(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-19
(45)【発行日】2026-01-27
(54)【発明の名称】ブレーキ負圧センサの固着故障判定装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20260120BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20260120BHJP
【FI】
B60T17/22 Z
B60T17/00 C
(21)【出願番号】P 2025509756
(86)(22)【出願日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2023046934
(87)【国際公開番号】W WO2024202352
(87)【国際公開日】2024-10-03
【審査請求日】2025-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2023051724
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】多田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】小寺 晴大
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-208637(JP,A)
【文献】特開2018-86963(JP,A)
【文献】特開2008-68747(JP,A)
【文献】特開2001-322542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00-13/74
B60T 15/00-15/60
B60T 17/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動により生成された負圧をブレーキブースタに供給可能な車両において、前記ブレーキブースタの負圧値を検出するブレーキ負圧センサの固着故障を判定するブレーキ負圧センサの固着故障判定装置であって、
前記エンジンが駆動しているか否かを判断するエンジン駆動判断部と、
前記負圧値に応じて、前記エンジンに負圧の生成を要求する負圧生成要求を送信する負圧生成要求部と、
前記負圧生成要求の送信の有無とブレーキ操作の回数とを含む所定の条件下における前記負圧値の変化の有無を判断する負圧値変化判断部と、
前記エンジン駆動判断部による前記エンジンの駆動の有無と、前記負圧値変化判断部による前記負圧値の変化の有無とに基づいて、前記ブレーキ負圧センサの固着故障を判定する故障判定部と、を備え、
前記故障判定部は、前記エンジンが駆動していない状態で、前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記ブレーキ負圧センサが固着故障確定と判定し、前記エンジンが駆動している状態で、前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記ブレーキ負圧センサが固着故障している可能性を有する固着故障疑いと判定する、
こと特徴とするブレーキ負圧センサの固着故障判定装置。
【請求項2】
前記負圧生成要求部は、前記負圧値が所定の開始閾値以下となった場合に、前記負圧生成要求を送信し、前記負圧値が前記開始閾値より大きい所定の停止閾値以上となった場合に、前記負圧生成要求の送信を停止し、
前記開始閾値と前記停止閾値との間に固着故障判定閾値が設定され、
前記故障判定部は、前記エンジンが駆動していて、かつ前記負圧生成要求を送信している状態で、前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記負圧値が前記固着故障判定閾値以下であれば、前記固着故障確定と判定し、前記負圧値が前記固着故障判定閾値より大きく前記停止閾値より小さければ、前記固着故障疑いと判定する、
ことを特徴とする請求項1記載のブレーキ負圧センサの固着故障判定装置。
【請求項3】
前記固着故障判定閾値は、前記エンジンの駆動状況にかかわらず、前記負圧値が前記停止閾値より大きい値になるまで回復可能な値である、
ことを特徴とする請求項2記載のブレーキ負圧センサの固着故障判定装置。
【請求項4】
前記故障判定部は、前記エンジンが駆動していない状態で、前記ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記固着故障確定と判定する、
ことを特徴とする請求項1記載のブレーキ負圧センサの固着故障判定装置。
【請求項5】
前記故障判定部は、前記エンジンが駆動していて、かつ前記負圧生成要求を送信していない状態で、ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記固着故障疑いと判定する、
ことを特徴とする請求項1記載のブレーキ負圧センサの固着故障判定装置。
【請求項6】
前記負圧生成要求部は、前記ブレーキ負圧センサが前記固着故障確定であると判定された場合には、常時、前記エンジンに前記負圧生成要求を送信し、前記ブレーキ負圧センサが前記固着故障疑いであると判定された場合には、予め定めた所定時間、前記エンジンに前記負圧生成要求を送信する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載のブレーキ負圧センサの固着故障判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ負圧センサの固着故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された制動装置(ブレーキシステム)は、ブレーキブースタ(倍力装置)によってブレーキペダルの踏力が助勢されている。エンジン車やハイブリッド車のようにエンジン搭載車に設けられたブレーキブースタは、エンジンの吸気時の負圧(吸気負圧)を利用して、ブレーキペダルの踏力を助勢している(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、ブレーキブースタは、ピストンに設けられた仕切り部材により2つの室に仕切られ、ブレーキペダル側の室が変圧室、マスターシリンダ側の室が負圧室となっている。ブレーキペダルが操作されていない状態では、変圧室と負圧室とは互いに連通状態にあり、変圧室の圧力と負圧室の負圧とが同じになっている。そして、ブレーキペダルが踏み込まれ、ピストンが前進させられると、変圧室が負圧室から遮断されて大気に連通する。そうすると、変圧室の圧力が大気圧に近くなって、変圧室と負圧室とに圧力差が生じる。この圧力差によりピストンが負圧室側に引かれブレーキペダルの踏力が助勢される。
【0004】
しかし、エンジン搭載車では、燃費向上を図るために停車中や走行中において可能な限りエンジンを停止させることが好ましい。例えば、アイドリングストップによりエンジンが停止した場合、ブレーキブースタの負圧室にエンジン駆動による吸気負圧が供給されなくなり、負圧室の負圧は次第に小さくなり大気圧に近づいてしまう。これにより、ブレーキブースタは、ブレーキペダルの踏力を助勢する力が弱くなってしまう。
【0005】
そこで、例えば特許文献1に開示された制動装置では、ブレーキブースタの負圧室の負圧値が所定の基準値よりも小さくなった場合、停止中のエンジンを強制的に駆動させる。これにより、負圧室にエンジンの吸気負圧が供給され、ブレーキペダルの踏力が適正に助勢される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブレーキブースタの負圧室の負圧値は、例えばブレーキ負圧センサによって検出するが、このブレーキ負圧センサが固着故障などにより正しい負圧値を検出できないと、負圧室の負圧値に応じてエンジンを駆動させることが困難になってしまう。そこで、従来、ブレーキ負圧センサにより検出された負圧値に基づいて、ブレーキ負圧センサが固着故障しているか否かを判定している。
【0008】
しかしながら、例えば、エンジンを駆動させるとともに、ブレーキ操作により負圧が消費されると、エンジンの駆動により負圧を発生させても、負圧室の負圧が回復しないことがあった。また、エンジンを駆動させていても、暖機運転中などの所定の条件下では、負圧室の負圧が回復しないことがあった。このような場合、ブレーキ負圧センサが負圧値を正しく検出できる状態であっても、固着故障していると判定されてしまうことがあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ブレーキ負圧センサの固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサが固着故障している可能性を有する固着故障疑いを判定するブレーキ負圧センサの固着故障判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため本発明の一実施の形態は、エンジンの駆動により生成された負圧をブレーキブースタに供給可能な車両において、前記ブレーキブースタの負圧値を検出するブレーキ負圧センサの固着故障を判定するブレーキ負圧センサの固着故障判定装置であって、前記エンジンが駆動しているか否かを判断するエンジン駆動判断部と、前記負圧値に応じて、前記エンジンに負圧の生成を要求する負圧生成要求を送信する負圧生成要求部と、前記負圧生成要求の送信の有無とブレーキ操作の回数とを含む所定の条件下における前記負圧値の変化の有無を判断する負圧値変化判断部と、前記エンジン駆動判断部による前記エンジンの駆動の有無と、前記負圧値変化判断部による前記負圧値の変化の有無とに基づいて、前記ブレーキ負圧センサの固着故障を判定する故障判定部と、を備え、前記故障判定部は、前記エンジンが駆動していない状態で、前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記ブレーキ負圧センサが固着故障確定と判定し、前記エンジンが駆動している状態で、前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記ブレーキ負圧センサが固着故障している可能性を有する固着故障疑いと判定すること特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記負圧生成要求部は、前記負圧値が所定の開始閾値以下となった場合に、前記負圧生成要求を送信し、前記負圧値が前記開始閾値より大きい所定の停止閾値以上となった場合に、前記負圧生成要求の送信を停止し、前記開始閾値と前記停止閾値との間に固着故障判定閾値が設定され、前記故障判定部は、前記エンジンが駆動していて、かつ前記負圧生成要求を送信している状態で、前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記負圧値が前記固着故障判定閾値以下であれば、前記固着故障確定と判定し、前記負圧値が前記固着故障判定閾値より大きく前記停止閾値より小さければ、前記固着故障疑いと判定することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記固着故障判定閾値は、前記エンジンの駆動状況にかかわらず、前記負圧値が前記停止閾値より大きい値になるまで回復可能な値であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記故障判定部は、前記エンジンが駆動していない状態で、前記ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記固着故障確定と判定することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記故障判定部は、前記エンジンが駆動していて、かつ前記負圧生成要求を送信していない状態で、ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された前記負圧値の変化がないと判断された場合に、前記固着故障疑いと判定することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記負圧生成要求部は、前記ブレーキ負圧センサが前記固着故障確定であると判定された場合には、常時、前記エンジンに前記負圧生成要求を送信し、前記ブレーキ負圧センサが前記固着故障疑いであると判定された場合には、予め定めた所定時間、前記エンジンに前記負圧生成要求を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施の形態によれば、故障判定部が、エンジンが駆動していない状態で、負圧値の変化がないと判断された場合に、ブレーキ負圧センサが固着故障確定と判定し、エンジンが駆動している状態で、負圧値の変化がないと判断された場合に、ブレーキ負圧センサが固着故障している可能性を有する固着故障疑いと判定するため、ブレーキ負圧センサの固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサが固着故障している可能性を有する固着故障疑いを判定できる。これにより、正常なブレーキ負圧センサを固着故障していると判定してしまうことを回避できる。
また、故障判定部が、エンジンが駆動していて、かつ負圧生成要求を送信している状態で、負圧値の変化がないと判断された場合に、負圧値が固着故障判定閾値以下であれば、固着故障確定と判定し、負圧値が固着故障判定閾値より大きく停止閾値より小さければ、固着故障疑いと判定する構成とすれば、ブレーキ負圧センサの固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサが固着故障確定であるか固着故障疑いであるかを判定できる。
また、固着故障判定閾値は、エンジンの駆動状況にかかわらず、負圧値が停止閾値より大きい値になるまで回復可能な値とすれば、ブレーキ負圧センサの負圧が回復不可能である場合に固着故障疑いと判定してしまうことを回避することができる。
また、故障判定部が、エンジンが駆動していない状態で、ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された負圧値の変化がないと判断された場合に、固着故障確定と判定する構成とすれば、ブレーキ負圧センサの固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサが固着故障確定であるかを判定できる。
また、故障判定部が、エンジンが駆動していて、かつ負圧生成要求を送信していない状態で、ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された負圧値の変化がないと判断された場合に、固着故障疑いと判定する構成とすれば、ブレーキ負圧センサの固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサが固着故障疑いであるかを判定できる。
また、負圧生成要求部が、ブレーキ負圧センサが固着故障確定であると判定された場合には、常時、エンジンに負圧生成要求を送信し、ブレーキ負圧センサが固着故障疑いであると判定された場合には、予め定めた所定時間、エンジンに負圧生成要求を送信する構成とすれば、固着故障確定または固着故障疑いと判定された場合に、それぞれの判定結果に合わせた負圧生成要求を送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態の車両の構成を示す説明図である。
【
図2】実施の形態の車両に搭載されたブレーキシステムの構成を示す図である。
【
図3】実施の形態のブレーキ負圧センサの固着故障判定装置の機能構成図である。
【
図4】エンジンが駆動していて、かつ負圧生成要求を送信している状態でのブレーキ負圧センサの固着故障判定方法の説明図である。
【
図5】エンジンが駆動していない状態でのブレーキ負圧センサの固着故障判定方法の説明図である。
【
図6】エンジンが駆動していて、かつ負圧生成要求を送信していない状態でのブレーキ負圧センサの固着故障判定方法の説明図である。
【
図7】ブレーキ負圧センサの固着故障判定方法における条件と結果をまとめた図である。
【
図8】本実施の形態のブレーキ負圧センサの固着故障判定方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態にかかるブレーキ負圧センサの固着故障判定装置について、図面を参照して説明する。まず、ブレーキシステム60を搭載した車両10の構成について説明する。
図1は、本実施の形態の車両10の構成を示す説明図である。本実施の形態では、車両10は、エンジンおよびモータが搭載されたハイブリッド車を例として説明するが、少なくともエンジンが搭載されていればよくエンジンのみが搭載されたエンジン車でもよい。
図1に示すように、車両10は、走行システム20と、発電システム30と、ECU100とを備えている。
【0014】
走行システム20は、車両10の駆動機構であり、前輪21および後輪22と、モータ23と、インバータ24と、エンジン25と、燃料タンク40と、バッテリ50とを備えている。
【0015】
前輪21および後輪22は、それぞれ車幅方向で対となった2つの車輪で構成されている。本実施の形態では、前輪21がモータ23およびエンジン25の駆動輪となっている。
【0016】
モータ23は、バッテリ50に蓄積された電力を用いて駆動し、出力軸23Aから回転力(トルク)を出力する。モータ23の出力軸23Aから出力された回転力は、伝達機構(不図示)を介して前輪21に伝達される。なお、モータ23は、車両10の減速時の回生力を用いて回生発電することも可能である。回生発電により発生した電力はインバータ24を介してバッテリ50に供給され、バッテリ50を充電する。
【0017】
インバータ24は、バッテリ50から供給される電力を、要求出力値に合わせて調整してモータ23に供給する。要求出力値とは、一例として、アクセルペダル(不図示)の踏力、ブレーキペダル62(
図2参照)の踏力から後述するECU100が算出する。ECU100は、算出した運転者からの要求出力値に基づいてインバータ24を制御する。
【0018】
エンジン25は、燃料タンク40から供給される燃料を燃焼室内で燃焼することによって駆動する。エンジン25は、一例として、ガソリンを燃料とするレシプロエンジンである。エンジン25の出力軸25Aに出力された回転力は、伝達機構(不図示)を介して前輪21に伝達される。エンジン25の駆動は、後述するECU100によって制御される。
【0019】
燃料タンク40は、エンジン25の動力源である燃料(例えばガソリン)を蓄積する。バッテリ50は、モータ23の動力源である電力を蓄積する。バッテリ50にはBMU(Battery Monitoring Unit)50Aが接続されている。BMU50Aは、バッテリ50の電圧や温度、入出力される電流等を検出し、充電率(SOC:State Of Charge)を含むバッテリ50の状態を検出する。BMU50Aは、バッテリ50の状態(少なくとも充電率)をECU100に送信する。
【0020】
発電システム30は、バッテリ50を充電するための機構であり、エンジン25と、発電機31と、インバータ24とを備えている。
【0021】
発電機31の回転軸31Aには、伝達機構(不図示)によってエンジン25の出力軸25Aの回転が伝達される。発電機31は、ECU100の制御によって発電可能な状態になると、エンジン25の出力軸25Aの回転を受けて回転軸31Aが回転し、発電する。発電機31は、インバータ24に接続されており、発電機31が発電した交流電力はインバータ24によって直流電力に変換されてバッテリ50に充電される。なお、上述のように、モータ23の回生発電によって発生した電力によっても、バッテリ50を充電することが可能である。
【0022】
また、発電機31は、エンジン25を始動する際のスタータとしても機能する。ECU100は、エンジン25を始動するときは、インバータ24を制御して発電機31を駆動する。発電機31が駆動することによって回転軸31Aが回転する。回転軸31Aは伝達機構(不図示)を介してエンジン25の出力軸25Aに連結されているので、発電機31が駆動されて回転軸31Aが回転すると、エンジン25の出力軸25Aを回転することができる。
【0023】
ECU100は、車両10全体を制御する制御部である。ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムなどを格納・記憶するROM(Read Only
Memory)、制御プログラムの作動領域としてのRAM(Random Access Memory)、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
【0024】
次に、車両10のブレーキシステム60について説明する。
図2は、ブレーキシステム60の構成を示す説明図である。
図2に示すように、ブレーキシステム60は、ブレーキペダル62と、ブレーキブースタ64と、マスターシリンダ66と、ディスクブレーキ68とを備えている。本実施の形態の車両10は、エンジン25の駆動により生成された負圧をブレーキブースタ64に供給可能となっている。
【0025】
ブレーキペダル62は、運転席の足元に設置され、運転者によるブレーキ操作を受け付ける。運転者によってブレーキペダル62が踏み込まれると、その踏み込み力(踏力)によってマスターシリンダ66内のピストンが駆動され、マスターシリンダ66内に充填されたブレーキ液が押し出される。押し出されたブレーキ液は、油圧配管LBを伝って各車輪21、22のディスクブレーキ68へと伝送される。
【0026】
ディスクブレーキ68は、前輪21および後輪22それぞれに設けられており、図示しないディスクローターおよびブレーキキャリパーを備えている。油圧配管LBを伝ってディスクブレーキ68へと伝送されたブレーキ液は、その圧力をブレーキキャリパーに伝える。ブレーキキャリパーには、ブレーキパッドおよびピストンが設けられている。ブレーキキャリパーでは、ブレーキ液に伝えられた圧力の作用によってピストンが駆動され、ブレーキパッドをディスクローターへと押し付ける。そして、ディスクローターとブレーキパッドとの間の摩擦によって、前輪21および後輪22の運動エネルギーが熱エネルギーとして空気中に放出され、前輪21および後輪22の回転が停止し、車両10が停止する。
【0027】
ブレーキブースタ64は、ブレーキペダル62の踏力がマスターシリンダ66に伝達される際に、エンジン25の吸気時の負圧を利用して、ブレーキペダル62の踏力を助勢する。これによって、ブレーキシステム60は、車両10の制動に必要な圧力を得る。
【0028】
具体的には、ブレーキブースタ64は、ブレーキペダル62に連結され、仕切り部材(不図示)を保持するピストン(不図示)が設けられている。ブレーキブースタ64は、ピストンの仕切り部材により内部が2つの室に仕切られ、ブレーキペダル側の室が変圧室70と、マスターシリンダ66側の室が負圧室72とが設けられている。そして、負圧室72は、エンジン25の吸気系に接続されている。
【0029】
ブレーキペダル62が踏み込まれてない状態では、変圧室70と負圧室72とは互いに連通しており、変圧室70の圧力と負圧室72の負圧とは同じになっている。すなわち、変圧室70と負圧室72は、エンジン25の吸気負圧となっており、大気圧より真空側の圧力になっている。
【0030】
ブレーキペダル62が踏み込まれ、ピストンが前進させられると、変圧室70が負圧室72から遮断されて大気に連通される。そうすると、変圧室70の圧力が大気圧に近くなり、変圧室70とエンジン25の吸気負圧である負圧室72とに圧力差が生じる。この圧力差によりピストンが負圧室72に引き込まれブレーキペダル62の踏力が助勢される。そして、ブレーキペダル62への踏み込みが解除されると、変圧室70が大気から遮断されて負圧室72に再び連通するため、負圧室72の負圧が大気圧に近くなる。
【0031】
ブレーキブースタ64の負圧室72には、負圧室72の負圧値を検出するブレーキ負圧センサ74が設けられている。ブレーキ負圧センサ74により検出された負圧値が小さいほど、負圧室72がより大気圧に近く、負圧が不足している状態であることを示している。一方、検出された負圧値が大きいほど、負圧室72がより真空に近く、負圧が充足している状態であることを示している。ブレーキ負圧センサ74は、検出した負圧室72の負圧値(検出値)をECU100に送信する。
【0032】
次に、本実施の形態のブレーキ負圧センサの固着故障判定装置の機能構成について説明する。ブレーキ負圧センサの固着故障判定装置は、車両10に搭載されたブレーキブースタ64の負圧値を検出するブレーキ負圧センサ74の固着故障を判定するものである。
図3に示すように、ブレーキ負圧センサの固着故障判定装置は、ブレーキ負圧センサ74と、エンジン25と、エンジンセンサ26と、ECU100とを備える。ECU100は、さらに、駆動制御部102、制動制御部104、エンジン駆動判断部106、負圧生成要求部108、負圧値変化判断部110、故障判定部112を備えている。
【0033】
駆動制御部102は、アクセルペダルセンサ(不図示)により検出したアクセル開度に基づいて要求出力値を算出する。そして、駆動制御部102は、算出した要求出力値に基づいてインバータ24に供給する電力を制御したり、エンジン25の点火機構や燃料系統などを制御してモータ23およびエンジン25の駆動を制御する。また、駆動制御部102は、負圧生成要求部108によりエンジン25に負圧生成要求が送信された場合、エンジン25を駆動する。
【0034】
制動制御部104は、ブレーキペダルセンサ(不図示)により検出したブレーキ操作量に基づいてブレーキシステム60の制動を制御する。また、制動制御部104は、所定条件下でブレーキ負圧センサ74の固着故障判定を行う場合に、予め定めた回数のブレーキ操作の制御を行う。
【0035】
エンジン駆動判断部106は、エンジンセンサ26の検出値により、エンジン25が駆動しているか否かを判断する。エンジンセンサ26は、エンジン25に設けられ、エンジン25の回転数を検出する。
【0036】
負圧生成要求部108は、ブレーキブースタ64の負圧値に応じて、エンジン25に負圧の生成を要求する負圧生成要求を送信する。エンジン25に負圧生成要求が送信されると、エンジン25が駆動を開始し吸気時の負圧をブレーキブースタ64の負圧室72に供給する。
【0037】
ここで、負圧生成要求の送信について説明する。運転者によりブレーキペダル62が踏み込まれてブレーキ操作が行われると車両10が停止するが、このときブレーキブースタ64の負圧は消費され負圧室72の負圧値が小さくなっていく。一方、エンジン25が駆動すると吸気時の負圧がブレーキブースタ64に供給され、ブレーキブースタ64の負圧は回復し負圧室72の負圧値が大きくなっていく。
【0038】
このように、ブレーキブースタ64の負圧は消費されたり回復したりする。そのため、負圧が消費されていった場合に負圧生成要求の送信を開始するか否かを判断する「開始閾値」と、負圧が回復されていった場合に負圧生成要求の送信を停止するか否かを判断する「停止閾値」とが設定されている。停止閾値は、開始閾値より大きい。
【0039】
したがって、負圧生成要求部108は、ブレーキ操作を行うことにより負圧が消費されていき、ブレーキブースタ64の負圧値が開始閾値以下となった場合に、エンジン25に負圧生成要求を送信しエンジン25の駆動を開始させる。そして、負圧生成要求部108は、エンジン25の駆動によりブレーキブースタ64の負圧値が停止閾値以上になった場合に、エンジン25への負圧生成要求の送信を停止する。なお、開始閾値および停止閾値は、車両10の速度(車速)に基づいて定められている。
【0040】
また、開始閾値と停止閾値との間には、固着故障判定閾値(
図4(B)のT2参照)が設定されている。すなわち、固着故障判定閾値は、開始閾値より大きく停止閾値より小さい値である。固着故障判定閾値は、エンジン25の駆動状況にかかわらず、ブレーキブースタ64の負圧値が停止閾値より大きい値になるまで回復可能な値である。固着故障判定閾値は、後述する故障判定部112の判定時に用いる。
【0041】
また、負圧生成要求部108は、故障判定部112によりブレーキ負圧センサ74が固着故障確定であると判定された場合には、常時、エンジン25に負圧生成要求を送信する。また、負圧生成要求部108は、ブレーキ負圧センサ74が固着故障疑いであると判定された場合には、予め定めた所定時間、エンジン25に負圧生成要求を送信する。所定時間は、例えば、ブレーキ操作を3回行って固着故障疑いと判定された場合は、ブレーキ操作3回分に要する負圧が回復できる時間を設定する。
【0042】
負圧値変化判断部110は、負圧生成要求の送信の有無とブレーキ操作の回数とを含む所定の条件下における負圧値の変化の有無を判断する。具体的には、負圧値変化判断部110は、エンジン25が駆動していない場合、およびエンジン25が駆動していて負圧生成要求が送信されていない場合には、ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された負圧値の変化を判断する。また、負圧値変化判断部110は、エンジン25が駆動していて負圧生成要求が送信されている状態では、ブレーキ操作にかかわらず、負圧値の変化を判断する。
【0043】
故障判定部112は、エンジン駆動判断部106によるエンジン25の駆動の有無と、負圧値変化判断部110による負圧値の変化の有無とに基づいて、ブレーキ負圧センサ74の固着故障を判定する。故障判定部112は、エンジン25が駆動していない状態で、負圧値の変化がないと判断された場合に、ブレーキ負圧センサ74が固着故障確定と判定し、エンジン25が駆動している状態で、負圧値の変化がないと判断された場合に、ブレーキ負圧センサ74が固着故障している可能性を有する固着故障疑いと判定する。
【0044】
故障判定部112による判定結果とは、以下のような状態がある。
1)ブレーキ負圧センサ74が固着していない状態
2)ブレーキ負圧センサ74が固着している固着故障確定となっている状態
3)ブレーキ負圧センサ74が固着している可能性を有する固着故障疑いとなっている状態
【0045】
上記の1)の場合は、ブレーキ負圧センサ74が故障しておらず、負圧室72の正確な負圧値が検出できる。また、2)の場合は、ブレーキ負圧センサ74が固着により故障しており、負圧室72の正確な負圧値が検出できない、すなわち誤った負圧値が検出されてしまう。そして、3)の場合は、ブレーキ負圧センサ74が固着により故障している可能性があり、負圧室72の正確な負圧値が検出できない可能性がある、すなわち検出された負圧値が正確であるか不正確であるかが不明となっている。
【0046】
以下では、故障判定部112による具体的なブレーキ負圧センサの固着故障判定方法について説明する。まず、
図4を参照して、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求が送信されている場合のブレーキ負圧センサの固着故障判定方法について説明する。
図4では、横軸が時間を示しており、右に向かうにつれて時間が経過している。縦軸は負圧値を示しており、上に向かうほど負圧値が小さくなり、下に向かうほど負圧値が大きくなっている。したがって、
図4では、負圧値が上に向かうほどブレーキブースタ64は大気圧に近く、下に向かうほどブレーキブースタ64は真空に近くなっている。そして、
図4(A)(B)には、上述した停止閾値T1が設けられている。また、
図4(B)には、さらに、開始閾値(不図示)より大きく停止閾値T1より小さい値である固着故障判定閾値T2が設けられている。
【0047】
故障判定部112は、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信している状態で、負圧値変化判断部110によりブレーキブースタ64の負圧値の変化がないと判断された場合に、負圧値が固着故障判定閾値T2以下であれば、固着故障確定と判定し、負圧値が固着故障判定閾値T2より大きく停止閾値T1より小さければ、固着故障疑いと判定する。
【0048】
すなわち、エンジン25が駆動していて、負圧生成要求を送信している場合、エンジン25の駆動により生成された負圧がブレーキブースタ64に供給されるため、本来、ブレーキブースタ64の負圧は回復していく。負圧生成要求の送信中は、負圧値が刻々と変化していく。
図4では、時間の経過とともに、負圧値が反比例するように小さい値から大きい値へ変化している。
【0049】
図4(A)では、負圧値が停止閾値T1のすぐ上側、すなわち停止閾値T1より少し小さい値で留まってしまっている。従来であれば、エンジン25が駆動しているにもかかわらず、このようにブレーキブースタ64の負圧値が停止閾値T1より小さい値で留まってしまった場合(検出された負圧値<停止閾値T1)、ブレーキ負圧センサ74が固着等により故障していると判定されていた。
【0050】
しかしながら、エンジン25が駆動している場合であっても、エンジン25が暖機運転中などの特定の条件下では、エンジン25からの負圧の供給が少ない、もしくはないため、ブレーキブースタ64の負圧の回復が止まり、停止閾値T1のすぐ上側で留まってしまうことがある。つまり、負圧値が停止閾値T1より小さくても、ブレーキ負圧センサ74は固着しておらず故障していない場合がある。
【0051】
このような場合を考慮して、本実施の形態では、
図4(B)に示すように、停止閾値T1より小さい値の固着故障判定閾値T2を設けている。この固着故障判定閾値T2は、上述したように、エンジン25の駆動状況にかかわらず、ブレーキブースタ64の負圧値が停止閾値T1より大きい値になるまで回復可能な値である。
【0052】
したがって、本実施の形態では、
図4(B)に示すように、故障判定部112は、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信している場合に、検出された負圧値が固着故障判定閾値T2以下の値であればブレーキ負圧センサ74が固着故障確定であると判定する。また、故障判定部112は、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信している場合に、検出された負圧値が、固着故障判定閾値T2より大きく停止閾値T1より小さい値であれば、ブレーキ負圧センサ74の固着故障かエンジン25の暖機運転中などによるものか判定できないため、ブレーキ負圧センサ74が固着故障疑いであると判定する。また、故障判定部112は、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信している場合に、検出された負圧値が、停止閾値T1以上の値であれば、ブレーキ負圧センサ74が固着していないと判定する。
【0053】
次に、
図5を参照して、エンジン25が駆動していない場合のブレーキ負圧センサの固着故障判定方法について説明する。
図5(A)では、横軸は時間を示しており、右に向かうにつれて時間が経過している。縦軸はブレーキ液圧を示しており、0.3MPaがブレーキペダル62の踏み始めの値、2.0MPaがブレーキペダル62の踏み終わりの値を示している。なお、
図5(A)に示すブレーキ液圧の値は一例である。
図5(B)では、横軸は時間を示している。縦軸は負圧値を示しており、上に向かうほど負圧値が小さくなり、下に向かうほど負圧値が大きくなっている。したがって、
図5でも、負圧値が上に向かうほどブレーキブースタ64は大気圧に近く、下に向かうほどブレーキブースタ64は真空に近くなっている。
【0054】
故障判定部112は、エンジン25が駆動していない状態で、負圧値変化判断部110によりブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された負圧値の変化がないと判断された場合に、固着故障確定と判定する。すなわち、エンジン25が駆動していない場合は、ブレーキ操作を行うことのみでブレーキブースタ64の負圧値が変化するため、ブレーキ操作を行っている間に検出された負圧値に基づいて、固着故障確定であるか否かを判定する。
【0055】
また、ブレーキペダル62の踏み込み量によって、1回のブレーキ操作では負圧タンク(不図示)からの供給で間に合い、ブレーキブースタ64の負圧値が変動しないことがある。このため、ブレーキ操作を複数回(N回)、例えば3回行っている間に検出された負圧値に基づいて、固着故障確定であるか否かを判定する。なお、エンジン25が駆動していない場合は、ブレーキブースタ64の負圧値が回復することはないため、固着故障疑いと判定されることはない。
【0056】
したがって、
図5に示すように、本実施の形態では、故障判定部112は、エンジン25が駆動していない場合に、ブレーキ操作を所定回数、例えば3回(
図5(A)のN1、N2、N3)行っている間にブレーキ負圧センサ74により検出された負圧値が変化しなければ(
図5(B)参照)、ブレーキ負圧センサ74が固着故障確定であると判定する。一方、故障判定部112は、エンジン25が駆動していない場合に、ブレーキ操作を所定回数、例えば3回行っている間にブレーキ負圧センサ74により検出された負圧値が変化したならば、ブレーキ負圧センサ74は固着していないと判定する。
【0057】
次に、
図6を参照して、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信していない場合のブレーキ負圧センサの固着故障判定方法について説明する。
図6(A)では、横軸は時間を示しており、右に向かうにつれて時間が経過している。縦軸はブレーキ液圧を示しており、0.3MPaがブレーキペダル62の踏み始めの値、2.0MPaがブレーキペダル62の踏み終わりの値を示している。なお、
図6(A)に示すブレーキ液圧の値は一例である。
図6(B)では、横軸は時間を示している。縦軸はエンジン駆動を示しており、駆動しているか駆動していないかのいずれかとなっている。
【0058】
図6(C)では、横軸は時間を示している。縦軸は負圧値を示しており、上に向かうほど負圧値が小さくなり、下に向かうほど負圧値が大きくなっている。したがって、
図6では、負圧値が上に向かうほどブレーキブースタ64は大気圧に近く、下に向かうほどブレーキブースタ64は真空に近くなっている。また、
図6(C)では、点線P1が実際の負圧値(実負圧値)であり、実線P2がブレーキ負圧センサ74により検出された負圧値を示している。
【0059】
また、
図6の区間S1では、エンジン25が駆動されておらず(
図6(B))、ブレーキ操作を行うことにより(
図6(A))、ブレーキブースタ64の負圧が消費されている状態(
図6(C)点線P1)を示している。また、
図6の区間S2では、エンジン25が駆動されており(
図6(B))、ブレーキブースタ64の負圧が回復している状態(
図6(C)点線P1)を示している。
【0060】
故障判定部112は、エンジン25が駆動し、かつ負圧生成要求を送信していない状態で、負圧値変化判断部110によりブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された負圧値の変化がないと判断された場合に、固着故障疑いと判定する。
【0061】
なお、負圧生成要求が送信されていなくても、車両10の走行状態によりエンジン25が駆動する場合がある。また、エンジン25が駆動して負圧を発生させても、ブレーキ操作が行われるとブレーキブースタ64の負圧は消費されるため、ブレーキブースタ64の負圧が回復しない場合もある。
【0062】
また、ブレーキペダル62の踏み込み量によっては、1回のブレーキ操作では負圧タンク(不図示)からの供給で間に合い、ブレーキブースタ64の負圧値が変動しないことがある。このため、ブレーキ操作を複数回(N回)、例えば3回行っている間に検出された負圧値に基づいて固着故障疑いであるか否かを判定することが好ましい。
【0063】
したがって、
図6に示すように、本実施の形態では、故障判定部112は、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信していない場合に、ブレーキ操作を所定回数、例えば3回(
図6(A)のN1、N2、N3)行っている間にブレーキ負圧センサ74により検出された負圧値が変化しなければ(
図6(C)の実線P2参照)、ブレーキ負圧センサ74が固着故障疑いであると判定する。一方、故障判定部112は、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信していない場合に、ブレーキ操作を所定回数、例えば3回行っている間にブレーキ負圧センサ74により検出された負圧値が変化したならば(
図6(C)の点線P1参照)、ブレーキ負圧センサ74は固着していないと判定する。
【0064】
なお、ブレーキ操作を複数回行っている間にエンジン25の駆動があり負圧値が変動しなかったときは、ブレーキ負圧センサ74が固着しているのか、それともブレーキ操作による負圧の消費とエンジン駆動による負圧の回復とが釣り合っているのかが判定できない。そのため、この場合には、ブレーキ負圧センサ74は固着故障疑いであると判定する。
【0065】
以上説明したブレーキ負圧センサの固着故障判定方法における条件と結果をまとめると、
図7に示すようになる。以下は
図7の説明である。
R1)エンジン駆動あり、負圧生成要求あり
固着故障判定閾値≧負圧値・・・・・・・・・・・固着故障確定
停止閾値>負圧値>固着故障判定閾値・・・・・・固着故障疑い
R2)エンジン駆動あり、負圧生成要求なし
ブレーキ操作N回の間に負圧値が変化しない・・・固着故障疑い
R3)エンジン駆動なし、負圧生成要求あり
ブレーキ操作N回の間に負圧値が変化しない・・・固着故障確定
R4)エンジン駆動なし、負圧生成要求なし
ブレーキ操作N回の間に負圧値が変化しない・・・固着故障確定
【0066】
つまり、本実施の形態のブレーキ負圧センサの固着故障判定方法では、エンジン25が駆動していて、負圧生成要求が送信されている場合で、検出された負圧値が固着故障判定閾値より大きく停止閾値より小さい場合は、ブレーキ負圧センサ74は固着故障疑いと判定する。また、エンジン25が駆動していて、負圧生成要求が送信されていない場合で、かつ、ブレーキ操作をN回行っている間に負圧値が変化しない場合は、ブレーキ負圧センサ74は固着故障疑いと判定する。このように、ブレーキ負圧センサ74が固着故障疑いと判定された場合、所定時間だけ負圧生成要求を送信することで、要求された時間分だけエンジン25を駆動させて負圧を生成させるため、燃費の向上を図る上で有利となる。
【0067】
次に、
図8を参照して、本実施の形態のブレーキ負圧センサの固着故障判定方法の流れについて説明する。
図8に示すように、まず、エンジン駆動判断部106が、エンジン25が駆動しているか否かを判断する(ステップS10)。エンジン25が駆動している場合(ステップS10:YES)、負圧生成要求部108は、エンジン25に負圧生成要求が送信されているか否かを判断する(ステップS12)。
【0068】
エンジン25に負圧生成要求が送信されていない場合(ステップS12:NO(
図7R2参照))、制動制御部104は、ブレーキ操作をN回(例えば3回)行い(ステップS14)、負圧値変化判断部110は、ブレーキ操作をN回行っている間に検出された負圧値に変化があるか否かを判断する(ステップS16)。負圧値に変化がなかった場合(ステップS16:NO)、故障判定部112は、ブレーキ負圧センサ74が固着故障疑いであると判定する(ステップS18)。
【0069】
ブレーキ負圧センサ74が固着故障疑いであると判定されると、負圧生成要求部108は、エンジン25に所定時間、負圧生成要求を送信し(ステップS20)、ステップS10に戻る。一方、ステップS16において、負圧値に変化があった場合(ステップS16:YES)、故障判定部112は、ブレーキ負圧センサ74は固着してないと判定し、ステップS10に戻る。
【0070】
ステップS12において、エンジン25に負圧生成要求が送信されている場合(ステップS12:YES(
図7R1参照))、負圧値変化判断部110は、負圧値に変化があるか否かを判断する(ステップS22)。負圧値に変化があった場合(ステップS22:YES)、故障判定部112は、ブレーキ負圧センサ74は固着していないと判定し、ステップS10に戻る。
【0071】
一方、負圧値に変化がなかった場合(ステップS22:NO)、故障判定部112は、検出された負圧値が固着故障判定閾値T2より大きいか否かを判定する(ステップS24)。検出された負圧値が固着故障判定閾値T2より大きくない場合、すなわち固着故障判定閾値T2以下である場合(ステップS24:NO)、ステップS32に進む。
【0072】
一方、検出された負圧値が固着故障判定閾値T2より大きい場合(ステップS24:YES)、故障判定部112は、検出された負圧値が停止閾値T1より小さいか否かを判断する(ステップS26)。検出された負圧値が停止閾値T1より小さい場合(ステップS26:YES)、すなわち、負圧値が固着故障判定閾値T2より大きく停止閾値T1より小さい場合、ステップS18へ進む。一方、検出された負圧値が停止閾値T1以上である場合(ステップS26:NO)、ブレーキ負圧センサ74は固着していないと判断し、ステップS10に戻る。
【0073】
ステップS10において、エンジン25が駆動していない場合(ステップS10:NO)、制動制御部104は、ブレーキ操作をN回(例えば3回)行い(ステップS28)、負圧値変化判断部110は、ブレーキ操作をN回行っている間に検出された負圧値に変化があるか否かを判断する(ステップS30)。負圧値に変化がなかった場合(ステップS30:NO)、故障判定部112は、ブレーキ負圧センサ74が固着故障確定であると判定する(ステップS32)。
【0074】
ブレーキ負圧センサ74が固着故障確定であると判定されると、負圧生成要求部108は、エンジン25に常時、負圧生成要求を送信し(ステップS34)、ステップS10に戻る。一方、ステップS30において、負圧値に変化があった場合(ステップS30:YES)、故障判定部112は、ブレーキ負圧センサ74は固着していないと判断し、ステップS10に戻る。
【0075】
このように、本実施の形態のブレーキ負圧センサの固着故障判定装置では、故障判定部112が、エンジン25が駆動していない状態で、負圧値の変化がないと判断された場合に、ブレーキ負圧センサ74が固着故障確定と判定する。一方、エンジン25が駆動している状態で、負圧値の変化がないと判断された場合に、ブレーキ負圧センサ74が固着故障している可能性を有する固着故障疑いと判定する。そのため、ブレーキ負圧センサ74の固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサ74が固着故障している可能性を有する固着故障疑いを判定できる。これにより、正常なブレーキ負圧センサ74を固着故障していると判定してしまうことを回避できる。
また、故障判定部112が、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信している状態で、負圧値の変化がないと判断された場合に、負圧値が固着故障判定閾値T2以下であれば、固着故障確定と判定し、負圧値が固着故障判定閾値T2より大きく停止閾値T1より小さければ、固着故障疑いと判定する構成とする。そのため、ブレーキ負圧センサ74の固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサ74が固着故障確定であるか固着故障疑いであるかを判定できる。
また、固着故障判定閾値T2は、エンジン25の駆動状況にかかわらず、負圧値が停止閾値T1より大きい値になるまで回復可能な値としたため、ブレーキ負圧センサ74の負圧が回復不可能である場合に固着故障疑いと判定してしまうことを回避することができる。
また、故障判定部112が、エンジン25が駆動していない状態で、ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された負圧値の変化がないと判断された場合に、固着故障確定と判定する構成とする。そのため、ブレーキ負圧センサ74の固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサ74が固着故障確定であるかを判定できる。
また、故障判定部112が、エンジン25が駆動していて、かつ負圧生成要求を送信していない状態で、ブレーキ操作を所定回数行っている間に検出された負圧値の変化がないと判断された場合に、固着故障疑いと判定する構成とする。そのため、ブレーキ負圧センサ74の固着故障を判定する際、ブレーキ負圧センサ74が固着故障疑いであるかを判定できる。
また、負圧生成要求部108が、ブレーキ負圧センサ74が固着故障確定であると判定された場合には、常時、エンジン25に負圧生成要求を送信し、ブレーキ負圧センサ74が固着故障疑いであると判定された場合には、予め定めた所定時間、エンジン25に負圧生成要求を送信する構成とする。そのため、固着故障確定または固着故障疑いと判定された場合に、それぞれの判定結果に合わせた負圧生成要求を送信することができる。
【0076】
以上、各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0077】
なお、本出願は、2023年3月28日出願の日本特許出願(特願2023-51724)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0078】
10 車両
20 走行システム
21 前輪
22 後輪
23 モータ
24 インバータ
25 エンジン
26 エンジンセンサ
30 発電システム
31 発電機
40 燃料タンク
50 バッテリ
60 ブレーキシステム
62 ブレーキペダル
64 ブレーキブースタ
66 マスターシリンダ
68 ディスクブレーキ
70 変圧室
72 負圧室
74 ブレーキ負圧センサ
100 ECU
102 駆動制御部
104 制動制御部
106 エンジン駆動判断部
108 負圧生成要求部
110 負圧値変化判断部
112 故障判定部