(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-20
(45)【発行日】2026-01-28
(54)【発明の名称】不飽和クロロフルオロカーボンの製造方法、及び組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 17/358 20060101AFI20260121BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20260121BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20260121BHJP
【FI】
C07C17/358
C07C21/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022571524
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047427
(87)【国際公開番号】W WO2022138675
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2024-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2020212438
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】西中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】井村 英明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正宗
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520070(JP,A)
【文献】特開2020-023453(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047972(WO,A1)
【文献】特表2016-515118(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/358
C07C 21/18
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体2)を製造する方法であって、
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を、気相中、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)と接触させる工程を含
み、
前記式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がシス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がトランス体であって、前記化合物(A)が塩化水素である、又は、前記(1)で表される幾何異性体(異性体1)がトランス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がシス体であって、前記化合物(A)が1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンである、方法。
CF
3-nH
n-CX=CClH (1)
(nは
0であり
、Xは水素原子であ
る。)
【請求項2】
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がシス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がトランス体であ
って、前記化合物(A)が塩化水素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がトランス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がシス体であ
って、前記化合物(A)が1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触を触媒、及び充填材の少なくとも一つの存在下で行う、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記接触を、活性炭の存在下で行う、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記接触を150℃超500℃未満で行う、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体2)を製造するための原料組成物であって、
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)と、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)とを含
み、
前記式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がシス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がトランス体であって、前記化合物(A)が塩化水素である、又は、前記(1)で表される幾何異性体(異性体1)がトランス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がシス体であって、前記化合物(A)が1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンである、組成物。
CF
3-nH
n-CX=CClH (1)
(nは
0であり
、Xは水素原子であ
る。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不飽和クロロフルオロカーボンの製造方法及び組成物に関し、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンまたは1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する幾何異性体(異性体2)を製造する方法、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンや1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンなどに代表される不飽和クロロフルオロカーボンは、低いオゾン層破壊係数(ODP)と地球温暖化係数(GWP)を有しているため、洗浄剤、発砲剤や冷媒などに利用可能な化合物の一つとして期待されている。例えば、特許文献1には、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのシス体をトランス体に異性化する方法、及び1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス体をシス体に異性化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施形態は、不飽和クロロフルオロカーボンを効率よく製造するための方法、及び組成物を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施形態が含まれる。
【0006】
<1>
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体2)を製造する方法であって、
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を、気相中、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)と接触させる工程を含み、
前記式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がシス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がトランス体であって、前記化合物(A)が塩化水素である、又は、前記(1)で表される幾何異性体(異性体1)がトランス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がシス体であって、前記化合物(A)が1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンである、方法。
CF
3-n
H
n
-CX=CClH (1)
(nは0であり、Xは水素原子である。)
<2>
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がシス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がトランス体であって、前記化合物(A)が塩化水素である<1>に記載の方法。
<3>
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がトランス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がシス体であって、前記化合物(A)が1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンである<1>に記載の方法。
<4>
前記接触を触媒、及び充填材の少なくとも一つの存在下で行う、<1>~<3>のいずれか1項に記載の方法。
<5>
前記接触を、活性炭の存在下で行う、<1>~<4>のいずれか1項に記載の方法。
<6>
前記接触を150℃超500℃未満で行う、<1>~<5>のいずれか1項に記載の方法。
<7>
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体2)を製造するための原料組成物であって、
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)と、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)とを含み、
前記式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がシス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がトランス体であって、前記化合物(A)が塩化水素である、又は、前記(1)で表される幾何異性体(異性体1)がトランス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がシス体であって、前記化合物(A)が1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンである、組成物。
CF
3-n
H
n
-CX=CClH (1)
(nは0であり、Xは水素原子である。)
本発明は、上記<1>~<7>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕~〔14〕についても記載している。
〔1〕
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体2)を製造する方法であって、
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を、気相中、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)と接触させる工程を含む、方法。
CF3-nHn-CX=CClH (1)
(nは0または1であり、Xはフッ素原子または水素原子であり、
nが0のとき、Xは水素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンであり、
nが1のとき、Xはフッ素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン、及び1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの少なくとも一つである。)
〔2〕
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がシス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がトランス体である〔1〕に記載の方法。
〔3〕
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がZ-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであって、製造される幾何異性体(異性体2)がE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである〔2〕に記載の方法。
〔4〕
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がZ-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンであって、製造される幾何異性体(異性体2)がE-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンである〔2〕に記載の方法。
〔5〕
上記化合物(A)が塩化水素である〔2〕~〔4〕のいずれか1項に記載の方法。
〔6〕
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がトランス体であって、製造される幾何異性体(異性体2)がシス体である〔1〕に記載の方法。
〔7〕
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであって、製造される幾何異性体(異性体2)がZ-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである〔6〕に記載の方法。
〔8〕
式(1)で表される幾何異性体(異性体1)がE-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンであって、製造される幾何異性体(異性体2)がZ-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンである〔6〕に記載の方法。
〔9〕
上記化合物(A)がジクロロトリフルオロプロパンである、〔6〕~〔8〕のいずれか1項に記載の方法。
〔10〕
前記接触を触媒、及び充填材の少なくとも一つの存在下で行う、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の方法。
〔11〕
前記接触を、活性炭の存在下で行う、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の方法。
〔12〕
前記接触を150℃超500℃未満で行う、〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の方法。
〔13〕
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体2)を製造するための原料組成物であって、
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)と、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)とを含む、組成物。
CF3-nHn-CX=CClH (1)
(nは0または1であり、Xはフッ素原子または水素原子であり、
nが0のとき、Xは水素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンであり、
nが1のとき、Xはフッ素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン、及び1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの少なくとも一つである。)
〔14〕
下記式(1)で表わされる幾何異性体と、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)とを含む、組成物。
CF3-nHn-CX=CClH (1)
(nは0または1であり、Xはフッ素原子または水素原子であり、
nが0のとき、Xは水素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンであり、
nが1のとき、Xはフッ素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン、及び1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの少なくとも一つである。)
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、不飽和クロロフルオロカーボンを効率よく製造するための方法、及び組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし本開示は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下の実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【0009】
また、本明細書では、ハロゲン化炭化水素について、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記し、必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、分子内に二重結合を有し、異性体としてトランス体(E体)とシス体(Z体)が存在する化合物については、E体とZ体をそれぞれ化合物の略称の末尾に(E)、(Z)と表記して示す。なお、化合物名の略称の末尾に(E)、(Z)の表記がないものは、E体および/またはZ体を示す。
【0010】
本明細書において、異性体1がZ体であるとき、対応する異性体2はE体を示す。また、異性体1がE体であるとき、対応する異性体2はZ体を示す。
異性体1のシス体は以下の構造で表される。
【0011】
【0012】
また、異性体1のトランス体は、以下の構造で表される。
【0013】
【0014】
異性体1は、Z-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス体)、E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス体)、Z-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(シス体)、又はE-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(トランス体)である。
異性体1がZ-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであるとき、対応する異性体2はE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである。
【0015】
異性体1がE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであるとき、対応する異性体2はZ-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである。
【0016】
異性体1がZ-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンであるとき、対応する異性体2はE-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンである。
【0017】
異性体1がE-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンであるとき、対応する異性体2はZ-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンである。
【0018】
[製造方法の概要]
以下、本実施形態に係る1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(以下、「1233zd」ともいう)、及び1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(以下、「1233yd」ともいう)を製造するための方法(以下、「本製造方法」とも記す)について説明する。
【0019】
本製造方法は、下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体2)を製造する方法であって、
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を、気相中、促進剤として、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)と接触させる工程を含む、方法である。
CF3-nHn-CX=CClH (1)
(nは0または1であり、Xはフッ素原子または水素原子であり、
nが0のとき、Xは水素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンであり、
nが1のとき、Xはフッ素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン、及び1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの少なくとも一つである。)
【0020】
本製造方法における化合物(A)とは、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである。上記化合物(A)は異性化反応の促進剤として機能する。
異性体1がシス体である場合は、上記化合物(A)が塩化水素であることが好ましいが、これに限定されない。例えば、Z-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの異性化反応においては、促進剤として塩化水素が好ましいが、ジクロロトリフルオロプロパンも促進剤として機能して異性化反応を促進させる。
異性体1がトランス体である場合は、上記化合物(A)がジクロロトリフルオロプロパンであることが好ましいが、これに限定されない。例えば、E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの異性化反応においては、促進剤としてジクロロトリフルオロプロパンが好ましいが、塩化水素も促進剤として機能して異性化反応を促進させる。
【0021】
異性化工程において、式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)1モルに対し、化合物(A)の総量は、0.001モル以上1モル以下であることが好ましく、0.005モル以上0.5モル以下であることがより好ましく、0.01モル以上0.2モル以下であることがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0022】
異性化工程は、気相中で行われる。異性化はバッチ式または流通式を適用することができるが、工業的に生産性の高い気相流通方式が好ましい。
【0023】
異性化工程は、触媒、及び充填材の少なくとも一つの存在下で行ってもよい。具体的には、反応管に触媒、及び充填材の少なくとも一つを充填し、気体状の式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を、化合物(A)と接触させる。異性化工程は、充填材の存在下で行うことが好ましいが、これに限定されない。
【0024】
本実施形態の異性化反応は、化合物(A)の存在下で行われる。これにより、上記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)から対応する幾何異性体(異性体2)への幾何異性化を効率よく行うことができる。即ち、化合物(A)は、1233zd又は1233ydの幾何異性化の促進剤として機能する。
【0025】
1233zdを異性化して対応する幾何異性体を得る場合、ジクロロトリフルオロプロパンは、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパン(以下、「243fa」ともいう)である。異性化工程において、243fa自身も1233zdに変換され得ることから、1233zdの製造効率性の向上に寄与する。
【0026】
1233ydを異性化して対応する幾何異性体を得る場合、ジクロロトリフルオロプロパンは、1,1-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン(以下、「243eb」ともいう)、及び1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン(以下、「243ba」ともいう)の少なくとも一つである。異性化工程において、243ebや243ba自身も1233ydに変換され得ることから、1233ydの製造効率性の向上に寄与する。
【0027】
1233zd(Z)と1233zd(E)とは沸点の違いから精密蒸留分離することができる。よって、1233zd(E)を異性化して1233zd(Z)を得る場合、異性化により得られた1233zd(Z)を含む生成物を捕集し、1233zd(Z)と1233zd(E)を蒸留などによってそれぞれを単離後、回収された1233zd(E)を再び異性化のための原料として使用することは原料を効率的に使用する観点から合理的で好ましい。
【0028】
同様に、1233zd(Z)を異性化して1233zd(E)を得る場合、異性化により得られた1233zd(E)を含む生成物を捕集し、1233zd(E)と1233zd(Z)を蒸留などによってそれぞれを単離後、回収された1233zd(Z)を再び異性化のための原料として使用することは原料を効率的に使用する観点から合理的で好ましい。
【0029】
1233zd(Z)を原料として、これを1233zd(E)に異性化する場合、原料の1233zd(Z)中に、目的物1233zd(E)が混在していても構わないが、1233zd(E)/1233zd(Z)の質量比は1233zd(E)/1233zd(Z)=1/99以下のものを原料とすることが、異性化を効率的に進めるためには、好ましく、0.1/99.9以下がより好ましく、0.01/99.99以下がさらに好ましい。
【0030】
1233zd(E)を原料として、これを1233zd(Z)に異性化する場合、原料の1233zd(E)中に、目的物1233zd(Z)が混在していても構わないが、1233zd(E)/1233zd(Z)の質量比は1233zd(E)/1233zd(Z)=10/1以上のものを原料とすることが、異性化を効率的に進めるためには、好ましく、50/1以上がより好ましく、100/1以上がさらに好ましい。
【0031】
1233yd(Z)と1233yd(E)とは沸点の違いから精密蒸留分離することができる。よって、1233yd(E)を異性化して1233yd(Z)を得る場合、異性化により得られた1233yd(Z)を含む生成物を捕集し、1233yd(Z)と1233yd(E)を蒸留などによってそれぞれを単離後、回収された1233yd(E)を再び異性化のための原料として使用することは原料を効率的に使用する観点から合理的で好ましい。
【0032】
同様に、1233yd(Z)を異性化して1233yd(E)を得る場合、異性化により得られた1233yd(E)を含む生成物を捕集し、1233yd(E)と1233yd(Z)を蒸留などによってそれぞれを単離後、回収された1233yd(Z)を再び異性化のための原料として使用することは原料を効率的に使用する観点から合理的で好ましい。
【0033】
化合物(A)は、上記式(1)で表される化合物の異性化工程において、上記式(1)で表される化合物とともに原料として反応管に供給されてもよく、上記式(1)で表される化合物を含む原料とは別に反応管に供給されてもよい。
【0034】
異性化工程において用いることができる触媒としては、金属触媒が挙げられる。金属触媒は、特に限定されないが、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタンおよびアンチモンからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含むことが好ましい。
【0035】
金属触媒は、活性炭等の担体に担持された担持触媒であってもよい。担持される金属としては、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、アンチモンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの金属はフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物などとして担持され、2種以上の金属化合物を併せて担持させてもよい。
担体としては、活性炭だけではなく、アルミナ、クロミア、ジルコニア、チタニアといった金属等を用いることもできる。反応効率の観点から、活性炭を担体として用いることが好ましい。
【0036】
異性化工程において用いることができる充填材としては、活性炭、ステンレス製ラシヒリング、ステンレス製ネット、石英製ラシヒリング、ガラス製ラシヒリングが挙げられるが、これらに限定されない。反応効率の観点から、活性炭を用いることが好ましい。
【0037】
活性炭としては、木炭、椰子殻炭、パーム核炭、素灰などを原料とする植物系活性炭、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などを原料とする石炭系活性炭、石油残滓、オイルカーボンなどを原料とする石油系活性炭、または炭化ポリ塩化ビニリデンなどを原料とする合成樹脂系活性炭が挙げられる。本実施形態に用いる活性炭は、これら市販の活性炭から選択し使用することができる。例えば、ガス精製用、触媒担体用椰子殻炭(大阪ガスケミカル製粒状白鷺GX、SX、CX、XRC、東洋カルゴン製PCB、太平化学産業株式会社製ヤシコール、クラレコールGG、GC)などが好適に用いられる。本実施形態では、活性炭が充填材として用いられる場合は、金属を担持しない活性炭を用いることが好ましい。金属を担持しない活性炭は、コストの観点、廃棄物処理の観点からも好適である。なお、本実施形態においては、金属を担持しない活性炭とは、活性炭触媒における金属の含有量が0質量%以上、5質量%以下、好ましくは0質量%以上1質量%以下、より好ましくは0質量%以上0.1質量%以下である活性炭を示す。
【0038】
使用する活性炭は粒状でもよく、反応器に適合すれば、球状、繊維状、粉体状、ハニカム状の形状を有していてもよい。活性炭の比表面積ならびに細孔容積は、市販品の規格の範囲で十分であるが、比表面積は400m2/gより大きいことが望ましく、800m2/g以上3000m2/g以下であることがさらに好ましい。また、細孔容積は0.1cm3/gより大きいことが望ましく、0.2cm3/g以上1.0cm3/g以下であることがさらに好ましい。
【0039】
異性化反応の反応温度は、異性体1の沸点以上であれば特に限定されないが、150℃超500℃未満が好ましい。異性化反応の反応温度が150℃超であれば、目的物を収率よく得ることができ、500℃未満であれば、不純物が副生し難く、純度の高い目的物を得ることができる。異性化反応の反応温度は、180℃以上380℃以下であることが好ましく、220℃以上330℃以下であることが特に好ましく、250℃超330℃以下であることがさらに好ましい。反応管の加熱方法は特に制限されないが、電気ヒーターやバーナーで直接加熱する方法、溶融塩や砂を用いる間接加熱する方法が挙げられる。
【0040】
異性化反応の反応時間は、以下に説明する「接触時間」によって定義される。すなわち、反応管の容積(反応管内に触媒や充填材を用いる場合はこれらの総容積)をA、一秒あたりに反応管に導入される原料気体の容積をBとする。Bは、原料気体を理想気体と仮定し、一秒あたりに導入される原料、および希釈ガスのモル数と圧力、温度から算出する。この時、AをBで割った値(=A/B)が接触時間である。
【0041】
接触時間は、反応管の温度(反応温度)、形状、触媒に依存するため、設定した温度、反応管の形状と触媒の種類ごとに原料の供給速度を適宜調節して最適化することが望ましい。未反応原料の回収、再利用の観点から5%以上の原料転化率が得られる接触時間の採用が好ましく、さらに好ましくは10%以上の転化率となるように接触時間が最適化される。
【0042】
接触時間は、特に限定されないが、通常10秒以上180秒以下であり、好ましくは30秒以上120秒以下である。
好ましい一実施形態として、反応温度が150℃超500℃未満の範囲の場合、接触時間は、10秒以上180秒以下であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0043】
反応圧力は、特に限定されないが、常圧近傍で行うことが好ましい。1MPa以上の加圧反応は高価な耐圧性の装置が必要となるだけでなく、原料または生成物の重合が懸念されるため好ましくない。また、反応は、窒素やアルゴンのような不活性ガスを希釈用のガスとして用いて行なうことができる。
【0044】
異性化に用いることができる反応装置は反応管、各種ガスを導入、流出するためのユニットなどを含むことが好ましい。これらは、塩化水素に対して耐性の高い材料から形成される。このような材料としては、例えば、石英、カーボン、セラミックス、オーステナイト系ステンレスの様なステンレス鋼材、またはモネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、およびインコネル(登録商標)のような高ニッケル合金、および銅クラッド鋼であってもよいが、これらに限定されない。反応管の形状は特に制限されるものではない。尚、反応管はその内部が空であってもよく、反応管内に反応に不活性なスタティックミキサーやラシヒリング、ポールリング、金網などの充填物を備えていてもよい。
【0045】
[組成物の概要]
本開示は、以下の組成物にも関するものである。
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)を幾何異性化して、対応する下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体2)を製造するための原料組成物であって、
下記式(1)で表わされる幾何異性体(異性体1)と、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)とを含む、組成物。
CF3-nHn-CX=CClH (1)
(nは0または1であり、Xはフッ素原子または水素原子であり、
nが0のとき、Xは水素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンであり、
nが1のとき、Xはフッ素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン、及び1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの少なくとも一つである。)
【0046】
また、本開示は、以下の組成物にも関するものである。
下記式(1)で表わされる幾何異性体と、ジクロロトリフルオロプロパン、及び塩化水素の少なくとも一つである化合物(A)とを含む、組成物。
CF3-nHn-CX=CClH (1)
(nは0または1であり、Xはフッ素原子または水素原子であり、
nが0のとき、Xは水素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンであり、
nが1のとき、Xはフッ素原子であり、ジクロロトリフルオロプロパンは1,1-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン、及び1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの少なくとも一つである。)
上記の組成物における各成分は、上述の通りである。
【実施例】
【0047】
以下、本開示の不飽和クロロフルオロカーボンの製造について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
ここで、原料、及び反応生成物の組成分析値の「GC%」は、原料、及び反応生成物をガスクロマトグラフィー(検出器:FID)によって測定して得られた組成の「GC面積%」を表す。なお、表示桁数以下は四捨五入した。例えば、0.0GC%は0.05GC%未満であることを示している。
【0048】
1.1233zd(E)の幾何異性化
[実施例1]
活性炭(大阪ガスケミカル社製 白鷺G2X)100ccを充填した反応管を有する気相反応装置に金属製電気ヒーターと、外部加熱装置(東京機器株式会社製 マントルヒーター)を備え、約50mL/分の流速で窒素ガスを反応装置に流しながら加熱した。
【0049】
次に、50mL/分の流量で窒素ガスを流しながら、出発原料として1233zd(E)(85.8GC%)、1233zd(Z)(0.0GC%)、243fa(13.6GC%)、その他成分0.6GC%が含まれる混合液を0.6g/分の流速で、気化器を通して反応管へ供給した。原料の流速が安定したところで窒素ガスの導入を停止し、この間の反応管内の温度は250℃であった。反応が安定したことを確認し、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去した後、生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。反応温度及び接触時間、ガスクロマトグラフィーの分析結果を表1に示す。また、1233zdE/Zは1233zd(E)と1233zd(Z)の生成比(すなわち、1233zd(E)の生成量(GC%)を1233zd(Z)の生成量(GC%)で除した値)を示す。
なお、上記原料の組成も表1に示す。
【0050】
[実施例2~5]
反応温度及び接触時間を変更したことを除き、実施例1と同様に異性化反応を行った。実施例2~5の反応温度及び接触時間、及び異性化反応による生成物のガスクロマトグラフィーの分析結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
実施例1~5の原料として、1233zd(E):243fa=6.9:1モル比(すなわち、1233zd(E)1モルに対する243faの量は0.145モルである)で混合したものを用いた。この原料をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1233zd(E)85.8GC%、1233zd(Z)(0.0GC%)、243fa13.6GC%、その他成分は0.6GC%だった。
【0053】
243faの1233zd(E)または1233zd(Z)への転化を確認するため、243faの気相脱塩化水素反応行った。
【0054】
[参考例1]
50mL/分の流量で窒素ガスを流しながら、異性化反応の出発原料として、243fa(95.2GC%)と1233zd(Z)(0.0GC%)との混合液を1.5g/分の流速で、気化器を通して気化させ反応管へ供給した。原料の流速が安定したところで窒素ガスの導入を停止し、この間の反応管内の温度は250℃であった。反応が安定したことを確認し、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去した後、生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。反応温度及び接触時間、ガスクロマトグラフィーの分析結果を表2に示す。
なお、上記原料の組成も表2に示す。
【0055】
[参考例2~4]
反応温度及び接触時間を変更したことを除き、参考例1と同様に異性化反応を行った。参考例2~4の反応温度及び接触時間、及び異性化反応による生成物のガスクロマトグラフィーの分析結果を表2に示す。
【0056】
【0057】
表2から明らかなように、243faは、1233zdへ変換され、生成物の組成は1233zd(E)が主生成物で1233zd(Z)が主な副生成物であることがわかる。また、反応温度を高くすると243faの転化率は向上するが、1233zd(E)と1233zd(Z)の生成比は変化しないことが分かる。反応温度、接触時間にかかわらず、1233zd(E)と1233zd(Z)の生成比はおよそ7(1233zdE/Z=約7)であった。
【0058】
243faの反応促進効果を確認するため、表1の実施例3を用いて、添加した243faがすべて1233zd(Z)もしくは1233zd(E)へ転化された場合の1233zd(Z)と1233zd(E)の理論量を表3に示す。
【0059】
【0060】
表3から明らかなように、243faから生成される1233zd(Z)の理論量以上の1233zd(Z)が実施例3では生成しており、243faが1233zd(Z)に転化されることによる効果よりも、243faが異性化反応の促進剤として作用することによる効果の寄与が大きいと考えられる。
【0061】
[比較例1]
活性炭(大阪ガスケミカル社製 白鷺G2X)100ccを充填した反応管を有する気相反応装置に金属製電気ヒーターと、外部加熱装置(東京機器株式会社製 マントルヒーター)を備え、約50mL/分の流速で窒素ガスを反応装置に流しながら加熱した。
【0062】
次に、50ml/分の流量で窒素ガスを流しながら出発原料1233zd(E)(>99.9GC%)、1233zd(Z)(0.0GC%)が含まれる混合液を0.6g/分の流量で、気化器を通して反応管へ供給した。原料の流速が安定したところで窒素ガスの導入を停止し、この間の反応管内の温度は300℃であった。反応が安定したことを確認し、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去した後、生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。反応温度及び接触時間、ガスクロマトグラフィーの分析結果を表4に示す。
なお、上記原料の組成も表4に示す。
【0063】
[比較例2]
接触時間を変更したことを除き、比較例1と同様に異性化反応を行った。比較例2の反応温度及び接触時間、及び異性化反応による生成物のガスクロマトグラフィーの分析結果を表4に示す。
【0064】
【0065】
表1と表4との比較から明らかなように、243faの存在下で1233zd(E)の異性化を行うことにより、1233zd(E)から1233zd(Z)への転化率が各段に向上していることが分かる。特に、反応温度を300℃としたときに、転化率が顕著に向上している。
【0066】
2.1233zd(Z)の幾何異性化
[実施例6]
異性化反応の出発原料として、1233zd(E)(0.0GC%)と1233zd(Z)(>99.9GC%)との混合液を用いて、化合物(A)としての塩化水素(HCl)を5ml/分の供給速度で反応管へ供給した事以外は、実施例1と同様の操作を行った。出発原料における1233zd(Z)1モルに対するHClの量は0.05モルであった。ガスクロマトグラフィーの分析結果を表5に示す。
【0067】
[実施例7~10]
反応温度及びHClの添加量を変更したことを除き、実施例6と同様に異性化反応を行った。実施例7~10の反応温度及び接触時間、HClの添加量、及び異性化反応による生成物のガスクロマトグラフィーの分析結果を表5に示す。
【0068】
【0069】
[比較例3]
活性炭(大阪ガスケミカル社製 白鷺G2X)100ccを充填した反応管を有する気相反応装置に金属製電気ヒーターと、外部加熱装置(東京機器株式会社製 マントルヒーター)を備え、約50mL/分の流速で窒素ガスを反応装置に流しながら加熱した。
【0070】
次に、窒素50mL/分をフィードしながら出発原料1233zd(E)(0.0GC%)、1223zd(Z)(>99.9GC%)が含まれる混合液を0.6g/分の流速で、気化器を通して反応管へ供給した。原料の流速が安定したところで窒素ガスの導入を停止し、この間の反応管内の温度は250℃であった。反応が安定したことを確認し、反応器から流出するガスを水中に吹き込んで酸性ガスを除去した後、生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。ガスクロマトグラフィーの分析結果を表6に示す。
【0071】
[比較例4~5]
反応温度を変更したことを除き、比較例3と同様に異性化反応を行った。比較例4~5の反応温度及び接触時間、及び異性化反応による生成物のガスクロマトグラフィーの分析結果を表6に示す。
【0072】
【0073】
表5と表6から明らかなように、HClの存在下で1233zd(Z)の異性化を行うことにより、1233zd(Z)から1233zd(E)への転化率が各段に向上していることが分かる。また、HClの添加量を増やすことにより、その促進効果が大きくなることも分かる。この結果から、HClの付加、脱離による243faを経由した異性化の進行が示唆された。また、1233zd(E)の異性化で、243faによって異性化が促進されたのは、これらの促進剤の分解によって生じる塩化水素が反応に寄与していたためであると推察される。
【0074】
また、表4と表6から明らかなように、1233zd(Z)から1233zd(E)への変換も、1233zd(E)から1233zd(Z)への転化と同様に行うことができることが分かる。このことから、243faの存在下で1233zd(Z)の異性化を行うことにより、1233zd(Z)から1233zd(E)への転化率を各段に向上させることができると推測できる。
【0075】
3.1233ydの幾何異性化
1233yd(E)および1233yd(Z)の少なくとも一つと、243ebおよび243baの少なくとも一つとを含む出発原料を用いること以外は実施例1~5と同様の方法で異性化反応を行う。また、1233zd(E)(0.0GC%)と1233zd(Z)(>99.9GC%)との混合液の代わりに、1233yd(E)および1233yd(Z)の少なくとも一つを含む液を用いること以外は実施例6~10と同様の方法で、1233yd(E)から1233yd(Z)への異性化反応、または1233yd(Z)から1233yd(E)への異性化反応を行う。これらの生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。
【0076】
1233yd(E)から1233yd(Z)への異性化反応、または1233yd(Z)から1233yd(E)への異性化反応においても、化合物(A)である、243eb、243ba及びHClの少なくとも一つが原料に含まれることにより、1233yd(E)から1233yd(Z)への異性化反応、または1233yd(Z)から1233yd(E)への転化率を各段に向上させることができる。243ebや243baを用いる場合には、これらの分解によって1233ydと塩化水素が生じ、この塩化水素が反応に寄与すると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示の一実施形態によれば、不飽和クロロフルオロカーボンを効率よく製造するための方法、及び組成物を提供することができる。
【0078】
本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2020年12月22日出願の日本特許出願(特願2020-212438)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。