IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -免震装置 図1
  • -免震装置 図2
  • -免震装置 図3
  • -免震装置 図4
  • -免震装置 図5
  • -免震装置 図6
  • -免震装置 図7
  • -免震装置 図8
  • -免震装置 図9
  • -免震装置 図10
  • -免震装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-19
(45)【発行日】2026-01-27
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/023 20060101AFI20260120BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20260120BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20260120BHJP
【FI】
F16F15/023 Z
F16F15/02 E
E04H9/02 331Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022115832
(22)【出願日】2022-07-20
(65)【公開番号】P2024013614
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2025-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100222243
【弁理士】
【氏名又は名称】庄野 友彬
(72)【発明者】
【氏名】小竹 祐治
(72)【発明者】
【氏名】木本 政志
(72)【発明者】
【氏名】奥 友和
【審査官】小原 博樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218857(JP,A)
【文献】特開平10-169710(JP,A)
【文献】特開2015-132371(JP,A)
【文献】特開2020-133152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/023
F16F 15/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
免震対象物が載置されると共に前記固定部上に配置された可動部と、
前記固定部に対する前記可動部の水平方向への移動を許容し、軌道部材及びこれに沿って往復動する移動ブロックを含む支持案内機構と、
前記固定部に対する可動部の運動に対して反力を及ぼすダンパーユニットと、
前記可動部を前記固定部上の初期位置に復帰させる弾性復元部材と、を備え、
前記ダンパーユニットは、
前記固定部に対して配設された第一ダンパーと、
減衰力及び最大可動量が前記第一ダンパーよりも小さく設定されると共に、前記第一ダンパーと前記可動部との間に配設されてこれら第一ダンパーと可動部とを接続する第二ダンパーと、から構成されることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記第一ダンパーは前記可動部の移動量が前記第二ダンパーの最大可動量を超えた状態でのみ作動することを特徴とする請求項1記載の免震装置。
【請求項3】
前記第二ダンパーは、前記支持案内機構の軌道部材と平行に配設された案内軸と、この案内軸に沿って運動する摺動部材と、を含むことを特徴とする請求項1記載の免震装置。
【請求項4】
前記可動部が前記第二ダンパーの案内軸に対する前記摺動部材の可動範囲を超えて移動した際に、前記第一ダンパーが動作することを特徴とする請求項3記載の免震装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微振動から大地震にまで有効に作用する免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密機器や建物を地震動から保護するものとして免震装置が知られている。かかる免震装置は、一般的に、床面や地盤等に設置される固定部と、精密機器や建物等の免震対象物が配置される可動部と、これら固定部と可動部の間に設けられるアイソレータ及びダンパーとを備えている。
【0003】
前記アイソレータは前記固定部から前記可動部に対して震動エネルギが伝達された場合に、前記可動部が固定部と分離して自由に震動することを可能とし、当該可動部の震動を長周期化させて免震対象物の応答加速度を低減させる。また、前記ダンパーは前記可動部に伝達された震動エネルギを吸収し、前記アイソレータによって長周期化した前記可動部の震動を早期に収束させる。
【0004】
このような免震装置では、前記ダンパーの減衰力を例えば震度5強を超えるような大地震の地震動に対応させて高めた場合、当該ダンパーが前記可動部の自由な震動に対して及ぼす抵抗力も高まることから、例えば中小規模の地震に伴う微震動に対しては前記アイソレータが十分に機能せず、震動に対する免震対象物の応答加速度を低減させることが不能となってしまう。一方、微震動に対応してダンパーの減衰力を設定すると、大きな地震動に対しては前記可動部の変位が過大となってしまい、前記可動部と周囲の構造物との干渉が懸念される他、当該可動部の震動を早期に収束させることも困難となる。
【0005】
このような課題に対応するものとして、特許文献1には、弾性すべり支承による免震装置が開示されている。この弾性すべり支承は、積層ゴムによる弾性支承と、すべり支承とを組み合わせたものであり、中小規模の地震等によって前記可動部に微震動が作用した場合には、当該横揺れを前記積層ゴムの変形で逃がすように構成されている。また、巨大地震によって、積層ゴムの所定変形量を超える大きな震動が可動部に作用した場合には、前記積層ゴムと一体に設けられたすべり材が固定部上をスライドし、前記積層ゴムでの対応が困難な大きさの震動に対処するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-281559
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、半導体製造のような精密加工の分野では、大地震に伴う大きな可動量の震動のみならず、中小規模の地震に伴って生じる微震動に対しても免振対象物に生じる応答加速度を十分に低減させて、製品の加工に悪影響が及ぶことを防止する必要がある。
【0008】
しかし、免震装置に採用されている弾性支承やすべり支承は、前記アイソレータとしての機能と前記ダンパーとしての機能を併せ持つ機構であり、アイソレータとしての機能を高度に発揮させながらダンパーとしての機能を制限するのが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、巨大地震に起因する大きな可動量の地震動から中小規模の地震に起因する微震動に至るまでの各種大きさの震動に対して、ダンパーの発揮する減衰力を幅広く最適化することができ、免振対象物に生じる応答加速度を可及的に低減することが可能な免振装置を提供することにある。
【0010】
本発明の免震装置は、固定部と、免震対象物が載置されると共に前記固定部上に配置された可動部と、前記固定部に対する前記可動部の水平方向への移動を許容し、軌道部材及びこれに沿って往復動する移動ブロックを含む支持案内機構と、前記固定部に対する可動部の運動に対して反力を及ぼすダンパーユニットと、前記可動部を前記固定部上の初期位置に復帰させる弾性復元部材と、を備え、前記ダンパーユニットは、前記固定部に対して配設された第一ダンパーと、減衰力及び最大可動量が前記第一ダンパーよりも小さく設定されると共に、前記第一ダンパーと前記可動部との間に配設されてこれら第一ダンパーと可動部とを接続する第二ダンパーと、から構成されている。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明によれば、巨大地震に起因する大きな可動量の地震動から中小規模の地震に起因する微震動に至るまでの各種大きさの震動に対して、ダンパーの発揮する減衰力を幅広く最適化することができ、免振対象物に生じる応答加速度を可及的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用された免震装置の第一実施形態を示す概略平面図である。
図2】支持案内機構として利用可能なリニアガイドの一例を示す斜視図である。
図3】第一ダンパーとして利用可能な粘性減衰ダンパーの一例を示す断面図である。
図4】第二ダンパーとして利用可能なボールスプライン装置を示す斜視図である。
図5】実施形態に示す免震装置の可動部がX+方向へ移動を開始した状態を示す概略平面図である。
図6】実施形態に示す免震装置の可動部が第二ダンパーの最大可動範囲にまでX+方向へ移動した状態を示す概略平面図である。
図7図6に示す状態から可動部が更にX+方向へ移動した状態を示す概略平面図である。
図8図7に示す状態から可動部がX-方向へ移動を開始した状態を示す概略平面図である。
図9図7に示す状態から可動部が更にX-方向へ移動した状態を示す概略平面図である。
図10】本発明が適用された免震装置の第二実施形態を示す斜視図である。
図11】第二実施形態に係る免震装置から可動部及び一方の第二ダンパーを取り除いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を用いながら本発明の免震装置を詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明を適用した免震装置1の第一実施形態を示す概略平面図である。この第一実施形態の免震装置1は、床面や地盤等に設置される固定部2と、精密機器や建物等の免震対象物が配置される可動部3と、前記固定部2に対する前記可動部3の水平方向(図1中の矢線X方向)への運動を案内するアイソレータとしての支持案内機構4と、前記可動部3のX方向の運動に対して反力を及ぼすダンパーユニット5と、前記可動部3を前記固定部2上の初期位置に復帰させる弾性復元部材6と、を備えている。
【0015】
前記固定部2は、例えば前記免震対象物が精密機器や美術品等であれば、建物や荷台の床面に設置される固定テーブルであり、前記免震対象物が建物であれば、地盤に対して設けられた建物基礎である。
【0016】
また、前記可動部3は、例えば前記免震対象物が精密機器や美術品等であれば、前記固定テーブルに対して前記支持案内機構を介して支承された可動テーブルであり、前記免震対象物が建物であれば、建物基礎に対して前記支持案内機構を介して支承された堅牢な可動フレームである。
【0017】
前記支持案内機構4としては、例えば図2に示すようなリニアガイド40を用いることが可能である。このリニアガイド40は、前記固定部2上にX方向に沿って敷設されると共に長手方向に沿ってボールやローラの転走面41aが形成された軌道部材41と、内部に無限循環する転動体列を有して前記軌道部材41に沿って自在に往復動可能な移動ブロック42と、から構成されている。前記可動部3は前記移動ブロック42に固定され、当該移動ブロック42が前記軌道部材41に沿って往復動すると、前記可動部3も移動ブロック42と共に固定部2上をX方向へ移動する。
【0018】
尚、前記支持案内機構4としては、前記固定部2に対して前記可動部3の自由な直線往復運動を確保できるものであれば、図2に示したリニアガイド40に限られるものではない。
【0019】
一方、前記ダンパーユニット5は第一ダンパー50と第二ダンパー51の組み合わせから構成されている。前記第一ダンパー50は前記固定部2上における前記可動部3の可動範囲、すなわち前記支持案内機構による可動部の運動範囲に対応して設けられており、振幅が大きく且つ振動エネルギが大きな大地震等の地震動に対応している。一方、前記第二ダンパー51は前記第一ダンパー50と前記可動部3との間に設けられてこれら第一ダンパー50と可動部3を連結しており、振幅が小さく且つ振動エネルギが小さな中小地震や交通振動、建物の風揺れ等の微震動に対応している。
【0020】
前記第一ダンパー50としては、例えば図3に示すような粘性減衰ダンパー70を使用することが可能である。この粘性減衰ダンパー70は、前記固定部上で前記X方向に軸方向を合致させて設けられると共に外周面に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸71と、前記ねじ軸71が貫通する円筒状に形成されると共に当該ねじ軸71に沿って往復運動するダンパー本体72と、このダンパー本体72の内部に回転自在に保持されたロータ73と、前記ねじ軸71のねじ溝を転動する多数のボールを介して前記ねじ軸71に螺合すると共に前記ロータ73の軸方向端部に固定されたナット部材74と、を備えている。また、前記ダンパー本体72の内周面と前記ロータ73の外周面との間には粘性流体が充填されている。
【0021】
前記ねじ軸71と前記ナット部材74は所謂ボールねじ装置を構成しており、前記ダンパー本体72が前記固定部2上を前記ねじ軸71の軸方向へ移動すると、当該ねじ軸71の周囲で前記ナット部材74が回転し、その回転が前記ロータ73に伝達されるようになっている。すなわち、前記ダンパー本体72が前記ねじ軸71に沿って直線往復運動を行うと、前記ロータが前記ダンパー本体の内部で回転往復運動を行い、当該ロータの回転速度に応じたせん断抵抗力が前記粘性流体からロータに対して作用することになる。
【0022】
前記粘性流体から前記ロータ73に作用するせん断抵抗力は、当該ロータ73の回転往復運動に対する反力となり、ボールねじ装置による変換を経て前記ダンパー本体72のX方向への直線往復運動に対する反力となる。これにより、前記ダンパー本体72をX方向へ移動させるエネルギを減衰することが可能となる。
【0023】
尚、図3に示した粘性減衰ダンパーはあくまでも前記第一ダンパー50として利用可能なダンパーの例示であり、これに限定されるものではない。すなわち、前記第一ダンパー50としては、必要とされる可動範囲や減衰力の大きさに応じて、各種形式のダンパーを選択することができる。
【0024】
一方、前記第二ダンパー51は、前記可動部3に対してX方向に軸方向を合致させて設けられた案内軸81と、前記第一ダンパー50のダンパー本体72に結合されると共に前記案内軸81に沿って運動する摺動部材82とから構成されている。
【0025】
この第一実施形態において、前記第二ダンパーとしては図4に示すボールスプライン装置80を用いている。前記案内軸81の外周面には軸方向に沿って転動体の転走溝81aが設けられており、前記摺動部材82は無限循環する転動体列を介して前記案内軸81に組付けられている。前記転動体が前記案内軸81の転走溝81a上を転がることにより、前記摺動部材82は前記案内軸81に沿って極めて小さな移動抵抗で往復運動することが可能である。その一方、前記案内軸81と前記摺動部材82との間に介在する転動体に付与する予圧の大きさを任意に調整することにより、前記案内軸81に対する前記摺動部材82の移動抵抗は任意に増減させることが可能である。この意味において、前記ボールスプライン装置80は減衰力が極めて小さなダンパーとして機能する。
【0026】
尚、図4に示したボールスプラインはあくまでも前記第二ダンパー51として利用可能な装置の例示であり、これに限定されるものではない。前記第二ダンパー51に要求される可動範囲や必要とされる減衰力の大きさに応じて、各種形式のダンパーを選択することができる。
【0027】
前記案内軸81の両端は一対のサポート部材によって前記可動部3に固定されており、前記第一ダンパー50に結合された前記摺動部材82は一対のサポート部材の間でのみ前記案内軸81に沿って移動可能である。このように前記ダンパーユニット5は前記第二ダンパー51を介して前記第一ダンパー50を前記可動部3に連結した構造となっており、換言すれば前記固定部2と前記可動部3との間に前記第一ダンパー50及び前記第二ダンパー51を直列に設けた構造となっている。そして、前記第二ダンパー51が発揮する減衰力、すなわち前記可動部3の直線往復運動に対して及ぼす反力の大きさは、前記第一ダンパー50が発揮する減衰力よりも小さく設定されている。
【0028】
また、前記第一ダンパー50は前記可動部3の移動範囲の略全域において減衰力を発揮するように構成されているが、第二ダンパー51は前記第一ダンパー50よりも狭い範囲内でのみ減衰力を発揮するように構成されている。すなわち、前記第二ダンパー51の最大可動量は前記第一ダンパー50のそれよりも小さく設定されている。
【0029】
このため、前記可動部3がX方向へ移動すると、前記ダンパーユニット5では前記第二ダンパー51が第一ダンパー50よりも先に動作し、前記可動部3の移動量が第二ダンパー51の可動範囲を超えると前記第一ダンパー50が動作する。
【0030】
前記弾性復元部材6は、前記第一ダンパー50のダンパー本体72と固定部2との間に設けられた第一復元部材61と、前記可動部3と前記固定部2の間に設けられた第二復元部材62と、を備えている。前記第一復元部材61は前記可動部3に伝達された震動が収束した後に前記第一ダンパー50を動作前の初期位置に戻す働きをする。また、前記第二復元部材62は前記可動部3に伝達された震動が収束した後に前記可動部3を動作前の初期位置に戻す働きをする。
【0031】
以上のように構成された第一実施形態の免震装置1は次のように動作する。
【0032】
例えば地震の発生によって前記固定部2に対して震動が作用すると、前記支持案内機構4の働きによって前記可動部3は前記固定部2から分離され、これら固定部2と可動部3の間にはX方向への相対的な直線往復運動が発生する。図5に示すように、先ずは前記可動部3が前記固定部2に対してX+方向へ移動を開始すると、前記第一ダンパー50よりも減衰力の小さな前記第二ダンパー51のみが動作し、前記第一ダンパー50は動作しない。すなわち、前記第一ダンパー50においては前記ねじ軸71に対して前記ダンパー本体72が移動せず、前記第二ダンパー51では前記摺動部材82が前記案内軸81に対して移動する。
【0033】
このため、前記可動部3に生じた震動の振幅が前記第二ダンパー51の可動範囲内に収まっているのであれば、この免震装置1では第一ダンパー50を動作させることなく第二ダンパー51のみが動作し、当該第二ダンパー51が固定部2から可動部3に伝達された震動エネルギを吸収して、前記可動部3の震動を早期に収束させる。
【0034】
また、前記第二ダンパー51の減衰力は前記第一ダンパー50に比べて小さく設定されていることから、中小地震や建物の風揺れ、交通振動等の微震動に対してもアイソレータとしての支持案内機構4を十分に動作させて、前記可動部3を前記固定部2の振動から切り離すことが可能となる。このため、この免震装置1は微震動に対しても前記可動部3に搭載した免震対象物に生じる応答加速度を十分に低減させることができ、例えば半導体製造装置のような精密加工装置の震動対策に有効である。
【0035】
一方、前記可動部3に生じた震動により、当該可動部3が前記第二ダンパー51の可動範囲を超えてX+方向へ移動する場合には、図6に示すように第二ダンパー51の摺動部材82が案内軸81を支えるサポート部材に突き当たってしまうので、更に可動部3がX+方向へ移動すると、ここからは第一ダンパー50が動作する。すなわち、図7に示すように、前記第二ダンパー51の摺動部材82と結合された前記第一ダンパー50のダンパー本体72がねじ軸71に対して移動し、当該第一ダンパー50が固定部2から可動部3に伝達された震動エネルギを吸収して、前記可動部3の震動を収束させる。
【0036】
この後、前記可動部の移動方向がX+方向からX-方向へ反転すると、図8に示すように、前記可動部のX-方向への移動に対して前記第一ダンパー50よりも減衰力の小さな前記第二ダンパー51のみが動作する。このとき、前記第一ダンパー50は動作せず、当該第一ダンパー50のダンパー本体72は前記可動部3の移動方向が反転した際のねじ軸71上に位置に止まっている。
【0037】
そして、前記可動部3が更にX-方向へ移動し、第二ダンパー51の摺動部材82が案内軸81を支えるサポート部材に突き当たると、ここからは前記第一ダンパー50が動作する。すなわち、図9に示すように、前記第二ダンパー51の摺動部材が案内軸のサポート部材に突き当たった状態で前記第一ダンパー50のダンパー本体72がねじ軸71に対してX-方向へ移動し、当該第一ダンパー50が固定部2から可動部3に伝達された震動エネルギを吸収して、前記可動部3の震動を収束させる。
【0038】
このように、第一実施形態の免震装置1では、例えば大地震によって前記固定部2に対して大きな可動量の地震動が作用し、前記可動部3が前記固定部2に対して前記第二ダンパー51の可動範囲を超えて移動する場合には、前記第二ダンパー51よりも大きな減衰力を発揮する第一ダンパーが動作する。これにより、大地震の巨大な震動エネルギが前記可動部に伝達された場合でも、前記第一ダンパーの発揮する大きな減衰力によって前記可動部の最大変位を抑えることが可能となる他、当該可動部3の震動を早期に収束させることが可能となる。
【0039】
次に、本発明を適用した免震装置の第二実施形態について説明する。
【0040】
図10は第二実施形態の免震装置を示すものである。この第二実施形態の免震装置1Aは、前記第一実施形態と同様に、固定部2の上に支持案内機構4を介して可動部3を支えており、前記可動部3は前記固定部2の上をX方向に沿って自在に移動可能である。この第二実施形態の支持案内機構4としては、図2に示したリニアガイド40を用いることが可能であり、図10に示す例では、軌道部材41をX方向に沿って前記固定部2に敷設し、当該軌道レール41上を摺動する移動ブロック42を前記可動部に固定している。
【0041】
前記固定部2と前記可動部3の間にはダンパーユニット5が設けられている。前記ダンパーユニット5は、第一ダンパー50と一対の第二ダンパー51の組み合わせから構成されている。前記第一ダンパー50は前記固定部2上における前記可動部3の可動範囲、すなわち前記支持案内機構4による可動部の運動範囲に対応して設けられる一方、前記第二ダンパー51は前記第一ダンパー50と前記可動部3との間に設けられ、前記第一ダンパー50と可動部3を連結している。
【0042】
図11は、前記可動部3と前記第二ダンパー51の一方を取り外して、前記第一ダンパー50を露出させた状態を示す斜視図である。前記第一ダンパー50は前記固定部2に対してX方向に沿って固定されたラック52と、前記ラック52に噛み合って回転するピニオンギヤ53と、前記ピニオンギヤ53によって回転が与えられると共に前記第二ダンパー51に固定されたロータリーダンパー54と、を備えている。前記ラック52は前記支持案内機構4の移動ブロック42の運動範囲に対応して前記固定部2に敷設されている。前記ロータリーダンパー54には粘性流体が封入されており、前記ピニオンギヤ53から回転運動が入力されると、当該回転運動に対して減衰力を及ぼすように構成されている。
【0043】
一方、図11に示すように、前記第二ダンパーは、前記可動部3に固定された摺動部材55と、この摺動部材55が多数の転動体を介して組付けられると共にX方向に沿って設けられた案内軸56と、前記案内軸56が敷設された中間プレート57と、前記案内軸56の長手方向の両端に対応して前記中間プレート57上に設けられた一対の係止部材58と、を備えている。前記中間プレート57は前記摺動部材55及び前記案内軸56を介して前記可動部3に吊り下げられており、前記案内軸56が前記摺動部材55に対してX方向へ移動することにより、当該中間プレート57は可動部3に対してX方向へ移動可能となっている。但し、前記案内軸56は前記支持案内機構4の軌道レール41の長さよりも短く設定されているため、前記固定部2に対する前記可動部3の移動範囲に比べて前記中間プレート57に対する前記可動部3の移動範囲は短く設定されている。
【0044】
前記摺動部材55と前記案内軸56の組み合わせは、前記第一実施形態におけるボールスプライン装置と同様、減衰力が極めて小さなダンパーとして機能する。すなわち、前記摺動部材55と前記案内軸56との間に介在する転動体に付与する予圧の大きさを任意に調整することにより、前記案内軸56に対する前記摺動部材55の移動抵抗を任意に増減させることが可能である。
【0045】
前記ロータリーダンパー54は前記中間プレート57に対してその裏面側、すなわち前記案内軸56の敷設面と反対側の面に固定されている。このため、前記固定部2に対して前記中間プレート57が移動すると、前記ラック52と噛み合うピニオンギヤ53が回転して前記ロータリーダンパー54が減衰力を発揮し、この減衰力が前記中間プレート57のX方向への移動に対して作用することになる。
【0046】
また、図10及び図11には示されていないが、前記可動部3と前記固定部2の間には例えばコイルバネから構成された弾性復元部材が設けられており、前記固定部2上をX方向へ震動した可動部3を当該震動の振幅の中心位置に戻す方向の付勢力を付与している。また、前記固定部2と前記中間プレート57の間にも同様な弾性復元部材が設けられており、前記中間プレート57を固定部上の初期位置に戻す方向の付勢力を付与している。
【0047】
そして、以上のように構成された第二実施形態の免震装置は以下のように動作する。
【0048】
例えば地震の発生によって前記固定部2に対して震動が作用すると、アイソレータとしての前記支持案内機構4によって支承された前記可動部3が前記固定部2に対してX方向へ移動し、当該固定部2上で往復運動を生じることになる。このときの可動部3の往復運動の振幅が前記第二ダンパー51の可動範囲内、すなわち前記案内軸56に対する前記摺動部材55の移動範囲内であれば、前記可動部3に対しては第二ダンパー51の微弱な減衰力のみが作用することになる。このとき、前記中間プレート57は前記固定部2上で略静止した状態となっている。
【0049】
これにより、前述の第一実施形態と同様に、中小地震や建物の風揺れ、交通振動等の微震動に対し、第二ダンパー51が固定部2から可動部3に伝達された震動エネルギを吸収して、前記可動部3の震動を早期に収束させる。また、前記第二ダンパー51の減衰力は前記第一ダンパー50に比べて小さいので、アイソレータとしての前記支持案内機構4を十分に動作させることができ、前記可動部3に搭載した免震対象物に生じる応答加速度を十分に低減させることが可能となる。
【0050】
一方、前記可動部3の往復運動の振幅が前記第二ダンパー51の可動範囲を超えると、前記可動部3は前記中間プレート57上に設けられた係止部材58に突き当たり、前記中間プレートは前記可動部3に引きずられるようにして当該可動部3と一緒に前記固定部2上をX方向へ移動することになる。
【0051】
これにより、前記第一ダンパー50では前記ロータリーダンパー54が固定部2に対してX方向へ移動することになるので、前記ラックと噛み合うピニオンギヤが回転し、前記中間プレート57のX方向への移動に対して前記ロータリーダンパー54の減衰力が作用することになる。そして、前記中間プレート57は前記可動部3に引きずられてX方向へ移動しているので、前記ロータリーダンパー54の発揮する減衰力は前記可動部3のX方向への移動に対して作用する。
【0052】
このように、図10に示す第二実施形態の免震装置1Aにおいても、例えば大地震によって前記固定部2に対して大きな振幅の地震動が作用し、前記可動部3が前記固定部2に対して前記第二ダンパー51の可動範囲を超えて移動する場合には、前記第二ダンパー51よりも大きな減衰力を発揮する第一ダンパー50が動作し、当該第一ダンパー50の発揮する大きな減衰力によって前記可動部の最大変位を抑えることが可能となる他、当該可動部3の震動を早期に収束させることが可能となる。
【0053】
以上説明してきたように、第一及び第二実施形態の免震装置によれば、減衰力と最大可動範囲が異なる二種類のダンパーを前記固定部2と前記可動部3との間で直列に接続することにより、中小地震や建物の風揺れ、交通振動等に起因する微振動に対して、前記可動部に搭載した免震対象物に生じる応答加速度を十分に低減させることができる他、大地震に伴う大きな可動量や大きなエネルギの震動に対しても有効であり、各種震動に対してダンパーの発揮する減衰力を幅広く最適化し、免振対象物に生じる応答加速度を可及的に低減することが可能となる。
【0054】
また、前記第二ダンパー51に発揮させる減衰力を任意の大きさに設定することにより、当該免震装置を各種使用用途に対して最適化することが可能となる。
【0055】
尚、図に示した本発明の実施形態では、可動部がX方向へのみ震動する場合を例に挙げて説明したが、可動部がX方向へ震動する免震装置と当該X方向と直交するY方向へ震動する免震装置とを積み重ねることにより、水平な二次元平面内で動作する免震装置とすることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…免震装置、2…固定部、3…可動部、4…支持案内機構、5…ダンパーユニット、6…弾性復元部材、50…第一ダンパー、51…第二ダンパー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11