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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-20
(45)【発行日】2026-01-28
(54)【発明の名称】複合中空糸膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/56 20060101AFI20260121BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20260121BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20260121BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20260121BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20260121BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20260121BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20260121BHJP
【FI】
B01D71/56
B01D69/10
B01D69/12
B01D69/08
B01D69/02
B01D69/00
B01D63/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2025534905
(86)(22)【出願日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2024025865
(87)【国際公開番号】W WO2025023158
(87)【国際公開日】2025-01-30
【審査請求日】2025-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2023121607
(32)【優先日】2023-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】井上 邦子
(72)【発明者】
【氏名】正木 辰典
(72)【発明者】
【氏名】馬越 恭平
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 典昭
(72)【発明者】
【氏名】松山 秀人
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/071122(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/071123(WO,A1)
【文献】特開2001-120968(JP,A)
【文献】特開平04-156926(JP,A)
【文献】特開昭59-130392(JP,A)
【文献】特開2014-036946(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104437110(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104069749(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緻密層及び支持層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜と、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層とを有し、前記分離機能層は、前記緻密層の表面に設けられており、下記条件で測定されるバースト圧が、2.25MPa以上である、複合中空糸膜。
<バースト圧>
複合中空糸膜を用いて作製したモジュールにN-メチル-2-ピロリドンを通液しながら10分間隔で0.25MPaずつ昇圧し、複合中空糸膜が破断したときの圧力(MPa)を測定する。
【請求項2】
架橋樹脂は、架橋芳香族ポリアミド樹脂である、請求項1に記載の複合中空糸膜。
【請求項3】
支持層は、空隙率が60~80%である、請求項1に記載の複合中空糸膜。
【請求項4】
緻密層は、厚みが0.1~5μmである、請求項1に記載の複合中空糸膜。
【請求項5】
緻密層は、脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔面側に有する、請求項1に記載の複合中空糸膜。
【請求項6】
脂肪族ポリアミド中空糸膜は、分画分子量が1万~30万である、請求項1に記載の複合中空糸膜。
【請求項7】
脂肪族ポリアミド中空糸膜は、下記条件で測定されるバースト圧が、2.1MPa以上である、請求項1に記載の複合中空糸膜。
<バースト圧>
脂肪族ポリアミド中空糸膜を用いて作製したモジュールに水圧をかけていき、脂肪族ポリアミド中空糸膜が破断したときの圧力(MPa)を測定する。
【請求項8】
溶媒がN-メチル-2-ピロリドンであり、溶質がジフェニルスルホンである溶液を濾過した際のジフェニルスルホンの阻止率が30%以上である、請求項1に記載の複合中空糸膜。
【請求項9】
25℃におけるN-メチル-2-ピロリドンの透過量が6L/(m2・h)以上である、請求項1に記載の複合中空糸膜。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の複合中空糸膜を使用して、有機溶媒と溶質を含む被処理液を濾過処理する、濾過方法。
【請求項11】
モジュールケースに、請求項1~9のいずれかに記載の複合中空糸膜が収容されてなる、中空糸膜モジュール。
【請求項12】
下記第1工程~第4工程を含む、複合中空糸膜の製造方法:
150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度では脂肪族ポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度で脂肪族ポリアミド樹脂を20重量%以上の濃度で溶解させた製膜原液を調製する第1工程、
前記製膜原液を所定形状にて100℃以下の凝固浴中に押し出すことにより、脂肪族ポリアミド樹脂を膜状に凝固させる工程であって、当該工程において、所定形状にて押し出された前記製膜原液の少なくとも一方の表面に対して、前記製膜原液で使用した有機溶媒と相溶性を有し且つ脂肪族ポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液を接触させて、少なくとも一方の表面に緻密層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜を形成する第2工程、
前記第2工程で形成された脂肪族ポリアミド中空糸膜から製膜原液溶媒及び凝固液を除去する第3工程、及び
前記第3工程を行って得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の少なくとも一方の緻密層の表面に、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層を形成する第4工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緻密層及び支持層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜と、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層とを有する複合中空糸膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会の構築、カーボンニュートラルの達成といった観点から、化学産業においても、より省エネルギーなプロセスが求められている。特に、蒸留プロセスは、化学産業全体で消費されるエネルギーに占める割合が高いことから、より省エネルギーなプロセスへの転換が求められており、省エネルギーなプロセスである膜分離プロセスへの転換が検討されている。
【0003】
膜分離プロセスは、浄水、海水淡水化分野や、水を溶媒とする各種工業製品の製造プロセスで利用されており、工業的に確立された技術となっている。膜分離プロセスに用いられる分離膜の素材としては、成形加工が比較的容易であり、安価な大量製造プロセスが確立しやすいこと、軽量・柔軟性があり取り扱いやすいことから、高分子素材からなる膜が主流となっている。
【0004】
一方で、化学産業においては、有機溶媒が主に用いられているため、膜分離プロセスの導入のためには、分離膜素材が有機溶媒に対して十分な耐久性を有することが求められる。特に高沸点の非プロトン性極性溶媒は、化学合成における溶液反応に用いられる媒体、精製などに用いられる抽出媒体、その高い溶解性を活かした高分子材料などの溶剤、及び洗浄剤などの用途で近年高いニーズがあり、消費量が増加している。代表的な非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、及びテトラヒドロフランなどがあり、これらの溶剤に対する耐久性が分離膜に求められる。しかし、これらの溶剤は、従来より水処理分野で広く用いられているポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、及び酢酸セルロースなどの分離膜素材を溶解、浸食する特性を持っており、水処理用に開発されたこれらの分離膜を有機溶媒の膜分離プロセスに転用することは不可能である。また、ポリエチレン、四フッ化ポリエチレンなどの限られた高分子素材は、有機溶媒の膜分離プロセスに以前から用いられている。しかし、これらの高分子素材からなる分離膜は、精密ろ過膜(細孔径が0.1μm程度から数μm)として、デッドエンド濾過(全濾過)型の平膜として実用化されており、有機溶媒に溶解した高分子物質や低分子溶質を分離する目的では使用できず、回収したい溶質の濃縮に有効な操作法であるクロスフロー方式に適した中空糸膜としての実用化はなされていない。中空糸型の濾過モジュールは、流路設計が単純であり、平膜型の濾過モジュールで必要となるスペーサー部材やO-リング部材などの部品が不要であるなど、使用上及び製造上の利点が大きい。
【0005】
現状では蒸留により、非プロトン性極性溶媒を精製回収あるいは溶解している溶質との分離操作が行われている。しかし、代表的な非プロトン性極性溶媒は、沸点が150~200℃前後で比較的高温であり、酸化などの変性も受けやすいため、蒸留で溶質との分離精製を行うには、エネルギー消費のみならず、変性を抑える技術が必要となる。また、分離回収したい溶質が熱に弱い場合には、もとより蒸留法を適用できないなどの課題を有する。
【0006】
これら課題に対して、膜分離プロセスは、溶剤の蒸発などの相変化を行わないことから、省エネルギープロセスの構築が可能であり、溶剤の酸化及び熱変性の影響がなく、熱に弱い溶質を含有する溶液の分離にも有用である。また、低分子溶質(分子量200~1000程度)と溶媒(分子量100程度)との分離を効率的に実施することを可能とするナノろ過膜を提供することができれば、既存の精密ろ過膜に限定された用途から、分離対象が広がることが期待される。このような分離膜の分野は、OSN(organic solvent nanofiltration)と呼ばれる。
【0007】
OSN膜は、近年開発が進められており、いくつかの試みや実用化が実施されている。材料特性的に耐溶剤性の高いセラミックなどの無機材料からなる膜を適用させることが一つの方策であるが、生産コストやスケールアップの点が普及を阻んでいる。一方、高分子素材の適用に関しては、代表的な方法として従来型の水処理膜を作製する際に用いられる非溶媒誘起層分離法(NIPS)によるプロセスで高分子膜を作製し、後処理にて架橋処理を行うことで高分子膜に有機溶媒耐性を付与し、高分子膜を有機溶媒に不溶化させる方法が検討されている。NIPS法は、前述の極性溶媒等に高分子を溶解させた製膜原液を用いる方法であり、高分子自体は耐溶剤性が低いため、後工程としての強固な架橋処理が必要となる。
【0008】
例えば、非特許文献1では、NIPS法で作製されたポリイミド平膜を架橋処理することにより、耐溶剤性を付与したナノ濾過膜が提案されている。しかし、当該ナノ濾過膜は、非プロトン性極性溶媒に対して十分な耐性を有しているとはいえない。
【0009】
また、非特許文献2では、NIPS法で作製されたポリスルホン製中空糸膜を基材とし、前記中空糸膜の内表面に界面重合膜を形成した、水系での脱塩(海水淡水化)用逆浸透膜が提案されている。しかし、当該ポリスルホン製中空糸膜は、有機溶媒、特に非プロトン性極性溶媒に対する耐性は全くない。
【0010】
また、OSN膜のような細孔径の極めて小さい膜の透過性の向上のためには、分離活性層をできるだけ薄くすることが必要である。NIPS法で製膜される非対称型の膜では、分離活性層は一般的に数μmと薄く、より高度な非対称化(表面緻密層の形成)で0.5μm程度まで薄くすることが可能であり、非対称構造膜化により透過性の優位な膜を形成できる。また、OSNのような10bar超の高圧運転を前提とするような膜では、溶媒中での機械的強度も重要となる。NIPS法で製膜される膜は、ほとんどの場合は非晶性高分子を用いた膜であるため、機械的強度は必ずしも高くなく、特に溶媒中のような、溶媒膨潤を受けるような場合は、弾性率の低下が起こる。従って、膜としての強度維持のためには、膜の強度維持を担う別の裏打ち担体の上に膜を形成する方法を採用せざるを得ない。前述のポリイミド膜についても同様であり、裏打ち担体としてはポリエステルやポリオレフィンの不織布が用いられている。
【0011】
一方、OSN膜作製の別のアプローチとして、熱誘起相分離法(TIPS)と呼ばれる手法で、ナノ濾過膜を得ることが検討されている。TIPS法は、比較的新しい方法であり、高分子材料に対して低温では溶解しないが高温で溶解する溶媒を選択し、高温で溶解させた均一な高分子溶液を1相領域と2相領域の境界であるバイノダル(binodal)線以下の温度へ冷却させることにより相分離を誘起し、高分子の結晶化やガラス転移により構造を固定する方法である。TIPS法は、低温で溶解する溶媒がない高分子にも適用できることから耐溶剤性の高い結晶性の高分子に適用できること、また、スポンジ状の均質構造になる傾向があり高強度の分離膜が得られることから、耐圧性のOSN膜を得るために適した手法であり、特に中空糸型の自立膜の作製に好適な手法である。
【0012】
例えば、特許文献1では、TIPS法で製造された、分画分子量が200~1000であり、メタノール透過量が0.03L/(m2・bar・h)以上である、ポリアミド樹脂を用いて形成されたナノ濾過中空糸膜が提案されている。
【0013】
また、特許文献2では、TIPS法を応用して製造された、少なくとも一方の面に緻密層が形成されており、前記緻密層の表面に一方向に伸びる筋状凹部を有する、限外濾過膜又はナノ濾過膜として用いられるポリアミド中空糸膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2022/071123号公報
【文献】国際公開第2022/071122号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】Journal of Membrane Science 476(2015)530-553
【文献】nature communications (2021)12:2338
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
膜分離プロセスを蒸留プロセスの代替とするためには、有機溶媒の透液性能に優れ、かつ有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能に優れる分離膜が求められるが、前記透液性能と前記阻止性能は相反する性能であるため、前記透液性能と前記阻止性能を高いレベルで両立させることは非常に困難である。
【0017】
前記特許文献1及び2のポリアミド中空糸膜は、クロスフロー濾過用に適した形状のものであり、各種有機溶媒に対して高い耐性を有するものであるが、有機溶媒中での機械的強度が十分ではないため運転時の圧力を高めて有機溶媒の透液量を増大させることは困難であり、また、有機溶媒系被処理液中の低分子溶質の阻止性能が満足できるものではなく、前記透液性能と前記阻止性能を高いレベルで両立させるという点で改善の余地があった。
【0018】
本発明は、有機溶媒の透液性能と有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能を高いレベルで両立させた複合中空糸膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、緻密層及び支持層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜の前記緻密層の表面に、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層を設けることにより、有機溶媒の透液性能と有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能を高いレベルで両立できる複合中空糸膜が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0020】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 緻密層及び支持層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜と、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層とを有し、前記分離機能層は、前記緻密層の表面に設けられており、下記条件で測定されるバースト圧が、2.25MPa以上である、複合中空糸膜。
<バースト圧>
複合中空糸膜を用いて作製したモジュールにN-メチル-2-ピロリドンを通液しながら10分間隔で0.25MPaずつ昇圧し、複合中空糸膜が破断したときの圧力(MPa)を測定する。
項2. 架橋樹脂は、架橋芳香族ポリアミド樹脂である、項1に記載の複合中空糸膜。
項3. 支持層は、空隙率が60~80%である、項1又は2に記載の複合中空糸膜。
項4. 緻密層は、厚みが0.1~5μmである、項1~3のいずれかに記載の複合中空糸膜。
項5. 緻密層は、脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔面側に有する、項1~4のいずれかに記載の複合中空糸膜。
項6. 脂肪族ポリアミド中空糸膜は、分画分子量が1万~30万である、項1~5のいずれかに記載の複合中空糸膜。
項7. 脂肪族ポリアミド中空糸膜は、下記条件で測定されるバースト圧が、2.1MPa以上である、項1~6のいずれかに記載の複合中空糸膜。
<バースト圧>
脂肪族ポリアミド中空糸膜を用いて作製したモジュールに水圧をかけていき、脂肪族ポリアミド中空糸膜が破断したときの圧力(MPa)を測定する。
項8. 溶媒がN-メチル-2-ピロリドンであり、溶質がジフェニルスルホンである溶液を濾過した際のジフェニルスルホンの阻止率が30%以上である、項1~7のいずれかに記載の複合中空糸膜。
項9. 25℃におけるN-メチル-2-ピロリドンの透過量が6L/(m2・h)以上である、項1~8のいずれかに記載の複合中空糸膜。
項10. 項1~9のいずれかに記載の複合中空糸膜を使用して、有機溶媒と溶質を含む被処理液を濾過処理する、濾過方法。
項11. モジュールケースに、項1~9のいずれかに記載の複合中空糸膜が収容されてなる、中空糸膜モジュール。
項12. 下記第1工程~第4工程を含む、複合中空糸膜の製造方法:
150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度では脂肪族ポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度で脂肪族ポリアミド樹脂を20重量%以上の濃度で溶解させた製膜原液を調製する第1工程、
前記製膜原液を所定形状にて100℃以下の凝固浴中に押し出すことにより、脂肪族ポリアミド樹脂を膜状に凝固させる工程であって、当該工程において、所定形状にて押し出された前記製膜原液の少なくとも一方の表面に対して、前記製膜原液で使用した有機溶媒と相溶性を有し且つ脂肪族ポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液を接触させて、少なくとも一方の表面に緻密層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜を形成する第2工程、
前記第2工程で形成された脂肪族ポリアミド中空糸膜から製膜原液溶媒及び凝固液を除去する第3工程、及び
前記第3工程を行って得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の少なくとも一方の緻密層の表面に、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層を形成する第4工程。
【発明の効果】
【0021】
本発明の複合中空糸膜は、有機溶媒中での機械的強度が高いため(有機溶媒中での耐圧試験におけるバースト圧が高いため)、運転時の圧力を高めて有機溶媒の透液量を増大させることができ、また、脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層の表面に、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層を有しているため、有機溶媒の透液性能と有機溶媒系被処理液中の溶質(特に分子量200~1000程度の低分子溶質)の阻止性能を高いレベルで両立できるものである。また、本発明の複合中空糸膜は、脂肪族ポリアミドを含む中空糸膜と架橋樹脂を含む分離機能層とで形成されているため、様々なタイプの有機溶媒に対して優れた耐性を備えており、工業的に使用されている様々なタイプの有機溶媒と接触しても膜性能を安定的に維持できるため、蒸留プロセスの代替となる膜分離プロセスに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】複合中空糸膜又は脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量、バースト圧、透液量(Flux)、及び阻止率を測定する際に使用する装置の模式図である。
図2】aは脂肪族ポリアミド中空糸膜のバースト圧の測定時に使用するモジュールの模式図であり、bは脂肪族ポリアミド中空糸膜のバースト圧の測定に使用する装置の模式図である。
図3】実施例1の脂肪族ポリアミド中空糸膜の支持層の空隙率を算出するための二値化処理後の画像解析図である。
図4】実施例1の脂肪族ポリアミド中空糸膜(分離機能層形成前)の内腔側表面の走査型電子顕微鏡画像(倍率10000倍)である。
図5】実施例1の脂肪族ポリアミド中空糸膜(分離機能層形成前)の内腔側表面の走査型電子顕微鏡画像(倍率20000倍)である。
図6】実施例1の脂肪族ポリアミド中空糸膜(分離機能層形成前)の内腔側断面の走査型電子顕微鏡画像(倍率10000倍)である。
図7】実施例1の複合中空糸膜の内腔側断面の走査型電子顕微鏡画像(倍率10000倍)である。
図8】実施例1の複合中空糸膜の内腔側断面の走査型電子顕微鏡画像(倍率20000倍)である。
図9】実施例1の複合中空糸膜の内腔側表面の走査型電子顕微鏡画像(倍率10000倍)である。
図10】実施例1の複合中空糸膜の内腔側表面の走査型電子顕微鏡画像(倍率20000倍)である。
図11】複合中空糸膜の支持層の空隙率を算出する例について説明する模式図であり、脂肪族ポリアミド中空糸膜を長手方向に対して垂直方向に割断した断面模式図である。
図12図11において点線で囲まれた領域の部分拡大図である。
図13図11において点線で囲まれた領域の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.定義
本発明において、「限外濾過」又は「限外濾過膜」と表記する場合には、分画分子量が1000~100万の範囲内に設定されている濾過又は分画分子量が1000~100万の範囲内にある濾過膜を意味し、「ナノ濾過」又は「ナノ濾過膜」と表記する場合には、分画分子量が200~1000の範囲内に設定されている濾過又は分画分子量が200~1000の範囲内にある濾過膜を意味する。
【0024】
本発明において、「脂肪族ポリアミド中空糸膜」とは、脂肪族ポリアミド樹脂を用いて形成された、緻密層及び支持層を有する中空糸形状の濾過膜を意味する。
【0025】
本発明において、「緻密層」とは、脂肪族ポリアミド中空糸膜において、緻密な微細孔が集合している領域であって、倍率10000倍以上の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において実質的に細孔の存在が認められない領域を意味する。
【0026】
本発明において、「支持層」とは、脂肪族ポリアミド中空糸膜において、緻密層以外の領域であって、倍率2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において実質的に細孔の存在が認められる、連続多孔構造を有する多孔質領域を意味する。
【0027】
本発明において、「分離機能層」とは、脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層の表面に設けられ、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む層を意味する。
【0028】
2.複合中空糸膜
本発明の複合中空糸膜は、緻密層及び支持層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜と、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層とを有し、前記分離機能層は、前記緻密層の表面に設けられており、下記条件で測定されるバースト圧が、2.25MPa以上であることを特徴とする。以下、本発明の複合中空糸膜について詳述する。
<バースト圧>
複合中空糸膜を用いて作製したモジュールにN-メチル-2-ピロリドンを通液しながら10分間隔で0.25MPaずつ昇圧し、複合中空糸膜が破断したときの圧力(MPa)を測定する。
【0029】
[脂肪族ポリアミド中空糸膜]
本発明の複合中空糸膜の主要構成部材である脂肪族ポリアミド中空糸膜は、緻密層及び支持層を有しており、かつ脂肪族ポリアミド樹脂で形成されている。脂肪族ポリアミド樹脂を中空糸膜の構成樹脂とすることにより、本発明の複合中空糸膜に、幅広い有機溶媒に対する耐性を付与できるだけでなく、有機溶媒中での高い機械的強度を付与できるため(有機溶媒中での耐圧試験におけるバースト圧を高めることができるため)、運転時の圧力を高めて有機溶媒の透液量を増大させることができる。
【0030】
脂肪族ポリアミド樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリアミドのホモポリマー、脂肪族ポリアミドの共重合体、又はこれらの混合物が挙げられる。脂肪族ポリアミドのホモポリマーとしては、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、及びポリアミド12等が挙げられる。また、脂肪族ポリアミドの共重合体としては、具体的には、脂肪族ポリアミドと、ポリテトラメチレングリコール及びポリエチレングリコール等のポリエーテルとの共重合体等が挙げられる。また、脂肪族ポリアミドの共重合体における脂肪族ポリアミド成分の比率については、特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリアミド成分が占める割合として、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上が挙げられる。脂肪族ポリアミドの共重合体において脂肪族ポリアミド成分の比率が上記範囲を充足することにより、一層優れた有機溶媒耐性と機械的強度を脂肪族ポリアミド中空糸膜に備えさせることができる。脂肪族ポリアミド樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0031】
これらの脂肪族ポリアミド樹脂の中でも、ポリアミド6は、耐圧性と耐溶剤性を好適に両立させ易く、さらに有機溶媒の透液性能を向上させ易いため、脂肪族ポリアミド中空糸膜の形成樹脂として好ましく用いられる。
【0032】
脂肪族ポリアミド樹脂は、架橋の有無は問わないが、製造コストを低減させるという観点から、架橋されていないものが好ましい。
【0033】
脂肪族ポリアミド樹脂の相対粘度については、特に制限されないが、例えば、2.0~7.0、好ましくは2.5~6.0、より好ましくは3.0~5.0が挙げられる。このような相対粘度を備えることにより、脂肪族ポリアミド中空糸膜の製造時に、成形性や相分離の制御性が向上し、脂肪族ポリアミド中空糸膜に対して優れた形状安定性を備えさせることが可能になる。なお、ここで、相対粘度とは、96%硫酸100mLに1gの脂肪族ポリアミド樹脂を溶解した溶液を用い、25℃でウベローデ粘度計によって測定した値を指す。
【0034】
脂肪族ポリアミド中空糸膜は、前記脂肪族ポリアミド樹脂の他に本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、フィラーが含まれていてもよい。フィラーを含むことにより、脂肪族ポリアミド中空糸膜の強度、伸度、弾性率を向上させることができる。特に、フィラーを含むことにより、濾過の際に高圧をかけても、脂肪族ポリアミド中空糸膜が変形し難くなるという効果も得られる。添加するフィラーの種類については、特に制限されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維等の繊維状フィラー;タルク、ハイドロタルサイト、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート等の珪酸塩;酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラック、シリカ、黒鉛等の非繊維フィラー等の無機材料が挙げられる。これらのフィラーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのフィラーの中でも、好ましくは、タルク、ハイドロタルサイト、シリカ、クレー、酸化チタン、より好ましくは、タルク、クレーが挙げられる。フィラーの含有量については、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミド樹脂100重量部当たり、フィラーが5~100重量部、好ましくは10~75重量部、より好ましくは25~50重量部が挙げられる。このような含有量でフィラーを含むことにより、脂肪族ポリアミド中空糸膜の強度、伸度、弾性率の向上を図ることができる。
【0035】
脂肪族ポリアミド中空糸膜には、孔径制御や膜性能の向上等のために、必要に応じて、増粘剤、酸化防止剤、表面改質剤、滑剤、界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0036】
脂肪族ポリアミド中空糸膜の外径は、脂肪族ポリアミド中空糸膜の用途、緻密層及び支持層の厚み、備えさせる透液性能等に応じて適宜設定されるが、モジュールに充填した際の有効膜面積、膜強度、中空部を流れる流体の圧損、座屈圧との関係を鑑みた場合、中空糸膜の外径として、400μm以上、好ましくは450~4000μm、より好ましくは500~3500μmが挙げられる。また、脂肪族ポリアミド中空糸膜の内径は、特に制限されないが、例えば、100~3000μm、好ましくは200~2500μm、より好ましくは300~2000μm、更に好ましくは300~1500μmが挙げられる。本発明において、脂肪族ポリアミド中空糸膜の外径及び内径は、5本の中空糸膜について光学顕微鏡にて倍率200倍で観察し、各中空糸膜の外径及び内径(ともに最大径となる箇所)を測定し、それぞれの平均値を算出することにより求められる値である。
【0037】
脂肪族ポリアミド中空糸膜の厚みは、脂肪族ポリアミド中空糸膜の用途、緻密層及び支持層の厚み、備えさせる透液性能等に応じて適宜設定されるが、例えば、50~600μm、好ましくは100~350μmが挙げられる。本発明において、脂肪族ポリアミド中空糸膜の厚みは、外径から内径を引いた値を2で除することにより算出される値である。
【0038】
ここで、濾過膜(分離膜)は、その分離対象の大きさの順に、大きい方から精密濾過(MF)膜、限外濾過(UF)膜、ナノ濾過(NF)膜、逆浸透(RO)膜に分類されるが、UF膜以下の濾過膜では、その捕捉対象物質の大きさの指標として分画分子量が用いられる。分画分子量は、既知分子量の標準物質を用いた透過試験で決定される。分画分子量は、透過試験により90%以上保持される下限の分子サイズ(ダルトン単位:Da)によって決定される。本発明において、限外濾過膜の分画分子量は1000~100万であり、ナノ濾過膜の分画分子量は200~1000である。
【0039】
脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層の表面に、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層を形成する際に、緻密層支配となる脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画性能が、界面重縮合反応が行われる緻密層表面の特性を反映することから、脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画性能は、分離機能層の形成及び特性に大きな影響を与える。本発明の脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量は、有機溶媒系被処理液中の溶質(特に分子量200~1000程度の低分子溶質)の阻止性能に優れる分離機能層を緻密層の表面に形成するために、限外濾過膜の範囲であることが好ましく、より好ましくは1万~30万、更に好ましくは2万~10万、より更に好ましくは3万~8万、一層好ましくは4万~7万、特に好ましくは5万~7万である。分画分子量が前記範囲内であれば、緻密層の表面及び表層部(表面に近い層内部)に均一な分離機能層を形成して複合化することができ、有機溶媒の透液性能と有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能をより高いレベルで両立した本発明の複合中空糸膜を得ることができる。なお、脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量は、緻密層の厚さ、及び支持層の細孔の孔径等を適宜調整することにより目的とする値に調整することができる。
【0040】
本発明において、脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量は、3000より大きい場合は、標準物質としてデキストランを使用し、溶媒として水を使用した際に決定される値である。脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量(3000より大きい場合)は、具体的には、脂肪族ポリアミド中空糸膜を用いてクロスフローモジュールを作製し、内圧クロスフロー方式にて、複数の既知分子量のデキストランをそれぞれ所定濃度で含む水溶液を循環液(原液)として用いた際に決定される値であり、高速液体クロマトグラフィーによって透過液中のデキストラン濃度をそれぞれ測定し、下記式に従って各分子量における溶質阻止率を算出した後、各結果を、横軸に分子量、縦軸に阻止率を示すグラフにプロットし、得られる近似曲線と阻止率90%の交点の分子量である。
溶質阻止率(%)={(原液中のデキストラン濃度-透過液中のデキストラン濃度)/原液中のデキストラン濃度}×100
【0041】
また、本発明において、脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量は、3000以下の場合は、標準物質として単分散ポリスチレンを使用し、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」ともいう。)を使用した際に決定される値である。脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量(3000以下の場合)は、具体的には、脂肪族ポリアミド中空糸膜を用いてクロスフローモジュールを作製し、内圧クロスフロー方式にて、複数の既知分子量のポリスチレンをそれぞれ所定濃度で含むNMP溶液を循環液(原液)として用いた際に決定される値であり、高速液体クロマトグラフィーによって透過液中のポリスチレン濃度をそれぞれ測定し、下記式に従って各分子量における溶質阻止率を算出した後、各結果を、横軸に分子量、縦軸に阻止率を示すグラフにプロットし、得られる近似曲線と阻止率90%の交点の分子量である。
溶質阻止率(%)={(原液中のポリスチレン濃度-透過液中のポリスチレン濃度)/原液中のポリスチレン濃度}×100
【0042】
複合中空糸膜の基材となる脂肪族ポリアミド中空糸膜は、複合中空糸膜の力学特性を担う部分であり、主に耐圧性と関連する中空糸膜の径方向の応力特性が重要になる。応力は中空部への内圧として与えることができ、径方向の破断応力は、内圧のバースト圧で評価することができる。また、膜濾過時の運転圧力は透過速度とも関連するため、脂肪族ポリアミド中空糸膜の耐圧性は十分に高いことが好ましい。本発明の脂肪族ポリアミド中空糸膜のバースト圧は、特に制限されず、脂肪族ポリアミド樹脂の結晶性及び分子量などの材料特性、中空糸膜の内径と膜厚の比、緻密層の厚さ、支持層の厚さ及び空隙率、及び支持層の細孔の孔径等を適宜調整することにより目的とする値に調整することができるが、膜濾過時の運転圧を上げて透液量を増加させる観点から、好ましくは2.1MPa以上、より好ましくは2.5MPa以上、更に好ましくは2.8MPa以上、より更に好ましくは3.0MPa以上である。脂肪族ポリアミド中空糸膜のバースト圧の上限値は、通常、4.0MPa以下であり、好ましくは3.8MPa以下である。具体的に、脂肪族ポリアミド中空糸膜のバースト圧は、好ましくは2.1~4.0MPa、より好ましくは2.5~3.8MPa、更に好ましくは2.8~3.8MPa、より更に好ましくは3.0~3.8MPaである。本発明において、脂肪族ポリアミド中空糸膜のバースト圧とは、脂肪族ポリアミド中空糸膜を用いて作製したモジュールに水圧をかけていき、脂肪族ポリアミド中空糸膜が破断したときの圧力(MPa)である。
【0043】
脂肪族ポリアミド中空糸膜のバースト圧は、具体的には、以下の方法で測定する。まず、図2のaに示すモジュール8を作製する。具体的には、まず、中空糸膜8a10本を30cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものを準備する。次に、外径8mm、内径6mm、長さ50mmのナイロン硬質チューブ8bを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をする。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部から2液混合型のエポキシ樹脂を注入しチューブ内側空間を当該エポキシ樹脂で充填する。その後、前記準備した中空糸膜を束ねたものを略U字状に曲げ、中空部にエポキシ樹脂が浸入しないように中空糸膜の両端部を熱シールして目止めし、前記エポキシ樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でエポキシ樹脂を硬化させる。次いで、硬化したエポキシ樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜の両端部の中空部が開口したモジュール8を作製する。
次に、図2のbに示す装置にモジュール8をセットし、手押しポンプ9によりモジュール8に水圧をかけていき、破断した際の圧力(MPa)をバースト圧とする。
【0044】
脂肪族ポリアミド中空糸膜の結晶化度は、特に制限されず、通常25%以上であり、耐溶剤性及び耐圧性を向上させる観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上、一層好ましくは45%以上、特に好ましくは50%以上である。なお、脂肪族ポリアミド中空糸膜の結晶化度は、例えば、アニーリング(熱処理)することにより目的とする値に調整することができる。アニーリングは、例えば、乾熱法、オートクレーブ法などの方法を用いることができる。
【0045】
本発明において、脂肪族ポリアミド中空糸膜の結晶化度は、X線回折法(XRD)により測定される値である。具体的には、測定ステージに中空糸サンプルを隙間なく複数本を並べ、散乱角度の走査測定により、散乱ベクトルと散乱強度の散乱パターンのスペクトルを得る。得られたスペクトルを結晶由来の成分と、アモルファス由来の成分とにスペクトル分離し、定量化することで結晶化度を求める。
【0046】
[緻密層]
緻密層は、前記脂肪族ポリアミド中空糸膜において、緻密な微細孔が集合している領域であって、倍率10000倍以上の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において実質的に細孔の存在が認められない領域である。
【0047】
緻密層は、脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側表面に形成されていてもよく、外側表面に形成されていてもよく、又は両側表面に形成されていてもよいが、有機溶媒の透液性能と有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能をより高いレベルで両立させる観点から、内腔側表面に形成されていることが好ましい。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)による緻密層の観察において、緻密層が脂肪族ポリアミド中空糸膜の外側表面に存在する場合は、脂肪族ポリアミド中空糸膜を適切な大きさに裁断し、試料台に載せた後、Pt、Au、Pd等の蒸着処理を施して観察すればよく、また、緻密層が脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側表面に存在する場合は、メス等の鋭利な刃物で脂肪族ポリアミド中空糸膜を長手方向に裁断し、内腔側表面を露出させてから適切な大きさに裁断し、試料台に載せた後、Pt、Au、Pd等の蒸着処理を施して観察すればよい。
【0048】
緻密層の厚みは、特に制限されず、製膜原液の溶媒、濃度、及び温度、凝固液の種類、及び温度等を適宜調整することにより目的とする値に調整することができるが、有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能を向上させる観点、及び分離機能層の安定化の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、また、有機溶媒の透液性能を向上させる観点から、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.8μm以下、更に好ましくは1.5μm以下、より更に好ましくは1.2μm以下、一層好ましくは1.0μm以下である。具体的に、緻密層の厚みは、好ましくは0.1~2.0μm、より好ましくは0.2~1.8μm、更に好ましくは0.3~1.5μm、より更に好ましくは0.3~1.2μm、一層好ましくは0.3~1.0μmである。本発明において、緻密層の厚みは、倍率10000倍の脂肪族ポリアミド中空糸膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において、実質的に細孔の存在が認められない領域の距離(厚み)を一定間隔で10か所測定し、その平均値を算出することにより求められる値である。
【0049】
[支持層]
支持層は、前記脂肪族ポリアミド中空糸膜において、前記緻密層以外の領域であって、倍率2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において実質的に細孔の存在が認められる、連続多孔構造を有する多孔質領域である。
【0050】
支持層の細孔の孔径は、緻密層を保持する程度の強度と流体の透過にとって著しい妨げにならない限り特に制限されない。
【0051】
支持層の空隙率は、特に制限されず、脂肪族ポリアミド中空糸膜の製造において、製膜原液の溶媒、濃度、及び温度、凝固液の種類、及び温度等を適宜調整することにより目的とする値に調整することができるが、製膜の容易性の観点、及び膜濾過時の運転圧を上げて透液量を増加させることができるように膜強度を高くする観点から、好ましくは60~80%、より好ましくは63~78%、更に好ましくは65~77%、より更に好ましくは66~76%である。
【0052】
本発明において、支持層の空隙率は、以下の方法で算出される。脂肪族ポリアミド中空糸膜又は複合中空糸膜を長手方向に対して垂直方向に割断した断面において、脂肪族ポリアミド中空糸膜の支持層の厚み方向に等間隔で5か所の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影する。具体的には、次のように撮影する。図11は脂肪族ポリアミド中空糸膜を長手方向に対して垂直方向に割断した断面模式図であり、図12及び図13図11において点線で囲まれた領域の部分拡大図であって、緻密層10及び支持層11を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜8aの例を示す図である。なお、図11~13において、分離機能層の記載は省略されている。図12に示すように、脂肪族ポリアミド中空糸膜8aの内腔中心から外側表面に向かって直線を引き、当該直線を支持層11の内腔側表面から外側表面にかけて5等分する。そして、図12に示すように、5等分した線分の中点を定める。そして、図13に示すように、当該中点が撮影画像の中心となるように、撮影画像に支持層11部分のみが含まれ、細孔数が30~300となるような倍率にて、5か所統一した倍率で撮影する。撮影した5か所のSEM写真において、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて、前記領域の画像解析を行い、細孔部分とポリマー部分とを2値化処理により区別した上で、解析領域面積に対する総細孔面積の面積比率(%)をそれぞれ算出し、その平均値を算出する。
【0053】
[分離機能層]
分離機能層は、有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能を向上させるために、前記脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層の表面に設けられる層である。脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層の表面に分離機能層を有する本発明の複合中空糸膜は、分離機能層を有さない脂肪族ポリアミド中空糸膜に比べて、有機溶媒系被処理液中の溶質(特に分子量200~1000程度の低分子溶質)の阻止性能が顕著に向上しており、有機溶媒の透液性能と有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能を高いレベルで両立できるものである。
【0054】
分離機能層は、前記脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側表面に有する緻密層の表面、又は前記脂肪族ポリアミド中空糸膜の外側表面に有する緻密層の表面に設けられていてもよいが、前記脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側表面に有する緻密層の表面に設けられていていることが好ましい。その理由は、脂肪族ポリアミド中空糸膜の外側表面に有する緻密層の表面に分離機能層を設けると、濾過時の中空糸膜同士の接触による分離機能層の剥離や、モジュール作製時にモジュール両端と封止剤との界面において剥離が生じやすくなる場合があるからである。また、脂肪族ポリアミド中空糸膜が、その両面に緻密層を有する場合、分離機能層は、どちらか一方の緻密層の表面にのみ設けられていてもよく、両方の緻密層の表面に設けられていてもよいが、前記理由により、内腔側表面に有する緻密層の表面にのみ設けられていることが好ましい。
【0055】
分離機能層は、界面重縮合により得られる架橋樹脂を主成分として含む層であり、より具体的には、3官能以上のモノマーを含む2種以上の多官能モノマーの界面重縮合反応により得られる架橋樹脂で形成された網目状構造を有する層である。分離機能層は、架橋樹脂で形成されているため、様々なタイプの有機溶媒に対して優れた耐性を備えており、工業的に使用されている様々なタイプの有機溶媒と接触しても膜性能を安定的に維持できる。架橋樹脂は、界面重縮合により得られる架橋構造を有する樹脂であれば特に制限されず、例えば、架橋ポリアミド樹脂、及び架橋ポリエステル樹脂などが挙げられる。架橋樹脂は、1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。架橋ポリアミド樹脂の場合、通常、多官能モノマーとして2官能以上の多官能アミンと2官能以上の多官能アシルハライドが用いられる。架橋ポリエステル樹脂の場合、通常、多官能モノマーとして2官能以上の多価アルコールと2官能以上の多官能アシルハライドが用いられる。反応性の高いアシルハライドを用いることで容易に瞬時に界面重縮合反応を進行させることができる。本発明において、分離機能層の耐溶剤性を向上させる観点、及び有機溶媒の透液性能と有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能をより高いレベルで両立できる複合中空糸膜を得る観点から、分離機能層を構成する架橋樹脂は、好ましくは架橋ポリアミド樹脂、より好ましくは架橋芳香族ポリアミド樹脂である。以下、代表例として、分離機能層を構成する架橋樹脂が、架橋ポリアミド樹脂である場合について説明する。
【0056】
架橋ポリアミド樹脂の原料モノマーである多官能アミンは、一分子中に少なくとも2個のアミノ基を有するアミンであり、例えば、2個のアミノ基がオルト位、メタ位、又はパラ位のいずれかの位置でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、3-アミノベンジルアミン、4-アミノベンジルアミン、ビフェニル及びジフェニルメタンなどのベンゼン環が直接又は官能基を介して結合した芳香族炭化水素の2個の水素原子が2個のアミノ基で置換された化合物などの芳香族ジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、ビフェニル及びジフェニルメタンなどのベンゼン環が直接又は官能基を介して結合した芳香族炭化水素の3個の水素原子が3個のアミノ基で置換された化合物などの芳香族トリアミン、ビフェニル及びジフェニルメタンなどのベンゼン環が直接又は官能基を介して結合した芳香族炭化水素の4個の水素原子が4個のアミノ基で置換された化合物(例えば、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニルなど)などの芳香族テトラアミンなどの芳香族多官能アミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族多官能アミン;1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4-アミノピペリジン、ピペラジン、4-アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミンなどが挙げられる。前記多官能アミンは、さらに、ハロゲン原子、スルホ基、アルキル基、及びフルオロアルキル基などの置換基で置換されていてもよい。これらの多官能アミンは、1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらの多官能アミンのうち、有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能を向上させる観点、反応性、取り扱い性、及び入手の容易さなどの観点から、好ましくは芳香族多官能アミン、より好ましくは芳香族2~4官能アミン、さらに好ましくはm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、3-アミノベンジルアミン、及び4-アミノベンジルアミンからなる群より選択される少なくとも1種の芳香族ジアミン、特に好ましくはm-フェニレンジアミンである。
【0057】
架橋ポリアミド樹脂の原料モノマーである多官能アシルハライドは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有するアシルハライドであり、例えば、トリメシン酸クロライド、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリクロライド、1,2,4-シクロブタントリカルボン酸トリクロライドなどの3官能アシルハライド;ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸クロライドなどの芳香族2官能アシルハライド、アジポイルクロライド、セバコイルクロライドなどの脂肪族2官能アシルハライド、シクロペンタンジカルボン酸ジクロライド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロライドなどの脂環式2官能アシルハライドなどの2官能アシルハライドなどが挙げられる。これらの多官能アシルハライドは、1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。架橋ポリアミド樹脂を得るためには、3官能以上の多官能アミン及び/又は多官能アシルハライドを用いる必要があるが、分離機能層の耐溶剤性を向上させる観点、有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能を向上させる観点、反応性、取り扱い性、及び入手の容易さなどの観点から、3官能アシルハライドを用いることが好ましく、より好ましくはトリメシン酸クロライドである。
【0058】
分離機能層は、非架橋ポリアミド樹脂(ジアミンと2官能アシルハライドとの界面重縮合反応により得られる直鎖状ポリアミド樹脂)を含んでいてもよいが、分離機能層の耐溶剤性を向上させる観点から、非架橋ポリアミド樹脂を含まないことが好ましい。分離機能層が非架橋ポリアミド樹脂を含む場合、非架橋ポリアミド樹脂の含有量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0059】
分離機能層は、必要に応じて、増粘剤、酸化防止剤、表面改質剤、滑剤、界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0060】
分離機能層の厚みは特に制限されないが、極めて薄い(0.1μm未満)ため、その厚みを正確に測定することは、走査型電子顕微鏡(SEM)の10~20万倍の倍率で観察しても非常に困難である。本発明の分離機能層は、脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層と完全に一体化した形態として観察されるため、分離機能層の厚みを特定することは困難である。しかし、分離機能層が大きな凹凸を持つ形態である場合には、緻密層とは異なる凸凹像として観察され、SEM画像から分離機能層の存在を判断できる。この場合も、分離機能層の厚みを特定することは難しい。一方、界面重縮合反応を実施した表面のSEM画像における形態は、界面重縮合反応を行っていない脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層の表面のSEM画像における形態とは異なった形態(緻密層の表面にはない多数の円形突起などが見られる)をしているため、SEM画像を比較することにより分離機能層の存在を確認できる。
【0061】
また、分離機能層の存在の確認は、複合中空糸膜のエアーリーク試験でも行うことができる。エアーリーク試験法は、乾燥状態の複合中空糸膜の中空部に0.2MPa程度の空気加圧を行って加圧空気を封じ込めた状態とし、封じ込み圧力の経時低下を評価する方法である。脂肪族ポリアミド中空糸膜が限外濾過膜の領域の孔径を有する場合、脂肪族ポリアミド中空糸膜は、封じ込み圧力を保持することは全くできない。一方、分離機能層により完全に複合化された複合中空糸膜は、ほぼ完全に封じ込み圧力を保持することができる。そのため、封じ込み圧力を保持することができるか否かを試験することにより分離機能層の存在を確認できる。また、封じ込み圧力の保持状態を定量化することで分離機能層の形成状態の良否を判定することができるため、エアーリーク試験法は、分離機能層の欠陥等の確認に有効である。本発明の複合中空糸膜の一実施態様として、下記式1により定義される膜面積(S)と加圧される全空間体積(V)においてエアーリーク試験を行った際の、エアーリーク量(圧力低下量)は、5分間あたり、好ましくは0.05MPa以下、より好ましくは0.02MPa以下、さらに好ましくは0.005MPa以下である。
(式1)V/S=0.0002×0.45/R
Rは、複合中空糸膜の内径(mm)である。また、V/Sの誤差は、±10%以内である。
中空糸膜を介してエアーが漏れる状態を圧力低下で検出する場合は、膜面積S(リークする部分)と全加圧空間体積Vが、ある程度一定値であることが定量性には必要となる。中空糸膜の場合は、内径の変化により中空糸自体の中空体積部が変動し、体積と膜面積の比は内径に比例する。また、モジュールサイズやリークテスターサイズも中空糸膜の太さなどにより変動するため、それらを前記式1に示すように補正する必要がある。本発明では、中空糸膜の内径0.45mmで1m2あたり0.0002m3の空間でのエアーリーク試験を基準として最適値を見出しており、本発明で好適である、内径0.1~3mmの中空糸膜に対しては、この基準を基に前記式1に記載の関係により、内径の異なる中空糸膜に対して条件を標準化した。
【0062】
複合中空糸膜のエアーリーク量(圧力低下量)は、具体的には、以下の方法で測定する。まず、複合中空糸膜20本を30cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものを準備する。次に、外径12.7mm、内径9.5mm、長さ53mmのポリブチレンテレフタレート(PBT)チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口に、さらに内径12mm、長さ約50mmのシリコーンチューブを15mm程度挿入して連結させ、シリコーンチューブのPBTチューブに挿入した側と反対側に長さ20mm程度のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をする。次に、当該連結チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部から2液混合型のエポキシ樹脂を注入しチューブ内側空間を当該エポキシ樹脂で充填する。その後、前記準備した複合中空糸膜を束ねたものの片端を、中空部にエポキシ樹脂が浸入しないように熱シールして目止めし、前記エポキシ樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でエポキシ樹脂を硬化させる。次いで、硬化したエポキシ樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断して中空部を開口する。もう一方の片端についても同様の操作を行い、複合中空糸膜の両端部の中空部が開口したクロスフローモジュールを作製する。モジュールの膜面積は、中空糸の内面積基準とし、中空糸の内径、本数、及び有効長から算出する。
作製したモジュールの中空部に連結する出口の一端を封止し、他端に、バルブ、及びバルブとモジュールの間に圧力計を有する加圧ラインを取り付ける。中空部に0.2MPaの空気加圧を行い、バルブを閉めて圧力を封じ込める。その直後から、経時的に圧力を確認し、5分後の圧力の変化量を測定する。なお、中空糸、モジュール、加圧ラインなどを含めた封じ込め体積(全加圧空間体積V)を見積り、膜面積Sと全加圧空間体積Vの比が前記式1の関係の±10%以内となるようにラインの長さ等を制御する。
【0063】
[複合中空糸膜のバースト圧]
本発明の複合中空糸膜は、下記条件で測定されるバースト圧が、2.25MPa以上であり、有機溶媒中での機械的強度が高い(耐圧性に優れる)ため、膜濾過時の運転圧力を高めて有機溶媒の透液量を増大させることができる。
<バースト圧>
複合中空糸膜を用いて作製したモジュールにN-メチル-2-ピロリドンを通液しながら10分間隔で0.25MPaずつ昇圧し、複合中空糸膜が破断したときの圧力(MPa)を測定する。
【0064】
複合中空糸膜の前記バースト圧は、膜濾過時の運転圧力を高めて有機溶媒の透液量をより増大させる観点から、好ましくは2.5MPa以上、より好ましくは2.75MPa以上である。複合中空糸膜の前記バースト圧の上限値は、通常、4.0MPa以下である。具体的に、複合中空糸膜の前記バースト圧は、好ましくは2.5~4.0MPa、より好ましくは2.75~4.0MPaである。複合中空糸膜の前記バースト圧は、脂肪族ポリアミド中空糸膜及び分離機能層の形成材料、緻密層の厚さ、支持層の厚さ及び空隙率、及び支持層の細孔の孔径等を適宜調整することにより目的とする値に調整することができる。
【0065】
複合中空糸膜の前記バースト圧は、具体的には、以下の方法で測定する。まず、複合中空糸膜20本を30cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものを準備する。次に、外径12.7mm、内径9.5mm、長さ53mmのポリブチレンテレフタレート(PBT)チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口に、さらに内径12mm、長さ約50mmのシリコーンチューブを15mm程度挿入して連結させ、シリコーンチューブのPBTチューブに挿入した側と反対側に長さ20mm程度のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をする。次に、当該連結チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部から2液混合型のエポキシ樹脂を注入しチューブ内側空間を当該エポキシ樹脂で充填する。その後、前記準備した複合中空糸膜を束ねたものの片端を、中空部にエポキシ樹脂が浸入しないように熱シールして目止めし、前記エポキシ樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でエポキシ樹脂を硬化させる。次いで、硬化したエポキシ樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断して中空部を開口する。もう一方の片端についても同様の操作を行い、複合中空糸膜の両端部の中空部が開口したクロスフローモジュールを作製する。
作製したクロスフローモジュール6を図1に示す内圧式分離処理ラインに接続し、送液循環ポンプ2によって連続してクロスフローモジュール6にNMPを透過させる。モジュールにおいて、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力をレギュレーター5により調節し、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力との算術平均値を印加圧とし、10分間隔で0.25MPaずつ昇圧する。そして、複合中空糸膜が破断したとき、つまり、急激な圧力低下が起こった時の圧力(MPa)をバースト圧とする。
【0066】
[有機溶媒の透液性能及び溶質の阻止性能]
本発明の複合中空糸膜は、前記脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層の表面に前記分離機能層が設けられていることにより、有機溶媒の透液性能と有機溶媒系被処理液中の溶質の阻止性能を高いレベルで両立できるものであり、例えば、以下の透液性能及び阻止性能を有するものである。
【0067】
本発明の複合中空糸膜の一実施態様として、25℃、複合中空糸膜の前記バースト圧に対して75%の圧力におけるNMPの透過量は、好ましくは6L/(m2・h)以上、より好ましくは8L/(m2・h)以上、更に好ましくは10L/(m2・h)以上、より更に好ましくは11L/(m2・h)以上、一層好ましくは12L/(m2・h)以上、より一層好ましくは14L/(m2・h)以上である。なお、前記NMP透過量の上限値は、通常、20L/(m2・h)以下である。具体的には、25℃、複合中空糸膜の前記バースト圧に対して75%の圧力におけるNMPの透過量は、好ましくは6~20L/(m2・h)、より好ましくは8~20L/(m2・h)、更に好ましくは10~20L/(m2・h)、より更に好ましくは11~20L/(m2・h)、一層好ましくは12~20L/(m2・h)、より一層好ましくは14~20L/(m2・h)である。前記NMP透過量は、脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量、緻密層の厚み、分離機能層の形成材料の種類等を適宜調整することにより目的とする値に調整することができる。
【0068】
前記NMP透過量は、内圧式濾過によって測定される値であり、以下の手順で測定される値である。まず、複合中空糸膜20本を30cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものを準備する。次に、外径12.7mm、内径9.5mm、長さ53mmのポリブチレンテレフタレート(PBT)チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口に、さらに内径12mm、長さ約50mmのシリコーンチューブを15mm程度挿入して連結させ、シリコーンチューブのPBTチューブに挿入した側と反対側に長さ20mm程度のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をする。次に、当該連結チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部から2液混合型のエポキシ樹脂を注入しチューブ内側空間を当該エポキシ樹脂で充填する。その後、前記準備した複合中空糸膜を束ねたものの片端を、中空部にエポキシ樹脂が浸入しないように熱シールして目止めし、前記エポキシ樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でエポキシ樹脂を硬化させる。次いで、硬化したエポキシ樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断して中空部を開口する。もう一方の片端についても同様の操作を行い、複合中空糸膜の両端部の中空部が開口したクロスフローモジュールを作製する。
作製したクロスフローモジュール6を図1に示す内圧式分離処理ラインに接続し、送液循環ポンプ2によって連続してクロスフローモジュール6に流動液を透過させる。流動液にはNMPを用いる。モジュールにおいて、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力をレギュレーター5により調節し、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力との算術平均値が、複合中空糸膜の前記バースト圧に対して75%となるようにする。モジュール内を透過する流動液のうち、複合中空糸膜の細孔を透過したものは、流動液から分離された透過液として回収し、残りは再び分離処理ラインに循環させる。循環開始2時間後から4時間後までにクロスフローモジュール6から流出した透過液を受け皿7により回収し、下記算出式に従ってNMP透過量(L/(m2・h))を算出する。
NMP透過量=複合中空糸膜の外側に透過したNMPの容量(L)/[複合中空糸膜の内径(m)×3.14×複合中空糸膜の有効濾過長さ(m)×20(本)×時間(h)]

複合中空糸膜の有効濾過長さ:クロスフローモジュールにおいて複合中空糸膜の外表面のうちエポキシ樹脂に被覆されていない部分の長さである。
【0069】
本発明の複合中空糸膜は、好ましくは限外濾過膜又はナノ濾過膜、より好ましくはナノ濾過膜、すなわち、分画分子量が200~1000である。しかし、分画分子量の測定方法は煩雑であるため、濾過膜の分類を特定する簡便な手法として、特定物質の阻止性能で評価を行った。本発明では、OSNとしての分画分子量の最小分子量相当であるジフェニルスルホン(分子量:218.27)の阻止率を用いた。また、分画分子量が1000未満であることは、単分散ポリスチレン(分子量:1000)の阻止率を用いて確認した。本発明の複合中空糸膜は、分子量1000のポリスチレンの阻止率が90%以上であり、また、低分子であるジフェニルスルホンの阻止率が30%以上であり、ナノ濾過膜としての性能を満足するものであった。
【0070】
本発明の複合中空糸膜の一実施態様として、溶媒がNMPであり、溶質がジフェニルスルホンである溶液を濾過した際のジフェニルスルホンの阻止率は、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは50%以上、より更に好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。前記ジフェニルスルホンの阻止率は、分離機能層の形成材料の種類等を適宜選択することにより目的とする値に調整することができる。
【0071】
ジフェニルスルホン又はポリスチレンの阻止率は、内圧式濾過によって測定される値であり、ジフェニルスルホン又はポリスチレンを0.2重量%含むNMP溶液を用いる以外は、前記NMP透過量の測定と同様の測定手順で測定される値である。ジフェニルスルホン又はポリスチレンの濃度は、液体クロマトグラフィーにより測定することができる。ジフェニルスルホン又はポリスチレンの阻止率は、以下の式から算出する。
阻止率=100-(透過液の濃度/流動液の濃度)×100
【0072】
[有機溶媒耐性]
本発明の複合中空糸膜は、主に脂肪族ポリアミド樹脂と架橋樹脂(好ましくは、架橋芳香族ポリアミド樹脂)で形成されているため、様々な種類の有機溶媒と接触しても、強度や伸びの変化を抑制して膜構造を安定に保持する特性(有機溶媒耐性)を備えている。より具体的には、本発明の複合中空糸膜は、アルコール類、非プロトン性極性溶媒、炭化水素類、高級脂肪酸、ケトン類、エステル類、エーテル類等の有機溶媒への耐性を有している。かかる有機溶媒の種類としては、具体的には以下のものが例示される。
アルコール類:メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール等の第一級アルコール;イソプロピルアルコール、イソブタノール等の第二級アルコール;ターシャリーブチルアルコール等の第三級アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリン等の多価アルコール。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソプロピルケトン等。
エーテル類:3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等。
非プロトン性極性溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、スルホラン等。
エステル類:酢酸エチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等。
炭化水素類:石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、流動パラフィン、ガソリン、及び鉱油。
高級脂肪酸:オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のカルボキシ基以外の炭素数が4以上(好ましくは4~30)の脂肪酸。
【0073】
[用途]
本発明の複合中空糸膜は、例えば、限外濾過膜又はナノ濾過膜として、半導体工業、化学工業、食品工業、医薬品工業、医療品工業等の分野で好適に用いられる。特に、本発明の複合中空糸膜は、非プロトン性極性溶媒に対する耐性が高く、当該溶媒を使用する産業分野において、当該溶媒と溶質とを含む被処理液を処理対象とする濾過に好適に用いられる。
【0074】
また、本発明の複合中空糸膜は、様々な有機溶媒に対する耐性を有しているので、有機溶媒と溶質を含む被処理液を処理対象とする膜分離プロセスに好適に用いられる。
【0075】
3.複合中空糸膜の製造方法
本発明の複合中空糸膜の製造方法については、前記構造の複合中空糸膜が得られれば特に制限されないが、好適な一例として下記第1工程~第4工程を含む製造方法が挙げられる。
第1工程:150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度では脂肪族ポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度で脂肪族ポリアミド樹脂を20重量%以上の濃度で溶解させた製膜原液を調製する。
第2工程:前記製膜原液を所定形状にて100℃以下の凝固浴中に押し出すことにより、脂肪族ポリアミド樹脂を膜状に凝固させる工程であって、当該工程において、所定形状にて押し出された前記製膜原液の少なくとも一方の表面に対して、前記製膜原液で使用した有機溶媒と相溶性を有し且つ脂肪族ポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液を接触させて、少なくとも一方の表面に緻密層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜を形成する。
第3工程:前記第2工程で形成された脂肪族ポリアミド中空糸膜から製膜原液溶媒及び凝固液を除去する。
第4工程:前記第3工程を行って得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の少なくとも一方の緻密層の表面に、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層を形成する。
【0076】
[脂肪族ポリアミド中空糸膜の形成]
以下、脂肪族ポリアミド中空糸膜を形成するための前記第1工程~第3工程について工程毎に詳述する。
【0077】
[第1工程]
第1工程では、150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度では脂肪族ポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度で脂肪族ポリアミド樹脂を20重量%以上の濃度で溶解させた製膜原液を調製する。
【0078】
150℃以上の沸点を有し且つ100℃未満の温度では脂肪族ポリアミド樹脂と相溶しない有機溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒、グリセリンエーテル類、多価アルコール類、有機酸及び有機酸エステル類、高級アルコール類等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、具体的には、スルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられる。グリセリンエーテル類としては、具体的には、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。多価アルコール類としては、具体的には、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、ポリエチレングリコール(分子量100~10000)等が挙げられる。有機酸及び有機酸エステル類としては、具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、サリチル酸メチル、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等が挙げられる。これらの有機溶媒の中でも、より高い強度を備える脂肪族ポリアミド中空糸膜を得るという観点から、好ましくは、非プロトン性極性溶媒、多価アルコール類;より好ましくは、スルホラン、ジメチルスルホン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、プロピレングリコール、へキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、ポリエチレングリコール(分子量100~600);更に好ましくは、スルホラン、ジメチルスルホン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン;より更に好ましくは、ジメチルスルホンが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合せて使用してもよい。これらの有機溶媒を1種単独で使用しても十分な効果が得られるが、2種類以上を混合して用いることで、相分離の順序や構造が異なることに起因して、更に効果的な脂肪族ポリアミド中空糸膜を作製できることもある。
【0079】
製膜原液中の脂肪族ポリアミド樹脂の濃度は、20重量%以上であればよく、好ましくは23~50重量%、より好ましくは25~38重量%、更に好ましくは28~35重量%が挙げられる。製膜原液中の脂肪族ポリアミド樹脂の濃度が前記範囲を充足することにより、空隙率が60~80%の支持層を得ることができ、脂肪族ポリアミド中空糸膜に優れた耐圧性を備えさせることができ、その結果、本発明の複合中空糸膜に優れた耐圧性と有機溶媒の透液性能を備えさせることができる。
【0080】
また、第1工程において、脂肪族ポリアミド樹脂を前記有機溶媒に溶解するに当たり、溶媒の温度を100℃以上にしておくことが必要である。具体的には、調製される製膜原液の相分離温度の10~50℃高い温度、好ましくは20~40℃高い温度で溶解させることが望ましい。製膜原液の相分離温度とは、脂肪族ポリアミド樹脂と前記有機溶媒を十分に高い温度で混合したものを徐々に冷却し、液-液相分離又は結晶析出による固-液相分離が起こる温度を指す。相分離温度は、ホットステージを備えた顕微鏡等を使用することにより測定することができる。
【0081】
第1工程において、脂肪族ポリアミド樹脂を前記有機溶媒に溶解させる際の温度条件は、使用する脂肪族ポリアミド樹脂の種類や有機溶媒の種類に応じて、前述する指標に従って100℃以上の温度域で適宜設定すればよいが、好ましくは120~250℃、より好ましくは140~220℃、更に好ましくは160~200℃が挙げられる。
【0082】
また、製膜原液には、脂肪族ポリアミド中空糸膜の孔径制御や性能向上等のために、必要に応じてフィラー、増粘剤、酸化防止剤、表面改質剤、滑剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0083】
第1工程で調製された製膜原液は、その温度のまま(即ち、100℃以上の状態)で第2工程に供される。
【0084】
[第2工程]
第2工程では、前記第1工程で調製された製膜原液を所定形状にて100℃以下の凝固浴中に押し出すことにより、脂肪族ポリアミド樹脂を膜状に凝固させる工程であって、当該工程において、所定形状にて押し出された前記製膜原液の少なくとも一方の表面に対して、前記製膜原液で使用した有機溶媒と相溶性を有し且つ脂肪族ポリアミド樹脂とは親和性が低い凝固液(以下、「緻密層形成用凝固液」と表記することもある)を接触させて、少なくとも一方の表面に緻密層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜を形成する。
【0085】
当該第2工程において、凝固浴中に所定形状にて押し出された前記製膜原液は、緻密層形成用凝固液と接触した表面において緻密層が形成される。前記製膜原液が緻密層形成用凝固液と接触した表面近傍では冷却による熱誘起相分離よりも、溶媒交換による非溶媒相分離が優勢に進行し、従来のTIPS法よりも緻密な構造が表面に形成され、その結果、前記分画分子量を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜が得られる。
【0086】
脂肪族ポリアミド中空糸膜の一方の表面のみに緻密層を形成させる場合には、第2工程において、所定形状で押し出された製膜原液の一方の面に緻密層形成用凝固液を接触させ、他方の面には前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶性を有し且つ脂肪族ポリアミド樹脂とは親和性が高い凝固液(以下、「支持層形成用凝固液」と表記することもある)を接触させればよい。また、脂肪族ポリアミド中空糸膜の両方の表面に緻密層を形成させる場合には、第2工程において、所定形状で押し出された製膜原液の両方の面に緻密層形成用凝固液を接触させればよい。
【0087】
緻密層形成用凝固液は、具体的には、25℃以下の温度にて前記製膜原液で使用した有機溶媒と相溶するが、沸点以下又は200℃以下の温度にて脂肪族ポリアミド樹脂を溶解させない溶剤である。緻密層形成用凝固液として、具体的には、水、水含有量が80重量%以上の水溶液等の水性溶剤;1-プロパノール、2-プロパノール、イソブタノール等の1価アルコール類;平均分子量300以上のポリエチレングリコール、平均分子量400以上のポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリアセチン、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、平均分子量300~600のポリエチレングリコール、トリアセチン、トリエチレングリコールモノメチルエーテル;より好ましくはポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600;更に好ましくはポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明において、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの平均分子量は、JIS K 1557-6:2009「プラスチック-ポリウレタン原料ポリオール 試験方法-第6部:近赤外(NIR)分光法による水酸基価の求め方」に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出された数平均分子量である。
【0088】
また、緻密層形成用凝固液には、緻密層を形成可能であることを限度として、グリセリン等の支持層形成用凝固液に使用される溶剤(25℃以下の温度にて前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶し、且つ沸点以下の温度にて脂肪族ポリアミド樹脂を溶解させる溶剤)が含まれていてもよい。緻密層形成用凝固液に支持層形成用凝固液に使用される溶剤(好ましくは、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びポリエチレングリコール200からなる群より選択される少なくとも1種)を含有させる場合、当該溶剤の含有量としては、好適な厚みの緻密層を形成し、前記分画分子量を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜を得る観点から、好ましくは5~38重量%、より好ましくは10~35重量%、更に好ましくは15~32重量%、より更に好ましくは15~30重量%である。
【0089】
支持層形成用凝固液は、25℃以下の温度にて前記製膜原液に使用した有機溶媒と相溶し、且つ沸点以下の温度にて脂肪族ポリアミド樹脂を溶解させる溶剤であればよい。支持層形成用凝固液として、具体的には、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、スルホラン、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、及びこれらの20重量%以上を含む水溶液が挙げられる。これらの中でも、前記空隙率を有する支持層を得る観点から、好ましくは、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びポリエチレングリコール200よりなる群から選択される少なくとも1種、並びにこれらの少なくとも1種を25~75重量%の割合で含む水溶液;より好ましくは、1,4-ブタンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種、並びにこれらの少なくとも1種を40~80重量%(好ましくは40~60重量%)の割合で含む水溶液である。
【0090】
脂肪族ポリアミド中空糸膜を形成するために、第2工程は、二重管構造の中空糸製造用二重管状ノズルを用い、外側の環状ノズルから前記製膜原液を吐出すると共に内側のノズルから内部用凝固液を吐出し、凝固浴中に浸漬すればよい。この際、内部用凝固液と凝固浴の内、少なくとも一方に緻密層形成用凝固液を使用すればよい。内部用凝固液と凝固浴の双方に緻密層形成用凝固液を使用した場合には、内腔側表面及び外側表面の双方に緻密層が形成され、内部が支持層である脂肪族ポリアミド中空糸膜が得られる。また、内部用凝固液として緻密層形成用凝固液を使用し、且つ凝固浴として支持層形成用凝固液を使用した場合には、内腔側表面に緻密層が形成され、内部と外側表面は支持層である脂肪族ポリアミド中空糸膜が得られる。また、内部用凝固液として支持層形成用凝固液を使用し、且つ凝固浴として緻密層形成用凝固液を使用した場合には、外側表面に緻密層が形成され、内腔側表面と内部が支持層である脂肪族ポリアミド中空糸膜が得られる。なお、脂肪族ポリアミド中空糸膜を形成する際に使用される内部用凝固液は、二重環状ノズルを経由することから、沸点が二重環状ノズルの温度以下となる水を含有しないことが好ましい。
【0091】
中空糸製造用二重管状ノズルとしては、溶融紡糸において芯鞘型の複合繊維を作製する際に用いられるような二重管状構造を有する口金を用いることができる。中空糸製造用二重管状ノズルの外側の環状ノズルの径、内側のノズルの径については、脂肪族ポリアミド中空糸膜の内径と外径に応じて適宜設定すればよい。
【0092】
また、中空糸製造用二重管状ノズルの外側の環状ノズルから前記製膜原液を吐出させる際の流量については、そのスリット幅にもよるため特に制限されないが、例えば、2~30g/分、好ましくは3~20g/分、更に好ましくは5~15g/分が挙げられる。また、内部用凝固液の流量については、中空糸製造用二重管状ノズルの内側ノズルの径、使用する内部液の種類、製膜原液の流量等を勘案して適宜設定されるが、製膜原液の流量に対して、0.1~2倍、好ましくは0.2~1倍、更に好ましくは0.4~0.7倍が挙げられる。
【0093】
第2工程において、凝固浴の温度は、100℃以下であればよいが、好ましくは-20~100℃、より好ましくは0~60℃、更に好ましくは2~20℃、特に好ましくは2~10℃が挙げられる。凝固浴の好適な温度は、製膜原液に使用した有機溶媒、凝固液組成等に応じて変動し得るが、一般により低い温度にすることで熱誘起相分離が優先して進み、より高い温度にすることで非溶媒相分離が優先して進む傾向がみられる。即ち、内腔側表面に緻密層が形成された脂肪族ポリアミド中空糸膜を製造する場合であれば、内腔側表面の緻密層の孔径を大きくするためには凝固浴を低い温度に設定することが好ましく、内腔側表面の緻密層をより緻密にし、内部構造を粗大にするには凝固浴を高い温度に設定することが好ましい。
【0094】
また、内部用凝固液の温度は、二重管状ノズルの設定温度程度であればよく、例えば120~250℃、好ましくは160~230℃、より好ましくは180~220℃が挙げられる。
【0095】
斯して第2工程を実施することにより、製膜原液が凝固浴中で凝固すると共に、少なくとも一方の表面に緻密層が形成された脂肪族ポリアミド中空糸膜が形成される。
【0096】
[第3工程]
第3工程では、前記第2工程で形成された脂肪族ポリアミド中空糸膜から製膜原液溶媒及び凝固液を除去する。
【0097】
脂肪族ポリアミド中空糸膜から製膜原液溶媒及び凝固液を除去する方法については、特に制限されないが、前記第2工程で形成された脂肪族ポリアミド中空糸膜を抽出溶媒に浸漬して抽出除去する方法が好ましい。
【0098】
抽出除去に使用される抽出溶媒としては、安価で沸点が低く抽出後に沸点の差などで容易に分離できるものが好ましく、例えば、水、グリセリン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサン、石油エーテル、トルエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン;より好ましくは水、メタノール、イソプロパノールが挙げられる。特に、水に溶解する製膜原液溶媒および凝固液を抽出する場合には、水でシャワリングしながら巻取りを行えば同時に溶媒抽出も行うことができ効率的である。また、フタル酸エステル、脂肪酸等の水に不溶の有機溶媒を抽出する際は、イソプロピルアルコール、石油エーテル等を好適に用いることができる。
【0099】
脂肪族ポリアミド中空糸膜を抽出溶媒に浸漬することにより、製膜原液溶媒及び凝固液の抽出除去を行う場合、抽出溶媒に脂肪族ポリアミド中空糸膜を浸漬する時間については、特に制限されないが、例えば0.2時間~2ヶ月間、好ましくは0.5時間~1ヶ月間、更に好ましくは2時間~10日間が挙げられる。脂肪族ポリアミド中空糸膜に残留する凝固液等を効果的に抽出除去するために、抽出溶媒を入れ替えたり、攪拌したりしてもよい。
【0100】
斯して第3工程を実施することにより、製膜原液溶媒及び凝固液が除去された、少なくとも一方の表面に緻密層を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜が得られる。
【0101】
第3工程後、脂肪族ポリアミド中空糸膜中の抽出溶媒を乾燥除去することが好ましい。抽出溶媒の乾燥除去は、自然乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、真空乾燥等の公知の乾燥処理により行うことができる。
【0102】
また、脂肪族ポリアミド中空糸膜の強度を高め、優れた耐圧性を具備させるために、脂肪族ポリアミド中空糸膜を乾燥と同時又は乾燥後に一軸方向(長手方向)に延伸してもよい。
【0103】
乾燥と同時に一軸方向に延伸するには、脂肪族ポリアミド中空糸膜に対して延伸のための張力をかけた状態で乾燥を行えばよい。乾燥と同時に一軸方向に延伸する際の温度条件としては、乾燥と延伸の双方が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、40℃以上、好ましくは40~160℃、より好ましくは50℃~140℃、更に好ましくは120~140℃が挙げられる。
【0104】
また、乾燥後に一軸方向に延伸する場合、乾燥時の温度条件については、付着している抽出溶媒を揮散可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、40℃以上、好ましくは40~160℃、より好ましくは50℃~140℃、更に好ましくは120~140℃が挙げられる。また、乾燥後に一軸方向に延伸する場合、延伸時の温度条件については、特に制限されず、-10~140℃、好ましくは0~120℃であればよいが、透液性能をより一層向上させるという観点から、使用している脂肪族ポリアミド樹脂のガラス転移点以上(より好ましくは50~120)℃、更に好ましくは60~100℃)であることが望ましい。
【0105】
一軸方向への延伸は公知の方法で行えばよく、例えば低速ロールから高速ロールへの巻取によって連続的に行えばよい。また、一定の長さに切断した脂肪族ポリアミド中空糸膜の両端をつかんで引張試験機等を使用して延伸してもよく、また手動延伸を使用してもよい。
【0106】
延伸倍率としては、例えば、1.2~5倍、好ましくは1.2~3倍が挙げられる。脂肪族ポリアミド中空糸膜の強度を高め、優れた耐圧性を具備させるという観点から、延伸倍率は、好ましくは1.2~2.4倍、より好ましくは1.2~2.0倍である。
【0107】
[分離機能層の形成]
以下、前記第3工程を行って得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の少なくとも一方の緻密層の表面に、界面重縮合により得られる架橋樹脂を含む分離機能層を形成するための前記第4工程について詳述する。
【0108】
分離機能層を構成する架橋樹脂は、前記「2.複合中空糸膜」の[分離機能層]の欄で記載したとおりである。以下、代表例として、架橋樹脂が、架橋ポリアミド樹脂である場合について説明する。
【0109】
架橋ポリアミド樹脂は、多官能アミンと多官能アシルハライドとの界面重縮合により得られる。ここで、架橋ポリアミド樹脂を得るために、多官能アミンまたは多官能アシルハライドの少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいる必要がある。
【0110】
分離機能層の形成工程では、例えば、多官能アミンを含有する溶液(以下、多官能アミン溶液ともいう。)と、多官能アミン溶液の溶媒と非混和性であり、多官能アシルハライドを含有する有機溶液(以下、多官能アシルハライド溶液ともいう。)とを用い、緻密層の表面で界面重縮合を行うことにより、緻密層の表面に分離機能層を形成することができる。多官能アミン溶液の溶媒としては、通常、水が用いられる。ただし、多官能アミンが非水溶性である場合には、水の代わりにジメチルホルムアミドなどの有機溶媒を用いることができ、また、水とジメチルホルムアミドなどの有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。多官能アミンとしてm-フェニレンジアミンを用いる場合は、溶媒として水を用いることが好ましい。水の代わりにジメチルホルムアミドなどの有機溶媒を用いる場合には、当該有機溶媒は、中空糸膜を溶解しないこと、及び多官能アシルハライド溶液の有機溶媒と非混和性であることが必要である。本発明の脂肪族ポリアミド中空糸膜は、多種多様な有機溶媒に対して優れた耐性を持つものである。そのため、本発明においては、従来の中空糸膜を溶解するジメチルホルムアミドなどの有機溶媒であっても多官能アミン溶液の溶媒として用いることができる。
【0111】
多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は特に制限されないが、通常、0.01~10重量%程度であり、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.5~4重量%、さらに好ましくは1~3重量%である。
【0112】
多官能アミン水溶液には、界面重縮合反応を阻害しない範囲で、界面活性剤、及び相間移動触媒などが含まれていてもよい。界面活性剤は、緻密層表面の濡れ性を向上させ、多官能アミン溶液と多官能アシルハライド溶液との界面張力を減少させる機能を有する。界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。相間移動触媒は、多官能アミン溶液と多官能アシルハライド溶液との非混和性溶液間の反応を促進する機能を有する。相間移動触媒としては、例えば、トリエチルアミンなどの第三級アミン、トリオクチルメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩などが挙げられる。前記添加剤を添加する場合、前記添加剤の含有量は、合計で0.5~20重量%であることが好ましく、より好ましくは1~10重量%である。この範囲内であれば、各添加剤の効果が効果的に得られる。
【0113】
界面重縮合を緻密層上で行うために、まず、多官能アミン溶液を緻密層表面に接触させることが好ましい。接触は、緻密層上において均一にかつ隙間なく行うことが好ましい。接触方法としては、例えば、脂肪族ポリアミド中空糸膜を多官能アミン溶液中に浸漬する方法、及び多官能アミン溶液を脂肪族ポリアミド中空糸膜内部に通液する方法などが挙げられる。緻密層と多官能アミン溶液との接触時間は特に制限されないが、好ましくは0.5~10分、より好ましくは1~5分である。この時間の範囲内にすることにより、多官能アミン溶液を緻密層に十分に含侵させることができ、また、支持層への過剰な含侵を抑制できる。また、脂肪族ポリアミド中空糸膜は、多官能アミン溶液の接触前に、水等の溶媒で濡らしておいてもよい。それにより、多官能アミン溶液の含侵を促進することができる。
【0114】
多官能アミン溶液を緻密層に接触させた後に、過剰に残留している多官能アミン溶液を除去することが好ましい。それにより、界面の均一性が向上し、分離機能層に欠陥が生じ難くなる。除去方法としては、例えば、空気などの気流で緻密層表面に過剰に残留している多官能アミンを吹き飛ばす方法、脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部に空気などを通気させる方法などが挙げられる。空気などを吹き付ける又は通気させる時間は特に制限されないが、好ましくは5秒~3分、より好ましくは10秒~2分である。時間が短すぎると十分な液切りができず、時間が長すぎると多官能アミン溶液が過剰に除去されたり、接触表面が乾燥してしまうため、最適な界面重縮合反応が阻害されやすくなる。また、多官能アミン溶液の溶媒と非混和性の液体を緻密層表面に流してもよい。この場合も、気流と同様の効果を得ることができる。この場合、後述する多官能アシルハライド溶液の溶媒を用いることが好ましい。脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部に非混和性の液体を通液させる場合、通液は気流での液切り前でも後でもよく、通液量は中空糸内部の体積の5~50倍程度である。
【0115】
次いで、多官能アミン溶液接触後の緻密層に、多官能アシルハライド溶液を接触させ、界面重縮合により、緻密層の表面に架橋ポリアミド樹脂を含む分離機能層を形成する。
【0116】
多官能アシルハライド溶液の有機溶媒は、多官能アミン溶液の溶媒と非混和性であり、多官能アシルハライドを溶解し、脂肪族ポリアミド中空糸膜を溶解せず、多官能アミン及び多官能アシルハライドに対して不活性であるものであればよい。当該有機溶媒としては、例えば、炭化水素溶剤、塩素系溶剤、及びフッ素系溶剤などが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのうち、取り扱い性、及び環境への影響などの観点から炭化水素溶剤が好ましい。炭化水素溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素、及び芳香族炭化水素などが挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、オクタンなどの直鎖状脂肪族炭化水素、イソオクタンなどの分岐状脂肪族炭化水素などが挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0117】
多官能アシルハライド溶液における多官能アシルハライドの濃度は特に制限されないが、通常、0.01~5重量%程度であり、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%である。前記範囲であれば、緻密層の表面に均一かつ十分な膜厚の分離機能層を形成することができる。
【0118】
多官能アシルハライド溶液と、多官能性アミン溶液を被覆した緻密層表面との接触は、上記の多官能性アミン溶液の緻密層表面への接触方法と同様の方法で行えばよい。接触時間は特に制限されず、多官能性アミンと多官能性アシルハライドとの界面重縮合反応が十分に進行し、分離機能層が緻密層の表面に形成されるに足る時間があればよく、通常、5秒~10分程度であり、好ましくは10秒~5分、より好ましくは30秒~3分である。
【0119】
次いで、上記の余剰の多官能アミン溶液の除去方法と同様の方法で、余剰の多官能アシルハライド溶液を除去することが好ましい。また、多官能アシルハライド溶液の溶媒を用いて接触面のみを洗浄して置換し、その後、液切りを行うことも余剰の多官能アシルハライド溶液の除去には効果的である。脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部に多官能アシルハライド溶液の溶媒を通液させる場合、通液は気流での液切り前でも後でもよく、通液量は中空糸内部の体積の5~50倍程度である。
【0120】
余剰の多官能アシルハライド溶液を除去した後、接触面の乾燥を行うことが好ましい。それにより、分離機能層を緻密層上に強く固定化することができる。乾燥方法としては、例えば、複合中空糸膜を乾燥機に入れる方法、分離機能層の形成面のみに温風を当てる又は通気させる方法などが挙げられる。乾燥又は通気時の温度は特に制限されず、好ましくは50~120℃、より好ましくは80~100℃である。乾燥時間は、多官能アシルハライド溶液の溶媒が十分に除去できる時間を適宜設定すればいが、通常、0.5~60分程度であり、好ましくは0.5~30分、より好ましくは1~20分、さらに好ましくは1~10分である。
【0121】
乾燥処理を行った複合中空糸膜は、そのまま使用してもよいが、さらに洗浄処理してもよい。未反応の多官能アミン及び多官能アシルハライドが膜中に残留している場合があり、これらが膜中に残留すると、複合中空糸膜の使用時に溶出する可能性があるため、洗浄処理により除去することが好ましい。洗浄処理は水を用いることが好ましい。また、洗浄処理の方法としては、例えば、水に浸漬する方法、複合中空糸膜の中空部に水を通液する方法などが挙げられる。洗浄処理時の温度は特に制限されないが、通常、室温~70℃程度である。洗浄時間は、水温に応じて適宜調整すればよく、室温で浸漬処理する場合は、12時間以上の放置することが好ましい。
【0122】
洗浄処理を行った複合中空糸膜は、そのまま使用してもよいが、再度乾燥を行ってもよい。複合中空糸膜は、乾燥した状態の方が、その後のモジュール化などの工程に有利である。乾燥条件は、実質的に水分がなくなる条件で実施すればよいが、乾燥温度は、好ましくは25~100℃、より好ましくは40~70℃である。
【0123】
以下、前記第4工程の好適な一例として、脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側の緻密層の表面に分離機能層を形成する方法について詳述する。
【0124】
脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側の緻密層の表面に分離機能層を形成する方法としては、例えば、脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部に多官能アミン溶液を注入し、その後、多官能アシルハライド溶液を前記中空部に注入して、緻密層上で多官能アミンと多官能アシルハライドとを界面重縮合させて、緻密層の表面に分離機能層を形成する方法が挙げられる。
【0125】
脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部への多官能アミン溶液及び多官能アシルハライド溶液の注入方法は、緻密層の表面に多官能アミン溶液及び多官能アシルハライド溶液を均一に被覆できれば特に制限されないが、脂肪族ポリアミド中空糸膜を用いてモジュールを形成し、当該モジュールの脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部に多官能アミン溶液を注入し、その後、多官能アシルハライド溶液を注入する方法が好ましい。当該注入方法は、具体的には、以下の手順による。まず、所望の長さの脂肪族ポリアミド中空糸膜を所望の本数揃えて束ねたものを準備する。次に、硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口に適切な長さのゴム栓等を挿入し、当該一方の端部開口に栓をする。次に、当該チューブの栓をした方とは反対側の端部開口から2液混合型の熱硬化性樹脂を注入し、チューブ内側空間を当該樹脂で充填する。その後、前記準備した束ねた脂肪族ポリアミド中空糸膜の片端部を熱シールして目止めし、前記熱硬化性樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端が栓に触れるまで挿入し、そのままの状態で前記熱硬化性樹脂を硬化させる。次いで、硬化した樹脂部分の栓側の領域をチューブごと切断して脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部を開口する。その後、開口側のチューブに適切な治具を装着して多官能アミン溶液を注入し、その後、多官能アシルハライド溶液を注入する。なお、多官能アミン溶液の注入前に、湿潤溶液を注入してもよい。
【0126】
注入方法は、特に限定されず、例えば、シリンジを用いた注入方法、加圧気体を用いた圧送方法、ペリスタポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、及びギヤーポンプなどのポンプを用いた注入方法などが挙げられる。
【0127】
多官能アミン溶液及び多官能アシルハライド溶液を注入する際の速度は特に限定されないが、線速として、例えば、0.01~2m/秒程度であり、濡れムラを抑制し、均一に被覆する観点、及び製造効率の観点から、好ましくは0.05~1m/秒である。多官能アミン溶液及び多官能アシルハライド溶液の注入は、所定の接触時間を確保できるように連続的に行うことが好ましい。接触時間は、前記のとおりである。
【0128】
前記のとおり、余剰の多官能アミン溶液及び多官能アシルハライド溶液を除去するために、多官能アミン溶液の注入後、及び多官能アシルハライド溶液の注入後に、脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部内に気体を通気することが好ましい。通気に用いる気体は特に制限されないが、副反応を防止する観点、及び安全性の観点から、好ましくは乾燥空気又は窒素である。
【0129】
気体の通気速度は特に限定されないが、線速として、例えば、1~100m/秒程度であり、過剰な反応液の除去により界面重縮合が不良となり、分離機能層に欠陥が生じることを抑制する観点、形成された分離機能層が剥離しないようする観点、及び製造効率の観点から、好ましくは2.5~70m/秒、より好ましくは10~50m/秒である。通気は、所定時間、連続的に行うことが好ましく、通気時間は特に制限されないが、好ましくは5秒~5分、より好ましくは20秒~2分である。
【0130】
多官能アシルハライド溶液を注入した後、界面重縮合反応の促進、分離機能層の緻密層表面への定着、溶媒等の除去のために、膜表面を加熱処理して乾燥することが好ましい。加熱温度及び加熱時間は、前記のとおりである。
【0131】
界面重縮合反応の終了後、未反応物や副反応物を除去するために複合中空糸膜を洗浄処理することが好ましい。洗浄方法及び洗浄条件は、前記のとおりである。
【0132】
多官能アミン溶液及び多官能アシルハライド溶液の注入の際に使用したチューブ部分は、適切な時、例えば、複合中空糸膜を加熱処理する前又は後に切断して除去する。
【0133】
また、脂肪族ポリアミド中空糸膜の外側の緻密層の表面に分離機能層を形成する方法としては、例えば、多官能アミン溶液及び多官能アシルハライド溶液の各浴に脂肪族ポリアミド中空糸膜を順次浸漬するか、あるいは多官能アミン溶液及び多官能アシルハライド溶液を脂肪族ポリアミド中空糸膜の外側の緻密層の表面に順次塗布し、必要により液切り、気体のブローにより過剰液を除く工程を繰り返す方法が挙げられる。これらの処理は、中空糸束のバッチ処理として行ってもよく、ロールtoロールとして連続的に行ってもよい。当該方法により脂肪族ポリアミド中空糸膜の外側の緻密層の表面に分離機能層を形成した場合も、熱処理および洗浄処理の後処理を実施することが好ましい。
【0134】
また、脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側及び外側の緻密層の表面にそれぞれ分離機能層を形成する方法としては、例えば、前記の脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側の緻密層の表面に分離機能層を形成する方法と、前記の脂肪族ポリアミド中空糸膜の外側の緻密層の表面に分離機能層を形成する方法とを、順不同にて又は組み合わせて行う方法が挙げられる。
【0135】
また、複合中空糸膜のモジュールへの固定化を行うポッティング工程への適応が容易になるため、複合中空糸膜は、乾燥したものであることが好ましい。さらに、乾燥した複合中空糸膜は、前記エアーリーク試験にも対応することができるため好ましい。本発明の複合中空糸膜は、乾燥膜とした場合においても所望の性能を発現できるものである。通常、限界濾過膜や逆浸透膜は、乾燥させると、細孔が水の蒸発に伴う表面張力で収縮又は閉塞し、透過性が失われることがしばしば発生するが、本発明の複合中空糸膜は、処理液体の通液前は乾燥膜であっても所望の特性を発現することができる。乾燥条件は特に制限されないが、好ましくは25~100℃、より好ましくは40~70℃の温度での通風乾燥である。
【0136】
斯して前記第4工程を実施することにより、脂肪族ポリアミド中空糸膜の少なくとも一方の緻密層の表面に分離機能層を有する本発明の複合中空糸膜が得られる。
【0137】
4.中空糸膜モジュール
本発明の複合中空糸膜は、被処理液流入口や透過液流出口等を備えたモジュールケースに収容され、中空糸膜モジュールとして使用される。
【0138】
具体的には、中空糸膜モジュールは、本発明の複合中空糸膜を束にし、モジュールケースに収容して、複合中空糸膜の端部の一方又は双方をポッティング剤により封止して固着させた構造であればよい。中空糸膜モジュールには、被処理液の流入口又は濾液の流出口として、複合中空糸膜の外壁面側を通る流路と連結した開口部と、複合中空糸膜の中空部分と連結した開口部が設けられていればよい。
【0139】
中空糸膜モジュールの形状は、特に制限されず、デッドエンド型モジュールであっても、クロスフロー型モジュールであってもよい。具体的には、中空糸膜束をU字型に折り曲げて充填し、中空糸膜束の端部を封止後カットして開口させたデッドエンド型モジュール;中空糸膜束の一端の中空開口部を熱シール等により閉じたものを真っ直ぐに充填し、開口している方の中空糸膜束の端部を封止後カットして開口させたデッドエンド型モジュール;中空糸膜束を真っ直ぐに充填し、中空糸膜束の両端部を封止し片端部のみをカットして開口部を露出させたデッドエンドモジュール;中空糸膜束を真っ直ぐに充填し、中空糸膜束の両端部を封止し、中空糸膜束の両端の封止部をカットし、フィルターケースの側面に2箇所の流路を作ったクロスフロー型モジュール等が挙げられる。
【0140】
モジュールケースに挿入する複合中空糸膜の充填率は、特に制限されないが、例えば、モジュールケース内部の体積に対する中空部分の体積を入れた複合中空糸膜の体積が、好ましくは15~75体積%、より好ましくは25~65体積%、更に好ましくは35~55体積%が挙げられる。このような充填率を満たすことによって、十分な濾過面積を確保しつつ、複合中空糸膜のモジュールケースへの充填作業を容易にし、複合中空糸膜の間をポッティング剤が流れ易くすることができる。
【0141】
中空糸膜モジュールの製造に使用されるポッティング剤については、特に制限されないが、中空糸膜モジュールを有機溶媒の処理に使用する場合には、有機溶媒耐性を備えていることが望ましく、このようなポッティング剤の例として、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレア樹脂等が挙げられる。これらのポッティング剤の中でも、硬化した時の収縮や膨潤が小さく、硬度が硬過ぎないものが好ましく、好適な例として、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンが挙げられる。これらのポッティング剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0142】
中空糸膜モジュールに使用するモジュールケースの材質については、使用する溶剤への耐久性があれば良く特に制限されず、金属材料の外、高分子材料の場合は、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、更に好ましくはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0143】
本発明の複合中空糸膜を利用した中空糸膜モジュールは、半導体工業、化学工業、食品工業、医薬品工業、医療品工業等の分野で、溶剤中の異物の除去、溶剤中の有用成分の濃縮、溶剤回収等のための限外濾過又はナノ濾過用途で使用される。
【実施例
【0144】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0145】
1.測定方法
[脂肪族ポリアミド中空糸膜の外径及び内径]
5本の脂肪族ポリアミド中空糸膜について光学顕微鏡にて倍率200倍で観察し、各中空糸膜の外径及び内径(ともに最大径となる箇所)を測定し、各平均値を求めた。
【0146】
[支持層の空隙率]
複合中空糸膜を長手方向に対して垂直方向に割断した断面において、脂肪族ポリアミド中空糸膜の支持層の厚み方向に等間隔で5か所の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影した。具体的には、次のように撮影した。図11は脂肪族ポリアミド中空糸膜を長手方向に対して垂直方向に割断した断面模式図であり、図12及び図13図11において点線で囲まれた領域の部分拡大図であって、緻密層10及び支持層11を有する脂肪族ポリアミド中空糸膜8aの例を示す図である。なお、図11~13において、分離機能層の記載は省略されている。図11に示すように、脂肪族ポリアミド中空糸膜8aの内腔中心から外側表面に向かって直線を引き、当該直線を支持層11の内腔側表面から外側表面にかけて5等分した。そして、図12に示すように、5等分した線分の中点を定める。そして、図13に示すように、当該中点が撮影画像の中心となるように、撮影画像に支持層11部分のみが含まれ、細孔数が30~300となるような倍率にて、5か所統一した倍率で撮影した。撮影した5か所のSEM写真において、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて、前記領域の画像解析を行い、細孔部分とポリマー部分とを2値化処理により区別した上で、解析領域面積に対する総細孔面積の面積比率(%)をそれぞれ算出し、その平均値を算出した。
ImageJでの具体的な操作は下記の通りである。解析対象の画像をImageJに取り込み、解析範囲を指定し、「Analyze>Histogram」の操作により得られるヒストグラムのピークが最も高くなる輝度値を閾値として(すなわち、Lower threshold levelを当該ヒストグラムのピークが最も高くなる輝度値とし、Upper threshold levelを255とする。)、「Image>Adjust>Threshold」により画像を2値化した。次に、「Analyze>Set measurements」で「Area」にチェックを入れ、「Analyze>Measure」の操作により解析範囲の全面積を求めたのち、「Analyze>Set measurements」で「Area」と「Limit to threshold」にチェックを入れたうえで再度「Analyze>Measure」の操作を行うことで、ポリマー部分と細孔部分の面積を算出し、解析領域面積に対する総細孔面積の面積比率(%)を算出した。
【0147】
[緻密層の厚み]
脂肪族ポリアミド中空糸膜を長手方向に対して垂直方向に割断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率10000倍で観察した。得られたSEM写真において、実質的に細孔の存在が認められない領域の距離(厚み)を一定間隔で10か所測定し、その平均値を算出した。
【0148】
[脂肪族ポリアミド中空糸膜の結晶化度]
脂肪族ポリアミド中空糸膜の結晶化度は、X線回折法(XRD)により測定した。測定ステージに中空糸サンプルを隙間なく複数本を並べ、散乱角度の走査測定により、散乱ベクトルと散乱強度の散乱パターンのスペクトルを得た。得られたスペクトルを結晶由来の成分と、アモルファス由来の成分とにスペクトル分離し、定量化することで結晶化度を求めた。
【0149】
[脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量(3000より大きい場合)]
脂肪族ポリアミド中空糸膜10本を30cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものを準備した。次に、外径8mm、内径6mm、長さ50mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をした。次に、当該連結チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部から2液混合型のエポキシ樹脂を注入しチューブ内側空間を当該エポキシ樹脂で充填した。その後、前記準備した脂肪族ポリアミド中空糸膜を束ねたものの片端部を、中空部にエポキシ樹脂が浸入しないように熱シールして目止めし、前記エポキシ樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でエポキシ樹脂を硬化させた。次いで、硬化したエポキシ樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断して中空部を開口した。もう一方の片端についても同様の操作を行い、脂肪族ポリアミド中空糸膜の両端部の中空部が開口したクロスフローモジュール6を作製した。
作製したクロスフローモジュール6を図1に示す内圧式分離処理ラインに接続し、送液循環ポンプ2によって連続してクロスフローモジュール6に流動液(原液)を透過させた。流動液には、分子量が5000、10000、40000、70000、又は500000である5種のデキストランをそれぞれ0.5重量%、0.5重量%、0.2重量%、0.2重量%、又は0.4重量%含む水溶液を用いた。一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力をレギュレーター5により調節し、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力との算術平均値が1barとなるようにした。モジュール内を透過する流動液のうち、ポリアミド中空糸膜の細孔を透過したものは、流動液から分離された透過液として回収し、残りは再び分離処理ラインに循環させた。循環開始2時間経過後にクロスフローモジュール6から流出する透過液を受け皿7により回収し、高速液体クロマトグラフィーによって透過液中のデキストラン濃度をそれぞれ測定し、下記式に従って各分子量における阻止率を算出した。各分子量のデキストランに対する阻止率の結果に基づいて、横軸に使用したデキストランの分子量、縦軸に阻止率を示すグラフを作成し、得られる近似曲線と阻止率90%の交点の分子量を分画分子量とした。
溶質阻止率(%)={(原液中のデキストラン濃度-透過液中のデキストラン濃度)/原液中のデキストラン濃度}×100
【0150】
[脂肪族ポリアミド中空糸膜の分画分子量(3000以下の場合)]
流動液として、分子量が370、1000、2000、又は3000である4種のポリスチレンをそれぞれ0.05重量%含むNMP溶液を用い、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力との算術平均値が15barとなるようにし、下記式に従って阻止率を算出した以外は、前記と同様の方法で分画分子量を求めた。
溶質阻止率(%)={(原液中のポリスチレン濃度-透過液中のポリスチレン濃度)/原液中のポリスチレン濃度}×100
【0151】
[脂肪族ポリアミド中空糸膜のバースト圧]
図2のaに示すモジュール8を作製した。まず、脂肪族ポリアミド中空糸膜8a10本を30cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものを準備した。次に、外径8mm、内径6mm、長さ50mmのナイロン硬質チューブ8bを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をした。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部から2液混合型のエポキシ樹脂を注入しチューブ内側空間を当該エポキシ樹脂で充填した。その後、前記準備した脂肪族ポリアミド中空糸膜を束ねたものを略U字状に曲げ、中空部にエポキシ樹脂が浸入しないように脂肪族ポリアミド中空糸膜の両端部を熱シールして目止めし、前記エポキシ樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でエポキシ樹脂を硬化させた。次いで、硬化したエポキシ樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、脂肪族ポリアミド中空糸膜の両端部の中空部が開口したモジュール8を作製した。
次に、図2のbに示す装置にモジュール8をセットし、手押しポンプ9によりモジュール8に水圧をかけていき、モジュール8が破断した際の圧力(バースト圧、単位:MPa)を測定した。
【0152】
[分離機能層の観察]
複合中空糸膜を長手方向に対して垂直方向に割断した断面において、複合化した表面付近を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率10000倍又は20000倍で観察した。また、複合化した面は、内面あるいは外面を上部からSEMにて倍率10000倍又は20000倍で観察した。
【0153】
[複合中空糸膜のエアーリーク量(圧力低下量)]
複合中空糸膜20本を30cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものを準備した。次に、外径12.7mm、内径9.5mm、長さ53mmのポリブチレンテレフタレート(PBT)チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口に、さらに内径12mm、長さ約50mmのシリコーンチューブを15mm程度挿入して連結させ、シリコーンチューブのPBTチューブに挿入した側と反対側に長さ20mm程度のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をした。次に、当該連結チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部から2液混合型のエポキシ樹脂を注入しチューブ内側空間を当該エポキシ樹脂で充填した。その後、前記準備した複合中空糸膜を束ねたものの片端を、中空部にエポキシ樹脂が浸入しないように熱シールして目止めし、前記エポキシ樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でエポキシ樹脂を硬化させた。次いで、硬化したエポキシ樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断して中空部を開口した。もう一方の片端についても同様の操作を行い、複合中空糸膜の両端部の中空部が開口したクロスフローモジュールを作製した。モジュールの膜面積は、中空糸の内面積基準とし、中空糸の内径、本数、有効長より算出した。
作製したモジュールの中空部に連結する出口の一端を封止し、一端に、バルブ、及びバルブとモジュールの間に圧力計を有する加圧ラインを取り付けた。中空部に0.2MPaの空気加圧を行い、バルブを閉めることで圧力を封じ込めた。その直後より、経時的に圧力を確認し、5分後の圧力の変化量を測定した。また、中空糸、モジュール、加圧ラインなどを含めた封じ込め体積(全加圧空間体積V)を見積り、膜面積Sと全加圧空間体積Vの比が下記式の関係の±10%以内となるようにラインの長さを調整した。
V/S=0.0002×0.45/R
Rは、複合中空糸膜の内径(mm)である。
【0154】
[複合中空糸膜のバースト圧]
前記で作製したクロスフローモジュール6を図1に示す内圧式分離処理ラインに接続し、送液循環ポンプ2によって連続してクロスフローモジュール6にNMPを透過させた。モジュールにおいて、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力をレギュレーター5により調節し、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力との算術平均値を印加圧とし、10分間隔で0.25MPaずつ昇圧した。そして、複合中空糸膜が破断したとき、つまり、急激な圧力低下が起こった時の圧力(MPa)をバースト圧とした。
【0155】
[NMP透過量]
前記で作製したクロスフローモジュール6を図1に示す内圧式分離処理ラインに接続し、送液循環ポンプ2によって連続してクロスフローモジュール6に流動液を透過させた。流動液には、NMPを用いた。モジュールにおいて、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力をレギュレーター5により調節し、一次側圧力計3の圧力と二次側圧力計4の圧力との算術平均値が、複合中空糸膜のバースト圧に対して75%となるようにした。モジュール内を透過する流動液のうち、複合中空糸膜の細孔を透過したものは、流動液から分離された透過液として回収し、残りは再び分離処理ラインに循環させた。循環開始2時間後から4時間後までにクロスフローモジュール6から流出した透過液を受け皿7により回収し、下記算出式に従ってNMP透過量(L/(m2・h))を算出した。
NMP透過量=複合中空糸膜の外側に透過したNMPの容量(L)/[複合中空糸膜の内径(m)×3.14×複合中空糸膜の有効濾過長さ(m)×20(本)×時間(h)]

複合中空糸膜の有効濾過長さ:クロスフローモジュールにおいて複合中空糸膜の外表面のうちエポキシ樹脂に被覆されていない部分の長さである。
【0156】
[ポリスチレン及びジフェニルスルホンの阻止率]
ポリスチレン及びジフェニルスルホンの阻止率は、ポリスチレン又はジフェニルスルホンを0.2重量%含むNMP溶液を用いた以外は、前記[NMP透過量]の測定と同様の測定手順で測定し、液体クロマトグラフィー(SECモード、移動相:DMF)で分離された各成分のRI検出値を用いて、得られた透過液および流動液の濃度を測定し、以下の式から、ポリスチレン及びジフェニルスルホンの阻止率(%)を算出した。
阻止率%=100-(透過液の濃度/流動液の濃度)×100
【0157】
2.試験例
[実施例1]
ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製、A1030BRT、相対粘度3.53)350g、ジメチルスルホン(東京化成株式会社製)650gを180℃で1.5時間攪拌し溶解させ、撹拌速度を下げて1時間脱泡し製膜原液を調製した。製膜原液を定量ポンプを介して、200℃に保温した紡糸口金に送液し、内部用凝固液として、ポリエチレングリコール300(PEG300)70重量%とグリセリン30重量%の混合液を流した。押出された製膜原液を5℃の60重量%1,4-ブチレングリコール(1,4BG)水溶液からなる凝固浴に投入して冷却固化させて脂肪族ポリアミド多孔膜を形成した。巻き取った脂肪族ポリアミド多孔膜を水に24時間浸漬して溶媒抽出(洗浄)を行った後に、延伸させることなく熱風乾燥機(庫内温度130℃)内を通過させることによって乾燥させ、脂肪族ポリアミド中空糸膜を得た。得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の外径、内径、支持層の空隙率、緻密層の厚み、分画分子量、バースト圧、及び結晶化度の測定結果を表1に示す。また、図3は、得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の支持層の空隙率を算出するための二値化処理後の画像解析図である。図4は、得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側表面の走査型電子顕微鏡画像(倍率10000倍)である。図5は、得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側表面の走査型電子顕微鏡画像(倍率20000倍)である。図6は、得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜の内腔側断面の走査型電子顕微鏡画像(倍率10000倍)である。
得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜を長さ40cm、本数20本にそろえた膜束を準備した。内径8mm、長さ50mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をした。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部から2液混合型のエポキシ樹脂を注入しチューブ内側空間を当該エポキシ樹脂で充填した。その後、前記準備した脂肪族ポリアミド中空糸膜の片端部を熱シールして目止めし、前記エポキシ樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でエポキシ樹脂を硬化させた。次いで、硬化したエポキシ樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断して脂肪族ポリアミド中空糸膜の中空部を開口し、界面重合用溶液注入用モジュールを得た。
前記モジュールの樹脂固定した開口端から、水を充填し、そのまま水中に1時間浸漬し膜全体を濡らした。次いで、水中から取り出したモジュールを軽く振って付着水を除いた後、前記開口端から窒素を吹き入れ、中空部に残る水を全て排出し、湿潤化処理を行った。その後、前記モジュールの前記開口端に3方コックを有するPP製コネクターを結合し、さらに中空糸膜の内部に界面重合用溶液および通気用窒素ガスを注入するための回路装置を接続した。
そして、m-フェニレンジアミン(MPD)を2重量%含む水溶液を、前記モジュールの開口端から0.12m/秒の線速で1分間通液し、次いで、流路を気流に切り替え、窒素ガスを20m/秒の線速で1分間流した。続いて、トリメシン酸クロライド(TMC)を0.1重量%含むヘキサン溶液を0.12m/秒の線速で1分間通液し、次いで、流路を気流に切り替え、窒素ガスを20m/秒の線速で1分間流した。その後、モジュールを回路装置から取り外し、100℃のオーブンに5分間入れて乾燥を行った。乾燥後のモジュールを純水中に浸漬して、数回の水交換を実施しながら24時間洗浄した。その後、洗浄したモジュールを50℃の対流式乾燥機に入れて乾燥させた。その後、乾燥したモジュールのエポキシ樹脂部分の側で中空糸膜を切断し、20本の複合中空糸膜束を得た。得られた複合中空糸膜を用いてモジュールを作製し、エアーリーク試験、ろ過試験を行った。表1に前記各測定における測定結果を示す。また、図7は、得られた複合中空糸膜の内腔側断面の走査型電子顕微鏡画像(倍率10000倍)である。図8は、得られた複合中空糸膜の内腔側断面の走査型電子顕微鏡画像(倍率20000倍)である。図9は、得られた複合中空糸膜の内腔側表面の走査型電子顕微鏡画像(倍率10000倍)である。図10は、得られた複合中空糸膜の内腔側表面の走査型電子顕微鏡画像(倍率20000倍)である。
【0158】
[実施例2]
実施例1で作製した脂肪族ポリアミド中空糸膜を用いて、以下の界面重合を実施した。まず、実施例1と同様に界面重合用溶液を注入するモジュールを作製し、同様に湿潤化処理を行い、通液用の回路装置に接続した。
そして、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル(TAB)を2重量%含むジメチルホルムアミド溶液を、前記モジュールの開口端から0.12m/秒の線速で1分間通液し、次いで、流路を気流に切り替え、窒素ガスを流速20m/秒の線速で1分間流した。続いて、トリメシン酸クロライド(TMC)を0.1重量%含むヘキサン溶液を0.12m/秒の線速で1分間通液し、次いで、流路を気流に切り替え、窒素ガスを20m/秒の線速で1分間流した。その後、モジュールを回路装置から取り外し、100℃のオーブンに1分間入れて乾燥を行った。乾燥後のモジュールを純水中に浸漬して、数回の水交換を実施しながら24時間洗浄した。その後、洗浄したモジュールを50℃の対流式乾燥機に入れて乾燥させた。その後、乾燥したモジュールのエポキシ樹脂部分の側で中空糸膜を切断し、20本の複合中空糸膜束を得た。得られた複合中空糸膜を用いてモジュールを作製し、エアーリーク試験、ろ過試験を行った。表1に前記各測定における測定結果を示す。
【0159】
[比較例1]
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製、A1030BRT、相対粘度3.53)280g、ジメチルスルホン(東京化成株式会社製)720gを190℃で1.5時間攪拌し溶解させ、撹拌速度を下げて1時間脱泡し製膜原液を調製した以外は、実施例1と同様の方法で複合中空糸膜を製造した。表1に前記各測定における測定結果を示す。
【0160】
[比較例2]
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製、A1030BRT、相対粘度3.53)250g、ジメチルスルホン(東京化成株式会社製)750gを180℃で1.5時間攪拌し溶解させ、撹拌速度を下げて1時間脱泡し製膜原液を調製した以外は、実施例1と同様の方法で複合中空糸膜を製造した。表1に前記各測定における測定結果を示す。
【0161】
[比較例3]
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製、A1030BRT、相対粘度3.53)230g、ジメチルスルホン(東京化成株式会社製)770gを180℃で1.5時間攪拌し溶解させ、撹拌速度を下げて1時間脱泡し製膜原液を調製した以外は、実施例1と同様の方法で複合中空糸膜を製造した。表1に前記各測定における測定結果を示す。
【0162】
[比較例4]
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製、A1030BRT、相対粘度3.53)280g、ジメチルスルホン(東京化成株式会社製)720gを180℃で1.5時間攪拌し溶解させ、撹拌速度を下げて1時間脱泡し製膜原液を調製したこと、及び内部用凝固液として、ポリエチレングリコール300(PEG300)60重量%とグリセリン40重量%の混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で複合中空糸膜を製造した。なお、界面重合前の脂肪族ポリアミド中空糸膜は、緻密層が観察されなかった。また、バブルポイント法による推定孔径は5nm相当であった。表1に前記各測定における測定結果を示す。
【0163】
[比較例5]
製膜原液の調製において、ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製、A1030BRT、相対粘度3.53)280g、ジメチルスルホン(東京化成株式会社製)720gを180℃で1.5時間攪拌し溶解させ、撹拌速度を下げて1時間脱泡し製膜原液を調製したこと、内部用凝固液として、ポリエチレングリコール400(PEG400)を用いたこと、及び得られた脂肪族ポリアミド中空糸膜を速度の異なるロール間を通過させることで1.3倍に延伸した以外は、実施例1と同様の方法で脂肪族ポリアミド中空糸膜を製造した。製造した中空糸膜は、界面重合を行わないで各測定を実施した。表1に前記各測定における測定結果を示す。
【0164】
【表1】
【0165】
実施例1及び2の複合中空糸膜は、脂肪族ポリアミド中空糸膜の緻密層の表面に、架橋芳香族ポリアミド樹脂を含む分離機能層を有しており、かつNMPバースト圧が、2.25MPa以上であるため、NMPの透過量が6L/(m2・h)以上と非常に高く、また、NMP溶液中のジフェニルスルホンの阻止率が30%以上、分子量1000のポリスチレンの阻止率が90%以上であり、ナノ濾過レベルにおいて極めて高い阻止性能を有するものであり、NMPの透液性能とジフェニルスルホンの阻止性能を高いレベルで両立できるものであった。一方、比較例1~4の複合中空糸膜、及び比較例5の脂肪族ポリアミド中空糸膜は、NMPバースト圧が低いため、NMPの透過量が低く、NMPの透液性能に劣るものであった。
【符号の説明】
【0166】
1 流動液タンク
2 送液ポンプ
3 一次側圧力計
4 二次側圧力計
5 レギュレーター
6 クロスフローモジュール
7 受け皿
8 バースト圧評価用モジュール
8a 脂肪族ポリアミド中空糸膜
8b ナイロン硬質チューブ
9 手押しポンプ
10 緻密層
11 支持層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13