとの間に、前記第1ピーク及び前記第2ピークのX線強度よりもX線強度が低い谷部を有し、前記第1ピークのピーク強度は、前記第2ピークのピーク強度の0.7倍以上であることが記載されている。
【0004】
被覆切削工具の例として、特許文献2には、基体と、該基体の表面に位置する被覆層とを備える被覆工具が記載されている。特許文献2には、具体的には、前記被覆層は、周期律4a、5a、6a族元素、Al、Si、B、Y及びMnの中から選ばれた少なくとも1種の元素と、C、Nの中から選択される少なくとも1種の元素とからなる立方晶の結晶を含有することが記載されている。更に特許文献2には、被覆工具の前記被覆層の(111)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布における0°以上90°以下の測定範囲において、α軸の角度が30°以上90°以下の範囲におけるX線強度の最大値と最小値との差が、前記最大値の10%以下であることが記載されている。また、特許文献2には、別な例として、被覆工具の前記被覆層の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布における0°以上90°以下の測定範囲において、α軸の角度が0°以上50°以下の範囲にX線強度の極大値及び極小値を有し、かつ、前記極大値と前記極小値との差が、前記極大値の10%以下であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/146711号
【文献】国際公開第2023/162682号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、加工能率を上げるために、従来よりも切削条件が厳しくなる傾向にある。また、被削材の高強度化により、従来よりも工具の耐欠損性及び耐摩耗性を向上させることが求められている。
【0007】
鋳鉄を被削材として、工具を用いて加工する場合がある。鋳鉄においても高強度化の傾向にある。高強度化した鋳鉄のような被削材の加工においては、切れ刃にかかる熱的負荷及び機械的負荷も高くなるため、チッピングが生じやすい。また、チッピングを起点とした欠けが発生する場合もある。したがって、高強度化した鋳鉄のような被削材の加工においては、工具寿命を長くすることが困難である。
【0008】
特許文献1には、被覆切削工具が立方晶の結晶の所定の被覆層を有することにより、高い硬度と優れた耐摩耗性を有することが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の被覆切削工具は、被覆層の密着性が十分ではないため、耐欠損性に改善の余地がある。
【0009】
特許文献2には、被覆工具の被覆層が所定の立方晶の結晶を含有することにより、結晶方位が揃った均質な組織を有することが記載されている。そのため、特許文献2には、被覆工具が例えばチッピング等の異常摩耗を抑制することができることが記載されている。しかしながら、特許文献2の被覆工具は、高温強度が十分ではないためチッピングが生じやすく、耐欠損性に改善の余地があり、また、硬さが十分ではないため、耐摩耗性に改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものである。本発明は、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有し、工具寿命の長い被覆切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0012】
(構成1)
構成1は、基材と、前記基材の上に形成された被覆層とを含む被覆切削工具であって、
前記被覆層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Y、Al、Si及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N及びOからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる立方晶の結晶構造を有する化合物を含む化合物層を有し、
前記化合物層の平均厚さが、0.5μm以上5.0μm以下であり、
前記化合物層の前記立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、0°以上90°以下の範囲における最大強度をIaとしたとき、前記Iaを示す角度αが5°以上25°以下であり、
前記化合物層の前記立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、40°以上90°以下の範囲における最大強度をIbとしたとき、前記Ibを示す角度αが40°以上60°未満であり、
前記化合物層の前記Iaに対する前記Ibの比(Ib/Ia)が、0.5以上1.0未満である、被覆切削工具である。
【0013】
(構成2)
構成2は、前記化合物層の前記Ibを示す前記角度αと前記Iaを示す前記角度αとの差(α-α)が、20°以上40°以下である、構成1の被覆切削工具である。
【0014】
(構成3)
構成3は、前記化合物層が、下記式(1)で表される組成を有し、
(AlTi1-a-b)X ・・・(1)
前記Mが、Cr、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Y、Si及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、
前記Xが、C、N及びOからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、
前記aの値が、0.60以上0.90以下であり、
前記bの値が、0.08以上0.40以下であり、
前記1-a-bの値が、0.00以上0.20以下である、構成1又は2の被覆切削工具である。
【0015】
(構成4)
構成4は、前記被覆層の全体の平均厚さが、0.5μm以上5.0μm以下である、構成1~3のいずれかの被覆切削工具である。
【0016】
(構成5)
構成5は、前記基材が、超硬合金、サーメット、セラミックス又は立方晶窒化硼素焼結体である、構成1~4のいずれかの被覆切削工具である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有し、工具寿命の長い被覆切削工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】発明品1の化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布を示す図である。
図2】比較品3の化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布を示す図である。
図3】Schulzの反射法の光学系を示す模式図である。
図4】α角とβ角の位置を示した正極点図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0020】
<被覆切削工具>
本実施形態の被覆切削工具は、基材と、基材の上に形成された被覆層とを含む。被覆切削工具の種類として、具体的には、フライス加工用又は旋削加工用刃先交換型切削インサート、ドリル及びエンドミルなどを挙げることができる。
【0021】
<基材>
本実施形態の被覆切削工具の基材としては、例えば、超硬合金、サーメット、セラミックス、立方晶窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体及び高速度鋼などを挙げることができる。本実施形態の被覆切削工具の基材は、超硬合金、サーメット、セラミックス又は立方晶窒化硼素焼結体であることが好ましい。その中でも、基材が超硬合金又はサーメットであると、耐欠損性及び耐摩耗性に優れるので、より好ましい。
【0022】
なお、上述の基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。例えば、基材が超硬合金の場合には、その表面に脱β層が形成されていることができる。また、基材がサーメットの場合には、表面硬化層が形成されていることができる。被覆切削工具の基材の表面が改質されていても、本実施形態の効果を奏することができる。
【0023】
<被覆層>
本実施形態の被覆切削工具の被覆層は、所定の化合物層を有する。本明細書で、所定の化合物層とは、後述する所定の元素からなる立方晶の結晶構造を有する化合物を含み、化合物層の平均厚さが所定の範囲であり、化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布が、後述する所定の分布(例えば、所定の最大強度が、後述する所定の角度の範囲になる分布)となるような化合物層のことをいう。本明細書では、本実施形態の被覆切削工具の被覆層のことを、「本実施形態の被覆層」という場合がある。本実施形態の被覆層は、所定の化合物層以外の層を有することができる。本実施形態の被覆層は、所定の化合物層のみからなることが好ましい。
【0024】
本実施形態の被覆切削工具が、所定の化合物層を有する被覆層を含むことにより、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有し、工具寿命の長い被覆切削工具を得ることができる。
【0025】
本実施形態の被覆層に含まれる化合物層は、単層の化合物層であることができる。本実施形態の被覆層に含まれる化合物層は、組成の異なった複数種類の化合物層が積層した構造の化合物層であることができる。化合物層が複数種類の化合物層である場合、本明細書では、基材に近い化合物層から、第1層の化合物層、第2層の化合物層などのように、いうことがある。本明細書では、「第1層の化合物層」等のことを、単に「第1層」等ということがある。複数種類の化合物層が積層した構造の場合、化合物層の種類は、1種以上5種以下であることが好ましく、1種以上3種以下であることがより好ましい。化合物層の数が多くなることにより、工具寿命をより長くすることができる傾向にある。一方、化合物層の種類が多すぎる場合には、被覆切削工具の製造コストが高くなる可能性がある。化合物層が、組成の異なった複数種類の化合物層が積層した構造の化合物層である場合、各層の平均厚さとして、例えば、0.1μm以上5.0μm以下であってもよく、0.2μm以上3.0μm以下であってもよい。
【0026】
本実施形態の被覆層に含まれる化合物層は、組成の異なった複数種類の化合物層が交互に積層した構造の化合物層であることができる。化合物層が複数種類の化合物層が交互に積層した構造の化合物層である場合、本明細書では、基材に近い化合物層から、第1層の化合物層、第2層の化合物層などのように、いうことがある。本明細書では、「第1層の化合物層」等のことを、単に「第1層」等ということがある。例えば、化合物層が、第1層及び第2層が交互に積層した構造の化合物層である場合、第1層及び第2層を1ペアの化合物層として、化合物層は、1ペアの化合物層が複数ペア積層した構造であることができる。1ペアの化合物層に含まれる化合物層が3層以上の構造の場合も同様である。化合物層が3層以上の構造の場合、「1ペアの化合物層」の代わりに「1セットの化合物層」ということができる。ただし、本明細書では、化合物層が3層以上の構造の場合も、2層の構造と同様に、「ペア」との用語を用いる場合がある。化合物層の1ペアに含まれる化合物層の種類は、2種以上5種以下であることが好ましく、2種以上3種以下であることが好ましい。化合物層の1ペアに含まれる化合物層の数が多くなることにより、工具寿命をより長くすることができる傾向にある。一方、化合物層の種類が多すぎる場合には、被覆切削工具の製造コストが高くなる可能性がある。
【0027】
化合物層は、組成の異なった複数種類の化合物層(1ペアの化合物層)が交互に積層した構造であることが好ましい。化合物層がこのような構造であることにより、切削加工中に発生した亀裂が基材に向かって進展するのを抑制することができるので、被覆層は、耐欠損性が一層向上する傾向にある。化合物層が、組成の異なった複数種類の化合物層が交互に積層した構造である場合、1層当たりの平均厚さは2nm以上1500nm以下であることが好ましく、3nm以上750nm以下であることがより好ましく、4nm以上400nm以下であることが更に好ましい。1層当たりの平均厚さが大きくなると、均一な厚さの層を形成することが容易となる傾向にある。一方、1層当たりの平均厚さが小さくなると、各層同士の密着性に優れることにより、被覆層の剥離が抑制されるため、被覆層は、耐欠損性に優れる傾向にある。化合物層のペア数は、2ペア以上1000ペア以下であることが好ましく、2ペア以上50ペア以下であることがより好ましく、2ペア以上20ペア以下であることが更に好ましい。
【0028】
本実施形態の被覆切削工具の被覆層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Y、Al、Si及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N及びOからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる立方晶の結晶構造を有する化合物を含む化合物層を有する。被覆層の化合物層が所定の化合物を含むことにより、耐欠損性及び耐摩耗性に優れる。
【0029】
本実施形態の被覆切削工具の被覆層の化合物層の平均厚さは、0.5μm以上5.0μm以下であり、0.6μm以上4.8μm以下であることが好ましく、0.8μm以上4.5μm以下であることがより好ましい。化合物層の平均厚さは、被覆切削工具の切れ刃からすくい面の中心部に向かって50μmの位置の近傍の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で3箇所測定し、3箇所の平均値として求めることができる。
【0030】
被覆層の化合物層の平均厚さが、5.0μm以下であることにより、被覆層の剥離を抑制することができるため、耐欠損性に優れる。一方、化合物層の平均厚さが、0.5μm以上であることにより、耐摩耗性に優れる。
【0031】
本実施形態の被覆切削工具の被覆層の化合物層では、化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、0°以上90°以下の範囲における最大強度をIaとしたとき、Iaを示す角度αが5°以上25°以下である。角度αは、6°以上24°以下であることが好ましく、8°以上23°以下であることがより好ましい。
【0032】
図1に、実施例1の発明品1の化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布を示す。図1では、角度αが0°以上90°以下の範囲において、15°の角度で最大強度Iaが存在する。したがって、発明品1の被覆層の、角度αが0°以上90°以下の範囲における最大強度をIaとしたとき、Iaを示す角度αは15°である。
【0033】
図2に、比較品3の化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布を示す。図2では、角度αが0°以上90°以下の範囲において、37°の角度で最大強度Iaが存在する。したがって、比較品3の被覆層の、角度αが0°以上90°以下の範囲における最大強度をIaとしたとき、Iaを示す角度αは37°である。したがって、比較品3の被覆層の場合の角度αは、5°以上25°以下の範囲ではない。
【0034】
被覆層の化合物層の角度αが25°以下である場合には、高温強度が高くなり、チッピングの発生が抑制されるため、耐欠損性に優れる。また、被覆層の硬さが向上するため、耐摩耗性も優れる。一方、角度αが5°以上である場合には、被覆層の靭性が向上するため、耐欠損性に優れる。
【0035】
本実施形態の被覆切削工具の被覆層の化合物層では、化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、角度αが40°以上90°以下の範囲における最大強度をIbとしたとき、Ibを示す角度αが40°以上60°未満である。角度αは、42°以上58°以下であることが好ましく、43°以上57°以下であることがより好ましい。
【0036】
図1に示す実施例1の発明品1の化合物層の、立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布では、角度αが40°以上90°以下の範囲において、48°の角度で最大強度(極大値)Ibが存在する。したがって、発明品1の被覆層の、40°以上90°以下の範囲における最大強度をIbとしたとき、Ibを示す角度αは48°である。
【0037】
図2に示す比較品3の化合物層の、立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布では、角度αが40°以上90°以下の範囲において、極大値は存在しない。40°以上では角度αが大きくなるにしたがって、X線強度は単調減少する。そのため、角度αが40°以上90°以下の範囲では、角度αが40°のときにX線強度が最大値になる。したがって、図2に示す比較品3の場合は、角度αが40°以上90°以下の範囲において、角度αが40°のときに、X線強度が最大強度Ibになる。したがって、比較品3の化合物層の、角度αが40°以上90°以下の範囲における最大強度をIbとしたとき、Ibを示す角度αは40°である。
【0038】
被覆層の化合物層の角度αが60°未満である場合には、被覆層の靭性が向上するため、耐欠損性に優れる。一方、角度αが40°以上である場合には、被覆層の剥離が抑制されるため、耐欠損性に優れる。
【0039】
本実施形態の被覆切削工具の被覆層の化合物層では、化合物層のIaに対するIbの比(Ib/Ia)が、0.5以上1.0未満である。比(Ib/Ia)は、0.51以上0.97以下であることが好ましい。
【0040】
被覆層の化合物層において、比(Ib/Ia)が1.0未満である場合には、被覆層の高温強度が高くなり、チッピングの発生が抑制されるため、耐欠損性に優れる。また、硬さが向上するため、耐摩耗性に優れる。一方、比(Ib/Ia)が0.5以上である場合には、被覆層の剥離が抑制されるため、耐欠損性に優れる。
【0041】
本実施形態の被覆切削工具の被覆層に含まれる所定の化合物層が、上述の所定の元素からなる立方晶の結晶構造を有する化合物を含み、化合物層の平均厚さが所定の範囲であり、化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、上述の最大強度Ia及びIbを示す角度α及びαが上述の所定の範囲であり、比(Ib/Ia)が所定の範囲であることにより、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有し、工具寿命の長い被覆切削工具を得ることができる。
【0042】
本実施形態の被覆層の化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布は、Schulzの反射法により測定することができる。Schulzの反射法は、図3に示すように2θを回折角度として入射角と反射角がそれぞれθである等角度反射の光学系を使用する。具体的には、Schulzの反射法では、図3に示すように、試料面内のA軸を中心とするα回転と、試料面法線(B軸)を中心とするβ回転(すなわち試料面内回転)により、入射X線に対する試料の方向を変えて回折線の強度分布を測定する。B軸が入射線と回折線とで決まる平面上にあるとき、α角を90°と定義する。α角が90°のときは、図4に示すように正極点図上で中心の点になる。具体的な測定方法として、例えば株式会社Bulker製X線回折装置D8 Discoverの逆格子空間マッピングプログラムを使用し、下記の測定手法及び解析条件により、化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布を測定することができる。なお、本明細書では、α角のことを「角度α」という場合がある。
【0043】
[測定手法(Schulzの反射法)]
(1)高精度ゴニオメータ
(2)多目的試料台
(3)2次元検出器 Vantec-500
(4)ターゲット:Cu、電圧:50kV、電流:1000μA
(5)マイクロスリット:1mm
(6)UBCコリメータ:0.5mm
【0044】
[解析条件]
(1)2θ固定角度:解析に用いる化合物層の立方晶の(200)面の回析角度は、42.0°から44.5°の間で回折強度が最も高くなる角度を2θとしたときの、2θ-0.1°から2θ+0.1°の範囲とした。
(2)α走査範囲:0度から90度(1度ステップ)
(3)β固定角度:0°
【0045】
化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図の等高線からも最高強度を示すα角を読みとることができる。一方、図1に示すように化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布から、0°以上90°以下の範囲における最大強度Iaを示す角度α、及び40°以上90°以下の範囲における最大強度Ibを示す角度αを容易に求めることができる。
【0046】
本実施形態の被覆切削工具の被覆層の化合物層では、化合物層の角度αと角度αとの差(α-α)が、20°以上40°以下であることが好ましく、24°以上38°以下であることがより好ましく、27°以上36°以下であることが更に好ましい。
【0047】
被覆層の化合物層において、差(α-α)が40°以下である場合には、被覆層の靭性が向上するため、耐欠損性に優れる傾向にある。一方、差(α-α)が20°以上である場合には、角度αを25°以下とすることによる被覆層が硬さ向上の効果が一層高まるため、耐摩耗性に優れる傾向にある。
【0048】
実施形態の被覆切削工具の被覆層の化合物層は、下記式(1)で表される組成を有することができる。式(1)中、「Al」はアルミニウムであり、「Ti」はチタンである。式(1)中、記号Xは炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)から選択される少なくとも1種の元素である。記号Mは、後述する所定の元素のグループから選択される少なくとも1種の元素である。
(AlTi1-a-b)X ・・・(1)
【0049】
被覆層の化合物層の組成を表す式(1)において、記号Mで表す元素(M元素)は、Cr、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Y、Si及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。
【0050】
化合物層が、式(1)のM元素としてCrを含む場合、被覆層における六方晶の形成が抑制され、被覆層の硬さが向上するため、耐摩耗性に優れる傾向にある。
【0051】
化合物層が、式(1)のM元素としてNb、Ta、Mo及び/又はWを含む場合、被覆層の靭性が向上するため、耐欠損性に優れる傾向にある。
【0052】
化合物層が、式(1)のM元素としてSi及び/又はBを含む場合、被覆層の硬さが向上するため、耐摩耗性に優れる傾向にある。
【0053】
化合物層が、式(1)のM元素としてCr、Zr、Hf、V及び/又はYを含む場合、被覆層の耐酸化性が向上するため、耐摩耗性に優れる傾向にある。
【0054】
被覆層の化合物層の組成を表す式(1)において、記号Xで表す元素(X元素)は、C、N及びOからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。X元素は、C及びNからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、Nであることがより好ましい。被覆層の化合物層がX元素を含む化合物を含むことにより、被覆層は耐欠損性及び耐摩耗性に優れる。
【0055】
式(1)において、Al元素、Ti元素及びM元素の合計に対するAl元素の含有割合(原子比)であるaの値は、0.60以上0.90以下であることが好ましく、0.67以上0.89以下であることがより好ましく、0.73以上0.88以下であることが更に好ましい。
【0056】
被覆層の化合物層の組成を表す式(1)において、aの値が0.90以下である場合には、被覆層の六方晶の形成が抑制され、硬さが向上するため、耐摩耗性に優れる傾向にある。一方、aの値が0.60以上である場合には、被覆層がAl元素を多く含むことで、被覆層の硬さ及び耐酸化性が向上するため、耐摩耗性に優れる傾向にある。
【0057】
被覆層の化合物層の組成を表す式(1)において、Alの含有割合(原子比)aを大きくすることにより、角度α及び角度αを大きくすることができる。
【0058】
式(1)において、Al元素、Ti元素及びM元素の合計に対するTi元素の含有割合(原子比)であるbの値は、0.08以上0.40以下であることが好ましく、0.10以上0.33以下であることがより好ましく、0.12以上0.27以下であることが更に好ましい。
【0059】
被覆層の化合物層の組成を表す式(1)において、bの値が0.40以下である場合には、被覆層が相対的にAl元素を多く含むことで、耐熱性が向上するため、耐摩耗性に優れる傾向にある。又は、被覆層が相対的にM元素を多く含むことで、耐摩耗性及び/又は耐欠損性に優れる傾向にある。一方、bの値が0.08以上である場合には、被覆層の剥離が抑制されるため、耐欠損性に優れる傾向にある。
【0060】
式(1)において、Al元素、Ti元素及びM元素の合計に対するM元素の含有割合(原子比)である1-a-bの値は、0.00以上0.20以下であることが好ましく、0.00以上0.10以下であることがより好ましく、0.00以上0.05以下であることが更に好ましく、0.00であることがより更に好ましい。
【0061】
被覆層の化合物層の組成を表す式(1)において、1-a-bの値が0.20以下である場合には、被覆層が相対的にAl元素及び/又はTi元素を多く含むことで、耐熱性が向上するため、耐摩耗性に優れる傾向にある。また、1-a-bの値がゼロである場合(M元素を含まない場合)には、相対的にAl元素及び/又はTi元素を多く含むことで、被覆層の耐熱性が向上するため、耐摩耗性に優れる傾向にある。一方、1-a-bの値がゼロより大きい場合(M元素を含む場合)には、耐摩耗性及び/又は耐欠損性に優れる傾向にある。
【0062】
本実施形態の被覆切削工具は、被覆層の全体の平均厚さが、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましく、0.6μm以上4.8μm以下であることがより好ましく、0.8μm以上4.5μm以下であることが更に好ましい。被覆層の平均厚さは、被覆切削工具の切れ刃からすくい面の中心部に向かって50μmの位置の近傍の断面を、SEMで3箇所測定し、3箇所の平均値として求めることができる。被覆層が化合物層のみからなる場合には、被覆層の全体の平均厚さは、化合物層の平均厚さと同じである。
【0063】
被覆層の全体の平均厚さが、5.0μm以下である場合には、被覆層の剥離が抑制されるため、耐欠損性が向上する傾向にある。一方、被覆層の全体の平均厚さが、0.5μm以上である場合には、耐摩耗性が向上する傾向にある。
【0064】
本実施形態の被覆切削工具は、上述の所定の被覆層を有することにより、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有し、工具寿命の長い被覆切削工具を得ることができる。
【0065】
特許文献1には、化合物層の前記立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、角度αが40°以上90°以下の範囲における最大強度をIbとしたとき、Ibを示す角度αが40°以上60°未満であることは記載されていない。一方、本実施形態の被覆切削工具は、化合物層の前記立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、角度αが40°以上90°以下の範囲における最大強度をIbとしたとき、Ibを示す角度αが40°以上60°未満であるという特徴を有する。本実施形態の被覆切削工具は、Ibを示す角度αが40°以上であることにより、被覆層の剥離が抑制される。そのため、特許文献1に記載の被覆工具と比べて、本実施形態の被覆層は耐欠損性に優れる。また、本実施形態の被覆切削工具は、Ibを示す角度αが60°未満であることにより、被覆層の靭性が向上する。そのため、特許文献1に記載の被覆工具と比べて、本実施形態の被覆層は耐欠損性に優れる。
【0066】
特許文献2には、化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、角度αが0°以上90°以下の範囲における最大強度をIaとしたとき、前記Iaを示す角度αが5°以上25°以下であることが記載されていない。一方、本実施形態の被覆切削工具は、Iaを示す角度αが5°以上25°以下であるという特徴を有する。本実施形態の被覆切削工具は、Iaを示す角度αが5°以上であることにより、被覆層の靭性が向上する。そのため、特許文献2に記載の被覆工具と比べて、本実施形態の被覆層は耐欠損性に優れる。本実施形態の被覆切削工具は、Iaを示す角度が25°以下であることにより、特許文献2に記載の被覆工具と比べて、次の効果を奏する。すなわち、本実施形態の被覆切削工具は、被覆層の靭性が向上するため、本実施形態の被覆層は耐欠損性に優れる。また、本実施形態の被覆切削工具は、被覆層の高温強度が高くなり、チッピングの発生が抑制されるため、本実施形態の被覆層は耐欠損性に優れる。また、本実施形態の被覆切削工具は、硬さが向上するため、本実施形態の被覆層の耐摩耗性も優れる。
【0067】
また、特許文献2には、化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、角度αが0°以上90°以下の範囲における最大強度をIaとし、角度αが40°以上90°以下の範囲における最大強度をIbとしたとき、化合物層の比(Ib/Ia)が、0.5以上1.0未満であることが記載されていない。一方、本実施形態の被覆切削工具は、化合物層の比(Ib/Ia)が、0.5以上1.0未満であるという特徴を有する。本実施形態の被覆切削工具は、比(Ib/Ia)が0.5以上であることにより、被覆層の剥離が抑制される。そのため、特許文献1に記載の被覆工具と比べて、本実施形態の被覆層は耐欠損性に優れる。本実施形態の被覆切削工具は、比(Ib/Ia)が1.0未満であることにより、特許文献2に記載の被覆工具と比べて、次の効果を奏する。すなわち、本実施形態の被覆切削工具は、被覆層の高温強度が高くなり、チッピングの発生が抑制されため、本実施形態の被覆層は耐欠損性に優れる。また、本実施形態の被覆切削工具は、被覆層の硬さが向上するため、本実施形態の被覆層は耐摩耗性に優れる。
【0068】
<被覆層の形成方法>
本実施形態の被覆切削工具における被覆層の化合物層の形成方法(製造方法)は、特に限定されるものではない。化合物層の形成方法として、例えば、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、スパッタ法、及びイオンミキシング法などの物理蒸着法を挙げることができる。物理蒸着法を使用して被覆層を形成すると、シャープエッジを形成することができる。そのため化合物層の形成には、物理蒸着法を使用することが好ましい。その中でも、アークイオンプレーティング法を使用した場合は、より優れた被覆層と基材との密着性を得ることができる。そのため化合物層の形成には、アークイオンプレーティング法を使用することが、より好ましい。
【0069】
本実施形態の被覆層に含まれる化合物層は、組成の異なった複数種類の化合物層が積層した構造の化合物層であることができる。例えば、化合物層が、組成の異なった2つの化合物層が積層した構造である場合、化合物層は、第1層の化合物層及び第2層の化合物層からなることができる。この場合、組成の異なった複数種類の化合物層のそれぞれを、下記の方法で形成することができる。また、1つの化合物層(例えば、第1層の化合物層)を、複数回に分けて形成することができる。
【0070】
<被覆切削工具の製造方法>
本実施形態の被覆切削工具の製造方法について、以下に具体例を用いて説明する。なお、本実施形態の被覆切削工具の製造方法は、本実施形態の被覆切削工具の構成を達成し得る限り、特に制限されるものではない。
【0071】
まず、工具形状に加工した基材を物理蒸着装置の反応容器内に収容し、金属蒸発源を反応容器内に設置する。金属蒸発源に含まれる元素は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Y、Al、Si及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。その後、反応容器内をその圧力が1.0×10-2Pa以下の真空になるまで真空引きし、反応容器内のヒーターにより基材をその温度が200℃以上700℃以下になるまで加熱する。加熱後、反応容器内にArガスを導入して、反応容器内の圧力を0.5Pa以上5.0Pa以下とする。圧力0.5Pa以上5.0Pa以下のArガス雰囲気にて、基材に-500V以上-350V以下のバイアス電圧を印加し、反応容器内のタングステンフィラメントに40A以上50A以下の電流を流して、基材の表面にArガスによるイオンボンバードメント処理を施す。基材の表面にイオンボンバードメント処理を施した後、反応容器内をその圧力が1.0×10-2Pa以下の真空になるまで真空引きする。
【0072】
本実施形態に用いる被覆層の化合物層を形成する場合、基材の温度が所定の開始温度になるように、基材の温度を制御する。制御後、反応容器内にガスを導入して、反応容器内の圧力を3.0Pa以上8.0Pa以下とする。導入するガスとしては、例えば、被覆層の化合物層が炭素(C)を含む場合、導入するガスとしては、Cガスが挙げられる。被覆層の化合物層が窒素(N)を含む場合、導入するガスとしては、Nガスが挙げられる。被覆層の化合物層が酸素(O)を含む場合、導入するガスとしては、Oガスが挙げられる。被覆層の化合物層が、炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)から選択される少なくとも2つを含む場合、導入するガスとしては、上述したガスの混合ガスが挙げられる。例えば、被覆層の化合物層が、N及びCを含む場合、導入するガスとしては、NガスとCガスとの混合ガスが挙げられる。
【0073】
例えば、被覆層の化合物層が、窒素(N)及び炭素(C)を含む場合、混合ガスの体積比率としては、特に限定されないが、例えば、Nガス:Cガス=95:5から85:15までの範囲であってもよい。
【0074】
なお、炭素(C)を含む被覆層の化合物層を形成する場合、必要に応じて炭素(C)を含む金属蒸発源を用いることができる。
【0075】
次いで、基材に-600V以上-250V以下、好ましくは-550V以上-300V以下のバイアス電圧を印加してアーク電流50A以上250A以下、好ましくは80A以上200A以下のアーク放電により各層の金属及び非金属成分に応じた金属蒸発源を蒸発させて、被覆層の化合物層を形成することができる。このときに、基材の温度を昇温させて、所定の開始温度から所定の到達温度になるように、一定の勾配で基材の温度を変化させながら、被覆層の化合物層を形成することができる。このようにして、化合物層の形成を行うことができる。
【0076】
本実施形態の被覆切削工具の製造方法では、1つの化合物層(例えば、第1層の化合物層)を、複数回に分けて形成することができる。本明細書では、1つの化合物層を複数回に分けて形成したときの形成回数のことを、「サイクル数」という。したがって、上述の化合物層の形成は、所定の化合物層の1以上のサイクル数の形成であることができる。化合物層を、複数サイクルに分けて形成する場合、1サイクル目の形成後、基材の温度を所定の開始温度まで冷却する。この冷却の間は、化合物層の形成を中断する。基材の温度が所定の開始温度になったら、次の2サイクル目の形成を開始する。このときには、上述の1サイクル目と同様に、基材の温度を昇温させて、所定の開始温度から所定の到達温度になるように、一定の勾配で基材の温度を変化させながら、2サイクル目の化合物層を形成することができる。以上の手順を繰り返して、所定のサイクル数の化合物層を形成することができる。
【0077】
化合物層が、組成の異なった2つの化合物層が積層した構造の化合物層である場合には、所定のサイクル数の第1層の化合物層を形成した後、第1層と同様の手順で、所定のサイクル数の第2層の化合物層を形成することができる。組成の異なった化合物層が3つ以上積層した構造の化合物層の場合も同様である。
【0078】
被覆層の化合物層を形成するときの開始温度は、200℃以上550℃以下であることが好ましく、250℃以上520℃以下であることがより好ましく、300℃以上480℃以下であることが更に好ましい。1つの層を形成するために複数サイクル数の形成を行う場合、各サイクルの開始温度は、同じ温度であることが好ましい。
【0079】
被覆層の化合物層を形成するときの到達温度は、上述の開始温度より高い温度である。到達温度は、400℃以上700℃以下であることが好ましく、450℃以上650℃以下であることがより好ましく、480℃以上620℃以下であることが更に好ましい。1つの層を形成するために複数サイクル数の形成を行う場合、各サイクルの到達温度は、同じ温度であることが好ましい。
【0080】
被覆層の化合物層を形成するときの、所定の開始温度から所定の到達温度までに形成する化合物層の厚さ(1サイクルの化合物層の厚さ)は、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、50nm以上800nm以下であることがより好ましく、100nm以上600nm以下であることが更に好ましい。1つの層を形成するために複数サイクル数の形成を行う場合、各サイクルの化合物層の厚さは、同じ厚さであることが好ましい。
【0081】
被覆層の化合物層の所定の組成の1つの層を形成するときの、サイクル数(形成回数)は、1サイクル以上60サイクル以下であることが好ましく、2サイクル以上55サイクル以下であることがより好ましい。
【0082】
被覆層の化合物層が、組成の異なった2つの化合物層(第1層及び第2層)からなる場合、第1層と第2層とが交互にそれぞれ2層以上積層された交互積層構造を形成することができる。この場合、第1層は第1層の成膜条件で形成し、第2層は第2層の成膜条件で形成する。第1層の金属成分に応じた金属蒸発源と、第2層の金属成分に応じた金属蒸発源とを所定の条件にて、交互にアーク放電により蒸発させることによって、各層を交互に形成することができる。第1層の金属成分に応じた金属蒸発源、開始温度及び到達温度と、第2層の金属成分に応じた金属蒸発源、開始温度及び到達温度とをそれぞれ調整することによって、交互積層構造を構成する各層の厚さを制御することができる。
【0083】
本実施形態の被覆切削工具では、上述の化合物層を形成する工程において、圧力、開始温度、到達温度、1サイクルあたりの厚さ、及び基材に印加するバイアス電圧などの製造パラメータを制御することにより、化合物層のX線強度分布を所定の形状にすることができる。以下に、化合物層に対する各製造パラメータの影響について、説明する。
【0084】
化合物層の形成の際に、開始温度を低くすることにより、角度α及び角度αを小さくすることができ、比(Ib/Ia)を大きくすることができる。
【0085】
化合物層の形成の際に、到達温度を高くすることにより、角度α及び差(α-α)を大きくすることができる。
【0086】
化合物層の形成の際に、1サイクルあたりの厚さを厚くすることにより、比(Ib/Ia)を大きくすることができる。
【0087】
化合物層の形成の際に、圧力を大きくすることにより、角度αを大きくすることができ、差(α-α)を小さくすることができる。
【0088】
化合物層の形成の際に、基材に印加するバイアス電圧を小さくすることにより、角度α及び角度αを小さくすることができる。なお、「基材に印加するバイアス電圧を小さくする」とは、バイアス電圧を負の方向に大きくすること(すなわち、バイアス電圧が負の値の場合には、負の値の絶対値を大きくすること)を意味する。
【0089】
本実施形態の被覆切削工具における被覆層を構成する各層の厚さは、被覆切削工具の断面組織から、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて測定することができる。なお、本実施形態の被覆切削工具における各層の平均厚さは、金属蒸発源に対向する面の切れ刃稜線部から、当該面の中心部に向かって50μmの位置の近傍における3箇所以上の断面から各層の厚さを測定して、その平均値(相加平均値)を計算することで求めることができる。
【0090】
また、本実施形態の被覆切削工具における被覆層を構成する各層の組成は、本実施形態の被覆切削工具の断面組織から、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)や波長分散型X線分析装置(WDS)などを用いて測定することができる。
【実施例
【0091】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例では、被覆層は、化合物層以外の層を有しない。そのため、化合物層のことを、被覆層という場合がある。
【0092】
(実施例1)
実施例1として、発明品1~23の試料を作製した。また、発明品1~23に対する比較例(比較例1)として、比較品1~11を作製した。
【0093】
<製造方法>
発明品1~23及び比較品1~11の基材として、SWMT13T3AFPR-MJ(株式会社タンガロイ製)のインサート形状に加工した、86.1%WC-12.0%Co-1.1NbC-0.8%Cr(以上質量%)の組成を有する超硬合金を用意した。アークイオンプレーティング装置の反応容器内に、表1に示す化合物層の組成になるよう金属蒸発源を配置した。用意した基材を、被覆層の形成のための反応容器内の回転テーブルの固定金具に固定した。
【0094】
表1に示す実施例1の化合物層は、下記式(1)で表す組成を有する。実施例1の発明品15~23の化合物層では、式(1)中、記号Mで表す元素として、表1の「M種」欄に示す元素を用いた。実施例1の化合物層では、式(1)中、記号Xで表す元素として、窒素(N)を用いた。
(AlTi1-a-b)X ・・・(1)
【0095】
その後、反応容器内をその圧力が5.0×10-3Pa以下の真空になるまで真空引きした。真空引き後、反応容器内のヒーターにより、基材の温度が450℃になるまで加熱した。加熱後、反応容器内にその圧力が2.7PaになるようにArガスを導入した。
基材の温度が表2に示す開始温度になるまで基材を加熱した。
【0096】
圧力2.7PaのArガス雰囲気にて、基材に-400Vのバイアス電圧を印加して、反応容器内のタングステンフィラメントに40Aの電流を流して、基材の表面にArガスによるイオンボンバードメント処理を30分間施した。イオンボンバードメント処理終了後、反応容器内をその圧力が5.0×10-3Pa以下の真空になるまで真空引きした。
【0097】
次に、発明品1~23及び比較品1~11の基材の表面に1サイクル目の化合物層を形成した。具体的には、真空引き後、基材の温度が表2に示す開始温度になるように制御した。また、窒素ガス(N)を反応容器内に導入し、反応容器内を表2に示す圧力に調整した。その後、表2に示すバイアス電圧を基材に印加して、表1に示す組成の化合物層の金属蒸発源を、表2に示すアーク電流のアーク放電により蒸発させて、基材の表面に1サイクル目の化合物層を形成した。なお、化合物層の形成中、表2に示す反応容器内の圧力になるよう制御した。また、1サイクル目の化合物層の厚さが、表2の「1サイクルあたりの厚さ」欄に示す厚さとなるように、それぞれのアーク放電時間を調整して制御した。また、基材の温度が、1サイクル目の化合物層の形成開始のときに表2の「開始温度」欄に示す開始温度であり、1サイクル目の化合物層の形成終了のときに表2の「到達温度」欄に示す到達温度になるように、一定の勾配で基材の温度を変化させながら、化合物層を形成した。以上のようにして、基材の表面に1サイクル目の化合物層を形成した。
【0098】
化合物層の形成は、表2の「サイクル数」欄に示す回数繰り返して行った。基材の表面に1サイクル目の化合物層を形成した後、化合物層の形成を停止し、基材の温度を表2に示す開始温度まで冷却した。その後、上述の1サイクル目の化合物層を形成工程と同様に、基材の表面に2サイクル目の化合物層を形成した。この工程を表2の「サイクル数」欄に示す回数繰り返すことにより、所定のサイクル数の化合物層を形成した。
【0099】
表2に示すように、比較品5の「開始温度」及び「到達温度」は同じである。この場合は、化合物層を形成する際の基材の温度は一定にして、1サイクルで厚さ3000nmの化合物層全体を形成した。
【0100】
発明品1~23、並び比較品1~4及び5~11の化合物層を形成する際は、所定のサイクル数の成膜条件は、すべて同じにした。したがって、発明品1~23、並び比較品1~4及び5~11のそれぞれの化合物層を形成する際の、各サイクルの成膜時間は一定である。
【0101】
表2に示す所定のサイクル数及び所定の平均厚さまで化合物層を基材の表面に形成した後に、ヒーターの電源を切り、試料温度が100℃以下になった後で、反応容器内から試料を取り出した。
【0102】
以上のように、発明品1~23及び比較品1~11の被覆切削工具を製造した。
【0103】
<化合物層の平均厚さの測定>
各発明品及び比較品の化合物層の平均厚さは、被覆切削工具の切れ刃からすくい面の中心部に向かって50μmの位置の近傍の断面を、SEMで3箇所測定し、3箇所の平均値を平均厚さとした。表1に、各発明品及び比較品の化合物層の平均厚さを示す。また、表2に、被覆層の1サイクルあたりの厚さを示す。表2の「1サイクルあたりの厚さ」欄に記載の値は、化合物層全体の平均厚さを、サイクル数で除した値である。
【0104】
<X線強度分布の測定>
得られた試料について、株式会社Bluker製X線回折装置D8 Discoerを用いて、2θ/θ法のX線回折測定を行った。測定条件は管電圧50kV、管電流1000μA、X線源CuKα、マイクロスリット1mm、UBCコリメータ0.5mm、2θの測定範囲を10°以上140°以下とした。このとき、全試料の化合物層(被覆層)における化合物の結晶構造は立方晶のNaCl型構造であることを確認した。更に、下記に示す測定手法及び解析条件により化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布を測定した。
【0105】
[測定手法(Schulzの反射法)]
(1)高精度ゴニオメータ
(2)多目的試料台
(3)2次元検出器 Vantec-500
(4)ターゲット:Cu、電圧:50kV、電流:1000μA
(5)マイクロスリット:1mm
(6)UBCコリメータ:0.5mm
【0106】
[解析条件]
(1)2θ固定角度:解析に用いる化合物層の立方晶の(200)面の回析角度は、42.0°から44.5°の間で回折強度が最も高くなる角度を2θとしたときの、2θ-0.1°から2θ+0.1°の範囲とした。
(2)α走査範囲:0°から90°(1°ステップ)
(3)β固定角度:0°
【0107】
上述のように測定した各試料の化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布に基づいて、0°以上90°以下の範囲における最大強度Ia、Iaを示す角度α、40°以上90°以下のα角の範囲における最大強度Ib、及びIbを示す角度αの値を求めた。表3に、実施例1の各試料のIaを示す角度α、及びIbを示す角度αの値を示す。また、表3に、実施例1の各試料の、角度αと角度αとの差(α-α)、及びIaとIbとの比(Ib/Ia)の値を示す。
【0108】
<各層の組成の測定>
実施例1の各発明品及び比較品の化合物層の組成は、被覆切削工具の所定の層の断面を、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて測定した。化合物層の結晶系は、2θ/θ集中法光学系のX線回折測定により同定した。表1に、各発明品及び比較品の化合物層の組成(各層に含まれる元素の種類及び含有比)を示す。
【0109】
<切削試験>
実施例1の発明品及び比較品の被覆切削工具に対して切削試験を行い、耐欠損性(工具寿命)を評価した。
【0110】
切削試験条件は下記の通りである。
[切削試験条件]
被削材:FCD600
被削材形状:200mm×100mm×60mmの板
切削速度:180m/min
切削幅:100mm
切り込み深さ:2.0mm
刃当たり送り:0.25mm/tooth
クーラント:不使用
評価項目:工具の逃げ面摩耗幅が0.3mmを超えるまで、又は切れ刃が欠損に至るまでの加工時間を工具寿命とし、工具寿命に至るまでの加工時間を測定した。また、工具寿命に至ったときの損傷の形態をそれぞれSEMで観察した。
【0111】
表4に、実施例1の発明品及び比較品の切削試験の結果を示す。
【0112】
(実施例2)
実施例2として、発明品24~29の試料を作製した。実施例2では、被覆層として、複数種類の化合物層を積層した。表7に示すように、発明品24、26及び27では2種の化合物層(第1層及び第2層)からなる被覆層を形成した。発明品25では3種の化合物層(第1層、第2層及び第3層)からなる被覆層を形成した。
【0113】
表5に示すように、実施例2では、種別A~Fの6種類の組成の化合物層を用いた。実施例2の各発明品の化合物層の組成の測定方法は、実施例1の試料の化合物層の組成の測定方法と同様である。
【0114】
表5に示す実施例2の種別A~Fの化合物層は、下記式(1)で表す組成を有する。実施例2の種別Fの化合物層では、式(1)中、記号Mで表す元素として、表5の「M種」欄に示す元素(W)を用いた。実施例2の種別A~Fの化合物層では、式(1)中、記号Xで表す元素として、実施例1と同様に、窒素(N)を用いた。
(AlTi1-a-b)X ・・・(1)
【0115】
表6に、種別A~Fの化合物層の成膜条件を示す。種別A~Fの化合物層の形成は、表6に示す条件に従って、実施例1の試料の化合物層の形成と同様に行った。
【0116】
表7及び8の「種別」欄に、発明品24~29で用いた化合物層(第1層、第2層及び第3層)が、表5に記載の種別A~Fのどれに対応するかを示す。
【0117】
発明品24~27の第1層は、基材に最も近い化合物層である。発明品24~27では、第1層の形成後に、第2層を形成した。発明品25では、第2層の形成後に、更に第3層を形成した。発明品24~27について、表7の「平均厚さ」欄には、各化合物層(第1層、第2層又は第3層)のそれぞれの平均厚さを示す。例えば、発明品24では、4サイクルで形成した第1層全体の平均厚さが0.8μmであり、14サイクルで形成した第2層全体の平均厚さが2.8μmである。
【0118】
表8に示す発明品28では、2サイクルで形成した第1層と、1サイクルで形成した第2層とを交互に6回(6ペア)、繰り返して化合物層を形成した。発明品28について、表8の「1ペアあたりのサイクル数」及び「1ペアあたりの平均厚さ」欄には、各化合物層(第1層又は第2層)のそれぞれの1ペアあたりのサイクル数及び平均厚さを示す。例えば、発明品28では、1ペアあたりのサイクル数が2回、1ペアあたりの平均厚さが0.4μmの第1層と、1ペアあたりのサイクル数が1回、1ペアあたりの平均厚さが0.2μmの第2層とを交互に繰り返し形成した。発明品28の1ペアあたりの第1層及び第2層の合計の化合物層の合計の平均厚さは0.6μm(=0.4μm+0.2μm)であり、合計6ペアの化合物層全体の平均厚さは3.6μm(=0.6μm×6ペア)である。
【0119】
表8に示す発明品29では、1サイクルで形成した第1層と、1サイクルで形成した第2層とを交互に15回(15ペア)、繰り返して化合物層を形成した。例えば、発明品29では、1ペアあたりのサイクル数が1回、1ペアあたりの平均厚さが0.2μmの第1層と、1ペアあたりのサイクル数が1回、1ペアあたりの平均厚さが0.06μmの第2層とを交互に繰り返し形成した。発明品29の1ペアあたりの第1層及び第2層の合計の平均厚さは0.26μm(=0.2μm+0.06μm)であり、合計15ペアの化合物層全体の平均厚さは3.9μm(=0.26μm×15ペア)である。
【0120】
表7及び8の「化合物層全体の平均厚さ」欄には、化合物層全体(第1層及び第2層、又は第1層から第3層)の平均厚さを示す。実施例2の試料において、化合物層の平均厚さの測定方法は、実施例1の試料の場合と同様である。
【0121】
実施例1と同様の条件で、実施例2の発明品の化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布を測定した。各試料の化合物層の立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布に基づいて、0°以上90°以下の範囲における最大強度Ia、Iaを示す角度α、40°以上90°以下のα角の範囲における最大強度Ib、及びIbを示す角度αの値を求めた。表9に、実施例2の各試料のIaを示す角度α、及びIbを示す角度αの値を示す。また、表9に、実施例2の、角度αと角度αとの差(α-α)、及びIaに対するIbの比(Ib/Ia)の値を示す。
【0122】
実施例1と同様に、実施例2の発明品の被覆切削工具に対して切削試験を行い、工具寿命を評価した。表10に、実施例2の発明品の切削試験の結果を示す。
【0123】
<切削試験の評価>
実施例1及び2の切削試験において、本実施形態の発明品は、工具寿命が42分以上であり、すべての比較品の工具寿命より長かった。したがって、本実施形態の発明品は、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有し、工具寿命の長い被覆切削工具であるといえる。
【0124】
一方、実施例1の切削試験において、すべての比較品は、工具寿命が36分以下だった。また、切削試験の際に、比較品1及び3~11では、工具寿命に至ったときの損傷の形態が欠損であった。
【0125】
以上のことから、本実施形態の被覆切削工具は、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有し、工具寿命の長い被覆切削工具であることが明らかである。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
【表7】
【0133】
【表8】
【0134】
【表9】
【0135】
【表10】
【要約】
【課題】 優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有し、工具寿命の長い被覆切削工具を提供する。
【解決手段】 基材と被覆層とを含む被覆切削工具である。前記被覆層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Y、Al、Si及びBから選ばれる少なくとも1種と、C、N及びOから選ばれる少なくとも1種とからなる立方晶の化合物を含む化合物層を有し、前記化合物層の平均厚さが、0.5μm以上5.0μm以下であり、前記化合物層の前記立方晶の(200)面に関する正極点図のα軸のX線強度分布において、角度αが0°以上90°以下の範囲における最大強度Iaを示す角度αが5°以上25°以下であり、及び角度αが40°以上90°以下の範囲における最大強度Ibを示す角度αが40°以上60°未満であり、前記化合物層の前記Iaに対する前記Ibの比(Ib/Ia)が、0.5以上1.0未満である。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4